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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1328964
審判番号 不服2016-10600  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-13 
確定日 2017-06-27 
事件の表示 特願2012-536382「コンテンツ供給装置、コンテンツ供給方法、コンテンツ再生装置、コンテンツ再生方法、プログラム、およびコンテンツ視聴システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月 5日国際公開、WO2012/043358、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 経緯
本願は、2011年(平成23年)9月22日(パリ条約による優先権主張2010年10月1日、米国、2011年7月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成27年10月 7日:拒絶理由の通知
平成27年11月18日:手続補正
平成28年 4月25日:拒絶査定
平成28年 4月28日:拒絶査定の謄本の送達
平成28年 7月13日:拒絶査定不服審判の請求
平成28年 7月13日:手続補正

第2 原査定の概要
原査定の理由は、概略、次のとおりである。

[査定の理由]
理由1:この出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:この出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:国際公開第2010/109860号

第3 本願発明
1 本願請求項1?14に係る発明
本願請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明14」という。)は、平成27年11月18日付け、平成28年7月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
コンテンツ再生装置に対して映像コンテンツを供給するコンテンツ供給装置において、
再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を前記コンテンツ再生装置に実行させるためのビデオスイッチコマンドとして、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせを生成する生成部と、
生成された前記ビデオスイッチコマンドを埋め込んだ映像コンテンツを放送網を介して放送する放送部と、
映像コンテンツをインターネットを介して配信する配信部と
を備えるコンテンツ供給装置。
【請求項2】
前記生成部は、再生する映像コンテンツを切り替えた後、切替え前の映像ストリームに復帰するに際して、ループバックを行うか否かを指示するための要素を含む前記ビデオスイッチコマンドを生成する
請求項1に記載のコンテンツ供給装置。
【請求項3】
前記生成部は、切替え先の映像コンテンツを取得するに際してユーザ認証を行うか否かを指示するための要素を含む前記ビデオスイッチコマンドを生成する
請求項1または2に記載のコンテンツ供給装置。
【請求項4】
前記生成部は、ビデオスイッチコマンドとして、ユーザが指定する視点に対応する映像コンテンツに切替え可能な状態とさせるイネーブルスイッチコマンド、または、ユーザが指定する視点に対応する映像コンテンツに切替え可能な状態を終了させるディセーブルスイッチコマンドを生成する
請求項1から3のいずれかに記載のコンテンツ供給装置。
【請求項5】
前記配信部も、生成された前記ビデオスイッチコマンドを埋め込んだ映像コンテンツをインターネットを介して配信する
請求項1から4のいずれかに記載のコンテンツ供給装置。
【請求項6】
コンテンツ再生装置に対して映像コンテンツを供給するコンテンツ供給装置のコンテンツ供給方法において、
コンテンツ供給装置による、
再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を前記コンテンツ再生装置に実行させるためのビデオスイッチコマンドとして、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせを生成する生成ステップと、
生成された前記ビデオスイッチコマンドを埋め込んだ映像コンテンツを放送網を介して放送する放送ステップと、
映像コンテンツをインターネットを介して配信する配信ステップと
を含むコンテンツ供給方法。
【請求項7】
コンテンツ再生装置に対して映像コンテンツを供給するコンピュータを、
