ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G |
---|---|
管理番号 | 1328744 |
審判番号 | 不服2016-4693 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-31 |
確定日 | 2017-05-30 |
事件の表示 | 特願2012- 37992「機械的安定性の改善された固体電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-191198〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年2月7日(パリ条約による優先権主張2011年3月11日 米国(US))の出願であって、同年5月11日付けで翻訳文が提出され、平成27年5月20日付けで拒絶理由通知がなされたのに対して、同年8月25日付けで手続補正がなされたが、同年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年3月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、同年5月11日付けで審判請求の理由が補充されたものである。 第2 平成28年3月31日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年3月31日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成28年3月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、請求項1については、 本件補正前(平成27年8月25日付け手続補正)に、 「【請求項1】 上面と、下面と、前面と、後面とを形成し、アノードと、該アノードの上に重なる誘電体層と、固体電解質を含む該誘電体層の上に重なるカソードと、縦方向に延びる該アノードに電気的に接続したアノードリードとを含む固体電解コンデンサ要素と、 前記アノードリードに電気的に接続したアノード端子と、 前記カソードに電気的に接続され、かつ前記コンデンサ要素の前記下面とほぼ直角に位置決めされ前記コンデンサ要素の前記後面に隣接する直立部分と該コンデンサ要素の該下面とほぼ平行に位置決めされた第1及び第2の平面部分とを含むカソード端子であって、該第1及び第2の平面部分が、該第1の平面部分が該第2の平面部分の垂直上方に配置されるように折り曲げ領域によって相互接続された前記カソード端子と、 前記コンデンサ要素を封入し、かつ前記アノード端子の少なくとも一部と前記カソード端子の前記第2の平面部分の少なくとも一部とを露出したままに残す成形材料と、 を含み、前記カソード端子の前記直立部分は、前記成形材料によって完全に封入されることを特徴とするコンデンサ。」 とあったところを、 「【請求項1】 上面と、下面と、前面と、後面とを形成し、アノードと、該アノードの上に重なる誘電体層と、固体電解質を含む該誘電体層の上に重なるカソードと、縦方向に延びる該アノードに電気的に接続したアノードリードとを含む固体電解コンデンサ要素と、 前記アノードリードに電気的に接続したアノード端子と、 前記カソードに電気的に接続され、かつ前記コンデンサ要素の前記下面とほぼ直角に位置決めされ前記コンデンサ要素の前記後面に隣接する直立部分と該コンデンサ要素の該下面とほぼ平行に位置決めされた第1及び第2の平面部分とを含むカソード端子であって、該第1及び第2の平面部分が、該第1の平面部分が該第2の平面部分の垂直上方に配置されるように折り曲げ領域によって相互接続された前記カソード端子と、 前記コンデンサ要素を封入し、かつ前記アノード端子の少なくとも一部と前記カソード端子の前記第2の平面部分の少なくとも一部とを露出したままに残す成形材料と、 を含み、 前記カソード端子の前記直立部分は、前記成形材料によって完全に封入され、 前記第1の平面部分は、導電性接着剤により前記コンデンサ要素の前記下面と接続され、前記第2の平面部分は、絶縁材料を通じて前記コンデンサ要素の前記下面と接続されることを特徴とするコンデンサ。」 とするものである。 2.補正の目的要件について 補正された請求項1に係る発明は、補正前の請求項1を 「 前記第1の平面部分は、導電性接着剤により前記コンデンサ要素の前記下面と接続され、前記第2の平面部分は、絶縁材料を通じて前記コンデンサ要素の前記下面と接続され」と、 第1の平面部分とコンデンサ要素の下面、第2の平面部分とコンデンサ要素の下面の接続について限定したものである。 よって、本件補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。 