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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04M
管理番号 1329031
審判番号 不服2015-22019  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-11 
確定日 2017-06-27 
事件の表示 特願2014-514856「リモートデータベースからのロケーション固有の画像のモバイルデバイスアクセス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日国際公開,WO2012/170739,平成26年 9月18日国内公表,特表2014-524168,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年6月7日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2011年6月8日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年12月15日付けで拒絶理由が通知され,平成27年3月30日付けで手続補正がされたが,同年8月3日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年12月11日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされ,さらに当審より平成28年12月14日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,平成29年3月17日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成27年8月3日付けで拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1,16,30,37,44,49に係る発明は,以下の引用文献1,4,8に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明することができたものであり,本願の請求項2-15,17-29,31-36,38-43,45-48,50-53に係る発明は,以下の引用文献1-8に基づいて,当業者が容易に発明することができたものでありるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2011-511348号公報
2.特開2002-300338号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2005-6125号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-261954号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2003-224841号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2009-301202号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2004-341586号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2009-65279号公報(新たに引用された文献;周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
1.特許法第36条第2項について
(1)請求項1において,後段に,「前記他のロケーション情報」との記載があるが,「前記他のロケーション情報」の前に「他のロケーション情報」との記載はなく,如何なるものなのか不明瞭である。(中略)
また,請求項16,44,49についても,同様である。

(2)請求項49において,末尾が「コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品」との記載があるが,物の発明として不明瞭である。(中略)
請求項50ないし55についても,同様である。

2.特許法第36条第1項について
(1)請求項2ないし4,6ないし15,17ないし29,31ないし36,38ないし43,45ないし48,50ないし53に係る発明は,請求項1,5,16,30,37,44,49に係る発明のような,サーバが他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいてロケーション情報をモバイルデバイスへ送信する実施形態(段落【0042】,図10)と整合しておらず,発明の詳細な説明に記載したものではない。

