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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1329899
審判番号 不服2016-17434  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-22 
確定日 2017-07-25 
事件の表示 特願2012-165301「プローブユニット、基板検査装置およびプローブユニット製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日出願公開、特開2014- 25769、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月26日の出願であって、平成28年3月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年7月27日付けで手続補正がされ、同年8月17日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月17日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2008-286788号公報
2.特開2010-156648号公報
3.特開2012-78297号公報
4.特開2002-90410号公報
5.特開2010-66051号公報
6.特開2008-298555号公報

第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成28年11月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】 基板の導体部に先端部を接触させて電気信号の入出力を行うための複数のプローブと、当該プローブを支持する支持部とを備えたプローブユニットであって、
前記支持部は、第1の支持孔を有して当該第1の支持孔に挿通させた前記先端部を支持する第1の支持板と、第2の支持孔を有して当該第2の支持孔に挿通させた前記プローブの基端部を支持する第2の支持板と、第3の支持孔を有して当該第3の支持孔に挿通させた前記基端部を支持する第3の支持板とを備えて当該各支持板がこの順序で対向するように配置されると共に、前記第1の支持板と前記第2の支持板との間に配設されたスペーサを備えて構成され、
前記各支持板は、前記第2の支持板および前記第3の支持板が当接または近接した状態で前記第1の支持板と当該第2の支持板とが離間すると共に当該各支持板の積層方向に対して傾斜する傾斜方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向する姿勢で前記スペーサに固定され、
前記プローブは、前記先端部が前記第1の支持孔に沿って延在すると共に当該先端部を除く部分が前記傾斜方向に沿って延在する状態に維持され、
前記第1の支持板には、第1の位置決めピンおよび第2の位置決めピンを挿通可能な第1の挿通孔が形成され、
前記第2の支持板および前記第3の支持板には、前記第1の位置決めピンを挿通可能な第2の挿通孔と第3の位置決めピンを挿通可能な第3の挿通孔とがそれぞれ形成され、
前記スペーサには、前記第2の位置決めピンを挿入可能な第1の挿入孔が前記第1の支持板に対向する面に形成されると共に、第3の位置決めピンを挿入可能な第2の挿入孔が前記第2の支持板に対向する面に形成され、
前記第1の挿通孔および前記第2の挿通孔は、前記各支持板に対して垂直な垂直方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向するように当該各支持板が互いに当接または近接して積み重ねられたときに当該各挿通孔の中心軸が同軸となる位置にそれぞれ形成され、
前記第1の挿入孔は、前記各支持板が前記姿勢のときに当該第1の挿入孔の中心軸と前記第1の挿通孔の中心軸とが同軸となる位置に形成され、
前記第3の挿通孔および前記第2の挿入孔は、前記各支持板が前記姿勢のときに当該第3の挿通孔の中心軸と当該第2の挿入孔の中心軸とが同軸となる位置にそれぞれ形成され、
前記第1の支持板、前記第2の支持板および前記第3の支持板は、平面視四角形にそれぞれ形成され、
前記第1の挿通孔は、前記第1の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成され、
前記第2の挿通孔は、前記第1の支持板の前記各対角位置に対向する前記第2の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成されると共に、前記第1の支持板の前記各対角位置に対向する前記第3の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成され、
前記第3の挿通孔は、前記第2の支持板における前記一対の対角位置とは異なる他の一対の対角位置に1つずつ形成されると共に、前記第3の支持板における前記一対の対角位置とは異なる他の一対の対角位置に1つずつ形成されているプローブユニット。
【請求項2】 前記スペーサは、前記各プローブを取り囲む平面視コ字状に形成されている請求項1記載のプローブユニット。
【請求項3】 請求項1または2記載のプローブユニットと、基板の導体部に接触させた前記プローブユニットの前記プローブを介して入力した電気信号に基づいて当該基板を検査する検査部とを備えている基板検査装置。
【請求項4】 基板の導体部に先端部を接触させて電気信号の入出力を行うための複数のプローブと、当該プローブを支持する支持部とを備えたプローブユニットを製造するプローブユニット製造方法であって、
第1の支持孔を有して当該第1の支持孔に挿通させた前記先端部を支持する第1の支持板と、第2の支持孔を有して当該第2の支持孔に挿通させた前記プローブの基端部を支持する第2の支持板と、第3の支持孔を有して当該第3の支持孔に挿通させた前記基端部を支持する第3の支持板とを備えて当該各支持板がこの順序で対向するように配置されると共に、前記第1の支持板と前記第2の支持板との間に配設されたスペーサを備えて構成され、前記第1の支持板、前記第2の支持板および前記第3の支持板が平面視四角形にそれぞれ形成された前記支持部を用いて、
前記第1の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成されている第1の挿通孔と、前記第1の支持板の前記各対角位置に対向する前記第2の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成されると共に当該第1の支持板の当該各対角位置に対向する前記第3の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成されている第2の挿通孔とに第1の位置決めピンを挿通させて、前記各支持板に対して垂直な垂直方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向するように前記各支持板を互いに当接または近接させて積み重ねた状態を維持し、その状態で前記各支持孔に前記プローブを挿通させ、その後に、
