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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 C08F
管理番号 1329438
審判番号 不服2016-8264  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-03 
確定日 2017-07-04 
事件の表示 特願2013-556326「分枝共役ジエン共重合体、ゴム組成物および空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日国際公開、WO2013/115010、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成25年1月22日(優先権主張 平成24年2月1日、平成24年9月28日)を国際出願日とする特許出願であって、以降の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 7月 7日 国内書面、特許協力条約第19条補正の写し提出書、上申書
平成27年12月22日付け 拒絶理由通知
平成28年 2月10日 意見書、手続補正書
平成28年 2月29日付け 拒絶査定
平成28年 6月 3日 審判請求書、手続補正書
平成28年 6月24日付け 前置報告書
平成28年 7月21日 上申書

第2 原査定の概要
原査定(平成28年2月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。

●理由1について
・請求項 1-14
・先願 1-3

<引用文献等一覧>
1.PCT/JP2013/060127号(国際公開第2013/151068号)
2.PCT/JP2013/060128号(国際公開第2013/151069号)
3.PCT/JP2013/060126号(国際公開第2013/151067号)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、平成28年6月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される発明であり、次のとおりの発明である。

「【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1)は、炭素数6または11の脂肪族炭化水素を表す。)
で示される分枝共役ジエン化合物と、一般式(2)
【化2】

(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)
で示される共役ジエン化合物と、一般式(3)
【化3】

(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物とを共重合して得られる分枝共役ジエン共重合体であって、
分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が1?99重量%、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?99重量%未満、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が0重量%超?99重量%未満であって、
分枝共役ジエン化合物(1)がファルネセンであり、共役ジエン化合物(2)が1,3-ブタジエンであり、ビニル化合物(3)がスチレンである分枝共役ジエン共重合体。
【請求項2】
分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が2.5?75重量%未満、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?72.5重量%、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が25?97.5重量%未満である請求項1記載の分枝共役ジエン共重合体。
【請求項3】
分枝共役ジエン化合物(1)を共役ジエン化合物(2)で置き換えた同一の重量平均分子量の共重合体との比較において、ムーニー粘度ML_(1+4)(130℃)が低いものである、加工性改善用の、請求項1または2記載の分枝共役ジエン共重合体。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の分枝共役ジエン共重合体を含んでなるゴム組成物。
【請求項5】
請求項4記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
【請求項6】
一般式(1)
【化4】

(式中、R^(1)は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)
で示される分枝共役ジエン化合物と、一般式(2)
【化5】

(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)
で示される共役ジエン化合物と、一般式(3)
【化6】

(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物とを共重合して得られる分枝共役ジエン共重合体と天然ゴムとからなるゴム成分を含んでなるゴム組成物であって、
分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が1?99重量%、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?99重量%未満、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が0重量%超?99重量%未満であり、
ゴム成分における分枝共役ジエン共重合体の配合量が70重量%以上であるゴム組成物。
【請求項7】
分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が2.5?75重量%未満、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?72.5重量%、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が25?97.5重量%未満である請求項6記載のゴム組成物。
【請求項8】
分枝共役ジエン化合物(1)を共役ジエン化合物(2)で置き換えた同一の重量平均分子量の共重合体との比較において、ムーニー粘度ML_(1+4)(130℃)が低いものである、加工性改善用の分枝共役ジエン共重合体を含んでなる、請求項6または7記載のゴム組成物。
【請求項9】
分枝共役ジエン化合物(1)が、ミルセンおよび/またはファルネセンである請求項6?8のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
共役ジエン化合物(2)が、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンである請求項6?9のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
ビニル化合物(3)がスチレン、α-メチルスチレン、α-ビニルナフタレンおよびβ-ビニルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上である請求項6?10のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項6?11のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。」