第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は,平成29年3月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり,そのうち本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ワイヤレスモバイルデバイスを使用して,画像を識別するための方法であって,
ロケーション情報と,前記モバイルデバイスの向きと,前記モバイルデバイスの中間方位とを含む位置情報を備える,前記モバイルデバイスからのデータのセットを受信することと,
画像のデータストアから,前記受信された位置情報に関連付けられた画像のセットを識別することと,ここにおいて,前記画像のセットが,前記ロケーション情報の所定の近傍における,他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいて,ユーザの関心を引く前記他のロケーションからの1つまたは複数の画像を含む,
前記画像のセットに関連付けられた前記他のロケーションのロケーション情報を,前記モバイルデバイスへ送信することと,
を備える方法。
【請求項2】
前記送信することが,
前記他のロケーションへ移動するために,前記モバイルデバイスのユーザによって使用可能な道案内を送信することを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ワイヤレスモバイルデバイスのユーザに対して,画像を識別するための装置であって,
ネットワークインターフェースモジュールであり,
ロケーション情報と,前記モバイルデバイスの向きと,前記モバイルデバイスの中間方位とを含む位置情報を備える,前記モバイルデバイスからのデータのセットを受信することを行うように構成されたネットワークインターフェースモジュールと,
関連付けられた位置情報を有する複数の画像を備える,画像データベースと,
前記ネットワークインターフェースモジュールおよび画像データベースに通信可能に結合された,画像識別モジュールであり,
前記受信された位置情報に対応する,前記画像データベースにおける画像のセットを識別することを行うように構成された画像識別モジュールと,ここにおいて,前記画像のセットが,前記ロケーション情報の所定の近傍における,他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいて,ユーザの関心を引く前記他のロケーションからの1つまたは複数の画像を含み,前記画像識別モジュールが,前記画像のセットに関連付けられた前記他のロケーションのロケーション情報を,前記モバイルデバイスへ送信することを行うようにさらに構成される,
を備える装置。
【請求項4】
ワイヤレスモバイルデバイスを使用して,画像を識別するための方法であって,
前記モバイルデバイスから,ロケーション情報と,前記モバイルデバイスの向きと,前記モバイルデバイスの中間方位とを含む位置情報を備える,データのセットを送信することと,
前記送信された位置情報に関連付けられた画像のセットの識別を受信することと,
前記モバイルデバイスにおいて,前記画像のセットにおける1つまたは複数の画像に対応する,第2のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいて,ユーザの関心を引く,前記モバイルデバイスの前記ロケーションの所定の近傍における前記第2のロケーションに関する情報を受信することと,
を備える方法。
【請求項5】
モバイルデバイスのロケーションと,中間方位と,向きとを決定するように構成された,測位モジュールと,
ロケーション情報と,前記モバイルデバイスの向きと,前記モバイルデバイスの中間方位とを含む位置情報を備える,データのセットを送信するように構成される,前記測位モジュールに通信可能に結合されたコントローラモジュールと,ここにおいて,前記コントローラモジュールが,画像のセットにおける1つまたは複数の画像に対応する,第2のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいて,ユーザの関心を引く,前記モバイルデバイスの前記ロケーションの所定の近傍における前記第2のロケーションに関する情報を受信することを行うようにさらに構成される,
を備えるモバイルデバイス。
【請求項6】
ワイヤレスモバイルデバイスを使用して,画像を識別するためのシステムであって,
ロケーション情報と,前記モバイルデバイスの向きと,前記モバイルデバイスの中間方位とを含む位置情報を備える,前記モバイルデバイスからのデータのセットを受信するための手段と,
画像のデータストアから,前記受信された位置情報に関連付けられた画像のセットを識別するための手段と,ここにおいて,前記画像のセットが,前記ロケーション情報の所定の近傍における,他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいて,ユーザの関心を引く前記他のロケーションからの1つまたは複数の画像を含む,
前記画像のセットに関連付けられた前記他のロケーションのロケーション情報を,前記モバイルデバイスへ送信する手段と,
を備えるシステム。
【請求項7】
ロケーション情報と,モバイルデバイスの向きと,前記モバイルデバイスの中間方位とを含む位置情報を備える,前記モバイルデバイスからのデータのセットを受信するためのコードと,
画像のデータストアから,前記受信された位置情報に関連付けられた画像のセットを識別するためのコードと,ここにおいて,前記画像のセットが,前記ロケーション情報の所定の近傍における,他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいて,ユーザの関心を引く前記他のロケーションからの1つまたは複数の画像を含む,
前記画像のセットに関連付けられた前記他のロケーションのロケーション情報を,前記モバイルデバイスへ送信するコードと,
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。」

ここで,本願発明2-7の概要は以下のとおりである。
本願発明2は,本願発明1を限縮した発明である。
本願発明3は,本願発明1に対応する装置の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明4は,本願発明1をワイヤレスモバイルデバイス側から特定した発明であり,本願発明1に対応する構成を有する発明である。
本願発明5は,本願発明4に対応する装置の発明であり,本願発明4とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明6は,本願発明1をシステムとして捉えた発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明7は,本願発明6をコンピュータプログラムとして捉えた発明であり,本願発明6とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2011-511348号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は強調のため当審で付与した。)

