• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1329950
審判番号 不服2016-16765  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-09 
確定日 2017-07-25 
事件の表示 特願2012-179209「端子」拒絶査定不服審判事件〔平成26年2月27日出願公開、特開2014-38724、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月13日の出願であって、平成28年4月18日付けで拒絶理由の通知がされ、その指定期間内である同年6月6日に手続補正されたが、同年10月6日付けで拒絶査定がされ(発送日:同年10月11日、以下「原査定」という。)、これに対し、同年11月9日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の理由の概要
本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用例1:実願平1-74321号(実開平3-13671号)のマイク ロフィルム
引用例2:特開2009-224137号公報

1 請求項1:引用例1、2
引用例1の第2図には、湾曲部14aが筒状部13から外方に露出して形成されている態様が示されている。
本願の請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると両者は、以下の点で相違する(引用例1の第1図、第2図)。
〔相違点1〕
本願の請求項1に係る発明における根元部には「箱部の開口端に向けて幅が減少するように傾斜する」テーパ部が形成されているのに対し、引用例1に記載された発明にはかかる特定がない点。
〔相違点2〕
本願の請求項1に係る発明における側壁の開口端側には「テーパ部に沿って」切欠部が形成されているのに対し、引用例1に記載された発明にはかかる特定がない点。
以下、上記相違点について検討する。
相違点1、2についてであるが、引用例2に記載された弾性接触片16には、前後方向に対して傾斜したテーパ状をなす応力緩和部24が設けられている(引用例2の段落【0025】、図6)。さらに,引用例2に記載された側板13の前端部に形成された凹部の後端縁にはテーパ面22が形成されている(引用例2の段落【0023】、図6)。そして,引用例2に記載されたテーパ面22は,応力緩和部24に沿って形成されている(引用例2の図6)。
そうすると、引用例1に記載された発明における筒状部13と基端部14bとの形状に、引用例2に記載された発明を適用することにより、本願の請求項1に係る発明における相違点1及び相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

2 請求項2:引用例1、2
引用例1の第1図には、湾曲部14aの幅が、筒状部13の幅以下である態様が示されている。

第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成28年6月6日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
導体を圧着する圧着部と、相手側の端子を収容する箱部と、前記圧着部と前記箱部とを連結するつなぎ部と、から構成される端子であって、
前記箱部は、相手側の端子と接続する端子ばね部と、前記端子ばね部を囲うように形成される側壁と、から構成され、
前記端子ばね部には、板状の端子を折り曲げられて形成される根元部と、相手側の端子と接続する接点と、が形成され、
前記根元部は、前記箱部の開口端から外方に露出して形成されているとともに、前記根元部には、前記箱部の開口端に向けて幅が減少するように傾斜するテーパ部が形成され、
前記側壁の前記開口端側には、前記テーパ部に沿って切欠部が形成されていることを特徴とする端子。
【請求項2】
請求項1記載の端子であって、
前記箱部の開口端から露出する前記根元部の幅は、前記箱部の幅以下であることを特徴とする端子。」

第4 引用文献
1 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用例1には、「コネクタ用ターミナル」に関して、図面(特に、第1図ないし第3図参照)と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。以下同様。)

(1)2ページ19行?3ページ14行
「ターミナル1と雄コネクタ5との接続状態では、ばね片部3には雄ターミナル5により押え付けられる荷重が作用するものであり、このときばね片部3に作用する応力は、第6図にモデル的に示すように中間部の湾曲部3a部分に集中するという事情がある。この場合、ばね片部3の湾曲部3aに作用する応力が素材の許容値を越えて該ばね片部3部分で塑性変形してしまう虞がある。これに対処するためには、ばね片部3の幅寸法b_(0)を大きくする必要があるが、このようにするとターミナル1の小形化が図れなくなってしまうという問題がある。
本考案は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小形化を図りながらも、ばね片部の湾曲部に加わる応力を緩和し得るコネクタ用ターミナルを提供するにある。」

