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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
管理番号 1328809
審判番号 不服2015-19612  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-30 
確定日 2017-05-31 
事件の表示 特願2012-531529「エクササイズを行うユーザを支援するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日国際公開、WO2011/039689、平成25年 2月28日国内公表、特表2013-506483〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件出願は、平成22年9月26日(優先権主張 平成21年9月30日(以下、「優先日」という。))、中国)の国際出願であって、平成27年6月18日に手続補正書が提出され、同年7月7日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月14日)、これに対し、同年10月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、さらに、当審において、平成28年8月24日付けで拒絶理由を通知したところ、同年11月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願の発明

本願の請求項1に係る発明は、上記の平成28年11月16日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】
エクササイズの組を行うユーザを支援するシステムを制御する方法であって、前記システムは、前記エクササイズの組に関連付けられるオーディオ及び/又はビデオコンテントを前記ユーザに提供する第1のサブシステムを有し、前記方法が、
前記エクササイズの組に関する情報及びオプションで前記ユーザの特性に関する情報を含む、事前に生成されたデータを取得するステップと、
前記データに従って前記第1のサブシステムのパラメータを調整するステップとを有し、
前記第1のサブシステムが、前記ユーザによって行われる前記エクササイズの組に関連付けられるビデオコンテントを取得及び生成するカメラを有し、
前記調整するステップが、前記カメラのロケーション及び撮影角度の少なくとも一方を前記エクササイズの組において前記ユーザによって行われる体の動きに関する情報に従って調整するステップを含む、方法。」

3.当審で指摘した拒絶理由の概要

当審において平成28年8月24日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)の理由1の概要は次のとおりである。

本件出願の発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



引用文献1.特開平8-215177号公報

4.引用例

当審拒絶理由に引用文献1として引用された本願の優先日前に頒布された特開平8-215177号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア.「【請求項6】 利用者の予め決められた運動の正しい実行を支援する運動支援方法であって、
前記利用者の運動状態を撮像する撮像過程と、
前記利用者の実行すべき運動の画像を選択する選択過程と、
前記撮像過程で撮像された前記利用者の運動状態と前記選択過程で設定された画像とを表示する表示過程とを有することを特徴とする運動支援方法。」

イ.「【0018】
【実施例】図2に本発明の一実施例のブロック図、図3に本発明の一実施例の使用状態を説明するための図を示す。本実施例のリハビリ支援システム11は一連のリハビリ動作よりなる複数組の動画、動画の再生順番を決める再生順番情報、ビデオカメラの位置を決める位置情報、ビデオカメラのズームを決めるズーム情報、動画の再生内容、ビデオカメラからの利用者の画像と動画の画像との動きの比較結果等を記憶する記憶部12、記憶部12に記憶された情報に応じて動画の再生、カメラ制御、リハビリ診断、通信制御等の制御、データの処理を行なう制御部13、制御部13に対して動画の再生順番等の指示を与える入力部14、利用者を撮像するビデオカメラ装置15,16、ビデオカメラ装置15,16からのビデオ信号の切換ズームの制御を行なうビデオ制御部17、制御部13から供給される動画、ビデオ信号に応じた画像を表示する表示部18、制御部13で診断された診断結果等を音声で指示する音声指示部19、医療機関等との通信を行なう通信部20より構成される。」

ウ.「【0023】記憶部12は例えば、フロッピーディスクドライブ等の情報記録/再生装置とフロッピーディスク等の記録媒体より構成され、記録情報としてはリハビリに関する複数組の動画情報D1、複数組の動画情報から再生すべき動画情報を順番に出力するための再生順番情報D2、各動画の表示アングルの情報が記憶されたビデオカメラ位置情報D3、各動画のズーム量の情報が記憶されたビデオカメラズーム情報D4、制御部13での動画の再生内容である再生内容情報D5、制御部13で比較処理される動画と利用者のビデオ画像との比較結果を保持する比較結果情報D6より構成される。」

エ.「【0028】このように、利用者は麻痺側、麻痺部分、症状を入力するだけで、容易に再生順番と設定できる。図6に動画処理機能13bの動作フローチャートを示す。動画再生処理時には制御部13はまず記憶部12より予め、又は、入力部14で設定された再生順番情報D2を読み取り、最初に設定された再生順番情報D2-1を再生情報として内部に設定する(ステップS1-1,S1-2)。」

