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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1328995
審判番号 不服2016-7086  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-13 
確定日 2017-06-08 
事件の表示 特願2013-546843「表示パネル及び表示パネルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日国際公開、WO2013/080261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年11月30日を国際出願日とする出願であって、平成27年3月26日付けで拒絶理由が通知され、同年5月8日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年9月28日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年10月28日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、平成28年3月16日付けで平成27年10月28日付けの手続補正の補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これに対して、平成28年5月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の(平成27年5月8日付けの手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項1である、
「 【請求項1】
基板と、
前記基板上であって、ゲート電極、第1電極及び第2電極を有するボトムゲート型の薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上に形成され、厚み方向に貫通するコンタクトホールを有する絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、前記コンタクトホールを通じて前記第2電極と電気的に接続される画素電極と、
前記コンタクトホールの上方、かつ、前記画素電極の上方に形成されるバンクと、
前記バンクに規定される発光層と、
前記コンタクトホールの下方に選択的に形成され、前記コンタクトホールの底面を底上げする高さ調整層と、
を備える
表示パネル。」
から、次のように補正されたものと認める。
「 【請求項1】
基板と、
前記基板上であって、ゲート電極、第1電極及び第2電極を有するボトムゲート型の薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上に形成され、厚み方向に貫通するコンタクトホールを有する絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、かつ、前記コンタクトホールを通じて前記第2電極と電気的に接続され、厚みが前記コンタクトホールの深さよりも小さい画素電極と、
前記コンタクトホールの上方、かつ、前記画素電極の上方に形成され、少なくとも一部が前記コンタクトホール内に存在するバンクと、
前記バンクに区画された複数の発光層と、
前記コンタクトホールの下方に選択的に形成され、前記コンタクトホールの底面を底上げする高さ調整層と、
を備える
表示パネル。」
(下線は、補正箇所である。)

2 補正の目的
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の、「画素電極」、「バンク」及び「発光層」の構成を限定する記載が追加されたものであるから、本件補正の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。

3 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項(上記「1」で、本件補正後の請求項1として記載した事項)により特定されるものと認められる。

4 引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2002-72963号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。)

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電極間に発光性材料を挟んだ素子(以下、発光素子という)を有する装置(以下、発光装置という)を含むモジュール(以下、発光モジュールという)に関する。特に発光性材料としてEL(Electro Luminescence)が得られる化合物を用いた発光素子(以下、EL素子という)を有する発光モジュールに関する。なお、有機ELディスプレイや有機発光ダイオード(OLED:OrganicLight Emitting Diode)は本発明の発光装置に含まれる。
【0002】また、本発明に用いることのできる発光性材料は、一重項励起もしくは三重項励起または両者の励起を経由して発光(燐光および/または蛍光)するすべての発光性材料を含む。」

