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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1329830
審判番号 不服2016-99  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-04 
確定日 2017-06-28 
事件の表示 特願2014- 44113「物理個別チャネル確立および監視手順を実行するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月31日出願公開、特開2014-140215〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、2010年1月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年1月30日、米国)を国際出願日とする特願2011-548274号の一部を2012年12月13日に分割した特願2012-272344号の一部を2014年3月6日に分割した出願であって、平成26年5月22日付けで手続補正がなされ、平成26年12月10日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月16日付けで手続補正がなされ、平成27年8月28日付けで拒絶査定がされ、平成28年1月4日に拒絶査定不服審判が請求されると共に同時に手続補正がなされ、平成28年8月26日付けで当審が拒絶理由を通知し、平成29年1月4日付けで手続補正がなされたものである。


2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年1月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「無線送受信ユニット(WTRU)によって実行される、デュアルキャリア動作を実行する方法であって、前記方法は、
物理チャネル確立手順をアンカー搬送波および補助搬送波上で実行するステップと、
前記アンカー搬送波上での前記物理チャネル確立手順中に、予め定められた数の無線リンク獲得指示が第1のカウンタによってカウントされる前に第1のタイマーが満了することを条件に、第1の物理チャネル確立失敗を前記アンカー搬送波上で宣言するステップと、
前記補助搬送波上での前記物理チャネル確立手順中に、予め定められた数の無線リンク獲得指示が第2のカウンタによってカウントされる前に第2のタイマーが満了することを条件に、第2の物理チャネル確立失敗を前記補助搬送波上で宣言するステップと、
前記第2の物理チャネル確立失敗が前記補助搬送波上で宣言されることを条件に、前記補助搬送波上でアップリンク送信を中止するステップと、
前記第2の物理チャネル確立失敗が前記補助搬送波上で宣言されることを条件に、フラクショナル個別物理チャネル(F-DPCH)受信手順を前記補助搬送波上で中止するステップと
を備えたことを特徴とする方法。」


3.当審の拒絶理由

一方、当審において平成28年8月26日付けで通知した拒絶理由の概要は、

<理由1>
平成28年1月4日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

<理由2>
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

<理由3>
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

であり、このうち、<理由2>については、

<理由2>について
(1)請求項1、7、11、16において特定されている「前記補助搬送波上での前記第2の物理チャネル確立失敗が宣言されることを条件に、前記補助搬送波上でのフラクショナル個別物理チャネル(F-DPCH)受信手順を中止する」との事項は明細書の発明の詳細な説明中に記載されておらず、請求項1-18は発明の詳細な説明に記載されているとは認められない。

つまり、明細書の段落【0005】の記載を参酌するに、本件発明においては、フラクショナル個別物理チャネル(F-DPCH)はアンカー搬送波にて搬送されるものであると記載されており、同明細書の段落【0034】の「また、WTRU100は、二次搬送波上での任意の送受信手順を、その手順が失敗したとき直ちに停止することも、ネットワークからの明示的な表示を待つこともできる。」との記載を考慮しても、上記請求項で特定されている『補助搬送波上でのフラクショナル個別物理チャネル(F-DPCH)受信手順を中止する』との事項が明細書の発明の詳細な説明中に記載されているとは認められない。

である。


4.請求人の主張

請求人は、平成29年1月4日の意見書において、上記<理由2>の(1)について、

「4.拒絶理由2に対する意見
・(1)について
審査官殿は、平成28年8月26日付け拒絶理由通知書において、『請求項1、7、11、16において特定されている「前記補助搬送波上での前記第2の物理チャネル確立失敗が宣言されることを条件に、前記補助搬送波上でのフラクショナル個別物理チャネル(F-DPCH)受信手順を中止する」との事項は明細書の発明の詳細な説明中に記載されておらず、請求項1-18は発明の詳細な説明に記載されているとは認められない。』と認定されました。

