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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B65H
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B65H
管理番号 1329369
審判番号 訂正2017-390026  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-03-31 
確定日 2017-05-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6012374号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6012374号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許6012374号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成24年9月28日に特許出願され、平成28年9月30日に特許権の設定登録がされたものであって、平成29年3月31日に本件訂正審判が請求されたものである。

第2 請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容

本件訂正審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1ないし6のとおりである(下線部は訂正箇所を表す。)。

1.訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に
「綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップであって、
吸込みノズルは、糸切れ又はコントロールされた糸切断のあとで綾巻きパッケージの表面に巻き付く糸端部を空気力式に受け取る吸込み開口を備え、吸込み開口の領域に配置されたコームストリップが、折曲げ部、並びに吸い込まれた糸端部を拘束するための歯列を備えるものにおいて、
コームストリップ(19)は、折曲げ部(31)の領域に、綾巻きパッケージ(5)の表面からの糸端部の解放を促進する表面を有している、少なくとも1つの構造化された面(32)を備える」
とあるのを、
「綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップであって、
吸込みノズルは、糸切れ又はコントロールされた糸切断のあとで綾巻きパッケージの表面に巻き付く糸端部を空気力式に受け取る吸込み開口を備え、吸込み開口の領域に配置されたコームストリップが、折曲げ部、並びに吸い込まれた糸端部を拘束するための歯列を備えるものにおいて、
コームストリップ(19)は、折曲げ部(31)の領域に、綾巻きパッケージ(5)の表面からの糸端部の解放を促進する表面を有している、少なくとも1つの構造化された面(32)を備え、
折曲げ部(31)の領域に、2つの構造化された面(32A,32B)が設けられ、該2つの構造化された面(32A,32B)の間に平滑なコームストリップ領域(34)が形成されるように、該2つの構造化された面(32A,32B)が相互に間隔を置いて配置される」
に訂正する。
また、請求項1を引用する請求項3ないし5も同様に訂正する。

2.訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

3.訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1又は2記載」
とあるのを、
「請求項1記載」
に訂正する。

4.訂正事項4

本件特許明細書の段落【0016】に
「この課題を解決するために、本発明によれば、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップであって、吸込みノズルは、糸切れ又はコントロールされた糸切断のあとで綾巻きパッケージの表面に巻き付く糸端部を空気力式に受け取る吸込み開口を備え、吸込み開口の領域に配置されたコームストリップが、折曲げ部、並びに吸い込まれた糸端部を拘束するための歯列を備えるものにおいて、コームストリップは、折曲げ部の領域に、光化学エッチング法で製作された少なくとも1つの構造化された面、即ち凹凸を有する面を備える。」
とあるのを、
「この課題を解決するために、本発明によれば、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップであって、吸込みノズルは、糸切れ又はコントロールされた糸切断のあとで綾巻きパッケージの表面に巻き付く糸端部を空気力式に受け取る吸込み開口を備え、吸込み開口の領域に配置されたコームストリップが、折曲げ部、並びに吸い込まれた糸端部を拘束するための歯列を備えるものにおいて、コームストリップは、折曲げ部の領域に、綾巻きパッケージの表面からの糸端部の解放を促進する表面を有している、光化学エッチング法で製作された少なくとも1つの構造化された面、即ち凹凸を有する面を備え、折曲げ部の領域に、2つの構造化された面が設けられ、該2つの構造化された面の間に平滑なコームストリップ領域が形成されるように、該2つの構造化された面が相互に間隔を置いて配置される。」
に訂正する。

5.訂正事項5

本件特許明細書の段落【0017】を削除する。

6.訂正事項6

本件特許明細書の段落【0021】に
「請求項2に記載されたように、好適な態様では、」
とあるのを、
「本発明では、」
に訂正する。

第4 当審の判断

1.訂正の目的の適否について
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された発明特定事項である「コームストリップ(19)」の「折曲げ部(31)」について、「折曲げ部(31)の領域に、2つの構造化された面(32A,32B)が設けられ、該2つの構造化された面(32A,32B)の間に平滑なコームストリップ領域(34)が形成されるように、該2つの構造化された面(32A,32B)が相互に間隔を置いて配置される」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項1を引用する請求項3ないし5についての訂正事項1に係る訂正も、同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたところ、上記訂正事項2に係る請求項2を削除する訂正に伴って、本件訂正後の請求項3が請求項2を引用しないことを明確にするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明細書の【0016】の記載を本件訂正後の請求項1の内容に合わせて訂正するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、上記訂正事項2に係る請求項2を削除する訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明細書の段落【0016】を削除するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明細書の段落【0021】に記載した「請求項2に記載されたように、好適な態様では、」を「本発明では、」に訂正するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

