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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1329776
審判番号 不服2016-3580  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-08 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2013-524495「雄電気端子」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月23日国際公開、WO2012/023038、平成25年10月 3日国内公表、特表2013-537697、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年8月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年8月20日 (IB)WIPO国際事務局)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月24日付けで拒絶の理由が通知がされ、平成27年6月29日に手続補正がされ、平成27年11月5日付け(発送日:平成27年11月10日)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年3月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成28年9月12日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、平成28年12月13日に手続補正がされ、平成29年3月8日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、平成29年5月2日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成27年11月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献A-Dに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開平9-223532号公報
B.実願昭62-190321号(実開平1-95078号)のマイクロフィルム
C.実願平2-24675号(実開平3-116572号)のマイクロフィルム
D.特開2003-36911号公報

第3 当審拒絶理由1の概要
当審拒絶理由1の概要は次のとおりである。

本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献1-5に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平9-223532号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.技能士の友編集部、技能ブックス17 機械要素のハンドブック、株式会社大河出版、日本、1977.05.20発行、初版、156-157ページ(当審において新たに引用した文献)
3.実願昭62-190321号(実開平1-95078号)のマイクロフィルム(拒絶査定時の引用文献B)
4.特開2003-36911号公報(拒絶査定時の引用文献D)
5.実願平2-24675号(実開平3-116572号)のマイクロフィルム(拒絶査定時の引用文献C)

