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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1329604
審判番号 不服2016-13661  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-12 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2013-532702「太陽光発電装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月12日国際公開、WO2012/046936、平成25年10月17日国内公表、特表2013-539243、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年(2011年)4月27日(パリ条約による優先権主張 2010年10月5日、韓国)の出願であって、平成26年5月1日付けで手続補正がされ、同年11月20日付け(発送同年12月2日)で拒絶理由通知がされ、平成27年3月2日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出され、同年8月14日付け(発送同年同月25日)で拒絶理由通知(最後)がされ、同年11月25日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、平成28年4月27日付け(送達同年5月10日)で前記平成27年11月25日付け手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年9月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされた後、当審において、平成29年2月14日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成29年5月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び2は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
基板上に、絶縁体であってシリコンオキサイドを含む複数個のセパレーターを形成させるステップと、
前記セパレーターにより区切られた基板上の一方の領域に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1裏面電極を、前記セパレーターにより区切られた基板上の他方の領域に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2裏面電極を、それぞれ形成させるステップと、
前記第1裏面電極の上に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1光吸収部を、前記第2裏面電極の上に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2光吸収部を、それぞれ形成させるステップと、
前記セパレーターの上面と、前記第1光吸収部及び前記第2光吸収部の上面とが実質的に同一平面に配置されるように、前記セパレーターの上部を切断するステップと、を含み、
前記セパレーターの上面の粗さは、前記セパレーターの側面の粗さより大きく、
前記セパレーターは、幅が10μm?200μmであって、
前記裏面電極はモリブデンを含むことを特徴とする、太陽光発電装置の製造方法。
【請求項2】
前記光吸収部の上に複数個のウィンドウを配置するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電装置の製造方法。」

第3 刊行物の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-98065号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0016】
図1に示すように、集積型光発電素子I0の絶縁部15は、少なくとも裏面電極層11を絶縁分離することが可能な程度の高さ及び幅を有している。本実施の形態では、絶縁部15は、裏面電極層11と発電層12とを絶縁分離し、さらに透明電極層13の一部に達する程度の高さを有している。
絶縁部15の高さ及び幅は特に限定されないが、本実施の形態では、絶縁部15の高さは、通常、1μm?20μm、好ましくは8μm?12μmである。また、絶縁部15の幅は、通常、30μm?120μm、好ましくは40μm?60μmである。絶縁部15の高さ及び幅が過度に小さいと、裏面電極層11と発電層12が絶縁分離しない傾向がある。また、過度に大きいと、導電部14による裏面電極層11と透明電極層13との電気抵抗が増加する傾向がある。
また、絶縁部15の形状は、少なくとも裏面電極層11を絶縁分離することが可能な程度の形状を有していれば特に限定されない。図1に示すように、本実施の形態では、絶縁部15は断面形状が台形を有する凸形状となるように形成されている。この場合、裏面電極層11と発電層12と透明電極層13とは、基板10上に凸形状の絶縁部15が形成された部分で段差を生じるように分割されていると言える。
【0017】
次に、集積型光発電素子I0の構成要素について説明する。
基板10を構成する材料としては、例えば、ステンレス等の金属フィルム、有機フィルム、ガラス等が挙げられる。基板10の大きさは特に限定されないが、本実施の形態では縦×横が10cm×10cmであり、厚さは、0.5mmである。
裏面電極層11を構成する材料としては、金属が好ましく、例えば、Mo、Ti、Cr、Al、Ag、Au、CuおよびPtから選択された少なくとも1つの金属またはこれらの合金が挙げられる。裏面電極層11は、本実施の形態では厚さ0.3μm程度の金属薄膜である。裏面電極層11は、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition)等によって基板10上に成膜される。」

