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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1329628
審判番号 不服2015-13397  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-14 
確定日 2017-06-21 
事件の表示 特願2012-535126「全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド、該樹脂コンパウンドの製造方法、光ピックアップ用部品、及び該部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年4月28日国際公開、WO2011/049378、平成25年3月7日国内公表、特表2013-508498〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年10月21日(パリ条約による優先権主張 2009年10月21日 大韓民国(KR))を国際出願日とする特許出願であって、平成26年1月14日付けで拒絶理由が通知され、同年7月15日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成27年3月18日付けで拒絶査定がなされ、同年7月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年9月9日付けで前置報告がなされたものである。



第2 平成27年7月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成27年7月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成27年7月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、平成26年7月15日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の内容について、
「【請求項1】
高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
添加剤と、を含み、
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(T_(m1))および前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(T_(m2))は、下記条件、
370℃≦T_(m1)≦440℃、
310℃≦T_(m2)≦380℃、
20℃≦T_(m1)-T_(m2)≦80℃、
を満足する全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。」
を、
「【請求項1】
高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
添加剤と、を含み、
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(T_(m1))および前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(T_(m2))は、下記条件、
370℃≦T_(m1)≦440℃、
310℃≦T_(m2)≦380℃、
20℃≦T_(m1)-T_(m2)≦80℃、
を満足し、
かつ、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する
反復単位(A)、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)を含み、
前記反復単位(A)、(B)及び(C)は、下記条件、
40モル%≦反復単位(A)/全体反復単位≦60モル%、
10モル%≦反復単位(B)/全体反復単位≦30モル%、
80モル%≦反復単位(B)/反復単位(C)≦100モル%、
を満足し、
かつ、前記反復単位(A)は、パラヒドロキシベンゾ酸及び2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸からなる群から選択された1種以上の化合物から由来し、
前記反復単位(B)は、ビフェノール及びヒドロキノンのうち少なくとも1種以上の化合物から由来し、
前記反復単位(C)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来する、
全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。」
とする、補正事項を含むものである。なお、平成27年7月14日付け手続補正書においては、「T_(m1)」及び「T_(m2)」を各々「Tm1」及び「Tm2」と記載しているが、これらは誤記であることが明らかであることから、上記のとおり正しい記載により認定した。

2.本件補正の目的について
上記した特許請求の範囲についての本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である、反復単位(A)、(B)及び(C)について、それらの割合を限定する補正事項を本件補正前の請求項2に基づき特定し、かつ、それらの種類を限定する補正事項を本件補正前の請求項3に基づき特定する補正事項を含むものであり、請求項1についてする本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、以下に記載のものである。

本願補正発明
「高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
添加剤と、を含み、
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(T_(m1))および前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(T_(m2))は、下記条件、
370℃≦T_(m1)≦440℃、
310℃≦T_(m2)≦380℃、
20℃≦T_(m1)-T_(m2)≦80℃、
を満足し、
かつ、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)を含み、
前記反復単位(A)、(B)及び(C)は、下記条件、
40モル%≦反復単位(A)/全体反復単位≦60モル%、
10モル%≦反復単位(B)/全体反復単位≦30モル%、
80モル%≦反復単位(B)/反復単位(C)≦100モル%、
を満足し、
かつ、前記反復単位(A)は、パラヒドロキシベンゾ酸及び2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸からなる群から選択された1種以上の化合物から由来し、
前記反復単位(B)は、ビフェノール及びヒドロキノンのうち少なくとも1種以上の化合物から由来し、
前記反復単位(C)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来する、
全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。」

(2)刊行物及びその記載事項
ア 刊行物A:特開2005-89652号公報(原査定の引用文献1)
刊行物C:特表2009-515004号公報(原査定の引用文献3)

