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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 B60R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1329744
審判番号 不服2016-12339  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-16 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2015-501296号「車両室内構造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月28日国際公開、WO2014/129073、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年12月20日(優先権主張2013年2月19日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月6日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月20日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年6月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、同年8月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成29年4月6日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月16日に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2006/0175856号明細書
2.実願昭59-109316号(実開昭61-024342号)のマイク
ロフィルム

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年5月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
車室内に配置された運転者用座席と、
車室内における前記運転者用座席の車両後方側に配置された乗員用座席と、
前記運転者用座席と前記乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設された隔壁部材と、
前記隔壁部材の上側に配置された仕切り板と、
前記隔壁部材の下側に配置されたフロアパネルと、を備え、
前記隔壁部材の車幅方向両端部は、車室の左右のセンターピラーにそれぞれ結合されており、
前記仕切り板の車幅方向両端部は、車室の左右のセンターピラーにそれぞれ近接して配置されており、
前記仕切り板における上端縁および下端縁の少なくともいずれかに、上下方向中央に向けて延在する切欠きによって形成される凹部と、上下方向中央からの上下方向に沿った先端までの距離が前記凹部よりも大きくなるように突出する複数の凸部と、からなる脆弱部を設け、
前記仕切り板を前記隔壁部材に固定する留め部は、前記複数の凸部の少なくとも二つに設定され、
前記凹部は、前記留め部同士を結ぶ直線上に配置したことを特徴とする車両室内構造。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
引用文献1の段落[0053]には、運転者セキュリティスクリーン10のパネル22,24により後部からの乗客の攻撃を防ぐことが記載されているから、引用文献1に記載されている車両室内構造は、運転席30の車両後方側に配置された乗員席を備えることは明らかである。また、上記運転者セキュリティスクリーン10のパネル22,24は、運転席30と乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設されているといえる。
上記認定事項と、段落[0053]、段落[0054]、段落[0058]及び段落[0059]の記載内容、並びにFig 1a、Fig 3及びFig 4の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「車室内に配置された運転席30と、
車室内における前記運転席30の車両後方側に配置された乗員席と、
前記運転席30と前記乗員席との間に車幅方向に沿って配設されたパネル22,24を有する運転者セキュリティスクリーン10と、
前記運転者セキュリティスクリーン10の下側に配置された車両フロアと、を備え、
前記運転者セキュリティスクリーン10の車幅方向両端部は接続手段56,58により、運転席30のシートフレーム68にそれぞれ結合されており、下部は接続手段60,62により、運転席30のベースフレーム78にそれぞれ結合されており、中央部は接続手段80により、運転席30のヘッドレスト84の下部に結合されている車両室内構造。」

(2)引用文献2について
原査定で引用された引用文献2には、実用新案登録請求の範囲及び第1図を参酌すると、次の事項が記載されている。

「タクシー防犯用仕切り板5を座席の背もたれ部4の上に乗せ、かつボディに固定することで、前部座席と後部座席との間を仕切ること。」

第5 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
・後者の「運転席30」及び「乗員席」は、前者の「運転者用座席」及び「乗員用座席」に相当する。

・後者の「前記運転席30と前記乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設されたパネル22,24を有する運転者セキュリティスクリーン10」と前者の「前記運転者用座席と前記乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設された隔壁部材」と、「前記隔壁部材の上側に配置された仕切り板」とを併せたものは、「前記運転者用座席と前記乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設された仕切り部材」という限度で共通する。

・後者の「前記運転者セキュリティスクリーン10の下側に配置された車両フロア」と前者の「前記隔壁部材の下側に配置されたフロアパネル」とは、「前記仕切り部材の下側に配置されたフロアパネル」という限度で共通する。