イ 「【0022】
絶縁部15を構成する材料は、少なくとも裏面電極層11を絶縁分離することが可能な材料であれば特に限定されない。本実施の形態では、後述するように、絶縁部15は基板10上に絶縁性ペーストを塗布することにより形成される。
ここで絶縁性ペーストとしては、例えば、ガラス粉末と紫外線硬化樹脂等の有機バインダと溶剤を加えてなるガラスペースト;セラミック粉末と有機バインダと溶剤を加えてなるセラミックペースト等が挙げられる。
【0023】
ガラスペーストにおけるガラス粉末としては、例えば、SiO_(2)-BaO-Al_(2)O_(3)系、SiO_(2)-B_(2)O_(3)系、SiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al2O_(3)系、SiO_(2)-Al_(2)O_(3)-アルカリ金属酸化物系、さらにはこれらの系にアルカリ金属酸化物、ZnO、PbO、Pb、ZrO_(2)、TiO_(2)等を配合した組成物が挙げられる。さらに、Bi_(2)O_(3)、SiO_(2)、B_(2)O_(3)、ZrO_(2)、Al_(2)O_(3)、ZnO、TiO_(2)、及びCaO、MgO、SrO、BaO等が所定の組成比で混合されたビスマス系無鉛ガラス等が挙げられる。」

ウ 「【0025】
次に、集積型光発電素子の製造方法について説明する。
図2は、集積型光発電素子I0の製造方法の実施形態を説明する図である。図1と同じ構成については同じ符号を用い、その説明を省略する。
先ず、図2(a)に示すように、前述した材料からなる基板10を用意する。次に、図2(b)に示すように、基板10上に所定の間隔を設けて絶縁性ペーストを塗布し、複数の絶縁部15を形成する(第1のペースト塗布工程)。
絶縁性ペーストを塗布する方法は特に限定されないが、本実施の形態ではスクリーン印刷法を採用している。基板10上に塗布された絶縁性ペーストを硬化させる条件は特に限定されないが、本実施の形態では、500℃、10分間である。
【0026】
次に、図2(c)に示すように、複数の絶縁部15が形成された基板10上に絶縁部15により絶縁分離されるように複数の裏面電極層11を成膜し(裏面電極層成膜工程)、成膜された裏面電極層11上に発電層12を成膜し(発電層成膜工程)、成膜された発電層12上に透明電極層13を成膜する(透明電極層成膜工程)。本実施の形態では、裏面電極層11と発電層12と透明電極層13とは、スパッタリングにより基板10上に連続的に一貫成膜される。
尚、図2(c)に示すように、本実施の形態では、各絶縁部15の上に成膜操作により成膜された裏面電極層11と発電層12と透明電極層13を構成する材料からなる薄膜積層体が形成されている。・・・
【0028】
続いて、図2(d)に示すように、連続的に成膜された発電層12と透明電極層13の一部をパターニングにより除去し、発電層12と透明電極層13とを複数の分割溝16によって分割すると共に、裏面電極層11の一部を露出させる(パターニング工程)。
本実施の形態では、パターニング工程は、例えば、金属刃、カッターナイフ、金属針又はニードル等を用いて発電層12と透明電極層13との一部を短冊状に切り分けるメカニカルスクライブ法を採用している。
尚、本実施の形態では、図2(d)に示すように、分割溝16の横側に分割溝16と平行になるように第2の分割溝17を設けている。
【0029】
次に、図2(e)に示すように、前述したパターニング工程により分割された透明電極層13の表面の一部に導電性材料を含む導電性ペーストを塗布し、透明電極層13の端部及び分割された発電層12の端部を覆い、且つ前述したパターニング工程により露出した隣接する他のセルの裏面電極層11の一部と当該透明電極層13とを電気的に接続する導電部14を形成し(第2のペースト塗布工程)、導電性ペーストを硬化させることにより、直列に接続された複数の単位セル素子(Ia,Ib,Ic,Id,・・・)からなる集積型光発電素子I0を得る。」

