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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21V
審判 査定不服 1項1号公知 取り消して特許、登録 F21V
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21V
管理番号 1328794
審判番号 不服2016-6864  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-10 
確定日 2017-06-20 
事件の表示 特願2013-195292号「蛍光光源装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年3月30日出願公開、特開2015-60789号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月20日の出願であって、平成27年8月28日付けで手続補正書が提出され、平成27年9月18日付けで拒絶理由が通知され、平成27年11月24日付けで意見書、手続補正書が提出されたが、平成28年2月9日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。 これに対し、平成28年5月10日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成29年3月3日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年4月21日付けで意見書、手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成29年4月21日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
そして、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】
励起光によって励起される蛍光体による波長変換部材を備えてなる蛍光光源装置であって、
前記波長変換部材は、蛍光体が含有されてなる蛍光部材と、当該蛍光部材上に形成されたフォトニック構造部とからなり、当該フォトニック構造部の表面が当該波長変換部材における蛍光出射面とされており、
前記フォトニック構造部は、複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造により形成されており、当該複数の凸部が、前記蛍光部材から遠ざかる方向に伸びる柱状構造を有する金属酸化物の層として形成されていることを特徴とする蛍光光源装置。」

なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明3は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明4は本願発明3を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2012/108384号)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)

(1a)「[0001] 本発明は、蛍光体基板、およびこれを用いた表示装置、照明装置に関する。・・・」
(1b)「[0012] 本発明の一態様は、蛍光体層から基板側、すなわち光取出し方向に発光した蛍光を基板との界面で反射させることなく効率よく取り出すことができ、これによって蛍光体層からの光の取り出し効率を向上させ、変換効率を向上させることが可能な蛍光体基板を提供することを目的とする。・・・」
(1c)「[0013] 本発明の一態様における蛍光体基板は、基板と、入射した励起光により蛍光を生じ、生じた光を光取出し面から射出するよう構成された第一蛍光体層と、前記第一蛍光体層と前記基板との間に設けられ、前記第一蛍光体層近傍から前記基板近傍にかけて屈折率勾配を有する第一中間層と、を備える。
[0014] 本発明の一態様における蛍光体基板は、前記第一蛍光体層の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とした場合、前記第一中間層はその屈折率が、前記蛍光体層から前記基板に向かい、前記光取出し面と直交する厚さ方向にn1からn2までの範囲内で変化する勾配を有していてもよい。
[0015] 本発明の一態様における蛍光体基板は、前記第一中間層が1つ以上の微小構造体で形成され、かつ、前記微小構造体の断面積が、前記蛍光体層近傍から前記基板近傍に向けて小さくなる形状を有していてもよい。」
(1d)「[0041] 「蛍光体層」
本実施形態の蛍光体層7R,7G,7Bは、紫外光を発光する有機EL素子12から発せられる励起光を吸収し、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ発光する赤色蛍光体層7R、緑色蛍光体層7G、青色蛍光体層7Bから構成されている。また、必要に応じて、シアン光、イエロー光を発光する蛍光体層を画素に加えてもよい。その場合、シアン光、イエロー光を発光する画素のそれぞれの色純度を、色度図上での赤色光、緑色光、青色光を発光する画素の色純度を示す点で結ばれる三角形より外側に設定することで、赤色、緑色、青色の3原色光を発光する画素を使用する表示装置よりも色再現性を広げることが可能となる。
[0042] 蛍光体層7R,7G,7Bは、以下に例示する蛍光体材料のみから構成されていてもよい。蛍光体層7R,7G,7Bは、以下に例示する蛍光体材料に任意に添加剤等を含んでいてもよい。蛍光体層7R,7G,7Bは、これらの蛍光体材料が高分子材料(結着用樹脂)または無機材料中に分散された構成であってもよい。本実施形態の蛍光体材料としては、公知の蛍光体材料を用いることができる。この種の蛍光体材料は、有機系蛍光体材料と無機系蛍光体材料に分類される。これらの具体的な化合物を以下に例示するが、本実施形態はこれらの材料に限定されるものではない。」
