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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 E04B 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 E04B |
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管理番号 | 1329107 |
異議申立番号 | 異議2016-701084 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-11-24 |
確定日 | 2017-06-09 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5921411号発明「床の断熱構造体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5921411号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第5921411号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成24年10月10日に特許出願され、平成28年4月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人一條淳により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年3月1日付けで取消理由を通知し、平成29年4月28日に意見書が提出されたものである。 2 本件発明 「【請求項1】 木材の大引の真下に位置する下部と、隣接する大引の下部間である中間部とに配置される第1の断熱材を有すること、第2の断熱材が隣接する大引間に更に存在していること、及び根太を有さないことを特徴とする床の断熱構造体。 【請求項2】 前記第1の断熱材は、前記下部および前記中間部に配置される部分が連続的に存在していることを特徴とする請求項1に記載の床の断熱構造体。 【請求項3】 前記第1の断熱材は、前記下部および前記中間部に配置される部分が同一の部材からなることを特徴とする請求項1または2に記載の床の断熱構造体。 【請求項4】 前記第1の断熱材の上面は、前記大引の下面に接触していることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の床の断熱構造体。 【請求項5】 一部が大引の上面、側面または下面に固定され、前記固定された一部の他端には前記第1の断熱材の下面を支持する部分が設けられている支持具を更に有することを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の床の断熱構造体。」 3 取消理由の概要 当審において、請求項1ないし5に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、請求項5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (3)本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第5号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 甲第1号証:北海道立北方建築総合研究所執筆、「北方型住宅の断熱・気 密施工実践マニュアル」、(財)北海道建築指導センター、 平成17年2月、5-19頁 甲第2号証:特開2003-64769号公報 甲第3号証:特開2002-47751号公報 甲第4号証:特開2000-265591号公報 甲第5号証:実願平5-42130号(実開平7-11610号) のCD-ROM 甲第6号証:再公表特許2012/033185号 4 甲各号証の記載 (1)甲第1号証には、木製長尺材の真下に位置する下部と、隣接する木製長尺材の下部間とに配置される付加断熱材を有すること、隣接する木製支持材間に断熱材が存在すること、大引と根太を有すること、が記載されている。 なお、特許異議申立人は、甲第1号証(特に図3.1、図4.2)には、<甲第1号証発明1>「木材の梁の真下に位置する下部と、隣接する梁の下部間である中間部とに配置される付加断熱材を有すること、高性能グラスウールが前記梁間に更に存在していること、及び根太を有さない、床の断熱構造体」が記載され、当該「梁」、「付加断熱材」及び「高性能グラスウール」が、それぞれ請求項1に係る発明の「大引」、「第1の断熱材」及び「第2の断熱材」に相当する、と主張する(特許異議申立書9?10頁)。 しかしながら、図3.1に記載された木製長尺材は、特許異議申立人が主張するように、主要な構造材である梁とは認定できず、また、図4.2(b)や特許異議申立人が示した箇所にも、梁に相当する部材は記載されていない。 また、特許異議申立人が申立書の中で触れていない19頁の図4.4を参照すると、間柱受け根太が記載され、該根太よりも下方に土台や大引があること、及び隣接する大引と土台間と隣接する根太間に断熱材が存在することが図示されていることからみても、特許異議申立人が主張するような梁と断熱材との位置関係のものは、甲第1号証には記載されていないといえる。 よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。 (2)甲第2号証及び甲第3号証には、隣接する大引間に断熱材を配置した、根太を有さない床構造が記載されている。 (3)甲第4号証において、「大引きの鋼製化に伴い、大引き部の断熱仕様に新しい技術が必要とされた」(段落【0003】)との課題や、図面に示された大引11の構造からみて、大引11は鋼製であることは明らかである。