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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない A44C
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない A44C
管理番号 1329866
審判番号 訂正2016-390150  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-11-16 
確定日 2017-06-26 
事件の表示 特許第4044598号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4044598号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成17年6月30日(優先権主張平成16年7月14日)を国際出願日として出願され、平成19年11月22日に特許権の設定登録がなされたものである。
本件特許については、平成27年3月28日に別件訂正審判(訂正2015-390027号)が請求され、同年4月23日付けで訂正を認める旨の審決がなされた。その後、本件特許について、平成28年11月16日に本件訂正審判(訂正2016-390150号)が請求され、同年12月26日に手続補正書が提出され、これに対して、平成29年1月24日付けで訂正拒絶理由が通知されたところ、同年2月1日に手続補正書が提出されたものである。

第2 本件審判請求の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4044598号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正(以下「本件訂正」という。)することを認める、との審決を求めるものである。

なお、本件審判請求書の請求の趣旨欄には「請求ごと又は一群の請求ごとに」と記載されており、当該記載中、「請求ごと」は、訂正後の請求項2についての訂正に対応する部分であり、「一群の請求ごと」は、訂正後の請求項1並びに同請求項を引用する請求項3及び4についての訂正に対応する部分であるところ、後者に係る訂正事項については、平成28年12月26日の手続補正による補正により削除された。

第3 平成28年12月26日の手続補正による補正の適否
平成28年12月26日の手続補正による補正(以下「本件補正1」という。)は、上記第2のとおり、訂正後の請求項1並びに同請求項を引用する請求項3及び4についての訂正事項を削除するものである。
したがって、本件補正1は請求の要旨を変更するものではなく、特許法第131条の2第1項の規定を満たすものである。

第4 訂正拒絶理由の概要
平成29年1月24日付けで当審が通知した訂正拒絶理由の概要は以下のとおりである。
1 理由1
本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではない。
2 理由2
本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであって、特許法第126条第6項の規定に適合しない。
3 理由3
本件訂正後の請求項2に係る発明は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえず、本件訂正は、特許法第126条第7項の要件を満たすものとはいえない。

第5 平成29年2月1日の手続補正による補正の適否
1 平成29年2月1日の手続補正による補正(以下「本件補正2」という。)の内容
本件補正2の内容は次のとおりである。

本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2(本件補正1による補正はなされていない。)に

「【請求項2】
装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって、前記ホルダーとホルダー受けには、これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において、
前記ホルダーが、1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、かつ、前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着材を設け、前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設け、前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材が前記1対の顎部材のいずれか一方に固定されている装飾品鎖状端部の留め具。
あるいは、前記ホルダーが、ホルダー受け嵌入用の開口部を構成すると共に先端部に噛合い形状を形成した1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、かつ、嵌入するホルダー受けの吸着部材とネック部は、鰐口クリップの一対の閉口状態の顎部材間以下の大きさであり、かつ、前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着材を設け、前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設け、前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材を支持する支持部材が前記1対の顎部材を軸支する支軸によって支持されている装飾品鎖状端部の留め具。」

とあるのを、

「【請求項2】
装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって、前記ホルダーとホルダー受けには、これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において、
前記ホルダーが、1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、かつ、前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着材を設け、前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設け、前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材が前記1対の顎部材のいずれか一方に固定されている装飾品鎖状端部の留め具。
あるいは、装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって、前記ホルダーとホルダー受けには、これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において、
前記ホルダーが、ホルダー受け嵌入用の開口部を構成すると共に先端部に噛合い形状を形成した1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、かつ、嵌入するホルダー受けのネック部は、鰐口クリップの一対の閉口状態の顎部材の先端の止め部と止め部の間以下の大きさであり、かつ、ホルダー受けの吸着部材は、鰐口クリップの一対の閉口状態の顎部材の止め部より後部の顎部材間以下の大きさであり、かつ、前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着材を設け、前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設け、前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材を支持する支持部材が前記1対の顎部材を軸支する支軸によって支持されている装飾品鎖状端部の留め具。」

と補正するものである。

2 本件補正2に対する当審の判断
本件補正2は、本件補正2前の請求項2の「あるいは、前記ホルダーが・・・装飾品鎖状端部の留め具。」の部分について、「あるいは、」と「前記ホルダー」の間に、「装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって、前記ホルダーとホルダー受けには、これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において、」という技術事項を追加するものである。

また、本件補正2は、上記部分における「嵌入するホルダー受けの吸着部材とネック部は、鰐口クリップの一対の閉口状態の顎部材間以下の大きさであり」の技術事項について、「ネック部」は「鰐口クリップの一対の閉口状態の顎部材の先端の止め部と止め部の間以下の大きさであり」と変更し、「吸着部材」は「鰐口クリップの一対の閉口状態の顎部材の止め部より後部の顎部材間以下の大きさであり」と変更するものである。

上記の本件補正2の内容のうち、少なくとも、ネック部と吸着部材の大きさについては、本件補正2前に共に「顎部材間以下の大きさ」であったものが、それぞれ「顎部材の先端の止め部と止め部の間以下の大きさ」、「顎部材の止め部より後部の顎部材間以下の大きさ」に変更され、その実質的内容が変更されている。

