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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1329664
審判番号 不服2016-8529  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-08 
確定日 2017-07-18 
事件の表示 特願2015-215646「移動通信システムにおける端末への着信処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-119650、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月30日(国内優先権主張 平成26年12月22日)を国際出願日として出願した特願2015-526424号の一部を、平成27年11月2日に新たに出願したものであって、平成28年2月15日付けで手続補正書が提出され、同年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年3月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月5日付けで拒絶査定されたところ、同日付けで補正の却下の決定がなされ、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成28年4月5日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1.平成28年4月5日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
平成28年3月23日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と同一であり、また、引用文献1に記載された発明から、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成28年3月23日付けの補正は却下すべきものである。

<引用文献等一覧>
1 特許第5606603号公報

2.原査定(平成28年4月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、2に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明と同一であり、また、上記引用文献1に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年6月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明と認める。

「 ISR(Idle-mode Signaling Reduction)が有効な移動通信システムにおける端末への着信処理方法であって、
前記端末が、LTE基地局へのTracking Area Update Requestメッセージの送信、または2G/3G無線制御装置へのRouting Area Update Requestメッセージの送信を行うステップと、
前記Tracking Area Update RequestメッセージまたはRouting Area Update Requestメッセージの送信に基づき、前記端末に対するパケット着信を受けたSGW(Serving Gateway)から、MME(Mobility Management Entity)およびSGSN(Serving GPRS Support Node)にDDN(Downlink Data Notification)メッセージが送信され、前記MMEおよび前記SGSNと異なる他のMMEまたは他のSGSNから前記ISRが有効であることを示す情報を含むModify Bearer Requestメッセージを前記SGWに送信された場合に、前記ISRが有効であったとしても前記Modify Bearer Requestメッセージを送信した前記他のMMEまたは前記他のSGSNのみから前記LTE基地局または前記2G/3G無線制御装置を介して前記端末がページを受けるステップと、
前記端末が、前記LTE基地局または前記2G/3G基地局制御装置に対して前記ページに伴う処理を実行するステップとを有する、移動通信システムにおける端末への着信処理方法。」


