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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1329695
審判番号 不服2016-17811  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-29 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2012-134427「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月26日出願公開、特開2013-257479、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月14日付けの特許出願であって、原審において平成28年3月3日付けで拒絶理由通知がされた後、同年4月27日付けで手続補正がされ、同年9月5日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 同月13日。)がされ、これに対して、同年11月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定に係る拒絶理由の概要は、本願の請求項1ないし4に係る発明は、いずれも本願の出願前に頒布された刊行物である下記の引用文献1ないし6に記載された発明あるいは周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2006-201636号公報
2.特開平8-324843号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2001-171894号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平11-30933号公報(周知技術を示す文献)
5.特開平1-288535号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2001-169046号公報

第3 本願の発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成28年4月27日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりのものである。
「【請求項1】
用紙搬送路内に供給された用紙を画像形成して外部に排出する画像形成装置であって、
該画像形成装置に対する操作を受付ける操作部と、
該操作部にてユーザに選択されることにより、前記用紙搬送路内に複数の用紙を存在させた状態で画像形成させる第1出力モード、あるいは前記用紙搬送路内に単一の用紙を存在させた状態で画像形成させる第2出力モードのいずれかのモードを設定するモード設定部と、
該モード設定部の設定内容に基づいて前記用紙に画像形成する画像形成部とを備え、
特定種類の用紙が選択された場合、前記モード設定部は、前記第2出力モードを設定することを特徴とする画像形成装置。」

なお、本願発明2ないし4は、本願発明1を引用し、これを更に減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-201636号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(以下の下線は、いずれも審決で付した。)
「【0035】
この画像形成装置は、図1?図4に示すように、スキャナ部(原稿読み取り手段)3、用紙搬送部(給紙手段)59、画像形成部10および定着装置30(印字手段)、および排紙処理部(排紙手段)60から主になり、給紙カセット(用紙収納部)23から1枚ずつの用紙Pを選択的に搬出して画像形成部10に給紙する用紙搬送部59と、給紙された用紙上にトナー(未定着現像剤)を用いた画像情報を転写する転写部(感光体ドラム11、転写ローラ14)と、その転写部によって画像情報が転写された用紙をヒータを含む用紙加熱手段としての定着ローラ31およびそれと対向する加圧ローラ32によって加熱および加圧してその画像情報を用紙上にその画像情報を溶融・固着する定着装置30と、定着ローラ31を加熱するヒータランプからなる加熱部と、定着ローラ31の表面温度が所定温度になるように加熱部を制御する温度制御手段を有する画像形成装置である。」
「【0079】
図1に示すように、画像形成装置の上部側の前面部には、複写モード、プリントモード、ファクシミリモードの切替えの設定と、使用者が用紙Pの用紙種類(用紙寸法のほか、用紙の厚み等)、印刷枚数、倍率、濃度等の画像形成条件を設定する操作スイッチ類76が配設されている。」
「【0087】
画像形成装置は、運転条件設定部77が設けられる。この運転条件設定部77は、操作スイッチ類76によって使用者が設定したモード(複写モード、プリンタモード、ファクシミリモードのうちのいずれか)と、画像形成要求または記録媒体の種類等の画像形成条件にしたがって、画像形成装置の画像形成、または搬送条件等の運転条件を設定するものである。
【0088】
また、画像形成装置は、設定された前記運転条件にしたがって、前記読み取り部(スキャナ部3)、用紙搬送部59、画像形成部10、定着装置30および排紙処理部60等の駆動用アクチュエータである、原稿読み取り駆動部64、記録用紙搬送駆動部66、印字処理駆動部68、定着駆動部70および排紙駆動部72を、ROM55に記憶されたプログラムに基づく、CPU54の指令にしたがった同期した動作を駆動制御部62の制御によって行うようになっているものである。」
「【0103】
また、本発明の第5の実施形態では、複数の用紙に連続して画像形成する連続給紙モードと、一枚の用紙に画像形成するシングル給紙モードとを有しており、連続給紙モードでは画像形成の開始指示の入力があったときから所定枚数の画像形成時に、また、シングル給紙モードでは全ての用紙の画像形成時に、搬送制御機能が、用紙加熱手段の表面温度の上昇勾配に同期させて定着手段に用紙を通紙させるように用紙搬送手段を制御することを実現するものである。」
また、上記段落【0087】の「搬送条件等の運転条件」、及び上記段落【0103】の「複数の用紙に連続して画像形成する連続給紙モードと、一枚の用紙に画像形成するシングル給紙モードとを有しており」との記載から、上記連続給紙モード,及び上記シングル給紙モードは、(搬送条件等の)運転条件といえる。

