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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L |
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管理番号 | 1329831 |
審判番号 | 不服2016-336 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-07 |
確定日 | 2017-06-28 |
事件の表示 | 特願2014- 21592「拡張専用チャンネル送信に対するデータライフスパンタイマーの実装実施」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月10日出願公開、特開2014-131310〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2005年4月29日(パリ条約による優先権主張2004年5月7日、米国)を国際出願日とした特願2007-511541号の一部を平成24年3月26日に新たな特許出願とした特願2012-70155号の一部を平成24年4月25日に新たな特許出願とした特願2012-100136号の一部を平成26年2月6日に新たな特許出願としたものであって、平成26年11月21日付けで手続補正され、平成27年2月9日付けで拒絶理由が通知され、同年5月18日付けで手続補正されたが、同年8月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年1月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正され、同年9月23日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年12月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 平成28年9月23日付け拒絶理由通知の概要 平成28年9月23日付けで、当審より通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の内容は、以下のとおりである。 「理 由 1)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2)(略) 記 理由1について 1.請求項3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (1)(略) (2)請求項3に係る方法の発明は、前段の「前記WTRUにおいて、下りリンク信号チャネルを介して、上りリンク送信のための物理リソースの割当を受信することと、前記WTRUにより、前記割り当てられた物理リソースを介して、ハイブリッド自動再送要求(H-ARQ)プロセスを用いて第1のブロックを送信することであって、前記第1のブロックを送信することは、他のデータを送信することより優先されること」と、このプロセスに続く、「前記WTRUにおいて、タイマーについての設定情報を受信することであって、前記設定情報は値を示すこと」とは、時系列的な関係になく、さらに、後段の「前記タイマーの満了および物理リソースの割当を受信していないことに応じて、前記WTRUにより、上りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当の要求を送信することと、前記要求に応じて、前記WTRUにおいて、下りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当を受信することと、前記物理リソースの割当に応じて、前記WTRUにより、H-ARQプロセスを用いて第2のブロックを送信すること」との関係も如何なる時系列的な関係に有るのか明らかでない。このため、発明の詳細な説明(段落【0013】?【0020】、ステップ202?ステップ232)の記載、及び図2におけるWTRU内でのデータライフスパンタイマーを実装するプロセスのフローダイアグラムにおける全フローのうちいずれの部分にも対応しておらず、請求項3に係る方法の発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (3)(略) (4)(略) 2.3.(略) したがって、上記1?3のとおり、請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 理由2について、(略)」 したがって、請求項3に係る方法の発明は、発明の詳細な説明(段落【0013】?【0020】、ステップ202?232の記載、及び図2におけるWTRU内でのデータライフスパンタイマーを実装するプロセスのフローダイアグラムにおける全フローのうちいずれの部分にも対応しておらず、発明の詳細な説明に記載したものではない。 第3 請求人の対応 1.平成28年12月27日付け手続補正書の概要 上記当審拒絶理由に対し、請求人は、平成28年12月27日付けで、手続補正書を提出し、特許請求の範囲について補正したが、その請求項3(以下、「補正後請求項3」という。)の記載は、以下のとおりである。 「無線送受信装置(WTRU)により実行される方法であって、 上りリンク送信のためのデータをバッファに格納することと、 前記WTRUにおいて、タイマーについての設定情報を受信することであって、前記設定情報は値を示し、前記設定情報はネットワークから受信されることと、 前記WTRUにおいて、前記バッファされたデータに関連付けられた前記タイマーを初期化することと、 前記バッファされたデータの送信のためのハイブリッド自動再送要求(H-ARQ)プロセスを関連付けることと、 前記タイマーの満了および物理リソースの割当を受信していないことに応じて、前記WTRUにより、上りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当の要求を送信することと、 前記要求に応じて、前記WTRUにおいて、下りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当を受信することと、 前記物理リソースの受信された割当に応じて、前記WTRUにより、前記関連付けられたH-ARQプロセスを用いてデータブロックを送信することと を備えたことを特徴とする方法。」 