第4 引用文献、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特許第5606603号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0042】
はじめに、UE45は、MME25の管理する位置登録エリアから他の位置登録エリアに移動したことを検出すると、移動先の通信エリアを管理するeNB65へTracking Area Update Requestメッセージを送信する(S21)。UE45は、eNB65から配信される報知情報を受信することによって、位置登録エリアが変更したことを検出してもよい。つまり、UE45は、移動前にeNB55から配信された位置登録エリアと、移動後にeNB65から配信された位置登録エリアとが異なる場合に、位置登録エリアが変更したことを検出してもよい。
【0043】
次に、eNB65は、自装置の通信エリアを含む位置登録エリアを管理しているMME35へ、UE45に関するTracking Area Update Requestメッセージを送信する(S23)。このとき同時に、UE45とMME35の間で制御メッセージを通信するために、eNB65とMME35の間にS1 Connectionを確立する。ここで、Tracking Area Update Requestメッセージには、UE45の移動前の位置登録エリアを管理していたMME25の識別子が含まれているとする。
【0044】
次に、MME35は、MME25からUE45の位置登録情報を取得するために、MME25へ位置登録情報の転送を要求するContext Requestメッセージを送信する(S24)。MME25は、MME35からUE45の位置登録情報の転送を要求するContext Requestメッセージが送信されたことによって、自装置が管理する位置登録エリアの外にUE45が移動したことを検出することが出来る。さらに、MME25は、MME35から送信されたContext Requestメッセージを受信することによって、UE45がMME35の管理する位置登録エリアに移動したことを検出することが出来る。
【0045】
ここで、ステップS24においてMME35からMME25へContext Requestメッセージが送信された後に、SGW15へUE45に対するパケット着信が通知されるとする(S25)。パケット着信は、外部ネットワークからPGW75を経由してSGW15へ通知される。
【0046】
SGW15は、図6の接続処理において、UE45がMME25の管理する位置登録エリアに在圏していることを通知されている。そのため、SGW15は、UE45に対するパケット着信を通知するためにMME25へDownlink Data Notificationメッセージを送信する(S26)。
【0047】
次に、MME25は、ステップS24のContext Requestメッセージを受信することによってUE45が移動中であることを検出している。そのため、MME25は、UE45が移動中であり、UE45の呼び出し処理を一時的に行うことが出来ないことを示すCauseを設定し、Downlink Data Notification Acknowledgeメッセージを送信する(S27)。Downlink Data Notification Acknowledgeメッセージには、Cause設定として、Cause=Temporarily Rejected due to mobilityが設定される。Cause=Temporarily Rejected due to mobilityは、Causeに、UEが移動中であり一時的に呼び出し処理が出来ないこと(temporarily rejected)を示す情報が設定されたことを示している。
【0048】
ここで、SGW15は、Cause=Temporarily Rejected due to mobilityが設定されたDownlink Data Notification Acknowledgeメッセージを受信すると、パケット着信処理を一時中断し、UE45を宛先とするパケットのバッファリングを継続しつつDownlink Data Notificationメッセージを再送するタイマ(locally configured guard timer)を起動する。
【0049】
次に、MME25は、Tracking Area Update RequestメッセージにおけるUE45の移動前の位置登録エリアを管理するMMEとしての動作を実行する。つまり、MME25は、ステップS24のContext Requestメッセージの応答メッセージとして、Context ResponseメッセージをMME35へ送信する(S28)。UE45の移動前の位置登録エリアを管理するMMEは、Old側MMEと称されてもよい。さらに、UE45の移動後の位置登録エリアを管理するMMEは、New側MMEと称されてもよい。MME25は、Context Responseメッセージを用いてUE45の位置登録情報をMME35へ通知する。MME35は、Context Responseメッセージの応答メッセージとしてContext AcknowledgeメッセージをMME25へ送信する(S29)。
【0050】
次に、MME35は、MME25とSGW15との間に確立されているセッションの切替を通知するために、SGW15へModify Bearer Requestメッセージを送信する(S30)。MME25とSGW15との間に確立されているセッションは、図6のステップS13及びS14において確立されたセッションである。SGW15は、Modify Bearer Requestメッセージを受信することによって、MME35においてUE45の移動処理が完了したことを検出する。MME35は、MME25とSGW15との間において確立されたセッションを識別する識別子をSGW15へ送信することによって、MME25とSGW15との間に確立されているセッションの切替を通知してもよい。MME25とSGW15との間において確立されたセッションを識別する識別子は、ステップS28のContext Responseメッセージに含められてもよい。
【0051】
SGW15は、Modify Bearer Requestメッセージの応答メッセージとして、Modify Bearer ResponseメッセージをMME35へ送信する(S31)。この時、SGW15は、ステップS27においてDownlink Data Notification Acknowledgeメッセージを受信した際に起動したタイマ(locally configured guard timer)を停止する。
【0052】
次に、MME35は、Modify Bearer Responseメッセージを受信すると、ステップS23の応答メッセージとして、Tracking Area Update AcceptメッセージをeNB65へ送信する(S32)。次に、eNB65は、送信されたTracking Area Update AcceptメッセージをUE45へ送信する(S33)。
【0053】
次に、MME35は、既に確立したeNB65との間のS1 Connectionを解放する(S34)。
【0054】
次に、SGW15は、UE45に対するパケット着信を通知するために、UE45の移動先の位置登録エリアを管理するMME35へDownlink Data Notificationメッセージを送信する(S35)。つまり、ステップS35において、ステップS26における、MME25に対するDownlink Data Notificationメッセージの送信処理を、UE45の移動先の位置登録エリアを管理するMME35に対して行う事になる。次に、MME35は、UE45の呼び出し処理を行うために、eNB65へPagingメッセージを送信し(S36)、eNB65は、配下の通信エリアに在圏するUEに対してPagingメッセージを送信する(S37)。このようにして、UE45は、新たな位置登録エリアに移動した後に、UE45の移動中に発生したパケット着信通知を受けることが出来る。
【0055】
ここで、ステップS27においてDownlink Data Notification Acknowledgeメッセージを受信した際に起動したタイマ(locally configured guard timer)がModify Bearer Requestメッセージを受信する前に満了した場合、SGW15は、UE45に対するパケット着信処理を終了してもよい。もしくは、SGW15は、再度Downlink Data NotificationメッセージをMME25へ送信し、パケット着信処理を継続するようにしてもよい。
【0056】
ここで、ステップS27においてDownlink Data Notification Acknowledgeメッセージを受信した際に起動したタイマ(locally configured guard timer)がModify Bearer Requestメッセージを受信できず満了した場合、SGW15は、バッファリングされたUE45を宛先とするパケットを解放してもよい。
【0057】
以上説明したように本発明の実施の形態2にかかる通信システムを用いることにより、UE45がMMEの変更を伴う移動中であり、新たなMMEにおいてUE45の移動処理が完了していない間にUE45に対するパケット着信が発生した場合においても、UE45は正常にパケット着信通知を受信することが出来る。
【0058】
さらに、図3及び図4のように、MME35がSGSN37へ置き換えられ、eNB65が2G/3G無線制御装置67へ置き換えられた場合、ステップS21及びS23におけるTracking Area Update Requestメッセージは、Routing Area Update Requestメッセージに置き換えられる。また、ステップS32及び33におけるTracking Area Update Acceptメッセージは、Routing Area Update Acceptメッセージに置き換えられる。このとき、MME25とSGSN37がISR(Idle-mode signaling reduction)を有効にする場合、ステップS35にて行われるパケット着信処理の継続は、MME25とSGSN37の両方に行われてもよい。」

