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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B
管理番号 1329699
審判番号 不服2016-10499  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-12 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2012-42649「防災表示装置および防災システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月9日出願公開、特開2013-178690、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月29日の出願であって、平成27年10月27日付けで拒絶理由が通知され、同年12月2日に手続補正がされ、平成28年4月8日付け(発送日:4月12日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年7月12日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1 請求項1、7について
引用文献1には、第1報目の火災検出信号(本願発明の「イベント情報」に相当)を受信した際、感知器シンボル(本願発明の「端末機器のシンボルマーク」に相当)を赤の点滅表示に切り替え(段落【0037】)、第1報目の感知器シンボルについては、第2報目を受信した際の感知器シンボルのサイズに対し、更に一回り大きなシンボルに拡大表示(本願発明の「前記イベント情報に対応する信号を最初に発した端末機器のシンボルマークを中心として形状が変化する模様を前記イベント報知が画面に表示」に相当)すること(段落【0042】)が記載されている。

監視に際し、シンボルマークを端末機器の種類によって異なるようにすることは周知の技術である(引用文献2(特に段落【0036】、段落【0040】を参照されたい)、引用文献3(特に段落【0019】を参照されたい)。
してみれば、シンボルマークを端末機器の種類によって異なるようにすることは当業者が容易になし得ることである。

引用文献1には、感知器の火災検出信号の受信時点が早いほど火災発報を示すシンボルサイズが大きいことが記載されており、第1報目の感知器と他の感知器とを区別させていることから、発生個所(火元)を把握することができる(特に段落【0040】ないし段落【0045】を参照されたい)。
なお、シンボルの区別に際し、シンボルマークを中心として形状が変化する模様を表示させることは、周知の技術である(引用文献4(段落【0042】を参照されたい)、引用文献5(特に段落【0051】を参照されたい))。

2 請求項2ないし5について
模様を波紋状にすること、画像拡大手段を設け、画像の拡大率に応じて表示する文様の大きさを変更すること、オペレーターからの入力によって表示の大きさを設定すること、及び、波紋の形状及び大きさを如何様にするかは、設計的事項に過ぎない。

3 請求項6について
監視装置において、予測図を表示することは、文献を示すまでもない周知技術である。

4 まとめ
以上により、本願請求項1ないし7に係る発明は引用文献1ないし5に記載の発明に基いて、当業者が容易になし得たものである。

引用文献等一覧
1.特開2009-15410号公報
2.特開平11-328557号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平9-35153号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2004-259008号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2001-175974号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、平成27年12月2日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、次のとおりのものである。

「【請求項1】
所定の監視区域内に設けられた複数種類の端末機器からの信号に基づくイベント情報に応じて前記監視区域内の状況を表示するための表示手段と、
前記表示手段に、前記監視区域内のエリアのイメージ画像を表示するとともに、前記端末機器のシンボルマークを前記イメージ画像上の実際の設置箇所に対応する位置に表示したイベント報知画面を表示させる表示制御手段と、
外部から前記表示制御手段に対する指令を入力可能な入力操作手段と、
を備える防災表示装置において、
前記シンボルマークは前記端末機器の種類によってそれぞれ異なるようにされ、
前記表示制御手段は、
前記イベント情報に関わる端末機器に対応されたシンボルマークの表示形態を変更し、前記イベント情報に対応する信号を最初に発した端末機器のシンボルマークに対してのみ、該シンボルマークを中心として形状が変化する模様を、該シンボルマークを視認可能な態様で前記イベント報知画面に表示させることを特徴とする防災表示装置。
【請求項2】
前記模様は波紋状であり、前記表示制御手段は、該波紋状の模様を、前記端末機器のシンボルマークを中心として徐々に広がる動きを繰り返すように表示させることを特徴とする請求項1に記載の防災表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記エリアのイメージ画像の一部を拡大して前記表示手段に表示させる画像拡大手段と、該画像拡大手段により拡大されたイメージ画像の拡大率に応じて前記波紋状の模様の大きさを変更する変更手段とを備えることを特徴とする請求項2に記載の防災表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記入力操作手段からの入力に応じて前記波紋状の模様の大きさを設定可能な設定手段を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の防災表示装置。
【請求項5】
前記波紋状の模様の外形は円形であり、前記波紋状の模様が最大の大きさに変化された時の円の半径は、当該波紋状の模様の中心に表示されている端末機器のシンボルマークから、隣接する端末機器のシンボルマークのうち最も近いシンボルマークまでの距離よりも短いことを特徴とする請求項2?4のいずれかに記載の防災表示装置。
【請求項6】
受信したイベント情報を履歴情報として記憶する記憶手段を備え、
前記表示制御手段は、複数の端末機器から信号を受信した場合には、前記イベント報知画面に、信号を発した複数の端末機器のシンボルマークを包含する延焼予測範囲図形を表示しつつ、前記信号を最初に発した端末機器のシンボルマークを中心とした波紋状の模様を表示させることを特徴とする請求項2?5のいずれかに記載の防災表示装置。
【請求項7】
所定の監視区域内に設置され、かつ、前記監視区域内で発生するイベントに対応して動作する複数の端末機器と、
前記複数の端末機器に接続され、各端末機器から発信される信号を受信し該受信信号に応じたイベント情報を出力する受信機と、
前記受信機からのイベント情報に基づいて、前記イベント報知画面に、イベント情報に対応する信号を最初に発した端末機器のシンボルマークを中心として形状が変化する前記模様を表示させる請求項1?6のいずれか記載の防災表示装置と、を備えることを特徴とする防災システム。」