前記第2の支持板および前記第3の支持板を当接または近接させた状態で前記第1の支持板と当該第2の支持板とを離間させ、前記第1の位置決めピンを引き抜き、前記第1の支持板と前記第2の支持板との間に前記スペーサを配設し、
前記第1の挿通孔と前記スペーサにおける前記第1の支持板に対向する面に形成されている第1の挿入孔とに第2の位置決めピンを挿入すると共に、前記第2の支持板における前記一対の対角位置とは異なる他の一対の対角位置に1つずつ形成されかつ前記第3の支持板における前記一対の対角位置とは異なる他の一対の対角位置に1つずつ形成されている第3の挿通孔と前記スペーサにおける当該第2の支持板に対向する面に形成されている第2の挿入孔とに第3の位置決めピンを挿入して、当該各支持板の積層方向に対して傾斜する傾斜方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向する姿勢に当該各支持板を移行させ、その状態で前記各支持板を前記スペーサに固定して前記先端部が前記第1の支持孔に沿って延在すると共に当該先端部を除く部分が前記傾斜方向に沿って延在する状態に前記プローブを維持させて前記プローブユニットを製造するプローブユニット製造方法。
【請求項5】 平面視コ字状に形成された前記スペーサを前記各プローブを取り囲むように前記第1の支持板と前記第2の支持板との間に配設する請求項4記載のプローブユニット製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図とともに次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。

「【0012】
本発明に係る一実施形態の基板検査用治具1は、接触子2、接触子保持体3と接続電極体4を有してなる(図2参照)。尚、接続電極体4は、上記の如き検査信号処理部104と接続されているがこの図2では省略している。また、この図2では、基板検査用治具のヘッド11と接続電極体4は接続されていない状態を示している。
接触子2は、可撓性及び導電性を有し、針状や長尺状などの棒状に形成されている。この接触子2は、一方が被検査基板の検査点に圧接され、他方が後述する接続電極部と接触される。このため、接触子2は検査信号処理部104からの電気信号を検査点に送信するとともに、検査点からの電気信号を検査信号処理部104へ送信することができる。
この接触子2は、可撓性を有しているため、後述する接触子保持体3の内部に形成される空間で、接触子2の長軸方向に対して直角方向に撓む(バックリングする)ことになる。このため、この接触子2が使用される場合には、被検査基板の検査点や接続電極部からの荷重を受けて撓み、この撓みにより各接触部に対して押圧力を生じることになる。」
「【0017】
接触子保持体3は、複数の接触子2からなる複数の接触子2(接触子群)を保持する。この接触子保持体3は、図2で示される如く、複数の接触子2を保持するために、第一案内板31と第二案内板32を有してなる。
図2で示される接触子保持体3は、紙面奥手側に第一案内板31が配置され、紙面手前側に第二案内板32が配置され、第一案内板31は接触子2の先端を検査点へ案内し、第二保持体32は接触子2の他端を接続電極部4へ案内する。
第一案内板31は、所定の接触子2を所定検査点へ案内するための第一案内孔33を有している。この第一案内孔33は、接触子2の棒状部材21や筒状部材22の外径よりも大きく、絶縁部23の径よりも小さくなるように形成されている。このように形成されることにより、接触子2が第一案内板31の第一案内孔33より抜け出ることを防止する。
第二案内孔32は、所定の接触子2を所定接続電極部へ案内するための第二案内孔34を有している。この第二案内孔32は、接触子2の棒状部材21や筒状部材22の外径よりも大きく、さらに、絶縁部23の径よりも大きくなるように形成されている。このように形成されることにより、この接触端子保持部3にこの第二案内孔32から接触子2を挿入することができる。
このため、接触子2を抜き差しする場合には、例えば、第二案内板32側を上方に第一案内板31を下方に向けて配置して、第二案内板32の第二案内孔34より接触子2の抜き差しを行う。
【0018】
第一案内板31と第二案内板32は、支柱35aを介して、所定間隔を有して配置される。このため、支柱35aにより第一案内板31と第二案内板32の間に空間が形成され、この空間内を接触子2が撓むことができるようになる。
この支柱35aによる空間の長さは、使用者により適宜設定される。
尚、図2の図には、符号35bで示される支柱が示されている。この支柱35bは後述する第二案内板32の3つの板部材を把持するための支柱である。
【0019】
図2では、第一案内板31が三枚の板部材により形成されている。これらの板部材は、第一案内孔33を形成するための板部材と、支柱35aに固着するための螺子穴を形成する板部材として設けられている。これら板部材の数は、特に限定されるものではなく、少なくとも上記の機能を有するのであれば一枚又は二枚であっても、三枚以上でも構わない。」
「【0023】
また、図2では、第二案内板32は三枚の板部材により形成されている。これらの板部材は、第二案内孔34を形成するための板部材と、支柱35aを固着するための螺子穴を形成するための板部材として設けられている。これら板部材の数は、特に限定されるものではなく、少なくとも上記の機能を有するのであれば一枚又は二枚であっても三枚以上でも構わない。
図5には、第二案内板32と接触子2の位置関係を示す概略拡大断面図である。
この図5では、第二案内板32は、内側案内板321、中側案内板322と外側案内板323を有してなる。
第二案内板32は、内側案内板321、中側案内板322と外側案内板323を有している。内側案内板321は、複数の接触子2全てを含む孔341が形成されており、この内側案内板321は、第一案内板31と接続する支柱35を保持するために用いられている。
中側案内板322は、内側案内板321よりも僅かに板部材の平面方向にスライドするように形成されている。この中側案内板322は、小径案内孔342aと大径案内孔342bを有してなる。
外側案内板323は、接触子2の端部を接続電極部へ案内する案内孔が設けられている。
第二案内孔34の径は、接触子2の絶縁部23よりも大きい径を有している。このため、接触子2をこの第二案内孔34を介して抜き差しすることができる。」
「【0025】