イ 「【0034】
【実施例】〔実施例1〕本実施例では、本発明の発光モジュールに含まれる発光装置の断面構造(但し封止前の状態)について説明する。なお、本実施例では同一の絶縁体上にセンサ部、画素部および画素部を駆動する駆動回路を有した発光装置の例(但し封止前の状態)を示す。なお、センサ部はリセットTFTとそれに接続されたフォトダイオードを示し、駆動回路には基本単位となるCMOS回路を示し、画素部には一つの画素を示す。
【0035】図4において、400は絶縁体(絶縁基板、絶縁膜もしくは絶縁膜を表面に有した基板を含む)であり、その上にはセンサ部、駆動回路および画素部が形成されている。センサ部にはリセットTFT451およびフォトダイオード452が設けられている。また、駆動回路にはCMOS回路を構成するnチャネル型TFT453およびpチャネル型TFT454が設けられている。また、画素部にはスイッチングTFT455、電流制御TFT456およびEL素子457が設けられている。なお、各TFTは公知の如何なる構造のTFTを用いても良い。本実施例では、各TFTをすべてボトムゲート型TFT(具体的には逆スタガ型TFT)で形成する例を示すが、トップゲート型TFT(典型的にはプレーナ型TFT)を用いることも可能である。
【0036】また、本実施例ではセンサ部の回路構成は図1(B)に示す構造となっており、画素部の回路構成は図1(C)に示す構造となっている。ただし、このような回路構成に限らず、3個以上のTFTを用いても特に本発明の効果を妨げるものではない。
【0037】ここで絶縁体400上に形成された各TFTの構造について説明する。nチャネル型TFT453において、401はゲート電極、402はゲート絶縁膜、403はn型の半導体領域(以下、n型領域という)からなるソース領域、404はn型領域からなるドレイン領域、405aおよび405bはLDD(ライトドープドレイン)領域、406はチャネル形成領域、407チャネル保護膜、408は第1層間絶縁膜、409はソース配線、410はドレイン配線である。
【0038】また、pチャネル型TFT454において、411はゲート電極、402はゲート絶縁膜、412はp型の半導体領域(以下、p型領域という)からなるソース領域、413はp型領域からなるドレイン領域、414はチャネル形成領域、415チャネル保護膜、408は第1層間絶縁膜、416はソース配線、410はドレイン配線である。このドレイン配線はnチャネル型TFT453と共通の配線となっている。
【0039】また、リセットTFT451は基本的にはnチャネル型TFT453と同じ構造(ソース配線もしくはドレイン配線の構成が異なるだけ)であるので詳細な説明は省略する。なお、リセットTFT451はpチャネル型TFT454と同じ構造とすることも可能である。リセットTFT451の場合、n型領域からなるドレイン領域417とp型領域418との間に非晶質半導体膜(典型的には非晶質珪素膜)419を設け、PIN接合を有するフォトダイオード452が形成されている。なお、420はp型領域418に電圧を印加するための配線である。
【0040】また、スイッチングTFT455は基本的にはnチャネル型TFT453と同じ構造であるので詳細な説明は省略する。なお、スイッチングTFT455はpチャネル型TFT454と同じ構造とすることも可能である。また、ソース領域およびドレイン領域の間に二つ以上のチャネル形成領域を有した構造(マルチゲート構造)とすることも可能である。
【0041】また、電流制御TFT456は基本的にはpチャネル型TFT454と同じ構造(ドレイン配線が画素電極423となるだけ)であるので詳細な説明は省略する。なお、電流制御TFT456はnチャネル型TFT453と同じ構造とすることも可能である。
【0042】そして、リセットTFT451、フォトダイオード452、nチャネル型TFT453、pチャネル型TFT454、スイッチングTFT455および電流制御TFT456を覆って第2層間絶縁膜(平坦化膜)421が設けられている。
【0043】また、第2層間絶縁膜421には電流制御TFT456のドレイン領域422に到達するようにコンタクトホールが形成され、ドレイン領域422に接続された画素電極423が設けられている。画素電極423はEL素子の陽極として機能し、仕事関数の大きい導電膜、代表的には酸化物導電膜が用いられる。酸化物導電膜としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛もしくはそれらの化合物を用いれば良い。また、酸化物導電膜に酸化ガリウムを添加しても良い。
【0044】次に、424は画素電極423の端部を覆うように設けられた絶縁膜であり、本明細書中ではバンクと呼ぶ。バンク424は珪素を含む絶縁膜もしくは樹脂膜で形成すれば良い。樹脂膜を用いる場合、樹脂膜の比抵抗が1×10^(6)?1×10^(12)Ωm(好ましくは1×10^(8)?1×10^(10)Ωm)となるようにカーボン粒子もしくは金属粒子を添加すると、成膜時の絶縁破壊を抑えることができる。
【0045】次に、425はEL層である。なお、本明細書中では発光層に対して正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層もしくは電子阻止層を組み合わせた積層体をEL層と定義する。発光層は公知の如何なる材料を用いても良いし、発光層に公知のドーパント(代表的には蛍光色素)を添加しても良い。また、ドーパントとして、三重項励起を経由して発光する有機材料を用いると高い発光効率が得られるので好ましい。
【0046】次に、426はEL素子の陰極であり、仕事関数の小さい導電膜が用いられる。仕事関数の小さい導電膜としては、周期表の1族もしくは2族に属する元素を含む導電膜を用いれば良い。本実施例では、リチウムとアルミニウムとの化合物からなる導電膜を用いる。
【0047】なお、画素電極(陽極)423、EL層425および陰極426からなる積層体457がEL素子である。EL素子457で生成された発光は、絶縁体400側(図中矢印の方向)へと放射される。また、本実施例のように電流制御TFTにpチャネル型TFTを用いる場合、電流制御TFTのドレインにはEL素子の陽極を接続することが好ましい。
【0048】なお、陰極426を形成した後、EL素子457を完全に覆うようにして保護膜(パッシベーション膜)427を設けることは有効である。保護膜427としては、炭素膜、窒化珪素膜もしくは窒化酸化珪素膜を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層で用いる。
【0049】この際、カバレッジの良い膜を保護膜427として用いることが好ましく、炭素膜、特にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を用いることは有効である。DLC膜は室温から100℃以下の温度範囲で成膜可能であるため、耐熱性の低いEL層425の上方にも容易に成膜することができる。また、DLC膜は酸素に対するブロッキング効果が高く、EL層425の酸化を抑制することが可能である。そのため、この後に続く封止工程を行う間にEL層425が酸化するといった問題を防止できる。」