2.新規事項の存否及び実質的拡張・変更の有無について
(1)訂正事項1
訂正事項1は、願書に添付した特許請求の範囲における「【請求項2】 折曲げ部(31)の領域に、2つの構造化された面(32A,32B)が設けられ、該2つの構造化された面(32A,32B)の間に平滑なコームストリップ領域(34)が形成されるように、該2つの構造化された面(32A,32B)が相互に間隔を置いて配置される、請求項1記載のコームストリップ。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、当初明細書等の記載に基づくものであって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項2の削除に伴い、引用する請求項を減少するものであるから、当初明細書等の記載に基づくものであって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、本件訂正前の請求項2の削除に伴い、引用する請求項を減少するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、願書に添付した明細書における「好適には、折曲げ部の領域に、2つの構造化された面が設けられ、2つの構造化された面の間に平滑なコームストリップ領域が形成されるように、2つの構造化された面が相互に間隔を置いて配置される。」(段落【0017】)及び「本発明による、吸込みノズルのコームストリップの製造及び構成の利点によれば、特に簡単で安価に、コームストリップの折曲げ部の領域に少なくとも1つの構造化された面を備えたコームストリップを形成することができ、その際、構造化された面は、綾巻きパッケージの表面からの糸端部の解放を促進する表面を有している。」(段落【0020】)との記載に基づくものであって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項4は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をもたらすものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、明細書の段落【0016】を削除するものであるから、当初明細書等の記載に基づくものであって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をもたらすものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲と明細書の記載の整合を図るものであるから、当初明細書等の記載に基づくものであって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項6は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をもたらすものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3.独立特許要件について

上記1.(1)及び(2)のとおり、訂正事項1及び2に係る本件訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び3ないし5に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。

本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び3ないし5に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見できない。

