• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1329668
審判番号 不服2016-12031  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-09 
確定日 2017-07-18 
事件の表示 特願2014-104114「モバイル装置イベントの通知」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日出願公開、特開2014-197401、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)1月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年1月30日 米国)を国際出願日とする特願2010-545217号の一部を平成26年5月20日に新たに特許出願したものであって、平成27年7月30日付けで拒絶理由が通知され、同年11月26日付けで手続補正がなされたが、平成28年4月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正がなされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年4月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?20に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2006/0101350号明細書
2.特開2002-55750号公報(周知技術を示す文献)


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は、補正前の請求項1,11に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記視覚可能なパネルの前記端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの下にパンされた場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの底部に達するまで自動的に移動し続ける」について、「前記視覚可能なパネルの端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの下にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの底部に達するまで自動的に移動し続け、前記視覚可能なパネルの前記端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの上側にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの上部に達すまで戻る」とする補正事項を含むものである。
当該補正事項は、出願当初の明細書の段落【0052】に記載された事項であるから、新規事項を追加するものではない。
また、当該補正事項は、補正前の請求項1,11の各々に記載した発明を特定するために必要な事項である「パンする」について限定するものであって、補正前の請求項1,11に記載された発明と補正後の請求項1,11に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が各々同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?20に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明
本願請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明20」という。)は、平成28年8月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
コンピュータで実施される方法において、
コンピュータデバイスによって、前記コンピュータデバイスのタッチスクリーンディスプレイの周囲の近傍にステータスバーを表示するステップと、
前記コンピュータデバイスによって、前記タッチスクリーンディスプレイ上でスライドユーザ入力を受取るステップであって、前記スライドユーザ入力は、前記タッチスクリーンディスプレイの接触位置でのユーザ接触を含み、前記ユーザ接触は、前記ステータスバーにおいて開始し、かつ、前記タッチスクリーンディスプレイとの接触を維持しながら、前記タッチスクリーンディスプレイに亘ってスライドするとともに前記ステータスバーから離れ、その結果、前記ステータスバーを横断する、受取るステップと、
前記スライドユーザ入力の受取りに応じて、前記スライドユーザ入力の前記接触位置に基づいて前記タッチスクリーンディスプレイに亘って視覚可能なパネルの端をパンするステップであって、前記視覚可能なパネルは、前記視覚可能なパネルの前記端をパンするステップの前に前記タッチスクリーンディスプレイに可視に表示された少なくとも一部を少なくとも部分的に覆い、前記視覚可能なパネルの前記端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの下にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの底部に達するまで自動的に移動し続け、前記視覚可能なパネルの前記端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの上側にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの上部に達するまで戻る、パンするステップと、
前記スライドユーザ入力の受取りに応じて、前記コンピュータデバイスによって受信され、かつ、前記コンピュータデバイス上の複数の異なるソフトウェアアプリケーションに対応する複数のメッセージからのテキストを、前記コンピュータデバイスによって、かつ、前記視覚可能なパネルにおいて表示するステップと
を含む、コンピュータで実施される方法。」

なお、本願発明2?20の概要は以下のとおりである。
本願発明2?10は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明11は、本願発明1の「コンピュータで実施される方法」を「実行されると1又は2以上のプロセッサに演算を遂行させる記憶された命令を有する機械可読データ記憶媒体」として記載した発明である。
本願発明12?20は、本願発明11を減縮した発明である。


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次のア,イのとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。以下、同様。

