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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1328836
審判番号 不服2015-12735  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-03 
確定日 2017-06-06 
事件の表示 特願2012-536767「口臭を処置するための口腔用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成23年5月5日国際公開、WO2011/053273、平成25年3月7日国内公表、特表2013-508453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月26日を国際出願日とする特許出願であって、平成24年10月26日に特許請求の範囲が補正され、平成26年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月3日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正されたが、平成27年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲が補正され、同年8月12日付けで審判請求書の請求の理由の手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 平成27年7月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年7月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成26年7月3日付け手続補正書)に
「【請求項1】
L-セリンアミノ酸及び金属キレート剤を含む口腔ケア組成物であって、
L-セリンアミノ酸が硫化水素およびインドールにより引き起こされる口臭を低減するのに有効な量で存在し、L-セリンアミノ酸がその組成物中に0.01?10%w/wの濃度で存在し、そして、
金属キレート剤が、Zn^(2+)を含有する化合物、Sn^(2+)を含有する化合物、及びこれらの混合物からなる群から選択され、ここにおいて、そのZn^(2+)を含有する化合物が乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛及びこれらの混合物からなるグループから選択される、
前記口腔ケア組成物。」
とあったものを、
「【請求項1】
L-セリンアミノ酸及び金属キレート剤を含む口腔ケア組成物であって、
L-セリンアミノ酸が硫化水素およびインドールにより引き起こされる口臭を低減するのに有効な量で存在し、L-セリンアミノ酸がその組成物中に0.01?10%w/wの濃度で存在し、そして、
金属キレート剤が、Zn^(2+)を含有する化合物、Sn^(2+)を含有する化合物、及びこれらの混合物からなる群から選択され、ここにおいて、そのZn^(2+)を含有する化合物が乳酸亜鉛であり、その乳酸亜鉛がその組成物中に0.1?0.5%w/wの濃度で存在する、
前記口腔ケア組成物。」(下線は、原文のとおり)
と補正することを含むものである。

2 本件補正についての検討
本件補正は、「金属キレート剤」の一つである「Zn^(2+)を含有する化合物」について、補正前の「Zn^(2+)を含有する化合物が乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛及びこれらの混合物からなるグループから選択される」を「Zn^(2+)を含有する化合物が乳酸亜鉛であり、その乳酸亜鉛がその組成物中に0.1?0.5%w/wの濃度で存在する」として、乳酸亜鉛のみに限定するともに、組成物中に存在する濃度を特定することで減縮するものである。
また、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで次に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

3 引用例及びその記載事項
(1)本出願前である平成8(1996)年2月29日に頒布された刊行物である「国際公開第96/05803号」(原査定の引用文献2。以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されているものと認められる。なお、引用例1は英文で記載された刊行物であるので、審決の便宜上、その記載事項は当審による翻訳文のみを示し、その英文の記載は省略する。また、以下、下線は当審で付したものである。

(1a)「10.歯科用フレーバーと、ロイシン、イソロイシン、グルタミン酸及びアスパラギンからなるグループIから選択される少なくとも1つのアミノ酸及び/又はチロシン、グリシン、フェニルアラニン、バリン、ヒスチジン及びセリンからなるグループIIから選択される少なくとも1つのアミノ酸、及び/又はアスパラギン酸、スレオニン、アラニン、プロリン、メチオニン、トリプトファン及びオルニチンからなるグループIIIから選択される少なくとも1つのアミノ酸とを含む、口臭を低減するための組成物。
・・・
17.合計で少なくとも0.01重量%の、グループI及び/又はII及び/又はIIIのアミノ酸を含有することを特徴とする、請求項10?16のいずれか一項に記載の組成物。
・・・
19.口腔洗浄組成物である、請求項10?18のいずれか一項に記載の組成物。
20.歯磨きペーストである、請求項10?18のいずれか一項に記載の組成物。」(請求の範囲、16頁8行?17頁17行)

(1b)「口腔内のレンサ球菌叢は、嫌気的条件下でH_(2)Sを豊富に産生し、口臭に大きく寄与することが見出されている。したがって、口臭、特に口腔内のレンサ球菌によって生成される口臭を低減するのに適した新規な方法及び組成物が必要とされている。
本発明によれば、レンサ球菌、特にストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・サリバリス及びストレプトコッカス・ミチアの産生する口臭は、口腔内を特定のアミノ酸又はアミノ酸混合物で処理することによって減少させることができる。」(3頁13?23行)