第4 優先権主張について
本願は、次の第1出願及び第2出願に基づく優先権を主張するものである。
第1出願:特願2012-20365(出願日:平成24年2月1日)(以下、「第1優先日」という。)
第2出願:特願2012-217554(出願日:平成24年9月28日)(以下、「第2優先日」という。)
しかしながら、次の理由により、本願発明1ないし5に対して、第1出願に基づく優先権の効果は認められず、また本願発明6ないし12に対して、発明特定事項である「一般式(1)【化4】・・・(略)・・・(式中、R^(1)は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)で示される分枝共役ジエン化合物」のうち「ミルセン」を除いた事項について、第1出願に基づく優先権の効果は認められない。
したがって、本願発明1ないし5、及び本願発明6ないし12の上記分枝共役ジエン化合物のうち「ミルセン」を除いた事項についての拡大先願の判断の基準日、すなわち本件出願の優先日は、第2出願の出願日である平成24年9月28日である。

<理由>
(1)本願発明1ないし5
第1出願に係る特許請求の範囲及び明細書では「ミルセン」が記載されるにとどまり(請求項1)、本願発明1ないし5における発明特定事項である「ファルネセン」についての記載はなく、また「ミルセン」から「ファルネセン」が利用できることは、当業者に自明な事項でもない。
一方、第2出願に係る特許請求の範囲及び明細書では「ファルネセン」が記載されており(請求項4)、本願発明1ないし5に係るその他の発明特定事項についても開示されている(請求項1ないし8)。

(2)本願発明6ないし12
第1出願に係る特許請求の範囲及び明細書では「ミルセン」が記載されるにとどまり(請求項1)、本願発明6ないし12における発明特定事項である「一般式(1)【化4】・・・(略)・・・(式中、R^(1)は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)で示される分枝共役ジエン化合物」についての記載はなく、また「ミルセン」から上記分枝共役ジエン化合物全体が利用できることは、当業者に自明な事項でもない。
一方、第2出願に係る特許請求の範囲及び明細書では上記分枝共役ジエン化合物が記載されており(請求項1)、本願発明6ないし12に係るその他の発明特定事項についても開示されている(請求項1ないし8、表2及び4)。

第5 先願明細書の記載事項及び先願明細書に記載された発明
1.先願明細書1
(1)先願明細書1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された先願1は、平成25年4月2日(優先権主張 平成24年4月4日)を国際出願日とする出願であって、本願の第2優先日後の平成25年10月10日に国際公開されたものであり、その国際出願日における国際出願の明細書又は請求の範囲(以下、「先願明細書1」という。)には、次の記載(以下、順に「記載1a」及び「記載1b」という。)がある。なお、下線は、他の文献も含め、当審で付したものである。

1a 「[請求項1] 炭素数12以下の共役ジエン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有する共重合体。」
[請求項2] 前記単量体単位(b)がβ-ファルネセン由来の単量体単位である、請求項1に記載の共重合体。
[請求項3] 前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1?99質量%である、請求項1又は2に記載の共重合体。
[請求項4] 前記共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.0?4.0である、請求項1?3のいずれかに記載の共重合体。
[請求項5] 炭素数12以下の共役ジエンがブタジエン及びミルセンの少なくとも1種である、請求項1?4のいずれかに記載の共重合体。
[請求項6] 炭素数12以下の共役ジエンがブタジエンである、請求項5に記載の共重合体。
・・・(略)・・・
[請求項11] 請求項1?9のいずれかに記載の共重合体(A)、ゴム成分(B)及びカーボンブラック(C)を含有するゴム組成物。
・・・(略)・・・
[請求項16] 前記ゴム成分(B)100質量部に対し、前記共重合体(A)を0.1?100質量部、及び前記カーボンブラック(C)を0.1?150質量部含有する、請求項11に記載のゴム組成物。
・・・(略)・・・
[請求項19] 前記ゴム成分(B)が、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム及びイソプレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項11?18のいずれかに記載のゴム組成物。
[請求項20] 請求項11?19のいずれかに記載のゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤ。」(請求項1ないし20)

1b 「本発明の共重合体は、少なくとも炭素数12以下の共役ジエンとファルネセンとを共重合したものであればよく、その他の単量体と炭素数12以下の共役ジエンとファルネセンとを共重合したものであってもよい。 その他の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-tert-ブチル-2-メチルスチレン等の芳香族ビニル等が挙げられる。
共重合体中のその他の単量体の割合は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。」(段落[0017])