「[0003] Representing multiple services and functions to a user on a single wireless mobile device presents a number of challenges to the designer of a user interface, particularly a graphical user interface (GUI), for controlling the device. Wireless devices are usually small relative to less portable computing devices such as laptops and desktop computers. Inherently then, a visual display such as an LCD or other screen component of the wireless mobile device has a small display area.
[0004] Typically, GUIs for wireless mobile devices comprise a main or home screen and one or more sub-screens that may be navigated from the main screen. Notification icons are often, rendered on a portion of the main screen to indicate a new event such as the receipt of a new IM message, electronic mail (e-mail) or other service events such as a calendar reminder or alarm and other status information such as time, date and battery life. For each type of service or function available via the device, a graphical image or icon is often rendered on a major portion of the main screen, which icon may be selected by moving a focus or cursor about the interface and selecting the desired item to launch a specific GUI for the selected service or function.
[0005] There is a demand to have information made available to a user quicker than previously available in order to optimize the control of the wireless device. An application icon or information or text (e.g. name or title) describing the application is generally static and as such is not particularly useful for representing changing information associated with the application activated by the icon. Representing current information to a user via a predominantly iconic GUI is difficult. Further, organizing such information in a useful manner to permit a user to better control the device is also problematic.
[0006] Accordingly, there is a resulting need for a method and apparatus that addresses one or more of these shortcomings.
[0007] The invention relates to a method, graphical user interface and apparatus for controlling an apparatus.
[0008] In accordance with a first aspect of the invention, there is provided a method for controlling an apparatus comprising: providing at least one dynamic bar for displaying on a main screen of a graphical user interface for controlling the apparatus, each dynamic bar associated with respective one or more interfaces for applications and/or functions provided by the apparatus, said each dynamic bar having an pop-up interface for providing at least one of preview information determined from information managed by the applications and/or functions and links to invoke said respective interfaces; and invoking said respective interfaces to control said apparatus in response to user input. 」
(当審訳:[0003]1つの無線モバイル装置において、複数のサービスや機能をユーザに示すことは、その装置を制御するためのユーザ・インターフェイス、特にグラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)、のデザイナーにとって多くの課題を提起する。無線装置は、ラップトップやデスクトップ・コンピュータといった比較的持ち運びの少ないコンピュータ装置に比して、通常小さいものである。よって本質的に、LCDやその他のスクリーン部品といった無線モバイル装置の画像表示は、小さい画像領域を備えるものである。
[0004]典型的には、無線モバイル装置用のGUIは、メインまたはホーム画面と、メイン画面からナビゲートすることができる1つまたは複数のサブ画面を備えている。しばしば、新しいIMメッセージ、電子メール(Eメール)の受信などの新しいイベント、カレンダーのリマインダーやアラームなどの他のイベント、時間、日付、電池寿命などのようなステータス情報を示すために、メイン画面の一部には、通知アイコンが描画される。装置を介して利用可能なサービスまたは機能の種類毎に、しばしば、グラフィック画像やアイコンがメイン画面の大部分に描画され、アイコンは、インターフェイス上でフォーカスやカーソルを移動させることによって選択され、選択されたサービスまたは機能に対して特定のGUIを起動するために所望の項目を選択することができる。
[0005]無線装置の制御を最適化するために、従来よりも素早くユーザにとって情報を利用できるようにしたいという要望がある。アプリケーションを表すアプリケーション・アイコンや、情報や、テキスト(例えば、名前やタイトル)は一般的に静的であり、それ自体は、そのアイコンによって起動されるアプリケーションと関連した変化する情報を表現することには、特に有効ではない。現在の情報を、主にアイコンのGUIを用いてユーザに示すことは、難しい。さらに、そのような情報を有効な方法で組織し、ユーザにとってより良い装置の制御を可能にすることは、やはり解決の難しいことである。
[0006]従って、これらの課題のうちの1つまたは複数に対処する方法及び装置への要望が存在する。
[0007]本発明は、装置を制御するための方法であって、前記グラフィカル・ユーザ・インターフェイスおよび装置に関するものである。
[0008]本発明の第1の態様によれば、装置を制御するための方法であって、装置を制御するためのグラフィカル・ユーザ・インターフェイスのメイン画面に少なくとも1つのダイナミック・バーを提供し、各々のダイナミック・バーは、装置によって提供されるアプリケーションおよび/または機能のための1つかそれ以上のインターフェイスのそれぞれに関連し、前記各々のダイナミック・バーは、前記アプリケーションおよび/または機能によって管理された情報から決定された少なくとも1つのプレビュー情報と前記インターフェイスを呼び出すためのリンクとを提供するポップアップ・インターフェイスを有し、ユーザの入力に応答して前記装置を制御する前記それぞれのインターフェイスを起動する。)