第4 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成29年5月2日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-11は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ハウジングの中に挿入されるよう設計され、かつ一枚の金属薄板から形成される雄電気端子(10)であって、該雄電気端子は縦軸(X)にほぼ沿って延び、
該ハウジングと相互作用するよう適合された固定手段を備える、位置決め部(51)と、
接合部(1)であって、該接合部が雌端子に挿入又は接合されるとき、雌端子の二つの表面とそれぞれ電気接触するように適合された、二つのほぼ平行の接触表面を有する接合部(1)とを備え、
該接合部(1)は、第二継ぎ目無し片(12)と第三金属片(13)の間に、接合部継ぎ目(17A)を有し、該接合部継ぎ目(17A)は、前記接触表面に隣接する側部(14又は15)に位置し、前記第二継ぎ目無し片(12)が、C字形状の断面を有する第一湾曲側部(14)によって接触表面上に位置する第一継ぎ目無し片(11)に連結されて、前記第三金属片(13)が、C字形状の断面を有する第二湾曲側部(15)によって前記第一継ぎ目無し片(11)に連結され、
前記雄電気端子は、前記接合部(1)及び位置決め部(51)の間に移行部(2)をさらに備え、該移行部(2)は、移行部継ぎ目(17B)を有し、前記第二継ぎ目無し片(12)の両端が、C字形状の断面を有する湾曲側部によって、接触表面側に位置する隣接半片(18、19)に連結され、該移行部継ぎ目(17B)のうち縦軸(X)に平行である部分は、前記隣接半片(18、19)の間に形成され、該移行部継ぎ目(17B)のうち縦軸(X)に平行である部分は、接合部継ぎ目(17A)を備える前記側部に対してほぼ垂直である面に位置し、前記移行部継ぎ目(17B)は、縦軸(X)に平行である部分と、縦軸(X)と垂直であり前記側部に位置する横断部(17T)と、これらを結合する四半円部分とを備え、
前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸(X)に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記四半円部分からなることを特徴とする雄電気端子。
【請求項2】
前記位置決め部(51)は、該位置決め部(51)の側面(23、24)から折り曲げられた両半片(210、220)によって形成された位置決め部継ぎ目(17C)を有し、該位置決め部継ぎ目(17C)は、接合部継ぎ目(17A)を備える前記側部に対してほぼ垂直である面に位置していることを特徴とする請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記移行部継ぎ目(17B)は、前記接合部(1)及び位置決め部(51)の間を延び、該接合部の断面とほぼ同じである、ほぼ一定の断面を有する末端部にわたっていることを特徴とする請求項1に記載の端子。
【請求項4】
合わせ断面に対応するテーパー部(25)であって、この合わせ断面の表面は、該位置決め部から、接合部(1)の断面とほぼ同じ断面を有する移行部の部分にかけて縮小するテーパー部(25)を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の端子。
【請求項5】
前記接合部(1)は、
第一片幅(W1)を有し、第一雌端子表面と電気接触するよう適合された、第一継ぎ目無し片(11)と、
雄端子幅(W1)に対応する第二片幅を有し、第一継ぎ目無し片と対向し、第二雌端子表面と電気接触するよう適合された、第二継ぎ目無し片(12)と、
第一および第二継ぎ目無し片(11、12)の間に挟まれた第三金属片(13)とを、備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の端子。
【請求項6】
第一継ぎ目無し片、第二継ぎ目無し片、第三金属片はほぼ平面で、ほぼ一定の厚さと、ほぼ同じ厚さを有することを特徴とする請求項5に記載の端子。
【請求項7】
第三金属片の部分(13B)が、移行部(2)内を延びていることを特徴とする請求項5又は6に記載の端子。
【請求項8】
一枚の金属薄板から形成された雄電気端子(10)であって、
電線連結部(52)と、
位置決め部(51)と、
接合部(1)であって、接合する雌端子に属する平行な第一及び第二雌端子表面の間に挟まれることにより、対応し接合する雌端子と電気接触するように適合された接合部(1)とを備え、
前記接合部(1)は、縦軸(X)にそって延び、上部表面(31)と、底部表面(32)と、側部(14,15)とを備え、雄端子幅(W1)と雄端子厚さ(E1)を規定する、縦軸(X)と垂直の断面を有し、
前記接合部(1)は、接合部幅(W1)に対応する第一片幅を有しかつ前記第一雌端子表面を圧迫するように適合された第一継ぎ目無し片(11)と、接合部幅(W1)と対応する第二片幅を有しかつ第一継ぎ目無し片に対向し第二雌端子表面に圧迫するように適合された第二継ぎ目無し片(12)とを有し、
前記雄電気端子は継ぎ目(17A,17B、17)を有し、
前記継ぎ目は、接合部において、縦軸(X)に対して平行であり、側部(14、15)のいずれかに位置する、接合部継ぎ目(17A)を備え、
前記位置決め部(51)は、第一継ぎ目無し片に平行な底面と上面を備え、前記継ぎ目は位置決め部(51)の上面に位置する位置決め部継ぎ目(17C)を備え、
前記継ぎ目は、接合部継ぎ目から位置決め部継ぎ目まで延びる移行部継ぎ目(17B)を備え、
前記位置決め部(51)は、固定窓(9)及び/又は固定脚部を備え、前記継ぎ目(17)の前記位置決め部継ぎ目(17C)は、該固定窓(9)と交差し、
前記移行部継ぎ目(17B)は、縦軸(X)に平行である部分と、縦軸(X)と垂直であり前記側部に位置する横断部(17T)と、これらを結合する四半円部分とを備え、
前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸(X)に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記四半円部分からなることを特徴とする雄電気端子。
【請求項9】
連結片及び請求項1から8のいずれか一項に記載の複数の端子を備える製品であって、該端子は該連結片に機械的に取り付けられている製品。
【請求項10】
電気端子の組立品であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の雄電気端子と、
接合部(1)の第一及び第二接触表面とそれぞれ電気接触するよう適合された第一及び第二雌端子表面(41、42)を有する、対応し接合する雌端子(4)と、を備える電気端子の組立品。
【請求項11】
雄電気端子を製造する方法であって、該方法は、
縦軸(X)に沿って延び、かつ請求項1から7のいずれか一項に記載の雄電気端子を形成すべく変形させられるよう適合された少なくとも一つの端子パターンを有する、単一の金属薄板(20)を準備する段階と、
第二継ぎ目無し片(12)と第三金属片(13)の間に接合部継ぎ目(17A)があるように該金属薄板を折り曲げる段階を備えることを特徴とする雄電気端子を製造する方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)当審拒絶理由1に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る雄型端子の実施の形態例を図1乃至図10に基づいて詳細に説明する。先ず、本発明の雄型端子の第1実施の形態例を図1および図2に基づいて説明する。図1は本発明の雄型端子の第1実施の形態例を示す斜視図、図2は図1のA-A断面図である。
【0012】図1に示すように第1実施の形態の雄型端子1は、導電性板材を折り曲げて一体形成されたものであり、加締部2、係止部3及び接続部4からなる。加締部2は、雄型端子1の終端に形成され、一対の電線被覆加締部5、5と一対の芯線加締部6、6からなる。この一対の電線被覆加締部5、5で電線7の被覆部7aを加締めると共に、一対の芯線加締部6、6で芯線7bを加締めることにより電線7に雄型端子1を取り付けることができる。
【0013】係止部3は、雄型端子1の略中央に側壁部8a、8bによって形成されており、それぞれ両側から折り返されて断面矩形状の筒形に形成されている。この側壁部8a、8bの側部にはそれぞれ下方に突出した一対の係止片9、9(一方は図示せず)が形成されている。この一対の係止片9は、コネクタハウジング(図示せず)内に係止され雄型端子1の抜け出しが防止される。
【0014】接続部4は、雄型端子1の先端に形成され、雌型端子に電気的に接続する部分である。図2に示すように接続部4は、板厚tの基底部10及び接触部11とを備え、基底部10と接触部11とは折曲部12で折り曲げられて互いに重ね合わされている。これにより、基底部10の側部10aと接触部11の側部11aとが互いに当接して、基底部10と接触部11との間に、幅αの空間13が形成される。したがって、基底部10と接触部11とを重ね合わせて形成した接続部4の厚みT3は、2t+α で表される。接触部11の略中央には湾曲状の凹部(補強部)14が曲げ形成され、補強部14は空間13内に突出して基底部10に接触している。
【0015】このように、接触部11に湾曲状の補強部14を形成することにより、接触部11の強度をアップさせることができる。また、この補強部14を基底部10に接触させるので、接触部11及び基底部10がつぶれないように補強部14で補強されることになる。したがって、接触部11や基底部10に外力が作用した場合に、接触部11や基底部10が空間13内につぶれて変形するのを確実に防止することができる。
【0016】上記の如く構成された本実施の形態の接続部4を形成する手順を説明する。先ず、導電性板材を折曲部12で折り曲げて基底部10と接触部11とを重ね合わせる。この場合、基底部10の側部10aと接触部11の側部11aとが互いに当接して、基底部10と接触部11との間に幅αの空間13が形成される。次に、接触部11に湾曲状の補強部14がプレス成形される。この補強部14は空間13内に突出して基底部10に接触する。これにより、基底部10と接触部11との間に幅αの空間13を形成しても、十分な強度を備えた接続部4を得ることができる。
【0017】したがって、導電性板材を折曲部12で折り曲げて基底部10と接触部11とを重ね合わせる際に、基底部10と接触部11との間に幅αの空間13を積極的に形成することが可能になるので、基底部10と接触部11とを折曲げた時の、スプリングバックを空間13で吸収して、厚みT3の接続部4を容易に形成することができる。これにより、雄型端子1の品質の安定かつ信頼性の向上を図ることができる。」

