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審決分類 審判 査定不服 4項(134条6項)独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04B
管理番号 1329463
審判番号 不服2016-1459  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-01 
確定日 2017-06-15 
事件の表示 特願2010-236715「空間の調湿構造」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月10日出願公開、特開2012- 87577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成22年10月21日 出願
平成26年 5月30日 拒絶理由通知(同年6月3日発送)
平成26年 8月 4日 意見書・手続補正書
平成27年 2月27日 拒絶理由通知(最後)(同年3月10日発送)
平成27年 5月11日 意見書、手続補正書
平成27年10月27日 平成27年5月11日付け手続補正の補正却下の決定、拒絶査定(同年11月4日送達)
平成28年 2月 1日 審判請求書、手続補正書
平成28年12月 8日 拒絶理由通知(最後)(同年12月13日発送)
平成29年 2月 9日 意見書、手続補正書

第2 補正の却下の決定
1 結論
平成29年2月9日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1)補正の内容・目的
平成29年2月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成28年2月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正することを含むものである(下線は本件補正の補正箇所を示す。)。
(補正前)
「外壁部ないし屋根部に断熱開口部が形成された建物内の空間の湿度を調節する調湿構造であって、
建物内の空間は複数の空間に区画されており、
上記複数の空間のうち、上記断熱開口部が面しかつ該断熱開口部の断熱構造に起因して他の部分よりも高湿化し易い収納空間の壁部又は天井部の少なくとも一方に、該断熱開口部の断熱構造に起因する収納空間内への湿気の集中を阻止するように調湿する調湿建材が施工されていることを特徴とする空間の調湿構造。」
(補正後)
「外壁部ないし屋根部に断熱開口部が形成された建物内の空間の湿度を調節する調湿構造であって、
建物内の空間は、収納空間及び該収納空間に連通しかつ屋外に隣接する屋外隣接空間を含む複数の空間に区画されており、
上記複数の空間のうち、上記断熱開口部が面しかつ該断熱開口部の断熱構造に起因して他の部分よりも高湿化し易い上記収納空間及び屋外隣接空間の双方の壁部又は天井部の少なくとも一方に、該断熱開口部の断熱構造に起因して建物内の空間の湿気が上記収納空間内に集中し、該収納空間が他の部分よりも高湿化するのを阻止するように該収納空間を調湿するための調湿建材が施工されていることを特徴とする空間の調湿構造。」

上記補正事項は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「建物内の複数の空間」について、「収納空間に連通しかつ屋外に隣接する屋外隣接空間を含む」ことを限定し、「調湿建材」が「屋外隣接空間」の「壁部又は天井部の少なくとも一方」にも施工されることを特定するとともに、「調湿建材」の作用について、「断熱開口部の断熱構造に起因して建物内の空間の湿気が収納空間内に集中し、該収納空間が他の部分よりも高湿化するのを阻止する」ことを特定するものであり、かつ補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、少なくとも特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであり、また、新規事項を追加するものではないから、同条第3項の規定を満たしている。

(2)独立特許要件についての検討
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

ア 当審拒絶理由通知の概要
当審にて平成28年12月8日付けで通知した最後の拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は以下のとおりである。
(ア)拒絶理由1
本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において頒布された下記刊行物1に記載された発明及び下記刊行物2ないし5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(イ)拒絶理由2
本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において頒布された下記刊行物2に記載された発明及び下記刊行物1、5、6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<刊行物一覧>
刊行物1:特開2002-129664号公報
刊行物2:特開2006-348574号公報
刊行物3:特開2010-48044号公報
刊行物4:特開平9-85717号公報
刊行物5:特開平4-202936号公報
刊行物6:特開平10-185271号公報

イ 刊行物の記載
(ア)当審拒絶理由に引用された刊行物1(特開2002-129664号公報)には、以下の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。

a 「【請求項1】 建物内の壁又は天井が調湿建材で形成されており、その調湿建材の室内側に透湿性の高い木目調の仕上げが施されていることを特徴とする湿度調節建物。
【請求項2】 調湿建材を備えた建物内の部位に給気装置が設けられ、その部位から他の部位を経由して室内空気が排出されるようになされていることを特徴とする湿度調節建物。
【請求項3】 調湿建材を備えた建物内の居室に給気装置が設けられ、前記建物内のトイレ又は台所又は風呂に排気装置が設けられていることを特徴とする湿度調節建物。
【請求項4】 扉の少なくとも一部が調湿建材で形成されている収納が室内に備えられていることを特徴とする湿度調節建物。」

