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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1328615
審判番号 不服2016-10329  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-22 
確定日 2017-05-25 
事件の表示 特願2011-245921「省エネ活動管理装置、省エネ活動管理方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開,特開2013-101569〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年11月9日を出願日とする出願であって,平成27年5月26日付けで拒絶理由通知され,平成27年8月3日に手続補正されたが,平成28年3月14日付けで拒絶査定され,平成28年6月22日に本件審判の請求と同時に手続補正(以下「本件補正」という。)されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

1 [補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

2 [理由]
(1) 本件補正の内容

本件補正は,補正前後の特許請求の範囲の請求項1を,以下のとおりに補正することを含むものである。

ア <補正前>

「 需要家におけるエネルギー資源の利用に関する計測量を環境負荷の指標値として取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記計測量を前記需要家に対応付けて記憶する記憶部と、
一定の期間における複数の需要家の計測量から統計的に得られる標準的な計測量または前記需要家の過去の一定の期間における前記計測量に基づいて規定した基準値が格納される基準値記憶部と、
前記記憶部が記憶している前記計測量と前記基準値記憶部に格納された前記基準値との比較により、環境負荷の低減に関する貢献度を表す省エネ活動ポイントを算出する演算部と、
前記演算部が求めた前記需要家ごとの前記省エネ活動ポイントを当該需要家の利用者機器に提示する提示部と
を備えることを特徴とする省エネ活動管理装置。」

イ <補正後>

「 需要家におけるエネルギー資源の利用に関する計測量を環境負荷の指標値として取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記計測量を前記需要家に対応付けて記憶する記憶部と、
一定の期間における複数の需要家の計測量から統計的に得られる標準的な計測量または前記需要家の過去の一定の期間における前記計測量に基づいて規定した基準値が格納される基準値記憶部と、
前記記憶部が記憶している前記計測量と前記基準値記憶部に格納された前記基準値との比較により、環境負荷の低減に関する貢献度を表す省エネ活動ポイントを算出する演算部と、
前記演算部が求めた前記需要家ごとの前記省エネ活動ポイントを当該需要家の利用者機器に提示する提示部とを備え、
少なくとも発電装置を備える需要家において、前記計測量は、前記需要家におけるエネルギー資源の消費量、および前記需要家における前記発電装置による電力の供給量である
ことを特徴とする省エネ活動管理装置。」

(2) 補正の目的

本件補正による特許請求の範囲の請求項1に対する補正(以下,「補正事項1」という。)は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「計測量」について,「少なくとも発電装置を備える需要家において、前記計測量は、前記需要家におけるエネルギー資源の消費量、および前記需要家における前記発電装置による電力の供給量である」との限定を付加するものである。そして,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,補正事項1は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正による補正後の請求項1に記載された発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3) 引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用された,特開2006-162424号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。(なお,下線は当審において付加したものである。)

(ア)【0001】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、各戸の電力使用量を把握すると共に、その情報を種々、利用するエネルギーマネージメントシステムに関する。」

