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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1329959
審判番号 不服2016-16215  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-31 
確定日 2017-07-25 
事件の表示 特願2015-555316号「空気入りタイヤ、空気入りタイヤの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日国際公開、WO2016/060229、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年10月16日(優先権主張 2014年10月17日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月3日付けで拒絶理由が通知され、同年4月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後当審において平成29年4月14日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?14に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明14」という。また、まとめて「本願発明」ということもある。)は、平成29年6月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1は、次のとおりである。
「【請求項1】
インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有し、該シーラント層のタイヤ半径方向内側に吸音層を有する空気入りタイヤであって、
前記シーラント層が、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されており、
前記シーラント材の40℃における粘度が、5000Pa・sを超え70000Pa・s以下であり、
前記吸音層が、前記シーラント材により固定されており、
前記吸音層が、多孔質吸音材のみにより構成されている空気入りタイヤ。」

なお、本願発明2?14の概要は以下のとおりである。
本願発明2?12は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明13は、本願発明1に対応する方法の発明であり、実質的に本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。また、本願発明14は、本願発明13を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2011-20479号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付加した。以下同様。)
ア 「【請求項1】
空気入りタイヤと、この空気入りタイヤのトレッド内面に外周面が接着されてタイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体とを具えた制音体付空気入りタイヤであって、
前記制音体は、粘稠性シール剤を用いて前記トレッド内面に粘着されるととともに、
前記制音体は、前記スポンジ材中に前記粘稠性シール剤が浸透した外周面側のシール剤浸透層と、粘稠性シール剤が浸透していない内周面側の制音層とからなり、
しかも前記シール剤浸透層とトレッド内面との間に、前記粘稠性シール剤からなるシール層を形成したことを特徴とする制音体付空気入りタイヤ。」

イ 「【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1において、本実施形態の制音体付空気入りタイヤ1は、空気入りタイヤ1Aと、この空気入りタイヤ1Aのトレッド内面2Sに外周面が接着されてタイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体9とから構成される。
【0018】
前記空気入りタイヤ1Aは、チューブレスタイヤであって、トレッド部2と、その両端部からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内方端に位置するビード部4とを具えるとともに、そのタイヤ内腔面は、低空気透過性ゴムからなるインナーライナゴム(図示しない)で被覆される。前記空気入りタイヤ1Aとしては、その内部構造やカテゴリーに規制されることなく、種々のタイヤが適用できる。しかし車室内での静粛性が強く求められている乗用車用タイヤ、特に偏平率が60%以下の乗用車用ラジアルタイヤが好適に採用される。」

ウ 「【0026】
次に、前記制音体9は、粘稠性シール剤Jを用いて、その外周面Soがトレッド内面2Sに接着される。
【0027】
ここで、前記粘稠性シール剤Jとしては、粘稠性を有する種々のシール剤が使用でき、例えば、常温(20℃)において略液状を呈するものが好ましく採用しうる。特に、-20?60℃の温度範囲において、釘穴などに進入してこの釘穴をシールでき、タイヤ内圧の漏洩を防止しうるシール剤が好適に採用されうる。」

エ 「【0030】
そして、このような粘稠性シール剤Jを用いて、制音体9の外周面Soをトレッド内面2Sに接着させる。このとき、図3に示すように、前記制音体9には、スポンジ材中に粘稠性シール剤Jが浸透した外周面So側のシール剤浸透層10と、粘稠性シール剤Jが浸透していない内周面Si側の制音層11とが形成されるとともに、前記シール剤浸透層10とトレッド内面2Sとの間には、前記粘稠性シール剤Jからなるシール層12が形成される。」