「[0045] Referring now to FIG. 13, there is an illustration of an exemplary main screen 300, in accordance with an embodiment of the invention, for display 222 of mobile station 202 providing a graphical user interface for controlling mobile station 202. Main screen 300 is divided into three main portions, namely an application portion 302 for displaying and manipulating icons (e.g. 312) for various software applications and functions enabled by mobile station 202 and a mobile station status portion 306 for displaying status, information such as time, date, battery and signal strength, etc. Main screen 300 may not represent all application icons at once in application portion 302. A user may be required to navigate or scroll through the icons of application portion 302 to view additional application icons.
[0046] In accordance with a first embodiment of the invention, FIG. 3 includes a third portion 304 comprising a dynamic bar for controlling device 202. Dynamic bar 304 stretches horizontally across the main screen between portions 302 and 306. Persons skilled in the art will appreciate that such portions may be arranged differently about screen 300. For example, dynamic bar 304 may lie horizontally across the bottom of screen 300 or vertically. Dynamic bar 304 need not extend fully from one margin of the screen to another.
[0047] Dynamic Bar 304 includes a label portion 308 which in the present embodiment comprises a date reference and an expansion icon (downward pointing arrowhead) 310 . A user may click on the dynamic bar (e.g. using a point device, such as a thumb wheel) and expand the dynamic bar to preview items associated with the bar 304.」
[0048] FIGS. 5 and 6 illustrate similar main screens 300 as shown in FIGS. 3 and 4 but with a dynamic bar and expansion pop-up interface in accordance with a further embodiment of the invention. Dynamic bar 304 of FIGS. 5 and 6 includes counts of new events 502 (e.g. new voice mail messages, email messages, SMS messages or contacts online with which to chat).
[0049] Expansion pop-up 602 in the present embodiment does not preview a content of the new event but lists particular services 604 associated with the dynamic bar 304 such as voice mail, email, SMS and chat including an iconic representation of the service 606 and preview information comprising a count 608 as similarly displayed by bar 304 and a link 610 to invoke the associated application user interface for the service. Preview information may thus comprise information maintained by the associated applications and/or functions as well as information determined from this managed informations.」
(当審訳:[0045]ここで図13(審決注:「図13」は、「図3」の誤記である。)を参照すると、本発明の一実施形態による、モバイル・ステーション202を制御するためのグラフィカル・ユーザ・インターフェイスを提供するモバイル・ステーション202のディスプレイ222の例示的なメイン画面300を示す図である。メイン画面300は、大きく3つの部分、すなわち、様々なソフトウェア・アプリケーションおよび機能のためのアイコン(例えば、312)を表示するためのアプリケーション部302と、時間、日付、バッテリ、信号強度などの状態や情報を表示するためのモバイル・ステーション状態部306とに分けれる。メイン画面300は、アプリケーション部302に一度に全てのアプリケーションのアイコンを表示しなくともよい。ユーザは、追加のアプリケーションのアイコンを見るために、アプリケーション部302のアイコンをナビゲートしたり、スクロールしたりすることが必要となり得る。
[0046]本発明の第1の実施形態によれば、図3は、装置202を制御するためのダイナミック・バーを含む第3の部分304を含む。ダイナミック・バー304は、メイン画面を部分302と306との間で横切って水平に伸びている。当業者は、そのような部分は画面300について異なって配置され得ることを理解できるであろう。例えば、ダイナミック・バー304は、スクリーン300の底部を横切って水平方向に、あるいは、垂直方向に位置してもよい。ダイナミック・バー304は、画面の一縁から他に完全に延びる必要はない。
[0047]ダイナミック・バー304はラベル部分308を含み、この実施例ではラベル部分308は日付と拡大アイコン(下方を指す矢印)を含む。ユーザは、ダイナミック・バーをクリック(例えば、サムホイールのようなポイントデバイスを用いて)し、ダイナミック・バーを、そのバー304に関連付けられた項目をプレビューするために広げる。
[0048]図5及び6は、図3及び4に示されたメイン画面300と似ているが、この発明の更なる実施例に従ったダイナミック・バーと拡大ポップアップ・インターフェイスを備えたメイン画面300を図示する。図5及び6のダイナミック・バー304は、新しいイベント502 (例えば、新しい、音声メール・メッセージ、電子メール・メッセージ、SMSメッセージ、又はチャットをするためのオンライン接続)のカウントを含む。
[0049]この実施例の拡大ポップアップ602は、新しいイベントの内容はプレビューしない。しかし、拡大ポップアップ602は、ダイナミック・バー304に関連付けられている、音声メールや、電子メールや、SMSや、チャットといった特定のサービス604を、そのサービスのアイコン表現606を含めてリスト表示し、バー304で表示されていたのと同様にカウント608からなるプレビュー情報をリスト表示し、かつ、サービスのために関連するアプリケーションのユーザ・インターフェイスを起動するリンク610をリスト表示する。このようにして、プレビュー情報は、関連するプリケーションや機能によって維持される情報と共に、これらの管理情報から決定される情報より構成される。)

