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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1330031
審判番号 不服2015-20060  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-09 
確定日 2017-07-05 
事件の表示 特願2012-127958「2軸延伸微細多孔質膜」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-188675〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成19年2月14日を国際出願日とする出願である特願2008-556497号(パリ条約による優先権主張 2006年2月21日、2007年2月13日 共に米国)の一部を平成24年6月5日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月1日付けで拒絶理由が通知され、平成26年5月9日に意見書、同年7月11日に上申書が提出され、同年12月11日付けで再度拒絶理由が通知され、平成27年6月12日に意見書、手続補正書が提出され、同年6月30日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年11月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、同年12月3日付けで前置報告がされたものである。


第2 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年11月9日に補正された特許請求の範囲及び願書に最初に添付した明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「ほぼ丸い形状の孔を有し、横方向の引張り強度に対する縦方向の引張り強度の比が0.5?5.0の範囲である乾燥-延伸微細多孔質ポリマー膜から構成される膜。」


第3 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の理由とされた、平成26年12月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由Aの概要は以下のとおりである。

「A この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



・請求項 1

・引用文献等 1.特表2001-523548号公報」


第4 当審の判断
1.引用文献の記載事項
特表2001-523548号公報(以下、「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。

(1)特許請求の範囲
「【請求項1】 真空状態でポリマーフィルムにエネルギーを有するイオン粒子を照射する微細気孔膜の製造方法。
・・・(中略)・・・
【請求項21】 前記ポリマーフィルムはポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、低密度線形ポリエチレンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンである請求項18記載の微細気孔膜の製造方法。
【請求項22】 真空状態でエネルギーを有するイオン粒子をポリマーフィルムに照射して製造した球形状または楕円形状の気孔を有する微細気孔膜。
・・・(後略)・・・」

(2)【0022】
「前述のような本発明の方法で製造された球形状また楕円形状を有し0.005?10μmの気孔大きさを有する微細気孔膜はリチウムイオン電池用隔離膜として有用である。また、本発明の方法で製造された第1微細気孔膜と照射工程を実施せずに従来の方法で製造された第2微細気孔膜とを積層して製造された積層膜もリチウム電池用隔離膜として有用である。」

(3)【0032】
「実施例8:イオンビーム照射および低温/高温(二軸延伸)を用いて製造されたポリエチレン微細気孔膜
実施例4と同様の方法で得られた高密度ポリエチレン原板フィルムをアニーリングした。アニーリングしたのち、実施例4に記述された同一の条件下および方法で照射して前記原板フィルムの表面に微細気孔を形成した。ついで、前記原板フィルムを実施例4に記述されたものと同一に低温延伸し、二軸延伸機を使用して(株式会社東洋精機製作所、日本)二軸高温延伸した。このとき、各延伸回転(stretch rotation)XおよびYは100%の延伸倍率でそれぞれ調整した。115℃で延伸されたフィルムを2分間熱固定してポリエチレン微細気孔膜を製造した。」

(4)【0044】、【表2】




2.引用発明
引用文献1には、上記の特に1.(3)及び(4)の記載から、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「0.12μm×0.10μmのサイズの気孔を有し、引張強度が縦方向(MD)1900kg/cm^(2)、横方向(TD)1300kg/cm^(2)であるポリエチレン微細気孔膜。」

3.本願発明と引用発明1との対比、判断
(1)対比
引用発明1の気孔は、上記の1.(2)によれば、「球形状また楕円形状」であり、その二方向の長さ(0.12μm、0.10μm)の比率からして、「ほぼ丸い形状」であるといえる。また、引用発明1の「横方向の引張り強度に対する縦方向の引張り強度の比」は1.46(1900/1300)であるので、本願発明の「横方向の引張り強度に対する縦方向の引張り強度の比」の範囲内である。そして、引用発明1の「ポリエチレン微細気孔膜」は、本願発明の「微細多孔質ポリマー膜から構成される膜」に相当する。
そうしてみると、本願発明と引用発明1とは、「ほぼ丸い形状の孔を有し、横方向の引張り強度に対する縦方向の引張り強度の比が0.5?5.0の範囲である微細多孔質ポリマー膜から構成される膜。」で一致し、微細多孔質ポリマー膜に関して、本願発明では「乾燥-延伸」微細多孔質ポリマー膜と特定するのに対して、引用発明1ではそのような特定がない点で一応相違する。

(2)判断
本願発明の「乾燥-延伸微細多孔質ポリマー膜」とは、平成27年6月12日付けの意見書の
「微細多孔質を製造するプロセスとして、(1)乾燥-延伸法:非多孔質前駆体の延伸から孔を形成するプロセス、(2)湿式法:高分子原材料がプロセス油と混合され、この混合物が押し出され、プロセス油が除去されるとき孔が生成するプロセス、(3)粒子延伸法:重合性原材料が粒子と混合され、この混合物が押し出され、延伸の過程において延伸力によってポリマーと粒子間の境界に割れが生じるときに孔が形成されるプロセス、があげられます(段落0003)。
そして、「これらのプロセスから生じる膜は物理的に異なり、それぞれが製造されるプロセスは1つの膜を他のものと区別する」(段落0004)ものであり、本願発明は、製造プロセスを明示することにより、生成物を特定できる技術分野における発明であります。」
との記載によれば、「乾燥-延伸法」によって製造された「微細多孔質ポリマー膜」を意味するものである。
審判請求人は、同意見書で、「引用文献1はイオンビームの照射により微細気孔を形成することを記載するものであって、延伸により孔を形成するものではありません。」とするものである。しかしながら、本願発明と引用発明1とで孔を形成する方法を含めた膜の製造方法が異なっていたとしても、「乾燥-延伸」の特定の有無以外に相違点がない以上、本願発明と引用発明1とを「物」として区別することができない。すなわち、「乾燥-延伸」という特定の有無、すなわち、本願発明のものが「乾燥-延伸法」によって製造されたということのみにより、本願発明と引用発明1とを異なるものとすることができない。
なお、平成27年6月30日付け拒絶査定の備考で、「「乾燥-延伸膜」によって得られた膜と他の製造プロセスによって得られた膜とで物理的に異なるのであれば、当該「物理的」事項を発明特定事項とすべきであるし、あるいは、意見書において釈明すべきであるが、そのような特定や釈明がない以上、やはりたとえ製造方法が異なったとしても、「物」として、本願発明と各引用文献1?3に記載された発明とを区別することができない。」としたところであるが、審判請求と同時にする手続補正によって請求項1は補正されていないし、また審判請求書において、この点に対する特段の主張や釈明もなされていないところである。
そうしてみると、本願発明は、引用発明1であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


第5.結び

以上のとおりであるから,本願発明は、引用発明1、すなわち引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。したがって、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-02 
結審通知日 2017-02-07 
審決日 2017-02-20 
出願番号 特願2012-127958(P2012-127958)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮澤 尚之細井 龍史横田 晃一  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 守安 智
上坊寺 宏枝
発明の名称 2軸延伸微細多孔質膜  
代理人 金本 恵子  
代理人 北野 健  
代理人 田中 玲子  
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