b 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建物内の湿度を調節する湿度調節建物に関する。」

c 「【0004】また、建物内の表面仕上げは、それぞれの部屋の用途にあったものが好ましいが、特に木目調の仕上げを施される和室の天井等が調湿建材で形成されている場合、それに適した表面仕上げの手段がなく、天井等に調湿建材を備えた和室の意匠がちぐはぐなものになっていた。例えば、調湿機能があるとされている無垢の木板を天井材として使用しても、吸放湿速度が遅いため急激な湿度の変化には対応できなかった。木目調の仕上げを施された洋室についても同様であった。さらに、調湿建材が限界まで吸湿した場合、それ以上の吸湿を行うことができないので、湿度調節ができなかった。さらに、室内でも特に結露を生じやすい家具の裏や収納の中の除湿を簡単に行う有効な手段がなかった。
【0005】本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で建物内の必要な部位の湿度調節を行うことのできる、意匠的に優れた湿度調節建物を提供することを目的としている。……
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため請求項1記載の発明は、建物内の壁又は天井が調湿建材で形成されており、その調湿建材の室内側に透湿性の高い木目調の仕上げが施されていることを特徴とする湿度調節建物である。
……
【0008】また、請求項2記載の発明は、調湿建材を備えた建物内の部位に給気装置が設けられ、その部位から他の部位を経由して室内空気が排出されるようになされていることを特徴とする湿度調節建物である。本発明における建物内の部位とは、寝室や居間等の居室,浴室,台所,便所等の部屋や廊下,玄関ホール,屋内階段等の通路等を示す。
【0009】また、請求項3記載の発明は、調湿建材を備えた建物内の居室に給気装置が設けられ、前記建物内のトイレ又は台所又は風呂に排気装置が設けられていることを特徴とする湿度調節建物である。
【0010】また、請求項4記載の発明は、扉の少なくとも一部が調湿建材で形成されている収納が室内に備えられていることを特徴とする湿度調節建物である。」

d 「【0018】
【作用】請求項1記載の発明の湿度調節建物においては、建物内の壁又は天井が調湿建材で形成されており、その調湿建材の室内側に透湿性の高い木目調の仕上げが施されている。従って、意匠的に整合性のとれた内装仕上げを施した和室を有する、調湿性能に優れた建物とすることができる。
【0019】請求項2記載の発明の湿度調節建物においては、調湿建材を備えた建物内の部位に給気装置が設けられ、その部位から他の部位を経由して室内空気が排出されるようになされている。従って、外気の湿度が高いときは除湿されて、外気の湿度が低いときは加湿されて、適度な湿度に調節された空気を他の部位に供給することができる。
【0020】請求項3記載の発明の湿度調節建物においては、調湿建材を備えた建物内の居室に給気装置が設けられ、建物内のトイレ又は台所又は風呂に排気装置が設けられている。従って、湿度が高かったり、汚れたりした空気を居室に引き込むことなく、適度な湿度に調節された空気を居室及び他の部位に供給することができる。
【0021】請求項4記載の発明の湿度調節建物においては、扉の少なくとも一部が調湿建材で形成されている収納が室内に備えられている。従って、室内より低温になり、結露し易い収納内の湿気を調湿建材で形成された扉を通して室内に排出することができる。」

e 「【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。図1は本発明の湿度調節建物の第1実施例を示す建物の一階部分の平面図、図2は図1の和室を模式的に示す一部断面透視図、図3は図2の和室の変形例を示す一部断面透視図、図4は図1の和室の押入れの縦断面図である。
【0029】図1において、建物(湿度調節建物)Sの一階部分は、部位として、和室(居室)11,台所12,浴室13,洗面脱衣室14,便所15及び廊下17,玄関ホール18,階段19から形成されている。また、和室11には給気装置21が、台所12,浴室13,便所15にはそれぞれ排気装置22が設けられている。また、和室11には引き戸112を備えた押入れ111が設けられている。給気装置21で和室11に取り入れられた外気は矢印に示すように、廊下17を経由して台所12,浴室13,便所15の排気装置22から排気される。また、一部は階段19を経由して二階部分から排気される。
【0030】図2に示すように、和室11は床51の四周に壁52が立設されており、壁52の上端に天井53が設けられている。天井53は調湿材である珪藻土を含む石膏ボードの下面に、木目模様の透湿性化粧材(木目調の仕上げ)53bが積層されて形成されている。給気装置21は、壁52の上部に設けられている。ここで、透湿性化粧材53bは、和紙の表面に木目模様を印刷したものであり、非常に高い透湿性を有するシートであり、石膏ボードの下面には水溶性の糊で予め接着されている。
【0031】本発明の湿度調節建物は以上のように形成されているので、木目調の仕上げを施された和室を簡単に形成することができる。また、給気装置21から取り入れられた外気は、調湿建材から形成された天井板53に接しながら、和室11内部に導かれながら調湿される。つまり、外気の湿度が低い時には加湿され、外気の湿度が高いときには除湿される。また、意匠的に優れた天井仕上げを施した和室11を有する、調湿性能に優れた建物Sとすることができる。調湿された空気は図1の矢印のように流れ、台所12,浴室13,便所15の排気装置22から排気される。そのため、和室11,洗面脱衣室14,リビング16,廊下17,階段19には調湿された空気が供給されるので、建物Sの室内で快適に生活することができる。また、台所12,浴室13,便所15には排気装置22が設けられているので、それらの部位から湿気が他の部位に逆流することがない。」

