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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1329992
審判番号 不服2016-7095  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-16 
確定日 2017-07-06 
事件の表示 特願2014-192447「携帯情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月12日出願公開、特開2015- 29323〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年4月1日に出願した特願2010-84982号の一部を平成26年9月22日に新たな特許出願としたものであって、平成27年6月25日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して同年8月26日付けで手続補正がなされたが、平成28年2月10日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、同年5月16日に拒絶査定不服審判が請求されるととともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成28年5月16日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年5月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、分割出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし8を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1ないし8に補正するものであるところ、本件補正は、請求項1に係る次の補正事項を含むものである(アンダーラインは補正箇所)。

(補正前の請求項1)
「【請求項1】
データを表示可能な内蔵表示部と、
前記内蔵表示部の表示を制御するとともに、データを取得可能な制御部と、
外部表示装置とネットワークを介して接続可能な外部表示装置接続部とを備え、
前記内蔵表示部に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記外部表示装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モードと、前記外部表示装置に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記制御部が取得したデータのうち前記外部表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モードとを切り替え可能に構成されており、
前記制御部は、少なくとも、前記外部表示装置接続部に前記外部表示装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記外部表示装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記第1モードと前記第2モードとのうち前記第2モードを選択するように構成されている、携帯情報処理装置。」
とあるのを、

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
データを表示可能な内蔵表示部と、
前記内蔵表示部の表示を制御するとともに、データを取得可能な制御部と、
外部表示装置とネットワークを介して接続可能な外部表示装置接続部とを備え、
前記内蔵表示部に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記外部表示装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モードと、前記外部表示装置に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記制御部が取得したデータのうち前記外部表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モードとのうちのいずれか一方が行われるように構成されており、
前記制御部は、少なくとも、前記外部表示装置接続部に前記外部表示装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記外部表示装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記第1モードと前記第2モードとのうち前記第2モードを選択するように構成されている、携帯情報処理装置。」
と補正する。

本件補正の請求項1に係る補正は、以下に示す補正事項を有している。
(1)補正事項1
第1モードと第2モードとを「切り替え可能」に構成されている構成を、第1モードと第2モードと「のうちのいずれか一方が行われる」ように構成する構成に補正すること。

2.補正の適合性
(1)補正の目的
補正事項1は、第1モードと第2モードに関して「切り替え可能に構成」を「いずれか一方が行われるように構成」と限定するものである。
補正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるといえるから、特許法第17条の2第5項第2号の規定に該当するものである。

(2)補正の範囲及び単一性について
補正事項1に関し、第1モードであって、同じコンテンツ再生表示を行う「ミラー表示モード」については、願書に最初に添付した明細書の段落0034,0038の記載に基づくものであり、また、第2モードであって、コンテンツリスト表示とコンテンツ再生表示を行う「拡張表示モード」については、願書に最初に添付した図7及び明細書の段落0039の記載に基づくものである。そして、段落0035には、「ミラー表示モード」と「拡張表示モード」を選択すること、すなわち、いずれか一方が行われることについて記載がある。
よって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。

また、補正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明とは発明の単一性の要件を満たすものといえ、本件補正は特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。

(3)独立特許要件
以上のように、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであるので、本件補正後の請求項1に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(3-1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、本願補正発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

(本願補正発明)
(A)データを表示可能な内蔵表示部と、
(B)前記内蔵表示部の表示を制御するとともに、データを取得可能な制御部と、
(C)外部表示装置とネットワークを介して接続可能な外部表示装置接続部とを備え、
(D)前記内蔵表示部に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記外部表示装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モードと、前記外部表示装置に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記制御部が取得したデータのうち前記外部表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モードとのうちのいずれか一方が行われるように構成されており、
(E)前記制御部は、少なくとも、前記外部表示装置接続部に前記外部表示装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記外部表示装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記第1モードと前記第2モードとのうち前記第2モードを選択するように構成されている、
(F)携帯情報処理装置。

(3-2)分割要件について
本願は、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(分割出願)であるとされているから、本願が適法に分割されたものであるのか否かを検討する。

(3-2-1)補正後の請求項1の記載について
本願の補正後の請求項1の記載は、上記「(3-1)本願補正発明」に記載したとおりのものであって、上記記載によれば、補正後の請求項1には、携帯情報処理装置が、
構成(C)のとおり、「外部表示装置とネットワークを介して接続可能な外部表示装置接続部とを備え」たものであって、
構成(D)に記載される「前記内蔵表示部に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記外部表示装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モード」と、同じく構成(D)に記載される「前記外部表示装置に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記制御部が取得したデータのうち前記外部表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モード」とのうちのいずれか一方が行われるように構成されており、
構成(E)のとおり、前記制御部は、「少なくとも、前記外部表示装置接続部に前記外部表示装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記外部表示装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記第1モードと前記第2モードとのうち前記第2モードを選択する」ように構成されていることを含むものである。

(3-2-2)原明細書等の記載について
ここで、本願の補正後の請求項1における上記構成が、原出願(特願2010-84982号)願書に添附した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、単に「原明細書等」という。)に記載されたものであるか否かについて検討する。原明細書等には、上記構成に関して以下の記載がある。なお、下線については、強調のために当審で付与したものである。

【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯情報処理装置に関し、特に、外部表示装置とネットワークを介さずに接続可能な携帯情報処理装置に関する。

【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
この発明の一の局面による携帯情報処理装置は、データを表示可能な内蔵表示部と、内蔵表示部の表示を制御するとともに、データを取得可能な制御部と、外部表示装置とネットワークを介さずに直接的に接続可能な外部表示装置接続部とを備え、内蔵表示部にデータを表示させるとともに、外部表示装置に、内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モードと、外部表示装置にデータを表示させるとともに、内蔵表示部に、外部表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モードとを切り替え可能に構成されており、制御部は、少なくとも、外部表示装置接続部に外部表示装置が接続され、かつ、所定のアプリケーションが起動していることに基づいて、第1モードと第2モードとのうち第2モードを選択するように構成されている。

