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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1329595 |
審判番号 | 不服2016-12583 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-22 |
確定日 | 2017-06-22 |
事件の表示 | 特願2015-7457号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月25日出願公開、特開2016-131667号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯の概要 本願は、平成27年1月19日の出願であって、同年12月4日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年2月4日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年5月16日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年5月24日)、これに対し、同年8月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、同年12月12日に上申書が提出されたものである。 第2 平成28年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 平成28年8月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正により、平成28年2月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における 「遊技の展開に応じて実行される演出に用いられる複数の演出装置と、 遊技者が遊技中に設定操作不可能な設定手段と、 前記設定手段に対する設定操作に応じて、前記複数の演出装置に対して特殊な制御を行うことが可能な特殊モードを実行させる特殊モード実行手段と、 前記設定手段とは異なる、遊技者が操作可能な操作手段と、を備え、 前記特殊モードは、前記複数の演出装置の内、1以上の演出装置について動作確認処理を実行させることが可能なモードであって、前記動作確認処理において、前記動作確認処理の対象となる演出装置が所定態様で動作せしめられ、 前記特殊モードにおいて、前記操作手段への入力操作に基づき、前記動作確認処理の対象となる演出装置が前記複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して前記動作確認処理が実行される ことを特徴とする遊技機。」は、 審判請求時に提出された手続補正書(平成28年8月22日付け)における 「A 遊技の展開に応じて実行される演出に用いられる複数の演出装置と、 B 遊技者が遊技中に設定操作不可能な設定手段と、 C 前記設定手段に対する設定操作に応じて、前記複数の演出装置の内、1以上の演出装置について動作確認処理を実行させることが可能な特殊モードを実行させる特殊モード実行手段と、 D 前記設定手段とは異なる、遊技者が操作可能な操作手段と、を備え、 E 前記動作確認処理において、前記動作確認処理の対象となる演出装置が所定態様で動作せしめられ、 F 前記特殊モードにおいて、前記操作手段への入力操作に基づき、前記動作確認処理の対象となる演出装置が前記複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して前記動作確認処理が実行される ことを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、A?Fは、当審にて分説して付与した。)。 2 補正の適否 審判請求時の補正によって、請求項1の記載に関して、上記1のように補正された。 そして、上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「特殊モード実行手段」に関して、「複数の演出装置に対して特殊な制御を行うことが可能な特殊モード」とあったものを、「複数の演出装置の内、1以上の演出装置について動作確認処理を実行させることが可能な特殊モード」と限定するものであって、かつ、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項により規定される要件を満たすものである。