(2)4ページ11行?5ページ20行
「以下本考案の一実施例につき第1図乃至第3図を参照して説明する。
まず第2図において、11はリード線12の先端にかしめによって取着されたターミナルであり、これの一端部には略矩形状をなすように筒状部13を折曲形成していると共に、この筒状部13の端部に舌片状をなすばね片部14を折曲形成している。このばね片部14は、先端が筒状部13内に位置するように略U字状に折り返されている。ここで、このばね片部14は、第1図に示すように、中間部の湾曲部14aの幅寸法b_(1)を、これの基端部14b及び先端部14cの幅寸法b_(2),b_(3)よりも大きく設定している(b_(1) >b_(2) ,b_(3))。
斯様な構成のターミナル11は、リード線12の先端に取着された状態で図示しないコネクタのハウジング内に取付けられ、相手コネクタの雄ターミナル15が筒状部13内に挿入されることにより、該ターミナル11と雄ターミナル15とが電気的に接続されるようになっている。
上記した構成によれば、ターミナル11は、ばね片部14において中間部の湾曲部14a以外の部分の幅を狭くしているから、小形化に対処することができる。そして、ばね片部14の湾曲部14a部分の幅を広くしていることにより、第3図に示すように、その湾曲部14a部分に加わる応力を、従来構成のものに比べて小さくできることができる。これにより、湾曲部14aに加わる応力を緩和することができるものである。」

(3)6ページ1行?9行
「[考案の効果]
以上の記述にて明らかなように、本考案によれば、一端部に雄ターミナルが挿入される筒状部を有すると共に、この筒状部の端部に先端が筒状部内に位置されるように略U字状に折り返されたばね片部を有する構成のコネクタ用ターミナルにおいて、小形化を図りながらも、ばね片部の湾曲部に加わる応力を緩和し得るという優れた効果を奏する。」

(4)第1図、第2図、及び第3図の「本実施例のばね片部の展開形状」を総合すると、湾曲部14aは筒状部13の開口端から外方に露出して形成されているとともに、前記湾曲部14aには前記筒状部13の開口端に向けて幅が減少するように傾斜するテーパ部が形成されることが理解できる。

これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「リード線12の先端をかしめる取着部と、相手コネクタの雄ターミナル15を収容する筒状部13と、前記取着部と前記筒状部13とを連結するつなぎ部と、から構成されるターミナル11であって、
前記筒状部13は、相手コネクタの雄ターミナル15と接続するばね片部14と、前記ばね片部14を囲うように形成される前記筒状部13の側壁と、から構成され、
前記ばね片部14には、舌片状をなすばね片部14を折り曲げられて形成される湾曲部14aと、相手コネクタの雄ターミナル15と接続する先端部14cと、が形成され、
前記湾曲部14aは、前記筒状部13の開口端から外方に露出して形成されているとともに、前記湾曲部14aには、前記筒状部13の開口端に向けて幅が減少するように傾斜するテーパ部が形成されるターミナル11。」

2 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用例2には、「端子金具」に関して、図面(特に、図1、図4、図6参照)と共に、次の事項が記載されている。

(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の端子金具では、側面壁における弾性接触片の弾性撓み部と対応する領域を、その内側面から外側面に亘って切欠していたため、弾性撓み部が角筒部の外側面に露出した状態となっている。そのため、弾性撓み部が、側方からの異物の干渉によって損傷を受けることが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、弾性接触片の弾性撓み部を異物の干渉から保護しながら、弾性撓み部の撓み剛性を高めることを目的とする。」