【0031】
次に、DLNAによるホームネットワークにおける各々のDLNA対応機器の機能について説明する。メディア保有機器2は、ホームネットワーク内においてメディアデータの供給源としてのデジタルメディアサーバ(以下、DMSと呼ぶ)として機能する。また、テレビジョン装置3は、ホームネットワーク内において表示部としてのデジタルメディアレンダラ(以下、DMRと呼ぶ)として機能する。また、携帯情報処理装置1は、DMSからメディアデータを直接取得して内蔵表示部10に再生表示させるデジタルメディアプレーヤ(DMP)として機能するとともに、デジタルメディアサーバ(DMS)から取得したメディアデータをデジタルメディアレンダラ(DMR)に表示させるデジタルメディアコントローラ(DMC)として機能する。ここで、第1実施形態では、携帯情報処理装置1は、上記した通常のDLNA対応機器としてのDMPおよびDMCの機能に加えて、HDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置5に対しても擬似的にDMCとして機能するように構成されている。すなわち、携帯情報処理装置1は、DMSからDLNA規格に準拠して取得したメディアデータをHDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置5に再生表示させるとともに、携帯情報処理装置1の内蔵表示部10には、DMCとしての表示をさせることが可能である。
【0032】
上記のように、第1実施形態による携帯情報処理装置1は、DLNA対応機器を用いたホームネットワークシステム内において、再生表示対象のメディアデータの所在およびその再生表示先などの状況によって、DMPとしても機能し、DMCとしても機能する。なお、携帯情報処理装置1は、ホームネットワークに接続されていない場合であっても、自己が保有するメディアデータ(コンテンツ)を自己の再生表示機能によって再生表示することが可能である。

【0040】
また、携帯情報処理装置1は、図4に示すように、CPU18a、フラッシュメモリ18bおよび主メモリ18cを含んでいる。CPU18aは、フラッシュメモリ18bに記憶されているプログラムを主メモリ18cに読み出して実行することが可能である。また、フラッシュメモリ18bにはプログラムデータのみならず、内蔵表示部10において再生表示可能なメディアデータなども格納されている。第1実施形態では、CPU18aは、アクセス可能なメディアデータを随時認識し、ユーザの操作に応じてメディアデータ(コンテンツ)をリスト表示する制御を行うように構成されている。また、CPU18aは、ユーザにより選択されたコンテンツのメディアデータを取得し、そのコンテンツを内蔵表示部10に再生表示する制御を行うように構成されている。また、CPU18aは、他の表示再生機器(DLNA対応のテレビジョン装置3またはDLNA非対応のテレビジョン装置5など)にメディアデータ(コンテンツ)を送信するとともに、他の表示再生機器に対して再生表示させるように構成されている。なお、CPU18aは、本発明の「制御部」の一例であり、フラッシュメモリ18bは、本発明の「内蔵メモリ」の一例である。
【0041】
ここで、第1実施形態では、CPU18aは、HDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置5に、内蔵表示部10に表示されるデータと同じデータを表示させるミラー表示モードと、テレビジョン装置5にデータを表示させるとともに、内蔵表示部10にテレビジョン装置5に表示させるデータとは異なるデータを表示させる拡張表示モードとを切り替え可能に構成されている。詳細には、CPU18aは、後述するように、HDMI接続部15にテレビジョン装置5が接続されており、かつ、メディアプレーヤが起動していることに基づいて、ミラー表示モードと拡張表示モードとのうち拡張表示モードを選択するように構成されている。

【0044】
具体的には、携帯情報処理装置1は、図5に示すメニュー画面101において複数のアプリケーションの中からメディアプレーヤ101aが選択されると、図6に示すように、DMCとしての表示であるコンテンツリスト表示画面102を表示するように構成されている。ユーザは、コンテンツリスト表示画面102のメディアローラ102aを押下して所定の格納場所(DMS2、内蔵メモリ(フラッシュメモリ18b)、外部記憶装置、SDカード50など)に格納されているコンテンツ(メディアデータ)をリスト表示(サムネイルで一覧表示)させることが可能である。そして、携帯情報処理装置1は、内蔵表示部10にリスト表示されたコンテンツの中からユーザにより再生表示するコンテンツが選択された場合に、選択されたコンテンツを再生表示させるように構成されている。すなわち、携帯情報処理装置1は、コンテンツリスト表示画面102を介して、メディアプレーヤのコンテンツの再生指示を受け付けるように構成されている。また、携帯情報処理装置1は、後述するように、選択されたコンテンツを、状況に応じて自己の内蔵表示部10、ホームネットワークに接続されたDLNA対応のテレビジョン装置(TV装置)3または携帯情報処理装置1にHDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置(TV装置)5のいずれかに再生表示させるように構成されている。
【0045】
第1実施形態による携帯情報処理装置1を用いたホームネットワークシステムでは、この携帯情報処理装置1におけるコンテンツリスト表示画面102(図6参照)およびコンテンツの再生表示と、外部のテレビジョン装置3またはテレビジョン装置5におけるコンテンツの再生表示とを組み合わせて、複数の表示態様をとることが可能である。具体的には、図7?図9に示すように、携帯情報処理装置1は、ホームネットワークに接続されたDLNA対応のテレビジョン装置3をDMRとして用いる第1表示態様(図7に示す本来のDLNA機能による表示態様)と、携帯情報処理装置1にHDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置5を擬似DMRとして用いる第2表示態様(図8に示す擬似DLNA機能による表示態様)と、携帯情報処理装置1において自己の再生表示機能によって再生表示する図9に示す第3表示態様とを主にとることが可能である。なお、これら第1?第3表示態様については、以下のコンテンツ再生処理の説明において詳細に説明する。