(1c)「上記から明らかなように、本発明による方法で使用される組成物は、必要とされる期間にわたって必要とされる濃度のアミノ酸を口腔液に提供するのに十分な量で、上に概説したような、グループI及び/又はグループII及び/又はグループIII、好ましくはグループI、より好ましくはグループI及びグループII、さらにより好ましくはグループI、II及びIIIの所望のアミノ酸を含むべきである。この目的のために、上記組成物は、好ましくは、少なくとも0.01%w/wのこれらのアミノ酸を含有する。感覚刺激の理由から、上記組成物はアミノ酸を10%w/w以下で含有することが好ましい。より好ましくは、上記組成物は、少なくとも0.04%w/wを含有すべきであるが、一般に最大2%w/wで十分である。さらに、そのような組成物を消費者の観点からより魅力的にするとともに、それらの知覚された作用をさらに改善するために、それらは一般に、口及び息に対して爽快な作用を有するフレーバーを含む。このようなフレーバーは、多くの場合、例えばスペアミント及び/又はメントール様フレーバーノートを有するミンティタイプである。場合によっては、フルーツフレーバーも使用することができる。このようなフレーバーは、以下、総称して「歯科用フレーバー」という。」(6頁3?25行)

(1d)「実施例3
ストレプトコッカス・サングイスによるH_(2)S産生に対するグループIの個々のアミノ酸の効果を、試験培地に200mg/lのシステインを含むが、試験目的で添加したのとは別のアミノ酸は含まないことを条件として、実施例1に記載の条件を用いて試験した。各アミノ酸を、2.0及び4.0g/lの濃度で、システインのみを含む対照(アミノ酸:0g/l)で試験した。3及び18時間のインキュベーション後の各試験混合物のヘッドスペース中のH_(2)Sの量(ng/ml)を、以下の表IIIに示す。」(10頁11?21行)

(2)本出願前である平成15(2003)年1月16日に頒布された刊行物である「米国特許出願公開第2003/0012744号明細書」(原査定の引用文献7。以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されているものと認められる。なお、引用例2は英文で記載された刊行物であるので、審決の便宜上、その記載事項は当審による翻訳文のみを示し、その英文の記載は省略する。

(2a)「10.口臭処理用組成物の成分としての金属イオン部分及びアミノ酸部分を含むキレートの使用。
11.被験者の口腔内で揮発性硫黄化合物(VSC)を結合させるための金属イオン部分及びアミノ酸部分を含むキレートの使用。
12.前記キレートが、次の一般式を有する、請求項10又は11に記載の使用。
(式略)
ここで、Mは金属イオンであり、RはH又は生物学的に許容されるアミノ酸側鎖である。
・・・
17.前記金属イオンMが、Zn^(2+)、Sn^(2+)、Cu^(2+)及びAg^(2+)からなる群から選択される、請求項12に記載の使用。
・・・
21.前記製剤が、ロゼンジ、チューインガム、歯磨きペースト、液体口腔洗浄組成物、スイート及びレゾリブレットからなる群から選択される、請求項10?20のいずれかに記載の使用。」(請求の範囲、8頁右欄下から6行?9頁左欄下から3行)

(3)本出願当時に既に知られていた事項を示す、「特開2004-203872号公報」(原査定の引用文献5。以下、「周知例ア」という。)には、次の事項が記載されている。

(アa)「【背景技術】
【0002】これまで、口臭の原因物質として硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルスルフィドなどの揮発性含硫化合物(Volatile Sulfer Compounds:VSC)、脂肪酸類、アミン類、フェノールやクレゾールなどの芳香族化合物、インドールやスカトールなどの含窒素芳香族化合物などが考えられている。」

(4)本出願当時に既に知られていた事項を示す、「特開2001-335501号公報」(原査定の引用文献6。以下、「周知例イ」という。)には、次の事項が記載されている。

(イa)「【0002】
【従来の技術】従来から、人間や動物の口臭,体臭,糞尿臭の臭気を消臭するために、種々の芳香剤や消臭剤が使用されてきた。
【0003】口臭の原因は、生理的口臭,病的口臭,心性口臭があるが、生理的口臭が一般的である。この生理的口臭は、食品に由来する唾液中のタンパク質,剥離上皮,滲出液中の血球成分,歯周組織などのさまざまなタンパク質成分が口腔内のタンパク質分解酵素の作用により種々のアミノ酸に分解され、さらに脱炭酸酵素や脱アミノ酸酵素の作用によりアミンやアンモニアなどに分解される。この含硫アミノ酸から生じる硫化水素,メチルメルカプタン,ジメチルサルファイド等や、また、トリプトファンから生じるインドールやスカトール等が生理的口臭の原因である。」

