• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62D
管理番号 1329979
審判番号 不服2016-15221  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-11 
確定日 2017-07-26 
事件の表示 特願2012-181956号「センターピラー及び車体側部構造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年2月27日出願公開、特開2014-37218号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月21日の出願であって、平成28年1月25日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年3月18日に意見書および手続補正書が提出され、平成28年7月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。これに対し、平成28年10月11日に拒絶査定不服の審判の請求がされるとともに、手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1-8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとしているところ、独立請求項である請求項1、8に係る発明は、以下の引用文献1-2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平10-7021号公報
2.実願昭62-152764号(実開平1-57966号)のマイクロ フィルム

第3 本願発明
本願については、上記「第1」に記載のとおり、平成28年10月11日に提出された手続補正書により、その特許請求の範囲が補正されているところ、その請求項1-5に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、上記補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
(なお、上記補正の補正前の請求項1、8は、補正後の請求項1、5に対応する。)
「【請求項1】
自動車の車体構造であって、
車体の前後方向に延在するシルアウターとシルインナーによって規定される内部空間を有するサイドシルと、
上下方向に延在し、下端において前記サイドシルと接合されるセンターピラーを備え、
前記内部空間は、前記シルアウターの有する第1内部空間と前記シルインナーの有する第2内部空間により構成され、
前記センターピラーは、ピラーインナーの下端がサイドシル上下に形成されたフランジ部に接合されてなる上下方向に延びる本体部と、
前記本体部の下端の一部を折り曲げて一体形成され、少なくともその一部が前記第1内部空間に、該第1内部空間を前後方向に仕切り、前記第1内部空間の形状と略同一の大きさに形成されるブレース部と、
前記ブレース部の3辺に前記ブレース部と一体成形され、前記ブレース部の3辺ともにシルアウター内側面に接合されるフランジ部を備え、
部品数を増加させずに車体の剛性が向上されていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記ブレース部は、前記本体部の前後にそれぞれ設けられた第1ブレース部と第2ブレース部を有し、
前記第1ブレース部は、前記シルアウターの前記第1内部空間に設けられ、前記第2ブレース部は、前記シルインナーの前記第2内部空間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記ブレース部は、前記本体部の前後にそれぞれに設けられた第1ブレース部と第2ブレース部を有し、
前記第1ブレース部は、前記シルインナーの前記第2内部空間に設けられ、前記第2ブレース部は、前記シルアウターの前記第1内部空間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記ブレース部は、プレス加工により前記本体部と一体成形されることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前後方向に延在するシルアウターとシルインナーによって規定される内部空間を有し、
前記内部空間は、前記シルアウターの有する第1内部空間と前記シルインナーの有する第2内部空間により構成されるサイドシルに接合されるセンターピラーであって、
ピラーインナーの下端がサイドシルの上下に形成されたフランジ部に接合されてなる上下方向に延びる本体部と、
前記本体部の下端の一部を折り曲げて一体形成され、少なくともその一部が前記第1内部空間に、該第1内部空間を前後方向に仕切り、前記第1内部空間の形状と略同一の大きさに形成されるブレース部と、
前記ブレース部の3辺に前記ブレース部と一体成形され、前記ブレース部の3辺ともにシルアウター内側面に接合されるフランジ部を備え、