(1e)「[0053] 「中間層」
本実施形態の中間層10は、前述したように蛍光体層7R,7G,7Bと基板5との間に設けられている。中間層10は、蛍光体層7R,7G,7B側と基板5側との間にて屈折率勾配を有したものである。つまり、中間層10において、蛍光体層7R,7G,7B近傍における屈折率と、基板5近傍における屈折率とが異なり、中間層10は、蛍光体層7R,7G,7B近傍から基板5近傍にかけて屈折率勾配を有する。この屈折率勾配は、蛍光体層7R,7G,7Bの屈折率をn1、基板5の屈折率をn2とした場合、蛍光体層7R,7G,7Bから基板5に向かい、前記蛍光体層7R,7G,7Bの光取出し面(基板5側の面)と直交する厚さ方向に、n1からn2までの範囲内で緩やかに変化する勾配であるのが好ましい。具体的には、中間層10の屈折率は、段階的にあるいは連続的に変化する勾配を有しているのが好ましい。
[0054] ここで、蛍光体層7R,7G,7Bの屈折率n1は例えば2.0?2.3程度である。基板5の屈折率n2は、例えばガラス基板の場合に1.5程度である。したがって、中間層10の屈折率勾配としては、蛍光体層7R,7G,7Bから基板5に向かう方向において、2.0?2.3程度から1.5程度に、段階的にあるいは連続的に小さくなっているのが好ましい。 このような構成によって中間層10は、従来のように蛍光体層7R,7G,7Bの光取出し面の法線方向に対して角度の大きい蛍光成分が、蛍光体層7R,7G,7Bと基板5との間の屈折率差が存在する界面にて全反射することによって生じていた光のロスを、最小限に抑えることができる。
[0055] このような屈折率勾配を有する中間層10としては、例えば、(1)屈折率の異なる複数の層(材料)を段階的に積層し、あるいは連続的に積層することにより、形成することができる。また、(2)厚み方向に微小傾斜を有する1つ以上の微小構造体を形成し、該構造体の占める比率を厚み方向に連続的に変化させることにより、屈折率勾配を有する中間層10を形成することができる。
[0056] (1)の場合に関しては、例えばTiO_(2)層とSiO_(2)層とを積層した構造が挙げられる。また、MgO層とSiO_(2)層、ZrO_(2)層とSiO_(2)層、PMMA層とシリコンオイル層、等の組み合わせによる積層構造も挙げられる。ただし、本実施形態はこれらの材料の組み合わせに限定されるものではない。
(2)の場合に関しては、前記微小構造体の形成材料として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネード、エポキシ等の透明樹脂や、SiO_(2)、Si_(3)N_(4)等の透明無機物が挙げられる。さらに、これらの材料に屈折率の高い化合物、例えばTiO_(2)、Cu_(2)O、Fe_(2)O_(3)等のような金属酸化物を添加するのが好ましい。ただし、本実施形態はこれらの材料に限定されるものではない。
[0057] また、前記微小構造体として具体的には、微小構造体の断面積を、蛍光体層7R,7G,7Bから基板5に向かって小さくなる形状に形成するのが好ましい。例えば図2Aの斜視図に示すように、円錐形状の微小構造体10aからなるのが好ましい。微小構造体10aは、概円錐形状でもよい。このような円錐形状の微小構造体10aを多数形成した中間層10を、図1Aに示すように頂点が基板5側となるように配置することにより、その屈折率を、蛍光体層7R,7G,7B近傍で高く、基板5近傍で低くすることができる。また、この構造によれば、円錐形状の微小構造体10aの断面積(蛍光体7R,7G,7Bの光取出し面と平行な面での断面積)が蛍光体層7R,7G,7Bから基板5に向けて連続的に小さくなるので、中間層10の屈折率も蛍光体層7R,7G,7B近傍から基板5近傍に向けて連続的に小さくなる。」
(1f)「[0066] 次に、前記構成の蛍光体基板2の製造方法の一例について、製造工程を模式的に示す図3A?3Iを用いて説明する。なお、ここで説明する例は、中間層10、保護層11として、いずれも円錐形状の微小構造体からなる構造のものを形成する方法とする。
蛍光体基板2を形成するには、まず、図3Aに示すように、前記円錐形状の微小構造体(例えば頂点角が30°)の凹形状を有するアルミニウム金型30を備えた射出成形機を使用し、中間層10の前駆体となる薄板状の中間層形成材料31を成形する。これにより、図3Bに示すように多数の微小円錐形状を有した屈折率勾配を有する中間層10を形成する。
[0067] 次に、形成した中間層10を、例えば形成した基板5の屈折率にほぼ等しい屈折率を有する無色透明の光学接合用材料を用いて、基板5上に貼り合わせる。
次に、図3Cに示すように中間層10上に、ディスペンサーを用いて蛍光体層7R,7G,7Bを形成する。・・・」
(1g)「[0175] (実施例5)
比較例と同様なガラス基板上に、電子ビーム蒸着法により、フッ化マグネシウム(屈折率:1.38)と酸化チタン(屈折率:2.30)とを、蒸着速度を少しずつ変化させながら同時に、200℃で蒸着した。蒸着速度は、フッ化マグネシウムと酸化チタンの蒸着速度比を、10:0から1分間隔で、0:10まで変化させて成膜した。この方法により、ガラス基板側では、フッ化マグネシウムの濃度が高く、ガラス基板から厚み方向に離れるに従って酸化チタンの濃度が緩やかに高くなる、緩やかな屈折率勾配を有する中間層を形成した。
次に、比較例と同様な方法で、中間層上に緑色蛍光体層を形成した。」

2.上記記載事項より引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「基板と、入射した励起光により蛍光を生じ、生じた光を光取出し面から射出するよう構成された第一蛍光体層と、前記第一蛍光体層と前記基板との間に設けられ、前記第一蛍光体層近傍から前記基板近傍にかけて屈折率勾配を有する第一中間層とを備える蛍光体基板であって、
前記第一中間層が1つ以上の微小構造体で形成され、かつ、前記微小構造体の断面積が、前記蛍光体層近傍から前記基板近傍に向けて小さくなる形状を有し、