f 「【0034】図4に示すように、押入れ(収納)111は、床51と壁52と天井53で区画された収納空間に調湿建材で形成された引き戸(扉)112が設けられて形成されている。また、壁52の中間部には、すのこ状の棚板113が取り付けられている。押入れ111は以上のように形成されているので、収納空間に湿気を含んだ布団を収納したり、冬季、壁52の温度が室内温度より低下したりすると、収納空間の湿度は和室11の室内の湿度より高くなる。その際、破線の矢印で示したように、押入れ111の収納空間の湿気は引き戸112を通して和室11の室内空気に放出される。また、このようにして湿度の高くなった室内空気の湿気は調湿建材3Aの下面から吸湿されるので、和室11の室内の湿度の上昇は抑えられる。」

g 上記eの記載を踏まえて図1及び図2をみると、和室11は屋外に隣接していること、外壁部に窓が形成されており、押入れ111は当該窓に面して設けられていることが看取できる。

h 上記aないしgによれば、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「建物内の壁又は天井が調湿建材で形成されており、その調湿建材の室内側に透湿性の高い木目調の仕上げが施されている湿度調節建物であって、
一階部分は、和室11、台所12、浴室13、洗面脱衣室14、便所15、リビング16及び廊下17、玄関ホール18、階段19から形成され、
屋外に隣接する和室11は、外壁部に形成された窓に面して、調湿建材で形成された引き戸112を備えた押入れ111が設けられ、その天井53は調湿材である珪藻土を含む石膏ボードの下面に木目模様の透湿性化粧材53bが積層された調湿建材で形成され、
和室11には給気装置21が、台所12、浴室13、便所15にはそれぞれ排気装置22が設けられている湿度調節建物。」(以下「刊行物1発明」という。)

(イ)当審拒絶理由に引用された刊行物2(特開2006-348574号公報)には、以下の記載がある。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が化粧された化粧付き吸放湿材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本の住宅は、高気密・高断熱構造が普及し、そのため新建材が多用されるようになった。
【0003】
しかしこれらの建築構造や新建材では、調湿性・防露性などが不十分なため、冬季は、暖房による温度差に起因した結露が居室間や外壁に接する押入れ収納部・窓サッシ部などに発生しやすく、壁面のシミ・カビ汚染による美観劣化や、さらに換気不足・多湿環境下ではカビ・ダニの発生増殖による喘息、アレルギー疾病など、健康被害で悩む人も多い。
【0004】
また逆に、この高湿度の状態を防ぐために、空調機器や除湿機などの過剰運転に伴う、過乾燥による咽喉部の炎症・喘息など健康被害で悩む人も多い。さらに維持ランニング等(電気エネルギー消費とCO2発生・騒音・部品消耗・故障等)の面でも好ましくない。
【0005】
そこでこのような問題を解決するために、珪藻土などの調湿材を配合した壁材を使用することで、調湿力を高めた調湿建材が使用されるようになった。」