(イ)【0012】から【0015】まで
「【0012】
以下、本発明の第1実施の形態に係るエネルギーマネージメントシステムを図1及び図2に基づいて、図3及び図4を参照して説明する。
図1において、マンション1(集合住宅)のMDF2(主配線分配装置)には、電力供給側の管理センター3が接続されたインターネット回線4が引き込まれるようになっている。インターネット回線4はMDF2のハブ5で分岐され、各住戸6にはLAN7が延びている。MDF2は、インターネット回線4に接続されるルータ8と、ルータ8に接続されて各住戸6に対応するLAN7を分岐接続するハブ5と、ハブ5に接続された後述するコントローラ9と、からなっている。LAN7は、インターネット回線4を介して管理センター3に接続されている。この場合、LAN7では、通信制御方式としてイーサネット(登録商標)規格を採用しているが、他の規格を用いるようにしてもよい。また、LANに代えて、VDSL〔Very high-bit-rate Digital Subscriber Line〕やPLC〔電力線搬送通信、Power Line Communications〕を用いるようにしてもよい。
【0013】
マンション1には基幹電力線10が引き込まれている。基幹電力線10には、各住戸6に対応して電力線11が分岐接続されている。電力線11の途中には、電力量計12及び分電盤13がこの順に設けられている。電力量計12は、各住戸6の電力使用量(以下、住戸対応電力使用量という。)を検出する。分電盤13には、親ブレーカ14と、親ブレーカ14に分岐して接続される複数個の子ブレーカ15(図4参照)とが備えられ、子ブレーカ15には、例えばIHクッキングヒータ16、ビルドインエアコン(床暖房機)、エコキュート(給湯器)、プリンタ(図示省略)、スキャナ(図示省略)などのインターネット接続機器18、インターネット対応TV19、及びその他の家庭電化製品20(図4参照)などが接続されている。本実施の形態では、子ブレーカ15と負荷とを1対1対応して設けた場合を例にするが、これに代えて複数の負荷(例えば部屋毎に並列接続された複数の負荷)に対して1個の子ブレーカ15を対応して設けるように構成してもよい。
【0014】
各住戸6のLAN7に備えられるハブ5Aには、電力量計12の検出データをインターネット用データに変換する電力量計アダプタ21が接続されている。
コントローラ9は、各住戸6の電力量計アダプタ21経由で住戸対応電力使用量データを15分間隔で住戸6毎に読取って住戸6毎に蓄積し、住戸6毎の住戸対応電力使用量データを1時間毎に管理センター3へ転送する。
前記各住戸6のLAN7に備えられるハブ5Aには、管理センター3からの出力情報を表示するパソコン22(情報機器)、IP電話アダプタ23及び各種機器が接続されている。IP電話アダプタ23には、電話機24及びパソコン22Aなどが接続されている。
【0015】
管理センター3は、住戸対応電力使用量データに基づいて、今月の本日までの電気利用量・電気料金、先月の電気利用量、本日の電気料金、本日時点で予測される今月の電気料金を算出する。また、管理センター3は、先月の電気使用量を削減量算出用基準使用量(目標となる基準使用量)と比較して電力削減量(以下、住戸対応電力削減量データという。)を算出する。削減量算出用基準使用量(目標となる基準使用量)は、当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量を用いている。なお、削減量算出用基準使用量としては、これに代えて、当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量の平均値を用いたり、マンション1全体における昨年までの同月の電気使用量の平均値を用いたりするようにしてもよい。」

(ウ)【0020】から【0024】まで
「【0020】
なお、近時、表示価格の数%を買い物客にポイントとして還元し、次回の買い物で、そのポイントを、そのポイント値に応じた額の買い物に利用できるという、いわゆるポイント還元割引制度が利用されるようになってきている。そして、上記実施の形態において、前記ポイント還元割引制度を利用することが可能である。
【0021】
上述したポイント還元割引制度を利用したエネルギーマネージメントシステム(第2実施の形態)を図3に基づき、図1及び図2を参照して説明する。
第2実施の形態の管理センター3は、住戸対応電力使用量データに対応する商品又はサービスに還元可能の使用量ポイント情報データを算出し、かつ、住戸対応電力削減量に対応する商品又はサービスに還元可能の削減量ポイント情報を算出すると共に、このように算出した情報を、各住戸6のパソコン22(情報機器)の表示部25に表示させる。例えば、図3に示すように、本日の獲得ポイントP1及び累積ポイントP2を表示部25に表示させる。
【0022】
このように、各住戸6の住人は、電力使用及びその削減により使用量ポイント及び削減量ポイントを得ることができる。このため、各住戸6の住人は、例えば必要最小限までの電力使用に関しては使用量ポイントを得、必要最小限を超える電力使用に関しては、削減量ポイントを得るように電力使用を工夫することが可能であり、このように電力使用することより、ポイントを獲得しつつ、電力使用の削減の一助となる。
【0023】
上記第2実施の形態では、管理センター3は、使用量ポイント情報データ及び削減量ポイント情報を共に算出・出力するように構成しているが、両情報のうち一方のみを算出・出力するようにしてもよい。例えば、使用量ポイント情報データを算出・出力する場合には、電力使用量の増大を各住戸6の住人に促すことになる。また、削減量ポイント情報を算出・出力する場合には、電力使用量の削減を各住戸6の住人に促すことになり、CO_(2)の削減効果を図ることができる。
【0024】
なお、住戸対応電力使用量データに関して、図3に示すように、横軸を今月及び先月の日付け、縦軸を電力量として、今月の住戸対応電力使用量(消費電力量)〔線分Aで示す〕及び先月の住戸対応電力使用量〔線分Bで示す〕を対比してグラフ表示してもよい。また、住戸対応電力使用量に対応する量のCO_(2)の排出量を算出し、今月の本日までのCO_(2)の排出量及び先月のCO_(2)の排出量について、煙を模擬したキャラクタ画像で表示するようにしてもよい。今月、先月の住戸対応電力使用量〔線分A、B〕を対比したグラフ表示及びCO_(2)の排出量についての画像表示により、住人は電力使用量の削減について、より明確に把握することができる。
また、本実施の形態では、管理センター3では、例えば今月の住戸対応電力使用量及び先月の住戸対応電力使用量に基づいて、電力の効率的な使用に関してのアドバイス、ひいては省エネルギーに関するアドバイスを内容とする情報(アドバイス情報)を対応する住戸のパソコン25に送信するようにしている。そして、住人がパソコン22を操作することにより前記アドバイス情報の内容が表示部25に文字で表示される(本実施の形態では、図3の「省エネアドバイス」の欄に表示される)ようになっている。」

