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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01S 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S |
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管理番号 | 1329423 |
審判番号 | 不服2016-18095 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-02 |
確定日 | 2017-07-04 |
事件の表示 | 特願2012-163151「列車速度計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 3日出願公開、特開2014- 21075、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年7月23日の出願であって、平成28年2月25日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月20日付けで手続補正がされ、同年9月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年12月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年9月26日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。 理由1(新規性) 本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。 理由2(進歩性) (1)本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項規定により、特許を受けることができない。 (2)本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1、2、4、5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開平02-306166号公報 2.特開昭59-040281号公報 3.特開平11-281316号公報 4.米国特許第4353068号明細書 5.特開昭51-065678号公報 第3 本願発明 本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成28年12月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 レール上を走行する列車に搭載され、一対の電磁波送信部それぞれから前記レールに向けて電磁波を送信し、前記レールからの反射波に基づいて前記列車の速度を計測する列車速度計測装置であって、前記一対の電磁波送信部は、指向方向が前記列車の左右方向及び前後方向の双方において前記レールに斜めに交差し、前記列車の左右方向において面対称をなして1本のレールに2方向から電磁波を照射するよう配置される、列車速度計測装置。 【請求項2】 レール上を走行する列車に搭載され、一対の電磁波送信部それぞれから前記レールに向けて電磁波を送信し、前記レールからの反射波に基づいて前記列車の速度を計測する列車速度計測装置であって、前記一対の電磁波送信部は、指向方向が前記列車の左右方向及び前後方向の双方において前記レールに斜めに交差し、前記列車の前後方向において面対称をなして1本のレールに2方向から電磁波を照射するよう配置される、列車速度計測装置。 【請求項3】 前記一対の電磁波送信部それぞれが送信した電磁波の反射波の周波数に基づいて、前記列車の速度をそれぞれに計測し、これらの速度計測値の平均値を計測結果として出力する、請求項1又は請求項2記載の列車速度計測装置。 【請求項4】 直線区間及び曲線区間での偏倚発生状態で前記一対の電磁波送信部による電磁波照射範囲に前記レールが含まれる、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の列車速度計測装置。 【請求項5】 前記一対の電磁波送信部それぞれが送信した電磁波の反射波をそれぞれに受信する一対の反射波受信部を備える、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の列車速度計測装置。 【請求項6】 前記一対の電磁波送信部は、左右一対のレール間に配置される、請求項2記載の列車速度計測装置。」 第4 原査定の理由1及び理由2(1)について 本願発明1及び本願発明2は、平成28年12月2日付けの手続補正で補正される前の、すなわち、査定時における請求項1を引用する請求項3をさらに引用する請求項6に係る発明を2つの発明としてそれぞれ、独立形式請求項として記載したものであるところ、原査定の理由1及び理由2(1)は、査定時の請求項6に係る発明を対象とするものでないから、本願発明1、2及びこれらを引用する本願発明3-6について、原査定の理由1及び理由2(1)を維持することができない。 第5 原査定の理由2(2)に係る引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、名称を「移動体の速度検出装置」とする発明について、図とともに次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。 (1)「【産業上の利用分野】 この発明は例えばコークス炉設備において、コークスを運ぶ貨車などの移動体の速度を検出する移動体の速度検出装置に関するものである。」(第1頁左下欄第16行?第19行) (2)「以下、この発明の一実施例を図について説明する。前記第4図と同一部分に同一符号を付し重複説明を省略した第1図および第2図において、7は移動体1の両側部に別個独立に設けた一対の速度検出器であり、この一対の速度検出器7は例えば第3図に示すように、レール面に光を照射する発光部7aと該レール面からの反射光を受光する受光部7bとを有し、ドツプラ効果によって、移動体1の速度に応じて波長あるいは位相が変化することを捕えることができる。 