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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01J
管理番号 1328922
審判番号 不服2016-3599  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-08 
確定日 2017-06-09 
事件の表示 特願2011-240272号「搾乳機のメンテナンス方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月20日出願公開、特開2013- 94126号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年11月1日の出願であって、平成27年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年3月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成28年3月8日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成28年3月8日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

【理由】
2-1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1に、
「乳牛に対して搾乳を行う搾乳ユニット及びこの搾乳ユニットに付属する少なくとも表示部を有するコントローラを備える搾乳機のメンテナンスを行う際における搾乳機のメンテナンス方法であって、予め、前記搾乳ユニットに係わるティートカップに備える所定の部品となるティートカップライナの寿命期間に対する初期データを設定し、かつ前記表示部に前記初期データに対応する寿命期間の表示を行うとともに、搾乳時に、少なくとも前記コントローラから前記搾乳ユニットの動作期間に係わる動作期間データとなるパルセータの動作を制御するパルス制御信号のサイクル数の累積データを収集し、この動作期間データに基づいて前記寿命期間の設定の変更及び表示の変更を行い、前記所定の部品の、全寿命期間,及び現在における使用可能な残期間又は現在の使用済期間とを、数値表示部及び/又はグラフィック表示部を用いた前記表示部により表示することを特徴とする搾乳機のメンテナンス方法。」
とあるのを、
「乳牛に対して搾乳を行う搾乳ユニット及びこの搾乳ユニットに付属する少なくとも表示部を有するコントローラを備える搾乳機のメンテナンスを行う際における搾乳機のメンテナンス方法であって、予め、前記搾乳ユニットに係わるティートカップに備える所定の部品となるティートカップライナの寿命期間に対する初期データを設定し、かつ前記表示部に前記初期データに対応する寿命期間の表示を行うとともに、搾乳時に、少なくとも前記コントローラから前記搾乳ユニットの動作期間に係わる動作期間データとなるパルセータの動作を制御するパルス制御信号のサイクル数の累積データを収集し、この動作期間データに基づいて前記寿命期間の設定の変更及び表示の変更を行い、前記所定の部品の、全寿命期間,及び現在における使用可能な残期間又は現在の使用済期間とを、数値表示部及び/又はグラフィック表示部を用いた前記表示部により表示するとともに、洗浄時の劣化要因を考慮して前記初期データを設定し、又は一回の洗浄に要する補正値により洗浄時に補正することを特徴とする搾乳機のメンテナンス方法。」
とする補正を含むものである。

本件補正後の請求項1は、補正前の請求項1の記載において、ティートカップライナの寿命期間に対する初期データに関して、「洗浄時の劣化要因を考慮して前記初期データを設定し」との限定を付加するとともに、「動作期間データ」又は「累積データ」に関して「一回の洗浄に要する補正値により洗浄時に補正する」ことの限定を付加するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されたとおりのものと認める。

2-3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特表2001-526056号公報(以下「引用例1」という。)、特開平6-70655号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の各事項が記載されている。
[引用例1について](下線は当審で付与)
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 動物関連作業を実施するためのロボット(6)を含む動物関連装置であって、前記ロボットが制御手段(23)、及び前記制御手段と組み合わされた少なくとも一つの動物関連手段(12a,12b)と組み合わされ、前記ロボットが前記動物関連手段を動物に向けて動かすのに適合したロボット腕(8)を備えているものにおいて、
記録手段(20a,20b,---20g)が累積実行値を記録するために設けられ、前記制御手段が予め定められたしきい値が達成されたとき信号を発生するのに適合されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】 前記記録手段(20a,20b,---20g)が前記の少なくとも一つの動物関連手段の実行値を記録するのに適合されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】 前記記録手段(20a,20b,---20g)が前記ロボット(6)の駆動手段(22)の実行値を記録するのに適合されている請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】 前記実行値が全動物関連作業の実行時間である請求項1から3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】 前記の予め定められたしきい値が前記の少なくとも一つの動物関連手段、前記ロボット及び前記全動物関連作業のそれぞれに対して設定されている請求項1から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】 前記動物関連手段がシェルと介在空間を形成するライナーとを備えた乳頭カップ(12a)を持つ搾乳器具を含み、前記空間が脈動減圧を作るためのパルセーター(26)を介して減圧源(24)に連結可能であり、前記パルセーターが前記制御手段(23)と組み合わされており、前記制御手段が前記パルセーターの累積実行値を記録するのに適合されている請求項1?5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】 前記実行値が前記パルセーター(26)の実行時間である請求項6に記載の装置。
【請求項8】 前記実行値が前記パルセーター(26)により発生された脈動の数である請求項6または7に記載の装置。」