(2)先願明細書1に記載された発明
したがって、先願明細書1には、上記記載1a及び1bを整理すると、特に記載1aの下線部から、次の発明(以下、「先願発明1-1」、「先願発明1-2」という。)が記載されていると認める。

先願発明1-1
「ブタジエン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有し、前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1?99質量%である共重合体。」

先願発明1-2
「ブタジエン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有し、前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1?99質量%である共重合体 0.1?100質量部、天然ゴム 100質量部及びカーボンブラック 0.1?150質量部含有するゴム組成物。」

(3)先願1の優先権主張について
先願1は、平成24年4月4日付け特願2012-85928を基礎とする優先権主張を伴うものである。そして、先願発明1-1及び先願発明1-2に関する上記記載事項1a及び1bは、上記出願明細書の対応する以下の箇所に記載された事項である。
記載1a:請求項1ないし20
記載1b:段落【0017】
したがって、先願発明1-1及び先願発明1-2について、特願2012-85928に基づく優先権の利益を享受するものであり、その優先日(平成24年4月4日)は本願の第2優先日(平成24年9月28日)よりも前である。

2.先願明細書2
(1)先願明細書2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された先願2は、平成25年4月2日(優先権主張 平成24年4月4日)を国際出願日とする出願であって、本願の第2優先日後の平成25年10月10日に国際公開されたものであり、その国際出願日における国際出願の明細書又は請求の範囲(以下、「先願明細書2」という。)には、次の記載(以下、順に「記載2a」及び「記載2b」という。)がある。

2a 「[請求項1] イソプレン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有する共重合体。
[請求項2] 前記単量体単位(b)がβ-ファルネセン由来の単量体単位である、請求項1に記載の共重合体。
[請求項3] 前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1?99質量%である、請求項1又は2に記載の共重合体。
・・・(略)・・・
[請求項9] 請求項1?7のいずれかに記載の共重合体(A)、ゴム成分(B)及びカーボンブラック(C)を含有するゴム組成物。
・・・(略)・・・
[請求項14] 前記ゴム成分(B)100質量部に対し、前記共重合体(A)を0.1?100質量部、及び前記カーボンブラック(C)を0.1?150質量部含有する、請求項9に記載のゴム組成物。
・・・(略)・・・
[請求項17] 前記ゴム成分(B)が、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム及びイソプレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項9?16のいずれかに記載のゴム組成物。
[請求項18] 請求項9?17のいずれかに記載のゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤ。」(請求項1乃至18)

2b 「本発明の共重合体は、少なくともイソプレンとファルネセンとを共重合したものであればよく、その他の単量体とイソプレンとファルネセンとを共重合したものであってもよい。 その他の単量体としては、例えば、ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン、クロロプレン等の共役ジエン、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-tert-ブチル-2-メチルスチレン等の芳香族ビニルが挙げられる。これらの中では、ブタジエン、ミルセン、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレンが好ましい。
共重合体中のその他の単量体の割合は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。」(段落[0015])

(2)先願明細書2に記載された発明
したがって、先願明細書2には、上記記載2a及び2bを整理すると、特に記載2aの下線部から、次の発明(以下、「先願発明2-1」、「先願発明2-2」という。)が記載されていると認める。

先願発明2-1
「イソプレン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有し、前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1?99質量%である共重合体。」

先願発明2-2
「イソプレン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有し、前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1?99質量%である共重合体 0.1?100質量部、天然ゴム 100質量部及びカーボンブラック 0.1?150質量部含有するゴム組成物。」

(3)先願2の優先権主張について
先願2は、平成24年4月4日付け特願2012-85929を基礎とする優先権主張を伴うものである。そして、先願発明2-1及び先願発明2-2に関する上記記載事項2a及び2bは、上記出願明細書の対応する以下の箇所に記載された事項である。
記載2a:請求項1ないし18
記載2b:段落【0015】
したがって、先願発明2-1及び先願発明2-2について、特願2012-85929に基づく優先権の利益を享受するものであり、その優先日(平成24年4月4日)は本願の第2優先日(平成24年9月28日)よりも前である。