第二案内板32は、上記の如く、複数の板部材から形成されるとともに、これら板部材が接触子2に対して直角方向(図2では左右方向)に夫々所定長さ分だけずらして配置される。
このように複数の板部材を徐々にずらして配置することにより、第二案内孔34が傾斜して形成されることになる。このため、上記の如く、第二案内板32に形成される第二案内孔34に係合されることになる。
またさらに、接触子2が接触子保持体3に保持された際に、接触子2が軽く撓むことになり、板部材と接触抵抗が生じることになり接触子2が安定性を有して保持されることになる。
図5では、内側案内板341は、第一案内板31に対して平面方向には移動せず固定されている。中側案内板342は、第二案内板32の平面方向に僅かにスライドする。さらに、外側案内板343は、中側案内板342よりも僅かに該平面方向にスライドする。つまり、外側案内孔343は、第一案内孔33よりも大きくスライドしている。」
「【0040】
次に、本発明の基板検査用治具に接触子2を取り付ける場合を説明する。
図12は、接触子を取り付ける場合を示す工程を表す。
まず、第一案内孔33と第二案内孔34が整合するように配置する。このとき、保護部36は、第二案内板32に当接させておく。
図12の実施形態で示される場合には、第一案内孔33と第二案内孔34が垂直方向に一列に配置されるように配置する(図12(a))。
この場合、第二案内板32が上側に配置され、第一案内板31が下側に配置されている。この配置位置は特に限定されるものではないが、第一案内孔33から接触子2が抜け落ちることがないために、このように配置されることが好ましい。
【0041】
次に、接触子2を第二案内孔34から挿入する(図12(b)参照)。
この場合、上記の如く、第一案内孔33は接触子2の絶縁部23の径よりも小さく形成されているので、接触子2が抜け落ちることがない。
接触子2が挿入されると、第二案内板32と保護部36を同時にスライドさせる。
このとき、第二案内板32の第二案内孔34には接触子2の絶縁部23が係合することになる(図5参照)。
つまり、接触子2は、第二案内板32と保護部36がスライドすることにより、湾曲することになり、接触子2は可撓性であるため、第一案内孔33を形成する第一案内板31の側部と、第二案内孔34を形成する第二案内板32の側部(表面部)と係合することになる。
このとき、スライドさせる量は、上記の如く、第二案内板32の外側板部材のほうが大きくスライドさせることになる。
【0042】
次に、保護部36を第二案内板32から突出させる(図12(d)参照)。
保護部36を突出させることにより、接触子2の端部が保護されることになる。
このようにして、接触子2を取り付けることができ、また、取り外す場合には、この逆の手順を行う。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、「第二案内板32」を「第二保持体32」と記載している等の誤記は、適宜訂正している。)。
「接触子2、接触子保持体3と接続電極体4を有する基板検査用治具1であって、(【0012】)
接触子保持体3は、複数の接触子2を保持するために、第一案内板31と第二案内板32を有し、
第一案内板31は接触子2の先端を検査点へ案内し、第二案内板32は接触子2の他端を接続電極部4へ案内するものであり、
第一案内板31は、所定の接触子2を所定検査点へ案内するための第一案内孔33を有し、
第二案内板32は、所定の接触子2を所定接続電極部へ案内するための第二案内孔34を有し、(【0017】)
第一案内板31と第二案内板32は、支柱35aを介して、所定間隔を有して配置され、(【0018】)
第二案内板32は、内側案内板321、中側案内板322と外側案内板323を有し、
内側案内板321は、複数の接触子2全てを含む孔341が形成され、第一案内板31と接続する支柱35を保持するために用いられ、
中側案内板322は、内側案内板321よりも僅かに板部材の平面方向にスライドするように形成され、小径案内孔342aと大径案内孔342bを有し、
外側案内板323は、接触子2の端部を接続電極部へ案内する外側案内孔343が設けられ、(【0023】)
第二案内板32の各部材(内側案内板321、中側案内板322、外側案内板323)が接触子2に対して直角方向に夫々所定長さ分だけずらして配置されることにより、第二案内孔34が傾斜して形成されている(【0025】)基板検査用治具1。」

2 引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2の
「【0042】 最初に、プローブ先端側プレート21、中間プレート22及びプローブ後端側プレート23を重ね合わせ、所定の位置に穴24の開いたものを準備する。…。その後、図4(A)に示すように、その穴24にプローブ10を通す。…」、
「【0044】 次に、図5(A)に示すように、プローブ先端側プレート21と中間プレート22との間に所定長さL2の湾曲部13を形成するようにプローブ先端側プレート21を移動させるとともに、プローブ後端側プレート23を中間プレート22から所定長さL3離間する。」の記載及び図4、5からみて、当該引用文献2には、
「重ね合わせたプレートの穴にプローブを通した後(【0042】)、先端側プレートを移動させることにより、プレートを所定長さ離間する(【0044】)」という技術的事項が記載されているものと認められる。

3 引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3の
「【0026】 図5は、本発明に係るワイヤープローブ用治具1Aのプレート積層体11を構成する薄板プレート111、112、113の最上部のプローブガイド孔111a、112a、113aに、上記の如きワイヤープローブ3を挿通した状態を示している。挿通作業を容易にするために、これらのプローブガイド孔111a、112a、113aの中心軸が揃うよう仮位置決め用のピン孔111d、112d、113d、及び電極基板2Aに設けた位置決め用のピン孔21dに仮位置決めピン114を挿入してある。このとき、電極基板2Aの電極ワイヤー4と最下層の薄板プレート113のプローブガイド孔113aとは軸心が一致した状態で固着されている。 本発明に係るワイヤープローブ用治具1Aの組み立ては、まず、仮位置決めピン114を用いて各プローブガイド孔111a、112a、113aの軸心が一致するように揃えた各薄板プレート111、112、113を、取付ピン115a及び締付ネジ115を用いて仮固定させる。この際に、取付ピン115aを挿通させる薄板プレート111、112の挿通孔111e、112eの内径は、取付ピン115aの外径より大きく、所謂バカ孔に形成してある。」、
