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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1329977
審判番号 不服2016-14522  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-28 
確定日 2017-07-25 
事件の表示 特願2012-88425「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-218100、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年4月9日の出願であって,平成28年2月19日付けで拒絶理由通知がされ,同年5月2日付けで手続補正がされ,同年6月22日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年9月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
平成28年6月22日付けの拒絶査定の概要は以下のとおりである。
本願請求項1乃至7に係る発明は,以下の引用文献1乃至5に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
特に請求項1に係る発明については,引用文献1-3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献等一覧
1.特開2002-331725号公報
2.特開平01-306248号公報
3.特開平05-131675号公報
4.特開平04-143772号公報
5.特開平04-356065号公報

第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」…「本願発明6」という。)は,平成28年9月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明である。

「【請求項1】
感光体上に静電潜像を形成し,前記静電潜像をトナーを用いて現像し,前記感光体上に現像されたトナー像を記録媒体上に転写することによって記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって,
前記静電潜像を形成するための光ビームであって,供給される駆動電流の値に応じた光量の光ビームを出射する発光素子と,
入力される光量制御電圧に応じた値の駆動電流を前記発光素子に供給する駆動回路と,
前記光量制御電圧を保持するコンデンサを含み,前記光ビームの光強度が目標強度になるように前記コンデンサが保持する前記光量制御電圧を制御する制御回路であって,前記駆動回路に接続され,前記駆動回路との接続を介して前記コンデンサが保持する前記光量制御電圧を前記駆動回路に入力する制御回路と,
前記駆動回路に前記駆動回路を動作させるための電圧を印加する第1の電源と,
前記制御回路に前記制御回路を動作させるための電圧を印加する第2の電源と,
当該画像形成装置の筐体に設けられたドアの開閉を検知する検知手段と,
前記検知手段が前記ドアが開放されたことを検知したときに,前記第1の電源から前記駆動回路への電圧の印加を停止する停止手段と,
前記第1の電源が前記駆動回路に印加する電圧が第1の電圧値以下になったことに応じて第1の監視信号を出力し,前記第2の電源が前記制御回路に印加する電圧が第2の電圧値以下になったことに応じて第2の監視信号を出力する電源監視手段と,
前記電源監視手段によって前記第1の監視信号が出力されたときに,前記コンデンサに保持された前記光量制御電圧が前記駆動回路に入力されないように前記制御回路と前記駆動回路との前記接続を遮断する遮断手段と,
前記電源監視手段によって前記第2の監視信号が出力されたときに,前記コンデンサから電荷を放電させる放電回路と,
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電源監視手段は,
前記第1の電源の電圧が前記第1の電圧値以下になってからその状態が継続されている時間を計測する計測手段と,
前記計測手段によって計測された計測時間と予め設定された設定時間とを比較する比較手段と
を有し,
前記比較手段による比較の結果,前記計測時間が前記設定時間になったときに,前記第1の監視信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の監視信号が出力されるときに,前記電源監視手段が前記第2の電源の異常を検知したことを報知するための報知情報を生成する生成手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の監視信号が出力されるときに,その出力がなされたことを示す出力情報を記憶する記憶手段と,
前記記憶手段に記憶された出力情報を,外部からのアクセスに応じて外部に送信する送信手段とをさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の電源と前記第2の電源とは同電位であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の電源と前記第2の電源とは互いに異なる電位であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。」

第4 引用文献,引用発明等
1.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はレーザビームプリンター等の画像形成装置に関し,特に詳細には,レーザ走査装置に係る画像形成装置に関する。」