したがって、訂正事項1及び2は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正事項1及び2は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同法同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものである。
また、本件訂正審判の請求に係る訂正事項3ないし6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同法同条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載された、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械、特に自動綾巻き機の運転に関して、長年、巻返しが中断する際に、例えば糸切れ、クリアラによるコントロールされた切断又は搬送パッケージ交換の際に、作業部計算機を介して、作業部独自の自動糸結合装置を作動させることが一般的である。
【0003】
作業部計算機は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第4005752号明細書に記載されているように、先ずいわゆる吸込みノズルの吸込み開口をゆっくりと巻取り方向とは逆向きに回動する巻取りパッケージの表面に当接させ、負圧を加えるようにしている。その際、吸込みノズルは、その吸込み開口により、上糸の糸端部を空気力式に綾巻きパッケージとして形成された巻取りパッケージの表面から受け取るように試みる。上糸端部を把持したあとで、吸込みノズルは、旋回して、吸込みノズルの吸込み開口が糸撚継ぎ装置の下側に位置決めされたその出発位置に戻る。その際、綾巻きパッケージと吸込みノズルとの間に延びる糸ストランドは、糸結合装置の上側に配置された電子糸クリアラに、糸結合装置の領域に位置決めされた糸クランプ装置に、並びに糸ガイド板及び糸ガイド湾曲部材の相応のガイド輪郭を通ってガイドされ、そこに、撚継ぎ装置の下側に位置する糸切断装置の鋏が進入する。
【0004】
吸込みノズルとほぼ同時に、下側の出発位置に位置決めされたグリッパ管は、上側の作業部に旋回し、その際、そこまで例えば糸テンション装置に保持された、搬送パッケージから繰り出された下糸を連行する。上側の作業部にグリッパ管が旋回する際に、同様に相応の糸ガイド輪郭にガイドされた下糸は、付属の開いた糸クランプ装置並びに同様に開いた糸切断装置に移動する。下糸及び上糸は、次いで精確な長さに切り落とされ、いわゆる保持・解繊管において準備され、糸撚継ぎ装置において相互に結合される。要するに、自動綾巻き機の作業部には、例えば糸切れのあとで自動的に運転を継続するために、常に、綾巻きパッケージから連れ戻される上糸だけでなく搬送ボビンから到来する下糸が必要とされる。
【0005】
前述の糸結合装置並びに付属の吸込みノズル及びグリッパ管は、実証されていて、繊維産業において以前から大量に使用されている。
【0006】
もちろん公知の吸込みノズルでは、場合によっては綾巻きパッケージの表面に巻き付く糸端部を受け取る際に問題が生じる。このような問題は、特に綾巻きパッケージに巻き付く糸端部が比較的強くこねられ、かつ/又は例えば幾分か困難な、例えば特に毛羽立った(多毛の、絡んだ)ヤーンが存在する場合に生じる。
【0007】
そのような取扱いが幾分か困難な糸端部を受け取る際に吸込みノズルを補助するために、既にこれまで吸込みノズルの吸込み開口の領域にコームストリップを配置することが提案されてきた。コームストリップに、吸い込まれた糸が捕捉される。
【0008】
吸込みノズルの吸込み開口の領域に配置されたそのようなコームストリップは公知であり、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102006039735号明細書又は欧州特許公開第0398415号明細書に比較的詳しく記載されている。
【0009】
例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102006039735号明細書には、吸込みノズルが記載されており、この吸込みノズルは、吸込みヘッドの特別な構成に基づいて、特に好適な吸込み特性を有している。好適な吸込みノズルは、吸込み開口の領域に追加的にコームストリップを備えており、コームストリップは、吸込みノズルヘッドのカバー要素に配置されていて、相並んで配置された長さが同一の歯の列を有している。
【0010】
同様に欧州特許公開第0398415号明細書には、コームストリップが公知であり、このコームストリップは、吸込みノズルの吸込み開口の領域に配置されている。更に欧州特許公開第0398415号明細書には、どのようにしてそのようなコームストリップを製造できるのか記載されている。つまり、前掲特許文献によれば、そのようなコームストリップは、レーザ切断装置により製造され、その際、先ずベース板のスタックが分離され、切断エッジの領域にその都度複数の同サイズの歯が形成される。
【0011】
更に米国特許第2857113号明細書において、吸込みノズルが公知であり、この吸込みノズルは、吸込み開口の領域に、ニードルコームを備えているか、又は、吸込みノズル壁の1つが吸込み開口の領域で紙やすり状に粗く形成されている。
【0012】
更に例えばオーストリア国特許第368106号明細書において吸込みノズルが記載されており、この吸込みノズルは、吸込み開口の領域に特別な糸持上げ装置を備えている。糸持上げ装置は、綾巻きパッケージと共に回転するローラ、並びに多条のウォームとして構成されたコンタクトローラを備えている。実際には、オーストリア国特許第368106号明細書により公知の比較的面倒で敏感な装置は定着しなかった。
【0013】
前述のようにコームストリップを備えた吸込みノズルは、空気力式に糸端部を受け取る際に、既にコームストリップを備えていない吸込みノズルよりも極めて高い成功率を有しているが、そのようなコームストリップの構成に関して更なる改良が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006039735号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第0398415号明細書