(エ)上記(ア)?(ウ)によれば,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「各住戸6の電力使用量(以下,住戸対応電力使用量という。)を検出する電力量計12と,
電力量計12の検出データをインターネット用データに変換する電力量計アダプタ21と,
各住戸6の電力量計アダプタ21経由で住戸対応電力使用量データを15分間隔で住戸6毎に読取って住戸6毎に蓄積し,住戸6毎の住戸対応電力使用量データを1時間毎に管理センター3へ転送するコントローラ9と,
先月の電気使用量を削減量算出用基準使用量(目標となる基準使用量)と比較して電力削減量(以下,住戸対応電力削減量データという。)を算出する管理センター3とを備えるエネルギーマネージメントシステムであって,
前記削減量算出用基準使用量(目標となる基準使用量)は,当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量,当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量の平均値,又は,マンション1全体における昨年までの同月の電気使用量の平均値のいずれかであり,
管理センター3は,前記住戸対応電力削減量に対応する商品又はサービスに還元可能の削減量ポイント情報を算出すると共に,このように算出した情報を,各住戸6のパソコン22(情報機器)の表示部25に表示させ,
さらに,住戸対応電力使用量に対応する量のCO_(2)の排出量を算出し,今月の本日までのCO_(2)の排出量及び先月のCO_(2)の排出量について,煙を模擬したキャラクタ画像で表示すること
を特徴とするCO_(2)の削減効果を図ることができるエネルギーマネージメントシステム。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用された,特開2010-152792号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。(なお,下線は当審において付加したものである。)

(ア)【0001】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素排出削減システムに関する。」

(イ)【0011】から【0017】まで
「【0011】
図1及び図2(イ)に示すシステムは電力に適用した場合のもので、1…は特定の複数のユーザー宅であり、各ユーザー宅1にはエネルギー計測器としての電力計測器2が設置され、該電力計測器2は、分電盤3に接続され、そのユーザー宅1で消費される電力量が計測されるようになされている。なお、本実施形態では、電力計測器2に太陽電池4も接続されていて、太陽電池4で発電した電力も計測されるようになされている。
【0012】
各ユーザー宅1…において電力計測器2で計測された消費電力量の情報は、通信回線、本実施形態では、自宅サーバー5からインターネット網6を通じて、中央コンピューター7が取得するようになされていて、中央コンピューター7は、その情報を、制御部8による制御によって第1記憶部9に記憶するようになされている。
【0013】
また、中央コンピューター7には、特定の期間、例えば1ヶ月内において前記複数の全部のユーザー宅1…において消費する電力量の目標値を記憶する第2記憶部10が備えられ、入力部11から、その目標値を入力して、第2記憶部10に記憶させることができるようになされている。なお、目標値は、前年比の例えば-2%などとして自動的に第2記憶部10に入力されるようになっていてもよい。
【0014】
中央コンピューター7には更に、第1,第2の演算部12,13と、公表部14と、制御部8とが備えられている。
【0015】
制御部8は、
・ 公表部14に、第2記憶部10に記憶された目標値の公表を各ユーザーにインターネット網6を通じて行わせる制御を行うと共に、
・ 図2(ロ)に示すように、第1記憶部9に記憶された電力消費値データから前記特定の期間内において全部のユーザー宅1…において消費された電力の合計消費値を求め、該合計消費値と、第2記憶部10に記憶された目標値とから、消費電力量の削減値と二酸化炭素排出削減量を求める演算を、第1演算部12に行わせる制御(ステップS1,S2,S3)を行い、かつ、
・ 同図2(ロ)に示すように、公表部14に、求められた消費電力の削減値と二酸化炭素排出削減量の公表を各ユーザーにインターネット網を通じて行わせる制御(ステップS4)を行うようになされている。
【0016】
公表部14による公表は、上記の特定のユーザーにのみアクセスが許されるウエブサイトによって行われるようになされていてもよいし、上記の特定のユーザーに対するメールの送信によって行われるようになされていてもよいし、種々の方法によって行われてよい。15は、ユーザー宅のパソコン等の端末機である。
【0017】
また、本実施形態の場合、電力計測器2が太陽電池4による発電電力も計測するしようになされているので、第1記憶部9に記憶される消費電力量は、太陽電池4による発電電力値を差し引いた値として記憶されるようになされているのもよい。」