イ「【0016】画像書き出しタイミング制御回路101はマゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),ブラック(BK)の画像信号2を,図3に示すような副走査方向のタイミング信号であるITOP信号(図中A)と主走査方向のタイミング信号であるLSYNC信号(図中B)のタイミングに応じてレーザ駆動制御回路112に送出する。レーザ駆動制御回路112はLSYNC信号と画像信号2を基に図3のようなレーザ点灯信号(Laser-ON信号,図中C)を生成する。レーザ駆動制御回路112はこのLaser-ON信号に応じて,レーザダイオード100を変調駆動する。
【0017】レーザ光はポリゴンモータ106が駆動することで図1に示す矢印方向に回転するポリゴンミラー103に反射され,f-θレンズ104によってfθ補正され,感光ドラム105上を走査する。こうして,感光ドラム105上に静電潜像が形成される。BDセンサ107はレーザ光の1ラインの走査開始位置近傍に設けられ,レーザ光のライン走査を検出し,画像書出しタイミング制御回路101で図3のような同一周期の各ラインの走査開始基準信号(LSYNC信号,図中B)と公知のレーザAPCを行うAPC信号(Auto Power Control信号,図中D)を作り出す。Laser-ON信号は,画像形成用の点灯(図中C-2)の他にLSYNC信号を検出するための点灯も行う(図中C-1)。
【0018】また感光ドラム105の周囲には不図示のマゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),ブラック(BK)の現像器が設けられ,感光ドラム105が4回転する間に4つの現像器が交互に感光ドラム105に接し,感光ドラム105上に形成されたM,C,Y,BKの静電潜像に対応するトナーで現像する。
【0019】不図示の用紙カセットより給紙された記録用紙109は転写ドラム108に巻き付けられ,現像器で現像されたトナー像が転写される。転写ドラム108内には,転写ドラム108上の記録用紙109の先端位置を表すITOP信号を作るためのセンサ110が有り,転写ドラム108が回転し転写ドラム108内に固定されたフラグ111がセンサ110を通過することで図3のような色毎のITOP信号(図中A)が作られる。このITOP信号を基準に副走査方向の画像書出し位置を決定し,LSYNC信号を基準に主走査方向の画像書出し位置を決定する。このようにしてM,C,Y,BKの4色が順次転写された後に,用紙は不図示の定着ユニットを通過して排紙される。」

ウ「【0021】図2は電気的レーザ遮断手段の構成例である。ドア開閉検知部200はスイッチ201と発光受光素子からなるフォトセンサ202で構成されている。ドア開閉検知部200は装置内部を開放する際にアクセスするドアやユニット(不図示)等の全てに取り付けられており,ドアが開けられると先ずフォトセンサ202の発光素子と受光素子間を遮断するようにフラグ(不図示)が動作し,その後スイッチ201がオープン(開)となるように配置されている。
【0022】スイッチ201は一方の端子が+24V電源に,他方の端子がリレー203のコイル部203-1に接続されている。また,リレー203のスイッチ部203-2にはレーザ電源204が接続されている。ドアが閉まっている時はリレー203のコイル部203-1に+24V電源が供給されているのでスイッチ部203-2は閉じており,ドアが開くとリレー203のコイル部203-1に+24V電源が供給されないのでスイッチ部203-2は開くことになる。」