ウ 「【0064】〔実施例3〕本実施例では、実施例1とは異なる構造の発光装置(但し封止前の状態)の例を示す。なお、本実施例では実施例1と異なる部分について説明を行う。図4と同一の符号が付してある部分は実施例1の説明を参照すれば良い。
【0065】図7において、絶縁体400上にはセンサ部、駆動回路および画素部が設けられている。センサ部にはリセットTFT701およびフォトダイオード(フォトセンサ)702が含まれ、駆動回路にはnチャネル型TFT703およびpチャネル型TFT704からなるCMOS回路が含まれ、画素部にはスイッチングTFT705、電流制御TFT706およびEL素子707が含まれている。
【0066】まず、本実施例では各TFTのソース配線もしくはドレイン配線がチャネル形成領域を覆うように設けられている点に特徴がある。本実施例の構造では、外部からの光がTFTのチャネル形成領域に直接当たる方向から到達するため、その光を遮ることでリーク電流の増加を防ぐために図7のような形状としている。
【0067】また、本実施例では電流制御TFT706としてnチャネル型TFTを用いている。なお、電流制御TFT706は基本的には図4に示したnチャネル型TFT453と同じ構造(ソース電極の形状が異なるだけ)であるので詳細な説明は省略する。なお、電流制御TFT706はpチャネル型TFT454と同じ構造とすることも可能である。
【0068】また、本実施例では、フォトダイオード702の構造が実施例1と異なり、リセットTFT701のソースもしくはドレインとなる配線711、変換層712および透過側電極(光が透過する側の電極)713でフォトダイオードが形成され、透過側電極713には引出配線714が接続される。変換層712は実施例2の変換層604と同様の構成とすることができる。また、透過側電極713は酸化物導電膜を用いて形成すれば良い。
【0069】画素部においては、この引出配線714と同一工程で画素電極715が形成される。画素電極715はEL素子707の陰極として機能する電極であり、周期表の1族もしくは2族に属する元素を含む導電膜を用いて形成されている。本実施例では、リチウムとアルミニウムとの化合物からなる導電膜を用いる。なお、本実施例のように電流制御TFTに陰極が接続される場合は電流制御TFTとしてnチャネル型TFTを用いることが好ましい。
【0070】画素電極715が形成されたら絶縁膜(バンク)424を形成し、EL層716、酸化物導電膜からなる陽極717および保護膜718を形成し、図7の構造の発光装置(但し封止前の状態)が完成する。EL層716、陽極717および保護膜718の材料や構成に関しては実施例1を参考にすれば良い。
【0071】本実施例の断面構造を含む発光装置を用いることで、明るい環境においては視認性に優れ、暗い環境においては良好な視認性を確保しつつ消費電力の低い発光モジュールが得られる。なお、本実施例は図1および図2または図1および図3に示す構成と組み合わせて実施すれば良い。」

エ 「【図4】

【図7】



オ 上記記載事項エの図4及び7において、上記記載事項イの段落【0043】及び当業者の技術常識を参酌すれば、「第1層間絶縁膜408」には「ドレイン領域404」に到達するようにコンタクトホールが形成され、「ドレイン領域404」に接続された「ドレイン配線410」が設けられている構成が読み取れる。

カ 上記記載事項エの図7において、上記記載事項イの段落【0042】、上記記載事項エの図4及び当業者の技術常識を参酌すれば、「電流制御TFT706」を覆って「第2層間絶縁膜421」が設けられている構成が読み取れる。

