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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F16C
管理番号 1328793
審判番号 不服2016-4447  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-24 
確定日 2017-06-23 
事件の表示 特願2014-543645「パターン付ロール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/045693、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 本願は、2014年8月22日(優先権主張2013年9月30日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月30日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年8月25日に手続補正がされ、平成27年12月28日付け(発送日:平成28年1月5日)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年3月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正され、平成28年11月7日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、平成28年12月22日に手続補正がされ、平成29年3月21日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、平成29年5月12日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成27年12月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-11に係る発明は、以下の刊行物A-Cに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物一覧
A.国際公開第2007/135901号
B.特開2013-118390号公報
C.特開2012-256078号公報

第3 当審拒絶理由1の概要
当審拒絶理由1の概要は次のとおりである。

1.請求項1-4について
請求項1-4に係る発明は「パターン付きロール」という物の発明であるが、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
しかし、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するとはいえず、請求項1-4に係る発明は明確でないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.請求項5-8について
本願請求項5-8に係る発明は、以下の刊行物1-3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物一覧
1.国際公開第2007/135901号(拒絶査定時の刊行物A)
2.特開2013-118390号公報(拒絶査定時の刊行物B)
3.特開2012-256078号公報(拒絶査定時の刊行物C)

第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成29年5月12日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-4は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
基材を準備する工程と、該基材の表面にDLC被覆膜を形成する工程と、該DLC被覆膜にパルスレーザを照射してレーザアブレーションを行い、前記DLC被覆膜を前記レーザアブレーションにより剥離せしめることにより該基材の表面は削られることなく該基材の表面にDLCパターンを形成する工程と、を含み、前記パルスレーザとしてナノ秒以下のパルス幅を有するレーザを用いることを特徴とし、エッチングを行うことのないパターン付ロールの製造方法。
【請求項2】
前記DLC被覆膜が形成される基材が、ニッケル、タングステン、クロム、チタン、銀、ステンレス鋼、鉄、銅、アルミニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の材料からなることを特徴とする請求項1記載のパターン付ロールの製造方法。
【請求項3】
前記基材が、ゴム又はクッション性を有する樹脂からなるクッション層を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン付ロールの製造方法。
【請求項4】
前記DLC被覆膜の厚さが、0.1μm?20μmであることを特徴とする請求項1?3いずれか1項記載のパターン付ロールの製造方法。」

第5 刊行物、引用発明等
1.刊行物1について
当審拒絶理由1に引用された刊行物1には、図1-2とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「[0018] 本発明方法を図1及び図2を用いて説明する。図1(a)において、符号10は版母材で、鉄、アルミニウム又は炭素繊維強化樹(CFRP)等からなる中空ロールが用いられる(図2のステップ100)。該版母材10の表面には銅メッキ処理によって銅メッキ層12が形成される(図2のステップ102)。前記銅メッキ層の厚さとしては50?200μmが好ましい。
[0019] 次に、グラビアセルがいまだ形成されていない銅メッキ層12の上に密着層13を形成し(図2のステップ103)、該密着層13の上にDLC被膜層14を形成する(図2のステップ104)。密着層の形成方法は特に限定されないが、DLC被膜層の形成方法と同種の方法を用いることにより、同一の装置が使用可能となり、好適である。DLC被膜層の形成方法としては、PVD法又はCVD法を用いることができる。」

(2)「[0030] 次に、図1(b)に示す如ぐDLC被膜層14にレーザー16によってレーザーアブレーションを直接行うことによりDLC被膜層14及び密着層13のグラビアセル形成部分18の除去を行う(図2のステップ106)。レーザーアブレーションの方法としては、従来公知のYAGレーザー装置によるレーザーアブレーションが好適に用いられる。しかし、YAGレーザー以外のレーザーによってもレーザーアブレーションが可能であることは勿論である。
[0031] 次に、DLC被膜層14及び密着層13が除去されたグラビアセル形成部分18の銅メッキ層12の除去によってグラビアセル20を形成する(図2のステップ108)。銅メッキ層12の除去によってグラビアセル20を形成する方法としては、従来公知のエッチング法や電子彫刻法の他に、レーザーアブレーションを用いた方法も採用できる。前記グラビアセルの深度は5?150μmが好ましい。
[0032]このようにして、図1(c)に示すような本発明のグラビア製版ロール22が得られる。」