2.平成28年12月27日付け意見書の概要 上記当審拒絶理由に対し、請求人は、平成28年12月27日付けで、以下の意見書(以下、「意見書」という。)を提出した。その概要は以下のとおりである。 「【意見の内容】 (1)(略) (2)(略) (3)請求項1の第2段落(補正前の第2,3段落に相当する前段部分)の補正は、段落番号[0010]、[0013]の記載に基づいています。 請求項1の第3段落の補正は、段落番号[0011]の記載に基づいており、第4段落の補正は、段落番号[0010]、[0013]の記載に基づいています。第5段落は、段落番号[0013]の記載に基づいて追記しました。 請求項1の第6-8段落(補正前の第6-8段落に相当する後段部分)は、上記の補正に応じて書誌的な修正を加えたものであり、段落番号[0012]、[0016]、[0019]の記載に基づいています。 請求項2の補正は、段落番号[0011]、[0013]の記載に基づいています。 請求項3,4の方法クレームも、請求項1,2の補正に合わせて補正しました。 (4)補正前の請求項に記載されていた「第1のブロック」及び「第2のブロック」という用語が、発明の詳細な説明には直接的に記載されていないため、書き改めました。 請求項1の前段部分は、図2のフローダイヤグラムでは、ステップ202に相当し、上りリンク送信のためのデータがバッファに格納されます。制御装置は、タイマーについての設定情報をネットワークから受信しており、バッファされたデータの送信に関連付けられたタイマーを初期化します。このとき、バッファされたデータには、H-ARQプロセスが関連付けられます(段落番号[0013])。 制御装置は、タイマーの満了(ステップ220)および物理リソースの割当を受信していないこと(ステップ224-228)に応じて、上りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当の要求を送信します(ステップ228)。そして、制御装置は、物理リソースの割当を受信すると、H-ARQプロセスを用いてデータブロックを送信します(ステップ206-212-214)。 これにより、WTRUにおいて、上りリンク送信のためのデータをバッファに格納してから送信するまで、タイマーの使用との関係が明確になり、図2のフローダイヤグラムとの関係も明確になりましたので、特許請求の範囲の記載が当初明細書等に記載された範囲内となり、拒絶の理由は解消したものと思料いたします。」 第4 当審の判断 補正後請求項3における「前記タイマーの満了および物理リソースの割当を受信していないことに応じて、前記WTRUにより、上りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当の要求を送信することと、前記要求に応じて、前記WTRUにおいて、下りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当を受信することと、前記物理リソースの受信された割当に応じて、前記WTRUにより、前記関連付けられたH-ARQプロセスを用いてデータブロックを送信すること」との記載事項(以下、「発明特定事項」という。)が、発明の詳細な説明に記載されたものであるかどうかについて、特に、「前記タイマーの満了」「に応じて」を中心に以下に検討する。 発明特定事項の根拠について、平成28年12月27日付け意見書【意見の内容】の項(4)において、「制御装置は、タイマーの満了(ステップ220)および物理リソースの割当を受信していないこと(ステップ224-228)に応じて、上りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当の要求を送信します(ステップ228)。そして、制御装置は、物理リソースの割当を受信すると、H-ARQプロセスを用いてデータブロックを送信します(ステップ206-212-214)。」旨釈明し、「前記タイマーの満了」「に応じて」が(ステップ220)に相当するとしている。 そこで、請求人が「前記タイマーの満了」「に応じて」の記載事項の根拠と主張する(ステップ220)に関連する事項について検討するに、本願発明の詳細な説明には、以下の記載があり、図2に各ステップのフローが図示されている。 「【0012】 (前略) 図2は、本発明に従ってE-DCH送信を支援する目的で、WTRU102内でデータライフスパンタイマー124を実装実施するプロセス200のフローダイアグラム(流れ図)である。WTRU102は、複数のデータライフスパンタイマー124を使用して多数のE-DCH送信を同時に処理することができる。 【0013】 E-DCH108経由で新規のデータブロックが送信用に受信されると、制御装置122はそのデータブロックに対してデータライフスパンタイマー124を起動し、H-ARQプロセス128をそのデータブロックに関連付け、その新規のデータブロックはバッファ126で待機する(ステップ202)。RNCは、各E-DCHのTrCHまたは各E-DCHの論理チャンネルに対してデータのライフスパンを設定構成する。MACまたはRLCでUL送信を受信すると、そのタイマーが各送信に対して初期化される。 【0014】【0015】(略) 【0016】 ステップ204の各TTI(有効期間)に対して、制御装置122はWTRU102のバッファ126内のデータブロックに対するデータライフスパンタイマーが満了したか否かを判定する(ステップ206)。データライフスパンタイマー124が満了した場合、制御装置122はそのデータブロックを破棄し、関連付けられるH-ARQプロセス128を解除する(ステップ208)。WTRU102はこのイベント(事象、出来事)を、RNC106またはノードB104のいずれかに通知することができる(ステップ210)。WTRU102はさらにノードBに、一意な指示を有するチャンネル割り振り要求を送ることで、物理リソースの割り振りが十分でないことを通知することができる。 【0017】 ステップ206を再び参照すると、データブロックに対するデータライフスパンタイマー124が満了していない場合、制御装置122は、WTRU102のバッファ126内のデータブロックがWTRU102により前もって送信すでに送信されたか否かを判定する(ステップ212)。