引用文献1の上記記載事項から、以下のことがいえる。
a
段落[0045],[0046]の記載によれば、引用文献1には、
「モバイル・ステーション202を制御するための方法であって、
モバイル・ステーション202を制御するためのグラフィカル・ユーザ・インターフェイスのメイン画面300をディスプレイ222に表示し、
メイン画面300は、
様々なソフトウェア・アプリケーションおよび機能のためのアイコン(例えば、312)を表示するためのアプリケーション部302と、
時間、日付、バッテリ、信号強度などの状態や情報を表示するためのモバイル・ステーション状態部306と、
メイン画面をアプリケーション部302とモバイル・ステーション状態部306との間で横切って水平に伸びる、モバイル・ステーション202を制御するためのダイナミック・バーを含む第3の部分304との3つの部分からなる、
モバイル・ステーション202を制御するための方法。」が記載されている。
b
段落[0047]?[0049]の記載によれば、引用文献1には、
「ダイナミック・バー304には、新しいイベント502 (例えば、新しい、音声メール・メッセージ、電子メール・メッセージ、SMSメッセージ、又はチャットをするためのオンライン接続)のカウントを表示し、
ダイナミック・バー304はラベル部分308を含み、ラベル部分308は日付と拡大アイコン(下方を指す矢印)を含み、
ユーザは、サムホイールのようなポイントデバイスを用いて、ダイナミック・バー304の拡大アイコン(下方を指す矢印)をクリックし、ダイナミック・バーを、そのバー304に関連付けられた項目をプレビューするために広げ、
拡大ポップアップ602は、ダイナミック・バー304に関連付けられている、音声メールや、電子メールや、SMSや、チャットといった特定のサービス604を、そのサービスのアイコン表現606を含めてリスト表示し、バー304で表示されていたのと同様にカウント608からなるプレビュー情報をリスト表示し、かつ、サービスのために関連するアプリケーションのユーザ・インターフェイスを起動するリンク610をリスト表示する」ことが記載されている。
c
したがって、上記a、bより、引用文献1には、
「モバイル・ステーション202を制御するための方法であって、
モバイル・ステーション202を制御するためのグラフィカル・ユーザ・インターフェイスのメイン画面300をディスプレイ222に表示し、
メイン画面300は、
様々なソフトウェア・アプリケーションおよび機能のためのアイコン(例えば、312)を表示するためのアプリケーション部302と、
時間、日付、バッテリ、信号強度などの状態や情報を表示するためのモバイル・ステーション状態部306と、
メイン画面をアプリケーション部302とモバイル・ステーション状態部306との間で横切って水平に伸びる、モバイル・ステーション202を制御するためのダイナミック・バーを含む第3の部分304との3つの部分からなり、
ダイナミック・バー304には、新しいイベント502 (例えば、新しい、音声メール・メッセージ、電子メール・メッセージ、SMSメッセージ、又はチャットをするためのオンライン接続)のカウントを表示し、
ダイナミック・バー304はラベル部分308を含み、ラベル部分308は日付と拡大アイコン(下方を指す矢印)を含み、
ユーザは、サムホイールのようなポイントデバイスを用いて、ダイナミック・バー304の拡大アイコン(下方を指す矢印)をクリックし、ダイナミック・バーを、そのバー304に関連付けられた項目をプレビューするために広げ、
拡大ポップアップ602は、ダイナミック・バー304に関連付けられている、音声メールや、電子メールや、SMSや、チャットといった特定のサービス604を、そのサービスのアイコン表現606を含めてリスト表示し、バー304で表示されていたのと同様にカウント608からなるプレビュー情報をリスト表示し、かつ、サービスのために関連するアプリケーションのユーザ・インターフェイスを起動するリンク610をリスト表示する、
モバイル・ステーション202を制御するための方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次のア?オのとおりの記載がある。

「【0012】携帯型情報処理装置01は、フルカラー画像情報を高精細表示できる性能を備えた画像表示ディスプレイ09を実装し、主にペン式の入力デバイス05によって座標指示を受ける手帳サイズの携帯情報端末(PDA)である。」

「【0015】図3に示す背面側は、携帯型情報処理装置01をユーザーが使用する際、主に操作が行われる側である。ペン式の入力デバイス05により画像表示ディスプレイ09上のタッチパネルセンサー11がタッチされ、これによって座標が指示され、各種機能が選択される。10はスピーカーである。
【0016】図4の横断面図に示すように、タッチパネルセンサー11は外装カバー部材04に取り囲まれた構成となっており、入力デバイス05をタッチパネルセンサー11の上面に沿って移動させると外装カバー部材04に突き当たるように、タッチパネルセンサー11に対して外装カバー部材04が段差となっている。
【0017】図5はタッチパネルセンサー11の構成を示す図である。
【0018】タッチパネルセンサー11には、イメージ表示用のエリア11Eとメニュー表示トリガーエリア11A?11Dとが設けられる。引き出しメニュー表示トリガーエリア11A?11Dは、タッチパネルセンサー11が外装カバー部材04に接する付近にそれぞれ位置する。これにより、入力デバイス05をタッチパネルセンサー11の上面に沿って移動させ、外装カバー部材04に突き当たったとき、入力デバイス05が引き出しメニュー表示トリガーエリア11A?11Dのいずれかに位置することになる。なお、引き出しメニュー表示トリガーエリア11A?11Dの座標定義は、入力デバイス05のペン先の形状などから決められ、入力デバイス05が外装カバー部材04に突き当てられた時にタッチパネルセンサー11で検出される座標範囲に少し余裕幅を持たせて定義する。引き出しメニュー表示トリガーエリア11A?11Dの予め定義された各座標情報はROM内に登録されており、入力デバイス05による座標情報を検出した際、ROM内に登録された座標情報と照合し、入力デバイス05による座標情報が引き出しメニュー表示トリガーエリア11A?11D内に存在すると判定された場合に、後述する引き出しメニューの表示起動の待機状態となり、さらに入力デバイス05がタッチパネルセンサー11の中央へ向けてスクロールされたことが検出されると、引き出しメニューを表示することになる。」