(2)【図1】からは、A-A断面に垂直な軸として縦軸が有り、雄型端子1が縦軸にほぼ沿って延びている状態が見て取れる。

(3)上記記載事項(1)及び図示内容(2)に照らせば、【図1】からは、接続部4と係止部3の間に移行部があり、移行部は、移行部の当接する部分を有し、基底部10の両端が、移行部の折り曲げ部によって接触部11側に位置する隣接半片に連結され、前記移行部の当接する部分は、縦軸に平行である部分と、縦軸と垂直である横断部とを備え、前記移行部の当接する部分のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記横断部からなる状態が見て取れる。

したがって、上記記載事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「コネクタハウジング内に係止され、かつ一枚の導電性板材から形成される雄型端子1であって、該雄型端子1は縦軸にほぼ沿って延び、
該コネクタハウジング内に係止され抜け出しが防止される係止片9を備える、係止部3と、
接続部4であって、該接続部4が雌型端子に電気的に接続されるとき、雌型端子の表面と電気的に接続される接触部11の表面を有する接続部4とを備え、
該接続部4は、側部10a及び側部11aが当接する部分を有し、該当接する部分は、前記接触部11に隣接する側部10a及び側部11aに位置し、基底部10が、折曲部12によって接触部11に連結されて、
前記雄型端子1は、前記接続部4及び係止部3の間に移行部をさらに備え、該移行部は、移行部の当接する部分を有し、前記基底部10の両端が、移行部の折曲部によって、接触部11側に位置する隣接半片に連結され、該移行部の当接する部分のうち縦軸に平行である部分は、前記隣接半片の間に形成され、該移行部の当接する部分のうち縦軸に平行である部分は、側部10a及び側部11aが当接する部分を備える前記側部10a及び側部11aに対してほぼ垂直である面に位置し、前記移行部の当接する部分は、縦軸に平行である部分と、縦軸と垂直である横断部とを備え、前記移行部の当接する部分のうち前記側部10a及び側部11aに対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記横断部からなる、雄型端子1。」

2.引用文献2?5について
当審拒絶理由1に引用された引用文献2には、156ページの図面とともに次の事項が記載されている。
「機械部品には,プレス加工品も,鋳造品も,鍛造品もあります.こういうもののかどやすみは,丸みがつくのがふつうです.
丸みをつけないということは不可能なのです.力学上も,すみには丸みをつけるほうがよいというか,丸みをつけるのが常道です.」(157ページ左欄第12-19行)