(3)「[0038] このようにして形成されたDLC被膜層に対して、公知のYAGレーザー装置によるレーザーアブレーションによってDLC被膜層のグラビアセル形成部分の除去を行った。次に、該DLC被膜層が除去されたグラビアセル形成部分の銅メッキ層をエッチングにより除去し、グラビアセルを形成した。このようにして、グラビアセルの深度を10μm (実施例1)、18μm(実施例2)、30μm(実施例)とした3本のグラビア製版ロールを製造した。上記エッチングは、銅濃度60g/L、塩酸濃度35g/L、温度37℃、時間70秒の条件でスプレー方式によって行った。」

(4)上記記載事項(2)の「[0030] 次に、図1(b)に示す如くDLC被膜層14にレーザー16によってレーザーアブレーションを直接行うことによりDLC被膜層14及び密着層13のグラビアセル形成部分18の除去を行う(図2のステップ106)。」との記載に照らせば、図1(b)に記載された段階の工程においては、レーザーアブレーションにより銅メッキ層12の表面は削られることはないことが見て取れる。

したがって、上記記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載振りに則って整理すると、上記刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「版母材10の表面に銅メッキ処理によって銅メッキ層12を形成する工程と、該銅メッキ層12の上にDLC被膜層14を形成する工程と、該DLC被膜層14にレーザーを照射してレーザーアブレーションを行い、該DLC被膜層14を前記レーザーアブレーションにより除去することにより該銅メッキ層12の表面は削られることなく該銅メッキ層12の上にグラビアセル20を形成しない部分のDLC被膜層14を形成する工程と、銅メッキ層12をエッチングしてグラビアセル20を形成する工程とを含むグラビア製版ロールの製造方法。」

2.刊行物2について
当審拒絶理由1に引用された刊行物2には、以下の事項が記載されている。
「【0038】
本発明の好ましい実施形態において、上部導電層の機構を選択的にパターニングするために、好ましくはエキシマーレーザーからナノ秒レーザービーム(1n、5nsまたは10nsを超えるパルス幅を有する)の単一のショットを使用して、少なくとも1つの有機層の最上部に電子デバイスの上部導電層をパターニングする方法が提供される。単一のレーザーパルスを使用することによって、基本的にすべてのレーザーエネルギーが上部導電層の材料に吸収されることが確実となり、ならびに、下位有機層および/または導電層がさらされる残りのレーザー放射が、後者をアブレーションしたり、後者に損傷を与えたり、後者を劣化させたりするのに不十分なものとなることが確実となる。この加工では、活性下位機構に損傷を与えることなく(例えば、性能における相当な劣化および/または下位層の厚さの例えば10%の損失)、デバイスの上部層を選択的にパターニングすることが可能である。」

3.刊行物3について
当審拒絶理由1に引用された刊行物3には、以下の事項が記載されている。
「【0071】
<参考例1-1>
《メッキ層の形成》
JIS G 4804(1999年)に記載のSUM23Lからなる直径8mmの導電性支持体表面に、厚さ20μmの無電解ニッケルメッキ層を以下の条件で形成し、その後、150℃、30分間の加熱処理を施して導電性支持体1-Aを得た。
-メッキ条件-
・メッキ液(ニムデン NKY:上村工業社製)
・メッキ浴温度:90℃
・メッキ浴pH:4.8
・メッキ時間:30分
【0072】
《弾性層の形成》
下記組成の混合物をオープンロールで混練りし、導電性支持体1-Aの表面にプレス成形機を用いて弾性層を形成した後、加硫し、直径14mmの導電性弾性ロール1-Aを得た。」


4.その他の刊行物について(周知例として。)
刊行物4:特開2005-52507号公報
刊行物5:特開2006-260724号公報
刊行物6:特開2005-144528号公報

(1)刊行物4について
本願の優先日前に頒布された刊行物4には、以下の事項が記載されている。
「【0073】
6)上述の実施例においては、エッチング工程でプラズマエッチングによりDLC被膜を除去したが、レーザエッチングによりDLC被膜を除去してもよい。例えば、フェムト秒レーザ(レーザの波長が870nm,パルス幅がフェムト秒),紫外線レーザ(レーザの波長が紫外線領域。例えば、パルス幅が20?100nmであって、波長が353nmのTHG-YAGレーザ,波長が265nmのFHG-YAGレーザなどの固体レーザ),エキシマレーザ(波長が308nm若しくは248nm,パルス幅が20?30nm)などのレーザによりDLC被膜を除去してもよい。特に、複数のレーザによりDLC被膜に複数の方向からレーザを照射して油溜を形成することでエッチング工程を大幅に短時間化することができる。または、レーザを1つ設けレーザと摺動部品との相対位置を移動させることで油溜を形成するようにすることで、設備投資を削減することができる。」