「【0033】
まず図1?図3を参照すると電子機器10が示されている。例示の電子機器10は移動電話機である。電子機器10はデジタル静止画像とデジタルビデオクリップの少なくともいずれかを撮影するためのカメラアセンブリ12を含む。電子機器10は移動電話機である必要はなく,専用のカメラ又は上記のような何らかの別の装置であってもよいことを強調しておく。
【0034】-【0035】(略)
【0036】
センサ16は所定のフレームレートでデータを取り込んで,電子ファインダとして動作するディスプレイ22へ供給されるプレビュービデオ信号を生成できることは理解されよう。典型的には,ディスプレイ22は結像光学系14から見て電子機器10の対向する側に設けられる。このようにして,ユーザは所望の方向にカメラアセンブリ12を向け,ディスプレイ22でカメラアセンブリ12の視野34の表示を見ることができる。したがって,カメラアセンブリ12は視点,すなわちパースペクティブを有することが可能となる。この視点はカメラアセンブリ12の位置と,カメラアセンブリ12がユーザにより向けられる方向との組み合わせである。カメラアセンブリ12の視点によって,結像光学系14の特性と,ズームの量などの光学的設定値とが組み合わされてカメラアセンブリの視点が確立される。
【0037】
1つの実施形態では,電子機器10には,ユーザがピクチャの撮影を命令する所定の時点にカメラアセンブリ12の視点を確定するために用いることができる(1以上のセンサなどの)コンポーネントが含まれる。例えば,電子機器10は全地球測位システム(GPS)受信機,ガリレオ衛星システム受信機等のような位置データ受信機32を含んでもよい。位置データ受信機32は電子機器10のロケーションの決定に関与することができる。位置データ受信機32によって受信された位置データを処理して,例えば(世界測地システムすなわちWGなどの)標準基準システムを用いて表現される座標のようなロケーション値を取得することができる。(以下,略)
【0038】(略)
【0039】
カメラアセンブリ12の視点を決定する際に有用なデータを生成することができる別のコンポーネントとしてデジタルコンパス36を挙げることができる。デジタルコンパス36はカメラアセンブリ12が向けられた方向に関する情報を生成することができる。この方向情報は(北,東,西及び南などの)コンパス方位及びこれら4つの基準方向間の任意の方向並びに(水平に関して正又は負の角度値などの)仰角を含んでもよい。
【0040】
ロケーション情報,方向情報及び,所望の場合,高度情報の組み合わせを用いて,カメラアセンブリ12の視点を確かめることができる。
【0041】
電子機器10はカメラアセンブリ12の視点を決定するように構成されたピクチャ共有機能38をさらに含んでもよい。ピクチャ共有機能38についての追加の詳細情報及び動作について以下さらに詳述する。ピクチャ共有機能38は,電子機器10に常駐し,かつ,電子機器10により実行される実行可能コードとして実現することができる。1つの実施形態では,ピクチャ共有機能38はコンピュータ又はマシン可読媒体に保存されたプログラムであってもよい。ピクチャ共有機能38は単体のソフトウェアアプリケーションであってもよいし,あるいは,電子機器10に関係する追加タスクを実行するソフトウェアアプリケーションの一部を形成するものであってもよい。
【0042】
図4にさらに示すように,ピクチャ共有機能38は,視点情報を利用し,サーバ40によってホストされる調整用ピクチャ共有サポート機能42から1以上の写真を取得するようにしてもよい。以下さらに詳述するように,ピクチャ共有サポート機能42は画像データベース44を含んでもよい。
【0043】-【0045】(略)
【0046】
図5と図6にさらに示すように,カメラアセンブリ12のパースペクティブに基づいてピクチャを共有する例示の方法を実行するための論理処理が示されている。ピクチャ共有機能38の実施形態を実行し,かつ,ピクチャ共有サポート機能42の実施形態を実行することによって例示の方法を実行することができる。したがって,図5のフローチャートは移動電話機10によって実行される方法の複数のステップを描くものと考えることができ,さらに,図6のフローチャートはサーバ40によって実行される方法の複数のステップを描くものと考えることができる。