3.先願明細書3
(1)先願明細書3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された先願3は、平成25年4月2日(優先権主張 平成24年4月4日)を国際出願日とする出願であって、本願の第2優先日後の平成25年10月10日に国際公開されたものであり、その国際出願日における国際出願の明細書又は請求の範囲(以下、「先願明細書3」という。)には、次の記載(以下、順に「記載3a」及び「記載3b」という。)がある。

3a 「[請求項1] 芳香族ビニル化合物由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有するランダム共重合体。
[請求項2] 前記単量体単位(b)がβ-ファルネセン由来の単量体単位である、請求項1に記載の共重合体。
[請求項3] 前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1-99質量%である、請求項1又は2に記載の共重合体。
[請求項4] 前記芳香族ビニル化合物がスチレン、α-メチルスチレン及び4-メチルスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1?4のいずれかに記載の共重合体。
・・・(略)・・・
[請求項11] 請求項1?9のいずれかに記載の共重合体(A)、ゴム成分(B)及びカーボンブラック(C)を含有するゴム組成物。
・・・(略)・・・
[請求項16] 前記ゴム成分(B)100質量部に対し、前記共重合体(A)を0.1?100質量部、及び前記カーボンブラック(C)を0.1?150質量部含有する、請求項11に記載のゴム組成物。
・・・(略)・・・
[請求項19] 前記ゴム成分(B)が、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム及びイソプレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項11?18のいずれかに記載のゴム組成物。
[請求項20] 請求項11?19のいずれかに記載のゴム組成物を少なくとも一部に用いたタイヤ。」(請求項1ないし20)

3b 「本発明の共重合体は、少なくとも芳香族ビニル化合物とファルネセンとを共重合したものであればよく、その他の単量体と芳香族ビニル化合物とファルネセンとを共重合体したものであってもよい。
その他の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン、クロロプレン等の共役ジエン等が挙げられる。
共重合体中のその他の単量体の割合は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。」(段落[0017])

(2)先願明細書3に記載された発明
したがって、先願明細書3には、上記記載3a及び3bを整理すると、特に記載3aの下線部から、次の発明(以下、「先願発明3-1」、「先願発明3-2」という。)が記載されていると認める。

先願発明3-1
「スチレン又はα-メチルスチレン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有し、前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1?99質量%であるランダム共重合体。」

先願発明3-2
「スチレン又はα-メチルスチレン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有し、前記単量体単位(a)及び(b)の合計に対する単量体単位(a)の割合が1?99質量%であるランダム共重合体 0.1?100質量部、天然ゴム 100質量部及びカーボンブラック 0.1?150質量部含有するゴム組成物。」

(3)先願3の優先権主張について
先願3は、平成24年4月4日付け特願2012-85930を基礎とする優先権主張を伴うものである。そして、先願発明3-1及び先願発明3-2に関する上記記載事項3a及び3bは、上記出願明細書の対応する以下の箇所に記載された事項である。
記載3a:請求項1ないし20
記載3b:段落【0017】
したがって、先願発明3-1及び先願発明3-2について、特願2012-85930に基づく優先権の利益を享受するものであり、その優先日(平成24年4月4日)は本願の第2優先日(平成24年9月28日)よりも前である。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)先願発明1-1との対比・判断
本願発明1と先願発明1-1とを対比すると、次のことがいえる。

先願発明1-1における「ブタジエン由来の単量体単位(a)」は、本願発明1における「一般式(2)【化2】・・・(略)・・・(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)で示される共役ジエン化合物」及び「共役ジエン化合物(2)が1,3-ブタジエン」に相当する。
先願発明1-1における「ファルネセン由来の単量体単位(b)」は、本願発明1における「一般式(1)【化1】・・・(略)・・・(式中、R^(1)は、炭素数6または11の脂肪族炭化水素を表す。)で示される分枝共役ジエン化合物」及び「分枝共役ジエン化合物(1)がファルネセン」に相当する。

したがって、本願発明1と先願発明1-1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1)は、炭素数6または11の脂肪族炭化水素を表す。)
で示される分枝共役ジエン化合物と、一般式(2)
【化2】