第4 引用文献
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献1(特開2009-15410号公報)には、「防災表示装置及び制御方法」に関し、図面(特に図1、図2、図4ないし図8参照)とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1)「【0006】
本発明は、複数の火災感知器が火災発報した際のシンボル表示から発報順を判別可能として火元等を容易に確認可能とする防災表示装置及び制御方法を提供することを目的とする。」

(2)「【0012】
図1は防災監視システムと共に本発明による防災表示装置の実施形態を示したブロック図である。図1において、防災監視システムには防災受信盤10が設けられ、防災受信盤10から引き出された伝送路11に対し、感知器などの各種センサと防火ダンパや防火戸などの各種防災制御機器を接続している。
【0013】
本実施形態にあっては、各種センサとして、中継器14を介してアナログ煙感知器16、中継器機能を備えたアナログ煙感知器20、中継器機能を備えたアナログ熱感知器22、更に光電式分離型煙感知器24を接続している。なお光電式分離型煙感知器24は発光部24aと受光部24bで構成され、両者を分離配置し、発光部24aからパルス光を発光し、煙用に減衰されたパルス光を受光部24bで受光して火災を検出している。
【0014】
また伝送路11に対しては、各種防災制御機器として、中継器14を介して地区音響装置18、防排煙ダンパ17、防火戸21のラッチレリーズ19を接続している。
【0015】
防災受信盤10に対しては本発明による防災表示盤(装置)12が接続されている。防災表示盤12はコントローラ26を備え、コントローラ26に対し液晶ディスプレイ28、キーボード30、マウス32、プリンタ34、監視区域を警戒するITVカメラ36及び防災警報などを行うスピーカ38を接続している。
【0016】
防災表示盤12のコントローラ26はコンピュータで実現されており、監視対象となる警戒区域の地図情報を格納したデータベース40に加え、プログラムの実行により実現される機能として、地図情報管理部42、地図情報表示部44及びシンボル表示制御部46を設けている。
【0017】
地図情報管理部42は、防災監視システムに設置している各種センサ及び防排煙機器の設置場所を示すシンボルを配置した監視対象の地図をデータベース40に登録して管理している。
【0018】
地図情報表示部44は、防災受信機10から第1報目の火災検出信号を受信した際に、発報した火災感知器のシンボルを配置した地図をデータベース40から読出して液晶ディスプレイ28の表示画面上に表示すると共に、発報した火災感知器のシンボルの色を通常監視時の色とは異なる別の色、具体的には通常監視時の青色から火災発報を示す赤色に変化させ、更に赤色で点滅表示させる。
【0019】
また地図情報表示部44は、液晶ディスプレイ28のメニュー画面からオペレータの操作により地図選択情報を入力した場合、データベース40から対応する地図を読み出して、液晶ディスプレイ28の画面上に表示する。
【0020】
シンボル表示制御部46は、防災受信盤10から第2報目以降の火災検出信号を受信する毎に、新たに火災検出信号を受信した火災感知器のシンボルの色を通常監視時の青色から赤色に変化させて点滅表示すると共に、既に火災検出信号を受信して赤色点滅している感知器シンボルについては、受信時点が早いほど大きくなるように拡大表示させる。
【0021】
ここで、表示画面上で拡大表示できる感知器シンボルの最大サイズは隣接するシンボルを覆い隠すことのないサイズに予め決められており、シンボル表示制御部46は、感知器シンボルが最大サイズに達した場合、その後はシンボルを最大サイズに維持する。」