エ 図2は次のものである。
図2


(2)上記(1)によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「基板10を用意し、次に、基板10上に所定の間隔を設けて絶縁性ペーストを塗布し、複数の絶縁部15を形成し、
次に、複数の絶縁部15が形成された基板10上に絶縁部15により絶縁分離されるように複数の裏面電極層11を成膜し、成膜された裏面電極層11上に発電層12を成膜し、成膜された発電層12上に透明電極層13を成膜し、
各絶縁部15の上に成膜操作により成膜された裏面電極層11と発電層12と透明電極層13を構成する材料からなる薄膜積層体が形成され、
続いて、連続的に成膜された発電層12と透明電極層13の一部をパターニングにより除去し、発電層12と透明電極層13とを複数の分割溝16によって分割すると共に、裏面電極層11の一部を露出させ、
次に、パターニング工程により分割された透明電極層13の表面の一部に導電性材料を含む導電性ペーストを塗布し、透明電極層13の端部及び分割された発電層12の端部を覆い、且つ前述したパターニング工程により露出した隣接する他のセルの裏面電極層11の一部と当該透明電極層13とを電気的に接続する導電部14を形成し、導電性ペーストを硬化させることにより、直列に接続された複数の単位セル素子からなる集積型光発電素子を得るものであり、
前記絶縁部15の幅は30μm?120μmであり、
前記絶縁部15を構成する材料は、ガラス粉末と紫外線硬化樹脂等の有機バインダと溶剤を加えてなるガラスペーストであって、ガラス粉末としては、SiO_(2)-BaO-Al_(2)O_(3)系、SiO_(2)-B_(2)O_(3)系、SiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al2O_(3)系、SiO_(2)-Al_(2)O_(3)-アルカリ金属酸化物系が挙げられ、
前記裏面電極層11を構成する材料としては、Moが好ましい、集積型光発電素子の製造方法。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平6-132552号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0020】本発明において、下部電極層102としては、金属層あるいは金属酸化物、または金属層と金属酸化物層の複合層が用いられる。金属層の材質としては、Ti,Cr,Mo,W,Al,Ag,Ni等が用いられる。金属酸化物層としては、ZnO,TiO_(2),SnO_(2)などが用いられる。これら金属層や金属酸化物層の形成方法としては、抵抗加熱蒸着,電子ビーム蒸着,スパッタリング法等がある。」