上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「スキャナ部(原稿読み取り手段)3、用紙搬送部(給紙手段)59、画像形成部10および定着装置30(印字手段)、および排紙処理部(排紙手段)60を備える画像形成装置であって、
画像形成装置には、用紙種類(用紙寸法のほか、用紙の厚み等)、印刷枚数、倍率、濃度等の画像形成条件を設定する操作スイッチ類76が配設されると共に、操作スイッチ類76によって使用者が設定した画像形成要求または記録媒体の種類等の画像形成条件にしたがって、画像形成装置の画像形成、または搬送条件等の運転条件を設定する運転条件設定部77が設けられ、
運転条件には、複数の用紙に連続して画像形成する連続給紙モードと、一枚の用紙に画像形成するシングル給紙モードとを有しており
設定された前記運転条件にしたがって、原稿読み取り駆動部64、記録用紙搬送駆動部66、印字処理駆動部68、定着駆動部70および排紙駆動部72の動作を駆動制御部62の制御によって行う、画像形成装置。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平8-324843号公報)には次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザービームプリンタとか複写機等に用いられる給紙装置を有する画像形成装置に関する。」
「【0023】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように構成した従来の画像形成装置においては、ユーザが先にセットした用紙の搬送中に次の用紙をセットした場合、先の用紙が搬送途中であっても、次にセットされた用紙もまたシングル手差しユニット給紙ローラにより連続的に給紙されてしまい、最初の用紙の後端と次の用紙の先端とが重複して搬送されてしまうことがあるという問題があった。
【0024】そのように、用紙長のカウントにおいて、まず先にセットされた用紙が搬送されゲートセンサに到達し、ゲートセンサのステートが変化してからその用紙長のカウントが開始されるが、最初の用紙の後端と次の用紙の先端とが重複して搬送されてしまうと、ゲートセンサは最初の用紙の後端を検知することができないため、次の用紙の後端まで連続して最初の用紙長としてカウントしてしまうことになる。そのため、計測カウンタ値が0になったときでも、ゲートセンサのステートが変化しないので、最初の用紙がまだ搬送中であると見做されることになる。その結果、給紙した最初の用紙はユーザが指定した用紙長より長いと決定され、用紙サイズエラーになるという問題があった。」
「【0028】
【作用】本発明による画像形成装置は、上記のように構成し、特に、用紙がシングル手差しユニットから給紙完了したことを表示する表示手段を設けて、シングル手差しユニットに次の用紙をセットする手差し給紙のタイミングをユーザに表示するようにしたことにより、手差し給紙のタイミングを明確にして1枚ずつ確実にシングル手差しユニットから給紙することを可能にする。」
「【0043】
【発明の効果】本発明による画像形成装置は、以上説明したように構成し、特に、ゲートセンサを用紙が通過したか否か表示する表示手段を設けて、シングル手差しユニットにつぎの用紙をセットする手差し給紙のタイミングをユーザに表示するようにしたことにより、手差し給紙のタイミングを明確にして1枚ずつ確実にシングル手差しユニットから給紙することが可能となった。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「給紙装置を有する画像形成装置において、最初の用紙の後端と次の用紙の先端とが重複して搬送されてしまうことがあるという問題を解決するために、ゲートセンサを用紙が通過したか否か表示する表示手段を設けて、シングル手差しユニットにつぎの用紙をセットする手差し給紙のタイミングをユーザに表示するようにしたことにより、手差し給紙のタイミングを明確にして1枚ずつ確実にシングル手差しユニットから給紙する。」