「【0039】まず、引き出しメニューを表示する際の処理手順を概略説明すると、あらかじめタッチパネルセンサー11上の引き出しメニュー表示トリガーエリア11A?11Dの定義座標をROM25に登録しておく。それらのエリアを入力デバイス05によって接触されたことが検出された場合、検出座標データをROM25に登録された定義座標と照合して、操作対象となった引き出しメニュー表示トリガーエリアに対応する引き出しメニューが選択され、表示待機状態になる。画像表示ディスプレイ09の中央部へ向けた入力デバイス05のドラッグによって、検出座標が連続的に更新されると、それに伴って引き出しメニューがドラッグされた方向に引き出される。検出情報がOFF(タッチパネルセンサー11に対する入力デバイス05の接触がなくなり、座標が検出されなくなる)されると、引き出しメニューはドラッグされた位置で表示を継続する。ここで、「OFF」とは、タッチパネルセンサー11に対する入力デバイス05の接触がなくなり、座標が検出されなくなることを指す。以下の説明においても「OFF」を同じ意味において使用する。
【0040】まず、ステップS101で、画像表示ディスプレイ09の全画面を使って写真画像などを表示する。図12の画面D1はこのときの画像表示ディスプレイ09の画面を示す。次に、ステップS102で、入力デバイス05によって接触されたタッチパネルセンサー11上の位置座標を検出する。」

「【0044】こうして、ユーザーは広い引き出しメニュー表示トリガーエリア11A?11D内を入力デバイス05で大雑把に操作するだけで、目的のメニューを表示させることが可能となる。
【0045】次に、例えば、入力デバイス05が引き出しメニュー表示トリガーエリア11Bに接触したまま、入力デバイス05をタッチパネルセンサー11に接したまま離さないで、画像表示ディスプレイ09の中央部へ向けてスライドさせると、図12の画面D5?D8のように、入力デバイス05の動きに伴ってB分類メニューが引き出される。これを、図10及び図11のステップS113?S118に沿って以下に説明する。
【0046】まず、ステップS113において、入力デバイス05がメニュー表示トリガーエリア11B,11Cに接触することによって検出される座標値のY座標値だけを監視する。ここでは、引き出しメニュー表示トリガーエリア11B,Cが選択されているので、X軸情報は無視され、Y軸情報のみ、処理に反映される。ユーザーは入力デバイス05を正確に垂直方向にドラッグすることを意識しなくても、大雑把に下方向ヘドラッグすることでその意図を反映させることができる。一般的に、利き手が左右のどちらかによってドラッグする方向が垂直方向から若干ずれるが、例えば、右利きユーザーの場合は垂直方向よりやや左寄り、つまり右上から左下へのベクトルでドラッグする。また、左利きはその逆で左上から右下へのベクトルでドラッグする。しかし、Y軸情報の変化値のみ反映させる方法をとることによって、以上のような癖に影響されずにユーザーの意図を反映させることが可能となる。
【0047】ステップS114では、入力デバイス05によるY座標値に応じて引き出しメニューの表示量を更新する。なお、引き出しメニューの最も引き出し可能な最大引き出し量は、仕様に応じての定義を変えることはできるが、本実施の形態では、表示領域の中心位置までと定義する。
【0048】なお、メニュー引き出し量yが所定の定義量に満たない間に、図12の画面D5に示すようにOFFになった場合は、メニュー引き出しの処理は途中でキャンセルされ、ステップS101に戻る(S115)。また、メニュー引き出し量yが所定の定義量を越えた後で、図12の画面D6に示すようにOFFになった場合は、その位置で引き出しメニューの引き出しは停止され、そのまま使用できる(S116)。さらに、メニュー引き出し量yが最大引き出し量を越えた場合、引き出しメニューの引き出しを停止し、最大引き出し量を維持し(S117)、検出座標値を無視する(S118)。
【0049】なお、上記実施の形態とは違い、図12の画面D2,D5,D6のような処理経過における検出座標値の変化速度を検出し、変化速度が高速である場合は、図12の画面D6の処理でOFFされても、図12の画面D8の処理に移らず、図12の画面D9の処理に移るようにしてもよい。
【0050】入力デバイス05がメニュー表示トリガーエリア11A,11Dを選択している場合、同様に、ステップS106において、入力デバイス05がメニュー表示トリガーエリア11A,11dに接触することによって検出される座標値のX座標値だけを監視する。ここでは、Y軸情報は無視され、X軸情報のみ、処理に反映される。
【0051】ステップS107では、入力デバイス05によるX座標値に応じて引き出しメニューの表示量を更新する。
【0052】なお、メニュー引き出し量xが所定の定義量に満たない間にOFFになった場合は、メニュー引き出しの処理は途中でキャンセルされ、ステップS101に戻る(S108)。また、メニュー引き出し量xが所定の定義量を越えた後でOFFになった場合は、その位置で引き出しメニューの引き出しは停止され、そのまま使用できる(S109)。さらに、メニュー引き出し量xが最大引き出し量を越えた場合、引き出しメニューの引き出しを停止し、最大引き出し量を維持し(S110)、検出座標値を無視する(S111)。」