(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)
で示される共役ジエン化合物と、
を共重合して得られる分枝共役ジエン共重合体であって、
分枝共役ジエン化合物(1)がファルネセンであり、共役ジエン化合物(2)が1,3-ブタジエンである分枝共役ジエン共重合体。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「一般式(3)【化3】・・・(略)・・・(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物」として「スチレン」を共重合するという構成を備えるのに対して、先願発明1-1はその様な構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明1は共重合比として「分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が1?99重量%、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?99重量%未満、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が0重量%超?99重量%未満」という構成を備えるのに対し、先願発明1-1は上記(3)を含めた各共重合比の構成を備えていない点。

上記相違点1及び2について検討すると、先願発明1-1の共重合体は「ブタジエン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有」するものであり、先願明細書1では「その他の単量体と炭素数12以下の共役ジエンとファルネセンとを共重合したものであってもよい」(段落[0017])として、その例示として「その他の単量体としては、例えば、スチレン」が挙げられている。
しかしながら、先願明細書1では具体的な実施の形態として、その他の単量体として「スチレン」を選択し含有させた共重合体について開示されていない。また、上記のとおり、その他の単量体を共重合することは先願明細書1に示唆されるものの、あくまでも任意の成分として例示されるにとどまるものであり、実施例として実際に製造されているものも、「分岐共役ジエン化合物(1)」と「共役ジエン化合物(2)」との二元共重合体のみである。そして、当該その他の単量体の中でどのような成分が選択され共重合体を構成するのか具体的な記載を見出すことはできない。
そうすると、共重合体としては、その他の単量体を含むか否かを含め、様々な態様が想定され(例えばその他の単量体を1つだけ選択するかそれ以上とするか、またスチレンを選択するかその他のものとするか等)、その全てについてまで明確な共重合体として記載されているとまではいえない。してみると、先願明細書1の記載全体を参酌しても、その他の単量体として特にスチレンを選択し、それを所定量含有させることで得られる本願発明1の特定の共重合体について、先願明細書1において先願発明1-1として開示されているとは解されず、本願発明1は先願発明1-1と実質同一であるということはできない。

また、当該「スチレン」を含有させることが周知慣用技術でもないことから、上記相違点1及び2が課題解決のための具体化手段における微差ということもできず、この点からも本願発明1は先願発明1と実質同一であるということはできない。

(2)先願発明2-1との対比・判断
本願発明1と先願発明2-1とを対比すると、次のことがいえる。

先願発明2-1における「ファルネセン由来の単量体単位(b)」は、本願発明1における「一般式(1)【化1】・・・(略)・・・(式中、R^(1)は、炭素数6または11の脂肪族炭化水素を表す。)で示される分枝共役ジエン化合物」及び「分枝共役ジエン化合物(1)がファルネセン」に相当する。

したがって、本願発明1と先願発明2-1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1)は、炭素数6または11の脂肪族炭化水素を表す。)
で示される分枝共役ジエン化合物、
を共重合して得られる分枝共役ジエン共重合体であって、
分枝共役ジエン化合物(1)がファルネセンである分枝共役ジエン共重合体。」

(相違点)
(相違点3)本願発明1は「一般式(2)【化2】・・・(略)・・・(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)で示される共役ジエン化合物」として「1,3-ブタジエン」を共重合するという構成を備えるのに対して、先願発明2-1はその様な構成を備えていない点。

(相違点4)本願発明1は「一般式(3)【化3】・・・(略)・・・(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物」として「スチレン」を共重合するという構成を備えるのに対して、先願発明2-1はその様な構成を備えていない点。

(相違点5)本願発明1は共重合比として「分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が1?99重量%、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?99重量%未満、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が0重量%超?99重量%未満」という構成を備えるのに対し、先願発明2-1は上記(2)及び(3)を含めた各共重合比の構成を備えていない点。