【0047】
図5に示すメニュー画面101においてユーザによりメディアプレーヤ101aが選択される(メディアプレーヤが起動される)と、図10に示すコンテンツ再生処理が実行される。まず、CPU18aは、図10のステップS1において、HDMI接続部15にDLNAに非対応のテレビジョン装置5が接続されているか否かを判断する。テレビジョン装置(TV装置)5が接続されている場合には、CPU18aは、ステップS2において、図11に示すように、ミラー表示モードにより内蔵表示部10およびHDMI接続されたテレビジョン装置5の両方にコンテンツリスト表示画面102をミラー表示させる。そして、ステップS3において、CPU18aは、ユーザによるコンテンツの再生指示を受け付ける。ユーザは、タッチパネル式の内蔵表示部10に表示されたコンテンツリスト表示画面102を介して、上記した第1?第3表示態様(図7?図9参照)のいずれかの再生指示を行うことが可能である。
【0048】
具体的には、ユーザは、図12に示すように、メディアローラ102aを押下して所望の格納場所(DMS2、内蔵メモリ(フラッシュメモリ18b)、外部記憶装置、SDカード50など)のコンテンツをリスト表示させた後、Playtoボタン102bを押下して出力先(DMRアイコン102cおよびHDMIアイコン102d)を表示させる。そして、ユーザは、リスト表示された複数のコンテンツの中から所望のコンテンツ(携帯情報処理装置1のフラッシュメモリ18b、SDカード50またはDMS2に格納されているコンテンツ)を選択してDMRアイコン102c上にドロップすることによって、ホームネットワークに接続されたDLNA対応のテレビジョン装置3をDMRとして用いる第1表示態様(図7参照)を得ることが可能となる。また、ユーザは、リスト表示された複数のコンテンツの中から所望のコンテンツ(携帯情報処理装置1のフラッシュメモリ18b、SDカード50またはDMS2に格納されているコンテンツ)を選択してHDMIアイコン102d上にドロップすることによって、携帯情報処理装置1にHDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置5を擬似DMRとして用いる第2表示態様(図8参照)を得ることが可能である。また、ユーザは、リスト表示された複数のコンテンツの中から所望のコンテンツ(携帯情報処理装置1のフラッシュメモリ18b、SDカード50またはDMS2に格納されているコンテンツ)を選択してダブルタップ(ダブルクリック)することによって、携帯情報処理装置1において自己の再生表示機能によって再生表示する第3表示態様(図9参照)を得ることが可能である。
【0049】
CPU18aは、ステップS3で再生指示を受け付けると、ステップS4において、再生指示の内容がPlay to HDMI(HDMI接続されたテレビジョン装置5を擬似DMRとして用いる第2表示態様)であるか否かを判断する。指示内容がPlay to HDMIの場合には、CPU18aは、ステップS5において、拡張表示モードを選択する。すなわち、CPU18aは、ユーザが所望のコンテンツを選択してHDMIアイコン102d上にドロップしたことに応答して拡張表示モードを選択する。この際、CPU18aは、図13に示すように、拡張表示モードにより、内蔵表示部10にDMCの表示としてのコンテンツリスト表示画面102を表示させた状態で、HDMI接続されたテレビジョン装置5に選択されたコンテンツを再生表示させる。つまり、ユーザが選択したコンテンツがテレビジョン装置5に再生表示されながら、携帯情報処理装置1には擬似的なDMCとしての表示が行われる。これにより、Play to HDMIの指示と後述するPlay to DMRの指示とで、ユーザの使用感(ユーザの携帯情報処理装置1における操作内容およびその操作による再生表示などの操作結果)は同一となり、この点が第1実施形態の携帯情報処理装置1を用いる場合のユーザにとっての特徴的な利点となる。

【0051】
また、指示内容がPlay to HDMIでない場合には、CPU18aは、ステップS6において、指示内容がPlay to DMR(ホームネットワークに接続されたDLNA対応のテレビジョン装置3をDMRとして用いる第1表示態様)であるか否かを判断する。指示内容がPlay to DMRであれば、CPU18aは、ステップS7において、ミラー表示モードを選択する。詳細には、CPU18aは、図11に示すように、ミラー表示モードにより、内蔵表示部10およびHDMI接続されたテレビジョン装置5の両方にDMCの表示としてのコンテンツリスト表示画面102を表示させた状態で、ホームネットワークに接続されたDLNA対応のテレビジョン装置(DMR)3にユーザにより選択されたコンテンツを再生表示させる。すなわち、図7に示すように、携帯情報処理装置1およびDLNA対応のテレビジョン装置3がそれぞれDMC(デジタルメディアコントローラ)およびDMRとなり、ホームネットワークに接続されたDMR(第1実施形態では、DLNA対応のテレビジョン装置3)にメディアデータが再生表示される。そして、HDMI接続されたテレビジョン装置5には、DMCとしての携帯情報処理装置1の内蔵表示部10と同様に、コンテンツリスト表示画面102が表示される。

【0056】
CPU18aは、ステップS12において、指示内容がPlay to DMR(ホームネットワークに接続されたDLNA対応のテレビジョン装置3をDMRとして用いる第1表示態様)であるか否かを判断する。指示内容がPlay to DMRであれば、CPU18aは、ステップS13において、内蔵表示部10にコンテンツリスト表示画面102を表示させた状態で、ホームネットワークに接続されたDLNA対応のテレビジョン装置3にユーザにより選択されたコンテンツを再生表示させる。