「【0096】第3の実施形態の構成は、基本的に第1の実施形態の構成と同じであるので、第3の実施形態の説明においては、第1の実施形態の構成を流用する。
【0097】第3の実施形態では、携帯型情報処理装置01で行われる制御処理の内容が、第1の実施形態と異なっている。
【0098】図25は、第3の実施形態における引き出しメニューの表示処理の手順を示すフローチャートである。この表示処理では、最大引き出し量の拡張が行われる。図26は、引き出し量に応じて画像表示ディスプレイ09の画面上に表示されるA分類メニューの画面を示す図である。まず、図26を参照して、第3の実施の形態の特徴を説明する。
【0099】第3の実施形態では、引き出しメニューを画像表示ディスプレイ09の全表示領域まで最大限に使って表示し、機能項目をより多く表示するようにする。
【0100】前述した第1の実施形態では、引き出しメニューの最大表示量を画像表示ディスプレイ09の中心の位置まで(半表示領域)と設定したが、その理由として画像表示ディスプレイ09に本来表示されるべき画像をできるだけ隠さないようにする配慮があった。しかし、機能項目の性質によっては、必ずしも本来表示画像が表示されている必要はなく、むしろ引き出しメニュー内の機能項目の一覧性を高める方が求められる場合もある。
【0101】例えば、検索機能では、本来表示画像は必要でなく、この場合、図26の画面D65,D69に示すように、画像表示ディスプレイ09の全表示領域を引き出しメニューの表示に利用する。一方、画像編集機能では、本来表示画像は必要であり、この場合、本来表示画像と引き出しメニューとを同時に表示するようにする。この場合の引き出しメニューの最大表示量は、画像表示ディスプレイ09の画面の1/2とする。
【0102】なお、本実施の形態では、上下のB,C分類メニューに、本来表示画像を見ながら機能を選択する頻度が高い機能項目を収納するので、B,C分類メニューは画像表示ディスプレイ09の画面の半分まで引き出せるようにし、左右のA,D分類メニューは画像表示ディスプレイ09の全表示領域まで引き出せるようにする。
【0103】引き出しメニューを画像表示ディスプレイ09の全表示領域まで引き出せるようにする場合でも、図25の画面D62?D65に示すように、引き出し量に関係なく、引き出しメニュー内に全部の機能項目を表示する方式と、図25の画面D66?D69に示すように、引き出し量に応じて、引き出しメニュー内に表示する機能項目の数を段階的に変える方式とがあり得る。機能項目の性質によってどちらかの方式を選択して実装するようにしてもよいし、あるいはユーザーが両方の方式のいずれかを自由に選択できるようにしてもよい。
【0104】図25のフローチャートでは、A分類メニューの表示を例に取り上げて示している。ステップS501,S502,S503は、図10に示すステップS103,S104,S106とそれぞれ同一の内容となっているので、それらの説明を省略する。
【0105】ステップS504では、入力デバイス05の接触による検出X座標値に応じて、引き出しメニュー表示トリガーエリア11Aの表示位置を更新するとともに、それに伴った機能項目の表示を行う。このとき、入力デバイス05がOFFされると、その表示状態を維持する。
【0106】また、ステップS505は、入力デバイス05が、ステップS504での移動方向と反対の方向に移動された場合の引き出しメニューの表示処理を示し、この場合でも、検出X座標値に応じて、引き出しメニュー表示トリガーエリア11Aの表示位置を更新するとともに、それに伴った機能項目の表示を行う。このとき、入力デバイス05がOFFされると、その表示状態を維持する。
【0107】そして、入力デバイス05が、ステップS505での移動方向に更に移動して、検出X座標値xが所定の定義量よりも小さくなると、引き出しメニューの表示を停止する(S506)。
【0108】すなわち、第3の実施の形態では、最大引き出し量の定義を設けず、画像表示ディスプレイ09の全表示領域を引き出しメニューの表示に使用できるようにする。」

したがって、引用文献2には、第3の実施の形態に着目すると、
「ペン式の入力デバイスによるタッチパネルセンサーへのタッチにより座標を指示する携帯型情報処理装置における、メニューの引き出し方法において、
入力デバイス05が引き出しメニュー表示トリガーエリア11Bに接触したまま、入力デバイス05をタッチパネルセンサー11に接したまま離さないで、画像表示ディスプレイ09の中央部へ向けてスライドさせると、入力デバイス05の動きに伴ってB分類メニューが引き出され、
メニュー引き出し量yが所定の定義量に満たない間に、入力デバイス05の接触がなくなると、メニュー引き出しの処理は途中でキャンセルされ、もとに戻り、
メニュー引き出し量yが所定の定義量を越えた後で、入力デバイス05の接触がなくなると、その位置で引き出しメニューの引き出しは停止され、
入力デバイス05の検出座標値の変化速度を検出し、変化速度が高速である場合は、入力デバイス05の接触がなくなっても、最大引き出し量までメニューを引き出してもよく、メニューの最大引き出し量は、画像表示ディスプイ09の全表示領域の最大限でもよい、
メニューの引き出し方法。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明の「モバイル・ステーション202」は、本願発明1と同様の「コンピュータ」、「コンピュータデバイス」であるといえる。
また、引用発明の「モバイル・ステーション202を制御するための方法」は、「モバイル・ステーション202」で実施される方法であることは明らかであるから、引用発明の「モバイル・ステーション202を制御するための方法」は、本願発明1と同様の「コンピュータで実施される方法」であるといえる。