エ「【0023】レーザ駆動制御回路112は画像信号変調部205と制御信号生成部206とレーザ駆動回路207から構成されている。画像信号変調部205は,画像書出しタイミング制御回路101から供給される画像信号2に対し公知のパルス幅変調を行い,変調された画像信号をレーザ駆動回路207に供給する。制御信号生成部206は,画像書出しタイミング制御回路101から供給されるLSYNC信号を基にレーザAPCを行うタイミング信号を作り出しレーザ駆動回路207に供給する。また,画像信号変調部205及び制御信号生成部206は,レーザ電源204から電源供給される。一方,レーザ駆動回路207はリレー203のスイッチ部203-2を経由してレーザ電源204から電源供給されるため,ドアが開けられるとスイッチ201がオープン(開)となるため,リレー203はレーザ駆動回路207への電源供給を遮断する。この結果,レーザ光は強制的に遮断させられる。
【0024】しかし,画像形成中といったレーザ点灯時にドアを開けられるとレーザ点灯中に強制消灯し,レーザダイオード100にストレスを与えてしまう。更に,ドアが開けられるとレーザ駆動回路207への電源供給は遮断されるが,画像信号変調部205及び制御信号生成部206にはレーザ電源は供給された侭なのでレーザ駆動回路207に信号が供給されてしまう。即ち,レーザ駆動回路207に電気的ストレスを与えることになる。
【0025】本発明では,画像信号変調部205及び制御信号生成部206の出力イネーブル信号をドア開閉検知部200のフォトセンサ202の出力に接続されているので,レーザ点灯時にドアを開けられるとフォトセンサ202の出力がLレベルとなり,画像信号変調部205及び制御信号生成部206の出力イネーブル信号をディセイブルとする。即ち,ドアが開けられると画像信号変調部205及び制御信号生成部206の出力はLレベル(もしくはハイインピーダンス状態)となる。
【0026】また,前述のとおりドアが開けられるとフォトセンサ202の出力がLとなってからスイッチ201がオープン(開)となるので,レーザ駆動回路207の制御信号入力がLレベル(もしくはハイインピーダンス状態)になってから電源入力が遮断されることになるので,レーザ駆動回路207に電気的ストレスを与えることはない。
【0027】このタイミングを示したのが図4である。
【0028】図4において,ドアが開けられると,フォトセンサ202の出力がLレベルとなり(401),即ち画像信号変調部205及び制御信号生成部206の出力イネーブル信号(EN信号)がLレベルとなる。画像信号変調部205及び制御信号生成部206ではT1後に出力(レーザ駆動回路207の入力)をLレベルにする(402)。フォトセンサ202の出力がLレベルとなってから,T2後にスイッチ201がオープンとなりリレー203のコイル(203-1)間電圧が+24Vから0Vとなる(403)。すると,T3後にリレー203のスイッチ部203-2がオープン(開)となるため,レーザ駆動回路207の電源供給が遮断される(404)。従って,T1<T2+T3となるようにフォトセンサ202とスイッチ201のメカ的な配置がなされていることで,レーザ駆動回路207の入力信号がLレベル(もしくはハイインピーダンス状態)になってから電源供給が遮断され,レーザダイオード100やレーザ駆動回路207に電気的ストレスを与えることなくレーザを消灯することができる。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ポリゴンモータ106が駆動することでレーザ光が回転するポリゴンミラー103に反射され,f-θレンズ104によってfθ補正され,感光ドラム105上を走査され,感光ドラム105上に静電潜像が形成され,感光ドラム105の周囲にはマゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),ブラック(BK)の現像器が設けられ,感光ドラム105が4回転する間に4つの現像器が交互に感光ドラム105に接し,感光ドラム105上に形成されたM,C,Y,BKの静電潜像に対応するトナーで現像し,用紙カセットより給紙された記録用紙109は転写ドラム108に巻き付けられ,現像器で現像されたトナー像が転写される画像形成装置において,
LSYNC信号と画像信号2を基に生成されたレーザ点灯信号(Laser-ON信号)に応じて,レーザダイオード100を変調駆動するレーザ駆動制御回路112は,画像信号変調部205と制御信号生成部206とレーザ駆動回路207から構成され,
画像信号変調部205は,画像書出しタイミング制御回路101から供給される画像信号2に対し公知のパルス幅変調を行い,変調された画像信号をレーザ駆動回路207に供給し,
制御信号生成部206は,画像書出しタイミング制御回路101から供給されるLSYNC信号を基にレーザAPCを行うタイミング信号を作り出しレーザ駆動回路207に供給し,
画像信号変調部205と制御信号生成部206は,レーザ電源204から電源供給され,
レーザ駆動回路207は,リレー203のスイッチ部203-2を経由してレーザ電源204から電源供給され,
ドア開閉検知部200はスイッチ201と発光受光素子からなるフォトセンサ202で構成され,ドアが開けられると先ずフォトセンサ202の発光素子と受光素子間を遮断するようにフラグが動作し,その後スイッチ201がオープンとなるように配置されており,
スイッチ201は一方の端子が+24V電源に,他方の端子がリレー203のコイル部203-1に接続されていて,リレー203のスイッチ部203-2にはレーザ電源204が接続され,
ドアが閉まっている時はリレー203のコイル部203-1に+24V電源が供給されてスイッチ部203-2は閉じており,ドアが開くとリレー203のコイル部203-1に+24V電源が供給されないのでスイッチ部203-2は開くことになり,フォトセンサ202の出力がLとなってからスイッチ201がオープン(開)となるので,レーザ駆動回路207の制御信号入力がLレベル(もしくはハイインピーダンス状態)になってから電源入力が遮断されるため,レーザダイオード100やレーザ駆動回路207に電気的ストレスを与えることなくレーザを消灯することができる画像形成装置。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
オ「本発明は,レーザープリンタのレーザーダイオード(LD)制御回路において,ロジック制御回路及びLD駆動回路に使用する夫々異にする電源電圧の制御及び画像書込の制御に関する。」(第1頁左下欄第16行?末行)
カ「本発明方式は上記従来の構成に加え点線で囲まれた電圧検出部9を有する。即ち点線枠内の91はロジック制御回路の電源電圧+5vの検出回路,92はLD駆動回路8の電源電圧+12vの検出回路,であり,夫々の電源電圧を監視し,各電圧が規定値以上なら“H”,規定値以下なら“L”,を検出する。IC_(2)93は両検出回路91,92からの出力をリセット信号RESETとし,ビデオ及びLD光制御部2へ送る。ここで,リセット信号が“H”ならビデオ及びLD光制御部2は有効となり“L”ならば無効となる。」(第2頁右下欄第5?15行)