【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、ホームネットワークを介してデジタルメディアサーバとして機能するメディア保有機器2とDLNA規格に準拠した通信が可能な無線LAN接続部12を設け、CPU18aを、HDMI接続部15にテレビジョン装置5が接続され、かつ、メディアプレーヤが起動されているとともに、テレビジョン装置5を出力先としてデジタルメディアサーバのメディアデータ(コンテンツ)の再生操作が行われたことに基づいて、拡張表示モードを選択するように構成することによって、DLNA対応のネットワーク内のデジタルメディアサーバに格納されたコンテンツを、ネットワークを介さずに直接的に接続されたテレビジョン装置5に表示させるとともに、コンテンツリスト表示画面102を内蔵表示部10に表示させる拡張表示モードによる表示を行うことができる。

(3-2-3)判断
(i)原明細書等では、「技術分野」に係る段落0001や、「課題を解決するための手段および発明の効果」に係る段落0010に記載されるように、「外部表示装置とネットワークを介さずに直接的に接続可能な携帯情報処理装置」についての技術的事項を主に開示している。
ここで、段落0010における、「外部表示装置」、「外部表示装置とネットワークを介さずに直接的に接続可能な部表示装置接続部」は、段落0041等に記載される実施形態中の、「DLNA非対応のテレビジョン装置5」、「HDMI接続部15」に対応している。
また、同じく段落0010における、「前記内蔵表示部に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記外部表示装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モード」は、段落0041、0047等に記載される実施形態における、携帯情報処理装置の内蔵表示部とDLNA非対応のテレビジョン装置5とに同じコンテンツリスト画面を表示させる「ミラー表示モード」に対応している。
また、同じく段落0010における、携帯情報処理装置の「前記外部表示装置に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記制御部が取得したデータのうち前記外部表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モード」は、段落0041、0049等に記載される実施形態における、携帯情報処理装置の内蔵表示部において複数のコンテンツをリスト表示させた状態で、DLNA非対応のテレビジョン装置5にユーザにより選択されたコンテンツの再生表示をさせる「拡張表示モード」に対応している。
そして、段落0010に記載されるように、制御部は、「少なくとも、外部表示装置接続部に外部表示装置が接続され、かつ、所定のアプリケーションが起動していることに基づいて、第1モードと第2モードとのうち第2モードを選択」するように構成されている。

(ii)これに対し、本願の補正後の請求項1の記載では、構成(C)において、「外部表示装置とネットワークを介して接続可能な外部表示装置接続部とを備え」としている。
そのため、「外部表示装置とネットワークを介して接続可能な外部表示装置接続部」は、原明細書の段落0072の「ホームネットワークを介してデジタルメディアサーバとして機能するメディア保有機器2とDLNA規格に準拠した通信が可能な無線LAN接続部12」との記載から「無線LAN接続部12」が対応し、これにより「外部表示装置」は、原明細書の段落0031等に記載されるDLNA規格に準拠した表示装置である、「DLNA対応のテレビジョン装置3」が対応するものと認められる。
してみれば、構成(D)の「前記内蔵表示部に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記外部表示装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モード」は、原明細書の段落0040、0044等の記載により、携帯情報処理装置の内蔵表示部においてコンテンツを再生表示させ、DLNA対応のテレビジョン3に同じコンテンツの再生表示をさせる表示形態のみが対応するものと認められる。
また、「前記外部表示装置に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記制御部が取得したデータのうち前記外部表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モード」は、原明細書の段落0031、0032、0045、0048、0051、0056等の記載により、携帯情報処理装置の内蔵表示部において複数のコンテンツをリスト表示させ、DLNA対応のテレビジョン装置3にユーザにより選択されたコンテンツの再生表示をさせる表示形態のみが対応するものと認められる。

(iii)しかしながら、上記(ii)のとおり、本願の補正後の請求項1の記載と、原明細書等の記載を対応付けると、構成(E)の構成が矛盾した構成となってしまう。
上述のとおり、第1のモードは、携帯情報処理装置の内蔵表示部においてコンテンツを再生表示させ、DLNA対応のテレビジョン3に同じコンテンツの再生表示をさせる表示形態であり、第2のモードは、携帯情報処理装置の内蔵表示部において複数のコンテンツをリスト表示させ、DLNA対応のテレビジョン装置3にユーザにより選択されたコンテンツの再生表示をさせる表示形態である。したがって、第1のモード、第2のモードに拘わらず、外部表示装置であるDLNA対応のテレビジョン3は、再生動作を行っている。
そこで、構成(E)をみるに、「少なくとも、前記外部表示装置接続部に前記外部表示装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記外部表示装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記第1モードと前記第2モードとのうち前記第2モードを選択する」ようにする構成であるとされているので、構成(E)による制御部の選択によって、再生動作を行う第1のモード、第2のモードは、必ず第2モードが選択されることになってしまう。
すなわち、第2のモードのみが選択され、第1のモードは必然的に選択されない表示制御が行われることになるので、第1のモードが存在する技術的意味が不明となってしまう。

(iv)上記のとおりであるから、上記(i)、(ii)における第1のモード、第2のモードの対応関係によれば、ネットワークを介さずに直接的に接続可能な外部表示装置(DLNA非対応のテレビジョン装置5)に対して行う表示処理を、単にネットワークを介して接続可能な外部表示装置(DLNA対応のテレビジョン装置3)に対して行うようにすることが、原明細書等に開示されているとは言えず、また、ネットワークを介して接続可能な外部表示装置(DLNA対応のテレビジョン装置3)の場合における上記(ii)における第1のモード、第2のモードの表示形態の場合には、本願の補正後の請求項1の記載に矛盾を生じる構成となることから、本願の補正後の請求項1に係る技術的事項が原明細書等に開示されていると言うこともできない。
したがって、原明細書等には本願の補正後の請求項1に係る発明、すなわち、本願補正発明は記載されていない。すなわち、本願補正発明は、原明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本願は特許法第44条第1項により適法に分割出願されたものでない。