キ 上記記載事項エの図7において、上記記載事項イの段落【0043】?【0044】,【0070】、上記記載事項エの図4及び当業者の技術常識を参酌すれば、「第2層間絶縁膜421」には「ドレイン配線410」に到達するようにコンタクトホールが形成され、「ドレイン配線410」に接続され、厚みがコンタクトホールの深さよりも小さい「画素電極423」が設けられていて、「絶縁膜(バンク)424」が「画素電極715」の端部を覆うように、また、コンタクトホールの上方にコンタクトホールを充填するように形成されている構成が読み取れる。

ク 上記記載事項エの図7から、「画素電極715」及び「絶縁膜(バンク)424」の上に「EL層716」が形成されている構成が読み取れる。

ケ 上記記載事項エの図7において、上記記載事項イの段落【0042】?【0043】、上記記載事項エの図4及び当業者の技術常識を参酌すれば、「第2層間絶縁膜421」に形成されたコンタクトホールの下方に「ドレイン配線410」が、また、「ドレイン配線410」の下方に「ドレイン領域404」が配置されている構成が読み取れる。

すると、上記引用文献1の記載事項及び該記載事項から読み取れる事項によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「絶縁体400上には画素部が設けられていて、画素部にはスイッチングTFT705、電流制御TFT706およびEL素子707が含まれており、
電流制御TFT706は、ゲート電極401、ゲート絶縁膜402、n型の半導体領域(以下、n型領域という)からなるソース領域403、n型領域からなるドレイン領域404、LDD(ライトドープドレイン)領域405aおよび405b、チャネル形成領域406、チャネル保護膜407、第1層間絶縁膜408、ソース配線409、ドレイン配線410を有するボトムゲート型TFTであって、かつ、第1層間絶縁膜408にはドレイン領域404に到達するようにコンタクトホールが形成され、ドレイン領域404に接続されたドレイン配線410が設けられており、
電流制御TFT706を覆って第2層間絶縁膜421が設けられていて、第2層間絶縁膜421にはドレイン配線410に到達するようにコンタクトホールが形成され、ドレイン配線410に接続され、厚みが該コンタクトホールの深さよりも小さい画素電極715が設けられていて、絶縁膜(バンク)424が画素電極715の端部を覆うように、また、該コンタクトホールの上方に該コンタクトホールを充填するように形成されており、
画素電極715及び絶縁膜(バンク)424の上にEL層716が形成されており、
第2層間絶縁膜421に形成されたコンタクトホールの下方にドレイン配線410が、また、ドレイン配線410の下方にドレイン領域404が配置されている、
発光装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2004-126554号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。)