当審拒絶理由1に引用された引用文献3には、第1-2図とともに、次の事項が記載されている。
「いずれの端子1,7においても、角型の端子部4,9は相手端子(端子1に対しては端子7、端子7に対しては端子1)との嵌合中心線S(第3図参照)に対して両側の接触面側(端子部4においてはコンタクト部4Aの上下の外表面が存在する側、端子部9においては両コンタクト部9Aの上下の内表面が存在する側)が対称形に形成されている。
即ち、雄コネクタ端子1においては、角型の端子部4は相手端子7との嵌合中心線Sに対して両側の接触面(広面)側が対称形に形成されている。このような対称形の形状に形成するに伴い、係止孔6も対称形の係止部4Bの両面に対称形に設けられている。」
(第4ページ第15行-第5ページ第8行)

当審拒絶理由1に引用された引用文献4には、図1-4とともに、以下の事項が記載されている。
「【0021】板状接触部11は、接続部12から延設された長尺板状の基板部14と、この基板部14の幅方向の一側から延設されて基板部14上に折り曲げられて重ねられた折曲重ね板部15と、基板部14の幅方向の他側から延設されて基板部14と折曲重ね板部15との間に重ねられた平面確保板部16とでロール状に形成されている。そして、平面確保板部16は、基板部14及び折曲重ね板部15の平面状態を確保する。基板部14は、図2に示すように、接続部12、係止部13の底壁部分を形成しており、キャリア17に連結されている。また、基板部14の先端部分には、略三角形状の突片18が一体に形成されており、折曲重ね板部15の先端部分に設けられた同形状の突片18と重ねられて導入部19が構成されている。
【0022】折曲重ね板部15は、基板部14の一側から略直角方向に延設された厚み板部20と、この厚み板部20から基板部14と略平行に延設された幅板部21とからなり、平面確保板部16が基板部14と幅板部21との間に重ねられている。」
「【0058】請求項2の発明によれば、平面確保板部が、基板部と幅板部との間に重ねられているので、この部分の強度が向上し、プレス圧力が付与されても、基板部及び幅板部が変形することがなく、中央部分が陥没することがない。」

また、当審拒絶理由1に引用された引用文献5には、第1-3図とともに、以下の事項が記載されている。
「又、上記雄接続子10の前端部には、導通接続部11が前記導通押え片3の凸部3aへ相対的に圧接するようにして形成されており、この導通接続部11は、第1図および第2図に示されるように、扁平な板状に形成すると共に、その接合端部11aを側面に位置するようにしてかしめ付けにより圧接して形成している。」(第6ページ第19行-第7ページ第5行)

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明の「コネクタハウジング」は、本願発明1の「ハウジング」に相当し、以下同様に「コネクタハウジング内に係止され」ることは「ハウジングの中に挿入されるよう設計され」ることに、「導電性板材」は「金属薄板」に「雄型端子1」は「雄電気端子(10)」に、「コネクタハウジング内に係止され抜け出しが防止される係止片9」は「ハウジングと相互作用するよう適合された固定手段」に、「係止部3」は「位置決め部(51)」に、「接続部4」は「接合部(1)」に、「雌型端子」は「雌端子」に、「接続部4が雌型端子に電気的に接続される」ことは「接合部が雌端子に挿入又は接合される」ことに、「雌型端子の表面」と「電気的に接続される」ことは「雌端子」の「表面」と「電気接触するように適合された」ことに、「接触部11の表面」は「接触表面」に、「接触部11」は「接触表面上に位置する第一継ぎ目無し片(11)」に、「側部10a及び側部11aが当接する部分」は「接合部継ぎ目(17A)」に、「側部10a及び側部11a」は「側部(14又は15)」に、「基底部10」は「第二継ぎ目無し片(12)」に、「折曲部12」は「C字形状の断面を有する第一湾曲側部(14)」に、「移行部の当接する部分」は「移行部継ぎ目(17B)」に、「移行部の折曲部」は「C字形状の断面を有する湾曲側部」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ハウジングの中に挿入されるよう設計され、かつ一枚の金属薄板から形成される雄電気端子であって、該雄電気端子は縦軸にほぼ沿って延び、
該ハウジングと相互作用するよう適合された固定手段を備える、位置決め部と、
接合部であって、該接合部が雌端子に挿入又は接合されるとき、雌端子の表面と電気接触するように適合された、接触表面を有する接合部とを備え、
該接合部は、接合部継ぎ目を有し、該接合部継ぎ目は、前記接触表面に隣接する側部に位置し、第二継ぎ目無し片が、C字形状の断面を有する第一湾曲側部によって接触表面上に位置する第一継ぎ目無し片に連結されて、
前記雄電気端子は、前記接合部及び位置決め部の間に移行部をさらに備え、該移行部は、移行部継ぎ目を有し、前記第二継ぎ目無し片の両端が、C字形状の断面を有する湾曲側部によって、接触表面側に位置する隣接半片に連結され、該移行部継ぎ目(17B)のうち縦軸に平行である部分は、前記隣接半片の間に形成され、該移行部継ぎ目(17B)のうち縦軸に平行である部分は、接合部継ぎ目(17A)を備える前記側部に対してほぼ垂直である面に位置し、前記移行部継ぎ目は、縦軸に平行である部分と、縦軸と垂直な横断部とからなる雄電気端子」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1の「接合部(1)」は「二つのほぼ平行の接触表面」を有するのに対し、引用発明の「接続部4」は「接触部11の表面」という1つの面を有する点。

