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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
管理番号 1328607
審判番号 不服2016-1245  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-28 
確定日 2017-05-25 
事件の表示 特願2014-541881「電源管理システムおよび電源管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月24日国際公開、WO2014/061137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2012年(平成24年)10月18日を国際出願日とする出願であって、平成27年6月19日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年8月19日付けで意見書が提出されたが、平成27年11月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成28年1月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審において平成28年11月17日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年1月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成29年1月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
発電電動機と、導通状態が定位である第1のスイッチおよび第1の蓄電器が直列に接続された蓄電装置とが互いに並列に接続された第1の電源回路と、
補機類と、第2の蓄電器とが互いに並列に接続された第2の電源回路と、
前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間に設けられた、非導通状態が定位である第2のスイッチと、
駆動動作時に、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間で電力を変換する電力変換器と、
一方の電源回路から他方の電源回路に電力を供給することが必要となる所定の条件が成立したと判定した場合に、前記第1のスイッチを前記導通状態から前記非導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路において前記第1の蓄電器を切り離した後に、前記第2のスイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間を接続する電源管理部と、
を備える電源管理システム。」

3.引用例の記載事項

(1)引用例1
(1-1)当審拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-328988号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される発電機と、
ランプ類やオーディオ装置等の一般負荷が接続される主電源と、
前記発電機に接続され、減速などの運動エネルギー、あるいは、排熱などの熱エネルギー等を用いて前記発電機にて発電される回生電力の回収、及び前記発電機の発電電力を蓄える副電源と、
前記副電源と前記主電源及び前記一般負荷とをDC/DCコンバータを介して接続する第1の給電回路と、
この第1の給電回路と並列に、前記副電源と前記主電源及び前記一般負荷とをスイッチを介して接続する第2の給電回路と、
前記DC/DCコンバータ及び前記スイッチの作動を制御する制御手段とを備え、
この制御手段は、
前記DC/DCコンバータを起動し、且つ前記スイッチを開く第1の制御状態、または、前記DC/DCコンバータを停止し、且つ前記スイッチを閉じる第2の制御状態を選択可能である車両用電源システム。
・・・(中略)・・・
【請求項5】
請求項1?3に記載した何れかの車両用電源システムにおいて、
前記主電源の方が、前記副電源より、公称電圧または公称容量が小さいことを特徴とする車両用電源システム。
・・・(中略)・・・
【請求項36】
請求項1?35に記載した何れかの車両用電源システムにおいて、
前記副電源と直列に副電源スイッチを接続したことを特徴とする車両用電源システム。」
(イ)「【0001】
本発明は、公称電圧が異なる二つのバッテリ(主電源と副電源)を備える車両用電源システムに関する。」
(ウ)「【実施例1】
【0057】
図1は車両用電源システム(以下、電源システムSと呼ぶ)の電気回路図、図2はエンジン始動時の制御手順を示すフローチャートである。
電源システムSは、エンジン(図示せず)に駆動されて発電する発電機1と、二つの電源(主電源2と副電源3)とを備え、車両に搭載される電気負荷(後述する)に電力供給を行う。
【0058】
発電機1は、ICレギュレータ付オルタネータであり、エンジンによりベルト駆動されて、例えば13?14Vの電圧を発生する。この発電機1は、副電源3にダイレクトに接続されると共に、以下に説明する給電回路を通じて主電源2にも接続されている。
給電回路は、例えば、シリーズレギュレータを利用したDC/DCコンバータ4を有する第1の給電回路5と、スイッチ6を有する第2の給電回路7とを有し、副電源3と主電源2との間で並列に接続されている。なお、図1では、第2の給電回路7にリレータイプのスイッチ6を示しているが、リレータイプのスイッチ6でなくても、半導体スイッチを用いることも可能である。
【0059】
主電源2は、例えば、一般的なPb(鉛)バッテリであり、12?13Vの電圧(公称電圧12V)を発生し、主に副電源3に優先して一般電気負荷8への電力供給を行う。また、主電源2には、第3の給電回路9を介して、車両の基本走行や安全等に係わる重要負荷(後述する)が接続され、その第3の給電回路9には、副電源3側から逆流する電流を防止するダイオード10、11が設けられている。
【0060】
副電源3は、主電源2より充電受入性に優れ、且つ状態検出が容易な高性能バッテリ(例えばLiイオンバッテリ)であり、主電源2より内部抵抗が小さく、例えば9?12Vの電圧(公称電圧10.8V)を発生する。この副電源3は、例えば、車両減速時に発電機1にて発電される回生電力を回収すると共に、発電機1の発電電力を蓄電する。また、発電機1と副電源3には、第4の給電回路12を介して、前記重要負荷が接続され、その第4の給電回路12には、主電源2側から逆流する電流を防止するダイオード13が設けられている。
【0061】
上記の一般電気負荷8は、エンジンの始動(クランキング)を行うスタータ8aと、車両に搭載される各種ランプ類、ワイパー、オーディオ機器、および空調装置などの一般負荷8bである。この一般負荷8bは、前記の様に、副電源3に優先して主電源2より電力の供給を受けるが、例えば、主電源2の給電能力が低下している時等は、副電源3または発電機1より電力供給を受けることができる。