b 「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、吸放湿性能を低下させることなく表面を手垢汚染付着防止・撥水保護化粧処理した化粧付き吸放湿材を提供することを課題とし、また、基材表面に任意意匠・テクスチャーを形成し、吸放湿性能を低下させることなく表面を手垢汚染付着防止・撥水保護化粧処理した化粧付き吸放湿材を提供することを課題とし、さらに、VOC等の有害化学物質ガスの分解・自己浄化機能を付加し、吸放湿性能を低下させることなく表面を手垢汚染付着防止・撥水保護化粧処理した化粧付き吸放湿材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、吸放湿性を有する基材1に、蜜蝋ワックス2の皮膜を形成して、化粧付き吸放湿材10を構成したことを特徴としており、このような構成とすることで、吸放湿性能を有する基材1表面に撥水性・吸放湿性に優れた蜜蝋ワックス2よりなる撥水・通気皮膜を形成できるので、基材1の吸放湿性能を低下させることなく、表面保護・手垢付着汚染バリアができ、施工者は建材のハンドリングがしやすく、生活者は手垢付着汚染がなく、清掃・手入れがしやすい吸放湿材を提供できる。」

c 「【0063】
本発明の化粧付き吸放湿材は、調湿建材として優れた特性を有するものであり、例えば、住宅内装建材、掘りごたつ、キッチン、下駄箱、洗面化粧台、床下収納庫、押入れ、脱衣ボックス、トイレの収納商品の内装の分野に広く適用可能であり、さらには建材以外に、自動車・電車などの車両空間の内装の分野にも広く適用可能である。」

d 上記cで摘記した「押入れ」は住宅に設けられることは明らかであるから、上記aないしcによれば、刊行物2には、次の発明が記載されているものと認められる。
「吸放湿性を有する基材1に、蜜蝋ワックス2の皮膜を形成した化粧付き吸放湿材10を内装に適用した押入れを備えた住宅。」(以下「刊行物2発明」という。)

(ウ)当審拒絶理由に引用された刊行物3(特開2010-48044号公報)には、以下の記載がある。

「【背景技術】
【0002】
近時の住居においては、高断熱化、高気密化の対策が進んでいるが、これに起因して結露やカビ、ダニなどの発生が問題となり、住居内の湿度調節が次なる課題となっている。そこで、住居の内壁や間仕切り、収納部等の内装建材などに調湿パネルを配置し、湿度調節を図ったものがみられる。」

(エ)当審拒絶理由に引用された刊行物4(特開平9-85717号公報)には、以下の記載がある。

a 「【0002】
【従来の技術】近年の住宅においては、サッシ、断熱材等の普及により家屋内の気密性が高くなっているため、外気と接する壁(特に北側の壁)の室内側面や内部、窓等の開閉部表層、押入れ等で結露が発生しやすくなっている。この結露は、人の活動等によって高温多湿となった空気が室内の低温部に接触した際、その温度が露点以下に下がることにより凝縮して水滴を生じる現象である。
……
【0005】したがって、結露を抑制するには、室内の相対湿度を生活温度範囲内で一定に調節することが最も効果的な方法であると考えられる。このため従来、吸放湿性を有する材料をバインダ等により結着し成形したものを屋内の内装材等として用いることが提案されている。」

b 「【0060】
【実施例】以下、本発明の実施例を示しより具体的に説明する。なお、もとより本発明は
これらに限定されるものではない。
【0061】実施例1
(吸放湿材の調製)杉材をボールミルにより粉砕して、平均粒径約100μm(16メッシュ)の木粉を得た。ついで、耐圧密閉反応層中で、この木粉と無水マレイン酸とを重量比1:4となるように混合し、95℃で4時間攪拌して反応させ、反応終了後、未反応の無水マレイン酸をアセトンで6時間抽出除去した。処理後、無水マレイン酸のエステル化率を調べたところ27%であった。また、得られた吸放湿材の吸湿容量(25℃、90%RHにおける平衡含水率と25℃、50%RHにおける平衡含水率との差)を調べたところ20%であった。
【0062】(吸放湿性組成物の調製)ポリ塩化ビニル100重量部に対し、上記処理を施した木粉100重量部、可塑剤100重量部および衝撃性改良剤10重量部を添加し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。この後、この混合物を単軸押出機で溶融混練して、吸放湿性組成物を得た。
【0063】(シートの作製)上記吸放湿性組成物を単軸押出機により溶融混練しTダイにより押出して、厚さ1mmのシート状に成形した。
……
【0074】実施例10
上記実施例1と全く同様にして、吸放湿材の調製および吸放湿性組成物の調製を行い、得られた吸放湿性組成物をカレンダー加工により厚さ0.5mmのシート状に押出した。ついで、上記シートを1800mm×1800mmのサイズに調製し、これを、室内の窓部を覆うようにして、該窓部との間に間隔約100mmをおいてカーテン様に配設した。
……
【0078】実施例12
上記実施例10と全く同様にしてシートを作製し、このシートを、押入れ内の壁面全体を覆うようにして、粘着剤により装着した。」