イ 刊行物Aの記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物Aには、以下の事項が記載されている。

「実施例に記載されている物性値は次の方法で測定した。
(1) 融点
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製)により、リファレンスとしてα?アルミナを用いて融点測定を行った。測定温度条件は20℃/分で室温から昇温してポリマーを融解させて得られた吸熱ピークをTm1とし、10℃/分で150℃まで冷却して、さらに20℃/分で昇温したときに得られる吸熱ピークをTm2とし、このTm2を融点とした。」(段落0029)

「全芳香族液晶ポリエステルの製造例を以下に示す。
全芳香族液晶ポリエステル(1)(全芳香族液晶ポリエステル(A)に相当)の製造:
SUS316を材質とし、ダブルヘリカル攪拌翼を有する6L重合槽(日東高圧社製)にp-ヒドロキシ安息香酸1105.0g(8.00モル)、テレフタル酸664.5g(4.00モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル774.8g(4.00モル)を仕込み、重合槽の減圧-窒素注入を2回し、窒素置換を行った後、無水酢酸1731.4g(16.96モル)を添加し、攪拌翼の回転数100rpmで150℃まで1時間で昇温して還留状態で2時間アセチル化反応を行った。アセチル化終了後、酢酸留出状態にして0.5℃/分で昇温して、330℃において重合物をリアクター下部の抜き出し口から取り出した。取り出した重合体を粉砕機により2.5mm以下に粉砕し、円筒型回転式リアクターを有する加熱装置(旭硝工(株)製)により固相重合を行った。円筒型回転式リアクターに粉砕した重合体を投入し、窒素を1リットル/分流通させ、回転数20rpmで280℃まで2時間かけて昇温して280℃で3時間保持した後、300℃まで30分で昇温して3時間保持し、320℃まで30分で昇温して3時間保持し、一部抜き出しを行った後(この時点で抜き出した全芳香族液晶ポリエステルを「全芳香族液晶ポリエステル(1-)」という。)、さらに、340℃まで30分で昇温して2時間保持した後、室温まで1時間で冷却して重合体を得た。得られた重合体の融点をDSCで測定したところ、Tm1は410℃、Tm2は430℃であった。また、見かけ粘度は450℃において2500ポアズであった。また、液晶開始温度は425℃であった。
なお「全芳香族液晶ポリエステル(1-)」のTm1は365℃、Tm2は395℃であった。また、見かけ粘度は415℃において950ポアズであった。また、液晶開始温度は385℃であった。
全芳香族液晶ポリエステル(2)(全芳香族液晶ポリエステル(B)に相当)の製造:
SUS316を材質とし、ダブルヘリカル攪拌翼を有する6L重合槽(日東高圧社製)にp-アセトキシ安息香酸828.7g(6.00モル)、イソフタル酸83.0g(0.50モル)、テレフタル酸249.2g(1.50モル)、4、4’-ジアセトキシビフェニル372.4g(2.00モル)を仕込み、重合槽の減圧-窒素注入を2回し、窒素置換を行った後、無水酢酸1082.2g(10.60モル)を添加し、攪拌翼の回転数100rpmで150℃まで1時間で昇温して還留状態で2時間アセチル化反応を行った。アセチル化終了後、酢酸留出状態にして0.5℃/分で昇温して、330℃において重合物をリアクター下部の抜き出し口から取り出した。取り出した重合体を粉砕機により2.5mm以下に粉砕し、円筒型回転式リアクターを有する加熱装置(旭硝工(株)製)により固相重合を行った。円筒型回転式リアクターに粉砕した重合体を投入し、窒素を1リットル/分流通させ、回転数20rpmで280℃まで2時間かけて昇温して280℃で3時間保持した後、室温まで1時間で冷却して重合体を得た。得られた重合体の融点をDSCで測定したところ、Tm1は352℃、Tm2は360℃であった。また、見かけ粘度は380℃において910であった。また、液晶開始温度は340℃であった。」(段落0037?0038)