部品数を増加させずに車体の剛性が向上されていることを特徴とするセンターピラー。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車のピラーとサイドシルとの接続部構造に関する。」
(1b)「【0009】図1?5において、1はピラーとしてのセンターピラーを示し、該センターピラー1はピラーアウタ2とピラーインナ3とをそれらの前後縁の接合フランジ2a,3aを重合してスポット溶接により接合して閉断面に形成してある。
【0010】4はシルアウタ5とシルインナ6とからなるサイドシルを示し、シルアウタ5およびシルインナ6の上下縁の接合フランジ5a,6aを重合してスポット溶接により接合して閉断面に形成してあって、前記センターピラー1の下端部をこのサイドシル6の上面に突合わせて結合してある。
【0011】具体的には、前記ピラーアウタ2はその下端の前後方向に末広がり状に形成した基部2Aをシルアウタ5の上面に外嵌して予めスポット溶接により接合して、サブアッセンブリしてある一方、ピラーインナ3はその下端の前後方向に末広がり状に形成した基部3Aをシルインナ6上側の溶接フランジ6aの内面に重合して予めスポット溶接により接合してサブアッセンブリしてあって、ピラーアウタ2とシルアウタ5とのアッセンブリと、ピラーインナ3とシルインナ6とのアッセンブリとを車幅方向に向き合わせて重合し、前述のように接合フランジ2a,3aおよび5a,6aをスポット溶接により接合してセンターピラー1とサイドシル4とを一体に結合するようにしてある。
【0012】7は前記センターピラー1とサイドシル4とを結合した接続部分の閉断面内に配設したレインフォースを示す。
【0013】このレインフォース7はピラーアウタ2の断面形状と略同一形状に形成されて該ピラーアウタ2の裏面に沿って上下方向に延在するピラー部8と、該ピラー部8の下端部にシルアウタ5の断面形状と略同一形状に膨出成形されてシルアウタ5内の内面に沿って前後方向に延在するシル部9とで逆T字状に形成してあり、上下の周縁フランジ7aをセンターピラー1およびサイドシル4の接合フランジ2a,5aと、3a,6aとの間に挾んでスポット溶接により一体に接合するようにしてある。
【0014】このレインフォース7のピラー部8とシル部9との連設部分は、その下端に亘ってピラー部8の側壁8aと同一面に平坦に形成した平坦部10としてある。
【0015】そして、この平坦部10の背面の前後側部とシルインナ6とに跨って、これら平坦部10とシルインナ6との間の閉断面を前後方向に隔成するブレース11,11を接合配置してある。
【0016】ブレース11は前記平坦部10とシルインナ6との間の閉断面形状に合わせて形成してあって、前側に配置されるブレース11は周縁フランジ11aを前方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形してある一方、後側に配置されるブレース11は周縁フランジ11aを後方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形してある。
【0017】これらブレース11,11は何れも周縁フランジ11aの上縁側の端末を前記平坦部10面に重合すると共に、周縁フランジ11aの下縁側を平坦部10の下端の曲折縁上に重合してそれぞれスポット溶接により接合してレインフォース7にサブアッセンブリしてあり、センターピラー1とサイドシル4の組付け後にシルインナ6に設けた作業孔12を通して、ブレース11の周縁フランジ11aの側縁側をシルインナ6面にスポット溶接によって接合してある。」
(1c)「【0019】前記実施形態ではブレース11,11を別部品として構成しているが、図6に示すようにセンターピラー1のピラーインナ3の基部3Aに、サイドシル4の閉断面内に延出する延設部13を形成しこの延設部13の前後両端部にブレース11A,11Aを曲折成形するようにしてもよい。」

したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、下記引用発明は、引用文献1に記載のものの、ピラーインナ3に係る構成については、特に図6で示された実施形態に基づいて認定している。

「自動車のピラーとサイドシルとの接続部構造であって、
サイドシル4をシルアウタ5およびシルインナ6の上下縁の接合フランジ5a,6aを重合してスポット溶接により接合して閉断面に形成し、
センターピラー1をピラーアウタ2とピラーインナ3とをそれらの前後縁の接合フランジ2a,3aを重合してスポット溶接により接合して閉断面に形成し、
前記センターピラー1の下端部を前記サイドシルインナ6の上面に突合わせて結合し、
前記センターピラー1と前記サイドシル4とを結合した接続部分の閉断面内にレインフォース7を配設し、
前記レインフォース7のピラー部8とシル部9との連設部分は、その下端に亘ってピラー部8の側壁8aと同一面に平坦に形成した平坦部10とし、
前記ピラーインナ3の基部3Aに、前記サイドシル4の閉断面内に延出する延設部13を形成し、この延設部13の前後両端部にブレース11A,11Aを曲折成形し、