(2)「【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図6を参照して説明する。本実施形態の端子金具Fは、接続相手である雄タブMを前方から挿入させる角筒部10と、角筒部10の後端から後方へ延出して電線(図示せず)を接続させるための電線圧着部11とを備えており、全体構成は周知の形態である。また、雄タブMは、前後方向に細長く、厚寸法が幅寸法よりも僅かに小さい棒状をなしている。
【0014】
角筒部10は、基板12と左右一対の側板13と受け板14とを備えて構成されている。基板12は、前後方向に細長い平板状をなす。側板13は、前後方向に細長く基板12と同じ長さの平板状をなし、基板12の左右両側縁から直角に上方へ立ち上がっている。受け板14は、前後方向に細長く基板12及び側板13と同じ長さの平板状をなし、一方の側板13の上端縁(立ち上がり端縁)から直角に延出し、基板12と平行に対向している。
【0015】
角筒部10の前端部には、基板12と左右両側板13との境界部分を、その前端から所定長さだけ切欠した形態の切欠部15が形成されている。幅方向(左右方向)における切欠部15の形成範囲は、側板13の板厚よりも少し小さい領域、即ち側板13の外側面と、側板13の内側面よりも少し外側の位置との間の領域となっている。また、上下方向(高さ方向)における切欠部15の形成範囲は、基板12の板厚よりも少し小さい領域、即ち基板12の下面(角筒部10の外面)と、基板12の上面(角筒部10の内面)よりも少し下方の位置との間の領域となっている。
【0016】
端子金具Fには、角筒部10に挿入された雄タブMに対して弾性的に接触する弾性接触片16が形成されている。弾性接触片16は、基板12の前端縁から上面側へ折り返されて角筒部10内を基板12に沿うように後方へ延出した形態であり、側方から見てなだらかな山形に屈曲した形状をなしている。弾性接触片16の前端部、即ち基板12の前端縁に連なる部分は、密着折り返し状(略U字形)に曲げ加工された弾性撓み部17となっている。また、弾性接触片16の最も高い頂上部は、雄タブMとの接点18となっている。弾性接触片16が弾性撓みしていない状態では、接点18と受け板14の下面との上下間隔は、雄タブMの厚さ寸法よりも小さい寸法とされている。」