そうすると、本件補正2は、軽微な瑕疵の補正等の微修正に止まるものとはいえず、訂正事項の同一性を失わせるものである。また、本件補正2は、訂正事項の削除でもない。

したがって、本件補正2は請求の要旨を変更するものであるから、特許法第131条の2第1項の規定を満たさず、本件補正2は認められない。

第6 本件審判請求に対する当審の判断
1 訂正内容
上記第5に示したとおり、本件補正2は認められないから、本件訂正の内容は、本件審判請求書(本件補正1により補正)に添付された訂正特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって、以下のとおりである。

請求項2に

「【請求項2】
装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって、前記ホルダーとホルダー受けには、これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において、
前記ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、かつ、前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着部材を設け、前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設け、前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材が前記1対の顎部材のいずれか一方に固定され、あるいはこの吸着部材を支持する支持部材が前記1対の顎部材を軸支する支軸によって支持されている装飾品鎖状端部の留め具。」

とあるのを、

「【請求項2】
装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって、前記ホルダーとホルダー受けには、これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において、
前記ホルダーが、1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、かつ、前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着材を設け、前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設け、前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材が前記1対の顎部材のいずれか一方に固定されている装飾品鎖状端部の留め具。
あるいは、前記ホルダーが、ホルダー受け嵌入用の開口部を構成すると共に先端部に噛合い形状を形成した1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり、前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり、かつ、嵌入するホルダー受けの吸着部材とネック部は、鰐口クリップの一対の閉口状態の顎部材間以下の大きさであり、かつ、前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着材を設け、前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設け、前記鰐口クリップの内部に設けた吸着部材を支持する支持部材が前記1対の顎部材を軸支する支軸によって支持されている装飾品鎖状端部の留め具。」

と訂正するものである(以下「本件訂正事項」という。)。

2 当審の判断
(1)訂正の目的の適否について
本件訂正事項による訂正たる本件訂正は、本件訂正前の請求項2において、「鰐口クリップの内部に設けた吸着部材」の支持態様につき「1対の顎部材のいずれか一方に固定され」る態様と「この吸着部材を支持する支持部材が前記1対の顎部材を軸支する支軸によって支持されている」態様を選択する表現となっているところ、前者の支持態様を有する「装飾品鎖状端部の留め具」(以下「本件留め具A」という。)と後者の支持態様を有する「装飾品鎖状端部の留め具」(以下「本件留め具B」という。)を句点を用いて少なくとも文言上独立した表現に改めて、両者の表現を「あるいは」の文言で接続するとともに、本件留め具Bについて、「1対の顎部材」に「ホルダー受け嵌入用の開口部を構成すると共に先端部に噛合い形状を形成した」との限定を、「嵌入するホルダー受けの吸着部材とネック部」に「鰐口クリップの一対の閉口状態の顎部材間以下の大きさであり」との限定をそれぞれ付加することを含むものである。

そして、本件訂正は、本件留め具A及びBを独立した表現に改める際に、本件留め具Bについて、本件訂正前の請求項2において前提とされていた「装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって、前記ホルダーとホルダー受けには、これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において、」の事項(以下「本件削除事項」という。)を削除するものである。

そうすると、本件訂正は、本件削除事項を削除するものであり、かかる削除の結果として、本件訂正後の請求項2は、少なくとも文言上拡張されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。

また、本件訂正は、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることの、いずれの事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

したがって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものであるとはいえない。

(2)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について
本件訂正は、上記(1)のとおり、本件訂正前の請求項2について、本件削除事項を削除するものである。かかる削除の結果として、本件訂正後の請求項2は、文言上拡張されていることは明らかであるが、文言上の拡張に止まらず、実質的にも特許請求の範囲は拡張されている。

この点、本件訂正後の請求項2のうち、本件留め具Bの部分には「前記ホルダー」及び「前記ホルダー受け」の記載があり、当該部分における当該記載の前には「ホルダー」及び「ホルダー受け」の記載がないことから、当該記載中「前記」は、本件留め具Aの部分における「ホルダー」及び「ホルダー受け」の記載を指していることとなる。

しかしながら、この場合にあっても、本件留め具Aの部分における「ホルダー」及び「ホルダー受け」の記載とは、いずれの記載を指すのかは多義的な解釈を排除することができない。
すなわち、本件削除事項中の全ての文言で特定された「装飾品鎖状端部の留め具」における「ホルダー」及び「ホルダー受け」を指していると限定的に解釈することが全く不可能であるとまではいえないが、本件削除事項中、「装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具」における「ホルダー」及び「ホルダー受け」を指していると解釈することも十分に可能である。
そして、後者の解釈の場合にあっては、本件削除事項中、「前記ホルダーとホルダー受けには、これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に、互いに吸着する磁石の各一方を、あるいは磁石とこれに吸着される金属材を、それぞれ吸着部材として設けた」との限定はなく、吸着部材を設ける位置という点において実質的に特許請求の範囲が拡張されていることになる。

このように、本件訂正は、実質的に特許請求の範囲が拡張される可能性を排除することができないものであるから、特許法第126条第6項の規定に適合するものであるとはいえない。

第7 むすび
したがって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1ないし4号に掲げる事項を目的とするものではなく、特許法第126条第6項に規定に適合するものでもない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-28 
結審通知日 2017-05-02 
審決日 2017-05-15 
出願番号 特願2006-528955(P2006-528955)
審決分類 P 1 41・ 851- Z (A44C)
P 1 41・ 854- Z (A44C)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 平瀬 知明
根本 徳子
登録日 2007-11-22 
登録番号 特許第4044598号(P4044598)
発明の名称 装飾品鎖状端部の留め具  

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