(オ)当審拒絶理由に引用された刊行物5(特開平4-202936号公報)には、以下の記載がある。

a 「(1)既存住宅において、屋根、外壁、床、基礎に外断熱層を設けると共に、外壁に乾式外壁材を施工し、断熱が施された新規小屋裏空間に熱交換器を設け、該交換器に床下空間に直結した開口を有するメインダクト、居住空間の天井に排気口を有するパイプ、外気に吸、排気口を有するパイプを各々直結し、また床を新規床暖房構造に改修し、窓を2重サッシとすると共に、床下換気口を改修した床下換気口としたことを特徴とする改修した快適住宅。」(特許請求の範囲)

b 「新規窓部19は既存サツシを除去して2重サツシ、またはペアガラスのサツシとしたものであり、断熱性の強化を図るものである。」(2頁右下欄1ないし4行)

(カ)当審拒絶理由に引用された刊行物6(特開平10-185271号公報)には、以下の記載がある。

a 「【0006】
【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳述する。図1及び図2は集合住宅の一例として鉄筋コンクリート造のマンションの一室を示し、外廊下11側の柱12とバルコニー13側の柱14との間には、コンクリート壁15を打設して隣家との仕切りが構築されている。また、柱12,12間並びに柱14,14間に夫々梁16,17が設けられており、コンクリートスラブ18にて上下の階層が仕切られている。外廊下11側の玄関19にはスチール製の扉20が設けられ、バルコニー13側にはアルミサッシのガラス戸21や窓22が設けられているため、コンクリートとアルミサッシで囲まれたマンションの室内は、気密性が極めて高くなっている。
【0007】一般的には、バルコニー13側に居間23や食堂24を配置し、玄関19から居間23または食堂24までを廊下25で接続してあることが多い。廊下25の左右には洋室26,27や和室28等の居室を配置するとともに、便所29、洗面所30、浴室31等のサニタリ設備を配置し、食堂24に隣接して台所32が設けられている。各居室に付随して収納庫が設けられており、洋室26,27にはクロゼット33,34を設け、廊下25にもクロゼット35を配置する。また、和室28には押入れ36を設ける。」

b 上記aの記載を踏まえて図1をみると、洋室27は屋外に隣接していること、外壁部に窓が形成されており、クロゼット34は当該窓に面して設けられていることが看取できる。

ウ 拒絶理由1について
(ア)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

a 刊行物1発明の「建物内の壁又は天井が調湿建材で形成されて」いる「湿度調節建物」は、本願補正発明の「建物内の空間の湿度を調節する」「調湿構造」に相当する。

b 刊行物1発明の「押入れ111」及び「屋外に隣接する和室11」は、本願補正発明の「収納空間」及び「屋外に隣接する屋外隣接空間」に相当し、刊行物1発明の「引き戸112を備えた押入れ111が設けられ」ている「屋外に隣接する和室11」は、刊行物1発明の「該収納空間に連通しかつ屋外に隣接する屋外隣接空間」に相当する。
そして、刊行物1発明の「湿度調節建物」の「一階部分は」、「押入れ111が設けられ」た「和室11」、「台所12、浴室13、洗面脱衣室14、便所15、リビング16及び廊下17、玄関ホール18、階段19から形成され」ていることは、本願補正発明の「建物内の空間は、収納空間及び該収納空間に連通しかつ屋外に隣接する屋外隣接空間を含む複数の空間に区画されて」いることに相当する。

c 刊行物1発明の「外壁部に」「窓」が「形成された」ことと本願補正発明の「外壁部ないし屋根部に断熱開口部が形成された」こととは、「外壁部に開口部が形成された」点で共通する。

d 刊行物1発明の「押入れ111」に「調湿建材で形成された引き戸112を備えた」ことと、本願補正発明の「収納空間」の「壁部又は天井部の少なくとも一方に」「調湿建材が施工されている」こととは、「収納空間に調湿建材が施工されている」点で共通する。また、刊行物1には、「押入れ111の収納空間の湿気は引き戸112を通して和室11の室内空気に放出される。」(上記イ(ア)fを参照。)と記載されており、刊行物1発明の「調湿建材で形成された引き戸112」は、「押入れ111」を調湿するためのものであることは明らかである。