【0062】
また、車両の基本走行や安全等に係わる重要負荷とは、車両の基本走行や安全等に係わる各種アクチュエータ類14をリレー15を介して電子制御する制御装置(安全ECU16と呼ぶ)と、本電源システムS(発電機1、DC/DCコンバータ4、スイッチ6等)を電子制御する電子制御装置(システムECU17と呼ぶ)等であり、これらの重要負荷は、主電源2と副電源3の何方か一方が故障した時でも、他方の電源よりダイレクトに電力の供給を受けることができる。つまり、重要負荷に対する電源の冗長性が確保されている。
【0063】
なお、システムECU17は、DC/DCコンバータ4とスイッチ6の作動状態に応じて、以下に説明する第1の制御状態、第2の制御状態、及び第3の制御状態を適宜選択可能である。
第1の制御状態:第1の給電回路5を使用して電力供給を行うもので、DC/DCコンバータ4を起動(ON)し、且つスイッチ6を開制御(OFF)する。
第2の制御状態:第2の給電回路7を使用して電力供給を行うもので、DC/DCコンバータ4を停止(OFF)し、且つスイッチ6を閉制御(ON)する。
第3の制御状態:第1の給電回路5と第2の給電回路7の両方を使用して電力供給を行うもので、DC/DCコンバータ4を起動(ON)し、且つスイッチ6を閉制御(ON)する第3の制御状態を適宜選択可能である。
・・・(中略)・・・・
【0070】
更に、実施例1に記載した電源システムSでは、主電源2の方が副電源3より発生電圧(公称電圧)が高い場合の一例を説明しているが、副電源3の方が主電源2より発生電圧(公称電圧)が高い場合にも適用できる。その一例として、主電源2は、実施例1と同じく、12?13Vの電圧(公称電圧12V)を発生し、副電源3は、12?16.4Vの電圧(公称電圧14.4V)を発生する。また、副電源3の発生電圧が高くなるので、それに応じて、発電機1の発電能力も高くなり、13?17Vの電圧を発生する。」
(エ)「【実施例4】
【0090】
続いて、副電源3の方が主電源2より発生電圧が高い時の制御について、図8に示すフローチャートを基に説明する。
Step60…副電源3の方が主電源2より発生電圧が高いか否かを判定する。判定結果がNO(副電源電圧≦主電源電圧)の時は、次のStep61へ進み、判定結果がYESの時は、Step62へ進む。
Step61…発電機1にて発電を行い、副電源3を充電する。この処理は、副電源3の発生電圧が主電源2の発生電圧より高くなるまで継続される。
【0091】
Step62…副電源3から主電源2及び一般負荷8bへの電力供給量が所定値より大きいか否かを判定する。判定結果がNOの時は、次のStep63へ進み、判定結果がYESの時は、Step64へ進む。
Step63…第1の制御状態を選択する。つまり、DC/DCコンバータ4を起動(ON)し、且つスイッチ6を開制御(OFF)して、第1の給電回路5を介して副電源3から主電源2及び一般負荷8bへの必要電力を供給する。ここでの制御は、例えば、DC/DCコンバータ4の出口側の電圧を一定値として制御する。この後、Step65へ進む。
【0092】
Step64…大きな電力供給を行うため、DC/DCコンバータ4の最大出力で電力供給する(足りない分は、主電源2の放電で対応する)。
Step65…副電源3の発生電圧が一般負荷8bの許容定格電圧以下まで低下したか否かを判定する。判定結果がYESの時は、Step66へ進み、判定結果がNOの時は、Step62へ戻る。
Step66…第2の制御状態を選択する。つまり、DC/DCコンバータ4を停止(OFF)し、且つスイッチ6を閉制御(ON)して、第2の給電回路7を介して副電源3より主電源2及び一般負荷8bへの電力供給する。
【0093】
この実施例4の制御によれば、各種ライト類等の一般負荷8bに過電圧が印加されることがなく、一般負荷8bの寿命低下を抑制できる。また、副電源3の発生電圧が一般負荷8bの許容定格電圧以下まで低下した場合は、DC/DCコンバータ4からスイッチ6に切り替えることにより、DC/DCコンバータ4による降圧の際の損失がなく、効率の良い電力供給が可能になる。」
(オ)「【実施例7】
【0098】
図11は実施例7に係る電源システムSの電気回路図である。
この実施例7に係る電源システムSは、図11に示す様に、副電源3のマイナス側に副電源スイッチ19(例えば、リレースイッチ)を接続し、この副電源スイッチ19をシステムECU17により通電制御する一例である。
この構成では、例えば、副電源3が故障した場合に、安全な場所への退避またはディーラまで走行する際に、副電源スイッチ19をOFFすることで、機能上、副電源3を電源システムSから切り離すことができるので、電源システムSの安全性を確保できる。
【0099】
また、一般負荷8bの中でも消費電力量の大きい電気負荷を使用する場合に、発電機1から第1の給電回路5または第2の給電回路7あるいは両回路5、7を介して給電する際にも、副電源スイッチ19をOFFすることで、確実に主電源2および一般負荷8bに給電することができる。
更に、交差点の赤信号等で一旦停止した時に、エンジンを自動停止させるアイドルストップ装置を搭載する車両では、次回の始動時(自動停止後の再始動時)に備えて、副電源スイッチ19をOFFすることにより、再始動時に確実な電気容量を確保することができる。
【0100】
更に、副電源3の100%容量電圧が発電機1の出力電圧より小さい状態で減速時に急速充電する場合には、副電源スイッチ19をOFFすることで、発電制御不良等のフェータルなモードにおいて、副電源3への過充電をカットすることができる。
なお、副電源スイッチ19は、図12または図13に示す様に、副電源3のプラス側に接続しても良い。」
(カ)「【0109】
また、実施例1では、発電機1としてオルタネータを記載したが、オルタネータの代わりに、発電機能を有するモータジェネレータを採用することも可能である。」
そして、記載事項(ウ)及び(オ)並びに図11及び12の記載からみて、次の事項が理解できる。
(キ)「発電機1と、副電源3と副電源スイッチ19とが直列に接続されたものとが並列に接続された第1の回路と、
一般電気負荷8と、主電源2とが互いに並列に接続された第2の回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路との間に接続され、前記副電源と前記前記主電源及び前記一般負荷とをDC/DCコンバータ4を介して接続する第1の給電回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路との間に前記第1の給電回路と並列に接続され、前記副電源と前記前記主電源及び前記一般負荷とをスイッチ6を介して接続する第2の給電回路と、
前記第2の回路に接続され、前記主電源2を重要負荷に接続し、前記副電源3側から逆流する電流を防止するダイオード10、11が設けられている第3の給電回路と、
前記第1の回路に接続され、前記発電機1及び前記副電源3を前記重要負荷に接続し、前記主電源2側から逆流する電流を防止するダイオード13が設けられている第4の給電回路と、
前記発電機1、前記DC/DCコンバータ4、前記スイッチ6及び前記副電源スイッチ19等を電子制御するシステムECU17と、