再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を前記コンテンツ再生装置に実行させるためのビデオスイッチコマンドとして、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせを生成する生成部と、
生成された前記ビデオスイッチコマンドを埋め込んだ映像コンテンツを放送網を介して放送する放送部と、
映像コンテンツをインターネットを介して配信する配信部と
して機能させるプログラム。
【請求項8】
コンテンツ供給装置から供給される複数の映像コンテンツを切り替えて再生するコンテンツ再生装置において、
放送網を介して放送された映像コンテンツ、またはインターネットを介して配信された映像コンテンツを取得する取得部と、
取得された前記映像コンテンツに埋め込まれているビデオスイッチコマンドを解析する解析部と、
前記ビデオスイッチコマンドの解析結果に従い、再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を制御する制御部と
を備え、
前記ビデオスイッチコマンドは、
再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせ、
または、
前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせである
コンテンツ再生装置。
【請求項9】
放送網を介して放送された前記映像コンテンツをバッファリングするバッファ部を
さらに備え、
前記ビデオスイッチコマンドは、再生する映像コンテンツを切り替えた後、切替え前の映像ストリームに復帰するに際して、ループバックを行うか否かを指示するための要素を含む
請求項8に記載のコンテンツ再生装置。
【請求項10】
前記コンテンツ再生装置は、テレビジョン受像機に内蔵されている
請求項8に記載のコンテンツ再生装置。
【請求項11】
前記コンテンツ再生装置は、セットトップボックスに内蔵されている
請求項8に記載のコンテンツ再生装置。
【請求項12】
コンテンツ供給装置から供給される複数の映像コンテンツを切り替えて再生するコンテンツ再生装置のコンテンツ再生方法において、
コンテンツ再生装置による、
放送網を介して放送された映像コンテンツ、またはインターネットを介して配信された映像コンテンツを取得する取得ステップと、
取得された前記映像コンテンツに埋め込まれているビデオスイッチコマンドを解析する解析ステップと、
前記ビデオスイッチコマンドの解析結果に従い、再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を制御する制御ステップと
を含み、
前記ビデオスイッチコマンドは、
再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせ、
または、
前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせである
コンテンツ再生方法。
【請求項13】
コンテンツ供給装置から供給される複数の映像コンテンツを切り替えて再生するコンピュータを、
放送網を介して放送された映像コンテンツ、またはインターネットを介して配信された映像コンテンツを取得する取得部と、
取得された前記映像コンテンツに埋め込まれているビデオスイッチコマンドを解析する解析部と、
前記ビデオスイッチコマンドの解析結果に従い、再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を制御する制御部と
して機能させ、
前記ビデオスイッチコマンドは、
再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせ、
または、
前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせである
プログラム。
【請求項14】
コンテンツ供給装置とコンテンツ再生装置からなるコンテンツ視聴システムにおいて、
コンテンツ供給装置は、
再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を前記コンテンツ再生装置に実行させるためのビデオスイッチコマンドとして、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせを生成する生成部と、
生成された前記ビデオスイッチコマンドを埋め込んだ映像コンテンツを放送網を介して放送する放送部と、
映像コンテンツをインターネットを介して配信する配信部と
を備え、
コンテンツ再生装置は、
放送網を介して放送された映像コンテンツ、またはインターネットを介して配信された映像コンテンツを取得する取得部と、
取得された前記映像コンテンツに埋め込まれているビデオスイッチコマンドを解析する解析部と、
前記ビデオスイッチコマンドの解析結果に従い、再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を制御する制御部と
を備える
コンテンツ視聴システム。」