ア 「【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、本実施の形態では、電気光学パネルの一例として液晶パネルを用いて説明する。
【0032】
(液晶パネルの第1実施形態)
液晶パネルの第1実施形態の構成について図1から図3に基づいて説明する。図1は、液晶パネルの画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素を示した等価回路図である。図2は、液晶パネルを構成するTFTアレイ基板上の隣接する複数の画素群を示した平面図であり、図3は図2におけるA-A’間の断面図であり、画素のスイッチング素子としてのTFTの構造を示している。図3においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0033】
まず、本実施の形態による液晶パネルの画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、図1に示すように、画素電極9ato画素電極9aを制御するためのTFT30がマトリクス状に複数形成されており、画像信号を供給するデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号はS1,S2,…,Snの順に線順次に供給しても構わないし、隣接する複数のデータ線6a同士に対してグループ毎に供給するようにしても良い。また、前記TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで走査線31に走査信号をパルス的にG1,G2,…Gmの順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線から供給される画像信号を所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号は対向基板(後述する)に形成された対向電極(後述する)との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集団の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの液晶部分を通過不可能とされ、ノーマリーブラックモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの液晶部分を通過可能とされ、全体として液晶パネルからは画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。ここで、保持された画
像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。これにより、保持特性は更に改善され、コントラスト比の高い液晶パネルが実現できる。尚、蓄積容量70を形成する方法としては、容量を形成するための配線である容量線3bを設けても良いし、前段の走査線3aとの間で容量を形成しても良いことは言うまでもない。
【0034】
次に、液晶パネルの第1実施形態の構成について説明する。
【0035】
第1実施形態によれば、液晶パネルの画像表示領域を構成する画素の平面レイアウトは図2に示すような構成を採る。すなわち、マトリクス状に設けられた複数の画素電極9aと、X方向に複数配列されており各々がY方向に沿って延びるデータ線6aと、Y方向に複数配列されており各々がX方向に沿って延びる走査線3a設けられている。ここで、SX番目のデータ線6aと走査線3aの交差部にTFT30を構成する半導体層1aのチャネル領域1a’(図2 左上がり斜線部)を形成し、当該TFT30のソース領域はデータ線6a下においてコンタクトホール5により電気的に接続するようにする。また、半導体層1aのドレイン領域は、隣り合うSX+1番目のデータ線6aの直近まで延設され、画素に容量を付加するための第1蓄積容量電極1fを形成する。第1蓄積容量電極1fは容量線3bとの間で、ゲート絶縁膜を誘電体として蓄積容量を形成する。容量線3bは走査線3aに沿ってX方向に画像表示領域の外側まで延設される。更に、自段のデータ線6a下にも同様に半導体層1aのドレイン領域から延設して第1蓄積容量電極1fを形成するようにすれば、配線形成部という液晶パネルの非光透過領域において、効率良く蓄積容量を付加できるので、画素に書き込まれた電荷を保持するための能力が向上し、コントラスト比の高い液晶パネルが実現できる。尚、図2において、データ線6aのSX番目とSX+1番目の関係が逆になったとしても何ら問題はない。
【0036】
ここで、走査線3aと容量線3bの配線間に半導体層1aのドレイン領域と画素電極9aを接続するためのコンタクトホール8を設ける。これは、コンタクトホール8の段差形状により液晶のディスクリネーションが発生する領域を、隣り合う画素電極9a間で生じる横方向電界によるディスクリネーションと同じ領域に合わせ込むことにより、従来遮光せざるを得なかった領域に効果的にコンタクトホール8を設けることができる。また、コンタクトホール8の直下には、図2の太線で囲まれた部分にエッチングストッパーとしてのポリシリコン膜やW(タングステン),Ti(チタン),Cr(クロム),Mo(モリブデン),Ta(タンタル)といった高融点金属膜或いはその合金膜といった導電性の嵩上げ膜13aを設けても良い。これは、半導体層1aのドレイン領域と画素電極9aを電気的に接続するために設けられるコンタクトホール8をエッチング工程で開孔する際に、半導体層1aを突き抜けても致命的な画素欠陥とならないようにするためであり、これにより、半導体層1aの薄膜化が実現でき、トランジスタ特性の改善及び光に対する光電効果の影響の少ない半導体層を形成できる利点がある。この場合、嵩上げ膜13aの少なくとも一部は、コンタクトホール8の形成領域を囲むように形成されてなり、また走査線3a及び容量線3bは嵩上げ膜13aに重ならないようにする。コンタクトホール8と走査線3a及び容量線3bとのマージンが少ない場合は図2に示すように、走査線3a及び容量線3bの少なくとも一方を嵩上げ膜13aに重ならないように、当該導電膜が設けられた領域に沿って走査線3a及び容量線3bを2次元的(平面的)に窪ませるようにしても良い。更に、コンタクトホール8を隣り合うSX番目のデータ線6aとSX+1番目のデータ線6a間のほぼ中心に設けることにより、画素が微細化しても、データ線6aと画素電極9aが短絡することを防止することが可能となり、TFT30の不良による点欠陥や線欠陥等の致命欠陥を大幅に低減することができる。」

イ 「【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、比較的簡単な構成を用いることにより、画素が微細化しても工程歩留まりや画素開口率の低下を招かない液晶パネル及び当該液晶パネルを備えた各種の電子機器を実現できる。また、本実施の形態では、液晶パネルを用いて説明したがこれに限らず、エレクトロルミネッセンス、あるいはプラズマディスプレイ等の電気光学パネルにも適用可能である。」

ウ 「【図1】

【図2】

【図3】



5 対比
(1)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「絶縁体400」、「ゲート電極401」、「ソース配線409」、「ドレイン配線410」、「ボトムゲート型TFTであ」る「電流制御TFT706」、「画素電極715」、「絶縁膜(バンク)424」、「EL層716」及び「発光装置」は、それぞれ、本願補正発明の「基板」、「ゲート電極」、「第1電極」、「第2電極」、「ボトムゲート型の薄膜トランジスタ」、「画素電極」、「バンク」、「発光層」及び「表示パネル」に相当する。

イ 引用発明の「絶縁体400上には画素部が設けられていて、画素部には・・電流制御TFT706・・が含まれており、
電流制御TFT706は、ゲート電極401、・・ソース配線409、ドレイン配線410を有するボトムゲート型TFTであ」る構成は、本願補正発明の
「基板と、
前記基板上であって、ゲート電極、第1電極及び第2電極を有するボトムゲート型の薄膜トランジスタと、」「を備える」構成に相当する。