しかしながら、請求項1、7、11、16における御指摘の事項は、少なくとも明細書における段落番号[0023]、[0030]、[0038]、[0065]、および[0005]-[0007]に記載されている(または、これらの記載からいわゆる当業者にとって自明である)ものと思料致します。
例えば、段落番号[0023]には「1つのシナリオでは、デュアルキャリア(すなわちセル2重化)動作またはマルチキャリア(すなわちマルチセル)動作が、複数の並列電力制御ループを用いてアップリンク(UL)とDLの両方で実行される。各DL搬送波がUL搬送波と関連付けられ、このDL搬送波の物理チャネル(たとえば、F-DPCH)が、対応するUL搬送波の制御チャネル(たとえば、DPCCH)に関連付けられる。」と記載されており、WTRUのマルチキャリアUL/DL動作について記載されております。また、段落番号[0005]には、「アンカー搬送波は、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)、拡張個別チャネル(E-DCH)、および個別チャネル(DCH)動作などトランスポートチャネルに関連付けられたすべての物理レイヤの個別制御チャネルおよび共有制御チャネルを搬送する。そのような物理レイヤチャネルは、例として、フラクショナル個別物理チャネル(F-DPCH)、・・・(中略)・・・を含む。」と記載されております。これらの記載から、当業者であれば、F-DPCHは、物理チャネル(例えば、E-DCH)に含まれることが自明であるものと思料致します。
さらに、段落番号[0065]には、「WTRU100が補助搬送波上の無線リンク失敗を決定したとき(すなわち、補助無線リンク失敗)、WTRU100は、E-DCH送信/受信手順を、また任意選択で、補助搬送波上のHS-DSCH受信を、一時中断(サスペンド)することができる。・・・(中略)・・・WTRU100は、F-DPCH、E-DCH、およびHS-DSCHについての設定情報を保持することができる。WTRU100は、同期を、任意選択で所与の時間枠について再確立することを期待して、補助搬送波におけるF-DPCHを引き続き監視することができる。」と記載されており、これは、(E-DCH(物理チャネル)がF-DPCHを含むため)E-DCHを一時中断することにより必然的に中止されたF-DPCH受信手順の監視を、再確立することを期待して継続することができることが記載されているものと思料致します。

したがいまして、請求項1、7、11、および16における「前記補助搬送波上での前記第2の物理チャネル確立失敗が宣言されることを条件に、前記補助搬送波上でのフラクショナル個別物理チャネル(F-DPCH)受信手順を中止する」ことは明細書に記載されている(またはその記載から自明である)ものと思料致します。」

と主張している。


5.当審の判断

本願の明細書(下線は当審が付与。)には、

「【0065】
WTRU100が補助搬送波上の無線リンク失敗を決定したとき(すなわち、補助無線リンク失敗)、WTRU100は、E-DCH送信/受信手順を、また任意選択で、補助搬送波上のHS-DSCH受信を、一時中断(サスペンド)することができる。すなわち、WTRU100は、二次アップリンク周波数上で送信するのを停止することができ、それによりその搬送波上でのE-DCH動作(送信および受信)を停止することができる。任意選択で、WTRU100は、二次サービングHS-DSCHセル上でのHS-DSCH受信を一時中断することもできる。関連するリソースをすべてクリアするのではなく、WTRU100は、F-DPCH、E-DCH、およびHS-DSCHについての設定情報を保持することができる。WTRU100は、同期を、任意選択で所与の時間枠について再確立することを期待して、補助搬送波におけるF-DPCHを引き続き監視することができる。WTRU100は、後で、ネットワークによって明示的なシグナリングを介して(たとえば、RRCメッセージまたはHS-SCCH命令を介して)指示されたときアップリンク動作を再開することができる。」

と記載されているから、WTRUが補助搬送波上の無線リンク失敗を決定したとき、同期を、任意選択で所与の時間枠について再確立することを期待して、「補助搬送波におけるF-DPCHを引き続き監視すること」が記載されている。

「F-DPCHを引き続き監視する」ためにはF-DPCHを受信しようとすることが必要であることは明らかであるから、本願の明細書によれば、WTRU100が補助搬送波上の無線リンク失敗を決定したとき、「F-DPCH受信手順を補助搬送波上で引き続き監視する」ことが記載されている。