8は速度検出器7からの検出信号を速度信号に変換する一対の変換器、9は変換器からの信号同士を比較して差信号を出力する比較器、10はアンテナ5から入力された番地信号に基づいて移動体1の速度を検出し、この速度を上記比較器9の出力信号により補正する検出速度補正回路である。 次に動作について説明する。移動体1が正常に走行しているときは、一対の速度検出器7からの検出信号が同一であるから、比較器9の出力信号は零であり、アンテナ5から入力された番地信号に基づいて、単位時間当りの移動体1の移動速度が検出速度補正回路10で算出される。 一方、移動体1が第1図鎖線示のようによじれ走行した場合、一対の速度検出器7からの検出信号に差が生じ、アンテナ5を装着した側が反対側とどの程度速度が異なるかが比較器9から出力される。 そして、この比較器9の出力を検出速度補正回路10に与え、アンテナ5から人力された番地信号に基づいて算出された移動体1の移動速度を補正し、移動体1のよじれ運動による影響を除去し、移動体の移動速度を適確に知ることができる。」(第2頁左下欄第18行?第3頁左上欄第9行) (3)第3図には、上記(2)の「この一対の速度検出器7は例えば第3図に示すように、レール面に光を照射する発光部7aと該レール面からの反射光を受光する受光部7bとを有し、ドツプラ効果によって、移動体1の速度に応じて波長あるいは位相が変化することを捕えることができる。」との記載を踏まえれば、「一対の速度検出器7」は、「ドツプラ効果によって、それぞれ、移動体1の左側のレールに対する速度及び右側のレールに対する速度に応じて波長あるいは位相が変化することを捕える」ことが示されているということができる。また、発光部7aは、レール面に横方向斜めに光を照射することが見て取れる。 上記(1)ないし上記(3)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているということができる。 「貨車などの移動体1の両側部に別個独立に一対の速度検出器7が設けられ、この一対の速度検出器7は、レール面に横方向斜めに光を照射する発光部7aと該レール面からの反射光を受光する受光部7bとを有し、ドツプラ効果によって、それぞれ、移動体1の左側のレールに対する速度及び右側のレールに対する速度に応じて波長あるいは位相が変化することを捕えることができるものであり、 一対の速度検出器7からの検出信号は、それぞれ、一対の変換器8により速度信号に変換され、比較器9によりその差信号が出力され、この差信号により、検出速度補正回路10においてアンテナ5から入力された番地信号に基づいて検出した移動体1の速度を補正する、移動体の速度検出装置。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2の第2頁右上欄第11行-左下欄第1行の記載及び第1図からみて、当該引用文献2には、左レールとの相対速度、右レールとの相対速度を測定し、車両の旋回、横揺れがあって犬釘への電波の入射角が変動しても、両速度の平均値を算出すれば、常に高い精度で車両走行速度を求めることができるとの技術事項が記載されているということができる。 3 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4の第4欄第54-68行、第5欄第13-20行、第5欄第49-60行の記載及び第1図、第2図からみて、当該引用文献4には、レーダー速度センサ30が、機関車10に取付けられ、アンテナ40から信号41が送受信され、送信された信号41と受信された信号41の周波数を比較し、周波数シフトに関連付けられた出力信号が生成され(第4欄第54-68行)、信号41は、レールの前後方向においてレールに斜めに交差する(第1図、第2図)との技術事項が記載されているということができる。 4 引用文献5について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5の第2頁左上欄第4-10行の記載及び第1図、第2図からみて、当該引用文献5には、車両のドップラスピードメータにおいて、進行方向と逆方向に互いに対照的な送受信機を設ける(第2頁左上欄第4-10行)とともに、進行方向の前後方向に面対称をなして一対の送信部を設ける(第1図、第2図)との技術事項が記載されているということができる。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「貨車などの移動体1」、「発光部7a」は、それぞれ、本願発明1の「レール上を走行する列車」、「電磁波送信部」に相当する。 イ 引用発明は「貨車などの移動体1の両側部に別個独立に一対の速度検出器7が設けられ」るものであり、ここで、「一対の速度検出器7」は、「レール面に横方向斜めに光を照射する発光部7aと該レール面からの反射光を受光する受光部7bとを有し」、「ドツプラ効果によって」、「移動体1」の「左側のレールに対する速度及び右側のレールに対する速度」を検出するものであって、「貨車などの移動体1」全体の速度を計測するものではない。 したがって、引用発明の「左側のレールに対する速度及び右側のレールに対する速度」を検出する「一対の速度検出器7」と、本願発明の「レール上を走行する列車に搭載され、一対の電磁波送信部それぞれから前記レールに向けて電磁波を送信し、前記レールからの反射波に基づいて前記列車の速度を計測する列車速度計測装置」とは、その機能面に着目すると、「レール上を走行する列車に搭載され、一対の電磁波送信部それぞれから前記レールに向けて電磁波を送信し、前記レールからの反射波に基づいて速度を計測する計測装置を含む」点で共通する。 ウ 引用発明は、「一対の速度検出器7からの検出信号は、それぞれ、一対の変換器8により速度信号に変換され、比較器9によりその差信号が出力され、この差信号により、検出速度補正回路10においてアンテナ5から入力された番地信号に基づいて検出した移動体1の速度を補正する、移動体の速度検出装置」であって、「アンテナ5から入力された番地信号に基づいて検出した移動体1の速度を補正」して、「移動体」自体の速度を検出する「移動体の速度検出装置」であるということができ、本願発明の「列車速度計測装置」とは、移動体(本願発明の「列車」に相当。)自体の速度の計測手段は異なるものの、移動体(本願発明の「列車」に相当。)自体の速度を計測している点では共通する。 