上記相違点3ないし5について検討すると、先願発明2-1の共重合体は「イソプレン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有」するものであり、先願明細書2では「その他の単量体とイソプレンとファルネセンとを共重合したものであってもよい」(段落[0015])として、その例示として「その他の単量体としては、例えば、ブタジエン、・・・(略)・・、スチレン」が挙げられている。
しかしながら、先願明細書2では具体的な実施の形態として、その他の単量体として「ブタジエン」及び「スチレン」を選択し含有させた共重合体について開示されていない。また、上記のとおり、その他の単量体を共重合することは先願明細書2に示唆されるものの、あくまでも任意の成分として例示されるにとどまるものであり、実施例として実際に製造されているものも、「分岐共役ジエン化合物(1)」とイソプレンとの二元共重合体のみである。そして、当該その他の単量体の中でどのような成分が選択され共重合体を構成するのか具体的な記載を見出すことはできない。
そうすると、上記1.(1)で述べたとおり、先願明細書2の記載全体を参酌しても、その他の単量体として特にブタジエン、スチレンを選択し、それを所定量含有させることで得られる本願発明1の特定の共重合体について、先願明細書2において先願発明2-1として開示されているとは解されず、また課題解決のための具体化手段における微差ということもできないことから、本願発明1は先願発明2-1と実質同一であるということはできない。

(3)先願発明3-1との対比・判断
本願発明1と先願発明3-1とを対比すると、次のことがいえる。

先願発明3-1における「ファルネセン由来の単量体単位(b)」は、本願発明1における「一般式(1)【化1】・・・(略)・・・(式中、R^(1)は、炭素数6または11の脂肪族炭化水素を表す。)で示される分枝共役ジエン化合物」及び「分枝共役ジエン化合物(1)がファルネセン」に相当する。
先願発明3-1における「スチレン又はα-メチルスチレン由来の単量体単位(a)」は、本願発明1における「一般式(3)【化3】・・・(略)・・・(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物」及び「ビニル化合物(3)がスチレン」に相当する。

したがって、本願発明1と先願発明3-1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1)は、炭素数6または11の脂肪族炭化水素を表す。)
で示される分枝共役ジエン化合物と、一般式(3)
【化3】

(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物とを共重合して得られる分枝共役ジエン共重合体であって、
分枝共役ジエン化合物(1)がファルネセンであり、ビニル化合物(3)がスチレンである分枝共役ジエン共重合体。」

(相違点)
(相違点6)本願発明1は「一般式(2)【化2】・・・(略)・・・(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)で示される共役ジエン化合物」として「1,3-ブタジエン」を共重合するという構成を備えるのに対して、先願発明3-1はその様な構成を備えていない点。

(相違点7)本願発明1は共重合比として「分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が1?99重量%、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?99重量%未満、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が0重量%超?99重量%未満」という構成を備えるのに対し、先願発明3-1は上記(2)を含めた各共重合比の構成を備えていない点。

上記相違点6及び7について検討すると、先願発明3-1の共重合体は「スチレン又はα-メチルスチレン由来の単量体単位(a)及びファルネセン由来の単量体単位(b)を含有」するものであり、先願明細書3では「その他の単量体と芳香族ビニル化合物とファルネセンとを共重合体したものであってもよい」(段落[0017])として、その例示として「その他の単量体としては、例えば、ブタジエン」が挙げられている。
しかしながら、先願明細書3では具体的な実施の形態として、その他の単量体として「ブタジエン」を選択し含有させた共重合体について開示されていない。また、上記のとおり、その他の単量体を共重合することは先願明細書3に示唆されるものの、あくまでも任意の成分として例示されるにとどまるものであり、実施例として実際に製造されているものも、「分岐共役ジエン化合物(1)」と「ビニル化合物(3)」との二元共重合体のみである。そして、当該その他の単量体の中でどのような成分が選択され共重合体を構成するのか具体的な記載を見出すことはできない。
そうすると、上記1.(1)で述べたとおり、先願明細書3の記載全体を参酌しても、その他の単量体として特にブタジエンを選択し、それを所定量含有させることで得られる本願発明1の特定の共重合体について、先願明細書3において先願発明3-1として開示されているとは解されず、また課題解決のための具体化手段における微差ということもできないことから、本願発明1は先願発明3-1と実質同一であるということはできない。

2.本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5も、本願発明1の「共役ジエン化合物(2)が1,3-ブタジエンであり、ビニル化合物(3)がスチレン」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、先願発明1-1ないし3-1と実質同一であるということはできない。