また図面として次の図7が記載されている。

図7

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 UE45が、eNB65へTracking Area Update Requestメッセージを送信し、
前記Tracking Area Update Requestメッセージの送信に基づき、UE45に対するパケット着信を通知されるSGW15は、MME25へDownlink Data Notificationメッセージを送信し、MME35はSGW15へModify Bearer Requestメッセージを送信し、Modify Bearer Requestメッセージを送信したMME35は、UE45の呼び出し処理を行うために、eNB65へPagingメッセージを送信し、eNB65は、配下の通信エリアに在圏するUEに対してPagingメッセージを送信する、
着信処理方法。」


第5 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次の一致点、相違点が認められる。

(一致点)
「 移動通信システムにおける端末への着信処理方法であって、
前記端末が、LTE基地局へのTracking Area Update Requestメッセージの送信を行うステップと、
前記Tracking Area Update Requestメッセージの送信に基づき、前記端末に対するパケット着信を受けたSGW(Serving Gateway)から、MME(Mobility Management Entity)にDDN(Downlink Data Notification)メッセージが送信され、前記MMEと異なる他のMMEからModify Bearer Requestメッセージを前記SGWに送信された場合に、前記Modify Bearer Requestメッセージを送信した前記他のMMEから前記LTE基地局を介して前記端末がページを受けるステップと、
を有する、移動通信システムにおける端末への着信処理方法。」

(相違点1)
本願発明は、「ISR(Idle-mode Signaling Reduction)が有効な移動通信システムにおける端末への着信処理方法」であるのに対して、引用発明では上記「第4」で摘記した【0058】段落に「MME25とSGSN37がISR(Idle-mode signaling reduction)を有効にする場合、ステップS35にて行われるパケット着信処理の継続は、MME25とSGSN37の両方に行われてもよい。」という程度の示唆はされているものの、「ISR(Idle-mode Signaling Reduction)が有効な移動通信システム」であることについて明示はなく、これに関連して本願発明では「2G/3G無線制御装置へのRouting Area Update Requestメッセージの送信を行う」構成、「SGSN(Serving GPRS Support Node)にDDN(Downlink Data Notification)メッセージが送信され」る構成、及び「他のSGSNから・・・Modify Bearer Requestメッセージを前記SGWに送信」する構成、を備えているのに対して、引用発明にはこれらの構成について明示されていない点。

(相違点2)
本願発明では、「Modify Bearer Requestメッセージ」は「前記ISRが有効であることを示す情報を含む」のに対して、引用発明でこのような特定がない点。

(相違点3)
本願発明では「前記ISRが有効であったとしても前記Modify Bearer Requestメッセージを送信した前記他のMMEまたは前記他のSGSNのみから前記LTE基地局または前記2G/3G無線制御装置を介して前記端末がページを受ける」のに対して、引用発明では「Modify Bearer Requestメッセージを送信したMME35は、UE45の呼び出し処理を行うために、eNB65へPagingメッセージを送信する」だけのものである点。

(相違点4)
本願発明では「前記端末が、前記LTE基地局または前記2G/3G基地局制御装置に対して前記ページに伴う処理を実行するステップ」を有するのに対して、引用発明ではこれについて明示されていない点。

2.相違点についての判断
相違点2について先に検討する。
引用発明には、「Modify Bearer Requestメッセージ」に「前記ISRが有効であることを示す情報」が含まれることに関して何ら記載されていない。そして、ISRに関しては、上記「第4」で摘記した引用文献1の【0058】段落に「MME25とSGSN37がISR(Idle-mode signaling reduction)を有効にする場合、ステップS35にて行われるパケット着信処理の継続は、MME25とSGSN37の両方に行われてもよい。」との示唆があるにとどまり、ISRを有効にする場合、各ステップにおいて具体的にどのような信号のやりとりが行われるか引用文献1に十分に開示されていないことに鑑みても、相違点2とした本願発明の構成は引用発明から容易に想到できたものということはできない。また、本願発明は引用発明と同一であるということもできない。したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明は、引用発明と同一であるということはいえず、また、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-05 
出願番号 特願2015-215646(P2015-215646)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 113- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 矢頭 尚之
特許庁審判官 山本 章裕
近藤 聡
発明の名称 移動通信システムにおける端末への着信処理方法  
代理人 家入 健  

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