「【0027】 図6は、図5に示した状態から、各薄板プレート111、112、113の各プローブガイド孔111a、112a、113aへワイヤープローブ3を保持する保持手段115Aの一例を示す。図面によれば、図5に示した状態から、仮位置決めピン114を抜いて、その最下層の薄板プレート113に対してそれより上層の薄板プレート112及び又は111を叩くか、或は他の手段で図において左方向へ僅かにずらし、ワイヤープローブ3を図示する如く傾斜した状態にした上で、保持手段115Aとしての締付ネジ115を取付ピン115aにねじ込んで、ワイヤープローブ3を一定状態に保持した状態を示している。」の記載及び図5、図6からみて、当該引用文献3には、
「仮位置決め用のピン孔111d、112d、113dに仮位置決めピン114を挿入して位置決めをした後(【0026】)、仮位置決めピン114を抜いて、その最下層の薄板プレート113に対してそれより上層の薄板プレート112及び又は111を僅かにずらし、ワイヤープローブ3を傾斜した状態にした上で、締付ネジ115を挿通孔111e、112e、113e内の(【0026】、図5、図6)取付ピン115aにねじ込んで、ワイヤープローブ3を一定状態に保持する(【0027】)」という技術事項が記載されているものと認められる。

4 引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4の
「【0022】まず最初に同図(a)に示すように、第1プレート12と第2プレート13との間で、しかも第1プレート12の近傍に間隔調整スペーサ14a、間隔調整プレート14b、間隔調整スペーサ14cおよび間隔調整プレート14dを積層配置する(なお、同図へのスペーサ14a,14cの図示は省略されている)。これによって第2プレート13と最も近い間隔調整プレート14dから第2プレート13までの距離、つまりプレート間隔ΔLを調整してプローブ4の撓み状態を制御し、プローブ4の先端部43と基板との接触荷重を調整することができる。この点に関しては、後で詳述する。
【0023】また、このようにプレート12,14b,14d,13を積層配置しながら、位置決め孔122,142,142および組立用位置決め孔132にピン15を挿通する。これによってプローブ孔121,141,141および貫通孔131が一直線上に整列する。そして、この状態で第2プレート13側から外皮付きのプローブ4を挿入し、プローブ先端部43をプローブ孔141,141,121の順序で挿通してプレート12,14b,14dによって貫通支持する。
【0024】次に、同図(b)に示すように、プローブ4の後端部44を電極部2の接続用電極21に嵌入させる。この電極部2は、電極ガイドプレート22に複数の接続用電極21がプローブ4の後端部44と1対1で対応して設けられている。また、各接続用電極21の先端部211は凹状形状となっており、プローブ後端部44をその凹部(先端部)211に嵌入可能となっている。そのため、接触部1と電極部2とを相対的に接近移動させると、すべてのプローブ4について、各プローブ後端部44がそれに対応する接続用電極21の先端部211に嵌入されて電気的に接続される。
【0025】それに続いて、同図(c)に示すように、組立用位置決め孔132からピン15を抜き、第2プレート13と電極ガイドプレート22とを一体的に第1プレート12および間隔調整プレート14b,14dに対して相対的に矢印方向に平行シフトさせた後、ピン15をセット用位置決め孔133に挿入する。すると、プローブ先端部43とプローブ後端部44とが相対的に平行シフトしてプローブ4の軸方向中間部41が撓む。その結果、例えば図4に示すように、プローブ先端部側では、プローブ先端部43が丸印箇所P1,P2で第1プレート12および間隔調整プレート14dとそれぞれ物理的に接触する。」の記載及び図3(a)、(b)、(c)、図6(a)、(b)、(c)からみて、当該引用文献4には、
「第1プレート12の位置決め孔122と第2プレート13の組立用位置決め孔132にピン15を挿通することにより、第1プレート12のプローブ孔121と第2プレート13の貫通孔131を整列させ、プローブ4を挿入した後(【0022】、【0023】、図3(a)、図6(a))、(第2プレート13の)組立用位置決め孔132からピン15を抜き、第2プレート13を第1プレート12に対して相対的に平行シフトさせた後、ピン15を(第2プレート13の)セット用位置決め孔133に挿入する(【0025】、図3(c)、図6(b))」という技術事項が記載されていると認められる。

5 引用文献5について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5の
「【0016】 保持部12は、図2に示すように、2枚の側板21、および4枚の保持板31?34を備えて構成されている。側板21は、非導電性を有する樹脂材料等によって矩形の板状に形成されている。また、側板21には、同図に示すように、保持板32,33をスライド可能に支持するための段部21aが形成されている。また、側板21の段部21aには、図3,4に示すように、固定ピン61を挿通可能な挿入孔51a,51bが形成されている。
【0017】 保持板31は、本発明における第1保持板に相当し、非導電性を有する樹脂材料等によって矩形の板状に形成されている。また、保持板31は、図2に示すように、各側板21の一端部(同図における下端部)にその両側部が固定されている。さらに、保持板31には、図3に示すように、プローブ11の先端部11a側を挿通させるための複数の挿通孔41(本発明における第1挿通孔)が形成されている。この場合、このプローブユニット2では、一例として、挿通孔41の直径が60μmに規定され、隣り合う一対の挿通孔41間の最小のピッチ(両挿通孔41における各々の中心間の最短の長さ)が70μmに規定されている。
【0018】 保持板32は、本発明における第2保持板に相当し、非導電性を有する樹脂材料等によって矩形の板状に形成されている。また、保持板32は、図2に示すように、保持板33を介して各側板21の段部21aにその両側部が支持されることにより、保持板31に対向するようにして(保持板31に平行となるように)配設されると共に、保持板31に平行な第1の向き(図6に示す矢印Aの向き)にスライドすることが可能となっている。また、保持板32には、図3に示すように、プローブ11の基端部11b側を挿通させるための複数の挿通孔42(本発明における第2挿通孔)が形成されている。この場合、このプローブユニット2では、挿通孔42が、2本のプローブ11の基端部11b側をまとめて挿通可能な大きさ(一例として、直径が110μm)に規定されている。また、保持板32には、図3,4に示すように、固定ピン61を挿通可能な挿入孔52a,52bが両側部にそれぞれ形成されている。