(3-2-4)まとめ
以上のとおり、本願は適法に分割されたものでないから、特許法第44条第2項本文の適用はなく、本願の出願日は、本願の現実の出願日である平成26年9月22日となる。

(3-3)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2011-217236号公報には、「携帯情報処理装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。なお、上記(3-2)において摘記した記載箇所についても再掲した。

【0001】この発明は、携帯情報処理装置に関し、特に、外部表示装置とネットワークを介さずに接続可能な携帯情報処理装置に関する。

【0028】図1に示すように、このホームネットワークシステムでは、本発明の第1実施形態による携帯情報処理装置1を含む様々な機器同士が、有線LAN、無線LANまたはそれらの組み合わせからなるホームネットワークで相互接続されている。これらの機器はDLNA(Digital Living Network Alliance)に対応している。なお、DLNAは、ネットワーク接続された対応機器間でメディアデータを共有することが可能なネットワーク規格であり、これらの対応機器同士でDLNA規格に準拠した通信を相互に行うことが可能である。

【0029】第1実施形態では、ホームネットワークシステムを構成するDLNA対応機器として、携帯情報処理装置1、メディアデータを保有するメディア保有機器2、映像や画像などのコンテンツに関するメディアデータを再生表示することが可能なテレビジョン装置(TV装置)3およびインターネットに接続するためのルータ4が含まれる。また、携帯情報処理装置1には、DLNA非対応のテレビジョン装置(TV装置)5がHDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブル100により直接的に接続されている。なお、HDMIは、音声データ、映像データおよび制御信号を伝送可能な所定のケーブル(HDMIケーブル)で2つの機器間を接続して機器間の連携動作を行うことが可能なインターフェース規格である。また、メディア保有機器2としては、パーソナルコンピュータ、ハードディスクレコーダ、デジタルカメラなどの映像や画像などのコンテンツに関するメディアデータを保有する機器が含まれる。また、このホームネットワークシステムは、ルータ4を介してインターネットに接続することにより、インターネット上のコンテンツ(メディアデータ)を取得することが可能である。なお、メディア保有機器2は、本発明の「デジタルメディアサーバ」および「DLNA対応機器」の一例であり、テレビジョン装置5は、本発明の「外部表示装置」の一例である。

【0030】また、携帯情報処理装置1は、携帯情報処理装置1にHDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置5に対して、DLNA対応機器であるメディア保有機器2からホームネットワークを介してDLNA規格に準拠した通信により取得したメディアデータを再生表示させることが可能なように構成されている。この場合、携帯情報処理装置1は、テレビジョン装置5と同一のメディアデータを内蔵表示部10に表示させること(ミラー表示)が可能であるとともに、内蔵表示部10に後述するデジタルメディアコントローラとしての表示を行うことも可能なように構成されている。さらに、携帯情報処理装置1は、後述する内蔵メモリ(フラッシュメモリ18b)やSDカード接続部14に接続されたSDカード50からメディアデータを取得してDLNA非対応のテレビジョン装置5にメディアデータを再生表示させることが可能に構成されている。また、携帯情報処理装置1は、通常のDLNA対応機器と同様、メディア保有機器2のメディアデータをテレビジョン装置3に再生表示させることも可能であり、この場合、内蔵表示部10には、デジタルメディアコントローラとしての表示が行われるように構成されている。

【0035】次に、第1実施形態による携帯情報処理装置1の構造について説明する。図2?図4に示すように、第1実施形態による携帯情報処理装置1は、情報を表示する内蔵表示部10を含んでいる。内蔵表示部10は、図4に示すように、タッチパネル機能を有しており、ユーザが内蔵表示部10に表示された画面上の操作ボタンを押下することにより、アプリケーションに従った操作が可能なように構成されている。特に、第1実施形態では、ユーザの操作によって内蔵表示部10に携帯情報処理装置1がアクセス可能なメディアデータ(コンテンツ)の全てまたは一部がリスト表示されるとともに、そのリストの中からユーザが再生表示したいコンテンツを選択することが可能に構成されている。また、再生表示先が複数ある場合(たとえば、携帯情報処理装置1の内蔵表示部10、DMRとしてのテレビジョン装置3およびHDMI接続されたテレビジョン装置5など)には、携帯情報処理装置1におけるタッチパネルの操作によって、ユーザはコンテンツの再生表示先(上記の例では、内蔵表示部10、DMRとしてのテレビジョン装置3またはHDMI接続されたテレビジョン装置5)を選択することも可能である。

【0038】HDMI接続部15は、テレビジョン装置5とホームネットワークを介さずに直接的に接続可能に構成されている。また、HDMI接続部15は、HDMIケーブル100(図1参照)を介してDLNAに非対応のテレビジョン装置5に対して映像および音声データを送信可能に構成されている。なお、HDMI接続部15は、本発明の「外部表示装置接続部」の一例である。

【0040】また、携帯情報処理装置1は、図4に示すように、CPU18a、フラッシュメモリ18bおよび主メモリ18cを含んでいる。CPU18aは、フラッシュメモリ18bに記憶されているプログラムを主メモリ18cに読み出して実行することが可能である。また、フラッシュメモリ18bにはプログラムデータのみならず、内蔵表示部10において再生表示可能なメディアデータなども格納されている。第1実施形態では、CPU18aは、アクセス可能なメディアデータを随時認識し、ユーザの操作に応じてメディアデータ(コンテンツ)をリスト表示する制御を行うように構成されている。また、CPU18aは、ユーザにより選択されたコンテンツのメディアデータを取得し、そのコンテンツを内蔵表示部10に再生表示する制御を行うように構成されている。また、CPU18aは、他の表示再生機器(DLNA対応のテレビジョン装置3またはDLNA非対応のテレビジョン装置5など)にメディアデータ(コンテンツ)を送信するとともに、他の表示再生機器に対して再生表示させるように構成されている。なお、CPU18aは、本発明の「制御部」の一例であり、フラッシュメモリ18bは、本発明の「内蔵メモリ」の一例である。