「以下の実施例および比較例で使用した充填剤を示す。
(1)チョップドガラスファイバー:平均繊維径11μm、平均繊維長さ3mm(旭ファイバーグラス(株)製、CS03JAPX-1)
(2)ミルドガラスファイバー:平均繊維径11μm、平均繊維長さ約250μm(旭ファイバーグラス(株)製、MF20JMH1
【実施例1】
全芳香族液晶ポリエステル(1)100重量部と上記チョップドガラスファイバー40重量部をあらかじめリボンブレンダーで混合し、この混合物を2軸押出機(池貝鉄鋼(株)製PCM-30)によりシリンダーの最高温度430℃で溶融混練してペレットを得た。なお、スクリュは、2箇所のニーディンゾーンを有するものを用いて溶融混練した。得られたペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG-25)を用いて、シリンダー温度420℃において試験片および光ピックアップレンズホルダーを成形し試験を行った。
【実施例2】
全芳香族液晶ポリエステル(1)80重量部と全芳香族液晶ポリエステル(2)20重量部および上記チョップドガラスファイバー40重量部をあらかじめリボンブレンダーで混合し、この混合物を実施例1と同様に溶融混練してペレットを得て、シリンダー温度390℃において試験片および光ピックアップレンズホルダーを成形し試験を行った。

【実施例4】
全芳香族液晶ポリエステル(1)80重量部と全芳香族液晶ポリエステル(2)20重量部および上記ミルドガラスファイバー40重量部をあらかじめリボンブレンダーで混合し、この混合物を実施例1と同様に溶融混練してペレットを得て、シリンダー温度390℃において試験片および光ピックアップレンズホルダーを成形し試験を行った。」(段落0041?0045)

「【表1】

」(段落0053)

ウ 刊行物Cの記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物Cには、以下の事項が記載されている。

「 製造例1
1リットルの反応器にパラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、及びテレフタル酸は50:25:25のモル%でそれぞれ供給され、無水酢酸は1.06当量供給され、有機金属塩は0.01重量%供給されて攪拌する。反応器内の反応物を150℃の予熱過程を経て315℃、100rpmで30分間合成し、副産物である酢酸を蒸留する。そして反応物を排出して粉砕した後、固状反応器に投入して325℃で1時間反応して高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)を得た。このようにして得られた樹脂の前記(a)による溶融温度は400℃であった。
製造例2
1リットルの反応器にパラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、テレフタル酸、及びイソフタル酸は60:20:15:5のモル%でそれぞれ供給され、無水酢酸は1.06当量供給され、有機金属塩は0.01重量%供給されて攪拌する。反応器内の反応物を150℃の予熱過程を経て310℃、100rpmで30分間合成し、副産物である酢酸を蒸留する。そして、反応物を排出して粉砕した後、固状反応器に投入して320℃で1時間反応させて高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)を得た。このようにして得られた樹脂の前記(a)による溶融温度は350℃であった。
実施例8ないし10
前記製造例1及び製造例2で得られた液晶性ポリエステル樹脂と無機充填剤(ガラス繊維、直径14μm、長さ3mm)とを表3に記載された割合で予備混合した後、二軸圧出器(Dr.Collin社製、ZK25)を利用してシリンダー温度420℃で圧出してペレット化して液晶性ポリエステル樹脂組成物を得、前記言及された(b)及び(c)の方法で測定した。その結果を表3に表した。

【表3】

」(段落0118?0121)

(3)刊行物に記載された発明
ア 刊行物Aに記載された発明
上記(2)摘示イの実施例2から、刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物A実施例2発明」という。)が記載されているといえる。