を備える車両用電源システム。」
(1-2)そうすると、これらの記載からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「発電機能を有するモータジェネレータ1と、該モータジェネレータにて発電される回生電力を回収すると共に該モータジェネレータの発電電力を蓄電する副電源3と副電源スイッチ19とが直列に接続されたものとが並列に接続された第1の回路と、
エンジンの始動(クランキング)を行うスタータ8aと車両に搭載される各種ランプ類、ワイパー、オーディオ機器、および空調装置などの一般負荷8bである一般電気負荷8と、主電源2とが互いに並列に接続された第2の回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路との間に接続され、前記副電源と前記前記主電源及び前記一般負荷とをDC/DCコンバータ4を介して接続する第1の給電回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路との間に前記第1の給電回路と並列に接続され、前記副電源と前記前記主電源及び前記一般負荷とをスイッチ6を介して接続する第2の給電回路と、
前記第2の回路に接続され、前記主電源2を車両の基本走行や安全等に係わる重要負荷に接続し、前記副電源3側から逆流する電流を防止するダイオード10、11が設けられている第3の給電回路と、
前記第1の回路に接続され、前記モータジェネレータ1及び前記副電源3を前記重要負荷に接続し、前記主電源2側から逆流する電流を防止するダイオード13が設けられている第4の給電回路と、
前記モータジェネレータ1、前記DC/DCコンバータ4、前記スイッチ6及び前記副電源スイッチ19等を電子制御するシステムECU17と、
を備える車両用電源システムであって、
前記主電源と前記副電源は、公称電圧が異なる二つのバッテリであって、
前記システムECU17は、前記第1の給電回路5を使用して電力供給を行うもので、DC/DCコンバータ4を起動(ON)し、且つスイッチ6を開制御(OFF)する第1の制御状態、または、前記第2の給電回路7を使用して電力供給を行うもので、DC/DCコンバータ4を停止(OFF)し、且つスイッチ6を閉制御(ON)する第2の制御状態を選択可能である、
車両用電源システム。」

(2)引用例2
(2-1)当審拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-4556号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ク)「【請求項1】
車両の内燃機関によって駆動される発電機と、
前記発電機によって発電される回生電力および発電電力を蓄電する第1電源と、
電気負荷への給電を行う第2電源と、
前記第1電源と前記第2電源との間に直列に接続され、入力直流電圧を異なる直流電圧に変換して出力する直流変換器と、
前記第1電源または前記発電機から前記直流変換器を介して前記電気負荷へ給電を行う第1制御状態と、前記発電機から直接、前記電気負荷へ給電を行う第2制御状態とを切り替え可能なスイッチ部と、
前記直流変換器の出力容量および前記第1電源の充電量に基づいて、前記発電機の発電制御、前記スイッチ部の状態制御、および前記直流変換器の状態制御を行う電源制御手段と
を備えたことを特徴とする車両用電源装置。
・・・(中略)・・・
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両用電源装置において、
前記スイッチ部は、開閉制御可能な第1スイッチおよび第2スイッチで構成され、前記第1スイッチの一端および前記第2スイッチの一端には前記発電機が接続され、前記第1スイッチの他端には前記第1電源が接続され、前記第2スイッチの他端には前記第2電源が接続されており、
前記電源制御手段は、前記第1スイッチを閉状態、前記第2スイッチを開状態に切り替えることで前記第1制御状態と等価な第3制御状態とし、前記第1スイッチを開状態、前記第2スイッチを閉状態に切り替えることで前記第2制御状態と等価な第4制御状態とする
ことを特徴とする車両用電源装置。
・・・(中略)・・・
【請求項31】
請求項4に記載の車両用電源装置において、
前記電源制御手段は、前記第1スイッチを閉状態、前記第2スイッチを開状態に切り替えることで前記第3制御状態とする際には、前記第1スイッチを閉状態に切り替えるタイミングを、前記第2スイッチを開状態に切り替えるタイミングよりも遅くし、前記第1スイッチを開状態、前記第2スイッチを閉状態に切り替えることで前記第4制御状態とする際には、前記第2スイッチを閉状態に切り替えるタイミングを、前記第1スイッチを開状態に切り替えるタイミングよりも遅くする
ことを特徴とする車両用電源装置。」
(ケ)「【0001】
本発明は、発電機と2つの電源を備える車両用電源装置に関する。」
(コ)「【0002】
発電機と2つの電源を備える従来の車両用電源装置として、以下の構成を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1における車両用電源装置は、車両に搭載される発電機と、ランプ類やオーディオ装置等の一般負荷が接続される主電源と、発電機に接続され、減速等の運動エネルギーを用いて発電機にて発電される回生電力の回収および前記発電機の発電電力を蓄える副電源と、副電源と主電源および一般負荷とをDC-DCコンバータを介して接続する第1の給電回路と、この第1の給電回路と並列に、副電源と主電源および一般負荷とをスイッチを介して接続する第2の給電回路と、DC-DCコンバータおよびスイッチの作動を制御する制御手段とを備えている。
【0003】
そして、この制御手段は、DC-DCコンバータを起動し、かつ、スイッチを開く第1の制御状態、または、DC-DCコンバータを停止し、かつ、スイッチを閉じる第2の制御状態を選択可能であることを特徴としている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
このような車両用電源装置では、例えば、副電源の公称電圧がECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)や一般電気負荷等の許容定格電圧よりも高い場合には、スイッチを閉じることで、主電源を含む給電回路に過電圧が印加される。このため、ECUや一般電気負荷等が故障し、車両の正常状態を確保できない。
・・・(中略)・・・
【0011】
・・・(中略)・・・さらに、主電源または副電源に過電流が流れることは、主電源または副電源の性能劣化や寿命低下を引き起こす、という問題がある。」
(サ)「【0021】
電気負荷5は、例えば、車両に搭載される各種コントロールユニット、各種ランプ類、あるいはカーオーディオ装置等であり、第2電源3と接続されている。
・・・(中略)・・・
【0024】
第2電源3は、例えば、一般的な鉛電池であり、12?13Vの電圧を発生し、電気負荷5へ給電する電源である。一方、第1電源2は、第2電源3より充電受入性に優れている電源であり、例えば、電気二重層キャパシタである」
(シ)「【0059】
実施の形態3.