よって、甲第4号証には、「鋼製の大引11の下部及び大引11の中間部に至る断熱材15の下面を支える部分を有する支持具16が大引11の側面に固定されている、木造住宅における床の断熱構造」が記載されている。 (4)甲第5号証には、「その片表面に軟質発泡樹脂シートが接着積層された硬質発泡樹脂断熱板が、(隣接する木製)支持部材の間に挿入され、硬質発泡樹脂断熱板と木製支持部材との間の隙間に、硬質発泡樹脂断熱板からはみでた部分の軟質発泡樹脂シートを必要な量だけ押し込み挿入され、残余のシート部分は切断し除去される、床の断熱構造。」が記載されている。 なお、特許異議申立人は、甲第5号証に、<甲第5号証発明>「木材からなる支持部材の真下に位置する下部と、隣接する支持部材の下部間である中間部とに配置される軟質発泡樹脂シートを有すること、硬質発泡断熱板が隣接する支持部材間に更に存在していること、・・・床の断熱構造体」が記載され、「支持部材」、「軟質発泡樹脂シート」及び「硬質発泡断熱板」が、それぞれが請求項1に係る発明の「大引」、「第1の断熱材」及び「第2の断熱材」に相当する、と主張する(特許異議申立書24?26頁)。 しかしながら、硬質発泡樹脂断熱板からはみでた部分の軟質発泡樹脂シートは、硬質発泡樹脂断熱板と木製支持部材との間の隙間に、必要な量だけ押し込み挿入され、残余のシート部分が切断し除去されるものであるから(段落【0010】、【0017】)、支持部材の下部に配置されるものではなく、また支持部材が床構造の大引に相当するか、それとも根太に相当するのか不明である。 よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。 (5)甲第6号証には、大引12の間に支持材25を介して断熱材20が取り付けられたものであって、根太を有しない床の断熱構造体、が記載されている。 5 判断 (1)上記3の取消理由(1)及び(2)について ア 請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明を対比すると、請求項1に係る発明は、「木材の大引の真下に位置する下部と、隣接する大引の下部間である中間部とに配置される第1の断熱材を有すること、第2の断熱材が隣接する大引間にさらに存在していること、及び根太を有さない」のに対し、甲第1号証に記載された発明は、大引と付加断熱材及び断熱材との位置関係が不明であって、さらに、根太を有している点で相違している。 この相違点について検討すると、甲第2号証及び甲第3号証には、隣接する大引間に断熱材を配置した、根太を有さない床構造については記載されているものの、「木材の大引の真下に位置する下部と、隣接する大引の下部間である中間部とに配置される第1の断熱材を有すること」は記載されておらず、かつ自明な事項とも認められない。 したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 請求項2ないし請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明を減縮したものであり、上記アで述べたことと同様の理由により、請求項2ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明を減縮したものであり、甲第4号証に、請求項5に記載された支持具の構成が記載されているとしても、上記アで述べたことと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)上記3の取消理由(3)について 請求項1に係る発明と甲第5号証に記載された発明を対比すると、請求項1に係る発明の「木材の大引の真下に位置する下部と、隣接する大引の下部間である中間部とに配置される第1の断熱材を有すること、第2の断熱材が隣接する大引間にさらに存在していること、及び根太を有さない」のに対し、甲第5号証に記載された発明は、木材の大引や根太を有しているかどうか不明であって、大引と軟質発泡樹脂シート及び硬質発泡樹脂板との位置関係が不明である点で相違しているが、この相違点については、甲第6号証にも記載されておらず、自明な事項とも認められない。したがって、請求項1に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、及び甲第6号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 請求項2ないし請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明を減縮したものであり、上記アで述べたことと同様の理由により、請求項2ないし4に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、及び甲第6号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 むすび 以上のとおり、請求項1ないし5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-05-30 |
出願番号 | 特願2012-236028(P2012-236028) |
審決分類 |
P
1
652・
113-
Y
(E04B)
P 1 652・ 121- Y (E04B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 星野 聡志 |
特許庁審判長 |
前川 慎喜 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 住田 秀弘 |
登録日 | 2016-04-22 |
登録番号 | 特許第5921411号(P5921411) |
権利者 | マグ・イゾベール株式会社 |
発明の名称 | 床の断熱構造体 |
代理人 | 関根 宣夫 |
代理人 | 蛯谷 厚志 |
代理人 | 出野 知 |
代理人 | 塩川 和哉 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 古賀 哲次 |