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明は、平成28年8月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-198992号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、遊技の状態を示す遊技情報を記憶し、電源がOFFされたのちも遊技情報を保持すると共に、初期化スイッチが操作されると、この記憶内容の初期化を行う遊技機に関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、遊技機の1つであるパチンコ遊技機には、一般的に、当該パチンコ遊技機における遊技の状態を示す遊技情報を記憶するためのRAMが搭載されている。尚、このRAMは、バックアップ電源に接続されており、停電やその他の異常の発生により、当該パチンコ遊技機の電源がOFFされても、記憶している遊技情報を保持できるように設定されている(例えば、特許文献1を参照。)。 【0003】 そして、パチンコ遊技機は、遊技を実行しながら、このRAMに遊技情報を逐次記憶すると共に、再度電源が投入された際には、このRAMから遊技情報を読み込んで、電源がOFFされる直前の遊技状態に復帰するように設定されている。 【0004】 尚、パチンコ遊技機には、RAMの記憶内容を初期化するための初期化スイッチが具備されており、パチンコ遊技機は、電源投入時にこの初期化スイッチが操作されると、RAMの記憶内容を初期化する。又、これと共に、パチンコ遊技機は、当該パチンコ遊技機に設けられた全てのランプをそれぞれ同時もしくは順番に点灯したり、初期化した旨をスピーカから音声出力することで、RAMの記憶内容を初期化した旨を外部に報知する。 【0005】 ところで、上述したように、パチンコ遊技機では、電源投入時に初期化スイッチを操作することにより、ランプやスピーカの作動状態を確認できるものの、それ以外の部分(例えば、電動役物など)の作動状態を確認するには、実際に遊技を行ってみるしか方法がなかった。このため、不具合の発生時にその原因箇所を特定するには、遊技の状態から原因箇所を推測するしか方法がなく、原因箇所を正確に特定するのに、経験を要するという問題点があった。 【0006】 そこで、これを解決するために、パチンコ遊技機の各部を個別に作動させる動作確認用主基板を、遊技を制御する主基板と入れ替えることにより、各部を個別に作動させて各部の作動状態を確認することが提案されている(特許文献2を参照。)。 【0007】 又、切替スイッチによって、遊技を制御する遊技制御モードと、パチンコ遊技機の各部を個別に作動させる動作確認モードとに選択的に移行できるように遊技を制御する主基板を構成し、必要に応じて、この主基板を動作確認モードに移行させて、各部の作動状態を確認することも提案されている(同じく特許文献2を参照。)。 【0008】 これらの提案によれば、パチンコ遊技機の各部の作動状態を個別に確認できるため、経験を要することなく不具合の原因箇所を正確に特定できるのである。 【特許文献1】特開2003-205161号公報(段落[0009]?[0081]、図4?図6) 【特許文献2】特開2002-113159号公報(段落[0021]?[0175]、図2,図13,図15,図17)」 イ 「【0029】 図1に示すように、パチンコ機1は、当該パチンコ機1の筐体である外枠3と、この外枠3に開閉自在に取り付けられた内枠5とを備える。 そして、内枠5には、遊技を演出するために点灯させる3つの内枠ランプ7と、遊技者に遊技を提供する遊技盤9と、遊技者が遊技盤9上への遊技球の発射操作を行うためのハンドル11と、遊技盤9における遊技の結果として当該パチンコ機1から賞品として払い出される遊技球(賞球)を貯留する上受け皿13と、上受け皿13が遊技球を貯留しきれなくなるなどして、上受け皿13から排出される遊技球を受ける下受け皿15とが設けられている。 ・・・ 【0032】 更に、遊技盤9上には、7セグメントLEDからなり、1桁の数字(本実施形態では0?9)からなる普通図柄(図示せず)を変動表示する普通図柄表示装置25と、普通図柄の変動表示が保留されていることを遊技者に示す4つの普通図柄保留ランプ27と、遊技を演出するために点灯させる1対の遊技盤ランプ29と、遊技球の通過を検知する1対の始動ゲート31とが設けられている。 ・・・ 【0036】 又、主基板33には、上受け皿13への賞球の払出を行う払出装置37を制御する賞球制御基板35と、パチンコ機1に設置されたスピーカ41を介して声や効果音、音楽などの音声を出力する音声制御基板39とが接続されている。尚、賞球制御基板35には、MPU33aと同様に構成されたMPU(図示せず)が搭載されている。」 ウ 「【0039】 ここで、パチンコ機1の制御系統は、遊技中に停電やその他の異常が発生し、パチンコ機1の電源がOFFされても遊技者が不利益を被ることがないように設定されている。即ち、電源基板47は、電気二重層コンデンサ(図示せず)を搭載し、パチンコ機1の電源がOFFされたのちもMPU33aの内蔵RAMや賞球制御基板35のMPUの内蔵RAMに直流電力を20時間以上供給するように設定されている。