前記ブレース11A,11Aは前記平坦部10とシルインナ6との間の閉断面形状に合わせて形成されており、
前側に配置されるブレース11Aは周縁フランジ11aを前方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形してある一方、後側に配置されるブレース11Aは周縁フランジ11aを後方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形しており、
前記周縁フランジ11aの上縁側の端末を前記平坦部10面に重合すると共に、周縁フランジ11aの下縁側を前記平坦部10の下端の曲折縁上に重合してそれぞれスポット溶接により接合している、
自動車のピラーとサイドシルとの接続部構造。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、その第1、3図および明細書第4ページ第7行-第5ページ第10行の記載内容から、次の技術事項が記載されているといえる。
「ピラーインナパネル3の下部にサイドシル4の閉断面内に延びる延長部11が形成され、サイドシル4の上部接合フランジ16および下部接合フランジ17にそれぞれ挟み込んで一緒に溶接する技術。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「自動車のピラーとサイドシルとの接続部構造」は、自動車の車体構造、特に、車体側部構造といえるから、本願発明1の「自動車の車体構造」および「車体側部構造」に相当する。
イ 引用発明は、「サイドシル4をシルアウタ5およびシルインナ6の上下縁の接合フランジ5a,6aを重合してスポット溶接により接合して閉断面に形成し」たものであるから、引用発明の「サイドシル4」は内部空間を有するといえるし、サイドシルが車体の前後方向に延在するものであることは当業者には明らかである。さらに、引用発明の「シルアウタ5」および「シルインナ6」は、それぞれ内部空間を有する形状であるといえる(なお、図1-5)。したがって、引用発明の「サイドシル4をシルアウタ5およびシルインナ6の上下縁の接合フランジ5a,6aを重合してスポット溶接により接合して閉断面に形成」することにより、本願発明1の「車体の前後方向に延在するシルアウターとシルインナーによって規定される内部空間を有するサイドシル」に相当する構成を具備することとなる。それとともに、本願発明1の「前記内部空間は、前記シルアウターの有する第1内部空間と前記シルインナーの有する第2内部空間により構成され」るに相当する構成を具備することにもなる。
ウ 一般に自動車のセンターピラーはピラーアウターとピラーインナーを重合して形成したものであること、車体の上下方向に延在するものであることは当業者には明らかである。ここで、引用発明の「センターピラー1」は、その「下端部を前記サイドシルインナ6の上面に突合わせて結合し」ているものである。したがって、引用発明の「センターピラー1をピラーアウタ2とピラーインナ3とをそれらの前後縁の接合フランジ2a,3aを重合してスポット溶接により接合して閉断面に形成し、前記センターピラー1の下端部を前記サイドシルインナ6の上面に突合わせて結合」することによって、本願発明1の「上下方向に延在し、下端において前記サイドシルと接合されるセンターピラーを備え」ることに相当する構成を具備することとなる。
エ 引用発明の「ピラーインナ3」は、「前記ピラーインナ3の基部3Aに、前記サイドシル4の閉断面内に延出する延設部13を形成し」ているものであるから、少なくとも「延設部13」がサイドシル上部に形成された接合フランジを超えてサイドシルの内部空間に縦走(上下に延在)するものである。また、引用発明の「ピラーインナ3」は、その基部3Aをシルインナ6上側の接合(溶接)フランジ6aに接合してある(引用文献1の段落【0011】)ものである。したがって、引用発明の「ピラーインナ3の基部3A」は、本願発明1の「ピラーインナーの下端」に相当し、そして、引用発明の「前記ピラーインナ3の基部3Aに、前記サイドシル4の閉断面内に延出する延設部13を形成」することによって、本願発明1の「前記センターピラーは、ピラーインナーの下端がサイドシル上下に形成されたフランジ部に接合されてなる上下方向に延びる本体部」「を備え」ることとの対比において、「前記センターピラーは、ピラーインナーの下端がサイドシルの内部空間を上下方向に延びる本体部を備える」限度で相当する構成を具備することとなる。