キ「また,94はLD駆動インヒビット回路であり,前記両検出回路91,92が共に“H”なら開放し,前記LD駆動信号PLVL及びビデオ信号VIDEOは有効となる。しかし何れか1つが“L”ならば閉塞し前記両信号は無効となる。したがって,LD駆動インヒビット回路94で無効処理がされると,LD駆動回路8はLD4を駆動することが不可能となり,LD駆動信号PLVL及びビデオ信号VIDEOに関係なく,LD駆動電流は遮断される。即ち,ロジック制御回路及びLD駆動回路の電源電圧の両方が正常な電圧値であって動作しうる状態とならない限り,LD駆動電流が遮断され,LDの破損を防止する。」(第2頁右下欄第16行?第3頁左上欄第8行)

したがって,上記引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ロジック制御回路の電源電圧+5vの検出回路91,LD駆動回路8の電源電圧+12vの検出回路92は,夫々の電源電圧を監視し,各電圧が規定値以上なら“H”,規定値以下なら“L”,を検出し,
IC_(2)93は両検出回路91,92からの出力をリセット信号RESETとし,ビデオ及びLD光制御部2へ送り,リセット信号が“H”ならビデオ及びLD光制御部2は有効となり“L”ならば無効となるものであって,
LD駆動インヒビット回路94は,前記両検出回路91,92が共に“H”なら開放して,LD駆動信号PLVL及びビデオ信号VIDEOは有効となるが,何れか1つが“L”ならば閉塞し前記両信号は無効となるものであって,LD駆動インヒビット回路94で無効処理がされると,LD駆動回路8はLD4を駆動することが不可能となり,LD駆動信号PLVL及びビデオ信号VIDEOに関係なく,LD駆動電流は遮断されるレーザープリンタのレーザーダイオード(LD)制御回路。」

3.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
ク「【0009】図1において,101は光ビームに感光し,且つトナー像を形成する感光ドラム,119は半導体レーザ,102は半導体レーザ119から照射された光ビーム103を走査するポリゴンミラ,118は半導体レーザ119からの光強度を検出する光強度検出手段としてのフォトディテェクタ,117はフォトディテェクタ118からの光強度を電圧に変換する光強度電圧変換手段としての光電変換回路,116は所定の光強度を得るための基準電圧を発生する基準電圧発生回路,115は光電変換回路117により,光強度電圧変換された電圧と基準電圧発生回路116の基準電圧とを比較する比較手段としての比較回路であり,114は比較結果を所定期間ホールドするサンプルホールド手段としてのサンプルホールド回路である。121はサンプルホールド回路114のホールド電圧に応じて半導体レーザ119の駆動電流を設定する駆動電流設定手段としての電流設定回路,120は設定された駆動電流に応じて半導体レーザ119のスイッチングを行う発光素子駆動手段としての半導体レーザ駆動回路である。107は画像信号マスク回路であって,CPU111を通して入力される画像信号を半導体レーザ駆動回路120に送出する際に,アンブランク信号(後述)が入力されたときのみ当該画像信号をマスクする。
【0010】108は半導体レーザ119から出射してポリゴンミラ102で走査された光ビームの走査位置を検出するビームディテェクタ,109はビームディテェクタ108からの検出信号を波形整形する波形整形回路である。110はビームディテェクタ108の出力タイミング,およびCPU111からの信号に基づいてサンプルホールド回路114が入力信号をサンプルホールドするタイミングを指示するタイミング信号,および画像領域において画像信号マスク回路107が画像信号をマスクするためのアンブランク信号とを発生するタイミング発生手段としての第1のタイミング発生回路である。
【0011】113はサンプルホールド回路114でサンプルホールドされた電圧をリセットするためのサンプルホールド電圧リセット回路であり,112は第2のタイミング発生回路である。103?106は光ビームを表す。」