(ウ)【0022】
「【0022】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、電力を対象としたシステムに構成した場合を示したが、その他、電力やガス、ガソリン、灯油、水道、ゴミ等の少なくとも一種以上を対象とするシステムに構成されていてもよい。また、ユーザー宅は、戸建て住宅であってもよいし、集合住宅の住戸であってもよいし、事務所、店舗等であってもよい。また、第1記憶部に記憶されたデータに基づいて、ユーザー宅間での比較や分析、その公表が行われるようになされていてもよい。」

(エ)上記(ア)?(ウ)によれば,引用例2には以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザー宅1で消費される電力量を計測する電力計測器2と,
電力計測器2に接続された太陽電池4と,
中央コンピュータ7とを有し,
前記中央コンピュータ7は,
特定の期間において前記複数の全部のユーザー宅1…において消費する電力量の目標値を記憶する第2記憶部10と,
電力計測器2で計測された消費電力量の情報を記憶する第1記憶部と,
第1記憶部9に記憶された電力消費値データから前記特定の期間内において全部のユーザー宅1…において消費された電力の合計消費値を求め,該合計消費値と,第2記憶部10に記憶された目標値とから,消費電力量の削減値と二酸化炭素排出削減量を求める演算を,第1演算部12と,
求められた消費電力の削減値と二酸化炭素排出削減量の公表を各ユーザーにインターネット網を通じて行う公表部
を備えており,
第1記憶部9に記憶される消費電力量は,太陽電池4による発電電力値を差し引いた値であって,
第1記憶部に記憶されたデータに基づいて,ユーザー宅間での比較や分析,その公表も行われる
ことを特徴とする二酸化炭素排出削減システム。」

ウ 新たに引用する特開2004-28924号公報(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。(なお,下線は当審において付加したものである。)

(ア)【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、商用交流電力系統と自家発電設備とを連系させて負荷に電力を供給する自家発電システム、及び自家発電システムに用いられる電力関連表示装置に関するものである。」


(イ)【0018】から【0019】まで
「【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の第1の実施の形態を図を用いて説明する。図1はこの実施の形態における自家発電システムを示す図である。図に示すように、この自家発電システムは、自家発電設備1と商用交流電力系統2とを連系させて並列的に負荷3に電力を供給しているシステムである。ここで、自家発電設備には、例えば太陽光発電等の設備がある。
【0019】
自家発電設備1に備えられている発電電力検出部1aは、自家発電設備1の発電電力を検出する。また、売買電力検出部4は商用交流電力系統2と負荷3との間に設けられ、売電力、買電力を測定する。この売電力と買電力は、自家発電設備1の発電電力と後述する負荷3の消費電力の増減に応じて増減する。すなわち、消費電力に比べて発電電力が大きくその値が増加すれば売電力が増加し、逆に消費電力の方が大きくその値が増加すれば買電力が増加する関係にある。」

(ウ)【0030】
「【0030】
消費電力演算部6で演算された負荷3の消費電力は、記憶部16と節電電力演算部22に送信される。記憶部16は、負荷3の消費電力のデータを保存するとともに、過去の同一時期の所定期間の消費電力データを消費電力平均値演算部21に出力する。消費電力平均値演算部21は、過去の所定期間の消費電力の平均値を求め、節電電力演算部22に出力する。」