「全芳香族液晶ポリエステル(1)80重量部と全芳香族液晶ポリエステル(2)20重量部および平均繊維径11μm、平均繊維長さ3mmのチョップドガラスファイバー40重量部をあらかじめリボンブレンダーで混合し、この混合物を2軸押出機によりシリンダーの最高温度430℃で溶融混練して得られるペレットであって、
全芳香族液晶ポリエステル(1)が、
重合槽にp-ヒドロキシ安息香酸1105.0g(8.00モル)、テレフタル酸664.5g(4.00モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル774.8g(4.00モル)を仕込み、無水酢酸1731.4g(16.96モル)を添加し、アセチル化させた後、固相重合を行って得られた重合体であって、DSCで測定した融点Tm2が430℃であり、見かけ粘度が450℃において2500ポアズであり、液晶開始温度が425℃である重合体であり、
全芳香族液晶ポリエステル(2)が、
重合槽にp-アセトキシ安息香酸828.7g(6.00モル)、イソフタル酸83.0g(0.50モル)、テレフタル酸249.2g(1.50モル)、4、4’-ジアセトキシビフェニル372.4g(2.00モル)を仕込み、無水酢酸1082.2g(10.60モル)を添加し、アセチル化させた後、固相重合を行って得られた重合体であって、DSCで測定した融点Tm2が360℃であり、見かけ粘度が380℃において910ポアズであり、液晶開始温度が340℃である重合体である、
ペレット。」

また、上記(2)摘示イの実施例4から、刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物A実施例4発明」という。)が記載されているといえる。

「全芳香族液晶ポリエステル(1)80重量部と全芳香族液晶ポリエステル(2)20重量部および平均繊維径11μm、平均繊維長さ250μmのミルドガラスファイバー40重量部をあらかじめリボンブレンダーで混合し、この混合物を2軸押出機によりシリンダーの最高温度430℃で溶融混練して得られるペレットであって、
全芳香族液晶ポリエステル(1)が、
重合槽にp-ヒドロキシ安息香酸1105.0g(8.00モル)、テレフタル酸664.5g(4.00モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル774.8g(4.00モル)を仕込み、無水酢酸1731.4g(16.96モル)を添加し、アセチル化させた後、固相重合を行って得られた重合体であって、DSCで測定した融点Tm2が430℃であり、見かけ粘度が450℃において2500ポアズであり、液晶開始温度が425℃である重合体であり、
全芳香族液晶ポリエステル(2)が、
重合槽にp-アセトキシ安息香酸828.7g(6.00モル)、イソフタル酸83.0g(0.50モル)、テレフタル酸249.2g(1.50モル)、4、4’-ジアセトキシビフェニル372.4g(2.00モル)を仕込み、無水酢酸1082.2g(10.60モル)を添加し、アセチル化させた後、固相重合を行って得られた重合体であって、DSCで測定した融点Tm2が360℃であり、見かけ粘度が380℃において910ポアズであり、液晶開始温度が340℃である重合体である、
ペレット。」

イ 刊行物Cに記載された発明
上記(2)摘示ウの実施例8から、刊行物Cには以下の発明(以下「刊行物C実施例8発明」という。)が記載されているといえる。

「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して90重量%となる量)と、高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して10重量%となる量)と、直径14μm、長さ3mmのガラス繊維(その量は樹脂組成物全重量に対して30重量%となる量)とを予備混合した後、二軸圧出器よりシリンダー温度420℃で圧出して得られるペレットであって、
高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)が、
パラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、及びテレフタル酸が50:25:25のモル%でそれぞれ供給され、無水酢酸を供給後、固状反応器において反応して得られた樹脂であって、溶融温度が400℃である樹脂であり、
高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)が、
パラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、テレフタル酸、及びイソフタル酸が60:20:15:5のモル%でそれぞれ供給され、無水酢酸を供給後、固状反応器において反応して得られた樹脂であって、溶融温度が350℃である樹脂である、
ペレット。」