(2)刊行物5について
本願の優先日前に頒布された刊行物5には、以下の事項が記載されている。
「【0023】
[フェムト秒レーザによる加工]
テクスチャ付コンタクト試験を行うにあたって、DLCパッドを加工する方法として、フェムト秒レーザ(光源Ti:Sapphire、波長800nm、パルス幅120fs)による加工を行った。フェムト秒レーザ加工を選らんだ理由としては、フェムト秒レーザはレーザ波長程度の非常に微細な周期的微細加工が可能であり、レーザ照射によるアブレーション現象が熱伝導機構よりも高速で起こるため周りの材料を変質させない特徴があり、ナノスケールのテクスチャ加工に優れているからである。フェムト秒レーザ加工の実験系を図2に、加工条件を表1に示す。
【表1】
【0024】
表1に示すように、スライダBに対して60μJ/pulse、スライダCに対して50μJ/pulse、スライダDに対して3.3μJ/pulseで、それぞれレーザを照射した。
なお、別の実験で、膜厚200ナノメートルのDLC薄膜コーティング層に対して、エネルギ9.4μJ/shot, ショット数1000ショットで微細突起を形成できることを確認済である。
加工においては2種類の加工方法を用いて、3種類のテクスチャ付スライダを作成した。すなわち、加工時において2枚の集光レンズ(f=50、100mm)によりレーザスポットを楕円形に変形させた後、f=150mmのレンズで集光させ、パッド上をある一定速度でスキャンさせてパッド全体にテクスチャを付ける方法と(スライダ B、C)、1枚のレンズのみでパッド全体を覆うようにレーザを集光し、パッドを固定したままレーザを照射し、一度にパッド全体にテクスチャを付ける方法の2種類である(スライダ D)。2種類の方法を用いた理由は、テクスチャ高さの高いものを作成する場合にはスキャンさせる方法で良いが、低いものを作成する場合、この方法では突起の占める面積割合が小さくなりすぎる傾向があった。そこで、静止させて作成する方法を試みた結果、多少改善される傾向が見られたためである。図3に突起の形状を示す。スライダ Aはテクスチャが付けられていないものである。本来、フェムト秒レーザ加工を行うと、微細な周期構造となるはずであるが、図3(b)?(d)、表2に示すように、DLCパッドの表面には無数の突起ができていた(スライダB,C,D)。
【表2】」

(3)刊行物6について
本願の優先日前に頒布された刊行物6には、以下の事項が記載されている。
「【0069】
7)上述のプレス金型の製造方法においては、集束イオンビーム法によって凹部10を形成したが、フェムト秒レーザ, エキシマレーザ, 紫外線レーザなどによるレーザエッチングによってDLC被膜又は金型部材の所望の領域を除去して凹部を形成してもよい。また、凹部の開口面積が大きい場合には、プラズマエッチングなどのエッチングによりDLC被膜の一部を除去して凹部を形成してもよい。尚、プラズマエッチングの場合、DLC被膜を残す部分を覆うマスクを行う必要があるが、ビームやレーザーによる場合はマスクをする必要がない。」

上記刊行物4-6の記載事項から、DLCをレーザーアブレーションする際に用いるレーザーを、ナノ秒以下のパルス幅を有するパルスレーザーとすることは、本願の優先日前に周知の技術手段であったと認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明の「DLC被膜層14」は本願発明1の「DLC被覆膜」に相当し、以下同様に、「上」は「表面」に、「除去」は「剥離」に、「グラビアセル20を形成しない部分のDLC被膜層14」は「DLCパターン」に、「グラビア製版ロール」は「パターン付きロール」に、それぞれ相当する。

そして、本願の明細書の「また、前記基材とDLC被覆膜との間に密着性向上のためにTi,Cr,W,Si,SiC,SiO2等の中間層を形成してもよい。」(段落【0013】)との記載及び「上記形成したニッケルメッキ層を基材としてその基材の表面にDLC被覆膜をCVD法で形成した。雰囲気アルゴン/水素ガス雰囲気、原料ガスにヘキサメチルジシロキサン、成膜温度80-120℃、成膜時間60分で膜厚0.1μmの中間層を成膜した。次に、原料ガスにトルエン、成膜温度80-120℃、成膜時間180分で膜厚2.7μmのDLC被覆膜を成膜した。」(段落【0037】)との記載に照らせば、引用発明の「銅メッキ層12」は本願発明1の「基材」に相当し、引用発明の「版母材10の表面に銅メッキ処理によって銅メッキ層12を形成する」ことは本願発明1の「基材を準備する」ことに相当するといえる。