4 引用例に記載の発明
上記3(1a)の請求項10、19及び20によれば、引用例1には、グループI?IIIに区別されるアミノ酸の少なくとも1つを含む、口腔洗浄組成物や歯磨きペーストである組成物が記載されている。そして、上記3(1d)の実施例3からみて、上記組成物は、選択肢で示されるアミノ酸のうちの1つを単独で含むものも、口臭を低減するという効果を奏するといえる。
そうすると、上記3(1a)、(1c)及び(1d)の記載からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「歯科用フレーバーと、セリンであるアミノ酸とを、0.01%w/w?10%w/w含む、口臭を低減するための口腔洗浄組成物や歯磨きペーストである組成物。」

5 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「セリンであるアミノ酸」及び「口臭を低減するための口腔洗浄組成物や歯磨きペーストである組成物」は、それぞれ本願補正発明の「L-セリンアミノ酸」及び「口腔ケア組成物」に相当し、上記組成物中に存在するセリンの量は、ともに0.01?10%w/wの濃度である点で一致する。
なお、引用発明は「歯科用フレーバー」を含むが、本願明細書の【0033】及び実施例5?8に示されるとおり、本願補正発明の口腔ケア組成物は香味料を含んでよいものであることからすれば、この点は相違点とはならない。

(2)以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点1?2を有する。

一致点:
「L-セリンアミノ酸を含む口腔ケア組成物であって、
L-セリンアミノ酸がその組成物中に0.01?10%w/wの濃度で存在する、
前記口腔ケア組成物。」である点。

相違点1:
本願補正発明は、「L-セリンアミノ酸が硫化水素およびインドールにより引き起こされる口臭を低減するのに有効な量で存在」すると特定しているのに対し、引用発明は、そのような特定事項を有しない点。

相違点2:
本願補正発明は、さらに「金属キレート剤」を含み、「金属キレート剤が、Zn^(2+)を含有する化合物、Sn^(2+)を含有する化合物、及びこれらの混合物からなる群から選択され、ここにおいて、そのZn^(2+)を含有する化合物が乳酸亜鉛であり、その乳酸亜鉛がその組成物中に0.1?0.5%w/wの濃度で存在する」と特定しているのに対し、引用発明は、そのような特定事項を有しない点。

6 判断
上記相違点1?2について検討する。

(1)相違点1について
ア 本願補正発明の「L-セリンアミノ酸が硫化水素およびインドールにより引き起こされる口臭を低減するのに有効な量で存在」するとの特定事項は、結局のところ、「L-セリンアミノ酸がその組成物中に0.01?10%w/wの濃度で存在」することと同義と解することができる。なぜなら、本願補正発明の「L-セリンアミノ酸」の含有量について、本願明細書の記載、特に【0024】?【0029】は、「L-セリンアミノ酸」が硫化水素及びインドールにより引き起こされる口臭を低減するのに有効な量で存在するとしつつ(【0024】?【0028】)、その具体的量として、「0.01?10%w/wの濃度」の範囲を例示しているし(【0029】)、また仮に、L-セリンアミノ酸が組成物中に上記「0.01?10%w/wの濃度」で存在するにもかかわらず、口臭を低減するとの効果を奏しないのであれば、本願補正発明はいわゆるサポート要件を満たさないものとなるからである。
したがって、引用発明においても、「セリンであるアミノ酸」は「硫化水素およびインドールにより引き起こされる口臭を低減するのに有効な量」で存在しているものといえるから、相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 付言するに、引用例1には、上記3(1b)のとおり、口腔内をアミノ酸で処理することによって、口腔内のレンサ球菌が産生する硫化水素による口臭を減少させることが記載されており、引用発明の「セリンであるアミノ酸」は、「硫化水素」「により引き起こされる口臭を低減する」ためのものである。
そして、引用例1には、「インドールにより引き起こされる口臭を低減する」ことについては記載されていないものの、周知例ア及びイの上記3(アa)及び(イa)のとおり、インドールは、硫化水素と同様に口臭の原因として広く知られているものであるから、口臭を低減することを目的とする引用発明においても、「セリンであるアミノ酸」は、「インドールにより引き起こされる口臭を低減する」ものともいえる。
したがって、本願補正発明の相違点1に係る特定事項は、奏される効果を確認しそれを示したに過ぎず、この点からも実質的な相違点ではない。