引用発明の「ディスプレイ222」に「メイン画面300」として、「ダイナミック・バー304」を表示し、「ダイナミック・バー304」に表示される「新しいイベント」は、メール等が新しく受信された状態等を示す「ステータス」ともいい得るから、引用発明の「ディスプレイ222」に「メイン画面300」として、「ダイナミック・バー304」を表示し、「ダイナミック・バー304」に「新しいイベント」を表示することと、本願発明1の「コンピュータデバイスによって、前記コンピュータデバイスのタッチスクリーンディスプレイの周囲の近傍にステータスバーを表示するステップ」とは、いずれも、「コンピュータデバイスによって、前記コンピュータデバイスのディスプレイにステータスバーを表示するステップ」である点で共通する。

引用発明の「ユーザは、サムホイールのようなポイントデバイスを用いて、ダイナミック・バー304の拡大アイコン(下方を指す矢印)をクリックし、ダイナミック・バーを、そのバー304に関連付けられた項目をプレビューするために広げ」ることと、本願発明1の「前記コンピュータデバイスによって、前記タッチスクリーンディスプレイ上でスライドユーザ入力を受取るステップであって、前記スライドユーザ入力は、前記タッチスクリーンディスプレイの接触位置でのユーザ接触を含み、前記ユーザ接触は、前記ステータスバーにおいて開始し、かつ、前記タッチスクリーンディスプレイとの接触を維持しながら、前記タッチスクリーンディスプレイに亘ってスライドするとともに前記ステータスバーから離れ、その結果、前記ステータスバーを横断する、受取るステップ」とは、いずれも、「前記コンピュータデバイスによって、ユーザ入力を受取るステップであって、前記ユーザ入力は、前記ステータスバーを広げるための入力である、受取るステップ」である点で共通する。

引用発明の「拡大ポップアップ602」を表示することと、本願発明1の「前記スライドユーザ入力の受取りに応じて、前記スライドユーザ入力の前記接触位置に基づいて前記タッチスクリーンディスプレイに亘って視覚可能なパネルの端をパンするステップであって、前記視覚可能なパネルは、前記視覚可能なパネルの前記端をパンするステップの前に前記タッチスクリーンディスプレイに可視に表示された少なくとも一部を少なくとも部分的に覆い、前記視覚可能なパネルの前記端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの下にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの底部に達するまで自動的に移動し続け、前記視覚可能なパネルの前記端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの上側にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの上部に達するまで戻る、パンするステップ」とは、いずれも、「前記ユーザ入力の受取りに応じて、視覚可能なパネルを広げるステップ」である点で共通する。