ウ 引用発明の「電流制御TFT706を覆って」「設けられていて、」「ドレイン配線410に到達するようにコンタクトホールが形成され」た「第2層間絶縁膜421」は、本願補正発明の「前記薄膜トランジスタの上に形成され、厚み方向に貫通するコンタクトホールを有する絶縁層」に相当する。
そして、引用発明の「第2層間絶縁膜421にはドレイン配線410に到達するようにコンタクトホールが形成され、ドレイン配線410に接続され、厚みが該コンタクトホールの深さよりも小さい画素電極715が設けられてい」る構成は、本願補正発明の「前記絶縁層上に形成され、かつ、前記コンタクトホールを通じて前記第2電極と電気的に接続され、厚みが前記コンタクトホールの深さよりも小さい画素電極と、」「を備える」構成に相当する。

エ 引用発明の「絶縁膜(バンク)424が画素電極715の端部を覆うように、また、該コンタクトホールの上方に該コンタクトホールを充填するように形成されて」いる構成は、本願補正発明の「前記コンタクトホールの上方、かつ、前記画素電極の上方に形成され、少なくとも一部が前記コンタクトホール内に存在するバンクと、」「を備える」構成に相当する。

オ 引用発明の「画素電極715及び絶縁膜(バンク)424の上にEL層716が形成されて」いる構成と、本願補正発明の「前記バンクに区画された複数の発光層と、」「を備える」構成とは、「発光層と、」「を備える」構成で一致する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「基板と、
前記基板上であって、ゲート電極、第1電極及び第2電極を有するボトムゲート型の薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上に形成され、厚み方向に貫通するコンタクトホールを有する絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、かつ、前記コンタクトホールを通じて前記第2電極と電気的に接続され、厚みが前記コンタクトホールの深さよりも小さい画素電極と、
前記コンタクトホールの上方、かつ、前記画素電極の上方に形成され、少なくとも一部が前記コンタクトホール内に存在するバンクと、
発光層と、
を備える
表示パネル。」
で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
ア 本願補正発明は、「前記バンクに区画された複数の発光層と、」「を備える」のに対して、引用発明は、「画素電極715及び絶縁膜(バンク)424の上にEL層716が形成されて」いる点。

イ 本願補正発明は、「前記コンタクトホールの下方に選択的に形成され、前記コンタクトホールの底面を底上げする高さ調整層と、を備える」のに対して、引用発明は、そのような層を備えない点。

6 判断
(1)相違点アについて
発光層を有する表示装置において、バンクに区画された複数の発光層を有する構成は、特開2001-356711号公報(特に、段落【0015】,【0033】?【0035】、図1,4(2)参照)、特開2003-229283号公報(特に、段落【0029】?【0031】、図3参照)に示されるように周知技術であるから、引用発明の「画素電極715及び絶縁膜(バンク)424の上にEL層716が形成されて」いる構成に換えて、バンクに区画された複数の発光層を有する構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点イについて
引用文献2(特に、段落【0036】、図3参照)には、「半導体層1aのドレイン領域と画素電極9aを電気的に接続するために設けられるコンタクトホール8をエッチング工程で開孔する際に、半導体層1aを突き抜けても致命的な画素欠陥とならないようにするため」に、「半導体層1a」の下方で、「コンタクトホール8の直下には、・・高融点金属膜或いはその合金膜といった導電性の嵩上げ膜13aを設け」ることが記載されている。
また、「本実施の形態では、液晶パネルを用いて説明したがこれに限らず、エレクトロルミネッセンス、あるいはプラズマディスプレイ等の電気光学パネルにも適用可能である」(段落【0107】)と記載されるように、ELパネルにも適用可能であることが示唆されている。
すると、この引用文献2に記載された技術事項を参酌すれば、引用発明の「第1層間絶縁膜408にはドレイン領域404に到達するようにコンタクトホールが形成され、ドレイン領域404に接続されたドレイン配線410が設けられ」る構成においても、「コンタクトホール」をエッチングで開孔する際に、「n型(の半導体)領域からなるドレイン領域404」を突き抜けて画素欠陥を生じるという課題が生じることは当業者が容易に想到し得ることであり、この課題を解決するために、引用文献2に記載された技術事項を適用して、「ドレイン領域404」の下方で、「コンタクトホール」の直下に嵩上げ膜を設けることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、引用発明において、「ドレイン領域404」の下方で、「コンタクトホール」の直下に嵩上げ膜を設けた構成は、「第2層間絶縁膜421に形成されたコンタクトホールの下方にドレイン配線410が、また、ドレイン配線410の下方にドレイン領域404が配置されている」構成であることから、「第2層間絶縁膜421に形成されたコンタクトホール」の底面が底上げされる構成となることは明らかである。