オ.「【0031】図7に本発明の一実施例のカメラ制御処理機能13cの動作フローチャートを示す。制御部13のカメラ制御処理機能13cでは動画再生機能13bが起動し、再生順番情報D2が設定されると、記憶部12より設定された再生順番情報D2に対応したビデオカメラ位置情報D3及びビデオカメラズーム情報D4を読み込む(ステップS2-1,S2-2)。
【0032】次に制御部13は記憶部12から読み込んだビデオカメラ位置情報D3及びビデオカメラズーム情報D4に応じてビデオカメラ制御部17を制御する。ここで、制御部13はビデオカメラ位置情報D3に応じて動画の表示している方向に一致する方向から撮像しているビデオカメラ15,16からのビデオ信号が供給されるようにビデオカメラ制御部17を制御すると共にビデオカメラズーム情報に応じてビデオカメラ15,16のズームを制御する(ステップS2-3,S2-4)。」
(なお、「ビテオカメラ」は「ビデオカメラ」の明らかな誤記であるので、誤記を正して摘記した。)

カ.「【0041】なお、本実施例では支援する運動としてリハビリについて説明したが、これに限ることはなく、スポーツ等のトレーニングの運動を正しく行なうための運動を支援する場合にも適用できることは言うまでもない。」

キ.「【0043】また、表示手段には動画と利用者の画像が表示され、利用者は自分の動きと設定画像の動きとを比較しながらリハビリを行なえるため、利用者自身で適確なリハビリが行なえる特長を有する。請求項2によれば、異なる方向から利用者を撮像する複数の撮像部を設け、設定画像の表示方向に応じて利用者の撮像方向を切換えることにより、設定画像に対応した方向からの利用者の画像を表示できるため、その動作に特徴がある方向から画像を表示でき、したがって、より適確な運動の指示が行なえる等の特長を有する。」

上記の記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「利用者の予め決められた運動の正しい実行を支援し、
リハビリ支援システム11は一連のリハビリ動作よりなる複数組の動画、動画の再生順番を決める再生順番情報、ビデオカメラの位置を決める位置情報、ビデオカメラのズームを決めるズーム情報、動画の再生内容、ビデオカメラからの利用者の画像と動画の画像との動きの比較結果等を記憶する記憶部12、記憶部12に記憶された情報に応じて動画の再生、カメラ制御、リハビリ診断、通信制御等の制御、データの処理を行なう制御部13、制御部13に対して動画の再生順番等の指示を与える入力部14、利用者を撮像するビデオカメラ装置15,16、ビデオカメラ装置15,16からのビデオ信号の切換ズームの制御を行なうビデオ制御部17、制御部13から供給される動画、ビデオ信号に応じた画像を表示する表示部18より構成され、
表示手段には動画と利用者の画像が表示され、利用者は自分の動きと設定画像の動きとを比較しながらリハビリを行なえ、
設定画像の表示方向に応じて利用者の撮像方向を切換えることにより、設定画像に対応した方向からの利用者の画像を表示できるため、その動作に特徴がある方向から画像を表示でき、したがって、より適確な運動の指示が行なえ、
記憶部12は、記録情報としては複数組の動画情報から再生すべき動画情報を順番に出力するための再生順番情報D2、各動画の表示アングルの情報が記憶されたビデオカメラ位置情報D3より構成され、
動画再生処理時には制御部13はまず記憶部12より予め設定された再生順番情報D2を読み取り、
制御部13のカメラ制御処理機能13cでは動画再生機能13bが起動し、再生順番情報D2が設定されると、記憶部12より設定された再生順番情報D2に対応したビデオカメラ位置情報D3を読み込み、
制御部13はビデオカメラ位置情報D3に応じて動画の表示している方向に一致する方向から撮像しているビデオカメラ15,16からのビデオ信号が供給されるようにビデオカメラ制御部17を制御する、方法。」

5.対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

引用文献1の「本実施例では支援する運動としてリハビリについて説明した」(上記記載事項カ.)との記載を踏まえると、後者の「リハビリ」は「運動」であって、当該「リハビリ」及び「運動」はともに前者の「エクササイズ」に相当する。また、後者の「利用者」は前者の「ユーザ」に相当し、同様に「動画」は「ビデオコンテント」に相当する。