(3)「【0027】
図3は本実施形態のデータベース40に格納された地図データファイルを示した説明図である。図3の地図データファイル62は、監視対象の例えば建物の階別に作成された地図を表示するためのデータであり、ヘッダ64、地図データ66及びシンボルデータ68で構成されている。
【0028】
ヘッダ64には地図データファイル62の建物名及び階数などの識別情報が格納されている。地図データ66は建物の平面レイアウトを示した建物平面図などであり、通常、CADによる2次元地図データとして作成されている。
【0029】
シンボルデータ68は、地図データ66により表示される地図上に配置される感知器を含む各種センサ及び各種防災制御機器の配置位置及びシンボル内容を個別に登録したデータである。シンボルデータ68については、その中に登録されている感知器シンボルデータ70を右側に取り出して示している。
【0030】
感知器シンボルデータ70は、識別子を含むシンボル名、位置座標、図形データ及び指定色で構成されており、指定色については通常時の青色と火災時の赤色を指定している。この感知器シンボルデータ70を使用することで、地図データ66により表示された地図上の位置座標で決まる位置に、図形データで決まる感知器シンボルを、通常監視時にあっては青色で表示し、火災発報時には赤色に変化させて点滅表示させる。
【0031】
地図データファイル62に基づくシンボルを配置した地図の画面表示は、図2のRAM52のメモリ領域を使用したレイアウトレイヤ(レイアウト画層)とシンボルレイヤ(シンボル画層)を使用して行われる。
【0032】
まず地図については、地図データファイル62から地図データ66を読み出してレイアウトレイヤに地図を展開する。またシンボルデータ68から全てのシンボルデータを読出し、シンボルレイヤにシンボルを展開する。続いてレイアウトレイヤとシンボルレイヤを重ね合わせた合成レイヤを生成し、これを表示画面に地図として表示する。
【0033】
このようなレイヤ構造を利用してシンボルを配置した地図の表示において、図1に示したシンボル表示制御部46にあっては、シンボルレイヤに展開している感知器シンボルを対象に、新たに火災検出信号を受信する毎に、新たに火災検出信号を受信した感知器シンボルの赤色点滅表示のための書換えと、既に火災発報している感知器シンボルの拡大表示のための書換えを行い、これをレイアウトレイヤに固定的に展開している地図に重ねて表示画面に表示することになる。
【0034】
図4は本実施形態による通常監視時での地図表示を示した説明図である。図4において、図1に示した液晶ディスプレイ28の表示画面72には、例えばオペレータによるメニュー選択による地図の指定で地図74が表示される。
【0035】
ここで地図74には建物平面図となるレイアウト図形に加え、火災感知器の設置場所を示す感知器シンボル76-1?76-7が表示されている。
【0036】
また表示画面72の右側には操作部78が設けられ、操作部78には、上から前画面キー、次画面キー、直下階キー、直上階キーが配置され、これらのキー操作で表示画面72の地図74を切替表示できるようにしている。更に、その下には拡大キーと縮小キーが配置され、表示画面72に表示している地図74を、キー操作に応じて拡大または縮小することができる。
【0037】
図5は図1の防災表示盤12のコントローラ26が、防災受信盤10から第1報目の火災検出信号を受信した際の本実施形態によるシンボル表示を示した説明図である。図5において、第1報目の火災検出信号を受信すると、火災発報した感知器シンボルを含む地図74が図3の地図データファイル62から生成され、表示画面72に図示のように表示される。このとき火災発報した第1報目の感知器シンボル76-1については、それまでの青色から、火災発報を示す赤色で且つ点滅表示に切り替えられる。
【0038】
続いて図6に示すように、第2報目の火災検出信号を受信した場合には、表示画面72の地図74に第2報目の火災感知器に対応した感知器シンボル、この例では感知器シンボル76-2,76-4の2つについて、それまでの青色から火災発報を示す赤色の点滅表示に切り替える。
【0039】
同時に、図5に示したように、第1報目の火災検出信号の受信で赤色点滅表示している感知器シンボル76-1については、第2報目の火災検出信号の受信に伴い、シンボルを一回り大きいサイズに拡大表示している。
【0040】
図7は図6に続いて第3報目を受信した際のシンボル表示を示しており、第3報目の火災検出信号により、感知器シンボル76-5について、それまでの青色から赤色点滅表示に切替表示している。
【0041】
この第3報目の火災検出信号の受信時には、既に発報中の表示をしている3つの感知器シンボル76-1,76-2,76-4については、火災検出信号の受信時点が早いほど段階的に大きくなるように拡大表示している。
【0042】
即ち、第1報目の感知器シンボル76-1については、図6に示した第2報目を受信した際の感知器シンボル76-1のサイズに対し、更に一回り大きなシンボルに拡大表示している。
【0043】
また図6で第2報目の受信により赤色点滅表示とした感知器シンボル76-2,76-4の2つについては、図7の第3報目の火災検出信号の受信で、それより一回り大きいサイズとなる感知器シンボル76-2,76-4に拡大表示している。
【0044】
このように、防災表示装置の表示画面72に、現在火災発報中にある複数の火災感知器に対応した感知器シンボル、例えば図7に示すような感知器シンボル76-1,76-2,76-4,76-5の4つの火災発報に伴うシンボル表示が行われた場合、従来はすべての感知器シンボルが同一サイズとなっているため、4つの火災発報のシンボル表示を見ても、どれが第1報目の火元であるかは判らない。
【0045】
しかしながら、本実施形態にあっては、火災検出信号の受信時点が早いほど火災発報を示すシンボルサイズが大きいため、図7の場合にはシンボルサイズが最も大きい感知器シンボル76-1が第1報目で火元を示しており、次に大きな感知器シンボル76-2,76-4が第2報目による感知器シンボルであることが判り、更に一番小さい感知器シンボル76-5が第3報目の感知器シンボルであることが一目で把握できる。
【0046】
また火災発報を示している4つの感知器シンボル76-1,76-2,76-4,76-5のサイズを見て、サイズの大きい場所からサイズの小さい場所に向かって火災が延焼している様子が把握でき、避難誘導や消火活動に対し有効な情報を与えることができる。
【0047】
図8は本実施形態による防災表示処理を示したフローチャートであり、図1を参照して説明すると次のようになる。
【0048】
図8において、本実施形態の防災表示処理は、ステップS1で防災受信盤10からの火災検出信号の受信の有無をチェックしており、火災検出信号を受信すると、ステップS2に進み、第1報目か否か判別する。第1報目であった場合にはステップS3に進み、地図情報表示部44が例えば図5に示したように、火災発生場所を含む感知器シンボルを配置した地図を画面表示する。
【0049】
続いてステップS4で、火災発報した感知器シンボルの色をそれまでの青色から赤色に変更して点滅制御させる。続いてステップS8で火災復旧の有無をチェックしており、火災復旧でなければステップS1に戻り、次の火災検出信号の受信を監視する。
【0050】
ステップS1で次の火災検出信号の受信が判別されると、ステップS2で第1報目でないことから、ステップS5に進み、第2報目以降であることから、ステップS6でシンボル表示制御部46が、新たに受信した火災検出信号に対応した最新発報の感知器シンボルを、第1報目の受信と同様、青色から赤色点滅表示に変化する色変更制御を行い、続いてステップS7で、発報中の感知器シンボルの拡大表示制御を、例えば第2報目を示した図6の感知器シンボル76-1のように、あるいは図7に示した第3報目を受信した感知器シンボル76-1,76-2,76-4のように拡大表示させる。
【0051】
ステップS5?S7における第2報目以降の火災検出信号の受信に伴う発報中の感知器シンボルの拡大表示は、拡大表示可能なシンボルの最大サイズを予め決めておくことで、最大サイズに達したら、その後の火災検出信号の受信については最大サイズの表示状態を維持することになる。
【0052】
このようなステップS1?S7の処理に対し、ステップS8で火災復旧を判別すると、ステップS9に進み、シンボル発報表示を停止し、例えば図4に示すような通常監視時の地図74のシンボル表示状態に戻ることになる。
【0053】
なお、上記の実施形態は、火災検出信号を受信して同時に複数の感知器シンボルの状態が変化している場合に、発報順にシンボルサイズを拡大表示する場合を例にとっているが、火災感知器以外に、防災監視システムに配置している他のセンサについても、同時に複数のセンサの状態が変化した場合には変化した順番に応じてシンボルを拡大表示することで、どのセンサが最初に変化したかをシンボル表示を見て直ちに判るようにしてもよい。
【0054】
さらに認識がしやすいように拡大表示したシンボルと火災発報時の拡大表示する前のシンボルを切り換えて大きくなったり小さくなったり表示すると、より目立って表示することができる。発報した順番をシンボルの脇に付しても良い。」