3.引用例 (1)引用例1 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された引用文献である国際公開第2010/076883号(2010年7月8日公開。以下、「引用例1」という。)には、「固体電解コンデンサ」に関して図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 ア.「[0041] 図1Aはこの発明の実施形態である固体電解コンデンサを示す平面図、図1Bは側面図である。両図に示すように、この固体電解コンデンサは、コンデンサ素子(1)と、陽極リード端子(2)と、陰極リード端子(3)と、外装封止体(4)とを基本的な構成要素として備えている。なお以下の説明においては、発明の理解を容易にするため、図1の紙面に向かって左側を「前側」、右側を「後側」、上下方向を「両側方向(幅方向)」とし、図2の紙面に向かって上下方向を「上下方向」として説明する。 [0042] 図5に示すようにコンデンサ素子(1)は、陽極としてのTa(タンタル)の焼結体(11)を備えている。この焼結体(11)には、軸心に沿って陽極リード線(12)が挿着されており、そのリード線(12)の一部(前部)が、焼結体(11)の前端面から前方へ突出するように配置されている。さらに焼結体(11)の外周には、陽極リード線(12)の先端部を除いて、酸化膜からなる誘電体層(13)、ポリピロール等の導電性高分子からなる半導体層(14)が被覆され、さらに最外周には、カーボンペースト層および銀ペースト層からなる陰極層(15)が被覆されている。」 イ.「[0044] この構成の陽極リード端子(2)における立設接続片(22)の先端縁(上端縁)が陽極リード線(12)に電気的に接触した状態で溶接によって固定されている。」 ウ.「[0055] 図1に示すように陰極リード端子(3)は、外装封止体(4)の後部下面から後方にかけて水平に配置される平板状の陰極ベースフレーム(31)と、コンデンサ素子(1)の下面に沿って配置され、かつ外装封止体(4)の下端から上方に浮き上がるように配置された平板状の平坦接続片(32)と、平坦接続片(32)および陰極ベースフレーム(31)間を繋ぐ中継片(35)と、陰極ベースフレーム(31)の両側縁から上方に立ち上がるように設けられ、かつコンデンサ素子(1)の後端面両側に沿って配置される両側ガイド片(33)(33)とを一体に有している。さらに陰極ベースフレーム(31)の下面および後側部は、外装封止体(4)の外部に露出した状態に配置されており、この露出部分が露出端子部(34)として構成されている。 [0056] この構成の陰極リード端子(3)における平坦接続片(32)の上面に、銀ペースト製接着剤によってコンデンサ素子(1)の下面に接着固定され、両側ガイド片(33)(33)がコンデンサ素子(1)の後端面両側に沿って配置される。 [0057] 本実施形態において、陰極リード端子(3)は図3Bに示すように、原板を打ち抜いて得られた展製製品(ブランク製品3a)を、曲げ加工することによって得られるものである。この展開製品(3a)は、陰極ベースフレーム(31)に相当する陰極ベースフレーム領域(31a)と、その陰極ベースフレーム領域(31a)の前端縁に一体形成された中継片領域(35a)と、その中継片領域(35a)の前端縁に前方に延長するように一体形成された平坦接続片領域(32a)と、陰極ベースフレーム領域(31a)の両側縁に両側方に延長するように一体形成されたガイド片領域(33a)(33a)とを備えている。さらに中継片領域(31a)の両側縁部にはその一部が切り欠かれるようにして切欠凹部(36a)(36a)が形成されている。」 エ.「[0058] 以上の構成の展開製品(3a)において、両側のガイド片領域(33a)(33a)を上方に曲げ起こすとともに、平坦接続片領域(32a)を上方へ所定量押し出すように、中継片領域(35a)の前後両端縁を曲げ加工することによって、上記構成の陰極リード端子(3)を作製するものである。 [0059] こうして得られた陰極リード端子(3)における平坦接続片(22)の上面に、コンデンサ素子(1)の下面が銀ペースト製の接着剤を介して接着固定される。このとき、陽極リード端子(3)の両側ガイド片(33)(33)が、コンデンサ素子(1)の後端面両側に接触するように、コンデンサ素子(1)の後端面に沿って垂直に配置される。 [0060] また本実施形態においては、リード端子(2)(3)付きのコンデンサ素子(1)が、そのリード端子(2)(3)の露出端子部(24)(34)を除いて、合成樹脂としてのエポキシ樹脂によって被覆成形されて、外装封止体(4)が形成され、これにより固体電解コンデンサが製作されるものである。」 