e 刊行物1発明の「和室11」の「天井53は調湿材である珪藻土を含む石膏ボードの下面に木目模様の透湿性化粧材53bが積層された調湿建材で形成され」ていることは、本願補正発明の「屋外隣接空間」の「天井部」に「調湿建材が施工されている」ことに相当する。

f 以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「外壁部に開口部が形成された建物内の空間の湿度を調節する調湿構造であって、
建物内の空間は、収納空間及び該収納空間に連通しかつ屋外に隣接する屋外隣接空間を含む複数の空間に区画されており、
上記複数の空間のうち、上記開口部が面する上記収納空間、及び屋外隣接空間の天井部に該収納空間を調湿するための調湿建材が施工されている空間の調湿構造。」

g 他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
開口部に関し、本願補正発明の開口部は断熱開口部であるのに対し、刊行物1発明の開口部は断熱開口部であるか否か特定されていない点。

<相違点2>
収納空間に関し、本願補正発明の収納空間は断熱開口部の断熱構造に起因して他の部分よりも高湿化し易いのに対し、刊行物1発明の押入れ111は、そのような特定がされていない点。

<相違点3>
収納空間における調湿建材の施工箇所に関し、本願補正発明では、収納空間の壁部又は天井部の少なくとも一方に調湿建材が施工されているに対し、刊行物1発明では、押入れ111の引き戸112が調湿建材で形成されている点。

<相違点4>
調湿建材の作用に関し、本願補正発明では、調湿建材は、断熱開口部の断熱構造に起因して建物内の空間の湿気が収納空間内に集中し、収納空間が他の部分よりも高湿化するのを阻止するように収納空間を調湿するためのものであるのに対し、刊行物1発明では、調湿建材で形成された引き戸112は押入れ111を調湿するためのものではあるが、断熱開口部の断熱構造に起因して湿気が集中し、押入れ111が他の部分よりも高湿化するのを阻止するためのものであるかは特定されていない点。

(イ)判断
a 相違点1ないし4について
上記相違点1ないし4は相互に技術的に関連するのでまとめて検討する。
(a)建物の断熱性を高めるために、窓を2重サッシやペアガラスのサッシ(本願補正発明の「断熱開口部」に相当。)とすることは、刊行物5に記載のように周知である(上記イ(オ)を参照。)。
そして、刊行物1発明において、窓の断熱性を如何にするかは当業者が適宜決定し得る設計的事項というべきところ、窓に上記周知の2重サッシやペアガラスのサッシを採用し断熱開口部とすることは当業者が適宜なし得たことである。
(b)刊行物1には、「押入れ111は以上のように形成されているので、収納空間に湿気を含んだ布団を収納したり、冬季、壁52の温度が室内温度より低下したりすると、収納空間の湿度は和室11の室内の湿度より高くなる。」(上記イ(ア)fを参照。)と記載されており、刊行物1発明において押入れ111は和室11よりも高湿化し易いものと認められるところ、窓を断熱開口部とした場合においても押入れ111は和室11よりも高湿化し易いことは、技術常識に照らし明らかである。
(c)結露を防止するために、押入等の収納部(本願補正発明の「収納空間」に相当。)の内装に調湿建材を施工することは、刊行物2ないし4に記載のように周知である(上記イ(イ)ないし(エ)を参照。)。
そして、収納空間にどの程度の調湿性を付与するかは、建物の断熱性能や建物の使用態様等に応じて当業者が適宜設定し得る設計的事項であるから、刊行物1発明において、調湿建材で形成された引き戸112に加えて、押入れ111の壁部や天井部に調湿建材を施工することは、上記周知技術に照らし当業者が容易になし得たことである。
(d)上記(b)のとおり、刊行物1発明において押入れ111は和室11よりも高湿化し易いものと認められるから、刊行物1発明において、窓に周知の2重サッシやペアガラスのサッシを採用し断熱開口部とし、押入れ111の壁部や天井部に調湿建材を施工した場合、押入れ111の壁部や天井部に施工した調湿建材は、断熱開口部の断熱構造に起因して建物内の空間の湿気が押入れ111内に集中し、押入れ111が和室11よりも高湿化するのを阻止するよう作用することは、技術常識に照らし明らかである。
(e)してみると、刊行物1発明に刊行物2ないし5に記載の周知技術を適用して、上記相違点1ないし4に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

b 本願補正発明の効果について
本願補正発明によってもたらされる効果を全体としてみても、刊行物1発明及び刊行物2ないし5に記載の周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