イ 「(実施例1)導電性基板上に集積した非晶質シリコン光起電力素子を作製する場合を図1、3を参照しつつ説明する。尚、本実施例では、導電性基板100にはステンレスフィルムからなるステンレス基板を、絶縁体層101には珪酸を主成分とするセラミック層とポリイミド層を、下部電極層102には銀と酸化亜鉛を、下部電極層102の局所に形成する導電体層103にはエポキシ系銀ペーストから形成した導電体層を、半導体層104にはp/i/n/p/i/n構成の非晶質シリコン層を、透明電極層105にはIn_(2)O_(3)-SnO_(2)(ITO)を、集電電極106には銀ペーストから形成した電極を、また照射エネルギーにはYAGレーザーを、それぞれ使用した。
【0031】次に、実施例の光起電力素子の作製手順を順次説明する。まず、洗浄した厚さ0.2mmのステンレス基板からなる導電性基板100を、トレーディング・レボルーション社製のセラミック系塗料であるコート21によりディップコーティングする。次いで、150℃で1時間処理した後、カネボウ・エヌエヌシー社製のポリイミド樹脂であるサーミッドEL-9000をスクリーン印刷により塗付し、次いで230℃で硬化させ、絶縁体層101を形成した。
【0032】次に、膜厚5000オングストロームの銀をスパッタ法により蒸着し、エポキシ系銀ペーストをスクリーン印刷で塗付し、またこれを200℃で熱処理して、導電体層103を形成した(図3(a)参照)。更に、膜厚2000オングストロームの酸化亜鉛をスパッタ法により蒸着し、またZnO/Agの一部をYAGレーザで除去して、複数個の分離した下部電極層102を形成した(図(b)参照)。更に、プラズマCDV法により、SiH_(4)とPH_(3)とH_(2)からn型a-Si層を、SiH_(4)とH_(2)からi型a-Si層を、SiH_(4)とBF_(3)とH_(2)からp型微結晶μc-Si層をそれぞれ形成し、n層膜厚150オングストローム/i層膜厚4000オングストローム/p層膜厚100オングストローム/n層膜厚100オングストローム/i層膜厚800オングストローム/p層膜厚100オングストロームの積層構成である、光電変換層104を形成した。
【0033】更に、透明電極層105として、ITO膜厚700オングストロームをO_(2)雰囲気下でIn-Snを抵抗加熱法で蒸着することによって形成した(図3(c)参照)。
【0034】またITOのエッチング剤(FeCl_(3),ポリビニルアルコール)含有ペーストのスクリーン印刷により、ITO層の一部を除去して、サブセル分離部分を形成した。そしてポリエステル系銀ペーストをスクリーン印刷機で格子状に印刷した後、125℃で熱処理をして、集電電極106を形成した(図3(d)参照)。
【0035】次いで、サブセルの直列化すべき箇所にYAGレーザー光を照射し、集電電極106と下部電極上の導電体層103電極との接合をとり、集積化した非晶質シリコン光起電力素子を得た(図3(e)参照)。
【0036】上記方法で得られた光起電力素子は、接着層にEVAを使用し、またETFE(エチレン-4フッ化エチレン共重合体)フィルムをラミネートして、表面被覆層108を形成した(図3(f)参照)。そして、サブセル13個を直列化した光起電力素子の100mmW/cm^(2)開放電圧Vocは2.2Vであり、このためこれらのサブセルは短絡することなく直列化されていることが判った。
【0037】尚、YAGレーザーはQスイッチパルスレーザーであり、周波数4KHz、平均レーザーパワーは金属電極のパターニングでは0.4ワット、集電電極と下部電極上の導電体層との接合では0.9ワットであった。走査は100mm/secの速度で行った。
【0038】また上記構成において集電電極106は、光起電力素子サブセルの幅が狭く、即ち透明電極層105の幅が狭くて透明電極層105の抵抗値が問題にならない場合には、なくても良い。但しこの場合には、直列するために接合する部分は、透明電極層105と下部電極上の導電体層103である。
(比較例)実施例1において、導電体層103のない構成の光起電力素子を作製した。そして得られたサブセル13個を直列化して光起電力素子を製造した。得られた光起電力素子の100mmW/cm^(2)開放電圧Vocは2.1Vであり、直列接続したにも拘らず、直列段数の開放電圧は得られなかった。
(実施例2)図4の構造を備えた光起電力素子を作製した。即ち、実施例1においてステンレス基板にセラミックス層を形成することなしに、ポリイミド樹脂をコーティングした。またその後、下部電極層102を分離する箇所に、顔料を含有した耐熱性樹脂からなる短絡防止用絶縁体層109をポリイミド樹脂を使用し部分的にディスペンサーで塗付した。以下は実施例1と同じ方法で光起電力素子を作製した。 こうして得られたサブセル13個を直列化して実施例2の光起電力素子を作った。得られた光起電力素子の100mmW/cm^(2)開放電圧Vocは22.9ボルトであり、短絡することなく直列化されていることが判った。」