よって、引用発明に、引用文献2に記載された技術事項を参酌して、相違点イに係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。

(3)効果について
本願補正発明が奏し得るコンタクトホールの開口面積が小さくなるという効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(4)結論
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7 小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年5月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2」「[理由]」「1」の本件補正前の請求項1の記載を参照。)

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献1,2、それらの記載内容及び引用発明は、上記「第2」「[理由]」「4」に記載したとおりである。

3 対比
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「絶縁体400」、「ゲート電極401」、「ソース配線409」、「ドレイン配線410」、「ボトムゲート型TFTであ」る「電流制御TFT706」、画素電極715」、「絶縁膜(バンク)424」、「EL層716」及び「発光装置」は、それぞれ、本願発明の「基板」、「ゲート電極」、「第1電極」、「第2電極」、「ボトムゲート型の薄膜トランジスタ」、「画素電極」、「バンク」、「発光層」及び「表示パネル」に相当する。

イ 引用発明の「絶縁体400上には画素部が設けられていて、画素部には・・電流制御TFT706・・が含まれており、
電流制御TFT706は、ゲート電極401、・・ソース配線409、ドレイン配線410を有するボトムゲート型TFTであ」る構成は、本願発明の
「基板と、
前記基板上であって、ゲート電極、第1電極及び第2電極を有するボトムゲート型の薄膜トランジスタと、」「を備える」構成に相当する。

ウ 引用発明の「電流制御TFT706を覆って」「設けられていて、」「ドレイン配線410に到達するようにコンタクトホールが形成され」た「第2層間絶縁膜421」は、本願発明の「前記薄膜トランジスタの上に形成され、厚み方向に貫通するコンタクトホールを有する絶縁層」に相当する。
そして、引用発明の「第2層間絶縁膜421にはドレイン配線410に到達するようにコンタクトホールが形成され、ドレイン配線410に接続され、・・画素電極715が設けられてい」る構成は、本願発明の「前記絶縁層上に形成され、かつ、前記コンタクトホールを通じて前記第2電極と電気的に接続される画素電極と、」「を備える」構成に相当する。

エ 引用発明の「絶縁膜(バンク)424が画素電極715の端部を覆うように、また、該コンタクトホールの上方に・・形成されて」いる構成は、本願補正発明の「前記コンタクトホールの上方、かつ、前記画素電極の上方に形成されるバンクと、」「を備える」構成に相当する。

オ 引用発明の「画素電極715及び絶縁膜(バンク)424の上にEL層716が形成されて」いる構成は、本願補正発明の「前記バンクに規定される発光層と、」「を備える」構成に相当する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「基板と、
前記基板上であって、ゲート電極、第1電極及び第2電極を有するボトムゲート型の薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上に形成され、厚み方向に貫通するコンタクトホールを有する絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、かつ、前記コンタクトホールを通じて前記第2電極と電気的に接続される画素電極と、
前記コンタクトホールの上方、かつ、前記画素電極の上方に形成されるバンクと、
前記バンクに規定される発光層と、
を備える
表示パネル。」
で一致し、次の点で相違する。

(3)相違点
本願発明は、「前記コンタクトホールの下方に選択的に形成され、前記コンタクトホールの底面を底上げする高さ調整層と、を備える」のに対して、引用発明は、そのような層を備えない点、すなわち、上記相違点イ(上記「第2」「[理由]」「5」「(3)」「イ」参照)で相違する。

4 判断
上記相違点イについては、上記「第2」「[理由]」「6」「(2)」で検討したとおりである。
すると、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 結論
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-05 
結審通知日 2017-04-11 
審決日 2017-04-24 
出願番号 特願2013-546843(P2013-546843)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松川 直樹
発明の名称 表示パネル及び表示パネルの製造方法  
代理人 傍島 正朗  
代理人 吉川 修一  

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