2 本願発明1の分説
本願発明1を分説すると、次のとおりである。

(本願発明1)
「(A)コンテンツ再生装置に対して映像コンテンツを供給するコンテンツ供給装置において、
(B)再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を前記コンテンツ再生装置に実行させるためのビデオスイッチコマンドとして、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせを生成する生成部と、
(C)生成された前記ビデオスイッチコマンドを埋め込んだ映像コンテンツを放送網を介して放送する放送部と、
(D)映像コンテンツをインターネットを介して配信する配信部と
(E)を備えるコンテンツ供給装置。」

((A)?(E)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)

第4 引用文献1、引用発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。)

「[0002] 現在、技術の向上に従って、ネットワーク側から端末(以下、UE:User Equipmentとも記載)へ配信されるコンテンツの情報量及びデータ量は増大してきている。・・・」

「[0020] 図1には、複数のUE10がネットワーク側からのコンテンツを使用する状態が模式的に図示されている。なお、ネットワーク側には様々なコンテンツ配信機構が存在し得るが、図1には一例として、コンテンツサーバ30からインターネットなどの媒体を通じてコンテンツが配信される場合(図1の識別子α)、コンテンツサーバ30からテレビジョン放送やラジオ放送など放送ネットワーク40を通じてコンテンツが配信される場合(図1の識別子β)、コンテンツサーバ30から3Gネットワーク(携帯電話ネットワーク)50を通じてコンテンツが配信され、別のUE10との通信を行っている場合(図1の識別子γ)が図示されている。本発明では様々なコンテンツの種別や状態に対応しており、放送、ストリーミング、アップロード、ダウンロード、通信(音声/画像/映像)などの様々なコンテンツが混在していてもよい。」

「[0023] 本発明では、コンテンツを提供するセッション(若しくはコンテンツ自体)や通信セッション内のデータに、コンテンツ切り換えのためのトリガ情報が埋め込まれる。なお、以降の説明では、トリガ情報がコンテンツ(あるいは、セッション)に含まれると表現するが、この表現は、トリガ情報がネットワーク側から送信される任意のデータ(コンテンツ、セッション、通信データなどを含む)に含まれる場合を表しているとする。」

「[0025] また、本発明では、コンテンツサーバ30、セッション制御サーバ20、若しくは追加のネットワーク側装置などによって、提供するコンテンツに合わせてコンテンツ切り換えのシーケンス(シーケンス情報)が設定されるとともに、コンテンツに挿入するトリガ情報が生成される。そして、ネットワーク側からUE10へシーケンス情報が渡され、UE10は、シーケンス情報に基づいて、使用コンテンツに含まれるトリガ情報に対応するトリガアクションを特定して、そのトリガアクションに従ったコンテンツの切り換え処理を行う。この場合、セッション制御サーバ20がコンテンツ配信のシナリオ(すなわち、シーケンス)を把握しており、コンテンツサーバ30に対してトリガ情報の挿入タイミングやコンテンツ配信の開始タイミングなどを指示することによって同期処理を行うことが望ましいが、各コンテンツサーバ30で必要なコンテンツ配信のシナリオを把握しておく場合(各コンテンツサーバ30がセッション制御サーバ20の機能を実装している場合)や、あらかじめ固定的にトリガ情報が埋め込まれているコンテンツを準備して配信したりする場合などには、セッション制御サーバ20は必ずしも設けられる必要はない。」

「[0028] 図2において、例えば、あるUE10がコンテンツを使用するセッションAを開始したとする。このとき、UE10においてセッションAが設定されるが、例えばセッションAに埋め込まれたトリガ情報を検出した場合、UE10は、このトリガ情報に基づいて別のセッションBへの切り換えを行う(図2の符号a)。さらに、セッションBが設定された状態でセッションBに埋め込まれたトリガ情報を検出した場合には、UE10は、このトリガ情報に基づいて別のセッションCへの切り換えを行う(図2の符号b)。また、さらに、セッションCが設定された状態でセッションCに埋め込まれたトリガ情報を検出した場合には、UE10は、このトリガ情報に基づいて別のセッションDへの切り換えを行う(図2の符号c)。このように、UE10は、トリガ情報の検出を契機としてセッションの切り換えを行っていく。」

「[0068] また、上述の第2の例の場合に、UE10は、検出されたトリガ情報に記載されているトリガアクションをすべて受け入れて、そのトリガアクションを行うことも可能であるが、特定のトリガ情報に対応したトリガアクションのみを行うことも可能である。例えば、トリガ情報にどのような端末向けかを示す情報などが記載されており、UE10自身がそのトリガ情報によって示されている端末に該当しているかを判断したり、あるいは、単一のトリガ情報に複数の選択肢(複数のトリガアクション)が記載されており、どの選択肢を選択することがふさわしいかを判断したりすることも可能である。これによって、単一のトリガ情報に対してUE10ごとに異なる動作をさせることが可能になる。
[0069] なお、このようにトリガ情報に含まれている情報量が多く、また、トリガ情報に係る判断処理などの処理量が多くなる場合には、実際にトリガアクションを行うまでに時間を要する可能性もある。このような可能性を考慮して、例えば、トリガ情報に実際のアクションを起こすタイミングが記載されていてもよい(例えば、2つのセッションの選択肢から1つを選び、5秒後に選択したセッションへ切り換えるなど)。」