(2)したがって、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「タイヤ内腔面は、低空気透過性ゴムからなるインナーライナゴムで被覆される空気入りタイヤ1Aと、この空気入りタイヤ1Aのトレッド内面2Sに外周面が接着されてタイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体9とを具えた制音体付空気入りタイヤであって、
前記制音体9は、粘稠性シール剤Jを用いて前記トレッド内面2Sに粘着されるととともに、
前記制音体9は、前記スポンジ材中に前記粘稠性シール剤Jが浸透した外周面側のシール剤浸透層10と、粘稠性シール剤Jが浸透していない内周面側の制音層11とからなり、
しかも前記シール剤浸透層10とトレッド内面との間に、前記粘稠性シール剤Jからなるシール層12を形成した制音体付空気入りタイヤ。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開昭58-93612号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「一つの軸の回りに回転でき、一対のビード部、一つのクラウン部、および上記ビード部と上記クラウン部の間にサイドウオールをもつた、柔軟性あるゴム状の材料でできた環状体をなす空気入りタイヤであつて、
上記クラウン部はパンクシール材の層で裏うちされており、その層は上記クラウン部の内表面に接着されたパンクシール材の一つの連続した帯から成り、
その帯の第1のターンは、第1の軸方向位置において上記タイヤに、その円周に沿つて一つの環状体を形成するように布設、接着され、
その帯の第1のクロス部は、一般に上記タイヤの円周中心線に対して斜めの方向に、上記の帯を横切り、上記の第1の軸方向位置にある帯と並ぶような第2の位置まで伸びており、
その帯において少くとも存在すべき第2のターンが、上記の第2の軸方向位置において、上記タイヤの内面にその円周に沿つて一つの環状体を形成するように布設、接着される、
という空気入りタイヤ。」(2.特許請求の範囲(1))

イ 「シール材によるパンク防止層をタイヤのクラウン部の内面に付加することを、そのシール材の帯をタイヤの接着することによつて実現することが提案されて来た。そして、連続して押出された帯を用いる場合は、それは螺旋状にタイヤに付加されていた。この方法はあるタイヤでは満足すべき結果を得ても他のタイヤでは静的および動的バランスの点で問題を起すというものであつた。」(第3ページ左上欄第9?16行)

ウ 「シール材の帯は一定速度で押出される故、帯30の厚さはスピンドル84の回転速度で決まる。」(第5ページ右下欄第4?5行)

3 引用文献7について
(1)原査定において引用文献7(周知技術の例示文献)として引用された特開2002-347418号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0024】図3に示すように、矢印A方向に搬送される連続した帯状のスポンジ層3’のタイヤ壁面側面3’aに粘着材押出機の吐出口6から吐出された粘着材Xを一対の回転するロ-ラ-7,7により順次圧着し、それにより、スポンジ層3’のタイヤ反壁面側面3’bから離間させてタイヤ反壁面側に露出しないように粘着材Xを含浸させると共に、スポンジ層3’のタイヤ壁面側面3’aに粘着材Xからなる接着層4’を一体的に成形して、帯状シール層5’を成形する。
【0025】次いで、成形された帯状シ-ル層5’の先端部5’Xを予め加硫して製造された空気入りタイヤ1の内壁面1Xに導き、一方のショルダ-部S1に圧着する。その後、矢印方向に回転するロ-ラ-8、8により空気入りタイヤ1を回転させる一方、帯状シ-ル層5’を図示しないガイドによりタイヤ幅方向にずらせながら、隣接する帯状シール層5’のタイヤ幅方向端を当接させるようにしてロ-ラ-9で順次タイヤ内壁面1Xに圧着する。これにより、帯状シ-ル層5’がタイヤ内壁面1Xにタイヤ周方向に巻回した状態で順次貼り付けられる。」

イ 「【0027】空気入りタイヤ1が、図4に示すように、動的バランスの悪い箇所Qを有する場合には、動的バランスの悪い箇所Qに貼着した帯状シ-ル層5の部位において、スポンジ層3に含浸させる粘着材Xの含浸量を変えて、動的バランスが均等になるように調整する。」

ウ 「【0029】上述した本発明のセルフシールタイヤによれば、パンクシ-ル層2に用いられる粘着材Xをスポンジ層3に含浸させる構成にしたので、車両走行時の遠心力による粘着材Xの流動を防止することができる。」

4 引用文献8について
(1)原査定において引用文献8(周知技術の例示文献)として引用された特開昭53-60002号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「一方、被覆膜(4)は単一帯状体をなす粘稠性物質(3)の表面側に該物質(3)よりも広巾で順次覆わせていて、粘稠性物質(3)の帯形状を保持し、かつ部分的に重畳して隣り合う粘稠性物質(3)間に介在して、該物質(3)が巾方向では互いに独立した状態となるように機能している。」(第2ページ右下欄第17行?第3ページ左上欄第2行)