データブロックが前もって送信すでに送信された場合、データブロックに関連付けられるデータフィードバック情報がノードB104から受信されたか否かがさらに判定される(ステップ214)。データブロックの送信が成功したことを示す確認応答(ACK)メッセージが受信される場合、そのデータブロックはバッファ126から破棄され、関連付けられるH-ARQプロセス128が別のデータブロックを支援するために利用可能となり、データライフスパンタイマーがリセットされる(ステップ216)。フィードバックメッセージが受信されない場合、WTRU102は次のTTI(有効期間)までフィードバックメッセージを待つ(ステップ218)。 【0018】 ステップ212でデータブロックがWTRU102によりこれまでに前もって送信されていないことが判定される場合、またはそのデータブロックが送信されたが、そのデータブロックの送信が失敗したことを示す非確認応答(NACK)メッセージが受信される場合、そのデータブロックは再送信される。制御装置122は、そのデータブロックに対するデータライフスパンタイマー124が満了直前か否かを判定する(ステップ220)。データライフスパンタイマー124が満了直前でない場合、通常のH-ARQ操作が、そのデータブロックを送信するために初期化される(ステップ222)。 【0019】 ステップ224において、制御装置122は、データライフスパンタイマー124が満了直前であるときに物理リソースが割り振られたているか否かを判定する(ステップ224)。物理リソースが割り振られている場合、制御装置122はそのデータブロックの送信を随意的に任意に優先することができる(ステップ226)。物理リソースが割り振られていない場合、制御装置122は、そのデータブロックの送信を支援するために緊急チャンネル割り振り要求をノードBに随意的に任意に送ることができる(ステップ228)。 【0020】 ステップ214を再び参照すると、NACKメッセージが受信された場合、そのデータブロックは再送信され、制御装置122は再送カウンタ130が最大再送信制限に到達したか否かを判定することができる(ステップ230)。再送カウンタ130はデータブロックが再送信される度にインクリメント(増加)され、最大再送信制限はRNC106により構成設定される。再送カウンタ130が最大再送信制限に到達しない場合、プロセス200はステップ220に進む。再送カウンタ130が最大再送信制限に到達した場合、制御装置122は、そのデータブロックに対するライフスパンタイマー124が満了しない限り、H-ARQプロセス128を再初期化する(ステップ232)。再送カウンタ130が初期化され、新規のデータのインジケータ(指示子)がインクリメントされると、H-ARQプロセス128が再初期化されたことを示す。」 まず、補正後請求項3に「前記WTRUにおいて、前記バッファされたデータに関連付けられた前記タイマー」と記載され、これに対応して、発明の詳細な説明の段落【0013】に「E-DCH108経由で新規のデータブロックが送信用に受信されると、制御装置122はそのデータブロックに対してデータライフスパンタイマー124を起動し、H-ARQプロセス128をそのデータブロックに関連付け、その新規のデータブロックはバッファ126で待機する(ステップ202)。」と記載されているから、補正後請求項3の「タイマー」が発明の詳細な説明の「データライフスパンタイマー124」に相当することは明らかである。 そして、請求人が「前記タイマーの満了」「に応じて」の記載事項の根拠とする「(ステップ220)」に関し、段落【0018】には「制御装置122は、そのデータブロックに対するデータライフスパンタイマー124が満了直前か否かを判定する(ステップ220)。」と記載され、当該「データライフスパンタイマー124が満了直前か否かを判定する(ステップ220)」は、データライフスパンタイマー(124)が満了していないことを前提として、「満了直前」の状態にあるか否かを「はい」か「いいえ」で判定するものであるから、「前記タイマーの満了」「に応じて」が発明の詳細な説明の(ステップ220)に相当するものであるとは認められない。 また、発明の詳細な説明において、「前記タイマーの満了」「に応じて」に相当する記載としては、段落【0016】に「制御装置122はWTRU102のバッファ126内のデータブロックに対するデータライフスパンタイマーが満了したか否かを判定する(ステップ206)。データライフスパンタイマー124が満了した場合」と記載され、それに対応して、図2にステップ206が図示されているのみである。しかし、「データライフスパンタイマー124が満了した場合」に続くステップは「制御装置122はそのデータブロックを破棄し、関連付けられるH-ARQプロセス128を解除する(ステップ208)」であるから、請求項3の記載における「前記タイマーの満了および物理リソースの割当を受信していないことに応じて、前記WTRUにより、上りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当の要求を送信することと、前記要求に応じて、前記WTRUにおいて、下りリンク信号チャネルを介して、物理リソースの割当を受信することと、前記物理リソースの受信された割当に応じて、前記WTRUにより、前記関連付けられたH-ARQプロセスを用いてデータブロックを送信すること」に該当するものではない。 よって、補正後請求項3の発明特定事項は、請求人が根拠とする該当箇所を含めて発明の詳細な説明中には記載も示唆もされておらず、出願時の技術常識を考慮しても自明な事項ともいうことができないから、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-01-26 |
結審通知日 | 2017-01-31 |
審決日 | 2017-02-13 |
出願番号 | 特願2014-21592(P2014-21592) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷岡 佳彦 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 林 毅 |
発明の名称 | 拡張専用チャンネル送信に対するデータライフスパンタイマーの実装実施 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |