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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1329568
審判番号 不服2016-5887  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-20 
確定日 2017-07-06 
事件の表示 特願2012- 50030「経路案内システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月19日出願公開、特開2013-185893、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月7日の出願であって、平成27年9月7日付けで拒絶理由通知がされ、平成27年10月13日付けで手続補正がされ、平成28年2月3日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年4月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年2月6日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年3月31日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年2月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし8に係る発明は、以下の引用文献AないしCに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特表2003-502626号公報
B.特開2005-156278号公報
C.国際公開第2009/119945号

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし8に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-215129号公報(当審において新たに引用した文献)
2.特開2000-251197号公報(当審において新たに引用した文献)
3.特開2002-340603号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成29年3月31日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし8は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
地図を表示して経路を案内する経路案内システムであって,
道路をノードおよびリンクで表した道路ネットワークデータを格納する道路ネットワークデータベースと、
前記道路ネットワークデータベースに基づいて、指定された出発地から目的地に至る経路を探索する経路探索部と、
道路を描画するための地図ポリゴンデータを格納する描画データベースと、
車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベースと、
前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内分岐点を特定し、前記地図ポリゴンデータ、道路ネットワークデータおよび前記道路標示規定データに基づいて、経路を含む地図に対して前記車両通行帯境界線を描ける程度に前記案内分岐点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記道路標示規定データに基づいて前記案内分岐点の形状に応じて当該案内分岐点に対する車両通行帯境界線を含む道路標示を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する経路案内部とを備える経路案内システム。
【請求項2】
請求項1記載の経路案内システムであって、
前記経路案内部は、前記案内分岐点の領域内における前記リンクの形状を直線化して、前記車両通行帯境界線を描く経路案内システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の経路案内システムであって、
前記経路案内部は、
前記拡大図として提供すべき案内分岐点を複数選択し、
前記経路に沿った順に、複数の拡大図を一覧できる形式で表示する経路案内システム。
【請求項4】
請求項3記載の経路案内システムであって、
前記経路案内部は、
前記地図と拡大図とを並べて表示し、
前記拡大図には、前記複数の案内分岐点間のリンクの形状を直線化することにより、前記複数の案内分岐点の拡大図を分離することなく案内分岐点間の道路で直線的に連結したデフォルメ表示を行う経路案内システム。
【請求項5】
請求項3または4記載の経路案内システムであって、
前記経路案内部は、
該拡大図間の間隔が対応する案内分岐点間の道のりに応じた間隔となるよう各拡大図を配置して表示する経路案内システム。
【請求項6】
請求項1?5いずれか記載の経路案内システムであって、
前記道路標示規定データベースは、各車線に描かれるべき進行方向矢印の形状および位置を規定するためのデータも併せて格納しており、
前記経路案内部は、
前記道路標示規定データベースに基づいて、前記進行方向矢印を描いた前記拡大図を表示する経路案内システム。
【請求項7】
コンピュータによって、地図を表示して経路を案内する経路案内方法であって,
前記コンピュータは、
道路をノードおよびリンクで表した道路ネットワークデータを格納する道路ネットワークデータベースと、
道路を描画するための地図ポリゴンデータを格納する描画データベースと、
車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベースとを備えており、
前記経路案内方法は、
前記道路ネットワークデータベースに基づいて、指定された出発地から目的地に至る経路を探索する工程と、
前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内分岐点を特定する工程と、
前記地図ポリゴンデータ、道路ネットワークデータおよび前記道路標示規定データに基づいて、経路を含む地図に対して前記車両通行帯境界線を描ける程度に前記案内分岐点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記道路標示規定データに基づいて前記案内分岐点の形状に応じて当該案内分岐点に対する車両通行帯境界線を含む道路標示を動的に描画する工程と、
該拡大図を表示して前記経路を案内する工程とを備える経路案内方法。
【請求項8】
コンピュータによって、地図を表示して経路を案内するためのコンピュータプログラムであって,
前記コンピュータは、
道路をノードおよびリンクで表した道路ネットワークデータを格納する道路ネットワークデータベースと、
道路を描画するための地図ポリゴンデータを格納する描画データベースと、
車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベースとを備えており、
前記コンピュータプログラムは、
前記道路ネットワークデータベースに基づいて、指定された出発地から目的地に至る経路を探索する機能と、
前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内分岐点を特定する機能と、
前記地図ポリゴンデータ、道路ネットワークデータおよび前記道路標示規定データに基づいて、経路を含む地図に対して前記車両通行帯境界線を描ける程度に前記案内分岐点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記道路標示規定データに基づいて前記案内分岐点の形状に応じて当該案内分岐点に対する車両通行帯境界線を含む道路標示を動的に描画する機能と、
該拡大図を表示して前記経路を案内する機能とをコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、理解の一助のため当審で付したものである。

ア.「【0061】
【発明の実施の形態】(本発明の基本概念)本発明の実施形態の詳細な説明を行う前に、本発明の理解を容易にする目的で、その基本概念について説明する。本発明の交差点表示方法が意図することは、実際の形状により近い交差点形状を生成し、表示することである。これを実現するため、本発明の交差点表示方法では、地図データに含まれる道路ネットワークから、道路ネットワークに含まれる交差点の形状を自動生成して表示する。
【0062】上述したように、従来の技術では、実際の形状により近い形状で道路を表示するため、道路リンクに幅員に応じた道幅を付けた道幅付き道路を生成し、表示するものが存在する。しかし、ノード(交差点)においては、接続するリンクに対応した道幅付き道路を重ねるだけで、重なった部分を交差点と見なしているため(図1(a))、交差点形状を求めていない。そのため、例えば、交差点形状を自然な形状に補正する、交差点形状を考慮して交差点付属物を配置する、交差点内の走行パスを滑らかに描く、といった交差点形状が生成されていることが前提となる処理が困難になる。
【0063】そこで、本発明が実現する交差点表示方法では、まず交差点に接続するリンクの道幅付き道路を求め、次にそれらの形状から交差点形状を求めることを行う(図1(b))。また、本発明が実現する交差点表示方法では、生成された交差点形状に基づいて、ロータリーの島、右折車誘導用標示、横断歩道、停止線、車線、中央線、路側帯、側壁等の交差点付属物の形状および位置を決定し、交差点をより自然な形状で表示することを行う。さらに、本発明では、生成された交差点形状を道路ネットワークの各交差点に付随する形式で記憶部に格納することにより、新たな地図形式である交差点形状付き道路ネットワーク地図を生成する。これにより、処理能力が乏しく、実機上で直接交差点形状を生成することのできないような装置においても、交差点形状付き道路ネットワーク地図を搭載することで、上記手法を用いることができる。また、この交差点形状付き道路ネットワーク地図は、市街地図よりも容量が小さいので、地図表示装置の記憶容量が小さい場合や、通信によって地図を配信する場合にも有利である。
(段落【0061】ないし【0063】)

イ.「【0065】(第1の実施形態)図2は、本発明の第1の実施形態に係る交差点表示方法を用いる地図表示装置の構成を示すブロック図である。図2において、第1の実施形態に係る交差点表示方法を用いる地図表示装置は、入力部1と、地図データ格納部2と、経路探索部3と、位置検出部4と、交差点形状生成部5と、誘導部6と、出力部7とを備えている。本発明が提供する交差点表示方法は、基本的には交差点形状生成部5の構成によって実現されるが、理解を容易にするため、本発明の交差点表示方法を用いる地図表示装置全体について、まず概要を説明する。なお、入力部1、地図データ格納部2、経路探索部3、位置検出部4、誘導部6および出力部7の構成については、下記に例示するもの以外にも、周知の地図表示装置に用いられている構成を自由に用いることが可能である。
【0066】入力部1は、例えばユーザによって操作されるリモートコントローラ,タッチセンサ,キーボード,マウス等で構成され、地図表示装置の機能選択(処理項目変更、地図切り替え、階層変更等)、出発地および目的地または経由地の地点設定、経路探索モード選択等の指示を行うために用いられる。この入力部1から出力される指示情報は、経路探索部3および誘導部6に入力される。地図データ格納部2は、例えば光ディスク(CD,DVD等),ハードディスク,大容量メモリ等で構成され、交差点や道路の接続状況や座標・形状・属性・規制情報等の道路ネットワークに関する情報(地図データ)を記憶している。そして、地図データ格納部2に記憶されている地図データは、経路探索部3、交差点形状生成部5および誘導部6によって適宜読み出されて利用される。なお、地図データ格納部2に格納される地図データは、2次元地図データまたは3次元地図データのいずれであってもよい。位置検出部4は、例えばGPS,電波ビーコン受信装置,車速センサ,各速度センサ,絶対方位センサ等で構成され、車両の現在位置を検出する。そして、位置検出部4から出力される車両の現在位置情報は、経路探索部3および誘導部6へ入力される。
【0067】経路探索部3は、入力部1から入力される指示情報に従って、必要となる範囲の地図データを地図データ格納部2から読み込む。そして、経路探索部3は、入力された地点情報等の指示情報に基づいて、出発地および目的地または経由地を決定し、交差点通行規制や一方通行規制を考慮しつつ、出発地から目的地または経由地までの最小コスト経路を探索する。具体的な一例を挙げると、経路探索部3は、入力部1から経路探索モードが指示されると、入力部1で設定された出発地または位置検出部4で検出された車両の現在位置を入力して出発地を設定し、入力部1で設定された目的地または経由地を入力して目的地または経由地を設定する。それと共に、経路探索部3は、出発地から目的地または経由地までをカバーする範囲の地図データを、地図データ格納部2から読み出す。次に、経路探索部3は、読み出した地図データ上で、出発地から目的地または経由地までの誘導経路(例えば、最小時間経路または最短距離経路)を探索する。なお、このとき、経路探索部3で実行される経路探索のためのアルゴリズムとしては、例えば周知のダイクストラ法がある。経路探索が終了すると、経路探索部3は、探索した経路情報を交差点形状生成部5および誘導部6へ出力する。
【0068】交差点形状生成部5は、経路探索部3から入力される経路情報と、地図データ格納部2から入力される地図データ(経路探索部3が読み出した地図データと同じ地図データ)とに基づいて、後述する所定の演算処理を行って、経路探索部3で探索された経路が通過する交差点の形状に関する情報を生成する。この生成された交差点形状情報は、交差点形状生成部5内に記憶保持され、誘導部6が適宜読み出すことで使用される。
【0069】誘導部6は、経路探索部3から入力される経路情報と、位置検出部4から入力される車両の現在位置情報と、地図データ格納部2から入力される地図データと、交差点形状生成部5から入力される交差点形状情報とに基づき、交差点形状を付加した誘導情報を生成する。具体的な一例を挙げると、誘導部6は、入力部1から誘導案内モードが指示されると、経路情報と車両の現在位置情報と地図データとに基づき、地図上でどちらの方向に進むべきかを示す経路案内のための誘導情報をまず生成する。次に、誘導部6は、車両の現在位置が経路上に存在する各交差点に近づくと、交差点形状生成部5に記憶保持されている交差点形状情報の中から、対応する交差点に関する交差点形状情報を読み出し、交差点形状表示のための誘導情報を生成する。この生成された誘導情報は、出力部7へ出力される。出力部7は、表示装置(液晶ディスプレイ,CRTディスプレイ等)を含み、誘導部6から入力される誘導情報に基づいて、誘導案内のための画像を画面上に表示する、または音声をスピーカ等から出力する。
【0070】次に、図3?図12を参照して、本発明の第1の実施形態に係る交差点表示方法(交差点形状生成方法)を、具体的に説明する。図3は、図2の交差点形状生成部5が行う動作の一例を示すフローチャートである。図4は、図3におけるステップS11?S14に基づいて生成される交差点における道幅付き交差点接続リンクの一例を説明する図である。図5、図7、図9および図11は、それぞれ図3におけるサブルーチンステップS15(交差点形状生成処理)の動作の一例をより詳細に示すフローチャートである。図6、図8、図10および図12は、それぞれ図5、図7、図9および図11における各ステップに基づいて生成される交差点形状の一例を説明する図である。
【0071】まず、図3および図4を参照して、交差点形状生成部5は、経路探索部3から経路情報を入力すると共に、地図データ格納部2から経路付近の地図データを読み出す(ステップS11)。そして、交差点形状生成部5は、読み出した地図データから経路が通過する交差点(交差点ノード)を1つ抽出し、当該交差点に接続している道路リンク(以下、交差点接続リンクという)をさらに抽出する(ステップS12)。次に、交差点形状生成部5は、抽出した各交差点接続リンクの幅員、上り線および下り線それぞれの車線数、道路種別等の属性データを地図データ格納部2から読み出し、当該交差点接続リンクの中央線から左端までの道幅および中央線から右端までの道幅を各々特定する(ステップS13)。なお、地図データ格納部2に交差点接続リンクの幅員等の属性データが格納されていない場合には、予め定めたデフォルト値を用いて道幅を決定すればよい。次に、交差点形状生成部5は、交差点に接続するすべての交差点接続リンクに対して、交差点接続リンクを中央線として、交差点接続リンクを表す線分を特定された道幅だけ左および右に平行移動した新たな線分をそれぞれ求め、当該交差点接続リンクの左端線および右端線とする(ステップS14)。これにより、各交差点接続リンクに対して、その幅員に応じた道幅を付けた道幅付き交差点接続リンクを生成することができる(図4)。
【0072】次に、交差点形状生成部5は、生成された道幅付き交差点接続リンクに基づいて、交差点形状を生成する(ステップS15)。この交差点形状を生成する手法としては種々考えられるが、そのうちの4つの手法を以下に例示する。
(中略)
【0077】再び図3を参照して、上記ステップS15において、1つの交差点に関する交差点形状の生成が終了すると、交差点形状生成部5は、再び経路が通過する交差点を調べて、まだ交差点形状の生成処理を行っていない交差点がある否かを判断する(ステップS16)。そして、交差点形状生成部5は、このステップS16の判断において、交差点がある場合には、上記ステップS12に戻って未処理の交差点について上述した交差点形状の生成処理を繰り返し行い、交差点がない場合には、この交差点形状の生成処理を終了する。
【0078】以上のように、本発明の第1の実施形態に係る交差点表示方法によれば、既存の地図データ中の道路ネットワーク情報に基づいて、交差点の形状を生成する。これにより、道路地図表示において、実際の形状により近い交差点形状を表示することができる。また、市街地図を用いて交差点形状を生成する方法よりも、必要な地図データの容量を小さく抑えることができる。」(段落【0065】ないし【0078】)

ウ.「【0079】(第2の実施形態)上記第1の実施形態では、既存の地図データ中の道路ネットワーク情報に基づいて、交差点の形状を生成して交差点表示する基本的な方法を説明した。そこで、次に、地図データ格納部に特定の情報を予め格納しておくことで、上述した手法で生成した交差点形状および当該特定の情報を利用して、さらにユーザの利便性を向上させた交差点表示方法を提供するものである。
【0080】図13は、本発明の第2の実施形態に係る交差点表示方法を用いる地図表示装置の構成を示すブロック図である。図13において、第2の実施形態に係る交差点表示方法を用いる地図表示装置は、入力部1と、地図データ格納部12と、経路探索部3と、位置検出部4と、交差点形状生成部15と、誘導部6と、出力部7とを備えている。図13に示すように、第2の実施形態に係る交差点表示方法を用いる地図表示装置は、上記第1の実施形態に係る交差点表示方法を用いる地図表示装置の地図データ格納部2および交差点形状生成部5を、地図データ格納部12および交差点形状生成部15に代えた構成である。なお、第2の実施形態に係る交差点表示方法を用いる地図表示装置の他の構成は、上記第1の実施形態に係る交差点表示方法を用いる地図表示装置と同様であるため、同一の構成部分については同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0081】本発明が提供する交差点表示方法は、基本的には地図データ格納部12および交差点形状生成部15の構成によって実現されるが、理解を容易にするため、本発明の交差点表示方法を用いる地図表示装置全体について、まず概要を説明する。なお、入力部1、経路探索部3、位置検出部4、誘導部6および出力部7の構成については、下記に例示するもの以外にも、周知の地図表示装置に用いられている構成を自由に用いることが可能である。
【0082】地図データ格納部12には、上述した地図データに加えて、道路リンクにおける中央線の有無、側壁・路肩の有無、車線数、横断歩道の有無等、交差点ノードにおけるロータリーの有無、右折車誘導用標示の有無、優先道路の有無等の、特定情報が予め格納されている。交差点形状生成部15は、経路探索部3から入力される経路情報と、地図データ格納部12から入力される地図データ(経路探索部3が読み出した地図データと同じ地図データ)とに基づいて、まず上記第1の実施形態で述べた所定の演算処理を行って、経路探索部3で探索された経路が通過する交差点の形状に関する情報を生成する。さらに、交差点形状生成部15は、交差点に関する特定情報を地図データ格納部12から読み出し、交差点接続リンクの付属物の位置や形状および交差点の付属物の位置や形状を生成して交差点形状情報に付加する。この生成された交差点形状情報は、交差点形状生成部15内に記憶保持され、誘導部6が適宜読み出すことで使用される。
【0083】次に、図14?図16を参照して、本発明の第2の実施形態に係る交差点表示方法(交差点形状生成方法)を、具体的に説明する。図14は、図13の交差点形状生成部15が、図2の交差点形状生成部5行う動作に加えて、さらに行う動作の一例を示すフローチャートである。なお、図14の各ステップは、好ましくは図3におけるステップS15とステップS16との間に行われる。図15は、図14におけるステップS21?S24に基づいて生成される交差点接続リンク付属物が付加された交差点形状の一例を説明する図である。図16は、図14におけるステップS25?S28に基づいて生成される交差点付属物が付加された交差点形状の一例を説明する図である。
【0084】まず、図14および図15を参照して、交差点形状生成部15は、地図データ格納部12から交差点接続リンクにおける中央線の有無、側壁・路肩の有無、車線数、横断歩道の有無等を読み込む(ステップS21)。次に、交差点形状生成部15は、中央線がある場合は中央線を、側壁・路肩がある場合は側壁または路肩を、および車線数に応じた車線を、交差点接続リンクと平行に配置する(ステップS22)。また、交差点形状生成部15は、経路探索部3から入力された経路が交差点接続リンクを通過する場合は、配置した車線の中央になるように交差点接続リンクと平行に自車パスを配置する(ステップS22)。これだけでは、交差点形状の内部に付属物や自車パスがはみ出してしまうので、交差点形状生成部15は、交差点形状に重複する付属物や自車パスの一部分を削除して、不要な部分を除去する(ステップS23)。これにより、交差点外部における中央線、側壁・路肩、車線および自車パスが生成されたことになる。さらに、交差点形状生成部15は、道幅付き交差点接続リンク上に、当該交差点接続リンクと交差する交差点形状の縁辺と平行に、必要な横断歩道や停止線を生成する(ステップS24)。
【0085】次に、図14および図16を参照して、交差点形状生成部15は、地図データ格納部12から交差点におけるロータリーの有無、右折車誘導用標示の有無、優先道路の有無等を読み込む(ステップS25)。次に、交差点形状生成部15は、ロータリーがある場合はロータリーを、右折車誘導用標示がある場合は右折車誘導用標示を、交差点ノードの位置に配置する(ステップS26)。次に、交差点形状生成部15は、優先道路がある場合は、優先道路になっている2本の交差点接続リンクを地図データ格納部12から読み出し、当該2本の交差点接続リンクに付属する中央線および車線を滑らかに結んで補間し、交差点形状内にも優先道路の中央線および車線を表示する(ステップS27)。なお、離れた2本の線分を滑らかに結ぶ方法としては、公知のスプライン補間やベジエ曲線を使った方法等を自由に用いることができる。次に、交差点形状生成部15は、経路探索部3から入力される経路情報から経路が通過する2本の交差点接続リンクを選択し、それらの2本の接続リンクに付属する自車パスを滑らかに結んで補間し、交差点形状内の自車パスとして表示する(ステップS28)。
【0086】そして、誘導部6は、以上のようにして生成された交差点形状情報に基づいて交差点の誘導情報を生成し、出力部7を介してユーザに提供する。より具体的には、車両の現在位置が交差点の手前所定距離範囲内に到達すると、誘導部6は、交差点形状生成部15から次の交差点の交差点形状情報を入手する。そして、誘導部6は、まもなく通過するであろう次の交差点の形状および自車パスを出力部7に出力する。
【0087】ここで、直近の交差点までの距離を案内する場合には、車両の現在位置から交差点ノード(すなわち、交差点の中心)までの距離で行うより、車両の現在位置から交差点手前にある停止線までの距離で行う方が、ドライバの感覚により近い(図17)。そこで、誘導部6は、以下に示す処理を行って、交差点までの距離を求めるようにすればよい。図18を参照して、誘導部6は、まず直近の交差点ノードを求める(ステップS31)。次に、誘導部6は、車両の現在位置から求めた交差点ノードまでの距離を求める(ステップS32)。次に、誘導部6は、求めた交差点ノードから停止線位置までの補正距離(図17を参照)を求める(ステップS33)。そして、誘導部6は、補正距離を用いて車両の現在位置から停止線位置までの距離を求める(ステップS34)。
【0088】以上のように、本発明の第2の実施形態に係る交差点表示方法によれば、地図データ中の道路ネットワーク情報に基づいて、交差点の形状を生成すると共に、道路リンクおよび交差点ノードに関する特定の情報に基づいて、交差点接続リンクおよび交差点における付属物の形状を生成する。これにより、道路地図表示において、実際の形状により近い交差点形状を表示することができる。また、市街地図を用いて交差点形状を生成する方法よりも、必要な地図データの容量を小さく抑えることができる。さらに、ロータリー中央の島や右折車誘導用標示等の交差点に属する付属物、および横断歩道や停止線等の交差点接続リンクに属する付属物を交差点の形状に付加して配置することができるので、より実際の形状に近い形で交差点を表示することができる。
【0089】なお、上記実施形態では、交差点形状生成部5または15において随時交差点形状を生成する場合を述べた。しかし、装置のCPU性能またはメモリ量が乏しく、装置上で交差点形状を生成するのに非常に多くの時間を要する場合には、予め高速なワークステーションやパーソナルコンピュータ等ですべての交差点における交差点形状を生成しておき、道路ネットワーク地図の各交差点に付随させる形式で格納しておくこともできる。その場合、図3のフローチャートに示した交差点形状生成部5または15が行う動作を、高速なコンピュータ上で実行することになり、生成された交差点形状は、道路ネットワークと共に地図データ格納部2または12に格納される。そして、実際の装置上では、地図データ格納部2または12から予め格納されている交差点形状を読み出すことにより、また第2の実施形態においては図14の各ステップS21?S28をさらに処理することにより、上述した効果を得ることができる。このようにして生成された交差点形状付き道路ネットワーク地図は、交差点形状を主に実測から収録した市街地図よりも容量が小さいため、広範囲にわたる地図を装置に搭載することが容易である。また、通信や放送を媒介にして地図を配信する際にも有利である。
【0090】また、上記実施形態において、経路探索部3、交差点形状生成部5または15および誘導部6の機能を、CPUによるソフトウェア制御によって実現することもできる。その場合、当該ソフトウェア制御のためのプログラムを記録した記録媒体を、地図表示装置に実装することになる。」(段落【0079】ないし【0090】)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「地図を表示して経路を案内する地図表示装置であって,
道路をノードおよびリンクで表した道路ネットワーク情報を格納する地図データ格納部2,12と、
前記地図データ格納部2,12に基づいて、指定された出発地から目的地に至る経路を探索する経路探索部3と、
道路を描画するための地図データを格納する地図データ格納部2,12と、
道路リンクにおける中央線の有無、側壁・路肩の有無、車線数、横断歩道の有無等、交差点ノードにおけるロータリーの有無、右折車誘導用標示の有無、優先道路の有無等の、特定情報を格納する地図データ格納部2,12と、
前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき交差点を特定し、前記地図データ、道路ネットワーク情報および前記特定情報に基づいて中央線等を描くためのデータを動的に生成して、経路を含む地図に対して前記中央線等を描ける程度に前記交差点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記特定情報に基づいて前記交差点の形状に応じて当該交差点に対する中央線等を含む交差点形状を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する交差点形状生成部15及び経路探索部3とを備える経路案内システム。」

2.引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。丸囲み数字は、○1のように標記する。なお、下線は、理解の一助のため当審で付したものである。

ア.「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明が適用されるナビゲーション装置の1例を示す構成図であり、経路案内に関する情報を入出力する入出力手段1、自車の現在位置に関する情報を検出する現在位置検出手段2、経路の算出に必要なナビゲーション用データおよび案内に必要な表示案内データ等が記憶されている情報記憶手段3、経路探索処理や経路案内に必要な表示案内処理を行うと共にシステム全体の制御を行う中央処理装置4から構成したものである。まず、それぞれの構成について説明する。
【0009】入出力手段1は、目的地を入力したり、運転者が必要な時に案内情報を音声および/または画面により出力できるように、運転者の意志によりナビゲーション処理を中央処理装置4に指示するとともに、処理後のデータなどをプリント出力する機能を備えている。その機能を実現するための手段として、入力部には、メニュー画面を呼び出したり、目的地を電話番号や地図上の座標などにて入力したり、経路案内をリクエストしたりするリモコン装置11を備えている。また、出力部には、入力データを画面表示したり、運転者のリクエストに応じ自動的に経路案内を画面で表示するディスプレイ12、中央処理装置4で処理したデータや情報記憶装置3に格納されたデータをプリント出力するプリンタ13および経路案内を音声で出力するスピーカ16などを備えている。ディスプレイ12は、カラーCRTやカラー液晶表示器により構成されており、中央処理装置4が処理する地図データや案内データに基づく経路設定画面、区間図画面、交差点図画面などナビゲーションに必要なすべての画面をカラー表示出力する。
【0010】現在位置検出手段2は、車両の現在位置に関する情報を検出、或いは受信する装置であり、地磁気センサなどで構成される絶対方位センサ24、ステアリングセンサ、ジャイロなどで構成される相対方位センサ25、車輪の回転数から走行距離を検出する距離センサ26、衛星航法システム(GPS)を利用したGPS受信装置21及び通信装置を備えている。前記通信装置は、交通情報取得手段であるVICS(道路交通情報システム;Vehicle Information & CommunicationSistem)受信装置22及びデータ送受信装置23から構成される。また、データ送受信装置23は、例えば携帯電話やパソコンであり、運転者の要求により交通情報センター(例えばATIS)との間でナビゲーションに必要な情報のやりとりを行うものである。
【0011】情報記憶手段3は、ナビゲーション用のプログラム及びデータを記憶した外部記憶装置で、例えばCD-ROM、DVD-ROM等の光学的な記録媒体、フロッピーディスクやMO等の磁気的な記録媒体、或いはICカード等の電気的な記録媒体である。プログラムは、地図描画部、経路探索部、経路案内部、現在位置計算部、案内表示制御部等からなりナビゲーションの信号出力処理を行うアプリケーション部及びOS部等で構成され、ここに、経路探索などの処理を行うためのプログラムや経路案内に必要な案内表示制御、音声案内に必要な音声出力制御を行うためのプログラム及びそれに必要なデータ、さらには経路案内及び地図表示に必要な表示情報データが格納されている。また、データは、経路案内に必要な地図データ、交差点データ、ノードデータ、道路データ、写真データ、登録地点データ、目的地点データ、案内道路データ、詳細目的地データ、目的地読みデータ、電話番号データ、住所データ、その他のデータのファイルからなりナビゲーション装置に必要なすべてのデータが記憶されている。
【0012】中央処理装置4は、種々の演算処理を実行するCPU40、重要な情報(例えば経路探索や経路案内を実行するプログラムや条件設定を行うデータ、各種パラメータのデータなど)を不揮発的に記憶するための書き換え可能なROM(書き換え可能な不揮発性記憶手段)であるフラッシュメモリ41(例えば電気的に消去可能なEEPROM:Electrically Erasable and ProgramableROM) 、フラッシュメモリ41のプログラムチェック、更新処理を行うためのプログラム(プログラム読み込み手段)さらにはフラッシュメモリ41及びRAM43のデータチェックを行いこれらに記憶された情報を相互に書き換え可能に制御するためのプログラムを格納した不揮発性記憶手段であるROM42、運転者の操作により任意の地点の情報を登録するメモリ地点、学習機能により蓄積される頻度情報、各種検出手段の誤差修正情報などの個人別に記憶される情報を、一時的(揮発的)に格納するとともに、ACCがOFFされても格納した情報を保持することができる読み書き自在な揮発性記憶手段であるRAM43(例えば、一時的に記憶した情報を電気的に保持できるSRAM:Static RAM)、ディスプレイへの画面表示に使用する画像データが記憶された画像メモリ44、CPU40からの表示出力制御信号に基づいて画像メモリ44から画像データを取り出し、画像処理を施してディスプレイに出力する画像プロセッサ45、CPUからの音声出力制御信号に基づいて情報記憶手段3から読み出した音声をスピーカ16に出力する音声プロセッサ46、通信による入出力データのやり取りを行う通信インタフェース47および現在位置検出手段2のセンサ信号を取り込むためのセンサ入力インタフェース48、内部ダイアグ情報に日付や時間を記入するための時計49などを備えている。この中央処理装置4において、現在位置検出装置2の各センサにより取得されたデータをセンサ入力インタフェース48より取り込むと、そのデータに基づきCPU40は、一定時間毎に現在位置座標を算出し、一時的にRAM43に書き込む。
【0013】図2?図4は、図1に示した本発明に係る情報記憶手段3に格納された主要なデータファイルの構成例を示している。図2(A)は経路算出手段により経路を算出し経路案内を行うために必要なデータが格納された案内道路データファイルを示し、道路数nのそれぞれに対して、道路番号、長さ、道路属性データ、形状データのアドレス、サイズおよび案内データのアドレス、サイズの各データからなる。前記道路番号は、分岐点間の道路毎に方向(往路、復路)別に設定されている。道路案内補助情報データとしての前記道路属性データは、その道路が高架か、地下道か、車線情報を示すデータである。前記形状データは、図2(B)に示すように、各道路を複数のノード(節)で分割したとき、ノード数mのそれぞれに対して東経、北緯からなる座標データを有している。前記案内データは、図2(C)に示すように交差点(または分岐点)名称、注意点データ、道路名称データ、道路名称音声データのアドレス、サイズおよび行き先データのアドレス、サイズの各データからなる。前記注意点データは、分岐点以外の踏切、トンネル等において運転者に注意を促すためのデータである。前記道路名称データは、高速道路、国道、県道、その他の道路種別の情報等を示すデータである。前記行き先データは、図2(D)に示すように、行き先道路番号、行き先名称、行き先名称音声データのアドレス、サイズおよび行き先方向データ、走行案内データデからなる。前記行き先方向データは、図2(E)に示すように、無効(行き先方向データを使用しない)、不要(案内をしない)、直進、右方向、斜め右方向等の情報を示すデータである。
【0014】図3は、図2(A)の道路属性データのうち、本発明に係わる車線情報のデータ構造の例を示し、図4は、図3のデータ構造を説明するための図である。例えば、図4に示す道路形状において、道路は往路および復路ごとに道路番号○1?○7が付されており、道路番号○1は車線が3つ(すなわち進入レーン数が3)あり、一番左のレーンは「左折及び直進」、中央のレーンは「直進」、一番右のレーンは「右折専用」となっている。ここで、道路番号○1から左折して道路番号○2に入る場合(進入道路番号○1→退出道路番号○2)を考えると、道路番号○1における案内走行レーンは、一番左のレーンになる。
【0015】このような道路形状における車線情報データの構造は、図3に示すように、道路番号、進入レーン数、進入レーン数の内、増設されたレーン数および進入道路番号、退出道路番号の組み合わせと、それに対応する走行レーン情報からなっている。ここで進入レーン数の内、増設されたレーン数は、交差点手前で右左折専用道路のように途中で増設されている道路の数であり、また、走行レーン情報は、進入道路番号から退出道路番号へ進むためにどの進入が走行可能か否かが進入レーンごとに格納されている。
【0016】例えば、道路番号○1から道路番号○2へ左折する場合には、道路番号○1の進入レーンのうち一番左のレーンのみが左折可能であり、中央および一番右のレーンは左折できないため、走行レーン情報は左から「可」、「不可」、「不可」となるように格納されている。同様に、道路番号○1から直進して道路番号○3に進む場合には、道路番号○1の進入レーンのうち一番左のレーンおよび中央のレーンが直進可能であり、一番右のレーンは右折専用道路で直進不可能であるため、走行レーン情報は左から「可」、「可」、「不可」となるように格納されている。
【0017】このような車線情報のデータ構造を用いることにより、例えば、道路番号○1から左折して道路番号○2に進入するような経路が探索された場合に、一番左のレーンの左折矢印のみを表示することが可能となる(詳細は後述)。
【0018】図5は、図1のナビゲーション装置の全体の処理の流れを説明するための図である。ナビゲーション装置としてシステムを立ち上げて、地点入力、経路探索、経路案内などを行うまでの中央処理装置40により実行する処理の概要は、先ず、初期化処理を行ってCD-ROMからナビゲーションプログラムを読み出し、これをフラッシュメモリ41に格納して起動する(ステップS11)。次に、現在位置検出装置2により車両の現在位置を取得する処理を行い、現在位置を中心としたその周辺地図を表示するとともに、現在位置の名称などを表示する(ステップS12)。次に、電話番号や住所、施設名称、登録地点などを用いて目的地を設定する処理を行い(ステップS13)、現在位置から目的地までの経路探索を行う(ステップS14)。経路が決定すると、現在位置検出装置2による現在位置追跡を行いながら、目的地に到着するまでの経路案内の表示出力、音声出力の処理を行う(ステップS15)。
【0019】以下に、本発明の実施形態を、上記ナビゲーション処理のうちステップS15の案内・表示処理に適用して説明する。図6は、本発明に係わる案内交差点での案内画面の表示例を示す図である。案内画面Dは左右に2分割され、右側のウインドーに案内経路を示す情報画面D1が表示され、左側のウインドーに車線情報画面D2が表示される。情報画面D1には、案内交差点a?c、通過交差点P1、P2、自車位置Vが表示されるとともに案内経路Rが強調表示されている。また、車線情報画面D2には案内交差点a?cおよび通過交差点P1、P2手前での各車線情報が表示されている。
【0020】図6aは、案内交差点aを右左折(斜め方向の右左折を含む)する場合で、かつ案内交差点aの所定距離手前に通過交差点P1、P2があり、この通過交差点P1、P2もおける一番右のレーンは右折専用レーンである場合を示し、通過交差点P1、P2手前での車線情報は、通過交差点P1、P2で右折専用レーンに入らないように、かつ経路に沿って直進させるように、5車線のうち左側4車線に直進矢印を表示し、案内交差点a手前での車線情報は、6車線のうち右側2車線に右折矢印を表示するようにしている。ここで、これらの進行方向矢印は実際の道路に塗布されたものと必ずしも一致するものではなく、探索された経路に沿って走行可能なレーンに経路に対応した矢印を表示するものである。例えば、P1の通過交差点において、右から2番目のレーンが直進可能、右折可能のレーンだとしても探索された経路はP1においては直進であるため直進の矢印のみを表示する。
【0021】図6bは、案内交差点bの直進時で通過交差点P1から案内交差点bの間で車線数が減少する場合で、通過交差点P1、P2手前での車線情報は、5車線のうち中央3車線に直進矢印を表示し、案内交差点b手前での車線情報は、4車線のうち左側3車線に直進矢印を表示し、案内交差点bで一番右の右折専用レーンに入らないように表示している。なお、車線数が増加する場合にも同様に対応する。
【0022】図6cは、案内交差点cの直進時で通過交差点P1から案内交差点cの間で案内車線数が減少する場合(案内交差点cでの右折専用レーンが2車線ある場合)で、通過交差点P1、P2手前での車線情報は、5車線のうち左側4車線に直進矢印を表示し、案内交差点c手前での車線情報は、5車線のうち左側3車線に直進矢印を表示し、案内交差点cで右側の右折専用2車線に入らないように表示している。なお、車線数が増加する場合にも同様に対応する。
【0023】図7は、本発明における表示制御手段の1実施形態を示し、上記した車線情報の案内表示を可能にする、複数レーン情報の表示処理のフローを示す図である。先ず、経路上において、自車から例えば5km区間内に存在する全てのレーン情報をメモリ43中に格納し(ステップS21)、次に、図6で説明した構成の案内交差点a、b、cが経路上の区間内にあるか否かを判定し(ステップS22)、なければ別の処理に進み、あれば次に、自車が経路上、案内交差点a、b、cの所定距離、例えば700m手前まできたか否かを判定し(ステップS23)、700m手前に到達すれば、案内交差点を含む最大3つまで、図6に示すように、案内交差点a、b、cから近い通過交差点P1、P2順にレーン情報を表示する(ステップS24)。その後、自車がレーン情報表示中の交差点を通過したか否かを判定し(ステップS25)、通過した交差点のレーン情報を削除し(ステップS26)、次に案内交差点を通過したか否かを判定し(ステップS27)、通過していなければ、ステップS25に戻り、通過した交差点のレーン情報を削除する処理を行い、案内交差点を通過すれば終了となる。
【0024】図8は、上記表示処理により行われる具体的な画面例を示す図である。図8(A)には、図6の案内交差点a、通過交差点P1、P2の3カ所の車線情報、交差点名称および信号マークが表示され、また、走行可能なレーンにのみに進行方向矢印が示されている。これにより、通過交差点P1、P2を通過する際には、一番左のレーンに車線変更してはいけないことが容易に判別でき、また、案内交差点aでは右折レーンが2車線あることも一目で判別することができる。そして、通過交差点P2を通過すると、図8(B)に示すように通過交差点P2の車線情報が削除され、さらに通過交差点P1を通過すると、図8(C)に示すように通過交差点P1の車線情報が削除され、案内交差点aの車線情報のみとなり、従って、運転者には必要な情報だけが提示され、リアルタイムで案内交差点までの距離感覚と通過する交差点数を把握することができ、より正確にストレスなく走行することができる。なお、上記実施形態においては、車線情報と地図を表示するようにしているが、これに加えて交差点直前で音声を出力するようにしてもよい。例えば、通過交差点を直進する場合に「右レーンに入らないでください」とか、通過交差点を通過後、案内交差点を右折する場合に「右レーンに移ってください」とかを音声出力するようにすれば、さらに正確にストレスなく走行することができる。
【0025】次に、図9?図14により、本発明の他の実施形態について説明する。図7の実施形態においては、基本的な複数レーン情報の表示処理を説明したが、以下の実施形態は、図6で説明した案内交差点a、b、c同士がそれぞれ接近している場合にどの案内交差点を優先的に表示するかの処理であり、案内交差点a、b、c同士が接近しているか否かを判定する。そのために、右左折する案内交差点aに一番高い優先度を付与し、直進の案内交差点b、cは案内交差点より優先度が低くかつ同じ優先度を付与し、案内交差点に対する案内表示区間が重なった場合には優先度に基づいて車線情報の表示又は非表示を決定するようにしている。
【0026】図9および図10は本発明の他の実施形態を示し、図9は複数レーン情報の表示処理のフローを示す図、図10は図9の処理を説明するための図である。図9においてステップS31?S35の処理は図7の処理と同様である。本実施形態は、図10に示すように、案内交差点a1と案内交差点a2が接近していると判定された場合の表示処理であり、案内開始ポイントから案内交差点a1+20mの区間を案内表示区間X、案内開始ポイントから案内交差点a2+20mの区間を案内表示区間Yとすると、図7の処理では案内表示区間Xと案内表示区間Yが重なってしまうため、自車から近い方の案内交差点を判別し、近い方の案内交差点を先に案内する。そこで、ステップS36で案内交差点a1を通過し20m後、案内交差点a2に関する表示を開始するようにする。このように、案内交差点a1とa2は同じ優先度を有しているので、自車から近い方の案内交差点a1を最優先に表示する。ここで、案内表示区間として案内開始ポイントから案内交差点+20mとしたのは、案内交差点を通過後もその交差点を確認させるためであり、20mに限定されるものではない。また、案内開始ポイントから案内交差点を案内表示区間としてもよく、その場合には案内交差点a1通過直後に案内交差点a2に関する案内を開始することになる。
【0027】図11および図12は本発明の他の実施形態を示し、図11は複数レーン情報の表示処理のフローを示す図、図12は図11の処理を説明するための図である。本実施形態は、図12に示すように、案内交差点aと案内交差点b又はcが接近していると判定された場合の表示処理であり、案内開始ポイントから案内交差点a+20mの区間を案内表示区間X、案内開始ポイントから案内交差点b又はc+20mの区間を案内表示区間Yとすると、図7の処理では案内表示区間Xと案案内表示区間区間Yが重なってしまう。そこで、ステップS41で案内交差点aの手前に案内交差点b、cがあるか否かを判定し、案内交差点b、cが手前で重なっている場合には、ステップS42で優先度の低い区間Yの案内表示をしないようにし、優先度の高い案内交差点aに関する表示のみを行う(図12(A))。ステップS41でNOであれば、すなわち案内交差点b、cの手前に案内交差点aがある場合には、ステップS43?S47で図7と同様の処理を行い、ステップS47で案内交差点aを通過したと判定されれば、ステップ48で、案内交差点aを通過し20m後、案内交差点b又はcのレーン表示を開始する(図12(B))。
【0028】図13および図14は本発明の他の実施形態を示し、図13は複数レーン情報の表示処理のフローを示す図、図14は図13の処理を説明するための図である。図13においてステップS51?S55の処理は図7の処理と同様である。本実施形態は、図14に示すように、案内交差点bとb、cとc、bとcが接近していると判定された場合の表示処理であり、案内開始ポイントから案内交差点b又はc+20mの区間を案内表示区間X、案内開始ポイントから案内交差点b又はc+20mの区間を案内表示区間Yとすると、図7の処理では案内交差点b又はcの区間Xと案内交差点b又はcの区間Yが重なってしまう。そこで、ステップS56で案内交差点b又はcを通過し20m後、案内交差点b又はcの区間Yの表示を開始するようにする。このように、案内交差点bとcは同じ優先度を有しているので、自車から近い方の案内交差点b又はcを最優先に表示する。
【0029】次に、図15および図16により本発明のさらに他の実施形態について説明する。図15は、拡大図表示処理のフローを示す図、図16は図15の処理により表示される画面例を説明するための図である。本実施形態は、図16に示すように車線情報Rの表示に加えて案内交差点までの鳥瞰図Tを表示するものである。そのために、案内交差点と通過交差点の距離に応じて視点位置、見下ろし角度および方向を決定し鳥瞰図を作成する作成手段を有している。
【0030】ナビゲーションの経路案内においては、通常、自車が案内交差点手前300m程度に到達した時点で案内交差点の拡大図を表示する。この場合、スペースの制約から画面中に表示されるのは、その案内交差点を中心とした約150m四方の交差点地図であり、また、拡大図中の自車マークは交差点手前150mの地点に自車が到達した時点から案内に沿って動き出すようにしている。従って、300m?150mまでの区間の状況が交差点地図として画面中に拡大表示されず、そのため、その区間内に通過交差点があった場合、その交差点を案内交差点として判断してしまい探索された経路から外れてしまう可能性がある。また、その区間内、経路上を自車マークが移動しないため、運転者は音声案内と残距離インジケータの案内に頼るしかなく、実際に曲がらなくてはならない交差点との距離感に感覚のズレが生じる。