【0047】
ピクチャを共有するための一連の論理処理例の実行ステップに従って論理フローを明示するために,図5と図6によって表される論理処理についてこれらの図を互いに関連させて説明する。したがって,以下の説明は図5の参照と,図6の参照との間で交互に行われることになる。代替の論理フローが可能であることは理解できよう。したがって,たとえ図5と図6が機能論理ブロックのある特定の順序の実行ステップを示す場合であっても,これらのブロックを実行する順序は図示の順序に対して相対的に変更することが可能である。また,連続して示される2以上のブロックを同時に又は部分的に一致させて実行することも可能である。或るブロックとブロックの或る部分の少なくともいずれかを省くことも可能である。
【0048】
ピクチャ共有機能38に関連する論理フローは,ユーザがピクチャを構成することができるブロック48から開始することができる。例えば,ユーザはカメラアセンブリ12を被写体へ向け,それによって,カメラアセンブリ12の視点及びカメラアセンブリ12の視野の中に,ユーザがピクチャの中に取り込みたいシーンの一部が含まれるようにすることができる。次に,ユーザはカメラアセンブリ12にピクチャの撮影命令を出すことができる。例えば,ユーザはシャッタリリースキーを押下することができる。この結果センサ16によってピクチャ用の画像データの生成が生じることになる。
【0049】
図7にさらに示すように,カメラアセンブリ12を用いて撮影された代表的なピクチャ50が例示されている。ピクチャ50は,ユーザの制御の下でカメラアセンブリ12を用いて撮影されたものであるため,ピクチャ50を「ユーザのピクチャ50」と呼ぶことにする。図7の例では,ユーザのピクチャ50はニューヨーク港にある自由の女神のピクチャである。ユーザのピクチャ50の撮影時点におけるカメラアセンブリの視点は,自由の女神像の正面から,かつ,上向きの地表面からの視点であった。
【0050】
ブロック52において,論理フローは,ユーザのピクチャ50の撮影時点におけるカメラアセンブリ12の視点情報を確定するステップを含んでもよい。上述のように,カメラアセンブリ12の視点を確定するステップは,ロケーション情報と,高度計情報と,コンパス方位情報と仰角情報のうちの1以上の情報の収集と分析の少なくもいずれかを行うステップを含んでもよい。(以下,略)
【0051】-【0053】(略)
【0054】
図6にさらに示すように,サーバ40はブロック62において電子機器10から得られる視点情報,日付情報及び時刻情報を受信することができる。その後,ブロック64において,ピクチャ共有サポート機能42は,ユーザのピクチャ50の撮影時刻におけるカメラアセンブリ12の視点に対応する1以上の代替画像を求めて画像データベース44を検索することができる。検索基準の組み合わせを用いてブロック64の検索に取りかかるか,種々の基準を用いて検索結果の優先順位付けを行うかの少なくともいずれかを行うようにしてもよい。ブロック64の一致処理及び優先順位付けを実行して,カメラアセンブリ12の視点に対応する画像の数を数個の画像にまで狭めてユーザへ表示することが可能である。例えば,画像数を約1個?約6個の画像に狭めることが可能である。
【0055】
検索基準と検索結果の優先順位付けの少なくともいずれかは,カメラアセンブリ12の視点,日付,時刻,画像データベース44内の画像の人気度,画像ファイルのサイズ,画質,画素数及びその他の基準を含んでもよい。1つの実施形態では,ロケーション情報と,高度と,コンパス方位と仰角とのうちの少なくともいずれかに基づくようなカメラアセンブリ12の視点を用いて,同じ視点又は同様の視点で撮影された画像データベース44の中に画像を検出することができる。
【0056】-【0061】(略)
【0062】