本実施の形態3では、3端子スイッチの代わりに、ON/OFF状態を切り替える2個のスイッチを用いる場合について、説明する。
図5は、本発明の実施の形態2における車両用電源装置の構成図である。この図5における車両用電源装置は、発電機1、第1電源2、第2電源3、直流変換器4、電気負荷5、ECU6、第1電圧検出手段7、第2電圧検出手段8、第3電圧検出手段9、第1スイッチ12、および第2スイッチ13を備えている。ここで、ECU6は、電源制御手段6aおよび故障判定手段6bを有している。
【0060】
基本的な構成は、先の実施の形態1で示した図1の構成と同様である。ただし、先の図1の構成と比較すると、本実施の形態3における図5の構成は、3端子スイッチ11の代わりに、第1スイッチ12、第2スイッチ13を有している点が異なっている。そこで、異なる構成である第1スイッチ12、第2スイッチ13を中心に、以下に説明する。
【0061】
発電機1は、第1スイッチ12を介して第1電源2と接続され、また、第2スイッチ13を介して第2電源3とも接続されている。
【0062】
ECU6内の電源制御手段6aは、発電機1の発電制御、第1スイッチ12と第2スイッチ13の状態制御、および直流変換器4の状態制御を行う。また、ECU6内の故障判定手段6bは、第1電圧検出手段7から検出した第1電源2の電圧V1、第2電圧検出手段8から検出した第2電源3の電圧V2、第3電圧検出手段9から検出した発電機1の発電電圧Va、および電源制御手段6aによる第1スイッチ12と第2スイッチ13の制御状態から、第1スイッチ12と第2スイッチ13の故障を判定する。
第1スイッチ12および第2スイッチ13としては、リレータイプのスイッチや、半導体スイッチを用いることができる。
【0063】
電源制御手段6aは、以下に説明する3つの制御状態を適宜選択できる。
[第3制御状態]第1電源2または発電機1から直流変換器4を介して電気負荷5へ給電を行う制御状態であり、第1スイッチ12を閉じ、第2スイッチ13を開くことで選択される制御状態である。
[第4制御状態]発電機1から直接、電気負荷5へ給電を行う制御状態であり、第1スイッチ12を開き、第2スイッチ13を閉じることで選択される制御状態である。なお、第1スイッチ12を開き、第2スイッチ13を閉じた状態において、直流変換器4が起動している場合には、第1電源2から直流変換器4を介して電気負荷5へ給電されることもある。
[第5制御状態]発電機1または第1電源2から直接、電気負荷5へ給電を行う制御状態であり、第1スイッチ12を閉じ、第2スイッチ13を閉じることで選択される制御状態である。
【0064】
本実施の形態3における第3制御状態および第4制御状態は、それぞれ、先の実施の形態1における第1制御状態および第2制御状態に相当する。さらに、本実施の形態3では、3端子スイッチ11の代わりに、第1スイッチ12、第2スイッチ13を有していることで、新たに、第5制御状態を選択可能としている。
【0065】
図6は、本発明の実施の形態3における車両用電源装置の電源制御手段6aによる一連の制御処理を示すフローチャートである。この図6に示した一連の制御処理は、第3制御状態と第4制御状態の選択に関するものであり、先の実施の形態1において説明した図2の流れと同様であるため、説明を省略する。
【0066】
一方、図6のフローチャートには示していないが、本実施の形態3において新たに選択可能となった第5制御状態について説明する。第5制御状態は、第1電源2の電圧が、電気負荷5の許容定格電圧であるときにのみ利用できる制御状態であり、特に、第2電源が故障したとき等に選択される。
【0067】
以上のように、実施の形態3によれば、3端子スイッチの代わりに、2つのON/OFFスイッチを用いることによっても、先の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、状況に応じて2つのON/OFFスイッチをともにONさせることで、第1電源から直流変換器を介さずに電気負荷に給電できる経路を形成することができる。この結果、回生電力を効率よく利用することができる。
【0068】
なお、2つのON/OFFスイッチを有している本実施の形態3の構成において、一方のスイッチが閉、他方のスイッチが開である状態から、一方のスイッチが開、他方のスイッチが閉である状態に切り替える場合には、他方のスイッチを閉じるタイミングを、一方のスイッチが開くタイミングよりも所定時間遅らせることが考えられる。このようなタイミング制御を行うことで、両スイッチが同時に閉じている状態を避けることができる。
【0069】
これにより、例えば、第1電源の電圧が電気負荷の許容定格電圧よりも高い場合、電気負荷に許容定格電圧より高い電圧が印加されて故障することを抑制することができる。さらに、第1電源から第2電源へ過電流が流れることを防止することができ、過電流による第1電源または第2電源の性能劣化、あるいは寿命低下を抑制することができる。」
(2-2)そうすると,これらの記載からみて、引用例2には次の技術が記載されていると認められる。
「車両の内燃機関によって駆動される発電機と、
前記発電機によって発電される回生電力および発電電力を蓄電する第1電源と、
車両に搭載される各種コントロールユニット、各種ランプ類あるいはカーオーディオ装置等である電気負荷への給電を行う、一般的な鉛電池である第2電源と、
前記第1電源と前記第2電源との間に直列に接続され、入力直流電圧を異なる直流電圧に変換して出力する直流変換器と、
開閉制御可能な第1スイッチおよび第2スイッチで構成され、前記第1スイッチの一端および前記第2スイッチの一端には前記発電機が接続され、前記第1スイッチの他端には前記第1電源が接続され、前記第2スイッチの他端には前記第2電源が接続されているスイッチ部と、
前記直流変換器の出力容量および前記第1電源の充電量に基づいて、前記発電機の発電制御、前記スイッチ部の状態制御、および前記直流変換器の状態制御を行う電源制御手段と、
を備える車両用電源装置であって、
前記電源制御手段が、
前記第1スイッチを閉状態、前記第2スイッチを開状態に切り替えることで前記第1電源または前記発電機から前記直流変換器を介して前記電気負荷へ給電を行う第3制御状態とし、前記第1スイッチを開状態、前記第2スイッチを閉状態に切り替えることで前記発電機から直接、前記電気負荷へ給電を行う第4制御状態とし、
前記第1スイッチを閉状態、前記第2スイッチを開状態に切り替えることで前記第3制御状態とする際には、前記第1スイッチを閉状態に切り替えるタイミングを、前記第2スイッチを開状態に切り替えるタイミングよりも遅くし、前記第1スイッチを開状態、前記第2スイッチを閉状態に切り替えることで前記第4制御状態とする際には、前記第2スイッチを閉状態に切り替えるタイミングを、前記第1スイッチを開状態に切り替えるタイミングよりも遅くし、
これにより、両スイッチが同時に閉じている状態を避け、例えば、第1電源の電圧が電気負荷の許容定格電圧よりも高い場合、電気負荷に許容定格電圧より高い電圧が印加されて故障することを抑制することができ、さらに、第1電源から第2電源へ過電流が流れることを防止することができ、過電流による第1電源または第2電源の性能劣化、あるいは寿命低下を抑制することができる、車両用電源装置。」

4.本願発明と引用発明の対比・判断

(1)対比
引用発明の「発電機能を有するモータジェネレータ1」、「バッテリであ」る「該モータジェネレータにて発電される回生電力を回収すると共に該モータジェネレータの発電電力を蓄電する副電源3」及び「副電源スイッチ19」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本願発明の「発電電動機」、「第1の蓄電器」及び「第1のスイッチ」に相当する。
そうすると、引用発明の「発電機能を有するモータジェネレータ1と、該モータジェネレータにて発電される回生電力を回収すると共に該モータジェネレータの発電電力を蓄電する副電源3と副電源スイッチ19とが直列に接続されたものとが並列に接続された第1の回路」を備え、「前記副電源は、」「バッテリであ」ることは、本願発明の「発電電動機と、導通状態が定位である第1のスイッチおよび第1の蓄電器が直列に接続された蓄電装置とが互いに並列に接続された第1の電源回路」を備えることと、「発電電動機と、第1のスイッチおよび第1の蓄電器が直列に接続された蓄電装置とが互いに並列に接続された第1の電源回路を備える」点で一致する。