前記微小構造体の形成材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネード、エポキシ等の透明樹脂や、SiO_(2)、Si_(3)N_(4)等の透明無機物とした、
蛍光体基板。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「蛍光体基板」の「第一蛍光体」は、「入射した励起光により蛍光を生じ」るものであり、本願発明1の「励起光によって励起される蛍光体」に相当する。そして、引用発明の「第一蛍光体層」によって励起光の波長を変換するものであるといえる。したがって、引用発明の「蛍光体基板」は、励起光によって励起される蛍光体による波長変換部材を備えてなるといえ、本願発明1の「蛍光光源装置」に相当する。
引用発明の「第一蛍光体層」は、蛍光体材料から構成される(上記摘示(1g))から、蛍光体が含有されてなる蛍光部材といえ、本願発明1の「蛍光体が含有されてなる蛍光部材」に相当する。また、引用発明の「第一中間層」は、「生じた光を光取出し面から射出するよう構成され」るから、その表面は蛍光出射面といえるし、この「第一中間層」が「前記第一蛍光体層近傍から前記基板近傍にかけて屈折率勾配を有する」ことによって、蛍光体層から基板側、すなわち光取出し方向に発光した蛍光を基板との界面で反射させることなく効率よく取り出すことができ、これによって蛍光体層からの光の取り出し効率を向上させ、変換効率を向上させる作用をなすから(上記摘示(1b))、機能的にみて、本願発明1の「フォトニック構造部」に相当するといえる。そして、「第一中間層」は「第一蛍光体層と前記基板との間に設けられ」るものであるから、本願発明1の「当該蛍光部材上に形成され」ているのに相当する配置である。したがって、引用発明の「第一蛍光体層と、前記基板との間に設けられ」た「第一中間層」と「第一蛍光体層」とで、本願発明1の「波長変換部材」に相当し、よって、引用発明の「生じた光を光取出し面から射出するよう構成された第一蛍光体層と、前記第一蛍光体層と前記基板との間に設けられ」た「前記第一蛍光体層近傍から前記基板近傍にかけて屈折率勾配を有する第一中間層」とによって、本願発明1の「前記波長変換部材は、蛍光体が含有されてなる蛍光部材と、当該蛍光部材上に形成されたフォトニック構造部とからなり、当該フォトニック構造部の表面が当該波長変換部材における蛍光出射面とされており」に相当する構成をなしているといえる。
引用発明の「第一中間層」は、「1つ以上の微小構造体で形成され、かつ、前記微小構造体の断面積が、前記蛍光体層近傍から前記基板近傍に向けて小さくなる形状を有する」から、その「微小構造体」の形状は、凸部であり、「1つ以上の微小構造体で形成され」ていることは、複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造により形成されているといえる。したがって、引用発明の「前記第一中間層が1つ以上の微小構造体で形成され、かつ、前記微小構造体の断面積が、前記蛍光体層近傍から前記基板近傍に向けて小さくなる形状を有する」ことは、本願発明1の「前記フォトニック構造部は、複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造により形成されており、当該複数の凸部が、前記蛍光部材から遠ざかる方向に伸びる柱状構造を有する金属酸化物の層として形成されていること」との対比において、「前記フォトニック構造部は、複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造により形成されている」の限度で一致する。
以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明との一致点および相違点は次のとおりである。
<一致点>
「励起光によって励起される蛍光体による波長変換部材を備えてなる蛍光光源装置であって、
前記波長変換部材は、蛍光体が含有されてなる蛍光部材と、当該蛍光部材上に形成されたフォトニック構造部とからなり、当該フォトニック構造部の表面が当該波長変換部材における蛍光出射面とされており、
前記フォトニック構造部は、複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造により形成されている、
蛍光光源装置。」
<相違点>
本願発明1の「複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造により形成されている」「フォトニック構造部」が、「前記蛍光部材から遠ざかる方向に伸びる柱状構造を有する金属酸化物の層として形成されている」のに対し、引用発明の「第一中間層」を形成する「1つ以上の微小構造体」の材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネード、エポキシ等の透明樹脂や、SiO_(2)、Si_(3)N_(4)等の透明無機物である点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用発明の、「第一中間層」(本願発明1のフォトニック構造部に相当する。引用文献1中の実施例においては「中間層10」として記載されている。)は「1つ以上の微小構造体で形成され、かつ、前記微小構造体の断面積が、前記蛍光体層近傍から前記基板近傍に向けて小さくなる形状」とすることにより「屈折率勾配を有する」ように形成されているものであり、その材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネード、エポキシ等の透明樹脂や、SiO_(2) 、Si_(3)N_(4)等の透明無機物を採用し、これらを射出成形手段によって、厚み方向に微小傾斜を有する1つ以上の微小構造体を形成している(上記摘示(1e)(1f))。
このように、「第一中間層」の材料として、射出成形に適した材料である、樹脂材料やSiO_(2) 、Si_(3)N_(4)等の透明無機物としており、金属酸化物を用いることは記載されていないし、その示唆もない。