オ 本願発明1は、「ピラーインナーの下端」にある「本体部の下端の一部を折り曲げて一体形成され、少なくともその一部が前記第1内部空間に、該第1内部空間を前後方向に仕切り、前記第1内部空間の形状と略同一の大きさに形成されるブレース部と」を備えるものである。一方、引用発明は、「前記ピラーインナ3の基部3A」の「延設部13の前後両端部にブレース11A,11Aを曲折成形し」ている。そして、引用発明の「ブレース11A,11A」は本願発明1の「ブレース部」と、サイドシルの内部空間を前後方向に仕切る仕切り部材という点で一致する。ここで、上記エで説示のとおり、引用発明の「ピラーインナ3の基部3A」は、本願発明1の「ピラーインナーの下端」に相当すること、また本願発明1の「第1内部空間」は、サイドシル内部空間の一部であることを加味すると、引用発明の「前記ピラーインナ3の基部3Aに」「延設部13を形成し、この延設部13の前後両端部にブレース11A,11Aを曲折成形」することは、本願発明1の「前記本体部の下端の一部を折り曲げて一体形成され、少なくともその一部が前記第1内部空間に、該第1内部空間を前後方向に仕切り、前記第1内部空間の形状と略同一の大きさに形成されるブレース部と」「を備える」こととの対比において、「前記本体部の下端の一部を折り曲げて一体形成され、少なくともその一部がサイドシル内部空間に、該サイドシル内部空間を前後方向に仕切るよう形成されるブレース部とを備える」という限度で相当するといえる。
カ 引用発明の「前側に配置されるブレース11Aは周縁フランジ11aを前方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形してある一方、後側に配置されるブレース11Aは周縁フランジ11aを後方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形しており、」「前記周縁フランジ11aの上縁側の端末を」「センターピラー1と前記サイドシル4とを結合した接続部分の閉断面内に」「配設」された「レインフォース7」の「前記平坦部10面に重合すると共に、周縁フランジ11aの下縁側を前記平坦部10の下端の曲折縁上に重合してそれぞれスポット溶接により接合している」ものであるから、引用発明の「ブレース11A,11A」は、少なくともブレースのその上縁と下縁にフランジ11aを一体形成しているといえる。したがって、引用発明の「前側に配置されるブレース11Aは周縁フランジ11aを前方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形してある一方、後側に配置されるブレース11Aは周縁フランジ11aを後方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形しており、」「前記周縁フランジ11aの上縁側の端末を」「センターピラー1と前記サイドシル4とを結合した接続部分の閉断面内に」「配設」された「レインフォース7」の「前記平坦部10面に重合すると共に、周縁フランジ11aの下縁側を前記平坦部10の下端の曲折縁上に重合してそれぞれスポット溶接により接合している」ことによって、本願発明1の「前記ブレース部の3辺に前記ブレース部と一体成形され、前記ブレース部の3辺ともにシルアウター内側面に接合されるフランジ部を備え」ることとの対比において、「前記ブレース部の上下辺に前記ブレース部と一体成形されフランジ部を備え」る限度で相当することとなる。
キ 上記ア-カより、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点および相違点があるといえる。

<一致点>
「自動車の車体構造であって、
車体の前後方向に延在するシルアウターとシルインナーによって規定される内部空間を有するサイドシルと、
上下方向に延在し、下端において前記サイドシルと接合されるセンターピラーを備え、
前記内部空間は、前記シルアウターの有する第1内部空間と前記シルインナーの有する第2内部空間により構成され、
前記センターピラーは、ピラーインナーの下端がサイドシル上部に形成されたフランジ部に接合されてサイドシルの内部空間を上下方向に延びる本体部と、
前記本体部の下端の一部を折り曲げて一体形成され、少なくともその一部がサイドシル内部空間に、該サイドシル内部空間を前後方向に仕切るよう形成されるブレース部と、
前記ブレース部の上下辺に前記ブレース部と一体成形されフランジ部を備える、
車体側部構造。」
<相違点1>
本願発明1では、「ピラーインナーの下端がサイドシル上下に形成されたフランジ部に接合されてなる」ものであるのに対して、引用発明の「センターピラー1」の「ピラーインナ3の基部3A」は、シルインナ6の上側の接合フランジ6aには接合されているものの、シルアウタ5の上側の接合フランジ5a、シルアウタ5およびシルインナ6の下側の接合フランジ5a,6aに接合されているかは特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1では、「ブレース部」は、「前記第1内部空間の形状と略同一の大きさに形成される」ものであり、また、「前記ブレース部の3辺に」「シルアウタ-内側面に接合されるフランジ部を」「一体形成され」「備え」るのに対し、引用発明の「ブレース11A,11A」は、引用発明が、「前記センターピラー1と前記サイドシル4とを結合した接続部分の閉断面内にレインフォース7を配設」するものであることに相まって、「前記ブレース11Aは」、「前記レインフォース7のピラー部8とシル部9との連設部分は、その下端に亘ってピラー部8の側壁8aと同一面に平坦に形成した平坦部10とし」「前記平坦部10とシルインナ6との間の閉断面形状に合わせて形成されて」おり、また、「前側に配置されるブレース11Aは周縁フランジ11aを前方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形してある一方、後側に配置されるブレース11は周縁フランジ11aを後方へ向けて曲折成形すると共に上縁側のフランジ端を上方へ向けて曲折成形して」いるもので、ブレース11Aの3辺に形成されるものではなく、しかも、「前記周縁フランジ11aの上縁側の端末を前記平坦部10面に重合すると共に、周縁フランジ11aの下縁側を前記平坦部10の下端の曲折縁上に重合してそれぞれスポット溶接により接合している」から、周縁フランジ11aはシルアウタ-内側面に接合されているとはいえない点。