ブロック64に続いて,論理フローはブロック66へ進むことができる。ブロック66において,検索基準を満たす何らかの代替画像がピクチャ共有サポート機能42によって検出されたかどうかに関する判定を行うことができる。1以上の代替画像が特定された場合,ブロック66において肯定の判定を行うことができ,次いで,論理フローはブロック68へ進むことができる。ブロック68において,代替画像を電子機器10へ送信することが可能となる。1つの実施形態では,電子機器10へ送信される代替画像をサムネイルとして送信してもよい。(例えばフル画像としてあるいはサムネイルとして)代替画像を電子機器10へ配信することが可能となる。(以下,略)
【0063】-【0065】(略)
【0066】
ブロック82に続いて,論理フローは,電子機器10が選択した代替画像の識別子をサーバ40へ送信するブロック84へ進むことができる。1つの実施形態では,追跡目的のために画像データベース44の個々の画像を一意の識別子に関連付けることができる。ユーザによる代替画像の選択時に,選択した画像に対応する一意の識別子をサーバ40へ返信できるように画像と共に電子機器10へこの識別子を送信することができる。
【0067】
続けて図6を参照すると,ブロック72に続いて,あるいは,否定の判定後にブロック70において,論理フローはブロック86へ進むことができる。ブロック86において,ユーザが選択した代替画像の識別子をサーバ40が受信したかどうかに関する判定を行うことができる。識別子が受信された場合,ブロック86において肯定の判定を行うことができ,次いで,論理フローはブロック88へ進むことができる。ブロック88において,対応する画像に関連付けられたユーザ選択スコアを更新することができる。例えば,ユーザによって頻繁に選択される画像には高いユーザ選択スコアを与えることができ,また,ユーザにより頻繁に選択されない画像は低いユーザ選択スコアを受けることができる。ブロック64の画像の優先順位付けの一部としてユーザ選択スコアを用いるようにしてもよい。例えば,低いユーザ選択スコアを持つ画像よりも先に,高いユーザ選択スコアを持つ画像の方を一致画像として使用することが可能となる。1つの実施形態では,相対的に低いユーザ選択スコアを持つ画像を削除することによって画像データベース44の削り込みを行うことが可能となる。
【0068】
上述した方法には,カメラアセンブリ12を用いてユーザのピクチャ50を撮影するステップが含まれる。理解できるように,この方法を変更して,カメラアセンブリ12を含まない電子機器10,あるいは,実際に写真を撮影するためにカメラアセンブリ12を使用しない電子機器10についても上記方法が機能できるようにすることが可能である。例えば,ユーザは,適切なユーザインタフェースを用いて電子機器10をオブジェクトやシーンに向け,次いで視点情報,日付情報及び時刻情報の収集を開始することができる。視点情報,日付情報及び時刻情報をサーバ40へ送信して,画像データベース44から得られる1以上の画像に上記情報を一致させるようにすることができる。上述の方法に関連して説明したように,ピクチャ共有サポート機能42によって特定された画像を電子機器10へ返送することができる。上記とは別に,これらの一致画像は,閲覧と,ダウンロードと,保存とのうちの少なくともいずれかを行うために将来ユーザが利用できるようになる可能性がある。このようにして,電子機器10はディスプレイ22を備える必要がなくなる。例えば,電子機器10は,腕時計や,画像データベース44から得られるピクチャに一致する可能性のある情報を取り込むために使用されるポインタ装置であってもよい。
【0069】
(中略)
1つの実施形態では,ブロック64の一致処理ルールと優先順位付けルールの少なくともいずれかのルールを緩和したり,変更したりすることによって,カメラアセンブリ12の視点とは異なる視点を持つ画像データベース44から得られる画像をピクチャ共有サポート機能42が特定できるようにすることが可能になる。この特定によって,被写体の異なる視野角を持つ代替画像と,異なる距離から撮影された被写体の画像との少なくともいずれかの特定をサポートすることが可能となる。これによって,ユーザは,ユーザにとってより大きな関心事になり得る別の見晴らしの利く地点と,ユーザには容易にアクセスできない別の見晴らしの利く地点との少なくともいずれかの地点を得ることが可能になる。(以下,略)」