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2001-171894号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】従来、例えばカラー原稿と白黒原稿のように複数種類の原稿が混在した1組の複数原稿を複写する場合、・・・カラー原稿はカラー複写装置で、白黒原稿は白黒複写装置でというように、別々に複写処理することが考えられる。」
「【0005】かかる問題を解消すべく、複数の複写機、例えばカラー複写機と白黒複写機を備えると共に、インサータトレイを備え、これらの組み合わせによって混在原稿を複写処理するようにした画像形成装置も既に提案されている。インサータトレイは一般に、画像形成部で画像形成した記録紙間に挿入するインサート紙を、画像形成部をバイパスして搬送可能な給紙トレイとして構成される。」
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記インサータトレイを備えた画像形成装置では、インサータトレイからの給紙方法として、表紙モードや合成モード等の出力形態を指定するものは存在したが、インサータトレイにおけるインサート紙の積載態様は固定的であり、必ずしも最適な動作で処理を行えなかった。」
「【0009】本発明・・・の目的は、複数の給紙モードを任意に設定可能にして処理効率及び使い勝手を向上することができる画像形成装置及びその制御方法並びに記憶媒体を提供することにある。」
「【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の請求項1の画像形成装置は、画像形成部で画像形成した記録紙間にインサート紙を挿入するように構成された画像形成装置において、前記インサート紙を積載可能な複数のインサータトレイと、該複数のインサータトレイに積載されたインサート紙を前記画像形成部をバイパスして給紙制御する給紙制御手段と、複数種類のインサート紙を挿入する場合において前記複数の各インサータトレイにおける前記複数種類のインサート紙の積載態様及び該積載態様に対応した前記給紙制御手段による給紙態様を規定する給紙モードを複数種類設定可能な給紙モード設定手段とを備えたことを特徴とする。」
「【0012】同じ目的を達成するために本発明の請求項3の画像形成装置は、上記請求項1または2記載の構成において、前記複数種類の給紙モードには、少なくとも、前記複数の各インサータトレイに同一種類のインサート紙のみが積載される第1給紙モードと、前記複数のインサータトレイの少なくとも1つに前記インサート紙が複数種類混合して積載される第2給紙モードとが含まれることを特徴とする。」
「【0019】同じ目的を達成するために本発明の請求項10の画像形成装置は、上記請求項1?9のいずれか1項に記載の構成において、前記インサート紙に予め記載された給紙モードを示す所定の情報を読み取る所定情報読み取り手段を備え、前記給紙モード設定手段は、前記所定情報読み取り手段により読み取られた前記所定の情報に基づいて前記給紙モードを設定することを特徴とする。」
「【0029】同じ目的を達成するために本発明の請求項20の画像形成装置は、上記請求項10?19のいずれか1項に記載の構成において、前記所定情報読み取り手段により前記所定の情報の読み取りができなかった場合は、前記給紙モード設定手段は、ユーザによるマニュアル設定により前記給紙モードを設定することを特徴とする。」

したがって、上記引用文献3には、ユーザにより給紙モードを設定するという技術事項を含む次の発明が記載されていると認められる。
「カラー複写機と白黒複写機を備えると共に、インサータトレイを備え、画像形成部で画像形成した記録紙間に、複数のインサータトレイに積載された複数種類のインサート紙を挿入するように構成された画像形成装置であって、
複数のインサータトレイに積載されたインサート紙を前記画像形成部をバイパスして給紙制御する給紙制御手段と、前記複数の各インサータトレイに同一種類のインサート紙のみが積載される第1給紙モードと、前記複数のインサータトレイの少なくとも1つに前記インサート紙が複数種類混合して積載される第2給紙モードとを設定可能な給紙モード設定手段と、インサート紙に予め記載された給紙モードを示す所定の情報を読み取る所定情報読み取り手段とを備え、
所定情報読み取り手段により前記所定の情報の読み取りができなかった場合は、前記給紙モード設定手段は、ユーザによるマニュアル設定により前記給紙モードを設定する、画像形成装置。」

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平11-30933号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来の画像形成装置の場合、装置側にコピー用紙の種類を知る術がない場合、どの給紙トレイにも厚紙を収容でき、このため折り返し給紙される給紙トレイから厚紙を給紙する場合、給紙部分に用紙が詰まりジャム発生の原因となっていた。
【0005】本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、厚紙の給紙ジャムを防止し、厚紙モード時の給紙制御を簡素化することができる画像形成装置を提供することを目的としている。」
「【0006】
【課題を解決するための手段】前記した課題を解決する本発明は、複数の給紙経路を持つ画像形成装置において、操作部から指示される紙種モードに応じて前記給紙経路を選択する制御部を具備し、該制御部は前記操作部から厚紙モードが指示されると、水平搬送路を持つ手差しトレイを自動選択し、他の給紙トレイの選択を禁止することを特徴としている。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献4には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「操作部から指示される紙種モードに応じて給紙経路を選択する制御部を具備する複数の給紙経路を持つ画像形成装置において、前記操作部から厚紙モードが指示されると、水平搬送路を持つ手差しトレイを自動選択し、他の給紙トレイの選択を禁止することにより、厚紙の給紙ジャムを防止する。」