引用発明の「エンジンの始動(クランキング)を行うスタータ8aと車両に搭載される各種ランプ類、ワイパー、オーディオ機器、および空調装置などの一般負荷8bである一般電気負荷8」及び「バッテリであ」る「主電源8」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本願発明の「補機類」及び「第2の蓄電器」に相当する。
そうすると、引用発明の「エンジンの始動(クランキング)を行うスタータ8aと車両に搭載される各種ランプ類、ワイパー、オーディオ機器、および空調装置などの一般負荷8bである一般電気負荷8と、主電源2とが互いに並列に接続された第2の回路」を備え、「前記主電源」は、「バッテリであ」ることは、本願発明の「補機類と、第2の蓄電器とが互いに並列に接続された第2の電源回路」を備えることに相当する。
引用発明の「DC/DCコンバータ4」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「電力変換器」に相当するから、引用発明の「前記第1の回路と前記第2の回路との間に接続され、前記副電源と前記前記主電源及び前記一般負荷とをDC/DCコンバータ4を介して接続する第1の給電回路」を備えることは、本願発明の「駆動動作時に、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間で電力を変換する電力変換器」を備えることに相当する。
引用発明の「スイッチ6」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「第2スイッチ」に相当する。そうすると、引用発明の「前記第1の回路と前記第2の回路との間に前記第1の給電回路と並列に接続され、前記副電源と前記前記主電源及び前記一般負荷とをスイッチ6を介して接続する第2の給電回路」を備えることは、本願発明の「前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間に設けられた、非導通状態が定位である第2のスイッチ」を備えることと、「前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間に設けられた第2のスイッチを備える」点で一致する。
引用発明の「システムECU17」は、前記スイッチ9や前記副電源スイッチ19を電子制御しているから、本願発明の「電源管理部」に相当する。本願発明は、第2のスイッチが非導通状態であっても、電力変換器の駆動動作時には、電力変換器が第1の電源回路と第2の電源回路との間で電力を変換するから、第1の電源回路と第2の電源回路が電力変換器を介して接続されているといえる。さらに、引用発明において、システムECU17が所定の条件の成立/非成立に基づいて第1の制御状態あるいは第2の制御状態を選択していることは明らかである。
そうすると、引用発明の「前記モータジェネレータ1、前記DC/DCコンバータ4、前記スイッチ6及び前記副電源スイッチ19等を電子制御するシステムECU17」を備え、「前記システムECU17が、前記第1の給電回路5を使用して電力供給を行うもので、DC/DCコンバータ4を起動(ON)し、且つスイッチ6を開制御(OFF)する第1の制御状態、または、前記第2の給電回路7を使用して電力供給を行うもので、DC/DCコンバータ4を停止(OFF)し、且つスイッチ6を閉制御(ON)する第2の制御状態を選択可能である」ことは、
本願発明の「一方の電源回路から他方の電源回路に電力を供給することが必要となる所定の条件が成立したと判定した場合に、前記第1のスイッチを前記導通状態から前記非導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路において前記第1の蓄電器を切り離した後に、前記第2のスイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間を接続する電源管理部」を備えることと、
一方の電源回路から他方の電源回路に電力を供給することが必要となる所定の条件が成立したと判定した場合に、前記第2のスイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間を接続する電源管理部を備える点において一致する。
そして、引用発明の「車両用電源システム」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「電源管理システム」に相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。
【一致点】
発電電動機と、第1のスイッチおよび第1の蓄電器が直列に接続された蓄電装置とが互いに並列に接続された第1の電源回路と、
補機類と、第2の蓄電器とが互いに並列に接続された第2の電源回路と、
前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間に設けられた第2のスイッチと、
駆動動作時に、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間で電力を変換する電力変換器と、
一方の電源回路から他方の電源回路に電力を供給することが必要となる所定の条件が成立したと判定した場合に、前記第2のスイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間を接続する電源管理部と、
を備える電源管理システム。

【相違点1】
本願発明は、第1のスイッチが導通状態が定位であり、第2のスイッチが非導通状態が定位であるのに対し、引用発明は、第1及び第2のスイッチの定位が明らかではない点。
【相違点2】
本願発明は、電源管理部が、第2のスイッチを非導通状態から導通状態に切替えることにより第1の電源回路と第2の電源回路との間を接続するにあたり、第1のスイッチを導通状態から非導通状態に切替えることにより第1の電源回路において第1の蓄電器を切り離した後に第2のスイッチを非導通状態から導通状態に切替えるのに対し、引用発明は、電源管理部が第1のスイッチを制御するものの、第2のスイッチを非導通状態から導通状態に切替えることにより第1の電源回路と第2の電源回路との間を接続するにあたり、前記第1のスイッチを切り替えるのか明らかではない点。
【相違点3】
引用発明は、前記第2の回路に接続され、前記主電源2を重要負荷に接続し、前記副電源3側から逆流する電流を防止するダイオード10、11が設けられている第3の給電回路と、前記第1の回路に接続され、前記モータジェネレータ1及び前記副電源3を前記重要負荷に接続し、前記主電源2側から逆流する電流を防止するダイオード13が設けられている第4の給電回路と、を備えるのに対し、本願発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
(2-1)相違点1について検討する。
本願の明細書、特許請求の範囲及び図面を参照すると、第1のスイッチ及び第2のスイッチの「定位」とは、前記両スイッチが電源管理システムの通常時(以下、単に「通常時」という。)にとる位置を意味していると認められる。
引用発明は、補機類の一部(一般負荷8b)に対して第1の蓄電器(副電源3)に優先して第2の蓄電器(主電源2)より電力を供給するものである(記載事項(ウ)参照)。第1の蓄電器と第2の蓄電器はその公称電圧が異なることを考慮すれば(記載事項(イ),(ウ)参照)、通常時においては、発電電動機(発電機能を有するモータジェネレータ1)又は前記第1の蓄電器から電力変換器(DC-DCコンバータ4)を介して前記第2の蓄電器に電力を供給することが普通である。そして、引用発明において、第2スイッチ(スイッチ6)を通常時において導通状態とする、すなわち第2のスイッチの定位を導通状態とすると、通常時において電力変換器(DC-DCコンバータ4)は短絡されてしまうこととなる。そうすると、引用発明において、通常時においては第1の電源回路(第1の回路)第2の電源回路(第2の回路)を直接ではなく電力変換器を介して接続するように、第2のスイッチの定位は、当然、非導通状態であると認められる。