引用発明の「拡大ポップアップ602は、ダイナミック・バー304に関連付けられている、音声メールや、電子メールや、SMSや、チャットといった特定のサービス604を、そのサービスのアイコン表現606を含めてリスト表示し、バー304で表示されていたのと同様にカウント608からなるプレビュー情報をリスト表示し、かつ、サービスのために関連するアプリケーションのユーザ・インターフェイスを起動するリンク610をリスト表示する」ことと、本願発明1の「前記スライドユーザ入力の受取りに応じて、前記コンピュータデバイスによって受信され、かつ、前記コンピュータデバイス上の複数の異なるソフトウェアアプリケーションに対応する複数のメッセージからのテキストを、前記コンピュータデバイスによって、かつ、前記視覚可能なパネルにおいて表示するステップ」とは、いずれも、「前記入力の受取りに応じて、前記コンピュータデバイスによって受信され、かつ、前記コンピュータデバイス上の複数の異なるソフトウェアアプリケーションに対応する情報を、前記コンピュータデバイスによって、かつ、前記視覚可能なパネルにおいて表示するステップ」である点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「コンピュータで実施される方法において、
コンピュータデバイスによって、前記コンピュータデバイスのディスプレイにステータスバーを表示するステップと、
前記コンピュータデバイスによって、ユーザ入力を受取るステップであって、前記ユーザ入力は、前記ステータスバーを広げるための入力である、受取るステップと、
前記ユーザ入力の受取りに応じて、視覚可能なパネルを広げるステップと、
前記入力の受取りに応じて、前記コンピュータデバイスによって受信され、かつ、前記コンピュータデバイス上の複数の異なるソフトウェアアプリケーションに対応する情報を、前記コンピュータデバイスによって、かつ、前記視覚可能なパネルにおいて表示するステップと
を含む、コンピュータで実施される方法。」
[相違点]
(相違点1)
コンピュータデバイスのディスプレイが、本願発明1では「タッチスクリーンディスプレイ」であるのに対し、引用発明では「タッチスクリーンディスプレイ」ではなく、また、「ユーザ入力」が、本願発明1では、「ユーザ接触」、「スライドユーザ入力」であるのに対し、引用発明ではそうではない点。
(相違点2)
「ステータスバーを広げるための入力」が、本願発明1では、「ユーザ接触は、前記ステータスバーにおいて開始し、かつ、前記タッチスクリーンディスプレイとの接触を維持しながら、前記タッチスクリーンディスプレイに亘ってスライドするとともに前記ステータスバーから離れ、その結果、前記ステータスバーを横断する」ものであるのに対し、引用発明では、「ポイントデバイスを用いて、拡大アイコン(下方を指す矢印)をクリック」するものである点。
(相違点3)
「前記ユーザ入力の受取りに応じて、視覚可能なパネルを広げるステップ」が、本願発明1では、「前記スライドユーザ入力の前記接触位置に基づいて前記タッチスクリーンディスプレイに亘って視覚可能なパネルの端をパンするステップであって、前記視覚可能なパネルは、前記視覚可能なパネルの前記端をパンするステップの前に前記タッチスクリーンディスプレイに可視に表示された少なくとも一部を少なくとも部分的に覆い、前記視覚可能なパネルの前記端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの下にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの底部に達するまで自動的に移動し続け、前記視覚可能なパネルの前記端が、前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの上側にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの上部に達するまで戻る、パンするステップ」であるのに対し、引用発明では、「拡大ポップアップ602」を表示するものである点。
(相違点4)
コンピュータデバイスによって、かつ、視覚可能なパネルにおいて表示される、「コンピュータデバイス上の複数の異なるソフトウェアアプリケーションに対応する情報」が、本願発明1では、「複数のメッセージからのテキスト」であるのに対し、引用発明では、特定のサービスのアイコン表現を含めたリスト表示、カウントからなるプレビュー情報のリスト表示、サービスのために関連するアプリケーションのユーザ・インターフェイスを起動するリンクであり、複数のメッセージからのテキストではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
上記「第5」2.の引用発明2のとおり、「ペン式の入力デバイスによるタッチパネルセンサーへのタッチにより座標を指示する携帯型情報処理装置における、メニューの引き出し方法において、入力デバイス05が引き出しメニュー表示トリガーエリア11Bに接触したまま、入力デバイス05をタッチパネルセンサー11に接したまま離さないで、画像表示ディスプレイ09の中央部へ向けてスライドさせると、入力デバイス05の動きに伴ってB分類メニューが引き出され、メニュー引き出し量yが所定の定義量に満たない間に、入力デバイス05の接触がなくなると、メニュー引き出しの処理は途中でキャンセルされ、もとに戻り、メニュー引き出し量yが所定の定義量を越えた後で、入力デバイス05の接触がなくなると、その位置で引き出しメニューの引き出しは停止され、入力デバイス05の検出座標値の変化速度を検出し、変化速度が高速である場合は、入力デバイス05の接触がなくなっても、最大引き出し量までメニューを引き出してもよく、メニューの最大引き出し量は、画像表示ディスプイ09の全表示領域の最大限でもよい、メニューの引き出し方法。」は、本願優先日前の公知技術であったといえる。
しかしながら、引用文献2には、検出座標値の変化速度が高速である場合に、メニューを画面の下まで引き出すことは開示されているものの、「前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの下にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの底部に達するまで自動的に移動し続け」ることは、記載も示唆もされていない。
また、引用文献2には、「メニュー引き出し量yが所定の定義量に満たない間に、入力デバイス05の接触がなくなると、メニュー引き出しの処理は途中でキャンセルされ、もとに戻」ることは開示されているものの、引き出し処理がキャンセルされてもとに戻るだけで、「上部に達するまで戻る」、すなわち、「視覚可能なパネルの端」が上部に移動していくことは記載も示唆もされていない。
したがって、引用文献1、2には、相違点3に係る本願発明1の「前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの下にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの底部に達するまで自動的に移動し続け」る構成と、「前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの上側にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの上部に達するまで戻る」構成が、記載も示唆もされておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえないから、当業者といえども、引用発明及び引用発明2から、相違点3に係る構成を当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
したがって、上記相違点1,2,4について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

2.本願発明2?10について
本願発明2?10は、本願発明1を限定したものであり、本願発明1の相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

3.本願発明11について
本願発明11は、本願発明1の「システム」を「方法」として記載した発明であり、本願発明1の相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

4.本願発明12?20について
本願発明12?20は、本願発明11を限定したものであり、本願発明1の相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

第7 原査定について
上記「第6 対比・判断」のとおり、本願発明1?20は、「前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの下にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの底部に達するまで自動的に移動し続け」る構成と、「前記タッチスクリーンディスプレイ上の所定レベルの上側にドラッグされ、かつ当該ドラッグが解放された場合、前記視覚可能なパネルの前記端は、前記タッチスクリーンディスプレイの上部に達するまで戻る」構成を有しており、拒絶査定において引用された引用文献1,2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1?20は、引用発明及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2014-104114(P2014-104114)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 聡子  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 土谷 慎吾
高瀬 勤
発明の名称 モバイル装置イベントの通知  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