上記記載事項及び図面の図示内容を総合して、本願発明1に則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「所定の監視対象内に設けられた各種センサからの信号に基づく火災検出信号に応じて前記監視対象内の状況を表示するための液晶ディスプレイ28と、
前記液晶ディスプレイ28に、前記監視対象の例えば建物の階別に作成された地図を表示するとともに、前記各種センサの感知器シンボルを前記地図上の位置座標で決まる位置に表示した表示画面72を表示させるコントローラ26と、
外部から前記コントローラ26に対する指令を入力可能なキーボード30及びマウス32と、
を備える防災表示盤12において、
前記コントローラ26は、
前記火災検出信号に関わる各種センサに対応された感知器シンボルの表示形態を変更し、前記火災検出信号の受信時点が早いほど火災発報を示すシンボルサイズを大きくする態様で前記表示画面72に表示させる防災表示盤12。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、後者の「監視対象」が前者の「監視区域」に相当し、以下同様に、「各種センサ」は「複数種類の端末機器」に、「火災検出信号」は「イベント情報」に、「液晶ディスプレイ28」は「表示手段」に、「監視対象の例えば建物の階別に作成された地図」は「監視区域内のエリアのイメージ画像」に、「感知器シンボル」は「端末機器のシンボルマーク」に、「位置座標」は「実際の設置箇所」に、「表示画面72」は「イベント報知画面」に、「コントローラ26」は「表示制御手段」に、「キーボード30及びマウス32」は「入力操作手段」に、「防災表示盤12」は「防災表示装置」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「所定の監視区域内に設けられた複数種類の端末機器からの信号に基づくイベント情報に応じて前記監視区域内の状況を表示するための表示手段と、
前記表示手段に、前記監視区域内のエリアのイメージ画像を表示するとともに、前記端末機器のシンボルマークを前記イメージ画像上の実際の設置箇所に対応する位置に表示したイベント報知画面を表示させる表示制御手段と、
外部から前記表示制御手段に対する指令を入力可能な入力操作手段と、
を備える防災表示装置において、
前記表示制御手段は、
前記イベント情報に関わる端末機器に対応されたシンボルマークの表示形態を変更し、前記イベント報知画面に表示させる防災表示装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1は、「シンボルマークは前記端末機器の種類によってそれぞれ異なるようにされ」るのに対して、引用発明の感知器シンボルは、各種センサの種類によってそれぞれ異なるか不明である点。