【0041】ここで、第1実施形態では、CPU18aは、HDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置5に、内蔵表示部10に表示されるデータと同じデータを表示させるミラー表示モードと、テレビジョン装置5にデータを表示させるとともに、内蔵表示部10にテレビジョン装置5に表示させるデータとは異なるデータを表示させる拡張表示モードとを切り替え可能に構成されている。詳細には、CPU18aは、後述するように、HDMI接続部15にテレビジョン装置5が接続されており、かつ、メディアプレーヤが起動していることに基づいて、ミラー表示モードと拡張表示モードとのうち拡張表示モードを選択するように構成されている。

【0047】図5に示すメニュー画面101においてユーザによりメディアプレーヤ101aが選択される(メディアプレーヤが起動される)と、図10に示すコンテンツ再生処理が実行される。まず、CPU18aは、図10のステップS1において、HDMI接続部15にDLNAに非対応のテレビジョン装置5が接続されているか否かを判断する。テレビジョン装置(TV装置)5が接続されている場合には、CPU18aは、ステップS2において、図11に示すように、ミラー表示モードにより内蔵表示部10およびHDMI接続されたテレビジョン装置5の両方にコンテンツリスト表示画面102をミラー表示させる。そして、ステップS3において、CPU18aは、ユーザによるコンテンツの再生指示を受け付ける。ユーザは、タッチパネル式の内蔵表示部10に表示されたコンテンツリスト表示画面102を介して、上記した第1?第3表示態様(図7?図9参照)のいずれかの再生指示を行うことが可能である。

【0048】具体的には、ユーザは、図12に示すように、メディアローラ102aを押下して所望の格納場所(DMS2、内蔵メモリ(フラッシュメモリ18b)、外部記憶装置、SDカード50など)のコンテンツをリスト表示させた後、Playtoボタン102bを押下して出力先(DMRアイコン102cおよびHDMIアイコン102d)を表示させる。そして、ユーザは、リスト表示された複数のコンテンツの中から所望のコンテンツ(携帯情報処理装置1のフラッシュメモリ18b、SDカード50またはDMS2に格納されているコンテンツ)を選択してDMRアイコン102c上にドロップすることによって、ホームネットワークに接続されたDLNA対応のテレビジョン装置3をDMRとして用いる第1表示態様(図7参照)を得ることが可能となる。また、ユーザは、リスト表示された複数のコンテンツの中から所望のコンテンツ(携帯情報処理装置1のフラッシュメモリ18b、SDカード50またはDMS2に格納されているコンテンツ)を選択してHDMIアイコン102d上にドロップすることによって、携帯情報処理装置1にHDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置5を擬似DMRとして用いる第2表示態様(図8参照)を得ることが可能である。また、ユーザは、リスト表示された複数のコンテンツの中から所望のコンテンツ(携帯情報処理装置1のフラッシュメモリ18b、SDカード50またはDMS2に格納されているコンテンツ)を選択してダブルタップ(ダブルクリック)することによって、携帯情報処理装置1において自己の再生表示機能によって再生表示する第3表示態様(図9参照)を得ることが可能である。

【0049】CPU18aは、ステップS3で再生指示を受け付けると、ステップS4において、再生指示の内容がPlay to HDMI(HDMI接続されたテレビジョン装置5を擬似DMRとして用いる第2表示態様)であるか否かを判断する。指示内容がPlay to HDMIの場合には、CPU18aは、ステップS5において、拡張表示モードを選択する。すなわち、CPU18aは、ユーザが所望のコンテンツを選択してHDMIアイコン102d上にドロップしたことに応答して拡張表示モードを選択する。この際、CPU18aは、図13に示すように、拡張表示モードにより、内蔵表示部10にDMCの表示としてのコンテンツリスト表示画面102を表示させた状態で、HDMI接続されたテレビジョン装置5に選択されたコンテンツを再生表示させる。つまり、ユーザが選択したコンテンツがテレビジョン装置5に再生表示されながら、携帯情報処理装置1には擬似的なDMCとしての表示が行われる。これにより、Play to HDMIの指示と後述するPlay to DMRの指示とで、ユーザの使用感(ユーザの携帯情報処理装置1における操作内容およびその操作による再生表示などの操作結果)は同一となり、この点が第1実施形態の携帯情報処理装置1を用いる場合のユーザにとっての特徴的な利点となる。

(3-4)引用発明
上記記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して引用文献1に記載された発明を以下に認定する。

a.引用文献1の段落0035の記載によれば、携帯情報処理装置は、情報を表示する内蔵表示部を含んでいるから、引用文献1には、『情報を表示可能な内蔵表示部』を備えた携帯情報処理装置が記載されている。

b.引用文献1の段落0040の記載によれば、CPUは、コンテンツのメディアデータを取得し、そのコンテンツを内蔵表示部に再生表示する制御を行っているから、引用文献1には、『内蔵表示部の表示を制御するとともに、メディアデータを取得可能なCPU』を備えた携帯情報処理装置が記載されている。

c.引用文献1の段落0038の記載によれば、HDMI接続部は、DLNA非対応のテレビジョン装置とホームネットワークを介さずに直接的に接続可能とするものであるから、引用文献1には、『DLNA非対応テレビジョン装置とホームネットワークを介さずに接続可能なHDMI接続部』を備えた携帯情報処理装置が記載されている。