そして、MPU33aは、遊技の状態を示す遊技情報などを当該MPU33aの内蔵RAMに逐次記憶し、又、賞球制御基板35のMPUは、払い出すべき賞球の数などを当該MPUの内蔵RAMに逐次記憶するように設定されている。尚、MPU33aの内蔵RAMの記憶内容や賞球制御基板35のMPUの内蔵RAMの記憶内容を必要に応じて初期化できるように、電源基板47には、これら内蔵RAMの記憶内容を初期化するための押しボタンスイッチであるクリアSW47aが設けられている。」 エ 「【0041】 ここで、図3は、MPU33aが実行する電源投入時処理の流れを示すフローチャートである。尚、本処理は、電源投入時や停電復帰時に起動される。 図3に示すように、本処理が起動されると、MPU33aは、まず、当該MPU33aの内蔵レジスタに設定すべき情報を当該MPU33aの内蔵RAMに確保したスタック領域から取得して当該MPU33aの内蔵レジスタに設定する(S10)。そして、クリアSW47aが押下されていることを示すクリア信号が有効であるか否かを判定する(S15)。尚、この際、MPU33aは、クリア信号が入力されたままの状態が一定時間(本実施形態では、1秒間)以上維持された場合に、クリア信号が有効であると判定する。 ・・・ 【0049】 一方、S15にて、クリア信号が有効である場合には(Yes:S15)、MPU33aは、クリア信号の入力時間を内蔵CTCで一定時間(本実施形態では10秒間)カウントしながら、そのカウント値をクリアSW47aの押下時間として報知する(S60)。尚、この際、MPU33aは、図柄制御基板45にクリアSW47aの押下時間をディスプレイ17に文字表示させると共に(図5(b)参照。)、音声制御基板39にクリアSW47aの押下時間を音声出力させることで、クリアSW47aの押下時間を報知する。 【0050】 そして、一定時間が経過すると、押下時間が予め指定された第1指定時間(本実施形態では2秒間)以上であったか否かを判定し(S65)、押下時間が第1指定時間未満であった場合には(No:S65)、本処理を上述のS40に移行させ、内蔵RAMの初期化を行う。 【0051】 一方、押下時間が第1指定時間以上であった場合には(Yes:S65)、パチンコ機1の各部の作動状態を確認するために予め設定された動作確認処理を開始する。 ここで、図4は、MPU33aが実行する動作確認処理の流れを示すフローチャートである。」 オ 「【0052】 図4に示すように、動作確認処理が開始されると、MPU33aは、まず、クリアSW47aの押下時間が予め指定された第2指定時間(本実施形態では、3秒間)以上であったか否かを判定する(S100)。そして、第2指定時間未満であった場合には(No:S100)、内枠ランプ7や遊技盤ランプ29、特別図柄保留ランプ19、普通図柄保留ランプ27の点灯状態を確認する点灯確認処理をパチンコ機1の電源がOFFされるまで繰り返し実行する(S105)。尚、この点灯確認処理では、MPU33aは、図柄制御基板45に点灯確認処理を実行する旨をディスプレイ17に文字表示させると共に(図5(c)参照。)、音声制御基板39に点灯確認処理を実行する旨を音声出力させて、点灯確認処理を実行する旨を報知する。そして、ランプ制御基板43に内枠ランプ7や遊技盤ランプ29、特別図柄保留ランプ19、普通図柄保留ランプ27などを個別に点灯させる。 【0053】 一方、S100にて、クリアSW47aの押下時間が第2設定時間以上であった場合には(Yes:S100)、MPU33aは、クリアSW47aの押下時間が予め指定された第3指定時間(本実施形態では、4秒間)以上であったか否かを判定する(S110)。そして、第3指定時間未満であった場合には(No:S110)、音声制御基板39及びスピーカ41の作動状態を確認する音声確認処理をパチンコ機1の電源がOFFされるまで繰り返し実行する(S115)。尚、この音声確認処理では、MPU33aは、図柄制御基板45に音声確認処理を実行する旨をディスプレイ17に文字表示させると共に(図5(d)参照。)、音声制御基板39に音声確認処理を実行する旨を音声出力させて、音声確認処理を実行する旨を報知する。そして、音声制御基板39に設定された全ての音声をスピーカ41から順次出力させる。」 カ 「【0061】 又、本実施形態のパチンコ機1では、点灯確認処理を動作確認処理の1つとしているため、内枠ランプ7や遊技盤ランプ29、特別図柄保留ランプ19、普通図柄保留ランプ27が正常に点灯するか否かを確認することができる。 【0062】 又、本実施形態のパチンコ機1では、音声確認処理を動作確認処理の1つとしているため、音声制御基板39やスピーカ41が正常に作動するか否かを確認することができる。 又、本実施形態のパチンコ機1では、検知確認処理を動作確認処理の1つとしているため、ゲートセンサ31aや始動口センサ21b、特定領域センサ23b、カウントセンサ23cが正常に作動するか否かを確認することができる。 ・・・ 【0066】 又、本実施形態では、MPU33aが実行する電源投入時処理のS40が本発明の初期化処理手段に相当し、MPU33aが実行する動作確認処理(S100?S160)が本発明の設定処理手段に相当する。」 キ 「【0071】 例えば、上記実施形態では、MPU33aは、クリアSW47aの押下時間によって動作確認処理にて実行する処理の内容を切り替えるように設定されていたが、押下回数に応じて切り替えるように設定されても良い。そして、この場合、押下回数を報知するようにMPU33aを設定すると良い。」 上記記載事項ア?キより、以下の事項が導かれる。 ク 上記エの【0041】には、「図3は、MPU33aが実行する電源投入時処理の流れを示すフローチャートである。」ことが記載されている。 そして、上記エの【0049】には、「尚、この際、MPU33aは、図柄制御基板45にクリアSW47aの押下時間をディスプレイ17に文字表示させると共に(図5(b)参照。)、音声制御基板39にクリアSW47aの押下時間を音声出力させることで、クリアSW47aの押下時間を報知する。」ことが記載されている。 また、上記エの【0051】には、「一方、押下時間が第1指定時間以上であった場合には(Yes:S65)、パチンコ機1の各部の作動状態を確認するために予め設定された動作確認処理を開始する。」ことが記載されている。 さらに、【図3】には、電源投入時処理において、動作確認処理が開始されることが図示されている。 これらの記載内容、及び、図示内容からみて、刊行物1には、MPU33aが、電源投入時処理において、クリアSW47aの押下時間が第1指定時間以上であった場合に、各部の作動状態を確認するために予め設定された動作確認処理を開始することが記載されていると認められる。 ケ 上記カの【0061】には、「本実施形態のパチンコ機1では、点灯確認処理を動作確認処理の1つとしているため、内枠ランプ7や遊技盤ランプ29、特別図柄保留ランプ19、普通図柄保留ランプ27が正常に点灯するか否かを確認することができる。」ことが記載されている。 また、上記カの【0062】には、「本実施形態のパチンコ機1では、音声確認処理を動作確認処理の1つとしているため、音声制御基板39やスピーカ41が正常に作動するか否かを確認することができる。」ことが記載されている。 さらに、動作確認処理をMPU33aが実行することは、上記クにおいて検討したとおりである。 これらの記載内容からみて、刊行物1には、MPU33aが、動作確認処理の1つとして、内枠ランプ7や遊技盤ランプ29が正常に点灯するか否かを確認する点灯確認処理や、スピーカ41が正常に作動するか否かを確認する音声確認処理を実行可能とすることが記載されている。 コ 上記ア?キの記載事項、及び、上記ク、ケの認定事項を総合すると、刊行物1には次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?fは、本件補正発明のA?Fに対応させて付与した。)。 「a 遊技を演出するために点灯させる、3つの内枠ランプ7、1対の遊技盤ランプ29(【0029】、【0032】)と、声や効果音、音楽などの音声を出力するスピーカ41(【0036】)と、 b 電源基板47に設けられている押しボタンスイッチであるクリアSW47a(【0039】)と、 c 電源投入時処理において、クリアSW47aの押下時間が第1指定時間以上であった場合に、各部の作動状態を確認するために予め設定された動作確認処理を開始するMPU33aと(認定事項ク)、 e MPU33aは、動作確認処理の1つとして、内枠ランプ7や遊技盤ランプ29が正常に点灯するか否かを確認する点灯確認処理や、スピーカ41が正常に作動するか否かを確認する音声確認処理を実行可能と(認定事項ケ)し、 f MPU33aは、動作確認処理において、クリアSW47aの押下時間によって、実行する処理の内容を切り替えるように設定されている(【0071】) 遊技機(【0001】)。」 (2)対比 本件補正発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。 (a)刊行物発明における構成aの「音声を出力するスピーカ41」は、「3つの内枠ランプ7、1対の遊技盤ランプ29」が「遊技を演出するため」のものであるのと同様に、遊技を演出するための音声を出力可能であることは明らかである。 したがって、刊行物発明における構成aの「遊技を演出するために点灯させる、3つの内枠ランプ7、1対の遊技盤ランプ29と、声や効果音、音楽などの音声を出力するスピーカ41」は、本件補正発明における構成Aの「遊技の展開に応じて実行される演出に用いられる複数の演出装置」に相当する。 (b)刊行物発明における構成bの「クリアSW47a」は、「電源基板47に設けられている」ことから、扉等を開放した状態で店員によって操作されるものであって、遊技者によって遊技中に操作されないことは明らかである。 