(2)相違点2について
ア 本願補正発明は、さらに「金属キレート剤」を含むところ、これは「Sn^(2+)を含有する化合物」でもあってよく、この場合の含有量は特定されていない。
ところで、本願明細書の【0031】及び実施例3?4によれば、「金属キレート剤」が「Zn^(2+)を含有する化合物」、特に「乳酸亜鉛」である場合には、亜鉛塩類がVSC阻害剤として知られているため、「L-セリンアミノ酸」と併用することで相加作用がもたらされることが示されている。
他方で、「金属キレート剤」が「Sn^(2+)を含有する化合物」である場合については、本願明細書の【0020】に、「本発明の文脈において用いられている用語“スズ塩”は、例えばSnCl_(2)、SnF_(2)、およびピロリン酸SnのようなSn^(2+)を含有する化合物を意味する。」との記載がある程度にとどまる。また、その機能についても、同【0030】に、「酸化剤、金属キレート剤、および/または抗微生物剤の添加は、本発明の組成物の口臭に対する有効性をさらに高めることができる。」と、金属キレート剤を含む添加物全般についての記載があるだけである。
そして、「金属キレート剤」が「Zn^(2+)を含有する化合物」及び/又は「Sn^(2+)を含有する化合物」のいずれであっても、「金属キレート剤」についての定義はなく、塩やキレート化合物が例示されているにとどまる。
そうすると、本願補正発明おいて「金属キレート剤」が「Sn^(2+)を含有する化合物」である場合は、Sn^(2+)を含有する塩やキレート化合物であって、口臭に対する有効性をさらに高めることができるものであればよいと解するのが相当である。

イ 引用例2には、上記3(2a)のとおり、Zn^(2+)やSn^(2+)を金属イオンとするキレートを、口臭処理用組成物の成分として使用すること、被験者の口腔内で揮発性硫黄化合物(VSC)を結合させるために使用することが記載されている。
すなわち、引用例2には、本願補正発明の「Sn^(2+)を含有する化合物」である場合の「金属キレート剤」に相当するものであって、口臭に対する有効性を有するものが記載されているといえる。

ウ そして、引用例2のキレートは、上記3(2a)のとおり、歯磨きペーストや液体口腔洗浄組成物に使用できるものである。
そうすると、引用発明の「口臭を低減するための口腔洗浄組成物や歯磨きペーストである組成物」について、さらに有効性を高めるために、同様な効果を発揮することが知られている、引用例2に記載のSn^(2+)を金属イオンとするキレートを併用することは、当業者が容易になし得たことである。しかも、本願明細書の記載を参酌しても、「L-セリンアミノ酸」と「Sn^(2+)を含有する化合物」である「金属キレート剤」を併用したことにより、格別な効果を奏するものともいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1、2及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に基づき、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

7 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年7月3日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年7月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「L-セリンアミノ酸及び金属キレート剤を含む口腔ケア組成物であって、
L-セリンアミノ酸が硫化水素およびインドールにより引き起こされる口臭を低減するのに有効な量で存在し、L-セリンアミノ酸がその組成物中に0.01?10%w/wの濃度で存在し、そして、
金属キレート剤が、Zn^(2+)を含有する化合物、Sn^(2+)を含有する化合物、及びこれらの混合物からなる群から選択され、ここにおいて、そのZn^(2+)を含有する化合物が乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛及びこれらの混合物からなるグループから選択される、
前記口腔ケア組成物。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は引用文献2及び7に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという理由を含むものである。

引用文献2:国際公開第96/05803号
引用文献7:米国特許出願公開第2003/0012744号明細書

3 引用例及びその記載事項、及び引用例に記載の発明
拒絶査定の理由に引用された引用例の記載事項及び引用例に記載の発明は、前記「第2 3 引用例及びその記載事項」及び「第2 4 引用例に記載の発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明との比較において、「金属キレート剤」が、「Zn^(2+)を含有する化合物」の場合の選択肢を増やすとともに、含有量に対する特定を削除したものである。そして、「金属キレート剤」が、「Sn^(2+)を含有する化合物」の場合は変わらない。
そうすると、本願発明の発明特定事項と同様のものに相当することを含む本願補正発明は、前記「第2 6 判断」に記載したとおり、引用例1、2及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に特許法第29条第2項の規定に基づき、特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に基づき、特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-10 
結審通知日 2017-01-11 
審決日 2017-01-25 
出願番号 特願2012-536767(P2012-536767)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 駒木 亮一菅野 智子小出 直也池田 周士郎  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 齊藤 光子
関 美祝
発明の名称 口臭を処置するための口腔用組成物  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 泉谷 玲子  

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