【0031】そこで、本実施形態においては、案内交差点までのルートを広く、正確に表示するため、視点を上方に移動させ上方から案内交差点を眺めた鳥瞰図を用い、その区間内にある通過交差点を自車が通過する毎に視点を案内交差点側に移動させ、必要な情報だけを表示し、加えて音声を同期させ案内を行うようにしている。
【0032】図15において、先ず、自車が経路上、案内交差点の所定距離、例えば300m手前まできたか否かを判定し(ステップS61)、300m手前に到達すれば、案内交差点手前300m区間内に通過交差点があるか否かを判定する(ステップS62)。通過交差点があればステップS63で、区間内で案内交差点から一番遠い通過交差点の距離を判別し、鳥瞰図の視点位置を該通過交差点の手前上方に決定し、さらに通過交差点と案内交差点を含む地図データと、視点位置とから見下ろし角度および方向を決定し、鳥瞰図変換された案内交差点拡大図を表示し(ステップS64)、自車マークを拡大図上に表示し自車マークの移動を開始する(図16(A))。次にステップS66で自車が通過交差点を通過したか否かが判定され、通過したらステップS67で、自車位置と案内交差点の間に通過交差点があるか否かを判定し、通過交差点があればステップS68で案内交差点から一番遠い通過交差点の距離を判別し、該通過交差点の手前上方に鳥瞰図の視点位置を移動させ、見下ろし角度および方向を決定し、再びステップS64に戻り鳥瞰図変換された案内交差点拡大図を表示する(図16(B))。従って、通過した交差点は案内交差点拡大図では表示されなくなる。以下、通過交差点を通過する毎にS64?S68の処理を繰り返す。ステップS62およびステップS67で自車位置と案内交差点の間に通過交差点がないと判定された場合には、ステップS69に進み案内交差点の真上から見た案内交差点拡大図を表示し(図16(C))、次に案内交差点を通過したか否かを判定し(ステップS70)、案内交差点を通過すれば終了となる。
【0033】以上、本実施の形態によれば、案内ルート上を自車マークが300m手前より移動し、かつ、通過交差点を通過する毎に視点を切り替えた鳥瞰図に変換するため、運転者に必要な情報だけを伝達することが可能になる。その結果、車線情報や残距離表示による案内に加え、自車位置と案内交差点までの距離感覚のズレをなくすことができ、より案内交差点の判別が可能になる。
【0034】以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態においては、車線情報は図3に示すような車線情報データから作成しているが、車線情報をパターン化して持たせ、案内交差点に所定距離近づくと対応するパターンを読み出すようにしてもよい。
【0035】また、上記実施の形態では、自車が案内交差点の所定距離手前に接近したときに案内交差点と通過交差点を共に表示するようにしているが、任意に表示できるようにしてもよい。例えば、目的地までの経路を走行前にユーザーに確認させるため案内交差点を順番に表示させるような場合に、案内交差点と共に通過交差点の車線情報も表示することにより、各案内交差点に至るまでの走行上注意すべき車線を予め確認させることが可能となる。」(段落【0008】ないし【0035】)

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「地図を表示して経路を案内するナビゲーション装置であって,
道路をノードおよびリンクで表したノードデータを格納する情報記憶手段3と、
前記情報記憶手段3に基づいて、指定された出発地から目的地に至る経路を探索する経路探索部と、
道路を描画するための地図データを格納する情報記憶手段3と、
レーンの境界線に関する案内道路データファイルを格納する情報記憶手段3と、
前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内交差点を特定し、前記地図データ、ノードデータおよび前記案内道路データファイルに基づいて、経路を含む地図に対して前記レーンの境界線を描ける程度に前記案内交差点を拡大した案内交差点拡大図を生成し、該案内交差点拡大図内には前記案内道路データファイルに基づいて前記案内交差点の形状に応じて当該案内交差点に対するレーンの境界線を含む道路形状等を動的に描画し、該案内交差点拡大図を表示して前記経路を案内する地図描画部、経路案内部及び案内表示制御部とを備える経路案内システム。」

3.引用文献3について
当審拒絶理由に引用された引用文献3の特許請求の範囲の請求項1ないし26及び段落【0015】ないし【0222】並びに図1ないし34の記載からみて、当該引用文献3には、「ナビゲーション装置において、探索された経路について、交差点案内の対象とすべき交差点を特定する技術。」(以下、「引用文献3記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

4.周知技術について
「経路案内システムにおいて道路を描画するためのデータとして、ポリゴンデータを用いること」は周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2007-101580号公報の段落【0044】、特開2007-86156号公報の段落【0005】ないし【0011】、特表2006-521033号公報の段落【0016】、特開2004-309167号公報の段落【0012】、特開2003-195747号公報の段落【0034】等の記載を参照。)である。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明1における「地図表示装置」は、その技術的意義からみて、本願発明1における「経路案内システム」に相当し、以下同様に、「地図データ格納部2,12」は「道路ネットワークデータベース」及び「描画データベース」、「経路探索部3」は「経路探索部」に、「中央線等」は「車両通行帯境界線」に、「交差点」は「案内分岐点」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明1における「地図データ」は、「地図データ」という限りにおいて、本願発明1における「地図ポリゴンデータ」に相当する。
また、引用発明1における「道路リンクにおける中央線の有無、側壁・路肩の有無、車線数、横断歩道の有無等、交差点ノードにおけるロータリーの有無、右折車誘導用標示の有無、優先道路の有無等の、特定情報を格納する地図データ格納部2,12」は、
「道路に関する特定の情報を格納するデータベース」という限りにおいて、
本願発明1における「車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベース」に相当する。
また、引用発明1における「前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき交差点を特定し、前記地図データ、道路ネットワーク情報および前記特定情報に基づいて中央線等を描くためのデータを動的に生成して、経路を含む地図に対して前記中央線等を描ける程度に前記交差点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記特定情報に基づいて前記交差点の形状に応じて当該交差点に対する中央線等を含む交差点形状を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する交差点形状生成部及び経路探索部」は、
「前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内分岐点を特定し、前記地図データ、道路ネットワークデータおよび前記道路に関する特定の情報に基づいて、経路を含む地図に対して前記車両通行帯境界線を描ける程度に前記案内分岐点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記道路に関する特定の情報に基づいて前記案内分岐点の形状に応じて当該案内分岐点に対する車両通行帯境界線を含む道路標示を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する経路案内部」という限りにおいて、