したがって、刊行物発明における構成bの「電源基板47に設けられている押しボタンスイッチであるクリアSW47a」は、本件補正発明における構成Bの「遊技者が遊技中に設定操作不可能な設定手段」に相当する。 (c)刊行物発明における「クリアSW47a」が、本件補正発明における「設定手段」に相当することは、上記bに示したとおりであるから、刊行物発明における構成cの「クリアSW47a」を「第1指定時間以上」押下操作することは、本件補正発明における構成Cの「設定手段に対する設定操作」に相当する。 そして、刊行物発明における構成cの「各部の作動状態を確認するために予め設定された動作確認処理を開始」可能なことは、複数の演出装置としての、内枠ランプ7、遊技盤ランプ29、スピーカ41等を対象とした動作確認処理を実行することであるから、本件補正発明における構成Cの「複数の演出装置の内、1以上の演出装置について動作確認処理を実行させることが可能な」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成cの「MPU33a」は、本件補正発明における構成Cの「特殊モード実行手段」としての機能を有する。 (e)刊行物発明における構成eの「内枠ランプ7や遊技盤ランプ29」、「スピーカ41」は、それぞれ、動作確認処理の対象となる演出装置であることから、本件補正発明における構成Eの「動作確認処理の対象となる演出装置」に相当する。 そして、刊行物発明における構成eの「内枠ランプ7や遊技盤ランプ29」を「点灯」させること、「スピーカ41」を「作動」させることは、本件補正発明における構成Eの「演出装置が所定態様で動作せしめられ」ることに相当する。 したがって、刊行物発明における構成eの「動作確認処理の1つとして、内枠ランプ7や遊技盤ランプ29が正常に点灯するか否かを確認する点灯確認処理や、スピーカ41が正常に作動するか否かを確認する音声確認処理を実行可能と」することは、本件補正発明における構成Eの「動作確認処理において、動作確認処理の対象となる演出装置が所定態様で動作せしめられ」ることに相当する。 (f)刊行物発明における構成fの「クリアSW47aの押下時間によ」ることと、本件補正発明における構成Fの「前記操作手段への入力操作に基づ」くこととは、前者における「クリアSW47a」が、店員によって操作されるものであるのに対して、後者における「前記操作手段」が遊技者によって操作可能とされる点で異なるから、両者は、「入力操作に基づ」くことで共通する。 そして、刊行物発明における構成fの「動作確認処理において、」「実行する処理の内容を切り替えるように設定されて」いることは、動作確認処理において、「点灯確認処理」、「音声確認処理」等のうちから特定された確認処理を切り替えて実行することであるから、本件補正発明における構成Fの「動作確認処理の対象となる演出装置が複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して動作確認処理が実行される」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成fと、本件補正発明における構成Fとは、「特殊モードにおいて、入力操作に基づき、動作確認処理の対象となる演出装置が複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して動作確認処理が実行される」ことで共通する。 (g)上記(a)?(f)によれば、本件補正発明と刊行物発明とは、 「A 遊技の展開に応じて実行される演出に用いられる複数の演出装置と、 B 遊技者が遊技中に設定操作不可能な設定手段と、 C 前記設定手段に対する設定操作に応じて、前記複数の演出装置の内、1以上の演出装置について動作確認処理を実行させることが可能な特殊モードを実行させる特殊モード実行手段と、 E 前記動作確認処理において、前記動作確認処理の対象となる演出装置が所定態様で動作せしめられ、 F’前記特殊モードにおいて、入力操作に基づき、前記動作確認処理の対象となる演出装置が前記複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して前記動作確認処理が実行される ことを特徴とする遊技機。」 の点で一致し、構成D、Fに関して次の点で相違する。 [相違点] 本件補正発明は、設定手段とは異なる、遊技者が操作可能な操作手段を備え、当該操作手段への入力操作に基づき、動作確認処理の対象となる演出装置が複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して動作確認処理が実行されるのに対して、刊行物発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。 (3)当審の判断 ア 相違点について 上記相違点について検討する。 