ウ 図4は次のものである。
図4


(2)上記(1)によれば、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「洗浄した厚さ0.2mmのステンレス基板からなる導電性基板100にセラミックス層を形成することなしに、ポリイミド樹脂をコーティングし、その後、下部電極層102を分離する箇所に、顔料を含有した耐熱性樹脂からなる短絡防止用絶縁体層109をポリイミド樹脂を使用し部分的にディスペンサーで塗付し、
次に、膜厚5000オングストロームの銀をスパッタ法により蒸着し、エポキシ系銀ペーストをスクリーン印刷で塗付し、またこれを200℃で熱処理して、導電体層103を形成し、
更に、膜厚2000オングストロームの酸化亜鉛をスパッタ法により蒸着し、またZnO/Agの一部をYAGレーザで除去して、複数個の分離した下部電極層102を形成し、
更に、プラズマCDV法により、SiH_(4)とPH_(3)とH_(2)からn型a-Si層を、SiH_(4)とH_(2)からi型a-Si層を、SiH_(4)とBF_(3)とH_(2)からp型微結晶μc-Si層をそれぞれ形成し、n層膜厚150オングストローム/i層膜厚4000オングストローム/p層膜厚100オングストローム/n層膜厚100オングストローム/i層膜厚800オングストローム/p層膜厚100オングストロームの積層構成である、光電変換層104を形成し、
更に、透明電極層105として、ITO膜厚700オングストロームをO_(2)雰囲気下でIn-Snを抵抗加熱法で蒸着することによって形成し、
ITO層の一部を除去して、サブセル分離部分を形成し、ポリエステル系銀ペーストをスクリーン印刷機で格子状に印刷した後、125℃で熱処理をして、集電電極106を形成し、
次いで、サブセルの直列化すべき箇所にYAGレーザー光を照射し、集電電極106と下部電極上の導電体層103電極との接合をとり、集積化した非晶質シリコン光起電力素子を得た、
前記下部電極層102としては、金属層が用いられ、材質としては、Moが用いられる、光起電力素子の作製手順。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(米国特許出願公開第2001/0037823号明細書)には、次の事項が記載されている(訳は当審が付した。)。
「[0091] Although it is not essential to the process according to the invention, as a rule it is preferred to provide the thin film solar cell sheet with a permanent carrier. For, otherwise the thin film will be so thin that its fragility makes for difficult handling. When employed, the permanent carrier is applied over the back electrode.」
([0091]本発明では、製造工程上不可欠ではないが、パーマネントキャリアを薄膜太陽電池シートに提供することはより好ましい。なぜなら、さもなければ当該薄膜は非常に薄くてもろいため扱いが困難になる。採用される場合は、パーマネントキャリアは裏面電極の上に適用される。)

4 引用文献4について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(実願平1-61787号(実開平3-1548号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「そして、透光性基板(11)上に形成されている突部(11a)は、上記積層体の隣接間隔部に位置するようになっている。
斯る構成によれば、上記積層体の隣接間隔部に対応する部分の入射光は、突部(11a)を経てi型層(14)に入射されて有効に利用され、出力の向上が図れる。」(6頁7?13行)

イ 第2図は次のものである。


5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特表2009-532884号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0038】
[0043]その後、図4Eにおいて、フォトレジストを除去し、金属層406まで下にエッチングが行われ、導電性段差424が残る。金属層406までの下への多段階エッチングは、前の実施形態のようにこのエッチングについても行われ得る。次に、薄い(例えば、0.1μm厚)絶縁体430が適用される。これは、ポリマー膜、二酸化シリコン又は窒化シリコンのようなCVD誘電体、又は多くの他の膜のいずれでもあり得る。MOSFETプロセスにおいてゲートの側面を被覆するために用いられるスペーサプロセスと同様に、絶縁体は、ウエット又はドライエッチングプロセスを用いて最上部からエッチングされる。これにより、図4Fに示されるように、垂直の壁の上に絶縁体残渣が残り、絶縁が得られる。」

イ 「【0045】
[0050]その後、更に前の実施形態と同様に、図5Eにおいて、フォトレジストを除去し、半導体層502を通ってエッチングを行い、導電性段差524が残る。次に、薄い絶縁体530を適用する。これは、ポリマー膜、二酸化シリコン又は窒化シリコンのようなCVD誘電体、又は多くの他の膜のいずれでもあり得る。MOSFETプロセスにおいてゲートの側面を被覆するために用いられるスペーサプロセスと同様に、ウエット又はドライエッチングプロセスを用いて最上部から絶縁体をエッチングする。これにより、図5Fに示されるように、垂直壁上に絶縁体残渣530が残り、絶縁が得られる。その後、更に図5Fに示されるように、ZnOのようなTCOの0.7μm層508が堆積される。」