(1b)「 【0001】
技術背景
本発明は動物関連作業を実施するためのロボットを含み、前記ロボットが制御手段、及び前記制御手段と組み合わされた少なくとも一つの動物関連手段と組み合わされており、前記ロボットが前記動物関連手段を動物に向けて動かすのに適合したロボット腕を備えている動物関連装置に関する。」

(1c)「 【0003】
発明の目的
メンテナンスを殆ど必要としない、改良された装置を提供することがこの発明の目的である。
【0004】
発明の概要
この目的は冒頭に規定された種類の装置により達成され、それは累積実行値を記録するために記録手段が設けられており、前記制御手段が予め定められたしきい値が達成されたとき信号を発生するのに適合されていることを特徴とする。
【0005】
特に、前記記録手段は前記の少なくとも一つの動物関連手段の実行値を記録するのに適合されている。
【0006】
これに代えて、または追加的に前記記録手段は前記ロボットの駆動手段の実行値を記録するのに適合されている。
【0007】
好ましくは、前記実行値は全動物関連作業の実行時間である。
【0008】
これによって、全装置に関するメンテナンスが必要である時期が制御手段により確立される。
【0009】
適当には、前記の予め定められたしきい値は前記の少なくとも一つの動物関連手段、前記ロボット及び前記全動物関連作業のそれぞれに対して設定される。これによって、例えば摩滅または健康上の要求から出てくる実行値を前もって設定することが可能である。
【0010】
好ましくは、前記動物関連手段はシェルと介在空間を形成するライナーとを備えた乳頭カップを持つ搾乳器具を含み、前記空間は脈動減圧を作るためのパルセーターを介して減圧源に連結可能であり、前記パルセーターは前記制御手段と組み合わされており、前記制御手段は前記パルセーターの累積実行値を記録するのに適合されている。
【0011】
特に、前記実行値は前記パルセーターの実行時間である。これに代えて、または追加的に、前記実行値は前記パルセーターにより発生された脈動の数である。これにより、ライナーが交換される必要がある時期を確立することができる。」

(1d)「 【0020】
図2は図1の装置をより詳細に概略的に示す。ロボット腕8はグリッパー10により乳頭カップ12aをグリップする。画像取得装置14を持つロボット腕8は制御手段23と組み合わされた空気圧または油圧シリンダー22の形の駆動手段により搾乳される動物の乳房21bの乳頭21aに向けて動かされる。
【0021】
乳頭カップ12aは一般的に知られた種類のものであり、シェルと介在空間を形成するライナーとを含み、それはパルセーター26を介して減圧源に連結されている。ライナーの内部は減圧源24により作られた搾乳減圧に連結(図示せず)されている。
【0022】
各シリンダー22はタイマーの形の記録手段20bを備えており、これがシリンダー22の実行時間を記録する。更に、画像取得手段14及び減圧源24がそれらの実行時間をそれぞれ記録するような記録手段20c,20dを備えている。
【0023】
パルセーター26はまた記録手段20eを備えているが、パルセーターの実行時間を測定するタイマー、またはパルセーター26により発生された脈動の数を数える脈動カウンターの形のいずれかである。
【0024】
全ての乳頭カップ12a(図には一つのみ示されているが、もちろん搾乳される各乳頭のために一つの乳頭カップが設けられている)のために一つのパルセーター26を設け、または各乳頭カップ12aのために一つのパルセーターを設けることができる。後者の場合、パルセーター26当たり一つの記録手段20eが設けられる。」

(1e)「 【0034】
搾乳完了後、パルセーター26が遮断され、タイマー20eにより実行時間及び/または脈動の数が記録される。乳頭引き込み手段(図示せず)、例えば乳頭カップに連結されたロープを備えた空気圧モーターの形のもの、が乳頭カップを取り外し、それを収納位置に戻す。もちろん、また乳頭カップ引き込み手段が記録手段を備えることもできる。」

(1f)「 【0037】
動物関連作業が実施される毎に、各記録手段20a,20b等が開始し、記録された値がもしあるならそれ以前に実施された動物関連作業で既に記録されたものに追加される。従ってそのような値を累積するためにメモリーが設けられる。
【0038】
制御手段23は制御手段がその要素または全装置に関してサービスが実施されねばならない信号を発生する前に、好ましくは各要素19,22等の最大実行時間またはパルセーター26の脈動の最大数を設定される。例として、制御手段はパルセーターの最大実行時間またはその脈動の最大数(この最大時間がしきい値を構成する)から出てくる、乳頭カップライナーが交換されねばならない時期の信号を発生する。」