上記アないしエの記載から、引用例1には以下の事項が記載されている。 ・上記アによれば、固体電解コンデンサは、コンデンサ素子(1)と、陽極リード端子(2)と、陰極リード端子(3)と、外装封止体(4)とを基本的な構成要素として備えているものである。そして、コンデンサ素子(1)は、陽極としてのTa(タンタル)の焼結体(11)を備え、焼結体(11)には、軸心に沿って陽極リード線(12)が挿着されており、そのリード線(12)の一部(前部)が、焼結体(11)の前端面から前方へ突出するように配置されている。さらに焼結体(11)の外周には、陽極リード線(12)の先端部を除いて、酸化膜からなる誘電体層(13)、ポリピロール等の導電性高分子からなる半導体層(14)が被覆され、さらに最外周には、カーボンペースト層および銀ペースト層からなる陰極層(15)が被覆されている。 ・上記イによれば、陽極リード端子(2)における立設接続片(22)の先端縁(上端縁)が、陽極リード線(12)に電気的に接触した状態で溶接によって固定されている。 ・上記ウによれば、陰極リード端子(3)は、外装封止体(4)の後部下面から後方にかけて水平に配置される平板状の陰極ベースフレーム(31)と、コンデンサ素子(1)の下面に沿って配置され、かつ外装封止体(4)の下端から上方に浮き上がるように配置された平板状の平坦接続片(32)と、平坦接続片(32)および陰極ベースフレーム(31)間を繋ぐ中継片(35)と、陰極ベースフレーム(31)の両側縁から上方に立ち上がるように設けられ、かつコンデンサ素子(1)の後端面両側に沿って配置される両側ガイド片(33)(33)とを一体に有しており、陰極ベースフレーム(31)の下面および後側部は、外装封止体(4)の外部に露出した状態に配置されており、この露出部分が露出端子部(34)として構成され、陰極リード端子(3)における平坦接続片(32)の上面に、銀ペースト製接着剤によってコンデンサ素子(1)の下面に接着固定されている。 ・上記エによれば、陰極リード端子(3)は、両側のガイド片領域(33a)(33a)を上方に曲げ起こすとともに、平坦接続片領域(32a)を上方へ所定量押し出すように、中継片領域(35a)の前後両端縁を曲げ加工することによって作製され、陰極リード端子(3)における平坦接続片(32)の上面に、コンデンサ素子(1)の下面が銀ペースト製の接着剤を介して接着固定され、陰極リード端子(3)の両側ガイド片(33)(33)が、コンデンサ素子(1)の後端面両側に接触するように、コンデンサ素子(1)の後端面に沿って垂直に配置される。(下線部分の記載について、引用例1には、「平坦接続片(22)」、「陽極リード端子(3)」とあるが、前後の記載を参酌すれば、ぞれぞれ、「平坦接続片(32)」、「陰極リード端子(3)」の誤記と認められる。)また、リード端子(2)(3)付きのコンデンサ素子(1)が、そのリード端子(2)(3)の露出端子部(24)(34)を除いて、合成樹脂としてのエポキシ樹脂によって被覆成形されて、外装封止体(4)が形成される。 以上の点を踏まえて、上記記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「コンデンサ素子(1)と、陽極リード端子(2)と、陰極リード端子(3)と、外装封止体(4)とを基本的な構成要素として備える固体電解コンデンサであって、 コンデンサ素子(1)は、陽極としてのTa(タンタル)の焼結体(11)を備え、焼結体(11)には、軸心に沿って陽極リード線(12)が挿着されており、そのリード線(12)の一部(前部)が、焼結体(11)の前端面から前方へ突出するように配置され、焼結体(11)の外周には、陽極リード線(12)の先端部を除いて、酸化膜からなる誘電体層(13)、ポリピロール等の導電性高分子からなる半導体層(14)が被覆され、さらに最外周には、カーボンペースト層および銀ペースト層からなる陰極層(15)が被覆され、 陽極リード端子(2)における立設接続片(22)の先端縁(上端縁)が、陽極リード線(12)に電気的に接触した状態で溶接によって固定され、 陰極リード端子(3)は、両側ガイド片(33)(33)が、コンデンサ素子(1)の後端面両側に接触するように、コンデンサ素子(1)の後端面に沿って垂直に配置され、 外装封止体(4)の後部下面から後方にかけて水平に配置される平板状の陰極ベースフレーム(31)と、コンデンサ素子(1)の下面に沿って配置され、かつ外装封止体(4)の下端から上方に浮き上がるように配置された平板状の平坦接続片(32)と、平坦接続片(32)および陰極ベースフレーム(31)間を繋ぐ中継片(35)と、陰極ベースフレーム(31)の両側縁から上方に立ち上がるように設けられ、かつコンデンサ素子(1)の後端面両側に沿って配置される両側ガイド片(33)(33)とを一体に有しており、 リード端子(2)(3)付きのコンデンサ素子(1)が、そのリード端子(2)(3)の露出端子部(24)(34)を除いて、合成樹脂としてのエポキシ樹脂によって被覆成形されて、外装封止体(4)が形成され、 陰極ベースフレーム(31)の下面および後側部は、外装封止体(4)の外部に露出した状態に配置されており、この露出部分が露出端子部(34)として構成され、 陰極リード端子(3)における平坦接続片(32)の上面に、銀ペースト製接着剤によってコンデンサ素子(1)の下面に接着固定されている固体電解コンデンサ。」 