(3)「【0018】
この雄タブMと弾性接触片16との間の接触圧は、弾性撓み部17に蓄えられる弾性復元力が大きいほど、高くなる。弾性撓み部17に蓄えられる弾性復元力は、弾性撓み部17の撓み剛性が高いほど大きい。そして、弾性撓み部17の撓み剛性は、弾性撓み部17の幅寸法が大きいほど、大きくなる。この点に鑑み、本実施形態では、弾性撓み部17の幅寸法を拡大することにより、弾性変位と雄タブMとの接触圧の向上を図っている。以下、その手段について説明する。
【0019】
左右両側板13の前端部には、その内側面を部分的に打圧することにより略方形の凹部19が形成されている。凹部19は、側板13の内側面のみを凹ませた形態であり、側板13の外側面は、凹部19の形成されている領域から、凹部19の形成されていない領域に亘って面一状、即ち凹凸のない平坦面となっている。つまり、側板13のうち凹部19の形成されていない領域(以下、非加工領域20という)の板厚に比べ、凹部19の形成されている領域の板厚は薄くなっている。
【0020】
凹部19の形成されている領域においては、角筒部10の内部は側板13の外側面に露出していない。また、左右両側板13の内側面における非加工領域20間の左右方向の間隔は、雄タブMの幅寸法よりも僅かに大きい寸法であり、この寸法差は、雄タブMが角筒部10内に引っ掛かりなく円滑に挿入されるために最小限必要なクリアランスとして確保されたものである。
【0021】
凹部19の形成領域について説明すると、前後方向においては、側板13の前端から切欠部15の後端に至る範囲、つまり切欠部15の形成範囲と同じであり、凹部19の後端は、弾性接触片16の弾性撓み部17よりも後方に位置している。
【0022】
(省略)
【0023】
そして、角筒部10に挿入された雄タブMが、弾性撓みしている弾性接触片16と受け板14との間で挟まれている状態では、上下方向において雄タブMの略下半分領域が凹部19の上端側部分と対応し、雄タブMの略上半分領域がガイド面21と僅かなクリアランスを空けて対応する。また、凹部19の上端縁と後端縁には、側板13の板面に対して傾斜したテーパ面22が形成されており、これにより、側板13に外力が作用したときに、凹部19の上端縁や後端縁に応力が集中することが回避される。
【0024】
弾性接触片16には、上記凹部19と対応した幅広部23が形成されている。幅広部23は、弾性接触片16の前端、即ち弾性撓み部17の前端から、弾性撓み部17の後端よりも更に後方であって、切欠部15の後端よりも少し前方の位置に亘って形成されている。また、上下方向においては、幅広部23は、凹部19の上端縁よりも下方の領域、即ち凹部19の形成範囲内に配されている。この幅広部23の幅寸法は、側板13の内側面の非加工領域20間の間隔よりも大きい寸法であり、幅広部23の左右両側縁は、凹部19内に入り込んでいる。但し、幅広部23の側縁は、凹部19の形成領域における内側面とは非接触となっているので、弾性撓み部17の弾性撓みは、引っ掛かりなく円滑に行われる。
【0025】
弾性接触片16の左右両側縁部のうち幅広部23の後端に連なる部分は、前後方向に対して傾斜したテーパ状をなす応力緩和部24となっている。前後方向における応力緩和部24の形成領域は、凹部19の形成範囲内となっている。そして、弾性接触片16のうち応力緩和部24よりも後方の領域は、幅広部23よりも幅の狭い幅狭部25となっている。この幅狭部25の幅寸法は、非加工領域20間の間隔よりも僅かに小さい寸法であり、この寸法差は、弾性接触片16の円滑な弾性変位を可能にするために必要最小限のクリアランスを確保するために設定されている。上記した応力緩和部24は、幅広部23と幅狭部25との間に配されており、この応力緩和部24により、幅広部23の側縁と幅狭部25の側縁は、応力集中を来す虞のない滑らかに連なった形態となっている。
【0026】
また、基板12の前端部のうち前後方向において切欠部15と対応する領域、即ち弾性接触片16の弾性撓み部17に連なる領域は、幅広部23と同じ幅寸法に設定されている。つまり、幅広部23(弾性撓み部17)の側縁と基板12の側縁は、応力集中を来す虞のない面一状に連なった形態となっている。
【0027】
本実施形態においては、一対の側板13の内側面に、弾性撓み部17と対応する領域を部分的に且つ側板13の板厚寸法よりも浅く凹ませた形態であって、側板13の外側面には露出しない形態の凹部19を形成し、弾性撓み部17の幅寸法を、一対の側板13の内側面のうち凹部19が形成されていない非加工領域20における幅寸法よりも大きい寸法としている。
【0028】
このように、一対の側板13のうち弾性撓み部17と対応する領域は、凹部19を形成したことにより、凹部19の形成されていない非加工領域20よりも拡幅されているので、その分、弾性撓み部17の幅寸法を拡大することができた。これにより、弾性撓み部17の撓み剛性が高められ、弾性接触片16と雄タブMとの接触圧が大きく確保されている。また、側板13に形成されている凹部19は側板13の外側面に露出しない形態(側板13の外側面まで貫通しない形態)なので、弾性撓み部17の両側方には側板13が存在する。これにより、弾性撓み部17に対して側方から異物が干渉することを防止できる。このように、本実施形態によれば、弾性接触片16の弾性撓み部17を異物の干渉から保護しながら、弾性撓み部17の撓み剛性を高めることが実現されている。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「リード線12の先端」は前者の「導体」に相当し、以下同様に、「かしめる」ことは「圧着する」ことに、「取着部」は「圧着部」に、「相手コネクタの雄ターミナル15」は「相手側の端子」に、「筒状部13」は「箱部」に、「ターミナル11」は「端子」に、「ばね片部14」は「端子ばね部」に、「筒状部13の側壁」は「側壁」に、「舌片状をなすばね片部14」は「板状の端子」に、「湾曲部14a」は「根元部」に、「先端部14c」は「接点」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「導体を圧着する圧着部と、相手側の端子を収容する箱部と、前記圧着部と前記箱部とを連結するつなぎ部と、から構成される端子であって、
前記箱部は、相手側の端子と接続する端子ばね部と、前記端子ばね部を囲うように形成される側壁と、から構成され、
前記端子ばね部には、板状の端子を折り曲げられて形成される根元部と、相手側の端子と接続する接点と、が形成され、
前記根元部は、前記箱部の開口端から外方に露出して形成されているとともに、前記根元部には、前記箱部の開口端に向けて幅が減少するように傾斜するテーパ部が形成される端子。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明1は、「前記側壁の前記開口端側には、前記テーパ部に沿って切欠部が形成されている」のに対し、
引用発明は、かかる発明特定事項を備えていない点。