「[0072] 本発明では、コンテンツ中に(コンテンツの状態に合わせて)トリガ情報を挿入できるので、単にプログラム(タイムテーブル)が決まっている放送コンテンツだけでなく、その他のメディア(通信セッションをも含む)を合わせて扱う際にセッション制御サーバの負荷を低減できるようになる。また、シーケンス情報を利用することにより、既存のメディアに存在する状態変化をトリガとすることが可能である。さらに、端末の状態(通信品質、位置、移動速度など)やユーザのプレファレンスなどに応じて、コンテンツ変更(ビットレートの変更、任意コンテンツ/放送コンテンツの切り換えなど)を行うためのセッション切り換えを指示するようにも拡張可能である。」

「[0075] トリガアクションに記載される付加情報として、カメラアングルの選択に関する情報が用いられてもよい。ネットワーク側から複数のコンテンツをまとめ、並行して1つのコンテンツとして提供する場合(例えば、マルチアングル映像や、多国語対応の映像音声などが複数のセッションに振り分けられているような場合)、コンテンツサーバ30から配信されるコンテンツに、カメラアングルなどの選択や変更可能なタイミングでトリガ情報が挿入される。UE10は、このトリガ情報を検出すると、トリガ情報に対応するトリガアクションを見つけるとともに付加情報を参照し、セッションによってカメラアングルの選択が可能なことを把握する。この場合、UE10は、ユーザの入力やプレファレンスなどに従って、所望のカメラアングルに関連するセッションへの切り換えを行うことが可能となる。
[0076] また、トリガアクションに記載される付加情報として、特別に選ばれたUE10であることを示す情報が用いられてもよい。例えば、放送やマルチキャストによって配信されているコンテンツを複数のUE10が使用(主に、受信)している状態において、ネットワーク側が、特定のUE10に質問を行って回答を求める場合などに、特定のトリガ情報(特定のUE10のみが選ばれたことを示す情報に対応)をコンテンツに挿入する。なお、複数のUE10のうちの特定のUE10のみがこのトリガ情報に対応するトリガアクションを行うことが可能である。特定のUE10は、このトリガ情報を検出すると、トリガ情報に対応するトリガアクションを見つけるとともに付加情報を参照し、自身が特別に選ばれたことを把握し、対応するトリガアクションを行う。対応するトリガアクションは、例えば、送信(送受信)が可能なセッションへのセッション切り換えに対応しており、これによって、特定のUE10は、質問に対する回答を行うことが可能となる。なお、ユーザのコンテンツへの参加が終了した時点で、UE10は、元のセッション(主に受信のみを行うセッション)に復帰するようにすることが望ましい。また、コンテンツへの参加中も前述のように複数のセッションを維持して、自身の参加している状態を並行して受信できるようにしてもよい(完全なセッションの切り換えではなく、セッションの追加を行う)。
[0077] また、トリガアクションに記載される付加情報として、ユーザのステータスやユーザ入力による条件を示す情報が用いられてもよい。この場合、例えば、1つのトリガに対して複数のトリガアクションが関連付けられており、さらに各トリガアクションにユーザのステータスやユーザ入力などの条件が付加情報として記載される。トリガ情報を検出したUE10は、UE10のステータスや入力に応じたトリガアクションを行い、これによって、各UE10における条件に応じて異なるセッションへ分岐させる。このようなトリガアクションを設定することで、放送やマルチキャストなどを用いたコンテンツにおけるマルチシナリオ(ユーザの選択、現在地、移動速度、アクセスネットワーク種別などの様々な条件に応じてストーリーが分岐し、途中経過や結末が異なるコンテンツへ誘導されるシナリオ)が提供可能となる。」