【特許文献3】米国特許第2857113号明細書
【特許文献4】オーストリア国特許第368106号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
背景技術から出発して、本発明の課題は、吸込みノズルに吸い込まれた糸端部を拘束するだけでなく、綾巻きパッケージの表面に巻き付く糸端部の綾巻きパッケージの表面からの解放を促進するように形成された、吸込みノズル用の安価なコームストリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題を解決するために、本発明によれば、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップであって、吸込みノズルは、糸切れ又はコントロールされた糸切断のあとで綾巻きパッケージの表面に巻き付く糸端部を空気力式に受け取る吸込み開口を備え、吸込み開口の領域に配置されたコームストリップが、折曲げ部、並びに吸い込まれた糸端部を拘束するための歯列を備えるものにおいて、コームストリップは、折曲げ部の領域に、綾巻きパッケージの表面からの糸端部の解放を促進する表面を有している、光化学エッチング法で製作された少なくとも1つの構造化された面、即ち凹凸を有する面を備え、折曲げ部の領域に、2つの構造化された面が設けられ、該2つの構造化された面の間に平滑なコームストリップ領域が形成されるように、該2つの構造化された面が相互に間隔を置いて配置される。
【0017】(削除)
【0018】
好適には、構造化された面の領域に、アンダカットを有する輪郭縁が設けられる。
【0019】
好適には、構造化された面は、コームストリップの歯列の上側に間隔を置いて配置され、歯列は、複数の大きな歯と複数の小さな歯とを備え、2つの大きな歯の間にそれぞれ1つの小さな歯が配置される。
【0020】
本発明による、吸込みノズルのコームストリップの製造及び構成の利点によれば、特に簡単で安価に、コームストリップの折曲げ部の領域に少なくとも1つの構造化された面を備えたコームストリップを形成することができ、その際、構造化された面は、綾巻きパッケージの表面からの糸端部の解放を促進する表面を有している。つまり、コームストリップの、光化学エッチング法で製作される構造化された面により、特に多くの場合大きな毛羽立った性質を特徴とする面倒なヤーンの場合において糸端部の解放が大幅に改善される。
【0021】
本発明では、コームストリップが2つの構造化された面を備えており、これらの構造化された面は、その間に平滑なコームストリップ領域が形成されるように、相互に間隔を置いて配置されている。そのような構成により、一方では、糸を受け取る際に、高い確率で構造化された面の1つが糸端部に作用し、その際、糸端部は綾巻きパッケージの表面から解放される。他方では、構造化された面の間に配置された平滑なコームストリップ領域により、必要な場合に吸込みノズルを介して問題なく予め設定可能な糸長さを引き出すことができるよう保証され、その際、吸い込まれた糸が常に吸込みノズル中央にスライドされるようになっているので、コームストリップの折曲げ部の領域で糸が解れることはない。
【0022】
好適な態様では、構造化された面は、請求項3に記載されたように、アンダカットを備えた輪郭縁を有している。輪郭縁の領域に配置されたそのようなアンダカットは、例えば突出する縁繊維を簡単に把持し、その結果糸端部が所望に綾巻きパッケージの表面から持ち上げられるので、特に毛羽立ったヤーンの際に極めて効果的である。
【0023】
請求項4の記載によれば、構造化された面は、コームストリップの歯列の上側に間隔を置いて配置されている。歯列は、糸端部を受け取るための大きな歯並びに糸端部を拘束するための小さな歯を多数有している。つまり、それぞれ2つの大きな歯の間に1つの小さな歯が位置決めされている。「光化学エッチング」による製造方法では、構造化された面も微細な構造の歯列も1つの作業工程で精確かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるコームストリップを備えた吸込みノズルを有する、綾巻きパッケージを製造する繊維機械、図示の態様では自動綾巻き機の1つの巻返し部を概略的に示す図である。
【図2】本発明によるコームストリップを備えた吸込みノズルの吸込みノズルヘッドの斜視図である。
【図3】本発明によるコームストリップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための形態を、図示の態様を用いて詳説する。
【0026】
図1には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械、図示の態様ではいわゆる自動綾巻き機1の巻返し作業部2を概略側面図で示している。
【0027】
そのような自動綾巻き機1は、通常、列状に相並んで配置された同一の多数の巻返し部としての作業部2を備えている。作業部2に、公知でありしたがって詳説しないが、リング精紡機で生産された紡績コップ3が大容量の綾巻きパッケージ5に巻き返される。綾巻きパッケージ5は、完成後、図示していない自動で作業を行うサービスアセンブリ、好適には綾巻きパッケージ交換機により、機械長さにわたって延在している綾巻きパッケージ搬送装置7に引き渡され、機械端部側に配置されたパッケージ積込みステーション等に搬送される。
【0028】
図示の態様に示すように、自動綾巻き機1は、多くの場合、ボビン・管搬送システム6として構成されたロジスティック装置を備えており、ボビン・管搬送システム6において、紡績コップ3もしくは空管が搬送皿11上で循環走行する。ボビン・管ボビン搬送システム6のうち、図1には、コップ供給区間24、可逆式に駆動可能な貯蔵区間25、巻返し部2に通じる横搬送区間26並びに管戻しガイド区間27だけを示している。
【0029】
更に自動綾巻き機1の各作業部2は、公知であり従って詳説しない、作業部2の規則的な運転にとって必要である様々な別の装置を備えている。各作業部2は、例えば作業部計算機28を備えており、作業部計算機28は、バス接続部29を介して自動綾巻き機1の中央制御ユニット30に接続されており、並びに各作業部2は、巻取り装置4を備えており、巻取り装置4は、旋回軸12を中心に可動に支承されたパッケージ保持枠8を備えている。