【0019】 保持板33は、本発明における第3保持板に相当し、非導電性を有する樹脂材料等によって矩形の板状に形成されている。また、保持板33は、図2に示すように、各側板21の段部21aにその両側部が支持されることにより、保持板31に対向するようにして(保持板31に平行となるように)保持板31と保持板32との間に配設されると共に、上記した第1の向きとは逆向きの第2の向き(図7に示す矢印Bの向き)にスライドすることが可能となっている。また、保持板33には、図3に示すように、プローブ11の基端部11b側を挿通させるための複数の挿通孔43(本発明における第3挿通孔)が形成されている。この場合、挿通孔43の直径は、例えば挿通孔42と同じ直径(この例では、110μm)に規定されている。また、保持板33には、図3,4に示すように、固定ピン61を挿通可能な挿入孔53a,53bが両側部にそれぞれ形成されている。
【0020】
保持板34は、非導電性を有する樹脂材料等によって矩形の板状に形成されている。また、保持板34には、図3に示すように、プローブ11の基端部11b側を挿通させるための複数の挿通孔44が形成されている。この場合、各挿通孔44の直径は、例えば保持板31の各挿通孔41と同じ直径(この例では、60μm)に規定されている。また、各挿通孔44は、保持板31の各挿通孔41と同じ配置パターンで形成されている。また、保持板34は、図2に示すように、保持板31に対して平行に対向し、かつ挿通孔44および挿通孔41における各々の中心が直線上に位置するようにしてその両側部が各側板21の他端部(同図における上端部)に固定されている。
【0021】
この場合、このプローブユニット2は、図4,5に示すように、上記した第1の向きおよび第2の向きにそれぞれスライドさせる前の位置(以下、この位置を「初期位置」ともいう)に保持板32および保持板33がそれぞれ位置している状態において、プローブ11を非変形状態(真っ直ぐな状態)で挿通可能な位置に各挿通孔41?44が位置するように構成されている。また、このプローブユニット2では、図4に示すように、保持板32および保持板33が初期位置に位置している状態において、側板21の挿入孔51a、保持板32の挿入孔52a、および保持板33の挿入孔53aにおける各々の中心が直線上に位置するように各挿入孔51a,52a,53aの形成位置が規定されている。このため、同図に示すように、保持板32,33を初期位置に位置させて、各挿入孔51a,52a,53aに固定ピン61を挿入することにより、保持板32,33を初期位置に固定することが可能となっている。さらに、このプローブユニット2では、図2に示すように、上記した第1の向きおよび第2の向きにそれぞれスライドさせた位置(以下、この位置を「スライド位置」ともいう)に保持板32および保持板33がそれぞれ位置している状態において、側板21の挿入孔51b、保持板32の挿入孔52b、および保持板33の挿入孔53bにおける各々の中心が直線上に位置するように各挿入孔51b,52b,53bの形成位置が規定されている。このため、図3に示すように、保持板32,33をスライド位置に位置させて、各挿入孔51b,52b,53bに固定ピン61を挿入することにより、保持板32,33をスライド位置に固定することが可能となっている。なお、各挿入孔51b,52b,53bおよび固定ピン61によって本発明における固定部が構成される。」の記載及び図2、3、4からみて、当該引用文献5には、
「側板21の段部21aの挿入孔51a(【0016】)、保持板32の挿入孔52a(【0018】)、保持板33の挿入孔53a(【0019】)に固定ピン61を挿入することにより、保持板32,33を初期位置に固定し、プローブ11を挿入した後(【0021】、図4)、固定ピン61を抜き、保持板32,33をスライド位置に位置させて、側板21の段部21aの挿入孔51b(【0016】)、保持板32の挿入孔52b(【0018】)、保持板33の挿入孔53b(【0019】)に固定ピン61を挿入する(【0021】、図3)」という技術事項が記載されていると認められる。

6 引用文献6について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6の
「【0033】 まず、図5に示すように、第1支持部31における第1挿通孔31aの中心軸、第1支持板41における小径孔41aの中心軸、および第2支持板42における大径孔42aの中心軸が互いに同軸状態となる第1の位置に第2支持板42をスライドさせる。この際に、第2支持板42における挿入孔42cの中心軸と第1支持板41における挿入孔41cの中心軸とが同軸状態となる。次いで、挿入孔42c,41cに固定ピン43を挿入する。これにより、第1支持板41と第2支持板42とが第1の位置に位置合わせされた状態に維持される。
【0034】 続いて、図5に示すように、プローブピン11の先端部21を各大径孔42aに挿入し、第1支持部31に向けてプローブピン11を押し込む。この場合、このプローブユニット2では、プローブピン11における先端部21、基端部22、中央部23および大径部24の各々の外径、並びに第1挿通孔31a、小径孔41aおよび大径孔42aの各々の内径が上記の式(1)の大小関係に規定されている。このため、先端部21が各大径孔42a、小径孔41aおよび第1挿通孔31aにこの順序で挿通されて第1支持部31の外側(同図における下側)に突出して、中央部23が各大径孔42aおよび各小径孔41aに挿通されて第1支持部31と第2支持部32との間に位置する。また、大径部24における先端部21側の端部(詳しくはコーティング材料の端面)が第1支持板41における小径孔41aの縁部に当接して、それ以上のプローブピン11の挿入(突出側への移動)が阻止される。このため、先端部21が所定の長さだけ第1支持部31の外側に突出する。つまり、先端部21の突出長が所定の長さに調整される。
【0035】 ここで、このプローブピン11では、コーティング材料がコーティングされた中央部123の端部を第1支持部131における挿通孔131aの縁部に当接させることで突出側へのプローブピン111の移動を規制して先端部121の突出長を調整する従来の構成とは異なり、上記したように第1支持板41における小径孔41aの縁部に大径部24の端部を当接させることで突出側へのプローブピン11の移動を規制して先端部21の突出長が調整される。このため、第1支持部31と第1支持板41との間の距離を変更することで、先端部21の突出長を任意に変更することができる結果、同じプローブピン11を用いて、先端部21の突出長が異なる複数種類のプローブユニット2を製造することが可能となっている。したがって、このプローブユニット2では、プローブピン11を共通化できる分、製造コストを低減することが可能となっている。