「[0079] また、トリガアクションに記載される付加情報として、セッション切り換えと同時にUE10が接続する無線チャンネル(周波数)の切り換えを行うよう指示する情報(さらに、切り換え先の周波数を特定する情報が含まれていてもよい)が用いられてもよい。この場合、無線チャンネルの切り換え準備に必要な期間にセッションが途切れてしまわないようにするため、実際の無線チャンネルの切り換え(セッション切り換え)のためのトリガ情報を挿入する前にその切り換え準備を行わせるためのトリガ情報が挿入されるようにしてもよく、指定期間の間に切り換え準備を行うアクションと、指定した時間に無線チャンネル/セッション切り換えを行うアクションの両方を、1つのトリガ情報によって指示してもよい。また、チャンネル(周波数)だけではなく、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)/LTE(Long Term Evolution)/WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)/WLAN(Wireless Local Area Network)などの異なるアクセスシステム(広い意味では異なる周波数に含まれる)に切り換えるよう指示することも可能である。」

2 引用文献1に記載された発明
上記1の記載事項によると、引用文献1には、端末に映像コンテンツを配信するコンテンツサーバが記載されており、このコンテンツサーバを引用発明として認定する。
コンテンツサーバの詳細は、以下のとおりである。

(1)コンテンツサーバ
段落[0020]によると、コンテンツサーバは、インターネットや放送ネットワークを通じて映像コンテンツをUEに配信する。ここで、UEは端末である(段落[0002])。
したがって、『コンテンツサーバ』は、『端末に映像コンテンツを配信する』ものである。

(2)トリガ情報を生成する生成部
(2-1)トリガ情報
段落[0023]によると、コンテンツのデータ内にコンテンツを切り換えのためのトリガ情報が埋め込まれ、段落[0025]によると、端末(UE)は、コンテンツに含まれるトリガ情報に対応するトリガアクションを特定して、そのトリガアクションに従ったコンテンツの切り換え処理を行う。

トリガ情報は、
トリガ情報の検出を契機としてセッションの切り換えを行う(段落[0028])、
トリガ情報に複数のトリガアクションの選択肢が記載されており、端末(UE)がどの選択肢を選択することがふさわしいかを判断し、切り換えを行う(段落[0068])、
トリガ情報として、2つのセッションの選択肢から1つを選び、5秒後に切り換える(段落[0069])、
トリガ情報として、カメラアングルをユーザ入力に従って選択し、切り換えを行う(段落[0075])、
トリガ情報として、ユーザの選択により異なるコンテンツに切り換えを行う(段落[0077])、
切り換えのためのトリガ情報を挿入する前に切り換え準備を行うトリガ情報を挿入する(段落[0079])、すなわち、切り換え準備を行うトリガ情報と切り換えのためのトリガ情報を挿入し、切り換えのためのトリガ情報により切り換えを行う、
もののうちのいずれかを含むものである。

(2-2)トリガ情報を生成する生成部
段落[0025]によると、コンテンツサーバはコンテンツに挿入するトリガ情報を生成するから、コンテンツサーバは、『トリガ情報を生成する生成部』を備えているといえる。

(3)配信部
段落[0020]によると、コンテンツサーバは、インターネットや放送ネットワークを通じて映像コンテンツをUEに配信し、ここで、UEは端末である(段落[0002])。
そうすると、コンテンツサーバは、『映像コンテンツを放送ネットワークを通じて配信する配信部』、『映像コンテンツをインターネットを通じて配信する配信部』を備えているといえる。
上記(2-1)のとおり、コンテンツのデータ内にコンテンツを切り換えのためのトリガ情報が埋め込まれ、上記(2-2)のとおり、「トリガ情報」は、『トリガ情報を生成する生成部』で生成されるから、『映像コンテンツを放送ネットワークを通じて配信する配信部』の「映像コンテンツ」は、「生成された前記トリガ情報を埋め込んだ映像コンテンツ」といえる。
したがって、コンテンツサーバは、『生成された前記トリガ情報を埋め込んだ映像コンテンツを放送ネットワークを通じて配信する配信部』を備えているといえる。