4.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「コンデンサ素子(1)」、「陽極としてのTa(タンタル)の焼結体(11)」、「陽極リード線(12)」、「酸化膜からなる誘電体層(13)」、「ポリピロール等の導電性高分子からなる半導体層(14)が被覆され、さらに最外周には、カーボンペースト層および銀ペースト層からなる陰極層(15)」は、それぞれ、本願補正発明の「固体電解コンデンサ要素」、「アノード」、「アノードリード」、「誘電体層」、「固体電解質を含む誘電体層の上に重なるカソード」に相当する。また、引用発明の「軸心に沿った」方向は、本願補正発明の「縦方向」に相当する。 なお、引用例1の[図1A]、[図1B]を鑑みれば、コンデンサ素子(1)が、本願補正発明の「固体電解コンデンサ要素」の「上面」、「下面」、「前面」、「後面」に相当する構成を有することは明らかである。 したがって、引用発明の「陽極としてのTa(タンタル)の焼結体(11)を備え、焼結体(11)には、軸心に沿って陽極リード線(12)が挿着されており、そのリード線(12)の一部(前部)が、焼結体(11)の前端面から前方へ突出するように配置され、焼結体(11)の外周には、陽極リード線(12)の先端部を除いて、酸化膜からなる誘電体層(13)、ポリピロール等の導電性高分子からなる半導体層(14)が被覆され、さらに最外周には、カーボンペースト層および銀ペースト層からなる陰極層(15)が被覆され」る「コンデンサ素子(1)」が、本願補正発明の「上面と、下面と、前面と、後面とを形成し、アノードと、該アノードの上に重なる誘電体層と、固体電解質を含む該誘電体層の上に重なるカソードと、縦方向に延びる該アノードに電気的に接続したアノードリードとを含む固体電解コンデンサ要素」に相当する。 b.引用発明の「陽極リード端子(2)」は、本願補正発明の「アノード端子」に相当する。 また、引用発明の「陽極リード端子(2)における立設接続片(22)の先端縁(上端縁)が、陽極リード線(12)に電気的に接触した状態で溶接によって固定され」ることは、本願補正発明の「前記アノードリードに電気的に接続したアノード端子」を有することに相当する。 c.引用発明の「両側ガイド片(33)(33)」 は、コンデンサ素子(1)の後端面両側に接触するように、コンデンサ素子(1)の後ろ端面に沿って垂直に配置されることから、本願補正発明の「コンデンサ要素の後面に隣接する直立部分」に相当する。 また、引用発明の「陰極ベースフレーム(31)」、「平坦接続片(32)」、「中継片(35)」が、それぞれ、本願補正発明の「第2の平面部」、「第1の平面部」、「折り曲げ領域」に相当する。 したがって、引用発明の「陰極リード端子(3)は、両側ガイド片(33)(33)が、コンデンサ素子(1)の後端面両側に接触するように、コンデンサ素子(1)の後端面に沿って垂直に配置され、外装封止体(4)の後部下面から後方にかけて水平に配置される平板状の陰極ベースフレーム(31)と、コンデンサ素子(1)の下面に沿って配置され、かつ外装封止体(4)の下端から上方に浮き上がるように配置された平板状の平坦接続片(32)と、平坦接続片(32)および陰極ベースフレーム(31)間を繋ぐ中継片(35)と、陰極ベースフレーム(31)の両側縁から上方に立ち上がるように設けられ、かつコンデンサ素子(1)の後端面両側に沿って配置される両側ガイド片(33)(33)とを一体に有して」いることは、本願補正発明の「前記カソードに電気的に接続され、かつ前記コンデンサ要素の前記下面とほぼ直角に位置決めされ前記コンデンサ要素の前記後面に隣接する直立部分と該コンデンサ要素の該下面とほぼ平行に位置決めされた第1及び第2の平面部分とを含むカソード端子であって、該第1及び第2の平面部分が、該第1の平面部分が該第2の平面部分の垂直上方に配置されるように折り曲げ領域によって相互接続された前記カソード端子」を有していることに相当する。 d.