ケ「【0013】まず,感光ドラム101の外の非画像領域において,半導体レーザ駆動回路120の入力端子212からの入力信号によって半導体レーザ119を強制点灯し,フォトディテェクタ118からの光強度を示す電圧を演算増幅器203で増幅し,変換され増幅された光強度を示す電圧と所定の光強度が得られるように設定された基準電圧とをコンパレータ204で比較する。この比較結果を入力端子206に入力されるAPC制御動作を行うためのAPC信号によってアナログスイッチ205をオンにした状態でサンプルホールドコンデンサ207にチャージする。演算増幅器209,トランジスタ210において,所定の光強度が得られるようにAPCの制御動作を行う,また,画像形成中はアナログスイッチ205をOFFしてホールドコンデンサ207の電圧を基に演算増幅器209,トランジスタ210によって電流を制御する。
【0014】図3は,画像形成部材の最終行におけるAPCおよびサンプルホールドリセットのタイミングを示すものである。図3において,301は図1のビームディテェクタ108が出力する光ビームの位置検出信号(BD信号),303はレーザの強制点灯とサンプルホールドを行うタイミングを示すAPC信号,304は図2のサンプルホールドコンデンサ207にチャージされた電圧波形,305は画像担持体であるドラム101に光ビーム104,105を照射することによりトナー像を形成するための画像信号である。302は非画像領域において画像信号をマスクするためのアンブランキング信号,306はサンプルホールドコンデンサ207にチャージされている電圧304をディスチャージするためのサンプルホールドリセット信号を示すものである。」

コ「【0016】図4は電源立ち上げ時と電源OFF時のサンプルホールドリセット信号を示すものである。401は図2においてV_(CC1)で示した電源の出力電圧で,402は図2において-V_(CC2)で示した電源の出力電圧である。404で電源がオンされ,410で電源がOFFされている。電源立ち上げ時,電源OFF時は電源電圧が不安定であるために,レーザ119が誤動作するおそれがある。そこで電源立ち上げ時と,画像形成中以外は随時サンプルホールドリセットを行うことによって,電源電圧の不安定時のレーザ119の誤動作を防ぐように構成したものである。」