また、上記(2)摘示ウの実施例9から、刊行物Cには以下の発明(以下「刊行物C実施例9発明」という。)が記載されているといえる。

「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して80重量%となる量)と、高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して20重量%となる量)と、直径14μm、長さ3mmのガラス繊維(その量は樹脂組成物全重量に対して30重量%となる量)とを予備混合した後、二軸圧出器よりシリンダー温度420℃で圧出して得られるペレットであって、
高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)が、
パラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、及びテレフタル酸が50:25:25のモル%でそれぞれ供給され、無水酢酸を供給後、固状反応器において反応して得られた樹脂であって、溶融温度が400℃である樹脂であり、
高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)が、
パラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、テレフタル酸、及びイソフタル酸が60:20:15:5のモル%でそれぞれ供給され、無水酢酸を供給後、固状反応器において反応して得られた樹脂であって、溶融温度が350℃である樹脂である、
ペレット。」

さらに、上記(2)摘示ウの実施例10から、刊行物Cには以下の発明(以下「刊行物C実施例10発明」という。)が記載されているといえる。

「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して70重量%となる量)と、高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して30重量%となる量)と、直径14μm、長さ3mmのガラス繊維(その量は樹脂組成物全重量に対して30重量%となる量)とを予備混合した後、二軸圧出器よりシリンダー温度420℃で圧出して得られるペレットであって、
高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)が、
パラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、及びテレフタル酸が50:25:25のモル%でそれぞれ供給され、無水酢酸を供給後、固状反応器において反応して得られた樹脂であって、溶融温度が400℃である樹脂であり、
高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)が、
パラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、テレフタル酸、及びイソフタル酸が60:20:15:5のモル%でそれぞれ供給され、無水酢酸を供給後、固状反応器において反応して得られた樹脂であって、溶融温度が350℃である樹脂である、
ペレット。」