<相違点3>
本願発明1が「部品数を増加させずに車体の剛性が向上されている」ものであるのに対し、引用発明がそのように特定されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ア 相違点2に係る本願発明1の、「ブレース部」は、「前記第1内部空間の形状と略同一の大きさに形成される」という技術事項、および、「前記ブレース部の3辺に」「シルアウタ-内側面に接合されるフランジ部を」「一体形成され」「備え」るという技術事項は、上記引用文献2には記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用しても、相違点2に係る本願発明1の構成に達し得ない。
イ 確かに、引用発明において、レインフォース7を省けば、補強のためのブレース11Aをレインフォース7の平坦面10の背面側に結合することに代えて、シルアウター内側面に結合(接合)する、また、その結合のためのフランジをブレース11Aに設けることとし、これによって、ブレース11Aが、シルアウタ6の内部形状に沿った形状、すなわち、本願発明1の「前記第1内部空間の形状と略同一の大きさに形成される」に相当する構成が一応得られるとも解される。
しかしながら、引用発明のレインフォース7は、自動車のセンターピラーとサイドシルとの結合部の強度、剛性を高めるために配置されているものであり、引用発明はこのレインフォース7の配置を前提として、さらに、ブレース11Aを設け、このブレース11Aとレインフォース7の平坦面10を接合するすることにより、ピラー車室側への倒れ変形を抑制することができる自動車のピラーとサイドシルとの接合部構造を得るものであるといえる(引用文献1の段落【0002】、【0006】)。
したがって、引用発明において、引用発明の基礎となったレインフォース7を省くということは、当業者といえど容易には想到し得ない。
よって、引用発明において、相違点2に係る本願発明1の構成となすことが当業者にとって容易であったとはいえない。
ウ 以上のとおりであるから、その余の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、および、引用文献2に記載された技術事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4は本願発明1を限定したものであるから、上記1.(2)で説示したのと同様の理由により、当業者であっても引用発明、および、引用文献2に記載された技術事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明5について
本願発明5は、本願発明1が「自動車側部構造」であるのに対し、「センターピラー」である点で異なるが、その他の点は実質的に本願発明1と同じである。
したがって、本願発明5は、相違点2に係る本願発明1と同一の構成を備えることとなるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、および、引用文献2に記載された技術事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1-5は、「ブレース部」が、「前記第1内部空間の形状と略同一の大きさに形成される」ものであり、また、「前記ブレース部の3辺に」「シルアウタ-内側面に接合されるフランジ部を」「一体形成され」「備え」るという発明特定事項を有するから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、2に基いて、容易に発明できたものとはいえない(上記「第5 1.(2)」)。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-04 
出願番号 特願2012-181956(P2012-181956)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須山 直紀  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 尾崎 和寛
一ノ瀬 覚
発明の名称 センターピラー及び車体側部構造  
復代理人 佐古 建志  
復代理人 森 和弘  
代理人 井上 茂  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