【0036】 次いで、すべてのプローブピン11の各第1挿通孔31aおよび各小径孔41aへの挿入が終了した後に、固定ピン43を挿入孔41c,42cから引き抜く。続いて、図6に示すように、小径孔41aおよび大径孔42aにおける各々の中心軸がやや軸ずれする第2の位置まで第2支持板42をスライドさせる。この際に、第2支持板42のスライドにより、プローブピン11の基端部22(大径部24)側がスライド方向に傾けられる結果、同図に示すように、中央部23がやや湾曲(弾性変形)させられる。また、第2の位置へのスライドにより、第2支持板42における挿入孔42dの中心軸と第1支持板41における挿入孔41dの中心軸と同軸状態となる。次いで、挿入孔42d,41dに固定ピン43を挿入する。これにより、第1支持板41と第2支持板42とが第2の位置に位置合わせされて、プローブピン11の中央部23がやや湾曲させられた状態に維持される。」の記載及び図5、6からみて、当該引用文献6には、
「第2支持板42における挿入孔42cと第1支持板41における挿入孔41cに固定ピン43を挿入することにより、第1支持板41と第2支持板42を位置合わせし(【0033】)、プローブピン11を挿入した(【0034】、図5)後、固定ピン43を引き抜き、第2支持板42をスライドさせ、第2支持板42における挿入孔42dの中心軸と第1支持板41における挿入孔41dの中心軸を同軸状態とし、挿入孔42d,41dに固定ピン43を挿入する(【0036】、図6)」という技術事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「接触子2」、「接触子保持体3」及び「基板検査用治具1」は、それぞれ、本願発明1における「プローブ」、「支持部」及び「プローブユニット」に相当する。
イ 引用発明における「第一案内板31」は、「所定の接触子2を所定検査点へ案内するための第一案内孔33を有」するものであるから、「第一案内孔33」が本願発明の「第1の支持孔」に相当するところであり、本願発明1の「第1の支持孔を有して当該第1の支持孔に挿通させた前記先端部を支持する第1の支持板」に相当する。
ウ 引用発明における「第二案内板32」は、「所定の接触子2を所定接続電極部へ案内するための第二案内孔34を有」するものであるところ、「(第二案内板32が有する)中側案内板322」は、「小径案内孔342aと大径案内孔342bを有し」ており、この「小径案内孔342aと大径案内孔342b」が本願発明1の「第2の支持孔」に相当するところであり、引用発明における「中側案内板322」は、本願発明1の「第2の支持孔を有して当該第2の支持孔に挿通させた前記プローブの基端部を支持する第2の支持板」に相当する。。
エ また、引用発明における「(第二案内板32が有する)外側案内板323」は、「接触子2の端部を接続電極部へ案内する外側案内孔343が設けられ」ており、この「外側案内孔343」が本願発明の「第3の支持孔」に相当するところであり、本願発明1の「第3の支持孔を有して当該第3の支持孔に挿通させた前記基端部を支持する第3の支持板」に相当する。
オ 引用発明において、「第一案内板31は接触子2の先端を検査点へ案内し、第二案内板32は接触子2の他端を接続電極部4へ案内するものであり」、「第二案内板32は、内側案内板321、中側案内板322と外側案内板323を有し」、「内側案内板321は、…、第一案内板31と接続する支柱35を保持するために用いられ」、「外側案内板323は、接触子2の端部を接続電極部へ案内する外側案内孔343が設けられ」るものであることに鑑みれば、引用発明における「第一案内板31」、「中側案内板322」及び「外側案内板323」は、本願発明1における「第1の支持板」、「第2の支持板」及び「第3の支持板」と同様に「この順序で対向するように配置され」ていると認められる。
カ 引用発明において、「第一案内板31と第二案内板32は、支柱35aを介して、所定間隔を有して配置され」ているから、引用発明の「第一案内板31」と「「中側案内板322」の間には、「支柱35a」が配設されているといえ、「支柱35a」が本願発明の「スペーサ」に相当するところであり、引用発明は、本願発明1と同様に「前記第1の支持板と前記第2の支持板との間に配設されたスペーサを備えて構成され」るものといえる。
キ 引用発明は、「第一案内板31と第二案内板32は、支柱35aを介して、所定間隔を有して配置され」、「第二案内板32の各部材(内側案内板321、中側案内板322、外側案内板323)が接触子2に対して直角方向に夫々所定長さ分だけずらして配置されることにより、第二案内孔34が傾斜して形成されている」というものであるから、引用発明の「中側案内板322」と「外側案内板323」は、(ともに第二案内板32の部材であるから、)当接または近接した状態であると認められ、また、(「第一案内板31」と「第二案内板32」は、「所定間隔を有して配置され」ているから、)「第一案内板31」と「(第二案内板32)の中側案内板322」は、離間しているものと認められ、さらに、(「第二案内板32の各部材(内側案内板321、中側案内板322、外側案内板323)が接触子2に対して直角方向に夫々所定長さ分だけずらして配置されることにより、第二案内孔34が傾斜して形成されている」から、)「所定の接触子2を所定検査点へ案内するための(第一案内板31の)第一案内孔33」、「(中側案内板322の)小径案内孔342aと大径案内孔342b」及び「(外側案内板323の)外側案内孔343」の各開口面は、支持板の積層方向に対して傾斜する直線上に位置するものと認められるところであり、本願発明1と同様に「前記各支持板は、前記第2の支持板および前記第3の支持板が当接または近接した状態で前記第1の支持板と当該第2の支持板とが離間すると共に当該各支持板の積層方向に対して傾斜する傾斜方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向する姿勢で前記スペーサに固定され」ているものといえる。
ク 引用発明において「第一案内板31は接触子2の先端を検査点へ案内」するから、引用発明の「接触子2」の先端部は、「(第一案内板31の)第一案内孔33」に沿って延在していると認められ、また、引用発明の「第二案内板32」は、「接触子2の他端を接続電極部4へ案内する」ところ、「(第二案内板32の)第二案内孔34が傾斜して形成されている」から、引用発明の「接触子2」の先端部を除く部分は、傾斜方向に沿って延在していると認められるところであり、引用発明の「接触子2」は、本願発明1の「プローブ」と同様に「前記先端部が前記第1の支持孔に沿って延在すると共に当該先端部を除く部分が前記傾斜方向に沿って延在する状態に維持され」ているといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「基板の導体部に先端部を接触させて電気信号の入出力を行うための複数のプローブと、当該プローブを支持する支持部とを備えたプローブユニットであって、