d.引用文献1の段落0040,0041の記載によれば、CPUは、コンテンツのメディアデータを取得し、そのコンテンツを内蔵表示部に再生表示し、DLNA非対応のテレビジョン装置に、内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させるミラー表示モードと、DLNA非対応のテレビジョン装置にデータを表示させるとともに、内蔵表示部にDLNA非対応のテレビジョン装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる拡張表示モードとを切り替え可能、すなわち、ミラー表示モードと拡大表示モードとのうちのいずれか一方が行われるようにしている。
したがって、引用文献1には、『前記内蔵表示部に前記CPUが取得したメディアデータを表示させるとともに、前記DLNA非対応テレビジョン装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させるミラー表示モードと、前記DLNA非対応テレビジョン装置に前記CPUが取得したメディアデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記CPUが取得したメディアデータのうち前記DLNA非対応テレビジョン装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる拡大表示モードとのうちのいずれか一方が行われるように構成されて』いることが記載されている。

e.引用文献1の段落0047,0048,0049の記載によれば、CPUは、メディアプレーヤが起動されると、HDMI接続部にDLNA非対応のテレビジョン装置が接続されている場合には、ミラー表示モードにより内蔵表示部およびHDMI接続されたDLNA非対応のテレビジョン装置の両方にコンテンツリスト表示画面をミラー表示させるようにしている。そして、タッチパネル式の内蔵表示部に表示されたコンテンツリスト表示画面を介して、出力先が表示され、再生指示の内容がPlay to HDMIの場合には、拡張表示モードを選択している。
したがって、引用文献1には、『CPUは、少なくとも、前記HDMI接続部に前記DLNA非対応テレビジョン装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記DLNA非対応テレビジョン装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記ミラー表示モードと前記拡張表示モードとのうち前記拡張表示モードを選択するように構成されている』ことが記載されている。

f.以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、引用発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(a)、構成(b)などと称する。

(引用発明)
(a)情報を表示可能な内蔵表示部と、
(b)前記内蔵表示部の表示を制御するとともに、メディアデータを取得可能なCPUと、
(c)DLNA非対応テレビジョン装置とホームネットワークを介さずに接続可能なHDMI接続部とを備え、
(d)前記内蔵表示部に前記CPUが取得したメディアデータを表示させるとともに、前記DLNA非対応テレビジョン装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させるミラー表示モードと、前記DLNA非対応テレビジョン装置に前記CPUが取得したメディアデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記CPUが取得したメディアデータのうち前記DLNA非対応テレビジョン装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる拡大表示モードとのうちのいずれか一方が行われるように構成されており、
(e)前記CPUは、少なくとも、前記HDMI接続部に前記DLNA非対応テレビジョン装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記DLNA非対応テレビジョン装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記ミラー表示モードと前記拡張表示モードとのうち前記拡張表示モードを選択するように構成されている、
(f)携帯情報処理装置。

(3-5)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

a.本願補正発明の構成(A)と引用発明の構成(a)との対比
引用発明の「情報」は、明らかに本願補正発明の「データ」に相当する。
したがって、引用発明の構成(a)は、本願補正発明の構成(A)と一致する。

b.本願補正発明の構成(B)と引用発明の構成(b)との対比
引用発明の「メディアデータ」は、本願補正発明の「データ」に含まれる。
引用発明の「CPU」は、内蔵表示部の表示を制御するとともに、メディアデータを取得可能とするものあるから、本願補正発明の「制御部」に相当する。
したがって、引用発明の構成(b)は、本願補正発明の構成(B)と一致する。

c.本願補正発明の構成(C)と引用発明の構成(c)との対比
引用発明の「DLNA非対応テレビジョン装置」、「HDMI接続部」は、本願補正発明の「外部表示装置」、「外部表示装置接続部」と「表示装置」、「表示装置接続部」である点で共通しているから、引用発明の構成(c)と本願補正発明の構成(C)とは、『表示装置と接続可能な表示装置接続部』という点で共通する。
ただし、「表示装置」、「表示装置接続部」に関し、本願補正発明では「外部表示装置」、「外部表示装置接続部」であるのに対し、引用発明では、「DLNA非対応テレビジョン装置」、「HDMI接続部」である点で両発明は相違する。また、「接続可能」に関し、本願補正発明では「ネットワークを介して」であるのに対し、引用発明は「ホームネットワークを介さずに」としている点で、両発明は相違している。

d.本願補正発明の構成(D)と引用発明の構成(d)との対比
引用発明の「ミラー表示モード」と「拡張表示モード」は、本願補正発明の「第1モード」と「第2モード」に相当し、両発明は、「第1モードと第2モードとのうちのいずれか一方が行われるように構成されて」いる点で共通している。
したがって、引用発明の構成(d)と本願補正発明の構成(D)とは、『前記内蔵表示部に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記表示装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モードと、前記表示装置に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記制御部が取得したデータのうち前記表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モードとのうちのいずれか一方が行われるように構成されており、』である点で共通する。
ただし、上記c.における相違点に起因して、本願補正発明では「表示装置」が「外部表示装置」であるのに対し、引用発明では、「表示装置」が「DLNA非対応テレビジョン装置」である点で両発明は相違している。

e.本願補正発明の構成(E)と引用発明の構成(e)との対比
上記d.と同様に、引用発明の「ミラー表示モード」と「拡張表示モード」は、本願補正発明の「第1モード」と「第2モード」に相当し、両者は、「第1モードと第2モードを選択するように構成されて」いる点で共通している。
したがって、引用発明の構成(e)と本願補正発明の構成(E)とは、『前記制御部は、少なくとも、前記表示装置接続部に前記表示装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記表示装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記第1モードと前記第2モードとのうち前記第2モードを選択するように構成されている、』である点で共通する。
ただし、上記c.における相違点に起因して、本願補正発明では「表示装置」、「表示装置接続部」がそれぞれ「外部表示装置」、「外部表示装置接続部」であるのに対し、引用発明では、「表示装置」、「表示装置接続部」がそれぞれ「DLNA非対応テレビジョン装置」、「HDMI接続部」である点で両発明は相違している。