イ 「しかして最初の一回巻きの間は吐出口調節板(17)を調節して吐出口の巾を順次拡げて行くことにより、ダイ(15)のタイヤ巾方向送りが成されても最初の一回巻きの帯状粘稠性物質(3)の端辺は斜行せずにタイヤの周方向に展延される。
一方、スプレーノズル(16)から噴出されたゴム液は、展延された粘稠性物質(3)を後追いしながらその表面にゴム薄膜を形成し、該膜の巾寸法は粘稠性物質(3)の巾に比し広く被覆する。
ダイ(15)およびスプレーノズル(16)はタイヤ(1)の巾方向に微速度で揺動されることによって、第1図に示す如く帯状の粘稠性物質(3)が被覆膜(4)を介在した状態で部分的に重合しながら連続して展延され、そしてクラウン部の他側に至った最後の一回巻きになると、吐出口調節板(17)を調節して吐出口の巾を順次狭めて行くことにより、最初の一回巻き同様粘稠性物質(3)の端辺は正しくタイヤの周方向に展延される。」(第3ページ左下欄第17行?同ページ右下欄第14行)

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「インナーライナーゴム」は前者の「インナーライナー」に相当し、以下同様に、「空気入りタイヤ1A」及び「制音体付空気入りタイヤ」は「空気入りタイヤ」に、「シール層12」は「シーラント層」に、「粘稠性シール剤J」は「シーラント材」にそれぞれ相当する。

イ 後者の「制音体9」は「前記制音体9は、粘稠性シール剤Jを用いて前記トレッド内面2Sに粘着されるととともに、前記制音体9は、前記スポンジ材中に前記粘稠性シール剤Jが浸透した外周面側のシール剤浸透層10と、粘稠性シール剤Jが浸透していない内周面側の制音層11とからなり」というものである。そして、「制音層11」は吸音の作用を奏することは明らかである。一方、前者の「吸音層」は、「前記吸音層が、前記シーラント材により固定されており、前記吸音層が、多孔質吸音材のみにより構成されている」ものである。
そうすると、両者は「吸音層を有する部材」であって、「前記吸音層を有する部材が、前記シーラント材により固定されている」の限度で一致するといえる。

ウ 後者の「トレッド内面2S」は「インナーライナーゴム」のタイヤ半径方向内側であることは明らかである。
そうすると、後者の「タイヤ内腔面は、低空気透過性ゴムからなるインナーライナゴムで被覆される空気入りタイヤ1Aと、この空気入りタイヤ1Aのトレッド内面2Sに外周面が接着されてタイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体9とを具えた制音体付空気入りタイヤ」と、前者の「インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有し、該シーラント層のタイヤ半径方向内側に吸音層を有する空気入りタイヤ」とは、「インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有し、該シーラント層のタイヤ半径方向内側に吸音層を有する部材を有する空気入りタイヤ」の限度で一致するといえる。

エ 後者の「前記シール剤浸透層10とトレッド内面との間に、前記粘稠性シール剤Jからなるシール層12を形成した」と、前者の「前記シーラント層が、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されており」とは、「前記シーラント層が、シーラント材によって構成されており」の限度で一致するといえる。

エ したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有し、該シーラント層のタイヤ半径方向内側に吸音層を有する部材を有する空気入りタイヤであって、
前記シーラント層が、シーラント材によって構成されており、
前記吸音層を有する部材が、前記シーラント材により固定されている空気入りタイヤ。」