上記記載において,【0033】より「電子機器10」は「移動電話機」であり,【0050】より「ロケーション情報」,「コンパス方位情報」及び「仰角情報」を併せて「視点を確定するための情報」といえる。

以上の記載より,引用文献1には,図6の特にステップ62ないし68で実行される画像を検索するための方法に関し,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「移動電話機から受信した視点を確定するための情報を使用して,画像を検索するための方法であって,
ロケーション情報,コンパス方位情報及び仰角情報を含む,前記携帯電話機からの前記視点を確定するための情報を受信することと,
前記視点を確定するための情報に基づく1以上の代替画像を求めて画像データベースを検索することと,ここにおいて前記1以上の代替画像が,同じ被写体が異なる距離から撮影されたユーザにとってより大きな関心事になり得る地点からの画像を含み,
前記1以上の代替画像を前記移動電話機へ送信することと,
を備える方法。」

2.引用文献4及び8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2010-261954号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0032】
また,位置案内サービス連携部150は,ユーザによってマルチメディアデータが選択されると,該選択されたマルチメディアデータのヘッダ部に格納された位置情報を読み取って位置情報が示す地図上での地名情報を獲得し,該獲得した地名情報を地図サービスなどの位置案内サービスへ伝達して地名情報の示す位置が地図上に表示されるようにすることができる。
【0033】
例えば,道案内サービスは,ユーザが自身の移動端末を利用して現在位置を出発地点として行きたい目的地までの経路の案内を受けられるようにする移動端末基盤のナビゲーションサービスである。ユーザが移動端末に格納された写真のうち一つの写真を選択して道案内サービスを要求すると,移動端末は,該選択された写真のヘッダ部に格納された緯度/経度情報や地名情報から当該写真が示す位置を地図上に表示した後,現在位置から表示された位置まで辿りつくための経路を知らせることができる。」

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8(特開2009-65279号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0009】
次に,図2のフローチャートを用いて,図1に示す画像管理システムの動作を説明する。図2は,図1に示す画像管理システムの動作フローチャートである。
まず,図2のステップ101において,デジタルカメラ3より送信された画像Aを画像受信部9が受信する。本実施形態では,デジタルカメラ3で撮影された画像および撮影時刻情報および撮影位置情報は,exifファイル(exchangeable Image File Format)に代表される撮影画像情報と撮影時の撮影条件を一つのファイル(以後画像ファイルと呼ぶ)として管理されている。すなわち,画像Aは,撮影時刻情報および撮影位置情報を含む。」

上記引用文献4,8に記載されているように,以下の事項(以下,「周知事項」という。)は周知である。
「画像情報にその撮影位置情報を含めること。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると次のことがいえる。

a 引用発明の「移動電話機」は,本願発明1の「ワイヤレスモバイルデバイス」に相当するから,引用発明の「移動電話機から受信した視点を確定するための情報を使用して」は,本願発明1の「ワイヤレスモバイルデバイスを使用して」に含まれる。また,引用発明の「画像を検索するための方法」と本願発明1の「画像を識別するための方法」とは同義といえる。
b 引用発明の「ロケーション情報」,「コンパス方位情報」及び「仰角情報」並びに「視点を確定するための情報」は,それぞれ引用発明1の「ロケーション情報」,「前記モバイルデバイスの向き」及び「前記モバイルデバイスの中間方位」並びに「位置情報」に相当し,また,引用発明の前記「視点を確定するための情報」は,複数の情報のセットといえるから,本願発明1の「データのセット」に相当する。そうすると,引用発明の「前記携帯電話機からの前記視点を確定するための情報を受信すること」は,本願発明1の「前記モバイルデバイスからのデータのセットを受信すること」に相当する。
c 引用発明の「画像データベース」は,本願発明1の「画像のデータストア」に相当する。また,引用発明の「前記視点を確定するための情報に基づく1以上の代替画像」は,下記相違点1を除き,本願発明1の「前記受信された位置情報に関連づけられた画像のセット」に相当し,引用発明の「代替画像を求めて」「検索すること」は,本願発明1の「画像のセットを識別すること」に相当する。
さらに,「画像のセット」について,引用発明の「同じ被写体が異なる距離から撮影された」「画像」に関し,引用文献1には,「異なる距離から撮影された被写体の画像との少なくともいずれかの特定をサポートすることが可能となる。これによって,ユーザは,ユーザにとってより大きな関心事になり得る別の見晴らしの利く地点と,ユーザには容易にアクセスできない別の見晴らしの利く地点との少なくともいずれかの地点を得ることが可能になる。」(【0069】)とあり,「容易にアクセスできない」との対比から「ユーザにとってより大きな関心事になり得る」「地点」とは,「容易にアクセスできる」「地点」が含まれると解釈できる。したがって,引用発明の「同じ被写体が異なる距離から撮影されたユーザにとってより大きな関心事になり得る地点からの画像を含」むことは,本願発明の「前記ロケーション情報の所定の近傍における」,「ユーザの関心を引く他のロケーションからの1つまたは複数の画像を含む」点で共通する。
d 本願発明1の「前記画像のセットに関連付けられた前記他のロケーションのロケーション情報を,前記モバイルデバイスへ送信すること」と引用発明の「前記1以上の代替画像を前記移動電話機へ送信すること」とは,下記相違点2を除き「所定の情報を前記モバイルデバイスへ送信すること」において共通する。