(4)以上まとめると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。この発明を以下「引用発明」という。

(引用発明)
「(a)端末に映像コンテンツを配信するコンテンツサーバにおいて、
(b) 映像コンテンツを切り換えるためのトリガ情報を生成する生成部であって、
(b1)ここでトリガ情報は、
(b1-1)トリガ情報の検出を契機としてセッションの切り換えを行う、
(b1-2)トリガ情報に複数のトリガアクションの選択肢が記載されており、端末がどの選択肢を選択することがふさわしいかを判断し、切り換えを行う、
(b1-3)トリガ情報として、2つのセッションの選択肢から1つを選び、5秒後に切り換える、
(b1-4)トリガ情報として、カメラアングルをユーザ入力に従って選択し、切り換えを行う、
(b1-5)トリガ情報として、ユーザの選択により異なるコンテンツに切り換えを行う、
(b1-6)切り換え準備を行うトリガ情報と切り換えのためのトリガ情報を挿入し、切り換えのためのトリガ情報により切り換えを行う、
(b1)もののうちのいずれかを含むものである、
(b)生成部と、
(c)生成された前記トリガ情報を映像コンテンツに埋め込んだ映像コンテンツを放送ネットワークを通じて配信する配信部と、
(d)映像コンテンツをインターネットを通じて配信する配信部と、
(e)を備えるコンテンツサーバ。」

なお、(a)?(e)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成a」等という。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 構成要件Aと構成aとを対比する。
引用発明の「端末」、「映像コンテンツを配信するコンテンツサーバ」は、それぞれ、本願発明1の「コンテンツ再生装置」、「映像コンテンツを供給するコンテンツ供給装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「コンテンツ再生装置に対して映像コンテンツを供給するコンテンツ供給装置」として一致する。

イ 構成要件Bと構成b、b1、b1-1?b1-6とを対比する。
引用発明の「トリガ情報」は、「映像コンテンツを切り換えるため」のものであり、構成b1-1?b1-6のうちのいずれかのものであるから、「再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を前記コンテンツ再生装置に実行させるためのビデオスイッチコマンド」といえる。
そうすると、引用発明の「映像コンテンツを切り換えるためのトリガ情報を生成する生成部」は、「再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を前記コンテンツ再生装置に実行させるためのビデオスイッチコマンドを生成する生成部」として、本願発明1と共通する。
しかしながら、「ビデオスイッチコマンド」が、引用発明においては、構成b1-1?b1-6のいずれかであるのに対し、本願発明1においては、
「再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせ」である点で相違する。

ウ 構成要件Cと構成cとを対比する。
引用発明における「映像コンテンツを放送ネットワークを通じて配信する」ことは、本願発明1の「映像コンテンツを放送網を介して放送する」ことに相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「生成された前記ビデオスイッチコマンドを埋め込んだ映像コンテンツを放送網を介して放送する放送部」を備える点で一致する。

エ 構成Dと構成dとを対比する。
本願発明1と引用発明とは、「映像コンテンツをインターネットを介して配信する配信部」を備える点で一致する。

オ 構成要件Eと構成eとを対比する。
上記アのとおり、本願発明1と引用発明とは、「コンテンツ供給装置」として一致する。

カ 以上より、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
コンテンツ再生装置に対して映像コンテンツを供給するコンテンツ供給装置において、
再生する映像コンテンツの切り替えに関する処理を前記コンテンツ再生装置に実行させるためのビデオスイッチコマンドを生成する生成部と、
生成された前記ビデオスイッチコマンドを埋め込んだ映像コンテンツを放送網を介して放送する放送部と、
映像コンテンツをインターネットを介して配信する配信部と
を備えるコンテンツ供給装置。