【0030】
図1から看取されるように、巻取り運転中、パッケージ保持枠8に自由回転可能に保持された綾巻きパッケージ5が、その表面で、支持・駆動ローラ9に載置され、支持・駆動ローラ9に電動モータ33が作用する。電動モータ33は、制御ライン35を介して作業部計算機28に接続されている。
【0031】
巻取りプロセスの間に巻取り糸16を綾振りするために、糸綾振り装置10が設けられており、綾振り装置10は、例えば糸ガイドフィンガ13から成っており、糸ガイドフィンガ13に電動モータ式の駆動装置14が作用し、綾巻きパッケージ5に巻き取られる糸16を、綾巻きパッケージ5の端面の間で綾振りする。糸ガイド駆動装置14は、制御ライン15を介して、作業部計算機28に作用接続されている。
【0032】
更にそのような作業部2は、糸結合装置42、好適には空気力式の撚継ぎ装置42と、下糸を操作するためのグリッパ管43と、吸込みノズル17とを備えており、吸込みノズル17により、巻返し中断後に綾巻きパッケージ5の表面に巻き付く糸端部が受け取られ、糸結合装置42に導入可能である。吸込みノズル17は、例えば図2から看取されるように、吸込みノズルヘッド18の部分に吸込み開口23を備えており、吸込み開口23は、本発明によるコームストリップ19を備えている。
【0033】
その際コームストリップ19は、図3から良好に看取されるように、大きな歯20及び小さな歯21が設けられた歯列22並びに折曲げ部31の領域に構造化された(凹凸を有する)面32を備えている。
【0034】
更に、例えば間隔aを置いて歯列22の上側に配置された両方の構造化された面32の間に、平滑なコームストリップ領域34が設けられている。この平滑なコームストリップ領域34により、必要な場合、吸込みノズル中央にガイドしたい吸い込まれた糸が比較的スムーズに吸込みノズル17に進入できるよう保証される。
【0035】
本発明によるコームストリップ19は、好適には0.2mm?0.5mmの厚さを有するばね鋼板から製作されている。
【0036】
前述のように、本発明によるコームストリップを製造する好適な方法として光化学エッチング法が挙げられる。短波放射で光化学プロセス(光化学プロセスにおいて薄いばね鋼の露光箇所で極めて精確な材料の剥離が生じる)が実施されるそのような製造方法により、構造化された面も微細な歯の幾何学形状も安価に製作することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 自動綾巻き機、 2 作業部、 3 紡績コップ、 4 巻取り装置、 5 綾巻きパッケージ、 6 ボビン・管搬送システム、 7 綾巻きパッケージ搬送装置、 8 パッケージ保持枠、 9 支持・駆動ローラ、 10 綾振り装置、 11 搬送皿、 12 旋回軸、 13 糸ガイドフィンガ、 14 駆動装置、 15 制御ライン、 16 糸、 17 吸込みノズル、 18 吸込みノズルヘッド、 19 コームストリップ、 20 大きな歯、 21 小さな歯、 22 歯列、 23 吸込み開口、 24 コップ供給区間、 25 貯蔵区間、 26 横搬送区間、 27 管戻しガイド区間、 28 作業部計算機、 29 バス接続部、 30 中央制御ユニット、 31 折曲げ部、 32 構造化された面、 33 電動モータ、 34 コームストリップ領域、 35 制御ライン、 42 糸結合装置、 43 グリッパ管
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップであって、
吸込みノズルは、糸切れ又はコントロールされた糸切断のあとで綾巻きパッケージの表面に巻き付く糸端部を空気力式に受け取る吸込み開口を備え、吸込み開口の領域に配置されたコームストリップが、折曲げ部、並びに吸い込まれた糸端部を拘束するための歯列を備えるものにおいて、
コームストリップ(19)は、折曲げ部(31)の領域に、綾巻きパッケージ(5)の表面からの糸端部の解放を促進する表面を有している、少なくとも1つの構造化された面(32)を備え、
折曲げ部(31)の領域に、2つの構造化された面(32A,32B)が設けられ、該2つの構造化された面(32A,32B)の間に平滑なコームストリップ領域(34)が形成されるように、該2つの構造化された面(32A,32B)が相互に間隔を置いて配置されることを特徴とする、コームストリップ。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
構造化された面(32;32A,32B)の領域に、アンダカットを有する輪郭縁が設けられる、請求項1記載のコームストリップ。
【請求項4】
構造化された面(32;32A,32B)は、コームストリップ(19)の歯列(22)の上側に間隔を置いて配置され、歯列(22)は、複数の大きな歯(20)と複数の小さな歯(21)とを備え、2つの大きな歯(20)の間にそれぞれ1つの小さな歯(21)が配置される、請求項1記載のコームストリップ。
【請求項5】
構造化された面(32;32A,32B)は、凹凸を有する面である、請求項1から4のいずれか1項記載のコームストリップ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-04-28 
結審通知日 2017-05-02 
審決日 2017-05-15 
出願番号 特願2012-216594(P2012-216594)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (B65H)
P 1 41・ 853- Y (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
畑井 順一
登録日 2016-09-30 
登録番号 特許第6012374号(P6012374)
発明の名称 綾巻きパッケージを製造する繊維機械の各作業部の吸込みノズル用のコームストリップ  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  

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