ウ 図4F及び図5Fは次のものである。
図4F

図5F


第4 対比・判断
1 本願発明1及び2と引用発明1の対比
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明1における「『基板10を用意し、次に、基板10上に所定の間隔を設けて絶縁性ペーストを塗布し、複数の絶縁部15を形成し』及び『前記絶縁部15を構成する材料は、ガラス粉末と紫外線硬化樹脂等の有機バインダと溶剤を加えてなるガラスペーストであって、ガラス粉末としては、SiO_(2)-BaO-Al_(2)O_(3)系、SiO_(2)-B_(2)O_(3)系、SiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al2O_(3)系、SiO_(2)-Al_(2)O_(3)-アルカリ金属酸化物系が挙げられ』」、「次に、複数の絶縁部15が形成された基板10上に絶縁部15により絶縁分離されるように複数の裏面電極層11を成膜し」、「成膜された裏面電極層11上に発電層12を成膜し、成膜された発電層12上に透明電極層13を成膜し」、「前記絶縁部15の幅は30μm?120μmであり」、「前記裏面電極層11を構成する材料としては、Moが好ましい」及び「集積型光発電素子の製造方法」は、本願発明1における「基板上に、絶縁体であってシリコンオキサイドを含む複数個のセパレーターを形成させるステップ」、「前記セパレーターにより区切られた基板上の一方の領域に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1裏面電極を、前記セパレーターにより区切られた基板上の他方の領域に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2裏面電極を、それぞれ形成させるステップ」、「前記第1裏面電極の上に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1光吸収部を、前記第2裏面電極の上に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2光吸収部を、それぞれ形成させるステップ」、「前記絶縁部15の幅は、30μm?120μmであり」、「裏面電極はモリブデンを含む」及び「太陽光発電装置の製造方法」にそれぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「基板上に、絶縁体であってシリコンオキサイドを含む複数個のセパレーターを形成させるステップと、
前記セパレーターにより区切られた基板上の一方の領域に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1裏面電極を、前記セパレーターにより区切られた基板上の他方の領域に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2裏面電極を、それぞれ形成させるステップと、
前記第1裏面電極の上に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1光吸収部を、前記第2裏面電極の上に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2光吸収部を、それぞれ形成させるステップと、
前記セパレーターは、幅が30μm?120μmであって、
前記裏面電極はモリブデンを含む、太陽光発電装置の製造方法。」

(相違点1)
本願発明1は「前記セパレーターの上面と、前記第1光吸収部及び前記第2光吸収部の上面とが実質的に同一平面に配置されるように、前記セパレーターの上部を切断するステップと、を含」むのに対し、引用発明1はそのようなステップを備えていない点。