(4)本願補正発明と各刊行物実施例発明との対比・判断
ア 本願補正発明と刊行物A実施例2発明との対比・判断
以下、本願補正発明と刊行物A実施例2発明とを対比する。
刊行物A実施例2発明における「平均繊維径11μm、平均繊維長さ3mmのチョップドガラスファイバー」は、本願補正発明における「添加剤」に、「全芳香族液晶ポリエステル(1)80重量部と全芳香族液晶ポリエステル(2)20重量部およびミルドガラスファイバー40重量部をあらかじめリボンブレンダーで混合し、この混合物を2軸押出機によりシリンダーの最高温度430℃で溶融混練して得られるペレット」は「全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド」に相当する。
そして、刊行物A実施例2発明における「全芳香族液晶ポリエステル(1)」及び「全芳香族液晶ポリエステル(2)」を、本願補正発明における「高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂」及び「低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂」と対比すると、刊行物A実施例2発明における「全芳香族液晶ポリエステル(1)」の融点Tm2が430℃であることから、本願補正発明における「第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(T_(m1))が370℃≦T_(m1)≦440℃」(以下、「融点式(1)」という。)を満たしている。また、刊行物A実施例2発明における「全芳香族液晶ポリエステル(2)」の融点Tm2が360℃であることから、本願補正発明における「第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(T_(m2))が310℃≦T_(m2)≦380℃」(以下、「融点式(2)」という。)を満たしている。そして、刊行物A実施例2発明における「全芳香族液晶ポリエステル(1)」の融点Tm2が430℃であり、「全芳香族液晶ポリエステル(2)」の融点Tm2が360℃であることから、本願補正発明における「第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(T_(m1))と第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(T_(m2))との差が20℃≦T_(m1)-T_(m2)≦80℃」(以下、「融点式(3)」という。)を満たしている。
また、刊行物A実施例2発明における「全芳香族液晶ポリエステル(2)」は、「p-アセトキシ安息香酸828.7g(6.00モル)、イソフタル酸83.0g(0.50モル)、テレフタル酸249.2g(1.50モル)、4、4’-ジアセトキシビフェニル372.4g(2.00モル)」を仕込み、重合して得られた重合体であって、「p-アセトキシ安息香酸」は「芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)」に、「イソフタル酸」及び「テレフタル酸」は「芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)」に、「4,4’-ジアセトキシビフェニル」は「芳香族ジオールから由来する反復単位(B)」にそれぞれ相当するから、本願補正発明における「第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)を含み」を満たしている。そして、刊行物A実施例2発明における「全芳香族液晶ポリエステル(2)」の各モノマー成分の割合を計算すると、p-アセトキシ安息香酸は6.00モル、全モノマー量が10.00モルであるから、p-アセトキシ安息香酸単位/全体反復単位=60モル%と計算され、これは本願補正発明における「40モル%≦反復単位(A)/全体反復単位≦60モル%」(以下、「反復式(1)」という。)を満たしている。また、4,4’-ジアセトキシビフェニルは2.00モル、全モノマー量が10.00モルであるから、4,4’-ジアセトキシビフェニル単位/全体反復単位=20モル%と計算され、これは本願補正発明における「10モル%≦反復単位(B)/全体反復単位≦30モル%」(以下、「反復式(2)」という。)を満たしている。そして、4,4’-ジアセトキシビフェニルは2.00モル、イソフタル酸は0.50モル、テレフタル酸は1.50モルであるから、4,4’-ジアセトキシビフェニル単位/(イソフタル酸単位+テレフタル酸単位)=100モル%と計算され、これは本願補正発明における「80モル%≦反復単位(B)/反復単位(C)≦100モル%」(以下、「反復式(3)」という。)を満たしている。
そして、刊行物A実施例2発明における「全芳香族液晶ポリエステル(2)」において、「p-アセトキシ安息香酸」から由来する反復単位は、本願補正発明における「パラヒドロキシベンゾ酸」から由来する反復単位と同じであるから、本願補正発明における「反復単位(A)は、パラヒドロキシベンゾ酸及び2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸からなる群から選択された1種以上の化合物から由来し」(以下、「モノマー事項(1)」という。)を満たしている。また、「4,4’-ジアセトキシビフェニル」から由来する反復単位は、本願補正発明における「ビフェノール」から由来する反復単位と同じであるから、本願補正発明における「反復単位(B)は、ビフェノール及びヒドロキノンのうち少なくとも1種以上の化合物から由来し」(以下、「モノマー事項(2)」という。)を満たしている。そして、「イソフタル酸」及び「テレフタル酸」は本願補正発明における「イソフタル酸」及び「テレフタル酸」と各々同じ化合物であるから、本願補正発明における「反復単位(C)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来する」(以下、「モノマー事項(3)」という。)を満たしている。
そうすると、本願補正発明と刊行物A実施例2発明とは、全ての点で一致し、相違点はない。
よって、本願補正発明は、刊行物A実施例2発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

イ 本願補正発明と刊行物A実施例4発明との対比・判断
まず、刊行物A実施例2発明と刊行物A実施例4発明とを対比すると、両者は、前者において「平均繊維径11μm、平均繊維長さ3mmのチョップドガラスファイバー」が後者において「平均繊維径11μm、平均繊維長さ250μmのミルドガラスファイバー」となっている以外全ての点で一致している。
そして、本願補正発明と刊行物A実施例4発明とを対比すると、刊行物A実施例4発明における「平均繊維径11μm、平均繊維長さ250μmのミルドガラスファイバー」は、本願補正発明における「添加剤」に相当する。
そうすると、他の点については、前記アで述べたのと同じ理由により、本願補正発明と刊行物A実施例4発明とは、全ての点で一致し、相違点はない。
よって、本願補正発明は、刊行物A実施例4発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