c 請求人の主張について
平成29年2月9日付けの意見書において請求人は、刊行物1発明には、単に調湿建材を施工することが示されているだけであり、本願補正発明のように、この調湿建材の施工箇所を断熱開口部と関連付けて、断熱開口部が面する収納空間及びそれとは異なり、屋外に隣接して外気温度との温度差が大きい屋外隣接空間に特定し、これらの空間に、断熱開口部の断熱構造に起因して収納空間内へ湿気が集中して収納空間が高湿化するのを阻止するように収納空間を調湿するための調湿建材を施工することについては全く開示や示唆がない旨、及び刊行物2ないし4には、結露が発生し易い押入れや収納部に調湿建材を施工することが示されているだけであり、建物の開口部を断熱開口部にすること、その断熱開口部が形成された建物内の空間の湿度を調節することは示されていない旨主張する。
しかし、上記aのとおり、刊行物1発明に周知の技術を適用して成る湿度調節建物は、その構造において本願補正発明と異なるところはなく、押入れ111の壁部や天井部に施工した調湿建材は、本願補正発明と同様に、断熱開口部の断熱構造に起因して建物内の空間の湿気が押入れ111内に集中し、押入れ111が和室11よりも高湿化するのを阻止するよう作用することも技術常識に照らし明らかであるから、上記請求人の主張は採用できない。

(ウ)小括
以上のとおり、本願補正発明は、当業者が刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

エ 拒絶理由2について
(ア)対比
本願補正発明と刊行物2発明とを対比する。

a 刊行物2発明の「押入れ」及び「化粧付き吸放湿材10」は、本願補正発明の「収納空間」及び「調湿建材」に、それぞれ相当し、刊行物2発明の「押入れ」の「内装」は、本願補正発明の「収納空間」の「壁部又は天井部の少なくとも一方」に相当する。
そして、刊行物2発明の「化粧付き吸放湿材10」は「吸放湿性を有する基材1に、蜜蝋ワックス2の皮膜を形成した」ものであって、「押入れ」を調湿するためのものであることは明らかであるから、刊行物2発明の「押入れ」の「内装」に「吸放湿性を有する基材1に、蜜蝋ワックス2の皮膜を形成した化粧付き吸放湿材10」を「適用した」ことは、本願補正発明の「収納空間」の「壁部又は天井部の少なくとも一方に」「該収納空間を調湿するための調湿建材が施工されていること」に相当する。

b 「住宅」が外壁部に窓(開口部)が形成された建物からなり、建物内の空間が収納空間及び該収納空間に連通しかつ屋外に隣接する屋外隣接空間を含む複数の空間に区画されることは、技術常識である。
また、刊行物2発明の「住宅」は、「化粧付き吸放湿材10を内装に適用した押入れを備え」ているから、「建物内の空間の湿度を調節する調湿構造」といえる。
してみると、刊行物2発明と本願補正発明とは、「外壁部」に「開口部が形成された建物内の空間の湿度を調節する調湿構造であって、建物内の空間は、収納空間及び該収納空間に連通しかつ屋外に隣接する屋外隣接空間を含む複数の空間に区画されて」いる点で実質的に共通する。

c 以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「外壁部に開口部が形成された建物内の空間の湿度を調節する調湿構造であって、
建物内の空間は、収納空間及び該収納空間に連通しかつ屋外に隣接する屋外隣接空間を含む複数の空間に区画されており、
上記複数の空間のうち、収納空間の壁部又は天井部の少なくとも一方に収納空間を調湿するための調湿建材が施工されている空間の調湿構造。」

d 他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点A>
開口部に関し、本願補正発明の開口部は断熱開口部であるのに対し、刊行物2発明では、そのような特定がされていない点。

<相違点B>
収納空間における調湿建材の施工箇所に関し、本願補正発明では、断熱開口部が面しかつ該断熱開口部の断熱構造に起因して他の部分よりも高湿化し易い収納空間及び該収納空間に連通する屋外隣接空間の双方の壁部又は天井部の少なくとも一方に調湿建材が施工されているのに対し、刊行物2発明では、化粧付き吸放湿材10を内装に適用した押入れと開口部や屋外隣接空間との位置関係が特定されておらず、屋外隣接空間の壁部又は天井部に化粧付き吸放湿材10が施工されていない点。