(相違点2)
本願発明1は「、前記セパレーターの上面の粗さは、前記セパレーターの側面の粗さより大き」いという構成を備えるのに対し、引用発明1はそのような構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用文献1には、引用発明1における、「各絶縁部15の上に成膜操作により成膜された裏面電極層11と発電層12と透明電極層13を構成する材料からなる薄膜積層体が形成され」た後、これを絶縁部15の上面と発電層12の上面が実質的に同一平面に配置されるように、前記絶縁部15の上部を切断することの記載はなく、またこのようにすることの示唆もない。
そして、引用文献1の発明の詳細な説明には、「裏面電極層11と発電層12と透明電極層13とは、基板10上に凸形状の絶縁部15が形成された部分で段差を生じるように分割されている」(上記「第3」「1」「(1)」「ア」の段落【0016】)と記載され、絶縁部15の上面と発電層12の上面が実質的に同一平面に配置されるように、前記絶縁部15の上部を切断することは想定し得ないから、そのような構成を採用することに動機付けがなく、引用文献2ないし5の記載を踏まえても、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、当業者であっても引用発明1に基づいて容易に想到し得たとはいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「前記セパレーターの上面と、前記第1光吸収部及び前記第2光吸収部の上面とが実質的に同一平面に配置されるように、前記セパレーターの上部を切断するステップと、を含み、前記セパレーターの上面の粗さは、前記セパレーターの側面の粗さより大き」いという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明1及び引用文献2?5の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明1及び2と引用発明2の対比
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「洗浄した厚さ0.2mmのステンレス基板からなる導電性基板100にセラミックス層を形成することなしに、ポリイミド樹脂をコーティングし、その後、下部電極層102を分離する箇所に、顔料を含有した耐熱性樹脂からなる短絡防止用絶縁体層109をポリイミド樹脂を使用し部分的にディスペンサーで塗付し」、「次に、膜厚5000オングストロームの銀をスパッタ法により蒸着し、エポキシ系銀ペーストをスクリーン印刷で塗付し、またこれを200℃で熱処理して、導電体層103を形成し、
更に、膜厚2000オングストロームの酸化亜鉛をスパッタ法により蒸着し、またZnO/Agの一部をYAGレーザで除去して、複数個の分離した下部電極層102を形成し」、「更に、プラズマCDV法により、SiH_(4)とPH_(3)とH_(2)からn型a-Si層を、SiH_(4)とH_(2)からi型a-Si層を、SiH_(4)とBF_(3)とH_(2)からp型微結晶μc-Si層をそれぞれ形成し、n層膜厚150オングストローム/i層膜厚4000オングストローム/p層膜厚100オングストローム/n層膜厚100オングストローム/i層膜厚800オングストローム/p層膜厚100オングストロームの積層構成である、光電変換層104を形成し」、「前記下部電極層102としては、金属層が用いられ、材質としては、Moが用いられる」及び「光起電力素子の作製手順」は、本願発明1における「基板上に、絶縁体である複数個のセパレーターを形成させるステップ」、「前記セパレーターにより区切られた基板上の一方の領域に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1裏面電極を、前記セパレーターにより区切られた基板上の他方の領域に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2裏面電極を、それぞれ形成させるステップ」、「前記第1裏面電極の上に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1光吸収部を、前記第2裏面電極の上に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2光吸収部を、それぞれ形成させるステップ」、「裏面電極はモリブデンを含む」及び「太陽光発電装置の製造方法」にそれぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「基板上に、絶縁体である複数個のセパレーターを形成させるステップと、
前記セパレーターにより区切られた基板上の一方の領域に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1裏面電極を、前記セパレーターにより区切られた基板上の他方の領域に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2裏面電極を、それぞれ形成させるステップと、
前記第1裏面電極の上に、前記セパレーターの一方の側面に接して第1光吸収部を、前記第2裏面電極の上に、前記セパレーターの他方の側面に接して第2光吸収部を、それぞれ形成させるステップと、
前記裏面電極はモリブデンを含む、太陽光発電装置の製造方法。」

(相違点3)
本願発明1の「セパレーター」は、「シリコンオキサイドを含む」のに対して、引用発明2の「ポリイミド樹脂」からなる「短絡防止用絶縁体層109」はシリコンオキサイドを含むとは特定されない点。

(相違点4)
本願発明1は「前記セパレーターの上面と、前記第1光吸収部及び前記第2光吸収部の上面とが実質的に同一平面に配置されるように、前記セパレーターの上部を切断するステップと、を含」むのに対し、引用発明2はそのようなステップを備えていない点。

(相違点5)
本願発明1は「、前記セパレーターの上面の粗さは、前記セパレーターの側面の粗さより大き」いという構成を備えるのに対し、引用発明2はそのような構成を備えていない点。