刊行物発明は、設定手段(「クリアSW47a」)に対する設定操作に応じて、動作確認処理を開始させると共に、同じく、設定手段(「クリアSW47a」)の押下時間に基づいて、動作確認処理の対象となる演出装置を特定することを含め、動作確認処理を具体的に実行するものであり、設定手段に、「動作確認処理」を開始させる機能と、「動作確認処理」を具体的に実行する機能とを兼用させるものである。 ところで、刊行物1には、背景技術として、「切替スイッチによって、遊技を制御する遊技制御モードと、パチンコ遊技機の各部を個別に作動させる動作確認モードとに選択的に移行できるように遊技を制御する主基板を構成し、必要に応じて、この主基板を動作確認モードに移行させて、各部の作動状態を確認すること」のできるパチンコ遊技機が従来より存在していたことが示されている。 ここで、刊行物発明(「前者」という。)のように、1つの操作手段に、動作確認処理を開始させる機能と、具体的な動作確認処理を実行させる機能を併せて付与することと、刊行物1の背景技術に示された事項(「後者」という。)のように、1つの操作手段(「切替スイッチ」)に動作確認処理を実行させる機能を単独で付与することの意義について検討する。 一般に、前者の場合、操作手段の構成は単純化されるメリットがあるが、操作手段に対する操作内容が複雑になるデメリットがあり、後者の場合、操作手段の構成は複雑化されるデメリットがあるが、操作手段に対する操作内容は単純になるメリットがある。 そして、操作手段の態様として、前者と後者のうち、いずれの態様を採用するのかは、操作手段の構成、操作内容を勘案して、当業者が適宜選択できるものである。 さらに、操作手段に関し、一般に、複数の操作手段に、それぞれ、異なる機能を割り振ることも、1つの操作手段に異なる複数の機能を兼用させることも、従来から普通に行われていたことである。 そして、遊技機の技術分野において、動作確認処理の対象となる演出装置に対する動作確認処理を、遊技者が操作可能な操作手段への店員による入力操作に基づいて実行することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2013-252190号公報の【0018】、【0236】、【図39】(a)には、遊技者が操作可能な押しボタンユニット25を店員が操作することに基づいて遊技店設定情報が設定されること、設定された音量レベルのサンプル音をスピーカ19a、19bから出力することが記載され、また、上記特開2014-113358号の【0013】、【0249】、【図42】(a)にも、同様の記載があり、さらに、特許第5648761号の【0013】、【0114】、【0308】、【0309】には、遊技者が操作可能なチャンスボタン136を店員が操作することにより、第一の可動体の初期動作確認を行うことが記載されている。) これらのことからみて、刊行物発明に上記周知の技術事項を適用して、電源投入時処理において「クリアSW47a」が有する複数の異なる機能を分け、動作確認処理を開始する機能を「クリアSW47a」に付与し、動作確認処理を具体的に実行する機能を「クリアSW47a」とは異なる遊技者が操作可能な操作手段に割り振り、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 イ 請求人の主張について 請求人は、平成28年12月12日付けの上申書において、「(2-1)本願請求項1に「遊技者が操作可能な操作手段」、「前記動作確認処理において、前記動作確認処理の対象となる演出装置が所定態様で動作せしめられ」、「前記操作手段への入力操作に基づき、前記動作確認処理の対象となる演出装置が前記複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して前記動作確認処理が実行される」と記載されているように、本願請求項1において“動作確認処理”は演出装置を“動作”させるものであって、当該“動作”は、遊技者の操作手段への入力操作に基づいて実行されます。 (2-2)この点に関し、審査においては、引用文献2に記載されているような、遊技者が操作可能な操作手段を用いた設定情報の変更処理が挙げられています(拒絶査定の備考欄参照)。しかしながら、引用文献2において、設定情報の変更処理を行っても演出装置は“動作”しません。当該設定情報における変更の対象は、例えば音量やバックライト輝度であり(引用文献2の[0225])、設定情報を変更するべく操作手段を操作しても、新たな音量設定値やバックライト輝度値が遊技機内のメモリに書き込まれるだけかと推測されます。このため、引用文献1及び2を組み合わせても、本願請求項1の「前記特殊モードにおいて、前記操作手段への入力操作に基づき、前記動作確認処理の対象となる演出装置が前記複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して前記動作確認処理が実行される」が実現されることはありません。」(第1頁第8?24行)と主張する。 そこで、請求人の上記主張について検討する。 請求人が主張する引用文献2(上記特開2013-252190号公報。