また、引用発明の「レーザー」と本願発明1の「パルスレーザ」とは、「レーザ」という限りで共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の一致点並びに相違点1及び相違点2を有する。

[一致点]
「基材を準備する工程と、該基材の表面にDLC被覆膜を形成する工程と、該DLC被覆膜にレーザを照射してレーザアブレーションを行い、前記DLC被覆膜を前記レーザアブレーションにより剥離せしめることにより該基材の表面は削られることなく該基材の表面にDLCパターンを形成する工程と、を含むパターン付ロールの製造方法。」

[相違点1]
本願発明1は、「レーザ」が「パルスレーザ」であり、「パルスレーザとしてナノ秒以下のパルス幅を有するレーザを用いる」のに対し、引用発明はこのようなレーザを用いない点。

[相違点2]
本願発明1は、「エッチングを行うことのないパターン付ロールの製造方法。」であるのに対し、引用発明は「銅メッキ層12をエッチングしてグラビアセル20を形成する工程とを含むグラビア製版ロールの製造方法。」である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。

[相違点1について]
上記第5の4.のとおり、DLCをレーザーアブレーションする際に用いるレーザーを、ナノ秒以下のパルス幅を有するパルスレーザーとすることは、本願の優先日前に周知の技術手段である。
そして、完成品でのDLCの用途が異なったとしても、製造段階でのDLCの物性には共通する点が多くあるから、引用発明のDLCをレーザーアブレーションする際に用いるレーザーについて、上記周知の技術手段の、ナノ秒以下のパルス幅を有するパルスレーザーが使用可能であることは、当業者が予測し得たことと認められる。

[相違点2について]
本願発明1はエッチングを行わないことを発明特定事項とするのに対し、引用発明はエッチングする工程を含むものであるから、引用発明において相違点2における本願発明1の発明特定事項のようにすることが容易であるとはいえない。

なお、刊行物1に「従来公知のエッチング法や電子彫刻法の他に、レーザーアブレーションを用いた方法も採用できる。」(段落[0031])と記載されており、「電子彫刻法」と「レーザーアブレーションを用いた方法」とが、「エッチングを行うことのない」方法に該当する。
しかしながら、電子彫刻法はマスクパターンの縁を維持しつつ彫刻する手法ではなく、「グラビアセル20を形成しない部分のDLC被膜層14」を維持しつつ銅メッキ層12だけを彫刻するような電子彫刻法が従来周知であるとはいえない。よって、引用発明において「エッチング」を「電子彫刻法」に置き換える事は、当業者にとって容易ではない。
また、引用発明における「エッチング」を「レーザーアブレーション」に置き換える場合、引用発明の「該DLC被膜層14を前記レーザーアブレーションにより除去することにより該銅メッキ層12の表面は削られることなく」との特定事項と矛盾することとなる。そうであれば、引用発明において「エッチング」を「レーザーアブレーション」に置き換えることには阻害要因があるといえる。
この他にも、刊行物1-6には、「エッチング」を代替できる加工方法に関する記載や、エッチングが省略できるといった趣旨の記載はない。
したがって、本願発明1における上記相違点2に係る構成は、刊行物1-6に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たとは認められない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び刊行物1-6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4は本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の上記相違点2に係る構成と同一の構成を備えるものであり、本願発明1と同様の理由によって、当業者であっても、引用発明及び刊行物1-6に記載され他事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年5月12日の手続補正により、本願発明1-4は、「エッチングを行うことのない」という技術的事項を有するものとなった。当該「エッチングを行うことのない」という事項は、原査定における引用文献A-C(当審拒絶理由における引用文献1-3)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-4は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Cに基いて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由2について
(特許法第36条第6項第1号について)
当審では、請求項1の文言上、パターン付ロールの製造方法に、エッチングの工程を含むことを排除していない記載振りとなっており、発明の詳細な説明に記載したものでないとの拒絶の理由を通知したが、平成29年5月12日の手続補正により、「エッチングを行うことのないパターン付ロールの製造方法。」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1-4は、当業者が引用発明及び刊行物1-6に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-13 
出願番号 特願2014-543645(P2014-543645)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16C)
P 1 8・ 537- WY (F16C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日下部 由泰  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
内田 博之
発明の名称 パターン付ロール及びその製造方法  
代理人 石原 進介  

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