5.引用文献5について
同じく原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平1-288535号公報)には、次の事項が記載されている。
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、記録材(以下転写紙と称す)の手差し給紙モードを有する画像形成装置に関するものである。」(第2頁左上欄第10?13行)
「次に上述の本発明実施例のCPU501の実際の動作例について、第5図のフローチャートを参照して詳細に説明する。
まず、電源投入された後、手指しトレイ23の開放が検知されているか、否かをセンサ25の出力により判定する(Sl)。このステツプS1で手指しトレイ23の開放が検知された場合は、強制的に手指しモードを設定し、表示部137の手指し表示を点灯し(S2)、なおかつ操作部のカセツトデツキ選択キー109の入力を禁止する(S3)。
又、ステップSlにおいて手指しトレイ23の開放が検知されない場合は手指しモードを解除し表示部の手指し表示を消灯し(S4)、カセツトデツキ選択キーの入力109を許可する(S5)。このように手指しトレイ23が開放されていることにより、自動的に手指しモードに設定され、カセツト13、14やデツキ54からの給紙を禁止しているので、手指し時に転写紙としてカセツトやデツキの用紙が誤って設定されることがなく、誤動作(例えば手指し用紙でなく、カセツトからの用紙に画像形成される等)や、その誤動作に伴うロスタイムが生ずることが防止される。その後、ステップS1に戻り、上述の一連の処理を繰り返して行う。」(第6頁左上欄第1行?同頁右上欄第4行)

上記の記載事項を総合すると、引用文献5には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「記録材(転写紙)の手差し給紙モードを有する画像形成装置において、手指しトレイの開放が検知されているか、否かをセンサにより判定し、手指しトレイの開放が検知された場合は、操作部のカセツトデツキ選択キーの入力を禁止することにより、手指し時に転写紙としてカセツトやデツキの用紙が誤って設定される誤動作や、その誤動作に伴うロスタイムが生ずることを防止する。」

6.引用文献6について
同じく原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2001-169046号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0006】本発明の目的は、ファクシミリ印刷出力が分断されるのを防止し、一連のファクシミリ情報を受取人へ確実に伝達できるファクシミリ装置およびファクシミリ受信方法を提供することである。」
「【0008】本発明に従えば、受信したデータはデータ記憶部でいったん保存して、この受信データの印刷に必要な用紙枚数Ndを算出し、用紙残量Nrと比較する。必要枚数Ndが用紙残量Nr以下のときは、受信データは一括して印刷可能であるため、受信データを印刷部に供給して速やかに印刷を実行する。一方、必要枚数Ndが用紙残量Nrより多いときは、印刷を実行せずに、たとえば用紙が補充されるまで、データ記憶部でのデータ保存を続行する。したがって、一連の受信データの処理は全て印刷または全て保存のどちらかに限られるため、ファクシミリ印刷出力が分断してしまうのを防止できる。」
「【0062】図3および図4は、夜間受信モードの動作を示すフローチャートである。・・・
【0065】ステップs3では、メインCPU401は残量センサ58の検出信号を参照してカセット給紙装置51の用紙残量Nrが充分であるか否かを所定値Ncとの比較によって判定する。この判定では用紙残量Nrを大まかに推定するもので足り、カセット給紙装置51に残っている用紙全体の厚さを測定する手法、たとえば残量センサ58としてマイクロスイッチを用いて、カセット給紙装置51をゆっくりと上方に移動させて、残留用紙の最上面が残量センサ58の検出位置に到達するまでの時間を計測する手法が適用可能である。・・・
【0067】ステップs3でカセット給紙装置51の用紙残量Nrが・・・所定値Nc以下である(Nr≦Nc)場合は、ステップs4へ移行して用紙残量Nrを一枚単位で正確に測定する残量計数ルーチンを実行する。この残量計数ルーチンでは、・・・電子写真プロセス部47の動作を停止させた状態で、カセット給紙装置51に残った用紙を一枚ずつ給紙し、・・・用紙センサ59が用紙通過を検出することによって用紙残量Nrを一枚単位で測定する。・・・」