(エ)【0039】から【0043】まで
「【0039】
実施の形態3.
以下、この発明の第3の実施の形態を図を用いて説明する。図3において、上記実施の形態1、2と異なる点は環境貢献電力演算部31、環境貢献度演算部32を備えた点である。なお、上記各実施の形態と同様の構成には同一の符号をつけて説明を省略する。
【0040】
上記実施の形態2と同様、節電電力演算部22は、消費電力演算部6で求められた現在の消費電力と消費電力平均値演算部21で求められた消費電力の平均値とから節電電力を求める。節電電力演算部22で求められた節電電力は、環境貢献電力演算部31に出力される。環境貢献電力演算部31は、発電電力検出部1aで求められた発電電力のデータと節電電力演算部22で求められた節電電力との和を計算し、これを環境貢献電力のデータとして表示盤11cに送るとともに、積算電力演算部7に出力する。
【0041】
積算電力演算部7は、環境貢献電力のデータを所定期間積算し、得られた積算電力量を環境貢献電力量のデータとして表示盤11cに送るとともに、環境貢献度演算部32に出力する。ここで、積算される所定期間とは、時間計測部8に基づいて設定された例えば、1分間、1時間、1日、1週間、1月間、1年間、または1日のうちの所定の時間帯などであり、予め設定しておいてもよいし、使用者が設定するようにしてもよい。
【0042】
環境貢献度演算部32は、環境貢献節電量のデータに所定の係数を掛算する計算を行い、これを環境貢献度のデータとして表示盤11cに出力する。ここで、所定の係数とは、電力量を二酸化炭素削減量や石油使用量などに変換する既知の係数である。
【0043】
表示盤11cは、上記の実施の形態1における表示盤11aと同様、グラフ表示部12cとデジタル表示部13cを備え、グラフ表示部12cは、第1の軸である横軸とこれに略直交する第2の軸である縦軸を有し、2次元的なグラフ表示を行う。この実施の形態においては、表示盤11cは、環境貢献電力、環境貢献電力量、環境貢献度を表示要素としてグラフ表示部12cにグラフ表示するとともに、デジタル表示部13cに数値表示する。」

(オ)上記(ア)?(エ)によれば,引用例3には以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「現在の消費電力と過去の所定期間の消費電力の平均値とから求めた節電電力と,太陽光発電等の設備の発電電力との和を計算し,これを環境貢献電力のデータとして表示し,また,環境貢献電力から二酸化炭素削減量や石油使用量などに変換して表示する自家発電システム。」

エ 新たに引用する特開2006-310780号公報(以下,「引用例4」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。(なお,下線は当審において付加したものである。)

(ア)【0002】から【0004】まで
「【背景技術】
【0002】
従来の太陽光発電システムにおける発電電力や売買電電力の表示方法について、図1に基づき説明する。
【0003】
太陽電池1により光電変換された発電電力は接続箱2にて集められ電力変換装置3に入力される。前記電力変換装置3は交流分電盤4を介して商用電源5あるいは家庭用負荷6に接続されており、前記発電電力を商用電源5に逆潮流あるいは家庭用負荷6へ電力供給を行なうものである。太陽光発電システムでは前記太陽電池1の発電電力等を見るために電力変換装置3の本体に内蔵もしくは、表示装置7のような表示部を電力変換装置3とは別設置で設け、発電状況や異常運転が視認できるようにしている。一般に、電力変換装置3は放熱や屋内電気配線との接続の兼ね合いから、天井近くや玄関ホールや洗面所などの、接続箱2からの送電線を引き込みやすく、かつ交流分電盤4に近い場所に設置される場合が多く、電力変換装置3本体に設けられた表示部では利用者が意図して確認しに行かない限り視認しにくい。そこで、利用者が見やすいように前記表示装置7を前記電力変換装置3とは別設置にて備え、視認の容易な場所に設置するのが好適である。一方、前記表示装置7と前記電力変換装置3を分離した場合には、発電電力などの情報をやり取りするデータ通信用のケーブルの引き回しが家屋内の美観を損なったり、壁内配線の施工が困難であったり、信号減衰による引き回し距離の制限などの問題が生じる。そこで、前記電力変換装置3内もしくは外部に送信部8を設け、前記表示装置7内もしくは外部に受信部9を備えることにより無線通信にてデータの転送を行い、表示部9に発電電力や積算電力などの情報を表示するようにしたものが好適である。
【0004】
このようにして視認されやすい環境において表示装置7に定期的に発電電力や消費電力をグラフや数値で表示し、視覚的に消費、発電電力の差を認識し、CO2排出量の削減効果や、電力の無駄遣いを知ることで、利用者の節電への意識を常に喚起するように働きかけることができる。」