引用発明の「リード端子(2)(3)付きのコンデンサ素子(1)が、そのリード端子(2)(3)の露出端子部(24)(34)を除いて、合成樹脂としてのエポキシ樹脂によって被覆成形されて、外装封止体(4)が形成され」ることから、引用発明の「合成樹脂としてのエポキシ樹脂」は、本願補正発明の「成形材料」に相当する。そして、引用発明の「露出端子(24)(34)」は、本願補正発明の「アノード端子の少なくとも一部と前記カソード端子の前記第2の平面部分の少なくとも一部」に相当する。 さらに、引用発明は、リード端子(2)(3)の露出端子部(24)(34)を除いて、合成樹脂としてのエポキシ樹脂によって被覆成形されて、外装封止体(4)が形成されることを鑑みれば、本願補正発明の「前記カソード端子の前記直立部分は、前記成形材料によって完全に封入され」る構成を有しているといえる。 また、引用発明の「銀ペースト製接着剤」は、本願補正発明の「導電性接着剤」に相当する。 したがって、引用発明の「陰極ベースフレーム(31)の下面および後側部は、外装封止体(4)の外部に露出した状態に配置されており、この露出部分が露出端子部(34)として構成され、陰極リード端子(3)における平坦接続片(32)の上面に、銀ペースト製接着剤によってコンデンサ素子(1)の下面に接着固定され」ることは、本願補正発明の「前記コンデンサ要素を封入し、かつ前記アノード端子の少なくとも一部と前記カソード端子の前記第2の平面部分の少なくとも一部とを露出したままに残す成形材料と、を含み、前記カソード端子の前記直立部分は、前記成形材料によって完全に封入され、前記第1の平面部分は、導電性接着剤により前記コンデンサ要素の前記下面と接続される」ことに相当する。 ただし、引用例1の図1Aおよび図1Bを参照し、引用発明の「リード端子(2)(3)付きのコンデンサ素子(1)が、そのリード端子(2)(3)の露出端子部(24)(34)を除いて、合成樹脂としてのエポキシ樹脂によって被覆成形されて、外装封止体(4)が形成され」る点、引用発明の「合成樹脂としてのエポキシ樹脂」が、本願補正発明の「絶縁材料」に相当する点を勘案すると、「陰極ベースフレーム(31)」と「コンデンサ素子(1)」は「絶縁材料」によって被覆されているといえるが、「陰極ベースフレーム(31)」と「コンデンサ素子(1)」の下面が「絶縁材料」で接続されているとは特定されていない。 e.引用発明の「固体電解コンデンサ」は、コンデンサ素子(1)と、陽極リード端子(2)と、陰極リード端子(3)と、外装封止体(4)とを基本的な構成要素として備えることから、本願補正発明の「コンデンサ」に相当する。 そうすると、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「上面と、下面と、前面と、後面とを形成し、アノードと、該アノードの上に重なる誘電体層と、固体電解質を含む該誘電体層の上に重なるカソードと、縦方向に延びる該アノードに電気的に接続したアノードリードとを含む固体電解コンデンサ要素と、 前記アノードリードに電気的に接続したアノード端子と、 前記カソードに電気的に接続され、かつ前記コンデンサ要素の前記下面とほぼ直角に位置決めされ前記コンデンサ要素の前記後面に隣接する直立部分と該コンデンサ要素の該下面とほぼ平行に位置決めされた第1及び第2の平面部分とを含むカソード端子であって、該第1及び第2の平面部分が、該第1の平面部分が該第2の平面部分の垂直上方に配置されるように折り曲げ領域によって相互接続された前記カソード端子と、 前記コンデンサ要素を封入し、かつ前記アノード端子の少なくとも一部と前記カソード端子の前記第2の平面部分の少なくとも一部とを露出したままに残す成形材料と、 を含み、 前記カソード端子の前記直立部分は、前記成形材料によって完全に封入され、 前記第1の平面部分は、導電性接着剤により前記コンデンサ要素の前記下面と接続される、 ことを特徴とするコンデンサ。」 <相違点> 本願補正発明は、「前記第2の平面部分は、絶縁材料を通じて前記コンデンサ要素の前記下面と接続される」ものであるのに対して、引用発明は、当該構成について特定されていない点。 5.判断 以下、相違点について検討する。 第1の平面部分と第2の平面部分から構成される陰極端子において、陰極端子の第2の平面部分をコンデンサ素子の下側に位置させ、コンデンサ素子を外装樹脂で被覆することは、例えば、特開2009-218502号公報(特に、図1 参照)、特開2010-109005号公報(特に、図1 参照)、特開2009-129994号公報(特に、図1 参照)、特開2004-55889号公報(特に、図1 参照)に記載のように周知であり、引用発明において、「陰極ベースフレーム(31)」を、「コンデンサ素子(1)」の下側に位置させることは当業者であれば容易に想到し得ることである。