すなわち、本願の明細書【0065】は、特許請求の範囲の記載の「F-DPCH受信手順を補助搬送波上で中止する」こととは明らかに異なる記載であるから、「前記補助搬送波上での前記第2の物理チャネル確立失敗が宣言されることを条件に、前記補助搬送波上でのフラクショナル個別物理チャネル(F-DPCH)受信手順を中止する」ことが明細書の発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

したがって、本願発明は発明の詳細な説明に記載したものではないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


6.その他の平成29年1月4日付けの手続補正について

(1)「前記アンカー搬送波上での前記物理チャネル確立手順中に、予め定められた数の無線リンク獲得指示が第1のカウンタによってカウントされる前に第1のタイマーが満了することを条件に、第1の物理チャネル確立失敗を前記アンカー搬送波上で宣言する」ことについて

「前記アンカー搬送波上での前記物理チャネル確立手順中に、予め定められた数の無線リンク獲得指示が第1のカウンタによってカウントされる前に第1のタイマーが満了すること」は、「アンカー搬送波の物理チャネル失敗」を判断した場合であるから、「アンカー搬送波の物理チャネル失敗を判断した場合に、第1の物理チャネル失敗を前記アンカー搬送波上で宣言する」ことを意味している。
これは、チャネル確立を失敗したことを「失敗した搬送波」上で宣言するものであり、宣言をするためには、宣言を行う「チャネル」が存在する必要があることは、明らかである。

一方、アンカー搬送波上でのチャネル確立を失敗することは、アンカー搬送波上に物理チャネルが存在していないことを意味している。

上記によれば、物理チャネルが存在していないアンカー搬送波上で、「宣言を行う」ことはできないことを示している。

そして、本願の明細書には、

「【0033】
また、WTRU100は、確立された物理個別チャネルを有する搬送波上で送受信を継続することも、物理個別チャネル確立が一方の搬送波上で失敗したことをネットワークに示すRRCメッセージを送ることもできる。WTRU100は、成功した再設定手順(すなわち、RRC再設定完了メッセージ)をレポートすることができる。しかし、RRCメッセージは、一方の搬送波上で失敗が発生したこと、またはアンカー搬送波上で失敗が発生したことを示すように拡張されてもよい。あるいは、失敗を示すために、新しいRRCメッセージを定義してもよい。」

と記載されているから、「一方の搬送波上で失敗した」ことを宣言することが可能であることは記載されているものの、「自搬送波上で失敗した」ことを宣言することが可能であることは記載されていない。

また、

「【0032】
一方の搬送波上で物理個別チャネル確立失敗が検出され、他方の搬送波が確立された物理個別チャネルを有するとみなされた後で、WTRU100は、失敗した搬送波上でのUL送信を停止し、その送信機115をシャットオフし、(適用可能な場合)その搬送波上で後検証が失敗したとみなすことができる。」

と記載されているから、搬送波上で物理チャネル確立が失敗した場合には、アップリンクを停止させ、基地局側に何も信号を送らないこととし、基地局で「何も信号を受信しないこと」を検出すると「WTRUが物理チャネル確立を失敗した」と理解するように予め決めておくことで、WTRUでの物理チャネル確立の失敗を暗示的に知らせることが記載されているが、「宣言を行う」ものではない。

したがって、明細書にも物理チャネルが存在していないアンカー搬送波上で、「宣言を行う」ことは記載されていない。

結局のところ、物理チャネルが存在していないアンカー搬送波上で「宣言を行う」ことはできないし、明細書にも記載されていない。

(2)「前記補助搬送波上での前記物理チャネル確立手順中に、予め定められた数の無線リンク獲得指示が第2のカウンタによってカウントされる前に第2のタイマーが満了することを条件に、第2の物理チャネル確立失敗を前記補助搬送波上で宣言する」ことについて

(1)と同様に、物理チャネルが存在していない補助搬送波上で「宣言を行う」ことはできないし、明細書にも記載されていない。


7.むすび

以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-24 
結審通知日 2017-01-31 
審決日 2017-02-14 
出願番号 特願2014-44113(P2014-44113)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 水野 恵雄
吉田 隆之
発明の名称 物理個別チャネル確立および監視手順を実行するための方法および装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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