したがって、引用発明の「移動体の速度検出装置」と本願発明の「列車速度計測装置」とは、移動体(本願発明の「列車」に相当。)自体の速度を計測している点で一致する。 エ 引用発明の「一対の速度検出器7」が有する「発光部7a」は、「レール面に横方向斜めに光を照射」しており、この態様も左右方向においてレールに斜めに交差しているということができるから、本願発明1の「前記一対の電磁波送信部は、指向方向が前記列車の左右方向及び前後方向の双方において前記レールに斜めに交差し」との事項に関し、本願発明1と引用発明は、「前記一対の電磁波送信部は、指向方向が前記列車の左右方向において前記レールに斜めに交差」する点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点を有する。 (一致点) 「レール上を走行する列車に搭載され、一対の電磁波送信部それぞれから前記レールに向けて電磁波を送信し、前記レールからの反射波に基づいて速度を計測する計測装置を含むものであって、 前記一対の電磁波送信部は、指向方向が前記列車の左右方向において前記レールに斜めに交差するよう配置される、列車速度計測装置。」 (相違点) (相違点1) 本願発明1は、レールからの反射波に基づいて「列車の」速度を計測するものであるのに対し、引用発明においては、「移動体1の速度」は、「アンテナ5から入力された番地信号に基づいて検出」されるものであって、一対の速度検出器の出力は、その差信号が前記アンテナ5から入力された番地信号に基づいて検出された移動体1の速度の補正に用いられるだけであり、引用発明は、前記レールからの反射波に基づいて「前記列車の」速度を計測する列車速度計測装置について特定がない点。 (相違点2) 本願発明1は、前記一対の電磁波送信部は、指向方向が前記列車の左右方向「及び前後方向の双方」において前記レールに斜めに交差するのに対し、引用発明は、「発光部7a」の光の照射方向が前後方向においてレールに斜めに交差していることについて特定がない点。 (相違点3) 本願発明1は、「前記一対の電磁波送信部」が「前記列車の左右方向において面対称をなして1本のレールに2方向から電磁波を照射するよう配置される」ものであるのに対し、引用発明の「一対の速度検出器7」が有する「発光部7a」は、それぞれ、「移動体1の左側のレールに対する速度」及び「右側のレールに対する速度」を検出するべく、「左側のレール」及び「右側のレール」を照射するように配置されているものであって、本願発明1のような配置について特定がない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点3について検討すると、引用発明は、「移動体1の両側部に別個独立に設けられた一対の速度検出器7」が、それぞれ、「移動体1の左側のレールに対する速度」及び「右側のレールに対する速度」の信号を出力し、「この差信号により、検出速度補正回路10においてアンテナ5から入力された番地信号に基づいて検出した移動体1の速度を補正する」ものであるから、引用発明において、本願発明1のごとく、一対の発光部7aがともに「1本のレール」を照射するような配置とすることは想定されない。また、このような配置は、引用文献2、4、5にも記載されていない。 したがって、上記相違点1及び2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2、4、5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2について (1)対比 本願発明2は、本願発明1の「前記列車の左右方向において面対称をなして」を「前記列車の前後方向において面対称をなして」とし、その余については本願発明1と同様であるから、その一致点及び相違点は、上記1における(一致点)、(相違点1)及び(相違点2)と同様のものを含み、さらに次の(相違点4)を含む。 (相違点4) 本願発明2は、「前記一対の電磁波送信部」が「前記列車の前後方向において面対称をなして1本のレールに2方向から電磁波を照射するよう配置される」ものであるのに対し、引用発明の「一対の速度検出器7」が有する「発光部7a」は、それぞれ、「移動体1の左側のレールに対する速度」及び「右側のレールに対する速度」を検出するべく、「左側のレール」及び「右側のレール」を照射するように配置されているものであって、本願発明2のような配置については特定がない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点4について判断するに、上記1の本願発明1における相違点3についての判断と同様に、引用発明において、本願発明2のごとく、一対の発光部7aがともに「1本のレール」を照射するような配置とすることは想定されない。また、このような配置は、引用文献2、4、5にも記載されていない。 したがって、相違点1及び2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2、4、5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明3-6について 本願発明3-6は、本願発明1又は2の発明特定事項を全て含むものであるから、引用発明及び引用文献2、4、5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第7 むすび したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-06-19 |
出願番号 | 特願2012-163151(P2012-163151) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01S)
P 1 8・ 113- WY (G01S) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 三田村 陽平 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
酒井 伸芳 須原 宏光 |
発明の名称 | 列車速度計測装置 |
代理人 | 西山 春之 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 小川 護晃 |