f.本願補正発明の構成(F)と引用発明の構成(f)との対比
引用発明の「携帯情報処理装置」は、本願補正発明の「携帯情報処理装置」に一致する。

g.まとめ
上記aないしfの対比結果をまとめると、本願補正発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
データを表示可能な内蔵表示部と、
前記内蔵表示部の表示を制御するとともに、データを取得可能な制御部と、
表示装置と接続可能な表示装置接続部とを備え、
前記内蔵表示部に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記表示装置に、前記内蔵表示部に表示されるデータと同じデータを表示させる第1モードと、前記表示装置に前記制御部が取得したデータを表示させるとともに、前記内蔵表示部に、前記制御部が取得したデータのうち前記表示装置に表示させるデータとは異なるデータを表示させる第2モードとのうちのいずれか一方が行われるように構成されており、
前記制御部は、少なくとも、前記表示装置接続部に前記表示装置が接続され、かつ、コンテンツ再生アプリケーションが起動されているとともに、前記表示装置を出力先としての再生動作が行われていることに基づいて、前記第1モードと前記第2モードとのうち前記第2モードを選択するように構成されている、携帯情報処理装置。

[相違点1]
「表示装置」に関し、本願補正発明では「外部表示装置」であるのに対し、引用発明では、「DLNA非対応テレビジョン装置」である点。
[相違点2]
「表示装置接続部」に関し、本願補正発明では「外部表示装置接続部」であるのに対し、引用発明では、「HDMI接続部」である点。
[相違点3]
「接続可能」に関し、本願補正発明では「ネットワークを介して接続可能」であるのに対し、引用発明では、「ホームネットワークを介さずに接続可能」である点。

(3-6)相違点の判断
まず、引用発明の「ホームネットワーク」は、ネットワークの一形態であり、本願補正発明の「ネットワーク」に含まれるものである。
そこで、上記相違点1?3は、本願補正発明が、「外部表示装置接続部」に「ネットワークを介して接続可能な」「外部表示装置」に対する表示処理であるのに対し、引用発明が「HDMI接続部」に「ネットワークを介さずに接続可能な」「DLNA非対応テレビジョン装置」に対する表示処理である点に起因する相違点であると整理できるので、以下検討する。

原査定の理由に引用された引用文献2である特開2009-123032号公報には、「携帯端末、および携帯端末の制御方法」(発明の名称)に関して記載があり、特に、段落0009,0015-0018,図1,図2,図4によると、赤外線通信、Wi-Fi通信、ブルートゥース(登録商標)通信などの近距離無線通信、あるいは携帯電話網などを利用して携帯端末と外部機器とを接続し、携帯端末の表示に関連するデータを外部機器に表示する表示処理技術が記載されている。
また、同じく査定の理由に引用された引用文献3である国際公開第2008/117586号は、「コンテンツ再生システム、コンテンツ再生・制御装置およびコンピュータプログラム」(発明の名称)に関して記載があり、特に、段落0023,図1によると、有線、無線を問わず通信ネットワークを介して、コンテンツ再生・制御装置としての携帯端末であるDMP/DMC(デュアル端末)とコンテンツ再生装置としてのDMRとを接続し、携帯端末の表示に関連するデータをコンテンツ再生装置に表示する表示処理技術が記載されている。
このように、引用文献2及び引用文献3には、種々のネットワークを介して、携帯端末と携帯端末に対して外部にある表示装置とを接続可能とし、携帯端末の表示に関連するデータを外部表示機器に表示する表示処理技術が記載されている。ここで、携帯端末に、対応するネットワークに応じた接続部、すなわち外部表示装置接続部を備えるようにすることは自明の構成である。
当業者であれば、引用文献2及び引用文献3に記載の上記技術を、引用発明に適用して、「DLNA非対応テレビジョン装置」に対して行う「ミラー表示モード」、「拡張表示モード」の各表示を、携帯端末に対しネットワークを介して接続可能な外部にある「DLNA対応テレビジョン装置」に対して行うようにすることを容易に想到するものである。
そして、そのように為せば、引用発明の「DLNA非対応テレビジョン装置」、「HDMI接続部」は、本願補正発明の「外部表示装置」、「外部表示装置接続部」となり、引用発明の「ホームネットワークを介さずに接続可能」は、本願補正発明の「ネットワークを介して接続可能」となるものである。

(3-7)効果等について
本願補正発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。

(3-8)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成28年5月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求に係る発明は、分割出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1の(補正前の請求項1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。

2.分割要件
本願は、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(分割出願)であるとされているから、本願が適法に分割されたものであるのか否かを検討する。
本願発明は、上記第2の1.及び2.の(1)で摘示した本願補正発明の限定事項(補正事項1)で限定しないものであるから、上記、第2の2.の(3-2)における判断と同様の理由により、原明細書等には本願発明は記載されていないと判断される。すなわち、本願発明は、原明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本願は特許法第44条第1項により適法に分割出願されたものでないため、特許法第44条第2項本文の適用はなく、本願の出願日は、本願の現実の出願日である平成26年9月22日となる。

3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、並びに、その記載事項は、上記第2の2.の(3-3)に記載したとおりであり、引用文献1に記載された発明は、上記第2の2.の(3-4)の(引用発明)にて認定したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、上記第2の1.及び2.の(1)で摘示した本願補正発明の限定事項(補正事項1)で限定しないものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、上記第2の2.の(3-5)に摘示した[相違点1]?[相違点3]が存在することとなり、[相違点1]?[相違点3]に対する当審の判断は、上記第2の2.の(3-6)に記載したとおりであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載される技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2,3に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-08 
結審通知日 2017-05-09 
審決日 2017-05-22 
出願番号 特願2014-192447(P2014-192447)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鍬 利孝福西 章人  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 冨田 高史
藤井 浩
発明の名称 携帯情報処理装置  
代理人 宮園 博一  

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