したがって,上記引用文献3には次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「光電変換回路117により,光強度電圧変換された電圧と基準電圧発生回路116の基準電圧とを比較する比較手段としての比較回路115と,
比較結果を所定期間ホールドするサンプルホールド手段としてのサンプルホールド回路114と,
サンプルホールド回路114のホールド電圧に応じて半導体レーザ119の駆動電流を設定する駆動電流設定手段としての電流設定回路121と,
設定された駆動電流に応じて半導体レーザ119のスイッチングを行う発光素子駆動手段としての半導体レーザ駆動回路120と,
サンプルホールド回路114でサンプルホールドされた電圧をリセットするためのサンプルホールド電圧リセット回路113とを備え,
感光ドラム101の外の非画像領域において,半導体レーザ駆動回路120の入力端子212からの入力信号によって半導体レーザ119を強制点灯し,フォトディテェクタ118からの光強度を示す電圧を演算増幅器203で増幅し,変換され増幅された光強度を示す電圧と所定の光強度が得られるように設定された基準電圧とをコンパレータ204で比較し,
該比較結果を入力端子206に入力されるAPC制御動作を行うためのAPC信号によってアナログスイッチ205をオンにした状態でサンプルホールドコンデンサ207にチャージし,
画像形成中はアナログスイッチ205をOFFしてホールドコンデンサ207の電圧を基に演算増幅器209,トランジスタ210によって電流を制御するものであって,
電源立ち上げ時,電源OFF時は電源電圧が不安定であるために,レーザ119が誤動作するおそれがあるため,電源立ち上げ時と,画像形成中以外は随時サンプルホールドリセットを行うことによって,電源電圧の不安定時のレーザ119の誤動作を防ぐように構成し,サンプルホールドリセット信号によって,サンプルホールドコンデンサ207にチャージされている電圧304をディスチャージする,
発光素子からの光ビームを走査して画像形成を行う画像形成装置。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
後者の「感光ドラム105」は,前者の「感光体」に相当する。
後者の「静電潜像」は,前者の「静電潜像」に相当する。
後者の「トナー」は,前者の「トナー」に相当する。
後者の「トナー像」は,前者の「トナー像」に相当する。
後者の「記録用紙109」は,前者の「記録媒体」に相当する。
後者の「レーザ光」は,前者の「光ビーム」に相当する。
後者の「レーザダイオード100」は,前者の「発光素子」に相当する。
後者の「ドア」は,前者の「ドア」に相当する。
後者の「ドア開閉検知部200」は,前者の「検知手段」に相当する。
後者において,「画像信号変調部205」は,画像信号2に対し公知のパルス幅変調を行い,変調された画像信号をレーザ駆動回路207に供給していることから,前者の「光量制御電圧を制御する制御回路」に相当する機能を有していることは自明である。
後者において,「レーザ駆動回路207」は,画像信号2に対して公知のパルス幅変調が行われた画像信号を画像信号変調部205から供給されて,その変調が行われた画像信号によって,レーザダイオード100を変調駆動しており,これは,レーザダイオード100に対して「制御電圧に応じた値の駆動電流」を供給することにほかならないから,前者の「入力される光量制御電圧に応じた値の駆動電流を前記発光素子に供給する駆動回路」に相当する機能を有していることは自明である。
後者において,「画像信号変調部205」も「レーザ駆動回路207」も,レーザ電源204から電源供給されているから,それぞれ「回路を動作させるための電圧を印加」されていることになり,前者の「前記駆動回路に前記駆動回路を動作させるための電圧を印加する第1の電源」及び「前記制御回路に前記制御回路を動作させるための電圧を印加する第2の電源」に相当する構成を有していることは自明である。
後者において,「ドアが開くと,レーザ駆動回路207の制御信号入力がLレベル(もしくはハイインピーダンス状態)になってから電源入力が遮断される」のであるから,後者は,画像信号2に対し公知のパルス幅変調を行い,変調された画像信号を画像信号変調部205から供給されて,レーザダイオード100を変調駆動していることになり,前者の「ドアが開放されたことを検知したときに,駆動回路への電圧の印加を停止する停止手段」に相当する機能を有していることは自明である。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点がある。

ア 一致点
「感光体上に静電潜像を形成し,前記静電潜像をトナーを用いて現像し,前記感光体上に現像されたトナー像を記録媒体上に転写することによって記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって,
前記静電潜像を形成するための光ビームであって,供給される駆動電流の値に応じた光量の光ビームを出射する発光素子と,
入力される光量制御電圧に応じた値の駆動電流を前記発光素子に供給する駆動回路と,
前記光量制御電圧を前記駆動回路に入力する制御回路と,
前記駆動回路に前記駆動回路を動作させるための電圧を印加する第1の電源と,
前記制御回路に前記制御回路を動作させるための電圧を印加する第2の電源と,
当該画像形成装置の筐体に設けられたドアの開閉を検知する検知手段と,
前記検知手段が前記ドアが開放されたことを検知したときに,前記駆動回路への電圧の印加を停止する停止手段と,
を有する画像形成装置。」