本願発明1における「前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内分岐点を特定し、前記地図ポリゴンデータ、道路ネットワークデータおよび前記道路標示規定データに基づいて、経路を含む地図に対して前記車両通行帯境界線を描ける程度に前記案内分岐点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記道路標示規定データに基づいて前記案内分岐点の形状に応じて当該案内分岐点に対する車両通行帯境界線を含む道路標示を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する経路案内部」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「地図を表示して経路を案内する経路案内システムであって,
道路をノードおよびリンクで表した道路ネットワークデータを格納する道路ネットワークデータベースと、
前記道路ネットワークデータベースに基づいて、指定された出発地から目的地に至る経路を探索する経路探索部と、
道路を描画するための地図データを格納する描画データベースと、
道路に関する特定の情報を格納するデータベースと、
前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内分岐点を特定し、前記地図データ、道路ネットワークデータおよび前記道路に関する特定の情報に基づいて、経路を含む地図に対して前記車両通行帯境界線を描ける程度に前記案内分岐点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記道路に関する特定の情報に基づいて前記案内分岐点の形状に応じて当該案内分岐点に対する車両通行帯境界線を含む道路標示を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する経路案内部とを備える経路案内システム。」

(相違点)
(相違点1)道路を描画するための地図データに関して、本願発明1においては「地図ポリゴンデータ」を格納するのに対し、引用発明1においては、「地図データ」を格納する点(以下、「相違点1」という)。

(相違点2)「道路に関する特定の情報を格納するデータベース」に関して、本願発明1においては「車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベース」を備えるのに対し、引用発明1においては、「道路リンクにおける中央線の有無、側壁・路肩の有無、車線数、横断歩道の有無等、交差点ノードにおけるロータリーの有無、右折車誘導用標示の有無、優先道路の有無等の、特定情報を格納する地図データ格納部2,12」を備える点(以下、「相違点2」という。)。

(相違点3)「前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内分岐点を特定し、前記地図データ、道路ネットワークデータおよび前記道路に関する特定の情報に基づいて、経路を含む地図に対して前記車両通行帯境界線を描ける程度に前記案内分岐点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記道路に関する特定の情報に基づいて前記案内分岐点の形状に応じて当該案内分岐点に対する車両通行帯境界線を含む道路標示を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する経路案内部」に関して、本願発明1においては「前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき案内分岐点を特定し、前記地図ポリゴンデータ、道路ネットワークデータおよび前記道路標示規定データに基づいて、経路を含む地図に対して前記車両通行帯境界線を描ける程度に前記案内分岐点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記道路標示規定データに基づいて前記案内分岐点の形状に応じて当該案内分岐点に対する車両通行帯境界線を含む道路標示を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する経路案内部」であるのに対し、引用発明1においては、「前記探索された経路について、経路案内の対象とすべき交差点を特定し、前記地図データ、道路ネットワーク情報および前記特定情報に基づいて中央線等を描くためのデータを動的に生成して、経路を含む地図に対して前記中央線等を描ける程度に前記交差点を拡大した拡大図を生成し、該拡大図内には前記特定情報に基づいて前記交差点の形状に応じて当該交差点に対する中央線等を含む交差点形状を動的に描画し、該拡大図を表示して前記経路を案内する交差点形状生成部及び経路探索部」である点(以下、「相違点3」という。)。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、「道路に関する特定の情報を格納するデータベース」として、相違点2に係る本願発明1の「車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベース」を備える点は、上記引用文献1ないし3には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用発明2、引用文献3記載の技術及び周知技術1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6も、本願発明1における「車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベース」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、引用文献3記載の技術及び周知技術1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7について
本願発明7は、本願発明1のカテゴリを変更したものであるが、本願発明1における「車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベース」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、引用文献3記載の技術及び周知技術1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明8について
本願発明7及び8は、本願発明1の対象を変更したものであるが、本願発明1における「車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベース」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、引用文献3記載の技術及び周知技術1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年3月31日付けの補正により、補正後の請求項1ないし8は、「車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベース」という技術的事項を有するものとなった。当該「車両通行帯境界線に関する車線幅、線幅、破線の場合の線長を含み、さらに導流帯内白線幅、導流帯内白線間距離、停止線幅、横断歩道・停止線間距離、停止線前斜線変更禁止線、横断歩道線幅、横断歩道線間隔、進行方向矢印位置の少なくとも一部を含む道路標示の形状および位置を、法規に基づく共通のパラメータとして規定する道路標示規定データを格納する道路標示規定データベース」は、原査定における引用文献AないしCには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1ないし8は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしCに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2012-50030(P2012-50030)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
三島木 英宏
発明の名称 経路案内システム  
代理人 加藤 光宏  

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