(イ)上記(ア)から,引用例4には以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「太陽光発電の発電電力や家庭用負荷の消費電力をグラフや数値で表示し,視覚的に消費,発電電力の差を認識し,CO2排出量の削減効果や,電力の無駄遣いを知ることで,利用者の節電への意識を喚起すること。」

(4) 対比
そこで,補正発明と引用発明1とを比較する。

ア 引用発明1の「電力量計12」は,「各住戸6の電力使用量(以下、住戸対応電力使用量という。)を検出する」ものである。この住戸対応電力使用量は,「住戸対応電力使用量に対応する量のCO_(2)の排出量を算出し、今月の本日までのCO_(2)の排出量及び先月のCO_(2)の排出量について」表示することにも利用されている。したがって,住戸対応電力使用量は「環境負荷の指標値」といえる。
また,補正発明における「環境負荷の指標値」について,明細書【0030】には,「発電装置や蓄電装置を備えていない需要家では、計測量は消費量のみであり」,「計測量のうち、消費量は涸渇性エネルギー資源を消費した量の指標値になり、供給量は再生可能エネルギー資源を利用した量の指標値になる。言い換えると、計測量は、需要家における環境負荷の指標値として用いることが可能である。」と記載されているから,発電装置等を備えない場合において,消費量は「環境負荷の指標値」である。
よって,引用発明1の「電力量計12」は,住戸対応電力使用量を補正発明の「需要家におけるエネルギー資源の利用に関する計測量を環境負荷の指標値」として計測している。

そして,引用発明1の「コントローラ9」は,「住戸対応電力使用量データを15分間隔で住戸6毎に読取って住戸6毎に蓄積」し,住戸6ごとの住戸対応電力使用量データを1時間ごとに「管理センター3」へ転送している。

したがって,引用発明1の「管理センター3」は,各住戸6の電力量計12で測定した「需要家におけるエネルギー資源の利用に関する計測量を環境負荷の指標値」を取得しているから,補正発明の「需要家におけるエネルギー資源の利用に関する計測量を環境負荷の指標値として取得する取得部」に対応する構成を備えているといえる。

イ 引用発明1の「管理センター3」は,「当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量,当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量の平均値」を用いて住戸対応電力削減量データの演算を行っている。よって,「管理センター3」は,この演算に使用する情報を蓄積しているといえる。

したがって,引用発明1の「管理センター3」は,補正発明の「前記取得部が取得した前記計測量を前記需要家に対応付けて記憶する記憶部」に対応する構成を備えているといえる。

ウ 引用発明1の「管理センター3」は,「当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量,当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量の平均値,又は,マンション1全体における昨年までの同月の電気使用量の平均値」を削減量算出用基準使用量として,住戸対応電力削減量データの演算を行っている。ここで,「マンション1全体における昨年までの同月の電気使用量の平均値」及び「当該住戸6における昨年までの同月の電気使用量の平均値」は,それぞれ,補正発明の「一定の期間における複数の需要家の計測量から統計的に得られる標準的な計測量」及び「前記需要家の過去の一定の期間における前記計測量」に当たる。

したがって,引用発明1の「管理センター3」は,補正発明の「一定の期間における複数の需要家の計測量から統計的に得られる標準的な計測量または前記需要家の過去の一定の期間における前記計測量に基づいて規定した基準値が格納される基準値記憶部」に対応する構成を備えているといえる。

エ 引用発明1の「管理センター3」は,「先月の電気使用量を削減量算出用基準使用量(目標となる基準使用量)と比較して電力削減量(以下、住戸対応電力削減量データという。)を算出」しており,また,「住戸対応電力削減量に対応する商品又はサービスに還元可能の削減量ポイント情報を算出」している。ここで,引用発明1の「電気使用量」及び「削減量算出用基準使用量」は,補正発明の「計測量」及び「基準値」に相当し,引用発明1の「住戸対応電力削減量」及び「削減量ポイント情報」は,補正発明の「環境負荷の削減に関する貢献度」及び「省エネ活動ポイント」に相当する。