そうすると、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。

[一致点]
「車室内に配置された運転者用座席と、
車室内における前記運転者用座席の車両後方側に配置された乗員用座席と、
前記運転者用座席と前記乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設された仕切り部材と、
前記仕切り部材の下側に配置されたフロアパネルと、を備える車両室内構造。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明の「仕切り部材」は、「前記運転者用座席と前記乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設された隔壁部材と、前記隔壁部材の上側に配置された仕切り板と、」「を備え、前記隔壁部材の車幅方向両端部は、車室の左右のセンターピラーにそれぞれ結合されており、前記仕切り板の車幅方向両端部は、車室の左右のセンターピラーにそれぞれ近接して配置されており、前記仕切り板における上端縁および下端縁の少なくともいずれかに、上下方向中央に向けて延在する切欠きによって形成される凹部と、上下方向中央からの上下方向に沿った先端までの距離が前記凹部よりも大きくなるように突出する複数の凸部と、からなる脆弱部を設け、前記仕切り板を前記隔壁部材に固定する留め部は、前記複数の凸部の少なくとも二つに設定され、前記凹部は、前記留め部同士を結ぶ直線上に配置した」ものであり、「フロアパネル」は、「前記隔壁部材の下側に配置され」ているのに対し、
引用発明の「仕切り部材」は、かかる「隔壁部材」を備えておらず、「前記運転者セキュリティスクリーン10の車幅方向両端部は接続手段56,58により、運転席30のシートフレーム68にそれぞれ結合されており、下部は接続手段60,62により、運転席30のベースフレーム78にそれぞれ結合されており、中央部は接続手段80により、運転席30のヘッドレスト84の下部に結合されて」いるものであり、「フロアパネル」は、「運転者セキュリティスクリーン10の下側に配置され」ている点。

2.相違点についての判断
引用文献2には、上述したように、「タクシー防犯用仕切り板5を座席の背もたれ部4の上に乗せ、かつボディに固定することで、前部座席と後部座席との間を仕切ること。」が記載されているが、本願発明の「隔壁部材」に相当する部材は開示されていない。また、運転者用座席と乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設され、かつ車幅方向両端部が車室の左右のセンターピラー等にそれぞれ結合されている隔壁部材を車室内に備えることが、従来周知の技術(国際公開第2000/050269号、米国特許第4173369号明細書及び米国特許出願公開第2010/0201148号明細書等を参照。)であるとしても、引用発明の「運転者セキュリティスクリーン10」は、運転席30のシートフレーム68、ベースフレーム78、及びヘッドレスト84に結合されるものであり、運転席30に結合することで、引用文献1の段落[0053]に記載されているように、既存の運転席30のシートに単純な接続手段を介して取り付けることができることを特徴としているから、車室内に、運転者用座席と乗員用座席との間に車幅方向に沿って配設され、かつ車幅方向両端部が車室の左右のセンターピラーにそれぞれ結合されている隔壁部材を備えた上で、該隔壁部材に引用発明の「運転者セキュリティスクリーン10」を結合する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
加えて、本願発明の上記相違点に係る「前記仕切り板における上端縁および下端縁の少なくともいずれかに、上下方向中央に向けて延在する切欠きによって形成される凹部と、上下方向中央からの上下方向に沿った先端までの距離が前記凹部よりも大きくなるように突出する複数の凸部と、からなる脆弱部を設け、前記仕切り板を前記隔壁部材に固定する留め部は、前記複数の凸部の少なくとも二つに設定され、前記凹部は、前記留め部同士を結ぶ直線上に配置した」との構成は、引用文献2及び上記周知技術を示す文献には、記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明に引用文献2に記載されている事項及び周知技術を適用しても、上記相違点に係る本願発明の構成に至るものではない。

そして、本願発明は、上記相違点に係る構成により、「仕切り板7の下端縁41に脆弱部43が設けられているため、車幅方向から入力される荷重に対する面方向剛性が低下する。従って、車両の側面に側突荷重が入力されて、車幅方向内側に圧縮する荷重が仕切り板7に入力された場合に、仕切り板7が容易に変形して車体の潰れ変形がスムーズに進むため、車両が受ける衝撃荷重が低減される。」(段落[0023])という格別の効果を奏するものである。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載されている事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。

第6 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

平成28年8月16日付けでした手続補正(以下「本件補正」という。)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



本件補正は、請求項1について「前記仕切り板の下端縁は車室の上下方向中央よりも上側にあり」との事項(以下「事項A」という。)を追加する補正を含むものであるが、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「当初明細書等」という)から、上記事項Aを導き出すことはことはできない。

第7 当審拒絶理由について
平成29年5月16日に提出された手続補正書の手続補正により、請求項1について「前記仕切り板の下端縁は車室の上下方向中央よりも上側にあり」との事項が削除されたので、当審拒絶理由の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2015-501296(P2015-501296)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
P 1 8・ 561- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 島田 信一
尾崎 和寛
発明の名称 車両室内構造  
代理人 三好 秀和  

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