ウ 本願補正発明と刊行物C実施例8発明との対比・判断
以下、本願補正発明と刊行物C実施例8発明とを対比する。
刊行物C実施例8発明における「直径14μm、長さ3mmのガラス繊維」は、本願補正発明における「添加剤」に、「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して90重量%となる量)と、高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して10重量%となる量)と、直径14μm、長さ3mmのガラス繊維(その量は樹脂組成物全重量に対して30重量%となる量)とを予備混合した後、二軸圧出器よりシリンダー温度420℃で圧出して得られるペレット」は「全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド」に相当する。
そして、刊行物C実施例8発明における「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)」及び「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)」を、本願補正発明における「高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂」及び「低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂」と対比すると、刊行物C実施例8発明における「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)」の溶融温度が400℃であることから、本願補正発明における融点式(1)を満たしている。また、刊行物C実施例8発明における「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)」の溶融温度が350℃であることから、本願補正発明における融点式(2)を満たしている。そして、刊行物C実施例8発明における「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)」の溶融温度が400℃であり、「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)」の溶融温度が350℃であることから、本願補正発明における融点式(3)を満たしている。
また、刊行物C実施例8発明における「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)」は、「パラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、テレフタル酸、及びイソフタル酸が60:20:15:5のモル%」でそれぞれ供給し、反応して得られた樹脂であって、「パラヒドロキシ安息香酸」は「芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)」に、「テレフタル酸」及び「イソフタル酸」は「芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)」に、「ビフェノール」は「芳香族ジオールから由来する反復単位(B)」にそれぞれ相当するから、本願補正発明における「第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)を含み」を満たしている。そして、刊行物C実施例8発明における「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)」の各モノマー成分の割合を計算すると、パラヒドロキシ安息香酸、ビフェノール、テレフタル酸、及びイソフタル酸が60:20:15:5のモル%であるから、パラヒドロキシ安息香酸単位/全体反復単位=60モル%と計算され、これは本願補正発明における反復式(1)を満たしている。また、ビフェノールは20のモル%であるから、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)/全体反復単位=20モル%と計算され、これは本願補正発明における反復式(2)を満たしている。そして、テレフタル酸は15モル%、イソフタル酸は5モル%であるから、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)/芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)=100モル%と計算され、これは本願補正発明における反復式(3)を満たしている。
そして、刊行物C実施例8発明における「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)」において、「パラヒドロキシ安息香酸」は本願補正発明における「パラヒドロキシベンゾ酸」と同じ化合物であるから、本願補正発明におけるモノマー事項(1)を満たしている。また、「ビフェノール」は本願補正発明における「ビフェノール」と同じ化合物であるから、本願補正発明におけるモノマー事項(2)を満たしている。そして、「テレフタル酸」及び「イソフタル酸」は、本願補正発明における「テレフタル酸」及び「イソフタル酸」と各々同じ化合物であるから、本願補正発明におけるモノマー事項(3)を満たしている。
そうすると、本願補正発明と刊行物C実施例8発明とは、全ての点で一致し、相違点はない。
よって、本願補正発明は、刊行物C実施例8発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

エ 本願補正発明と刊行物C実施例9発明との対比・判断
まず、刊行物C実施例8発明と刊行物C実施例9発明とを対比すると、両者は、「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)」と「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)」との混合割合が、前者においては「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して90重量%となる量)と、高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して10重量%となる量)」と特定されているのに対し、後者においては「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して80重量%となる量)と、高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して20重量%となる量)」と特定されている点で相違し、それ以外の全ての点で一致している。
そして、本願補正発明と刊行物C実施例8発明とは、前記ウで述べたとおり、全ての点で一致し、相違点はない。また、本願補正発明においては、「全芳香族液晶ポリエステル(1)」と「全芳香族液晶ポリエステル(2)」との混合割合について何ら特定されておらず、上記した刊行物C実施例8発明と刊行物C実施例9発明との間の相違点は、本願補正発明との対比において相違点ではない。
そうすると、本願補正発明と刊行物C実施例9発明とを対比すると、前記ウで述べたのと同じ理由により、両者は、全ての点で一致し、相違点はない。
よって、本願補正発明は、刊行物C実施例9発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