したがって,引用発明1の「管理センター3」は,補正発明の「前記記憶部が記憶している前記計測量と前記基準値記憶部に格納された前記基準値との比較により、環境負荷の低減に関する貢献度を表す省エネ活動ポイントを算出する演算部」に対応する構成を備えているといえる。

オ 引用発明1の「管理センター3」は,削減量ポイント情報を「各住戸6のパソコン22(情報機器)の表示部25に表示」させる。

したがって,引用発明1の「表示部25」は,補正発明の「前記演算部が求めた前記需要家ごとの前記省エネ活動ポイントを当該需要家の利用者機器に提示する提示部」に対応する構成を備えているといえる。

カ 上記ア?オで対比したように,引用発明1の「管理センター3」は,補正発明に係る各種構成を備えており,また,電力削減量を算出する等のいわゆる省エネ活動を管理しているという観点において,補正発明の「省エネ活動管理装置」に対応するものといえる。

キ 以上ア?カから,補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

(ア) 一致点
「需要家におけるエネルギー資源の利用に関する計測量を環境負荷の指標値として取得する取得部と,
前記取得部が取得した前記計測量を前記需要家に対応付けて記憶する記憶部と,
一定の期間における複数の需要家の計測量から統計的に得られる標準的な計測量または前記需要家の過去の一定の期間における前記計測量に基づいて規定した基準値が格納される基準値記憶部と,
前記記憶部が記憶している前記計測量と前記基準値記憶部に格納された前記基準値との比較により,環境負荷の低減に関する貢献度を表す省エネ活動ポイントを算出する演算部と,
前記演算部が求めた前記需要家ごとの前記省エネ活動ポイントを当該需要家の利用者機器に提示する提示部とを備えることを特徴とする省エネ活動管理装置。」

(イ) 相違点
補正発明の計測量が,「少なくとも発電装置を備える需要家において、前記計測量は、前記需要家におけるエネルギー資源の消費量、および前記需要家における前記発電装置による電力の供給量である」のに対し,引用発明1は,各住戸において,発電装置を備えておらず,「電力量計12」は,各住戸における発電装置による電力の供給量を計測せず,「管理センター3」は発電装置による電力の供給量を取得しない点。

(5) 相違点に係る判断
上記(3)ウ及びエに示すとおり,住戸に太陽光発電など自家発電装置を備え,二酸化炭素排出量の削減量などを求めるに当たり,これも考慮することは,出願当時において周知技術であったといえる。
ここで,引用発明2は,上記(3)イに示したとおり,二酸化炭素排出削減システムであって,消費電力の削減値及び消費電力の削減値から求めた二酸化炭素排出削減量を公表することによって,ユーザに,二酸化炭素排出削減に協力して実行させるという意思を持たせるものである。また,消費電力の削減値を求めるに当たり,その消費電力として,太陽電池による発電電力値を差し引いたものとしており,これは,「少なくとも発電装置を備える需要家において」、「前記需要家におけるエネルギー資源の消費量、および前記需要家における前記発電装置による電力の供給量」を計測し,それに基づいて消費電力を求めているといえる。

そして,引用発明1と引用発明2とは,ユーザに電力使用量に関する情報を表示し,二酸化炭素の削減効果を図るという課題で一致し,また,住戸から電力使用量を収集し,基準値と比較して電力使用量の削減値を求め,その結果をユーザに提供するという機能でも一致している。

したがって,引用発明1において,太陽光発電など自家発電装置がある場合に,これも考慮することは当然である。
してみると,引用発明1の「電力量計12」に代えて,引用発明2の「電力計測器2」から計測量を得て,引用発明1の「管理センター」がこれを得るようにして,相違点に係る補正発明の構成をなすことは,当業者にとって容易になし得たことである。また,相違点に係る効果は,引用発明1及び引用発明2により推測可能なものである。