(2)判断
そこで、相違点について検討する。
本願明細書には、本願発明1の切欠部について「側壁10に切欠部14を設けたことにより、端子ばね部12の幅を有効に利用することができ、根元部22への応力の集中を防ぐことができる。」(段落【0030】)との記載がある。
この記載によれば、本願発明1の切欠部は、端子ばね部12の幅を利用して、根元部22への応力の集中を防ぐためのものである。

他方、引用例2には、凹部19の後端縁に形成されたテーパ面22について「これにより、側板13に外力が作用したときに、凹部19の上端縁や後端縁に応力が集中することが回避される」(段落【0023】)との記載がある。
この記載によれば、引用例2のテーパ面22は、側板13に外力が作用したときに応力の集中を回避するためのものである。

また、引用例2には、凹部19について、「一対の側板13の内側面に、弾性撓み部17と対応する領域を部分的に且つ側板13の板厚寸法よりも浅く凹ませた形態であって、側板13の外側面には露出しない形態の凹部19を形成し、弾性撓み部17の幅寸法を、一対の側板13の内側面のうち凹部19が形成されていない非加工領域20における幅寸法よりも大きい寸法としている。このように、一対の側板13のうち弾性撓み部17と対応する領域は、凹部19を形成したことにより、凹部19の形成されていない非加工領域20よりも拡幅されているので、その分、弾性撓み部17の幅寸法を拡大することができた。これにより、弾性撓み部17の撓み剛性が高められ、弾性接触片16と雄タブMとの接触圧が大きく確保されている」(段落【0027】、段落【0028】)との記載がある。
この記載によれば、引用例2の凹部19は、弾性撓み部17の幅寸法を拡大して、弾性撓み部17の撓み剛性を高めるためのものである。
そうすると、刊行物2において、本願発明1の切欠部に相当する部材は凹部19であるといえる。

そして、凹部19は「前後方向においては、側板13の前端から切欠部15の後端に至る範囲」(段落【0021】)に形成されるものである。

そうすると、刊行物2には、相違点に係る本願発明1の発明特定事項のうち、「側壁の前記開口端側には」「切欠部が形成されている」との事項が記載されているといえる。

しかしながら、凹部19の形成範囲内に、弾性接触片16の幅広部23の後端に連なって前後方向に対して傾斜したテーパ状をなす応力緩和部24が形成されている(段落【0025】、図6)としても、凹部19は「凹部19を形成したことにより、凹部19の形成されていない非加工領域20よりも拡幅されているので、その分、弾性撓み部17の幅寸法を拡大」させ、「幅広部23の左右両側縁は、凹部19内に入り込んでいる。但し、幅広部23の側縁は、凹部19の形成領域における内側面とは非接触となっている」(段落【0024】)ものであるから、凹部19の内側面を前後方向に対して傾斜させて応力緩和部24のテーパ面に「沿って」形成することを当業者が容易に想到し得たとはいえない。

そうしてみると、引用発明において、引用例2に基いて相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(3)まとめ
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用例2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用例2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上により、本願発明1及び2は、いずれも、引用発明及び引用例2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2012-179209(P2012-179209)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 冨岡 和人
内田 博之
発明の名称 端子  
代理人 三好 秀和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