オ 本願補正発明と刊行物C実施例10発明との対比・判断
まず、刊行物C実施例8発明と刊行物C実施例10発明とを対比すると、両者は、「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)」と「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)」との混合割合が、前者においては「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して90重量%となる量)と、高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して10重量%となる量)」と特定されているのに対し、後者においては「高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP A)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して70重量%となる量)と、高耐熱性芳香族液晶性ポリエステル樹脂(LCP B)(その量は液晶ポリエステル樹脂に対して30重量%となる量)」と特定されている点で相違し、それ以外の全ての点で一致している。
そして、本願補正発明と刊行物C実施例8発明とは、前記ウで述べたとおり、全ての点で一致し、相違点はない。また、本願補正発明においては、「全芳香族液晶ポリエステル(1)」と「全芳香族液晶ポリエステル(2)」との混合割合について何ら特定されておらず、上記した刊行物C実施例8発明と刊行物C実施例10発明との間の相違点は、本願補正発明との対比において相違点ではない。
そうすると、本願補正発明と刊行物C実施例10発明とを対比すると、前記ウで述べたのと同じ理由により、両者は、全ての点で一致し、相違点はない。
よって、本願補正発明は、刊行物C実施例10発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(5)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物A又はCに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、独立して特許を受けることができない。よって、本件補正は特許法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明は、平成26年7月15日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項2を引用し、さらに請求項2は請求項1を引用するものであるところ、請求項1及び2の特定事項を入れ込んで、独立形式で記載すると、次のとおりのものである。

本願発明
「高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
添加剤と、を含み、
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(T_(m1))および前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(T_(m2))は、下記条件、
370℃≦T_(m1)≦440℃、
310℃≦T_(m2)≦380℃、
20℃≦T_(m1)-T_(m2)≦80℃、
を満足し、
かつ、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)を含み、
前記反復単位(A)、(B)及び(C)は、下記条件、
40モル%≦反復単位(A)/全体反復単位≦60モル%、
10モル%≦反復単位(B)/全体反復単位≦30モル%、
80モル%≦反復単位(B)/反復単位(C)≦100モル%、
を満足し、
かつ、前記反復単位(A)は、パラヒドロキシベンゾ酸及び2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸からなる群から選択された1種以上の化合物から由来し、
前記反復単位(B)は、ビフェノール及びヒドロキノンのうち少なくとも1種以上の化合物から由来し、
前記反復単位(C)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来する、
全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、
「この出願の本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献1:特開2005-89652号公報
引用文献3:特表2009-515004号公報」
というものを含むものである。

3.当審の判断
(1)刊行物の記載事項
引用文献1及び3は、前記第2.3(2)の刊行物A及びCと同じであるから、引用文献1及び3には、前記2.3(2)に記載した事項が記載されている。

(2)刊行物に記載された発明
引用文献1及び3には、前記第2.3(3)に記載の各刊行物発明が記載されているといえる。

(3)本願発明と各刊行物発明との対比・判断
本願発明と各刊行物発明とを対比する。
本願補正発明は、前記第2.3で述べたとおり、各刊行物発明と同一である。
また、本願発明と本願補正発明とは同一である。
そうすると、本願発明と各刊行物発明とは、全ての点で一致し、相違点はない。
したがって、本願発明は、刊行物A又はCに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



第4 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち、平成26年7月15日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項3に係る発明は、引用文献1又は3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-11 
結審通知日 2017-01-17 
審決日 2017-02-03 
出願番号 特願2012-535126(P2012-535126)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08L)
P 1 8・ 113- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 政志北澤 健一  
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 上坊寺 宏枝
小野寺 務
発明の名称 全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド、該樹脂コンパウンドの製造方法、光ピックアップ用部品、及び該部品の製造方法  
代理人 奥野 彰彦  
代理人 伊藤 寛之  
代理人 SK特許業務法人  

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