〔相違点2〕
本願発明1は、「イベント情報に対応する信号を最初に発した端末機器のシンボルマークに対してのみ、該シンボルマークを中心として形状が変化する模様を、該シンボルマークを視認可能な態様で」表示させるのに対して、引用発明は、火災検出信号の受信時点が早いほど火災発報を示すシンボルサイズを大きくする態様で表示させる点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2を先に検討する。
引用文献1の段落【0006】には、発明が解決しようとする課題として、複数の火災感知器が火災発報した際のシンボル表示から発報順を判別可能として火元等を容易に確認可能とすることが記載されている。そして、上記課題を解決するために、引用発明は、火災検出信号の受信時点が早いほど火災発報を示す感知器シンボルのシンボルサイズを大きくするものである。そうすると、引用発明は、火災が延焼、すなわち火災検出信号に関わる各種センサが複数となる場合、感知器シンボル相互のシンボルサイズの大きさの違いによって、受信時点の早さを表示するものであるから、引用発明において、「最初に発した端末機器のシンボルマークに対してのみ」、シンボルサイズを大きくすることは、想定されているとはいえない。

また、原査定において引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献2(特開平11-328557号公報)、上記引用文献3(特開平9-35153号公報)、上記引用文献4(特開2004-259008号公報)、及び上記引用文献5(特開2001-175974号公報)には、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項のうち、「イベント情報に対応する信号を最初に発した端末機器のシンボルマークに対してのみ」、「形状が変化する」ことについての記載はない。
そうしてみると、引用発明及び引用文献1ないし引用文献5から、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

したがって、本願発明1は、相違点1を検討するまでもなく、引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様に、当業者が引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし7は、当業者が引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2012-42649(P2012-42649)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 信也丸山 高政  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小関 峰夫
滝谷 亮一
発明の名称 防災表示装置および防災システム  
代理人 荒船 博司  
代理人 荒船 良男  

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