なお,請求人は,審判請求書の3.(4)において「引用文献2に記載の構成は、複数のユーザーを対象とし、複数のユーザー全体の消費エネルギーの削減値と二酸化炭素排出量をユーザーに公表して知らせるようになされたものであるため、引用文献2の技術を引用文献1に適用することは困難であると思料する。」と述べている。しかしながら,上記(3)イ(ウ)で摘記したように,引用例2は,「第1記憶部に記憶されたデータに基づいて、ユーザー宅間での比較や分析、その公表が行われるようになされていてもよい」と記載され,ユーザ宅ごとのデータの利用についても示唆がある。よって,上記適用が困難であるという理由はない。

(6) 小括

以上のことから,補正発明は,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

本件補正は上記のとおり却下されたので,特許請求の範囲の請求項11に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,本件補正による補正前のものであり,以下のとおりである。

「コンピュータを、
需要家におけるエネルギー資源の利用に関する計測量を環境負荷の指標値として取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記計測量を前記需要家に対応付けて記憶する記憶部と、
一定の期間における複数の需要家の計測量から統計的に得られる標準的な計測量または前記需要家の過去の一定の期間における前記計測量に基づいて規定した基準値が格納される基準値記憶部と、
前記記憶部が記憶している前記計測量と前記基準値記憶部に格納された前記基準値との比較により、環境負荷の低減に関する貢献度を表す省エネ活動ポイントを算出する演算部と、
前記演算部が求めた前記需要家ごとの前記省エネ活動ポイントを当該需要家の利用者機器に提示する提示部と
を備える省エネ活動管理装置として機能させるためのプログラム。」

第4 引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は,上記第2.2.(3) 引用例」のアに記載したとおりである。

第5 対比・判断
1 対比
本願発明は,コンピュータに,上記「第2」で検討した補正発明から,「計測量」について,「少なくとも発電装置を備える需要家において、前記計測量は、前記需要家におけるエネルギー資源の消費量、および前記需要家における前記発電装置による電力の供給量である」との限定を省いた省エネ活動管理装置として機能させるためのプログラムである。

そうすると,本願発明と引用発明1とを対比すると,第2.2.(4)のアからカまでに示したとおりであり,本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

ア 一致点
「需要家におけるエネルギー資源の利用に関する計測量を環境負荷の指標値として取得する取得部と,
前記取得部が取得した前記計測量を前記需要家に対応付けて記憶する記憶部と,
一定の期間における複数の需要家の計測量から統計的に得られる標準的な計測量または前記需要家の過去の一定の期間における前記計測量に基づいて規定した基準値が格納される基準値記憶部と,
前記記憶部が記憶している前記計測量と前記基準値記憶部に格納された前記基準値との比較により,環境負荷の低減に関する貢献度を表す省エネ活動ポイントを算出する演算部と,
前記演算部が求めた前記需要家ごとの前記省エネ活動ポイントを当該需要家の利用者機器に提示する提示部とを備えることを特徴とする省エネ活動管理装置。」

イ 相違点
本願発明は,「省エネ活動管理装置」を,「コンピュータ」を「省エネ活動管理装置として機能させるためのプログラム」により実現するのに対し,引用発明1は,「省エネ活動管理装置」を装置として実現する点。

2 相違点に係る判断
「省エネ活動管理装置」は,取得部により取得した情報を記憶し,演算し,提示するものであって,このような構成は,一般的なコンピュータをプログラムにより機能させることができるものである。そして,コンピュータを,このような構成からなる情報処理の専用装置として機能させるプログラムを実行することにより,その専用装置と同等の機能を実現することは,情報処理技術の分野において,文献を挙げるまでもなく技術常識である。

3 小括
上述のとおりであるから,本願発明は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

<<付言>>
本願の請求項1に係る発明は,上記「第2.2.(1)ア.<補正前>」に記載したとおりであり,上記「第2」で検討した補正発明から,「計測量」について,「少なくとも発電装置を備える需要家において、前記計測量は、前記需要家におけるエネルギー資源の消費量、および前記需要家における前記発電装置による電力の供給量である」との限定を省いたものである。

そうすると,請求項1に係る発明と引用発明1とは,第2.2.(4)キ(ア)で示した点で一致し,相違点を見いだすことができない。
 
審理終結日 2017-03-24 
結審通知日 2017-03-28 
審決日 2017-04-10 
出願番号 特願2011-245921(P2011-245921)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 裕子松田 直也  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 星野 昌幸
相崎 裕恒
発明の名称 省エネ活動管理装置、省エネ活動管理方法、プログラム  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 北出 英敏  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  

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