該構成を採用した際には、「コンデンサ素子(1)」の下面に、「陰極ベースフレーム(31)」が対向することとなり、「陰極ベースフレーム(31)」と「コンデンサ素子(1)」の下面は「合成樹脂としてのエポキシ樹脂」で被覆され接続されることになるから、引用発明に周知技術を採用することで、相違点の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。 なお、審判請求人は、審判請求書の手続補正書において、「引例1は、本発明のように、カソード端子の平面部分の一部を絶縁材料を通じてコンデンサ要素の下面と接続するという技術思想については、何ら開示も示唆もしていません。」、また、平成28年11月17日付けの上申書において、「このように加工を行う場合には、本発明のように、第2の平面部分がコンデンサ要素の下面の下に配置されることとはならないものと思料いたします。なぜなら、ガイド片領域(33a)(33a)は、コンデンサ素子(1)に接触するように、またコンデンサ素子(1)の後端面に沿って配置されるように、上方に曲げ起こされるため、第2の平面部分をどのように想定したとしても、コンデンサ要素の下面の下に配置されることにはならないからです。」と主張している。 しかしながら、上記において検討したとおり、引用発明において、「コンデンサ素子(1)」の下面に、陰極端子の第2の平面部分である「陰極ベースフレーム(31)」を対向するように配置する周知技術を適用することで、「陰極ベースフレーム(31)」と「コンデンサ素子(1)」の下面を「合成樹脂としてのエポキシ樹脂」で接続するようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、引用発明に周知技術を適用する際に、「コンデンサ素子(1)」の後端面両側に沿って「両側ガイド片(33)(33)」が配置されるように「陰極ベースフレーム(31)」に相当する「陰極ベースフレーム領域(31a)」に対する「ガイド片領域(33a)(33a)」の位置を調整することは当業者であれば適宜なし得たことであり、審判請求人の主張を採用することはできない。 したがって、本願補正発明は、引用発明および周知の技術事項により当業者が容易になし得たものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明および周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明および周知の技術事項により容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成28年3月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本 願の請求項1ないし23に係る発明は、平成27年8月25日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1.補正後の本願発明」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例およびその記載事項は、上記「第2 3.引用例」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、本願補正発明における 「 前記第1の平面部分は、導電性接着剤により前記コンデンサ要素の前記下面と接続され、前記第2の平面部分は、絶縁材料を通じて前記コンデンサ要素の前記下面と接続され」るとの 第1の平面部分とコンデンサ要素の下面、第2の平面部分とコンデンサ要素の下面の接続についての限定事項を削除したものである。 本願発明と引用発明を対比すると、上記「第2 4.対比」に記載したとおり、両者の間に相違点は存在しない。 そうすると、本願発明は、引用発明と相違する点が存在せず、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-12-05 |
結審通知日 | 2016-12-12 |
審決日 | 2017-01-17 |
出願番号 | 特願2012-37992(P2012-37992) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G) P 1 8・ 113- Z (H01G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 晃洋 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 安藤 一道 |
発明の名称 | 機械的安定性の改善された固体電解コンデンサ |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 大塚 文昭 |