原査定において提示された刊行物2に相当する。)には、上記アにおいて検討したように、遊技者が操作可能な押しボタンユニット25を店員が操作することに基づいて遊技店設定情報が設定されること、及び、設定された音量レベルのサンプル音をスピーカ19a、19bから出力することが記載されている。 ここで、「設定された音量レベルのサンプル音を」出力することが、音量レベルが適切に設定されたか否かの確認を通して、スピーカ19a、19bの動作確認を行うことに相当することは当業者にとって明らかである。 よって、請求人の「引用文献2において、設定情報の変更処理を行っても演出装置は“動作”しません。」なる主張は誤りであって、当該主張を前提とした請求人の上記主張を採用することはできない。 ウ 効果 上記ア、イにおいて検討したことからみて、本件補正発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明、及び周知の技術事項から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別のものではない。 エ 小括 上記ア?ウにおいて検討したように、本件補正発明は、当業者が刊行物発明、及び、周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 4 むすび 上記3において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年2月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「遊技の展開に応じて実行される演出に用いられる複数の演出装置と、 遊技者が遊技中に設定操作不可能な設定手段と、 前記設定手段に対する設定操作に応じて、前記複数の演出装置に対して特殊な制御を行うことが可能な特殊モードを実行させる特殊モード実行手段と、 前記設定手段とは異なる、遊技者が操作可能な操作手段と、を備え、 前記特殊モードは、前記複数の演出装置の内、1以上の演出装置について動作確認処理を実行させることが可能なモードであって、前記動作確認処理において、前記動作確認処理の対象となる演出装置が所定態様で動作せしめられ、 前記特殊モードにおいて、前記操作手段への入力操作に基づき、前記動作確認処理の対象となる演出装置が前記複数の演出装置の中から特定されるとともに当該対象に対して前記動作確認処理が実行される ことを特徴とする遊技機。」 2 刊行物 刊行物1の記載事項、刊行物発明は、前記「第2 3(1)刊行物」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明から、 「特殊モード実行手段」について、「複数の演出装置の内、1以上の演出装置について動作確認処理を実行させることが可能な特殊モード」とあったものを、「複数の演出装置に対して特殊な制御を行うことが可能な特殊モード」とその限定を省いたものである。 そして、補正により限定された点は、いずれも刊行物1に開示されている技術事項であり、本願発明と刊行物発明を対比すると、前述の相違点において両者は相違し、残余の点で一致する。 ところで、遊技者が操作可能な操作手段によって遊技機の設定を変更することは、本願出願前周知(例えば、上記特開2013-252190号公報には、遊技店設定情報変更有効期間中に、遊技者が操作可能な押しボタンユニット25で遊技店設定情報の設定値を変更することができる旨が記載されている(【0223】?【0232】等))である。 そして、設定手段としてどのような操作手段を割り当てるかは所望する設定方法等に応じて当業者が適宜決定し得るものであるから、刊行物発明において、動作確認処理中の操作手段として上記周知技術を採用し、電源投入時処理において「クリアSW47a」が有する複数の異なる機能を分け、動作確認処理を開始する機能を「クリアSW47a」に付与し、動作確認処理を具体的に実行する機能を「クリアSW47a」とは異なる遊技者が操作可能な操作手段に割り振り、上記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得たものである。 そうすると、前記「第2 3独立特許要件について」で検討したとおり、本件補正発明と同様、本願発明も、刊行物発明、及び、前記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-04-17 |
結審通知日 | 2017-04-18 |
審決日 | 2017-05-08 |
出願番号 | 特願2015-7457(P2015-7457) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 英司 |
特許庁審判長 |
長井 真一 |
特許庁審判官 |
瀬津 太朗 長崎 洋一 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人 佐野特許事務所 |