また、引用発明の第1の蓄電池は、発電電動機にて発電される回生電力を回収すると共に該発電電動機の発電電力を蓄電するものである。そして、引用発明は、車両の基本走行や安全等に係る重要負荷を、第3の給電回路を介して第2の蓄電器に、第4の給電回路を介して発電電動機と第1の蓄電器に、それぞれ接続することにより、第2の蓄電器と第1の蓄電器のいずれか一方が故障した時でも、他方よりダイレクトに前記重要負荷に対して電力を供給することを可能として、前記重要負荷に対する電源の冗長性を確保するとともに(記載事項(ウ)参照)、第1の蓄電池が故障した時には、第1のスイッチ(副電源スイッチ19)を非導通状態として第1の蓄電器を電源管理システム(車両用電源システム)から切り離すものである(記載事項(オ)参照)。そうすると、引用発明において、第1スイッチは通常時において導通状態とされている、すなわち第1のスイッチの定位は導通状態であると認められる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

この点に関し、審判請求人は、平成29年1月20日付けの意見書において、「引用文献1(審決注:審決における引用例1)において、副電源3が故障した場合(段落[0098])、消費電力量の大きい電気負荷を使用する場合(段落[0099])、アイドルストップ時(段落[0099])または発電機1の出力電圧よりも副電源3の100%容量電圧が小さい状態で減速時に急速充電する場合(段落[0100])において、副電源3を切り離すべく、副電源スイッチ19を「開制御(OFF)」すること記載されています。
ここで、副電源スイッチ19の定位が「閉」であると仮定した場合、上記の記載のとおり、副電源スイッチ19を「開制御(OFF)」し、その状態を維持するためには、副電源スイッチ19への電源供給が必要となります。
上記の電源について、副電源スイッチ19を「開制御(OFF)」することによって切り離される副電源3から供給するとは考え難く、副電源スイッチ19を「開制御(OFF)」するための電源は、主電源2から供給されると考えられます。
また、当業者であれば、引用文献1の構成において、電源の冗長性を確実に確保する(具体的には、例えば、消費電力量の大きい電気負荷を使用する場合や、アイドルストップ時に、当該負荷への電力供給や再始動時の電気容量を確保する)という視点から、主電源2の蓄電量を低下させ冗長性を悪化させる要因となりうる無駄な電力消費を極力抑えようとするのが当然です。
したがって、当業者は、引用文献1の構成において、無駄な電力消費に相当する構成、すなわち、副電源スイッチ19の定位を「閉」にして副電源スイッチ19を「開制御(OFF)」の状態に維持するために主電源2から電源を供給する構成を積極的に採用するはずがありません。
むしろ、当業者は、電源の冗長性を確実に確保するという視点から、副電源スイッチ19の定位を「開」にして副電源スイッチ19を「開制御(OFF)」の状態に維持するために主電源2から電源を供給しないようにする構成を採用するはずです。
つまり、当業者は、副電源スイッチ19の定位を「開」にして単に副電源スイッチ19への電源供給を停止することによって副電源スイッチ19を「開制御(OFF)」することができる構成を採用することで、無駄な電力消費を抑え、より冗長性を確かなものにすることができるようにすると考えるのが自然です。
引用文献1には副電源スイッチ19の定位について何ら明示的に記載されていない以上、上記のとおり、当業者であれば、副電源スイッチ19の定位を「閉」ではなく「開」にすると考えるのが自然であり、「前記副電源スイッチ19の定位は、当然、閉とされると認められる。」と断定的に認定することは妥当ではありません。
以上から、審判官殿のご指摘1は失当であると思料いたします。」と主張している(【意見の内容】(2-2)参照)。
審判請求人の当該主張について検討すると、本願の明細書及び特許請求の範囲には単に「定位」としか記載されておらず、第1のスイッチ及び第2のスイッチの具体的な形式については記載されていない。電源非供給時に導通状態、電源供給時に非導通状態となる形式のスイッチをシステムに用いたとしても、該システムの通常時において前記スイッチが導通状態又は非導通状態のいずれとなるかは、前記スイッチをどのように用いるか、すなわち通常時において該スイッチに電源を供給するかしないかによって定まる。そうすると、スイッチの定位が導通状態であるからとって、当該スイッチが、電源非供給時に導通状態、電源供給時に非導通状態となるスイッチであるとは必ずしもいえない。そして、これは、電源非供給時に非導通状態、電源供給時に導通状態となるスイッチについても同様である。そうすると、本願の請求項1の記載では、本願明細書の記載を参照しても、第1のスイッチが、電源非供給時に導通状態、電源供給時に非導通状態となるスイッチあるいは電源非供給時に非導通状態、電源供給時に導通状態となるスイッチのいずれであるとも解することはできず、単に電源管理システムの通常時において第1のスイッチは導通状態であると解することができるに留まる。
したがって、審判請求人の上記主張は、明細書及び特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるから、採用することができない。
また、引用発明において、第1のスイッチとして電源非供給時に導通状態、電源供給時に非導通状態となるスイッチを採用した場合、第1の蓄電池の故障時に第1のスイッチを非導通状態に維持するための電源を第2の蓄電池から供給すれば、これが第2の蓄電池の蓄電量を低下させる方向に作用することは、審判請求人の主張するとおりである。しかしながら、引用発明において、第2の蓄電池は電力変換器又は第2のスイッチを介して発電電動機に接続されているから、仮に第1の蓄電池の故障時に第1のスイッチを非導通状態に維持するための電源を第2の蓄電池から供給したとしても、これが直ちに第2の蓄電池の蓄電量を低下させ電源管理システムの冗長性を悪化させるとはいえない。
逆に引用発明において、第1のスイッチとして電源非供給時に非導通状態、電源供給時に導通状態となるスイッチを採用した場合、確かに、第1のスイッチを非導通状態に維持するための電源を供給する必要はないが、通常時においては第1のスイッチを導通状態に維持するための電源を供給する必要があり、これは電力消費を悪化させる方向に作用する。さらに、第1の蓄電池が正常であっても第1のスイッチの故障により第1の蓄電池が電源管理システムから切り離されてしまうことにもなるから、これは電源管理システムの冗長性を悪化させる方向に作用し得る。
以上のことから、引用発明において、第1のスイッチとして電源非供給時に導通状態、電源供給時に非導通状態となるスイッチあるいは電源非供給時に非導通状態、電源供給時に導通状態となるスイッチのいずれを採用するかは、上記の事情等を勘案して、当業者が適宜選択し得る事項である。これは、電源管理システムの通常時において非導通状態である第2のスイッチについても同様である。
したがって、仮に本願の請求項1の記載により、第1のスイッチが電源非供給時に導通状態、電源供給時に非導通状態となるスイッチであり、第2のスイッチが電源非供給時に非導通状態、電源供給時に導通状態となるスイッチであると実質的に特定されているとしても、引用発明において、相違点1に係る本願発明の特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
(2-2)相違点2について検討する。
電圧が異なる2つの電源を備える電源装置において、当該2つの電源を直結すれば、当然、電圧が相対的に高い一方の電源から電圧が相対的に低い他方の電源に電流が流れることとなる。そして、当該電流が大電流となって、該他方の電源が損傷する場合があることは、当業者にとって明らかであり、必要がない限り前記2つの電源を直結することは避けるべきであることもまた、当業者にとって明らかである。
引用発明において、第1のスイッチと第2のスイッチを同時に導通状態とすると、第1の蓄電器と第2の蓄電器は、第2の給電回路を介して直結される。一方、引用例1には、第1の蓄電器が故障した場合に第1のスイッチを非導通状態とすることが記載されており(記載事項(オ)参照)、引用例1には第1の蓄電器を保護するために第1のスイッチを非導通状態とすることが示唆されているといえる。さらに、引用例1には、発電電動機から第2の給電回路を介して補機類に給電する際に、第1のスイッチを非導通状態にすることができることが記載されている(記載事項(オ)参照)。