(1g)「 【0043】
この発明は牛、羊、やぎ、馬及び水牛のような全ての種類の搾乳動物に関する。」

以上の記載によると、引用例1には、
「牛の搾乳を実施する動物関連手段が組み合わされた動物関連装置における制御手段が予め定められたしきい値が達成されたとき信号を発生する方法であって、
前記動物関連手段がシェルと介在空間を形成するライナーとを備えた乳頭カップを持つ搾乳器具を含み、前記空間が脈動減圧を作るためのパルセーターを介して減圧源に連結可能であり、
前記パルセーターが制御手段と組み合わされており、前記制御手段が前記パルセーターにより発生された脈動の数を累積実行値として記録するのに適合され、
前記制御手段は、パルセータの脈動の最大数が設定され、脈動の最大数から出てくる乳頭カップライナーが交換されねばならない時期の信号を発生する方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用例2について]
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 搾乳具及びディスプレイ(82)付きコンピュータ(85)を備える搾乳ロボットを有する雌牛等の搾乳動物の自動搾乳機において、信号装置を備える複数個の交換可能な部品を有し、該交換可能な部品のいずれかが故障した場合、ディスプレイ(82)にどの部品が故障しているかが表示されることを特徴とする雌牛等の搾乳動物の自動搾乳機。」

(2b)「【0004】上記の目的を達成するために本発明による自動搾乳機の特徴は、信号装置を備える複数個の交換可能な部品(parts)を有し、交換可能な部品が故障した場合、前記ディスプレイにどの部品が故障しているかを表示することである。
【0005】このようにして、搾乳具のどの部品が正しく機能していないかということを使用者はスクリーンを通して知ることができる。同様に、目に見えない故障を使用者は即座に見ることができるようになる。したがって使用者は故障の早期段階で迅速かつ正確に対応できるようになる。」

以上の記載より、引用例2には
「自動搾乳機において、使用者が故障の早期段階で迅速に対応できるように交換可能な部品が故障しているかの表示を行うディスプレイを設ける。」技術事項が記載されている。

2-4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「牛の搾乳を実施する」ことは、その機能・作用からみて本願補正発明の「乳牛に対して搾乳を行う」ことに相当する。
以下、同様に「動物関連手段」は、「搾乳ユニット」に、「動物関連装置」は「搾乳機」に、「乳頭カップ」は、「ティートカップ」に、「ライナー」は、「ティートカップライナ」に、「パルセーター」は、「パルセータ」に、「制御手段」は、「コントローラ」に、「脈動の数」は、「サイクル数」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「累積実効値」は、本願補正発明の「累積データ」に相当し、「動作期間に係わる動作期間データ」でもある。
また、引用発明の「前記パルセーターが制御手段と組み合わされており、前記制御手段が前記パルセーターにより発生された脈動の数を累積実行値として記録するのに適合され、」は、本願補正発明の「搾乳時に、少なくとも前記コントローラから前記搾乳ユニットの動作期間に係わる動作期間データとなるパルセータの動作を制御するパルス制御信号のサイクル数の累積データを収集し、」と「搾乳時に、少なくとも前記コントローラから前記搾乳ユニットの動作期間に係わる動作期間データとなるパルセータのサイクル数の累積データを収集し」の限りにおいて一致する。
そして、引用発明の「予め定められたしきい値」は、動物関連手段に対して摩滅等の要求から設定され、具体的には、パルセータの脈動の最大数であって、乳頭カップライナーが交換されなければならない時期に対するものであることから、引用発明が上記「予め定められたしきい値」を備えていることは、本願補正発明の「予め、前記搾乳ユニットに係わるティートカップに備える所定の部品となるティートカップライナの寿命期間に対する初期データを設定」することを意味する。
引用発明の「乳頭カップライナーが交換されねばならない時期の信号を発生」することは、明らかに累積実行値に基づいていることも考慮すると、本願補正発明の「動作期間データに基づいて前記寿命期間の設定の変更及び表示の変更を行い、前記所定の部品の、全寿命期間,及び現在における使用可能な残期間又は現在の使用済期間とを、数値表示部及び/又はグラフィック表示部を用いた前記表示部により表示する」こととは、「動作期間データに基づいて報知する」の限りにおいて一致する。
引用発明の「信号を発生する方法」は、これによってメンテナンスが必要である時期を確立する(引用例1の【0008】を参照。)のであるから、本願補正発明の「メンテナンス方法」に相当する。
よって、両者は、
「乳牛に対して搾乳を行う搾乳ユニット及びこの搾乳ユニットに付属するコントローラを備える搾乳機のメンテナンスを行う際における搾乳機のメンテナンス方法であって、予め、前記搾乳ユニットに係わるティートカップに備える所定の部品となるティートカップライナの寿命期間に対する初期データを設定し、搾乳時に、少なくとも前記コントローラから前記搾乳ユニットの動作期間に係わる動作期間データとなるパルセータのサイクル数の累積データを収集し、この動作期間データに基づいて報知する搾乳機のメンテナンス方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本願補正発明のコントローラは、「表示部を有」し、「表示部に前記初期データに対応する寿命期間の表示を行うとともに、」「動作期間データに基づいて前記寿命期間の設定の変更及び表示の変更を行い、前記所定の部品の、全寿命期間,及び現在における使用可能な残期間又は現在の使用済期間とを、数値表示部及び/又はグラフィック表示部を用いた前記表示部により表示する」のに対し、引用発明の制御手段は、乳頭カップライナーが交換されねばならない時期の信号を発生するものの、そのような表示部の特定がない点。