前記支持部は、第1の支持孔を有して当該第1の支持孔に挿通させた前記先端部を支持する第1の支持板と、第2の支持孔を有して当該第2の支持孔に挿通させた前記プローブの基端部を支持する第2の支持板と、第3の支持孔を有して当該第3の支持孔に挿通させた前記基端部を支持する第3の支持板とを備えて当該各支持板がこの順序で対向するように配置されると共に、前記第1の支持板と前記第2の支持板との間に配設されたスペーサを備えて構成され、
前記各支持板は、前記第2の支持板および前記第3の支持板が当接または近接した状態で前記第1の支持板と当該第2の支持板とが離間すると共に当該各支持板の積層方向に対して傾斜する傾斜方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向する姿勢で前記スペーサに固定され、
前記プローブは、前記先端部が前記第1の支持孔に沿って延在すると共に当該先端部を除く部分が前記傾斜方向に沿って延在する状態に維持されているプローブユニット。」

(相違点)
(相違点1) 本願発明1は、
「前記第1の支持板には、第1の位置決めピンおよび第2の位置決めピンを挿通可能な第1の挿通孔が形成され、
前記第2の支持板および前記第3の支持板には、前記第1の位置決めピンを挿通可能な第2の挿通孔と第3の位置決めピンを挿通可能な第3の挿通孔とがそれぞれ形成され、
前記スペーサには、前記第2の位置決めピンを挿入可能な第1の挿入孔が前記第1の支持板に対向する面に形成されると共に、第3の位置決めピンを挿入可能な第2の挿入孔が前記第2の支持板に対向する面に形成され、
前記第1の挿通孔および前記第2の挿通孔は、前記各支持板に対して垂直な垂直方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向するように当該各支持板が互いに当接または近接して積み重ねられたときに当該各挿通孔の中心軸が同軸となる位置にそれぞれ形成され、
前記第1の挿入孔は、前記各支持板が前記姿勢のときに当該第1の挿入孔の中心軸と前記第1の挿通孔の中心軸とが同軸となる位置に形成され、
前記第3の挿通孔および前記第2の挿入孔は、前記各支持板が前記姿勢のときに当該第3の挿通孔の中心軸と当該第2の挿入孔の中心軸とが同軸となる位置にそれぞれ形成され」という構成を備えるのに対し、引用発明は、このような構成を特定するものでない点。
(相違点2) 本願発明1は、
「前記第1の支持板、前記第2の支持板および前記第3の支持板は、平面視四角形にそれぞれ形成され、
前記第1の挿通孔は、前記第1の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成され、
前記第2の挿通孔は、前記第1の支持板の前記各対角位置に対向する前記第2の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成されると共に、前記第1の支持板の前記各対角位置に対向する前記第3の支持板における一対の対角位置に1つずつ形成され、
前記第3の挿通孔は、前記第2の支持板における前記一対の対角位置とは異なる他の一対の対角位置に1つずつ形成されると共に、前記第3の支持板における前記一対の対角位置とは異なる他の一対の対角位置に1つずつ形成されている」という構成を備えるのに対し、引用発明は、このような構成を特定するものでない点。

(2)相違点についての判断
事例に鑑み、上記相違点1について検討するに、引用発明は、「第一案内板31」と「第二案内板32」が「支柱35a」により保持されることを特定するだけであって、本願発明1の「第1の挿通孔」、「第2の挿通孔」、「第3の挿通孔」、「第1の挿入孔」及び「第2の挿入孔」に関して示唆するものではなく、また、以下のとおり、引用文献2-6もこれらを記載ないし示唆するものでないから、上記相違点1に係る本願発明1の構成について、当業者が容易に想到し得たと認めることはできない。
引用文献2には、「重ね合わせたプレートの穴にプローブを通した後、先端側プレートを移動させることにより、プレートを所定長さ離間する」という技術的事項が記載されており、引用発明の「第一案内板31」と「第二案内板32」に、引用文献2に記載の技術事項を適用したとしても、「第一案内板31」と「第二案内板32」を重ねあわせて、その「第一案内孔33」と「第二案内孔34」に「接触子2」を挿入した後、「第一案内板31」と「第二案内板32」を所定長さ離間させることが示唆されるだけで、引用発明の「第一案内板31」に本願発明1の「第1の位置決めピンおよび第2の位置決めピンを挿通可能な第1の挿通孔」に相当する孔が形成されること、引用発明の「(第二案内板32)の中側案内板322」と「(第二案内板32)の外側案内板323」に本願発明1の「前記第1の位置決めピンを挿通可能な第2の挿通孔」に相当する孔と「第3の位置決めピンを挿通可能な第3の挿通孔」に相当する孔とがそれぞれ形成されること、引用発明の「支柱35a」に本願発明1の「前記第2の位置決めピンを挿入可能な第1の挿入孔」に相当する孔が「第一案内板31」に対向する面に形成されると共に、第3の位置決めピンを挿入可能な第2の挿入孔に相当する孔が「第二案内板32」に対向する面に形成されることが示唆されるとはいえない。
引用文献3には、「仮位置決め用のピン孔111d、112d、113dに仮位置決めピン114を挿入して位置決めをした後、仮位置決めピン114を抜いて、その最下層の薄板プレート113に対してそれより上層の薄板プレート112及び又は111を僅かにずらし、ワイヤープローブ3を傾斜した状態にした上で、締付ネジ115を挿通孔111e、112e、113e内の取付ピン115aにねじ込んで、ワイヤープローブ3を一定状態に保持する」という技術事項が記載されており、その「ピン孔111d」及び「112d、113d」は、それぞれ、本願発明1の「(第1の支持板に形成された)第1の位置決めピンを挿通可能な第1の挿通孔」及び「(第2の支持板および第3の支持板に形成された)第1の位置決めピンを挿通可能な第2の挿通孔」を示唆するものといえ、また、「挿通孔112e、113e」は、本願発明1の「(第2の支持板および第3の支持板に形成された)第3の位置決めピンを挿通可能な第3の挿通孔」に関連するものといえるが、引用文献3は、本願発明1の「スペーサ」に相当する構成を記載するものでないから、本願発明1の「(スペーサに形成された)第1の挿入孔」及び「(スペーサに形成された)第2の挿入孔」を示唆するものとはいえない。
引用文献4には、「第1プレート12の位置決め孔122と第2プレート13の組立用位置決め孔132にピン15を挿通することにより、第1プレート12のプローブ孔121と第2プレート13の貫通孔131を整列させ、プローブ4を挿入した後、組立用位置決め孔132からピン15を抜き、第2プレート13を第1プレート12に対して相対的に平行シフトさせた後、ピン15をセット用位置決め孔133に挿入する」という技術事項が記載されており、その「位置決め孔122」、「組立用位置決め孔132」及び「セット用位置決め孔133」は、それぞれ、本願発明1の「(第1の支持板に形成された)第1の位置決めピンを挿通可能な第1の挿通孔」、「(第2の支持板に形成された)第1の位置決めピンを挿通可能な第2の挿通孔」及び「(第2の支持板に形成された)位置決めピンを挿通可能な第3の挿通孔」を示唆するものといえるが、引用文献4には、本願発明1の「第3の支持板」に相当する構成の記載がなく、また、本願発明1の「(スペーサに形成された)第1の挿入孔」及び「(スペーサに形成された)第2の挿入孔」に関連する記載がないから、引用文献4は、上記相違点1に係る本願発明1の構成を示唆するものとはいえない。