(相違点2)
本願発明1の「接合部(1)」は「第二継ぎ目無し片(12)と第三金属片(13)の間に、接合部継ぎ目(17A)」を有し、「前記第三金属片(13)が、C字形状の断面を有する第二湾曲側部(15)によって前記第一継ぎ目無し片(11)に連結され」るのに対し、引用発明の「接続部4」は、このような構成を有しない点。

(相違点3)
本願発明1は、「移行部継ぎ目(17B)」は、「縦軸(X)に平行である部分と、縦軸(X)と垂直であり前記側部に位置する横断部(17T)と、これらを結合する四半円部分とを備え、前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸(X)に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記四半円部分からなる」のに対し、引用発明の「移行部の当接する部分」は、このような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討すると、相違点3に係る本願発明1の「移行部継ぎ目(17B)は、縦軸(X)に平行である部分と、縦軸(X)と垂直であり前記側部に位置する横断部(17T)と、これらを結合する四半円部分とを備え、前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸(X)に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記四半円部分からなる」という構成は、上記引用文献1-5には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-11について
本願発明2-11も、本願発明1の「移行部継ぎ目(17B)は、縦軸(X)に平行である部分と、縦軸(X)と垂直であり前記側部に位置する横断部(17T)と、これらを結合する四半円部分とを備え、前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸(X)に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記四半円部分からなる」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
(特許法第29条第2項について)
平成29年5月2日付けの補正により、補正後の請求項1-11は、「移行部継ぎ目(17B)は、縦軸(X)に平行である部分と、縦軸(X)と垂直であり前記側部に位置する横断部(17T)と、これらを結合する四半円部分とを備え、前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸(X)に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記四半円部分からなる」という技術的事項を有するものとなった。

当該「移行部継ぎ目(17B)は、縦軸(X)に平行である部分と、縦軸(X)と垂直であり前記側部に位置する横断部(17T)と、これらを結合する四半円部分とを備え、前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、前記縦軸(X)に平行であり該面の中央に位置する部分と、前記四半円部分からなる」ことは、原査定における引用文献A-D(当審拒絶理由における引用文献1、3-5)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-11は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Dに基いて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由2について
(特許法第36条第6項第2号について)
当審では、平成28年12月13日提出の手続補正書に記載された特許請求の範囲について、請求項1の「該接合部(1)は、該接触表面上には位置しない該金属薄板の二つの折り曲げ部分の間に、接合部継ぎ目(17A)を有し、」という記載、請求項1の「該移行部(2)は、前記金属薄板の二つの折り曲げ部分の間に移行部継ぎ目(17B)を有し、」という記載、請求項2、4及び11の「二つの折り曲げ部分」という記載、請求項1及び請求項2の「該金属薄板は、接合部継ぎ目(17A)を備える前記側部に対してほぼ垂直である面に位置し、」という記載、請求項1及び請求項8の「縦軸(X)と垂直である横断部(17T)」という記載、請求項1の「前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、該面の中央に位置し、前記縦軸(X)に平行である部分と、前記四半円部分からなる」という記載、並びに請求項8の「前記移行部継ぎ目(17B)のうち前記側部に対してほぼ垂直である面に位置する部分は、該面の中央に位置し、前記縦軸(X)に平行である部分と、前記四半円部分からなる」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知している。
しかしながら、平成29年5月2日の補正により、請求項1、2、4、8及び11は、上記第4の請求項1、請求項2、請求項4、請求項8及び請求項11のように補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2013-524495(P2013-524495)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01R)
P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 雄電気端子  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 阿部 達彦  
代理人 森 隆一郎  

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