〔相違点〕
本願発明1では、「吸音層を有する部材」が「吸音層」であって「前記吸音層が多孔質吸音材のみにより構成されている」ものであり、また、「シーラント材」が「タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状」であって「40℃における粘度が、5000Pa・sを超え70000Pa・s以下であり」というものであるのに対し、引用発明では、「吸音層を有する部材」が「制音体9」であって「前記制音体9は、前記スポンジ材中に前記粘稠性シール剤Jが浸透した外周面側のシール剤浸透層10と、粘稠性シール剤Jが浸透していない内周面側の制音層11とからなり」というものであり、「粘稠性シール剤J」(シーラント材)がタイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状ではなく、また、粘度の特定もない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
まず、引用発明は、引用文献1の段落【0007】に記載の「接着材としてパンクシール用として好適な粘稠性シール剤を用い、制音体に、スポンジ材中に粘稠性シール剤が浸透したシール剤浸透層と、粘稠性シール剤が浸透していない制音層とを形成するとともに、前記シール剤浸透層とトレッド内面との間に粘稠性シール剤からなるシール層を形成することを基本として、トレッド内面にバフ処理等を施すことなく、制音体をトレッド内面に強固に接着でき、バフ処理に起因する上記問題点を解決しうるとともに、前記シール層とシール剤浸透層とにより、例えばパンク時のシール効果も発揮でき、走行の安全性を高めうる制音体付空気入りタイヤを提供すること」を解決課題としているものである。
そして、上記「第3 1(1)ア」に示されるように、引用発明の「制音体9」は、トレッド内面に粘着するため「シール剤浸透層10」を必須とするものと認められるところ、引用文献1の段落【0033】に「前記シール剤浸透層10の厚さT2は、1?10mmであることが好ましく」と記載され、同【0034】に「前記シール剤浸透層10の厚さT2が1mmを下回ると、制音体9とシール層12との結合力が不充分となって、この部分で剥がれが生じ、制音体9の耐久性を低下させる。」と記載されている。
そうすると、引用発明の「制音体9」において、「シール剤浸透層10」を無くすようにすることは、上記の解決課題に反することになり、阻害要因があるといえる。
さらに、本願発明1の「シーラント材」が「40℃における粘度が、5000Pa・sを超え70000Pa・s以下であり」という事項について、平成29年6月9日付け意見書の主張内容も参酌すると、下限値を「5000Pa・sを超え」としたことは、シーラント材が多孔質吸音材に含浸しない粘度を特定しているものと認められる。
そして、上記「第3 2?4」に示すとおり、引用文献2に記載されるのは、シール材の粘度の特定がないばかりか、「吸音層」に相当する部材を有さないものであり、引用文献7に記載されるのは、粘着材Xの粘度の特定はない上に、スポンジ層3に粘着材Xを含浸させるものであり、引用文献8に記載されるのは、粘稠性物質3の粘度の特定がないばかりか、「吸音層」に相当する部材を有さないものであるので、仮に、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項、引用文献7、8に示される周知技術を適用したとしても、本願発明1の構成には至らず、また、シーラント材が多孔質吸音材に含浸しないような粘度とすることが当業者にとって容易であるとすることもできない。
したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?12について
本願発明2?12は、本願発明1を減縮したものであるから、少なくとも本願発明1の上記相違点に係る事項を備えるものである。そして、それら発明に対し、原査定で引用された引用文献3(特開2013-43643号公報)、引用文献4(特開2007-99162号公報)及び引用文献5(特開2010-280340号公報)をみても、上記相違点に係る本願発明1の事項に対応する記載はない。
よって、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2?5に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明13?14について
本願発明13は、本願発明1に対応する方法の発明であり、実質的に本願発明1の上記相違点に係る事項に対応する事項を備えるものである。また、本願発明14は、本願発明13を減縮したものである。
よって、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、本願発明が、上記引用文献1に記載された発明、上記引用文献2?5に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年6月9日に提出された手続補正書により補正された請求項1は「第4 1(1)エ」で述べた相違点に係る事項を有するものであり、同請求項13も対応する事項を有するものであり、本願発明1?14は、引用文献1に記載された発明、引用文献2?5に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)について
当審では、補正前の独立請求項である請求項1、14において「吸音層」が粘度の低いシーラント材を含浸し得るようなものであることの特定はなく、また、同請求項2、11は多孔質吸音材のみで構成されるもの以外のものまで含み得るものであり、同請求項13は単に「含浸していない」という状態のみを特定するものであり、さらに、同請求項5でも、シーラント材を流動させてシーラント層を形成する際のシーラント材の粘度が、請求項5が引用する請求項1と重複するようなものは、例えば国際公開第2009/014082号の段落[0018]に示されるように、本願出願前に知られている事項であり、請求項1と重複する範囲の粘度のものを採用した場合、本願の意図を達成できているのかも明らかでないため、同請求項1?15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないとして、拒絶の理由を通知した。
しかしながら、平成29年6月9日に提出された手続補正書により、独立請求項である請求項1、13に対し「前記シーラント材の40℃における粘度が、5000Pa・sを超え70000Pa・s以下であり」及び「前記吸音層が、多孔質吸音材のみにより構成されている」との補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?14は、当業者が引用発明及び引用文献2?5に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2015-555316(P2015-555316)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B60C)
P 1 8・ 121- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉田 和博  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
平田 信勝
発明の名称 空気入りタイヤ、空気入りタイヤの製造方法  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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