3.本願発明6について
(1)先願発明1-2との対比・判断
本願発明6と先願発明1-2とを対比すると、次のことがいえる。

先願発明1-2における「ブタジエン由来の単量体単位(a)」は、本願発明6における「一般式(2)【化5】・・・(略)・・・(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)で示される共役ジエン化合物」に相当する。
先願発明1-2における「ファルネセン由来の単量体単位(b)」は、本願発明6における「一般式(1)【化4】・・・(略)・・・(式中、R^(1)は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)で示される分枝共役ジエン化合物」に相当する。
先願発明1-2における「天然ゴム」及び「ゴム組成物」は、それぞれ本願発明6における「天然ゴム」及び「ゴム組成物」に相当する。

したがって、本願発明6と先願発明1-2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「一般式(1)
【化4】

(式中、R^(1)は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)
で示される分枝共役ジエン化合物と、一般式(2)
【化5】

(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)
で示される共役ジエン化合物と、
を共重合して得られる分枝共役ジエン共重合体と天然ゴムとからなるゴム成分を含んでなるゴム組成物。」

(相違点)
(相違点8)本願発明6は「一般式(3)【化6】・・・(略)・・・(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物」を共重合するという構成を備えるのに対して、先願発明1-2はその様な構成を備えていない点。

(相違点9)本願発明6は共重合比として「分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が1?99重量%、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?99重量%未満、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が0重量%超?99重量%未満」という構成を備えるのに対し、先願発明1-2は上記(3)を含めた各共重合比の構成を備えていない点。

(相違点10)本願発明6は分枝共役ジエン共重合体の配合量として「ゴム成分における分枝共役ジエン共重合体の配合量が70重量%以上」という構成を備えるのに対し、先願発明1-2は「共重合体 0.1?100質量部、天然ゴム 100質量部」含有するという構成を備える点。

上記相違点8及び9については、上記1.(1)の相違点1及び2に係る検討のとおり、先願明細書1に開示されているとはいえず、また課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。
上記相違点10については、先願発明1-2では、共重合体及び天然ゴムからなるゴム成分における共重合体の最大含有量は、100/(100+100)=50重量%であることから、70重量%以上の含有量を共重合体は有し得ないものである。
よって、本願発明6は先願発明1-2と実質同一であるということはできない。

(2)先願発明2-2との対比・判断
本願発明6と先願発明2-2とを対比すると、次のことがいえる。

先願発明2-2における「ファルネセン由来の単量体単位(b)」は、本願発明6における「一般式(1)【化4】・・・(略)・・・(式中、R^(1)は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)で示される分枝共役ジエン化合物」に相当する。
先願発明2-2における「天然ゴム」及び「ゴム組成物」は、それぞれ本願発明6における「天然ゴム」及び「ゴム組成物」に相当する。

したがって、本願発明6と先願発明2-2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「一般式(1)
【化4】

(式中、R^(1)は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)
で示される分枝共役ジエン化合物と、
を共重合して得られる分枝共役ジエン共重合体と天然ゴムとからなるゴム成分を含んでなるゴム組成物。」

(相違点)
(相違点11)本願発明6は「一般式(2)【化5】・・・(略)・・・(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)で示される共役ジエン化合物」を共重合するという構成を備えるのに対して、先願発明2-2はその様な構成を備えていない点。

(相違点12)本願発明6は「一般式(3)【化6】・・・(略)・・・(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物」を共重合するという構成を備えるのに対して、先願発明2-2はその様な構成を備えていない点。

(相違点13)本願発明6は共重合比として「分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が1?99重量%、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?99重量%未満、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が0重量%超?99重量%未満」という構成を備えるのに対し、先願発明2-2は上記(2)及び(3)を含めた各共重合比の構成を備えていない点。

(相違点14)本願発明6は分枝共役ジエン共重合体の配合量として「ゴム成分における分枝共役ジエン共重合体の配合量が70重量%以上」という構成を備えるのに対し、先願発明2-2は「共重合体 0.1?100質量部、天然ゴム 100質量部」含有するという構成を備える点。