<相違点C>
調湿建材の作用に関し、本願補正発明では、調湿建材は、断熱開口部の断熱構造に起因して建物内の空間の湿気が収納空間内に集中し、収納空間が他の部分よりも高湿化するのを阻止するように収納空間を調湿するためのものであるのに対し、刊行物2発明では、調湿建材で形成された引き戸112は押入れ111を調湿するためのものではあるが、断熱開口部の断熱構造に起因して湿気が集中し、押入れ111が他の部分よりも高湿化するのを阻止するためのものであることは特定されていない点。

(イ)判断
a 相違点AないしCについて
上記相違点AないしCは相互に技術的に関連するのでまとめて検討する。
(a)建物の断熱性を高めるために、窓を2重サッシやペアガラスのサッシ(本願補正発明の「断熱開口部」に相当。)とすることは、刊行物5に記載のように周知である(上記イ(オ)を参照。)。
屋外に隣接する洋室や和室(本願補正発明の「屋外隣接空間」に相当。)に窓(開口部)に面してクローゼットや押入れ(本願補正発明の「収納空間」に相当。)を設けることは、刊行物1及び刊行物6に記載のように周知である(上記イ(ア)及び(カ)を参照。)。
建物内の壁や天井に調湿建材を施工することは、刊行物2の他にも刊行物1に記載のように周知である(上記イ(ア)及び(イ)cを参照。)。
そして、刊行物2発明において、住宅の間取りや断熱性や調湿性を如何にするかは当業者が適宜決定し得る設計的事項というべきところ、上記各周知技術を採用することは当業者が適宜なし得たことである。
(b)刊行物2に、「冬季は、暖房による温度差に起因した結露が居室間や外壁に接する押入れ収納部・窓サッシ部などに発生しやすく…」と記載されているように、一般に押入れは該押入れに連通する屋外隣接空間よりも高湿化し易いものと認められるところ、刊行物2発明に上記周知技術の間取り及び断熱開口部を適用した場合も、押入れはそれと連通する屋外隣接空間よりも高湿化し易いことは、技術常識に照らし明らかである。
そして、刊行物2発明に上記各周知技術を適用した場合、押入れ及びそれと連通する屋外隣接空間の壁部や天井部に施工した調湿建材は、断熱開口部の断熱構造に起因して建物内の空間の湿気が押入れ内に集中し、押入れが屋外隣接空間よりも高湿化するのを阻止するよう作用することは、技術常識に照らし明らかである。
(c)してみると、刊行物2発明に刊行物1、2、5及び6に記載の周知技術を適用して、上記相違点AないしCに係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

b 本願補正発明の効果について
本願補正発明によってもたらされる効果を全体としてみても、刊行物2発明及び刊行物1、2、5及び6に記載の周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

c 請求人の主張について
平成29年2月9日付けの意見書において請求人は、刊行物2発明には、結露が発生し易い押入れや収納部に調湿建材を施工することが示されているだけであり、建物の開口部を断熱開口部にすること、その断熱開口部が形成された建物内の空間の湿度を調節することは示されていない旨、刊行物2発明には、本願補正発明のように、断熱開口部の断熱構造に起因して他の部分よりも高湿化し易い収納空間を調湿するための調湿建材を、当該収納空間及びそれに連通して高湿化し易い屋外隣接空間の双方に施工することは示されていない旨主張する。
しかし、上記aのとおり、刊行物2発明に周知技術を適用して成る湿度調節建物は、その構造において本願補正発明と異なるところはなく、押入れ及びそれと連通する屋外隣接空間の壁部や天井部に施工した調湿建材は、断熱開口部の断熱構造に起因して建物内の空間の湿気が押入れ内に集中し、押入れが屋外隣接空間よりも高湿化するのを阻止するよう作用することも技術常識に照らし明らかであるから、上記請求人の主張は採用できない。

(ウ)小括
以上のとおり、本願補正発明は、当業者が刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)補正却下の決定のむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年2月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2、2(1)において、本件補正前の請求項1として示したとおりのものである。

2 判断
本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付したものが本願補正発明であるところ、本願補正発明が、上記第2、2(2)において検討したとおり、当業者が刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであり、また当業者が刊行物2に記載された発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであることに照らせば、本願発明は、当業者が刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであり、また当業者が刊行物2に記載された発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであることは明らかである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、当業者が刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであり、また当業者が刊行物2に記載された発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-13 
結審通知日 2017-04-18 
審決日 2017-05-01 
出願番号 特願2010-236715(P2010-236715)
審決分類 P 1 8・ 856- WZ (E04B)
P 1 8・ 121- WZ (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 中田 誠
住田 秀弘
発明の名称 空間の調湿構造  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

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