相違点2:パルセータのサイクル数の検出に、本願補正発明は、「パルセータの動作を制御するパルス制御信号」を用いているのに対して、引用発明は、「パルセーターの脈動数」をどのように検出しているか明らかでない点。

相違点3:本願補正発明は、「洗浄時の劣化要因を考慮して前記初期データを設定し、又は一回の洗浄に要する補正値により洗浄時に補正する」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

2-5.判断
そこで、上記各相違点を検討する。

相違点1について
引用例1に、「ライナーが交換される必要がある時期を確立することができる。」(段落0011)とされているとおり、引用発明は、ライナーの交換時期を確立することを目的としており、使用時においてライナーの使用頻度や残りの使用できる回数を把握したいという課題が内在しているといえる。そして引用例2に「自動搾乳機において、使用者が故障の早期段階で迅速に対応できるように交換可能な部品が故障しているかの表示を行うディスプレイを設ける。」技術的事項、すなわち、自動搾乳機において交換が必要な部品に係る表示を行うためにディスプレイを設けることが記載されている。
よって、引用発明において、引用例2に記載された技術的事項を参酌して、ライナーの交換時期を把握するために表示部を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、表示部にどのような情報を表示するかは、当業者が適宜選択し得る設計事項であるといえるところ、機器の残りの寿命を機器の動作時間により算出し表示を行うことは、例えば特開2007-157018号公報の段落0007及び特開平5-324953号公報の段落0005にもあるように周知技術であるといえる(以下、「周知技術1」という。)。
さらに、特開2010-103761号公報には、バッテリの残容量の表示に関して、バッテリの残容量を確実かつ具体的に判断できるようにするために、満充電の容量に対する残容量の割合を表示することが記載されており(段落0016-段落0018、段落0038、段落0045及び図4(A)等参照。)、消耗品の消耗量を把握するために消耗されていないときの消耗品の量と、消耗された時点での消耗品の量を表示することも周知技術であるといえる(以下、「周知技術2」という。)。
上記各周知技術を踏まえれば、引用発明において、ライナーの交換時期を把握し、適切にメンテナンスを行うために、表示部として、全寿命期間及び現在における使用可能な残期間を表示するものを採用することも、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明において、適切にメンテナンスが行えるようにするために、引用例2に記載された技術的事項、周知技術1及び周知技術2を踏まえて、全寿命期間及び現在における使用可能な残期間を表示する表示部を採用し相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

相違点2について
引用発明において、制御手段は、パルセータを駆動させるためにパルス制御信号を発生させていることは自明であり、パルセータの脈動数の検出をパルセータの動作を制御するパルス制御信号に基づいて行う程度のことは、当業者が容易に想到し得ることである。

相違点3について
搾乳機は搾乳作業が終了した後念入りに洗浄及び消毒が行われ、ティートカップライナは洗浄液等によって劣化を受けることは技術常識であるから(例えば、実公平7-25019号公報第2欄第1-第2行、第3欄第4行-第5行、同欄第25行-第29行参照。)、引用発明において、より正確なメンテナンス時期を得るために、洗浄時の劣化要因を考慮してしきい値の設定を行うか、又は累積実効値を補正すること、すなわち、相違点3に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された技術事項、技術常識、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成28年3月8日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年8月7日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照。)により特定されるとおりのものと認める。

4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3.引用例」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2-2.本願補正発明」で検討した本願補正発明から、ティートカップライナの寿命期間に対する初期データ、動作期間データ及び累積データについて「洗浄時の劣化要因を考慮して前記初期データを設定し、又は一回の洗浄に要する補正値により洗浄時に補正する」ことの限定を省いたものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は前記「2-4.対比」の相違点1及び2で相違し、これら各相違点は、「2-5.判断」で示したように当業者が容易になし得たことであるので、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された技術事項、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-30 
結審通知日 2017-04-05 
審決日 2017-04-18 
出願番号 特願2011-240272(P2011-240272)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大久保 智之  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 莊司 英史
鳥居 稔
発明の名称 搾乳機のメンテナンス方法  
代理人 下田 茂  

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