上記aないしdを総合すると,本願発明1と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。

(一致点)
「ワイヤレスモバイルデバイスを使用して,画像を識別するための方法であって,
ロケーション情報と,前記モバイルデバイスの向きと,前記モバイルデバイスの中間方位とを含む位置情報を備える,前記モバイルデバイスからのデータのセットを受信することと,
画像のデータストアから,前記受信された位置情報に関連付けられた画像のセットを識別することと,ここにおいて,前記画像のセットが,前記ロケーション情報の所定の近傍における,ユーザの関心を引く他のロケーションからの1つまたは複数の画像を含む,
所定の情報を,前記モバイルデバイスへ送信することと,
を備える方法。」

(相違点1)
一致点である「ユーザの関心を引く他のロケーションからの1つまたは複数の画像」について,本願発明1では,「他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づい」たものであるのに対し,引用発明では,同じ被写体が異なる距離から撮影された画像である点。

(相違点2)
一致点である「所定の情報」について,本願発明1では,「前記画像のセットに関連付けられた前記他のロケーションのロケーション情報」であるのに対し,引用発明では,「前記1以上の代替画像」である点。

(2)相違点についての判断
まず,相違点1について検討する。
本願発明1の「他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいて,ユーザの関心を引く前記他のロケーションからの1つまたは複数の画像」に関し,本願明細書の【0032】,【0042】等の記載によれば,「ユーザの関心」は,「他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づ」く,すなわち,「他のユーザ」の行動に基づくことを前提としている。そして,「他のユーザの活動の量」とは,具体的には,「他のユーザ」が「撮影または要求している」画像がかなりの量であることを指し,また,当該画像には,「リンカーン記念館」や「ワシントン記念館」のように,(他のユーザの行動に基づくから)必然的に異なる被写体の画像を含むものである。
他方,引用発明の「同じ被写体が異なる距離から撮影されたユーザにとってより大きな関心事になり得る地点からの画像」に関し,引用文献1の【0069】の記載から,「ユーザによってより大きな関心事」は,「同じ被写体」に対して,「別の見晴らしの利く地点」をユーザが得ることであり,「ユーザにとってより大きな関心事になり得る地点からの画像」には,同じ被写体のものだけで異なる被写体の画像は含まれないと解される。
してみると,本願発明1では,「ユーザの関心事」が「他のユーザ」の行動に基づくことを前提とするのに対し,引用発明では「ユーザ」の「関心事」が,ユーザ自身の関心に基づくことを前提とする点で,両者の発明の前提が異なっており,それに起因して,識別される画像の被写体の対象も異なっているものである。このため,引用発明を相違点1に係る本願発明1のように構成する動機付けがそもそも存在しない。よって,引用発明に基づいて,相違点1に係る本願発明1の構成を容易に想到できたとはいえない。
また,上記「第5」の項の周知事項を勘案しても,相違点1に係る本願発明1の構成を充足しないことは,明らかである。