そうすると、引用発明において、第2のスイッチを非導通状態から導通状態に切替えて第1の電源回路と第2の電源回路とを第2の給電回路を介して接続するにあたり、第2のスイッチを導通状態に切替えるに先立ち第1のスイッチを非導通状態に切替えて、第1の蓄電器と第2の蓄電器とが第2の給電回路を介して直結されることがないようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

また、引用例2に記載された技術についてみれば、引用例2に記載された技術の「車両の内燃機関によって駆動される発電機」は、本願発明の「発電電動機」と、発電機である点で一致する。そして、引用例2に記載された技術の「開閉可能な第1スイッチ」及び「前記発電機によって発電される回生電力および発電電力を蓄電する第1電源」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本願発明の「第1のスイッチ」及び「第1の蓄電池」に相当する。そして、引用例2に記載された技術において、第1スイッチが開状態に切り替えられると、第1電源は、発電機から切り離される。
そうすると、引用例2に記載された技術の「車両の内燃機関によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電される回生電力および発電電力を蓄電する第1電源と、」「開閉制御可能な第1スイッチ」を含み、「前記第1スイッチの一端」「には前記発電機が接続され、前記第1スイッチの他端には前記第1電源が接続され」「ているスイッチ部と、」を備えることは、本願発明の「発電電動機と、導通状態が定位である第1のスイッチおよび第1の蓄電器が直列に接続された蓄電装置とが互いに並列に接続された第1の電源回路」を備えることと、発電機、第1のスイッチおよび第1の蓄電器が接続された第1の電源回路であって、第1のスイッチを導通状態から非導通状態に切替えることにより、第1の蓄電器が切り離される回路である点で一致する。
引用例2に記載された技術の「車両に搭載される各種コントロールユニット、各種ランプ類あるいはカーオーディオ装置等である電気負荷」及び「一般的な鉛電池である第2電源」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本願発明の「補機類」及び「第2の蓄電池」に相当する。
そうすると、引用例2に記載された技術の「車両に搭載される各種コントロールユニット、各種ランプ類あるいはカーオーディオ装置等である電気負荷への給電を行う、一般的な鉛電池である第2電源」を備えることは、本願発明の「補機類と、第2の蓄電器とが互いに並列に接続された第2の電源回路」を備えることに相当する。
引用例2に記載された技術の「直流変換器」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「電力変換器」に相当するから、引用例2に記載された技術1の「前記第1電源と前記第2電源との間に直列に接続され、入力直流電圧を異なる直流電圧に変換して出力する直流変換器」を備えることは、本願発明の「駆動動作時に、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間で電力を変換する電力変換器」を備えることに相当する。
引用例2に記載された技術の「第2スイッチ」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「第2のスイッチ」に相当するから、引用例2に記載された技術の「第2スイッチ」を含み、「前記第2スイッチの一端には前記発電機が接続され、」「前記第2スイッチの他端には前記第2電源が接続されているスイッチ部」を備えることは、本願発明の「前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間に設けられた、非導通状態が定位である第2のスイッチ」を備えることと、第1の電源回路と前記第2の電源回路との間に設けられた第2のスイッチを備える点において一致する。
引用例2に記載された技術の「電源制御手段」は、前記直流変換器の出力容量及び前記第1電源の充電量に基づいて、前記スイッチ部の状態制御を行っているから、本願発明の「電源管理部」に相当する。さらに、引用例2に記載された技術において、第1スイッチが開状態に切り替えられると、第1電源は、前記のとおり、発電機から切り離され、また第2スイッチを閉状態に切り替えると、発電機は、第2電源及び電気負荷に接続される。
そうすると、引用例2に記載された技術の「前記直流変換器の出力容量および前記第1電源の充電量に基づいて、前記発電機の発電制御、前記スイッチ部の状態制御、および前記直流変換器の状態制御を行う電源制御手段」を備え、「前記電源制御手段が、」「前記第1スイッチを開状態、前記第2スイッチを閉状態に切り替えることで前記発電機から直接、前記電気負荷へ給電を行う第4制御状態とし、」「前記第1スイッチを開状態、前記第2スイッチを閉状態に切り替えることで前記第4制御状態とする際には、前記第2スイッチを閉状態に切り替えるタイミングを、前記第1スイッチを開状態に切り替えるタイミングよりも遅く」することは、
本願発明の「一方の電源回路から他方の電源回路に電力を供給することが必要となる所定の条件が成立したと判定した場合に、前記第1のスイッチを前記導通状態から前記非導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路において前記第1の蓄電器を切り離した後に、前記第2のスイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間を接続する電源管理部」を備えることに相当する。
そして、引用例2に記載された技術の「車両用電源装置」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「電源管理システム」に相当する。
そうすると、引用例2に記載された技術は、本願発明と、
「発電機、第1のスイッチおよび第1の蓄電器が接続された接続された第1の電源回路と、
補機類と、第2の蓄電器とが互いに並列に接続された第2の電源回路と、
前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間に設けられた第2のスイッチと、
駆動動作時に、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間で電力を変換する電力変換器と、
一方の電源回路から他方の電源回路に電力を供給することが必要となる所定の条件が成立したと判定した場合に、前記第1のスイッチを前記導通状態から前記非導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路において前記第1の蓄電器を切り離した後に、前記第2のスイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間を接続する電源管理部と、
を備える電源管理システム。」
である点で共通するから、引用例2には、相違点2に係る本願発明を特定する事項が記載されているといえる。
引用発明と引用例2に記載された事項は、
「発電機、第1のスイッチおよび第1の蓄電器が接続された接続された第1の電源回路であって、前記第1のスイッチを前記導通状態から前記非導通状態に切替えることにより、前記第1の蓄電器が切り離される第1の電源回路と、
補機類と、第2の蓄電器とが互いに並列に接続された第2の電源回路と、
前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間に設けられた第2のスイッチと、
駆動動作時に、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間で電力を変換する電力変換器と、
一方の電源回路から他方の電源回路に電力を供給することが必要となる所定の条件が成立したと判定した場合に前記第2のスイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切替えることにより、前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との間を接続する電源管理部と、