(相違点6)
本願発明1は「前記セパレーターは、幅が10μm?200μmであ」ると特定されるのに対し、引用発明2はそのように特定されないない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点4について検討すると、引用文献2には、引用発2における、「短絡防止用絶縁体層109」の上に「膜厚5000オングストロームの銀をスパッタ法により蒸着し、エポキシ系銀ペーストをスクリーン印刷で塗付し、またこれを200℃で熱処理して、導電体層103を形成し」、「更に、膜厚2000オングストロームの酸化亜鉛をスパッタ法により蒸着し、またZnO/Agの一部をYAGレーザで除去して、複数個の分離した下部電極層102を形成し」、「更に、プラズマCDV法により、SiH_(4)とPH_(3)とH_(2)からn型a-Si層を、SiH_(4)とH_(2)からi型a-Si層を、SiH_(4)とBF_(3)とH_(2)からp型微結晶μc-Si層をそれぞれ形成し、n層膜厚150オングストローム/i層膜厚4000オングストローム/p層膜厚100オングストローム/n層膜厚100オングストローム/i層膜厚800オングストローム/p層膜厚100オングストロームの積層構成である、光電変換層104を形成し」した後、これを短絡防止用絶縁体層109の上面と光電変換層104の上面が実質的に同一平面に配置されるように、前記短絡防止用絶縁体層109の上部を切断することの記載はなく、またこのようにすることの示唆もない。
そして、引用文献1の図4(上記「第3」「2」「(1)」「7」)を見ても、短絡防止用絶縁体層109の上面と光電変換層104の上面が実質的に同一平面に配置されるように、前記短絡防止用絶縁体層109の上部を切断することは想定し得ないから、そのような構成を採用することに動機付けがなく、引用文献1、3ないし5の記載を踏まえても、相違点4に係る本願発明1の構成は、当業者であっても引用発明2に基づいて容易に想到し得たとはいえない。
したがって、相違点2、3及び5を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明2及び引用文献1、3?5の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「前記セパレーターの上面と、前記第1光吸収部及び前記第2光吸収部の上面とが実質的に同一平面に配置されるように、前記セパレーターの上部を切断するステップと、を含み」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明2及び引用文献1、3?5の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし9について上記引用文献1ないし5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年5月19日付け手続補正により補正された請求項1ないし9は、「前記セパレーターの上面と、前記第1光吸収部及び前記第2光吸収部の上面とが実質的に同一平面に配置されるように、前記セパレーターの上部を切断するステップと、を含み」という構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし9は、上記引用発明1、2及び引用文献3ないし5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、本願請求項1及び2について、
(1)本願請求項1及び2の、「前記セパレーターの上面の粗さは、前記セパレーターの側面の粗さより大きく」との発明特定事項は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本件明細書等は、当業者が、本願請求項1及び2に係る発明において上記の特定事項を実施するために必要な事項を記載したものとはいえず、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)本願請求項1及び2の、「前記セパレーターの上面は、前記第1光吸収部及び前記第2光吸収部の上面と同一平面に配置され」るとの発明特定事項は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本件明細書等は、当業者が、本願請求項1及び2に係る発明において上記の特定事項を実施するために必要な事項を記載したものとはいえず、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)本願請求項1及び2の、「前記セパレーターは、側面が前記第1光吸収部の側面及び前記第2光吸収部の側面に直接接触し」との発明特定事項について、本件明細書等は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(4)本願請求項1及び2の、「前記セパレーターは、・・・絶縁体であるシリコンオキサイドを含み」との発明特定事項について、「絶縁体であるシリコンオキサイドを含み」と特定するにとどまり、「絶縁体であるシリコンオキサイドを含」むセパレーターの他の組成(主要組成)が何であるのか特定しないから、本願発明の解決すべき課題を解決できない導電性のセパレータを含むため、本願請求項1及び2は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
との拒絶の理由を通知しているが、平成29年5月19日付けの手続補正で補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用発明1、2及び引用文献3ないし5の記載に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2013-532702(P2013-532702)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松川 直樹
発明の名称 太陽光発電装置及びその製造方法  
代理人 森下 賢樹  

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