引用文献5には、「側板21の段部21aの挿入孔51a、保持板32の挿入孔52a、保持板33の挿入孔53aに固定ピン61を挿入することにより、保持板32,33を初期位置に固定し、プローブ11を挿入した後、固定ピン61を抜き、保持板32,33をスライド位置に位置させて、側板21の段部21aの挿入孔51b、保持板32の挿入孔52b、保持板33の挿入孔53bに固定ピン61を挿入する」という技術事項が記載されており、その「保持板32の挿入孔52aと保持板33の挿入孔53a」、「保持板32の挿入孔52bと保持板33の挿入孔53b」及び「側板21の段部21aの挿入孔51b」は、それぞれ、本願発明1の「(第2の支持板および第3の支持板に形成された)第1の位置決めピンを挿通可能な第2の挿通孔」、「(第2の支持板および第3の支持板に形成された)第3の位置決めピンを挿通可能な第3の挿通孔」及び「(スペーサの第2の支持板に対向する面に形成された)第3の位置決めピンを挿入可能な第2の挿入孔」を示唆するものと認められるが、引用文献5は、本願発明1の「(第1の支持板に形成された)第1の位置決めピンおよび第2の位置決めピンを挿通可能な第1の挿通孔」及び「(スペーサの第1の支持板に対向する面に形成された)第2の位置決めピンを挿入可能な第1の挿入孔」に相当する事項を記載するものでないから、上記相違点1に係る本願発明1の構成を示唆するものとはいえない。
引用文献6には、「第2支持板42における挿入孔42cと第1支持板41における挿入孔41cに固定ピン43を挿入することにより、第1支持板41と第2支持板42を位置合わせし、プローブピン11を挿入した後、固定ピン43を引き抜き、第2支持板42をスライドさせ、第2支持板42における挿入孔42dの中心軸と第1支持板41における挿入孔41dの中心軸を同軸状態とし、挿入孔42d,41dに固定ピン43を挿入する」という技術事項が記載されており、その「第2支持板42における挿入孔42cと第1支持板41における挿入孔41c」及び「第2支持板42における挿入孔42dと第1支持板41における挿入孔41d」は、それぞれ、本願発明1の「(第2の支持板および第3の支持板に形成された)第1の位置決めピンを挿通可能な第2の挿通孔」及び「(第2の支持板および第3の支持板に形成された)第3の位置決めピンを挿通可能な第3の挿通孔」を示唆するものと認められるが、引用文献6は、本願発明1の「(第1の支持板に形成された)第1の位置決めピンおよび第2の位置決めピンを挿通可能な第1の挿通孔」、「(スペーサに形成された)第1の挿入孔」及び「(スペーサに形成された)第2の挿入孔」に相当する事項を記載するものでないから、上記相違点1に係る本願発明1の構成を示唆するものとはいえない。

そして、本願発明1は、上記「第1の挿通孔」、「第2の挿通孔」、「第3の挿通孔」、「第1の挿入孔」及び「第2の挿入孔」の位置について、「前記第1の挿通孔および前記第2の挿通孔は、前記各支持板に対して垂直な垂直方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向するように当該各支持板が互いに当接または近接して積み重ねられたときに当該各挿通孔の中心軸が同軸となる位置にそれぞれ形成され、前記第1の挿入孔は、前記各支持板が前記姿勢のときに当該第1の挿入孔の中心軸と前記第1の挿通孔の中心軸とが同軸となる位置に形成され、
前記第3の挿通孔および前記第2の挿入孔は、前記各支持板が前記姿勢のときに当該第3の挿通孔の中心軸と当該第2の挿入孔の中心軸とが同軸となる位置にそれぞれ形成され」ることにより、作用効果を奏するものと認められるところ、引用文献1-6は、このような製造方法を可能とする構成について示唆するものとはいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明4、5について
本願発明4は、本願発明1の検討において相違点としてあげた事項に対応する発明特定事項を有し、これを製造方法の発明として記載するものであって、本願発明1の「第1の挿通孔」、「第2の挿通孔」、「第3の挿通孔」、「第1の挿入孔」及び「第2の挿入孔」を用いて次の事項、具体的には、
「前記各支持板(第1、2、3の支持板)を互いに当接または近接させて積み重ねた状態を維持し、その状態で前記各支持孔に前記プローブを挿通させ、その後に、
前記第2の支持板および前記第3の支持板を当接または近接させた状態で前記第1の支持板と当該第2の支持板とを離間させ、前記第1の位置決めピンを引き抜き、前記第1の支持板と前記第2の支持板との間に前記スペーサを配設し、
前記第1の挿通孔と前記スペーサにおける前記第1の支持板に対向する面に形成されている第1の挿入孔とに第2の位置決めピンを挿入すると共に、前記第2の支持板における前記一対の対角位置とは異なる他の一対の対角位置に1つずつ形成されかつ前記第3の支持板における前記一対の対角位置とは異なる他の一対の対角位置に1つずつ形成されている第3の挿通孔と前記スペーサにおける当該第2の支持板に対向する面に形成されている第2の挿入孔とに第3の位置決めピンを挿入して、当該各支持板の積層方向に対して傾斜する傾斜方向に沿って前記第1の支持孔、前記第2の支持孔および前記第3の支持孔の各開口面が仮想直線上で対向する姿勢に当該各支持板を移行させ、その状態で前記各支持板を前記スペーサに固定」することを特定するものである。したがって、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明5は、本願発明4の発明特定事項を全て含むものであるから、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
以上のとおりであって、本願発明1-5は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-07 
出願番号 特願2012-165301(P2012-165301)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 酒井 伸芳
関根 洋之
発明の名称 プローブユニット、基板検査装置およびプローブユニット製造方法  
代理人 酒井 伸司  

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