(相違点)
「生成部」が生成する「ビデオスイッチコマンド」が、
本願発明1においては、
「再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせ」であるのに対し、
引用発明においては、当該組み合わせではない点

(2)相違点についての判断
引用発明において「ビデオスイッチコマンド」に相当する「トリガ情報」は、
「(b1-1)トリガ情報の検出を契機としてセッションの切り換えを行う、
(b1-2)トリガ情報に複数のトリガアクションの選択肢が記載されており、端末がどの選択肢を選択することがふさわしいかを判断し、切り換えを行う、
(b1-3)トリガ情報として、2つのセッションの選択肢から1つを選び、5秒後に切り換える、
(b1-4)トリガ情報として、カメラアングルをユーザ入力に従って選択し、切り換えを行う、
(b1-5)トリガ情報として、ユーザの選択により異なるコンテンツに切り換えを行う、
(b1-6)切り換え準備を行うトリガ情報と切り換えのためのトリガ情報を挿入し、切り換えのためのトリガ情報により切り換えを行う、
(b1)もののうちのいずれかを含むものであ」り、
構成b1-1?b1-5は、「ビデオスイッチコマンド」に相当する「トリガ情報」によって端末の動作を制御するものであって、「生成部」は、「ビデオスイッチコマンド」として、「ビデオスイッチコマンド」の組み合わせを生成するものではない。
また、構成b1-6は、「切り換え準備を行うトリガ情報」と「切り換えのためのトリガ情報」との2つの「トリガ情報」によって端末の動作を制御するものであり、「生成部」は2つの「トリガ情報」の組み合わせを生成しているといえる。
しかしながら、引用発明は、本願発明1のような「ビデオスイッチコマンド」として、「プリセレクトコマンド」、「プリロードコマンド」、および「スイッチコマンド」を組み合わせたものではなく、「プリセレクトコマンド」および「スイッチコマンド」を組み合わせたものでもない。特に、引用文献1には、「再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド」についての開示はない。
そうすると、引用文献1をみても、引用発明において、「ビデオスイッチコマンド」として、「再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせ」を生成するようにする動機付けはない。また、相違点に係る構成が自明のこととも認められない。
したがって、当業者といえども、引用発明から、相違点に係る本願発明1の「ビデオスイッチコマンド」が、「再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせ」または「前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせ」であるという構成を容易に想到することはできない。

2 本願発明2?5について
本願発明2?5も、上記相違点に係る本願発明1の「ビデオスイッチコマンドとして、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせ」であるという同一の構成を有しているから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明6?14について
本願発明6?8、12?14は、本願発明1のカテゴリの異なる発明であって、上記相違点と同様の「ビデオスイッチコマンド」が「再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、再生する映像コンテンツの切り替えの実行の可否をユーザに確認させるプリセレクトコマンド、再生する映像コンテンツの切り替えタイミングに先行して、切替え先の映像コンテンツを取得させるプリロードコマンド、および、再生する映像コンテンツを切り替えさせるスイッチコマンドの組み合わせを生成するか、または、前記プリセレクトコマンドおよび前記スイッチコマンドの組み合わせ」であるという構成を有しているから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明9?11は、本願発明8を引用するから、本願発明8と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
上記第3?第5のとおり、本願発明1?14は、原査定において引用された引用文献1に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-13 
出願番号 特願2012-536382(P2012-536382)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 嘉宏  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 小池 正彦
冨田 高史
発明の名称 コンテンツ供給装置、コンテンツ供給方法、コンテンツ再生装置、コンテンツ再生方法、プログラム、およびコンテンツ視聴システム  
代理人 稲本 義雄  
代理人 西川 孝  

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