もっとも、引用発明の「第一中間層」は、引用文献1中では、別に、屈折率の異なる複数の層(材料)を段階的に積層し、あるいは連続的に積層することにより、形成したものも例示されており、そしてその材料として、例えばTiO_(2)層とSiO_(2)層とを積層した構造また、MgO層とSiO_(2)層、ZrO_(2)層とSiO_(2)層、PMMA層とシリコンオイル層、等の組み合わせによる積層構造が挙げられおり(上記摘示(1e))、さらに、実施例として、電子ビーム蒸着法により、フッ化マグネシウム(屈折率:1.38)と酸化チタン(屈折率:2.30)とを、蒸着速度を少しずつ変化させながら同時に、200℃で蒸着したものが記載されている(上記摘示(1g))。このように、引用発明の「第一中間層」を金属酸化物の層として形成されることが記載ないし示唆されているともいえる。
しかしながら、上記「第一中間層」が金属酸化物の層として形成されるものは、屈折率の異なる複数の層(材料)を段階的に積層し、あるいは連続的に積層することによって、蛍光体層近傍から基板近傍にかけて屈折率勾配を有するように形成するものである。したがって、この場合には、金属酸化物の層が既に屈折率勾配を有することから、屈折率勾配を付与するための構造である、断面積が蛍光体層近傍から前記基板近傍に向けて小さくなる形状を有する微小構造体(本願発明1の「複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造」に相当する。)を、金属酸化物の層にさらに形成する必要がない。
よって、「第一中間層」が金属酸化物の層として形成されるものは、「第一中間層」が断面積が蛍光体層近傍から前記基板近傍に向けて小さくなる形状を有する微小構造体(本願発明1の「複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造」に相当する。)として形成されていないし、その必要もない。
以上のとおりであるから、引用文献1には、相違点に係る本願発明1の構成である、複数の凸部が二次元周期的に配列されてなる周期構造により形成されているフォトニック構造部が、蛍光部材から遠ざかる方向に伸びる柱状構造を有する金属酸化物の層として形成されている点について記載も示唆もされていないといえる。
そして、本願発明1は係る構成を有することにより、励起光であるレーザ光の熱によって周期構造体層の形状が変形し、その変形に起因して波長変換部材における蛍光出射面からの蛍光の出射効率が低下するのを防止できる(本願明細書段落【0004】)という顕著な効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は当業者であっても引用発明および引用文献1に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明および引用文献1に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
本願発明3は、本願発明1に対応する方法の発明であり本願発明1とはカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから、本願発明3と引用発明とは上記1.(1)の相違点と同様の相違点を有することとなる。したがって、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明および引用文献1に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
本願発明4は、本願発明3を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明および引用文献1に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の理由の概要および原査定についての判断
1.原査定の理由の概要
原査定は、請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、請求項1-4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:国際公開第2012/108384号
というものである。
しかしながら、平成29年4月21日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、3は、それぞれ、上記「第4 1.(1)」の相違点に係る構成、あるいは、同様の構成を有するものとなっており、上記「第4」のとおり、請求項1に係る発明は引用文献1に記載された発明とはいえないし、請求項1-4に係る発明は、当業者であっても引用発明および引用文献1に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1における「当該複数の凸部が、前記蛍光部材から遠ざかる方向に延びる柱状構造を有する金属酸化物の層において形成されている」が不明であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年4月21日付けの手続補正において、「当該複数の凸部が、前記蛍光部材から遠ざかる方向に延びる柱状構造を有する金属酸化物の層として形成されている」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-4は、当業者が引用発明および引用文献1に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-07 
出願番号 特願2013-195292(P2013-195292)
審決分類 P 1 8・ 111- WY (F21V)
P 1 8・ 537- WY (F21V)
P 1 8・ 121- WY (F21V)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮崎 光治  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
尾崎 和寛
発明の名称 蛍光光源装置およびその製造方法  
代理人 大井 正彦  

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