イ 相違点
(相違点1)本願発明1の「制御回路」は「光量制御電圧を保持するコンデンサ」を含むのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明1の「制御回路」は「光ビームの光強度が目標強度になるようにコンデンサが保持する光量制御電圧を制御」し,「コンデンサが保持する光量制御電圧を駆動回路に入力」するものであるのに対し,引用発明の「制御回路」は,「コンデンサ」を備えるものではないため,そのような構成を備えていない点。

(相違点3)本願発明1は「第1の電源が前記駆動回路に印加する電圧が第1の電圧値以下になったことに応じて第1の監視信号を出力し,第2の電源が前記制御回路に印加する電圧が第2の電圧値以下になったことに応じて第2の監視信号を出力」する「電源監視手段」を備えるものであるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

(相違点4)本願発明1は「電源監視手段によって第1の監視信号が出力されたときに,コンデンサに保持された光量制御電圧が駆動回路に入力されないように制御回路と駆動回路との接続を遮断する遮断手段」を備え,「電源監視手段によって前記第2の監視信号が出力されたときに,前記コンデンサから電荷を放電させる放電回路」を備えるものであるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,「電源監視手段」に係る相違点である上記相違点4について先に検討する。
相違点4に係る本願発明1の発明特定事項は「第1の監視信号」及び「第2の監視信号」による制御内容に関するものである。
引用発明2には,相違点3に係る本願発明1の発明特定事項である「第1の電源が前記駆動回路に印加する電圧が第1の電圧値以下になったことに応じて第1の監視信号を出力し,第2の電源が前記制御回路に印加する電圧が第2の電圧値以下になったことに応じて第2の監視信号を出力」に相当する構成は記載されているといえるが,「第1の監視信号」及び「第2の監視信号」のそれぞれが,どのような制御内容の契機となるかについては,記載されていない。
引用発明3において「サンプルホールドリセット信号によって,サンプルホールドコンデンサ207にチャージされている電圧304をディスチャージ」する点が記載されているから,何らかの契機によって「コンデンサから電荷を放電させる放電回路」を有しているといえるものの,その契機は,第2の電源が前記制御回路に印加する電圧が第2の電圧値以下になったことに応じて出力される第2の監視信号によるものではなく,第1の監視信号については記載がない。
以上のことより,相違点4に係る本願発明1の発明特定事項は,引用発明2及び3に記載されておらず,引用文献2及び3に示唆されているともいえない。
また,相違点4に係る本願発明1の発明特定事項が,本願出願前において周知技術であるともいえないし,当業者にとって設計的事項とする根拠もない。
したがって,本願発明1は,相違点1乃至3を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明1,引用発明2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

なお,原審の拒絶査定においては,「引用文献2には,電源電圧+5vの電源(第1の電源)が印加する電圧が第1の電圧値以下になったことに応じて第1の監視信号を出力し,電源電圧+12vの電源(第2の電源)が印加する電圧が第2の電圧値以下になったことに応じて第2の監視信号を出力する検出回路91,92が記載されている。
また,引用文献3には,サンプルホールド回路において,APC信号によってチャージされ,半導体レーザ119の駆動電流を制御するサンプルホールドコンデンサ207が設けられ,電源オフ時にサンプルホールドリセットを行うことで,サンプルホールドコンデンサ207にチャージされている電圧をディスチャージすることが記載されている。」と認定されているが,引用文献2及び3に上記のとおりの構成(以下,「引用文献2及び3の記載事項」という。)が記載されているとしても,引用発明1は,電源監視手段を有するものではないから,引用文献2及び3の記載事項を適用することが,当業者にとって容易であったとはいえない。

2.本願発明2乃至6について
本願発明2乃至6は,本願発明1を引用し,さらに限定したものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1乃至6は「電源監視手段によって第1の監視信号が出力されたときに,コンデンサに保持された光量制御電圧が駆動回路に入力されないように制御回路と前記駆動回路との接続を遮断する遮断手段」,「電源監視手段によって第2の監視信号が出力されたときに,コンデンサから電荷を放電させる放電回路」という事項を有するものであり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1乃至5に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2012-88425(P2012-88425)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田代 憲司佐々木 創太郎齋藤 卓司  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
畑井 順一
発明の名称 画像形成装置  
代理人 別役 重尚  

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