上記相違点11ないし13については、上記1.(2)の相違点3ないし5に係る検討のとおり、先願明細書2に開示されているとはいえず、また課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。
上記相違点14については、上記3.(1)の相違点10に係る検討のとおり、先願発明2-2では、共重合体及び天然ゴムからなるゴム成分における共重合体の最大含有量は50重量%であることから、70重量%以上の含有量を共重合体は有し得ないものである。
よって、本願発明6は先願発明2-2と実質同一であるということはできない。

(3)先願発明3-2との対比・判断
本願発明6と先願発明3-2とを対比すると、次のことがいえる。

先願発明3-2における「スチレン又はα-メチルスチレン由来の単量体単位(a)」は、本願発明6における「一般式(3)【化6】・・・(略)・・・(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物」に相当する。
先願発明3-2における「ファルネセン由来の単量体単位(b)」は、本願発明6における「一般式(1)【化4】・・・(略)・・・(式中、R^(1)は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)で示される分枝共役ジエン化合物」に相当する。
先願発明3-2における「天然ゴム」及び「ゴム組成物」は、それぞれ本願発明6における「天然ゴム」及び「ゴム組成物」に相当する。

したがって、本願発明6と先願発明3-2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「一般式(1)
【化4】

(式中、R1は、炭素数6?11の脂肪族炭化水素を表す。)
で示される分枝共役ジエン化合物と、一般式(3)
【化6】

(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物とを共重合して得られる分枝共役ジエン共重合体と天然ゴムとからなるゴム成分を含んでなるゴム組成物。」

(相違点)
(相違点15)本願発明6は「一般式(2) 【化5】・・・(略)・・・(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)で示される共役ジエン化合物」を共重合するという構成を備えるのに対して、先願発明3-2はその様な構成を備えていない点。

(相違点16)本願発明6は共重合比として「分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)が1?99重量%、共役ジエン化合物(2)の共重合比(m)が0重量%超?99重量%未満、ビニル化合物(3)の共重合比(n)が0重量%超?99重量%未満」という構成を備えるのに対し、先願発明3-2は上記(2)を含めた各共重合比の構成を備えていない点。

(相違点17)本願発明6は分枝共役ジエン共重合体の配合量として「ゴム成分における分枝共役ジエン共重合体の配合量が70重量%以上」という構成を備えるのに対し、先願発明3-2は「共重合体 0.1?100質量部、天然ゴム 100質量部」含有するという構成を備える点。

上記相違点15及び16については、上記1.(3)の相違点6及び7に係る検討のとおり、先願明細書3に開示されているとはいえず、また課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。
上記相違点17については、上記3.(1)の相違点10に係る検討のとおり、先願発明3-2では、共重合体及び天然ゴムからなるゴム成分における共重合体の最大含有量は50重量%であることから、70重量%以上の含有量を共重合体は有し得ないものである。
よって、本願発明6は先願発明3-2と実質同一であるということはできない。

4.本願発明7ないし12について
本願発明7ないし12も、本願発明6の「一般式(2)【化5】・・・(略)・・・(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)で示される共役ジエン化合物と、一般式(3)【化6】・・・(略)・・・(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、先願発明1-2ないし3-2と実質同一であるということはできない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし6は「共役ジエン化合物(2)が1,3-ブタジエンであり、ビニル化合物(3)がスチレン」という事項を有するものとなっている。また、本願発明6ないし12は「一般式(2)【化5】・・・(略)・・・(式中、R^(2)およびR^(3)は、同一もしくは異なって、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、またはハロゲン原子を表す。)で示される共役ジエン化合物と、一般式(3)【化6】・・・(略)・・・(式中、R^(4)は、水素原子、炭素数1?3の脂肪族炭化水素基、炭素数3?8の脂環式炭化水素基、または炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。)で示される化合物またはα-メチルスチレンであるビニル化合物」という事項を有するものとなっている。
よって、第6における検討のとおり、本願発明1ないし12は、拒絶査定において引用された先願1ないし3の国際出願日における国際出願の明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であるとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-19 
出願番号 特願2013-556326(P2013-556326)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (C08F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小森 勇  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 守安 智
山本 英一
発明の名称 分枝共役ジエン共重合体、ゴム組成物および空気入りタイヤ  
代理人 特許業務法人朝日奈特許事務所  

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