を備える電源管理システム。」
に係るものである点において技術分野を一にするものである。さらに、引用発明は、第1の蓄電器と第2の蓄電器の公称電圧が異なるから、引用発明が、引用例2に記載された課題(記載事項(コ)参照)と同様の課題を有することは、当業者にとって明らかである。してみれば、引用発明に引用例2に記載された事項を適用することは、当業者が容易になし得る事項である。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の特定事項を備えるようにすることは、引用例2に記載された事項に基いても、当業者が容易に想到し得る事項である。

この点に関し、審判請求人は、平成29年1月20日付けの意見書において、「審判官殿がご指摘された引用文献2(審決注:審決における引用例2)(段落[0068])に記載された技術、すなわち、「一方のスイッチが閉、他方のスイッチが開である状態から、一方のスイッチが開、他方のスイッチが閉である状態に切り替える場合には、他方のスイッチを閉じるタイミングを、一方のスイッチが開くタイミングよりも所定時間遅らせ、両スイッチが同時に閉じている状態を避ける」スイッチング技術について説明します。
ここで、引用文献2の段落[0063]において、各スイッチが採り得る制御状態として、以下の点が記載されています。
[第3制御状態]第1スイッチ12:閉、第2スイッチ13:開
[第4制御状態]第1スイッチ12:開、第2スイッチ13:閉
[第5制御状態]第1スイッチ12:閉、第2スイッチ13:閉
つまり、引用文献2のスイッチング技術では、上記の段落[0063]の記載を参照すると、第3制御状態から第4制御状態へ遷移する場合、または第4制御状態から第3制御状態へ遷移する場合には、その遷移の間に、第1スイッチ12と第2スイッチ13が両方とも同時に閉にならないようにしています。
換言すると、引用文献2のスイッチング技術では、第3制御状態から第4制御状態へ遷移する場合、または第4制御状態から第3制御状態へ遷移する場合、その遷移の間に、第1スイッチ12と第2スイッチ13の両方のスイッチがともに開になる状態が現れます。
引用文献2の図5の構成では、上記の両方のスイッチがともに開になる状態が現れた場合、すなわち、上記の両方のスイッチがともに開になる場合、図5の回路網から発電機1が完全に切り離されます。
また、上記のスイッチング技術が適用される引用文献2の図5の構成では、第1スイッチ12は、直流変換器4と第1電源2の両方に対して直列に接続されています。
これに対して、請求項1に係る発明の構成では、第1のスイッチ6および第2のスイッチ7の両方のスイッチがともに開になる場合、回路網から発電電動機1が完全に切り離されることがなく、発電電動機1と電力変換器2が接続されます。
また、請求項1に係る発明の構成では、第1のスイッチ6は、第1の蓄電器4と直列に接続されています。
以上から分かるように、請求項1に係る発明の構成は、上記のスイッチング技術が適用される引用文献2の図5の構成とは明らかに相違します。
また、請求項1に係る発明の構成と同様に、引用文献1の図11、12の構成も、上記のスイッチング技術が適用される引用文献2の図5の構成とは明らかに相違します。
したがって、引用文献2の図5の構成と相違する引用文献1の図11、12の構成に対して、引用文献2のスイッチング技術を適用する動機がありません。
つまり、上記のスイッチング技術について、図5の構成に適用することが前提であり、図5以外の構成に適用可能であることを何ら開示あるいは示唆されていない引用文献2を当業者が参酌した場合であっても、引用文献2から上記のスイッチング技術のみを抽出して、図5の構成とは相違する引用文献1の図11、12の構成に対して適用する動機がないことは明らかです。
したがって、引用文献1に記載された発明において、前記副電源スイッチ19を開くとともに前記スイッチ6を閉じるにあたり、前記副電源スイッチ19を開いた後に前記スイッチ6を閉じるようにすることは、引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項ではありません。
以上から、審判官殿のご指摘2は失当であると思料いたします。」と主張している。
審判請求人の当該主張について検討する。
引用例1に記載された事項により特定される車両用電源システムにおいて、第2のスイッチ(スイッチ6)の両方を非導通状態としても、そして引用例1の図11又は12に記載された車両用電源システムにおいて、第1のスイッチ(副電源スイッチ19)及び第2のスイッチの両方を非導通状態としても、発電電動機(発電機1)が回路網から切り離されることがなく、発電電動機と電力変換器(DC/DCコンバータ4)が接続されることは、審判請求人が主張するとおりである。
しかしながら、引用発明と引用例2に記載された技術は、電源管理部が、第1及び第2のスイッチの導通状態又は非導通状態を切替えることにより、第1の電源回路と第2の電源回路との間を電力変換器を介して接続する状態と、第1の電源回路と第2の電源回路との間を第2のスイッチを介して接続する状態と、を切り替えるものである点において共通している。さらに、引用発明が引用例2に記載された課題と同様の課題を有することが当業者にとって明らかなことは、先に述べたとおりである。
さらに、引用例2に記載された技術において、第1のスイッチ(第1スイッチ)及び第2のスイッチ(第2スイッチ)の両方を非導通状態にするのは、第1の蓄電器(第1電源)から補機類(電気負荷)に許容定格電圧より高い電圧が印可されたり、第1の蓄電器と第2の蓄電器(第2電源)との間で過電流が流れることを防止することを目的としたものであって、発電電動機(発電機である点で共通する発電機)を回路網から切り離すことを目的としたものではない。そして、引用発明においても、第1のスイッチ及び第2のスイッチの両方を非導通状態にすれば、第1の蓄電器(副電源3)から補機類(一般電気負荷8)に許容定格電圧より高い電圧が印可されたり、第1の蓄電器と第2の蓄電器(主電源2)との間で過電流が流れることを防止し得る。
以上のことから、引用例2に記載された技術を引用発明に適用することができないとの審判請求人の主張は,採用することができない。
(2-3)相違点3について検討する。
引用発明の第3の給電回路及び第4の給電回路は、いずれも、重要負荷側から逆流する電流を防止するダイオード10、11、13が設けられているから、引用発明において、第1の電源回路(第1の回路)と第2の電源回路(第2の回路)は、第3の給電回路及び第4の給電回路を介しては電気的に接続されない。そうすると、引用発明は、第3の電源回路及び第4の給電回路の有無によって、第2のスイッチ及び電力変換器の機能が変化するものではない。
また、本願の請求項1の記載からみて、本願発明は、同請求項に記載された事項に加えて、他の事項をも備えるものを包含しないものではない。
したがって、相違点3は、実質的な相違点ではない。
(2-4)さらに、本願発明の奏する効果も、引用発明又は引用発明及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できたものであって、格別なものともいえない。

5.むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明又は引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-13 
結審通知日 2017-03-14 
審決日 2017-04-05 
出願番号 特願2014-541881(P2014-541881)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 誠治  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 久保 竜一
矢島 伸一
発明の名称 電源管理システムおよび電源管理方法  
代理人 梶並 順  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 上田 俊一  
代理人 大宅 一宏  
代理人 曾我 道治  
代理人 別所 公博  

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