したがって、上記引用文献6には、次の発明(以下、「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
「受信したデータをデータ記憶部でいったん保存し、この受信データの印刷に必要な用紙枚数Ndを算出して用紙残量Nrと比較し、必要枚数Ndが用紙残量Nr以下のときは印刷を実行し、一方、必要枚数Ndが用紙残量Nrより多いときは、印刷を実行せずに、データ記憶部でのデータ保存を続行して、ファクシミリ印刷出力が分断してしまうのを防止できるファクシミリ装置であって、
カセット給紙装置51の用紙残量Nrが充分であるか否かを所定値Ncとの比較によって判定をし、この判定では用紙残量Nrを大まかに推定して、カセット給紙装置51の用紙残量Nrが所定値Nc以下である(Nr≦Nc)場合は、電子写真プロセス部47の動作を停止させた状態で、カセット給紙装置51に残った用紙を一枚ずつ給紙し、用紙センサ59が用紙通過を検出することによって用紙残量Nrを一枚単位で測定するファクシミリ装置。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
後者の「スキャナ部(原稿読み取り手段)3、用紙搬送部(給紙手段)59、画像形成部10および定着装置30(印字手段)、および排紙処理部(排紙手段)60を備える画像形成装置」は、その機能等からみて、前者の「用紙搬送路内に供給された用紙を画像形成して外部に排出する画像形成装置」に相当し、同様に、「画像形成条件を設定する操作スイッチ類76」は「画像形成装置に対する操作を受付ける操作部」に相当する。
また、後者において、「運転条件」である「複数の用紙に連続して画像形成する連続給紙モード」は、前者の「用紙搬送路内に複数の用紙を存在させた状態で画像形成させる第1出力モード」に、同じく「一枚の用紙に画像形成するシングル給紙モード」は、「用紙搬送路内に単一の用紙を存在させた状態で画像形成させる第2出力モード」に、それぞれ相当する。してみると、後者の「運転条件を設定する運転条件設定部77」は、前者の「操作部にてユーザに選択されることにより、前記用紙搬送路内に複数の用紙を存在させた状態で画像形成させる第1出力モード、あるいは前記用紙搬送路内に単一の用紙を存在させた状態で画像形成させる第2出力モードのいずれかのモードを設定するモード設定部」に相当するといえる。
更に、後者において「設定された前記運転条件にしたがって、原稿読み取り駆動部64、記録用紙搬送駆動部66、印字処理駆動部68、定着駆動部70および排紙駆動部72の動作を駆動制御部62の制御によって行う」としているところから、後者も前者の「モード設定部の設定内容に基づいて前記用紙に画像形成する画像形成部」に相当するものを備えているといえる。
したがって、両者は、
「用紙搬送路内に供給された用紙を画像形成して外部に排出する画像形成装置であって、
該画像形成装置に対する操作を受付ける操作部と、
該操作部にてユーザに選択されることにより、前記用紙搬送路内に複数の用紙を存在させた状態で画像形成させる第1出力モード、あるいは前記用紙搬送路内に単一の用紙を存在させた状態で画像形成させる第2出力モードのいずれかのモードを設定するモード設定部と、
該モード設定部の設定内容に基づいて前記用紙に画像形成する画像形成部とを備える、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点] 本願発明1では、「特定種類の用紙が選択された場合、モード設定部は、(用紙搬送路内に単一の用紙を存在させた状態で画像形成させる)第2出力モードを設定する」のに対し、引用発明1では、用紙の種類と出力モードとの関連について言及されていない点。

(2)相違点についての判断
上記の相違点について検討する。
引用文献2には、上記「第4 2.」のとおり、「給紙装置を有する画像形成装置において、最初の用紙の後端と次の用紙の先端とが重複して搬送されてしまうことがあるという問題を解決するために、ゲートセンサを用紙が通過したか否か表示する表示手段を設けて、シングル手差しユニットにつぎの用紙をセットする手差し給紙のタイミングをユーザに表示するようにしたことにより、手差し給紙のタイミングを明確にして1枚ずつ確実にシングル手差しユニットから給紙する」ことが示されている。
しかしながら、引用文献2における「手差し給紙のタイミングを明確にして1枚ずつ確実にシングル手差しユニットから給紙する」ことを根拠として、用紙搬送路内に単一の用紙を存在させた状態で画像形成させるということはできないし、むしろ、「用紙搬送路内に複数の用紙を存在させた状態」で画像形成させることが想定されているとみるのが技術的に自然である。
してみると、引用文献2を根拠として、「手差しユニットが選択された場合、用紙搬送路内に単一の用紙を存在させた状態で画像形成させるモードを設定する」ことが、周知技術ということはできない。
また、引用文献3ないし5、及び引用発明6にも、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、記載や示唆されていない。
なお、引用発明6において、「カセット給紙装置51に残った用紙を一枚ずつ給紙」するのは、「用紙残量Nrを一枚単位で測定する」ためであって、画像形成のために給紙しているわけではない。
また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は、当該発明特定事項を備えることにより、「用紙の無駄使いの抑制と、装置の稼働率の向上との双方に対応し、特定種類の用紙の無駄使いを確実に抑制できる」という格別の作用効果を奏するものである(段落【0013】参照。)。
したがって、本願発明1は、引用発明1、6、及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4も、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1についてと同様の理由で、引用発明1、6、及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、当業者が引用発明1、6、及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2012-134427(P2012-134427)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齋藤 卓司  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 黒瀬 雅一
畑井 順一
発明の名称 画像形成装置  
代理人 特許業務法人 東和なぎさ国際特許事務所  

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