後者は「利用者の予め決められた運動の正しい実行を支援」するのだから、後者の「リハビリ支援システム11」は、本願発明の「エクササイズの組を行うユーザを支援するシステム」に相当する。また、後者は「記憶部12に記憶された情報に応じて動画の再生、カメラ制御、リハビリ診断、通信制御等の制御、データの処理を行なう制御部13」を有するところ、「制御部13は記憶部12から読み込んだビデオカメラ位置情報D3に応じて動画の表示している方向に一致する方向から撮像しているビデオカメラ15,16からのビデオ信号が供給されるようにビデオカメラ制御部17を制御する」ものであって、「ビデオカメラ15,16」及び「ビデオカメラ制御部17」は「リハビリ支援システム11」を構成しているから、後者は「リハビリ支援システム11」を制御する方法であるといえる。そうすると、後者のこの点は、前者の「エクササイズの組を行うユーザを支援するシステムを制御する方法」に相当する。

後者は「表示手段には動画と利用者の画像が表示され、利用者は自分の動きと設定画像の動きとを比較しながらリハビリを行なえる」ものであるから、後者において動画及び利用者の画像とリハビリとは関連しているといえる。そうすると、後者の「利用者を撮像するビデオカメラ装置15,16」及び「ビデオ信号に応じた画像を表示する表示部18」から成る部分は、前者の「前記エクササイズの組に関連付けられるオーディオ及び/又はビデオコンテントを前記ユーザに提供する第1のサブシステム」に相当し、同様に、「複数組の動画情報から再生すべき動画情報を順番に出力するための再生順番情報D2、各動画の表示アングルの情報が記憶されたビデオカメラ位置情報D3より構成され」る「記録情報」は、「エクササイズの組に関する情報」に相当する。

上述のとおり後者の「再生順番情報D2」及び「ビデオカメラ位置情報D3」より構成される「記録情報」が前者の「エクササイズの組に関する情報」に相当することを踏まえると、後者の「動画再生処理時には制御部13はまず記憶部12より予め設定された再生順番情報D2を読み取」ること、及び、「記憶部12より設定された再生順番情報D2に対応したビデオカメラ位置情報D3を読み込」むことは、前者の「エクササイズの組に関する情報」を含む「事前に生成されたデータを取得するステップ」に相当する。

後者の「制御部13は記憶部12から読み込んだビデオカメラ位置情報D3に応じて動画の表示している方向に一致する方向から撮像しているビデオカメラ15,16からのビデオ信号が供給されるようにビデオカメラ制御部17を制御する」ことは、前者の「前記データに従って前記第1のサブシステムのパラメータを調整するステップ」に相当する。

後者の「利用者を撮像するビデオカメラ装置15,16」は「利用者の予め決められた運動の正しい実行を支援」することに用いられるものであって、利用者の運動に関連する撮像を行うことは明らかであるから、前者の「前記ユーザによって行われる前記エクササイズの組に関連付けられるビデオコンテントを取得及び生成するカメラ」に相当する。

後者は「設定画像の表示方向に応じて利用者の撮像方向を切換えることにより、設定画像に対応した方向からの利用者の画像を表示できるため、その動作に特徴がある方向から画像を表示でき、したがって、より適確な運動の指示が行なえ」るものであるから、後者の「各動画の表示アングルの情報が記憶されたビデオカメラ位置情報D3」は利用者の動作や運動に関連するものであって、前者の「ユーザによって行われる体の動きに関する情報」に相当する。そうすると、後者の「ビデオカメラ位置情報D3に応じて動画の表示している方向に一致する方向から撮像しているビデオカメラ15,16からのビデオ信号が供給されるようにビデオカメラ制御部17を制御する」ことは、前者の「前記カメラのロケーション及び撮影角度の少なくとも一方を前記エクササイズの組において前記ユーザによって行われる体の動きに関する情報に従って調整するステップ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「エクササイズの組を行うユーザを支援するシステムを制御する方法であって、前記システムは、前記エクササイズの組に関連付けられるオーディオ及び/又はビデオコンテントを前記ユーザに提供する第1のサブシステムを有し、前記方法が、
前記エクササイズの組に関する情報及びオプションで前記ユーザの特性に関する情報を含む、事前に生成されたデータを取得するステップと、
前記データに従って前記第1のサブシステムのパラメータを調整するステップとを有し、
前記第1のサブシステムが、前記ユーザによって行われる前記エクササイズの組に関連付けられるビデオコンテントを取得及び生成するカメラを有し、
前記調整するステップが、前記カメラのロケーション及び撮影角度の少なくとも一方を前記エクササイズの組において前記ユーザによって行われる体の動きに関する情報に従って調整するステップを含む、方法。」

である点で一致し、相違する点はない。

そうすると、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-22 
結審通知日 2017-01-05 
審決日 2017-01-18 
出願番号 特願2012-531529(P2012-531529)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 祐一  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 畑井 順一
森次 顕
発明の名称 エクササイズを行うユーザを支援するシステム  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  

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