したがって,本願発明1は,相違点2について検討するまでもなく,当業者であっても,引用発明及び周知事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は,本願発明1を限縮した発明であるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び周知事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明3ないし7について
本願発明3ないし7は,いづれも本願発明1に対応する発明であり,相違点1に係る本願発明1の構成と対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び周知事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
1.原査定がされた請求項1,16,30,37,44,49の理由について
原査定は,請求項1,16,30,37,44,49(それぞれ,平成29年3月17日付けの手続補正による補正後の請求項1,3,4,5,6,7に対応する。)に係る発明は,上記引用文献1,4,8に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,平成27年12月11日付け審判請求と同時にされた手続補正により補正された請求項1,16,30,37,44,49は,上記「第6」の項の相違点1に係る本願発明1の構成ないしは該構成に対応する構成を有するものとなっており,上記「第6」の項のとおり,本願発明1,3ないし7に係る発明は,引用文献1に記載された引用発明及び引用文献4,8に記載された周知事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,当該理由について,原査定を維持することはできない。

2.原査定がされた請求項2-15,17-29,31-36,38-43,45-48,50-53の理由について
原査定は,請求項2-15,17-29,31-36,38-43,45-48,50-53に係る発明は,上記引用文献1,4,8を含む引用文献1-8に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。このうち,請求項5(平成29年3月17日付けの手続補正による補正後の請求項2に対応する。)は,請求項1を限縮したものであるから上記「第6」の項の相違点1に係る本願発明1の構成を有するものとなっている。さらに,当該構成は,引用文献2,3,5-7に記載も示唆もされていない。
そして,平成29年3月17日付けの手続補正により前記請求項2-15,17-29,31-36,38-43,45-48,50-53のうち,請求項5以外の請求項は全て削除された。
したがって,当該理由について,原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第2項について
(1)当審では,請求項1において,「前記他のロケーション情報」との記載があるが,「前記他のロケーション情報」の前に「他のロケーション情報」との記載はなく,如何なるものなのか不明瞭であるとの拒絶理由を通知しているが,平成29年3月17日付けの手続補正(「第8」の項において,以下「手続補正」という。)において,対応する請求項1の記載を「前記他のロケーションのロケーション情報」と補正されたことで,この拒絶理由は解消した。
同様の補正により,請求項16,44,49(補正後の請求項3,6,7)についての拒絶理由も解消した。

(2)当審では,請求項49において,末尾が「コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品」との記載が物の発明として不明瞭であるとの拒絶理由を通知しているが,手続補正により,補正後の請求項7の末尾を「コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム」と補正されたことで,この拒絶理由は解消した。

2.特許法第36条第1項について
(1)当審では,請求項2ないし4,6ないし15,17ないし29,31ないし36,38ないし43,45ないし48,50ないし53に係る発明は,請求項1,5,16,30,37,44,49に係る発明のような,サーバが他のロケーションにおける他のユーザの活動の量に基づいてロケーション情報をモバイルデバイスへ送信する実施形態(段落【0042】,図10)と整合しておらず,発明の詳細な説明に記載したものではないとの拒絶理由を通知しているが,手続補正により該当する請求項が全て削除されたため,この拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり,本願発明1-7は,当業者が引用発明及び周知事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-13 
出願番号 特願2014-514856(P2014-514856)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04M)
P 1 8・ 121- WY (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 相澤 祐介永井 啓司丸山 高政  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 吉田 隆之
中野 浩昌
発明の名称 リモートデータベースからのロケーション固有の画像のモバイルデバイスアクセス  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 奥村 元宏  
代理人 蔵田 昌俊  

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