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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C |
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管理番号 | 1330036 |
審判番号 | 不服2016-4028 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-16 |
確定日 | 2017-07-05 |
事件の表示 | 特願2014- 47916「シクロヘキシレン反応性メソゲンおよびそれらの用途」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-159428〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、2007年10月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年11月24日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2009-537499号の一部を平成26年3月11日に新たな特許出願としたものであって、平成27年1月14日付けで拒絶理由が通知され、同年5月18日に意見書および手続補正書が提出され、同年11月6日付けで拒絶査定され、平成28年3月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成28年3月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年3月16日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成28年3月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、平成27年5月18日付け手続補正により補正された請求項1である 「【請求項1】 式Iの化合物。 【化1】 R^(1)-A-(B)_(b)-R^(2) I (式中、 R^(1)およびR^(2)は、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF_(5)、または直鎖状または分岐状で1?30個のC原子を有するアルキル(該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR^(0)-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-CY^(1)=CY^(2)-または-C≡C-で置き換えられていてもよい。)、または、P-Sp’-X’-を表し、ただし、R^(1)およびR^(2)の少なくとも一方はP-Sp’-X’-であり、 R^(1)およびR^(2)におけるY^(1)およびY^(2)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、 Pは、メタクリレート基であり、 Sp’は、1?20個のC原子のC原子のアルキレンであり、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、式中、1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR^(0)-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-NR^(0)-CO-O-、-O-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてもよく、 X’は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-CY^(1)=CY^(2)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合であり、 R^(0)およびR^(00)は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1?12個のC原子のアルキルであり、および X’におけるY^(1)およびY^(2)は、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNであり、 AおよびBは、それぞれ互いに独立に、1,4-シクロヘキシレンであり、式中、1個以上の-CH_(2)-基は、2個のO原子が共に結合しないようにして、-O-および/または-S-で置き換えられていてもよく、 bは、0または1である。)」 を 「【請求項1】 式Iの化合物。 【化1】 R^(1)-A-(B)_(b)-R^(2) I (式中、 R^(1)は、直鎖状または分岐状で3?30個のC原子を有するアルキル基であり、 R^(2)は、P-Sp’-X’-であり、 Pは、メタクリレート基であり、 Sp’は、直鎖状または分岐状で1?20個のC原子のアルキレンであり、 X’は、-O-、-COO-、-OCO-または単結合であり、 AおよびBは、無置換の1,4-シクロヘキシレンであり、および bは、0または1である。)」 とする補正を含むものである。 2 補正の適否 上記補正は、発明を特定する事項であるR^(1)およびR^(2)に関し、本件補正前の請求項1の「それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF_(5)、または直鎖状または分岐状で1?30個のC原子を有するアルキル(該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR^(0)-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-CY^(1)=CY^(2)-または-C≡C-で置き換えられていてもよい。)、または、P-Sp’-X’-を表し、ただし、R^(1)およびR^(2)の少なくとも一方はP-Sp’-X’-であり、 R^(1)およびR^(2)におけるY^(1)およびY^(2)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し」(下線は当審にて追加、以下同様)との特定をR^(1)については、選択肢の1つの「直鎖状または分岐状で1?30個のC原子を有するアルキル」をさらに限定した「直鎖状または分岐状で3?30個のC原子を有するアルキル基」に限定し、R^(2)については、「P-Sp’-X’-」に限定するものであり、補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について検討する。 (1)引用刊行物 引用刊行物:特開平7-109456号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4、拒絶査定の引用文献2) (2)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開7-109456号公報には、以下の記載がある。 (1a)「【0016】また、本発明は上記課題を解決するために、電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、これらの基板間に支持された調光層を有し、該調光層が液晶材料及び透明性高分子物質を含有する液晶デバイスにおいて、前記透明性高分子物質が、一般式(II) 【0017】 【化7】 【0018】(式中、Qはアルキレン基又はアルケニレン基を表わし、該基中に互いに隣接しない任意の-CH_(2)-がエーテル基又はエステル基によって置換されていてもよく、R^(2) は、水素、アルキル基、アルコキシ基又はアルケニル基を表わし、qは1?10の整数を表わし、 【0019】 【化8】 【0020】は、アルキル基及び/又はハロゲン基を有していてもよい芳香環又はシクロヘキサン環を表わし、R^(1)は水素原子又はメチル基を表わす。)で表わされる(メタ)アクリレート誘導体を含有する重合性組成物を重合してなる透明性高分子物質であることを特徴とする液晶デバイスを提供する。」 (1b)「【0083】(合成例2)ブタンジオール5.0g、ピリジン4.4g及びクロロホルム80mlから成る溶液を0℃に冷却し、攪拌されている溶液中に、トランス-4-n-ペンチルシクロヘキサンカルボン酸より誘導したトランス-4-n-ペンチルシクロヘキサンカルボン酸クロリド10.5gを50mlのクロロホルムに溶解した溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、0℃で2時間、室温で16時間反応させた。反応終了後、反応混合物を1N塩酸水溶液で2回洗浄し、更に水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、クロロホルムを減圧留去して得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:n-ヘキサン=1:1)を用いて精製して、中間体化合物(D)9.8gを得た。 【0084】次に、中間体化合物(D)9.8gをクロロホルム80mlに溶解した溶液を0℃に冷却し、攪拌されている溶液中に、30mlのクロロホルムに溶解したアクリル酸クロリド3.5gを30分間かけて滴下した後、室温で10時間反応させた。反応終了後、1N塩酸水溶液で2回洗浄し、更に水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ヒドロキノンを100ppm添加し、減圧留去により、式 【0085】 【化12】 【0086】で表わされる化合物(E)3.0gを得た。 【0087】赤外分光測定により、3400?3600cm-1の水酸基の吸収が観測されないことから完全にアクリルエステル化されていることが確認された。」 (3)引用刊行物記載の発明 摘記(1a)には、液晶デバイスの含有される重合組成物に含有される(メタ)アクリレート誘導体として一般式(II)のものが記載され、その具体的例示として、摘記(1b)に、【化12】 で表される化合物Eが合成法を伴って記載されている。 【0083】?【0087】の合成例2において、化合物Eは、原料として、トランス-4-n-ペンチルシクロヘキサンカルボン酸より誘導したトランス-4-n-ペンチルシクロヘキサンカルボン酸クロリドとブタンジオールとアクリル酸クロリドから形成されているのであるから、化合物Eの環構造はシクロヘキサン環を示していることは明らかである。 したがって、引用刊行物には、以下の発明が記載されているといえる(以下「刊行物発明」という。)。 「CH_(2)=CH-COO-CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)-OCO-(1,4-シクロへキシレン)-C_(5)H_(11)」 (4)対比・判断 ア 対比 刊行物発明の「-CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)-」の化学構造部分は、本願補正発明のR^(2)を示すP-Sp’-X’のうちの、「Sp’は、直鎖状または分岐状で1?20個のC原子のアルキレン」であると定義されたSp’に該当し、刊行物発明の「-OCO-」の化学構造部分は、本願補正発明のR^(2)を示すP-Sp’-X’のうちの、「X’は、-O-、-COO-、-OCO-または単結合」であると定義されたX’の選択肢に該当する。 そして、刊行物発明の「-(1,4-シクロへキシレン)-」の化学構造部分は、本願補正発明の「-A-(B)_(b)-」「AおよびBは、無置換の1,4-シクロヘキシレンであり、および bは、0または1である。)」のbが0の場合に該当し、刊行物発明の「-C_(5)H_(11)」は、本願補正発明のR^(1)の「直鎖状または分岐状で3?30個のC原子を有するアルキル基であり」との定義に該当するものである。 そうすると、本願補正発明と刊行物発明とは、 「式Iの化合物。 【化1】 R^(1)-A-(B)_(b)-R^(2) I (式中、 R^(1)は、直鎖状または分岐状で3?30個のC原子を有するアルキル基であり、 R^(2)は、P-Sp’-X’-であり、 Sp’は、直鎖状または分岐状で1?20個のC原子のアルキレンであり、 X’は、-O-、-COO-、-OCO-または単結合であり、 AおよびBは、無置換の1,4-シクロヘキシレンであり、および bは、0または1である。)」 である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点:Pに関して、本願補正発明は、「メタクリレート基であり」と特定されているのに対して、刊行物発明は、CH_(2)=CH-COO-であるアクリレート基である点 イ 相違点の判断 上記相違点について検討する。 (ア)メタクリレート基とアクリレート基の相違に関して 引用刊行物の摘記(1a)には、刊行物発明の上位概念としての一般式(II)の記載部分において、「一般式(II) 【0017】 【化7】 【0018】(式中、Qはアルキレン基又はアルケニレン基を表わし、該基中に互いに隣接しない任意の-CH_(2)-がエーテル基又はエステル基によって置換されていてもよく、R^(2) は、水素、アルキル基、アルコキシ基又はアルケニル基を表わし、qは1?10の整数を表わし、 【0019】 【化8】 【0020】は、アルキル基及び/又はハロゲン基を有していてもよい芳香環又はシクロヘキサン環を表わし、R^(1)は水素原子又はメチル基を表わす。)で表わされる(メタ)アクリレート誘導体」と記載され、このように「(メタ)アクリレート誘導体」との表現は、重合性単体であるメタクリレート誘導体とアクリレート誘導体が、その他の構造部分が同一である場合に、同等の作用効果を生じる化学構造であるものを示すために、しばしば用いられるものである。 (拒絶理由に引用した国際公開2005/014522号の3頁[0009][0010]の式(1)の重合性液晶化合物をアクリル酸誘導体と表現し、特開平4-95051号公報の請求項1の式(1)重合物をアクリル酸エステルと表現し、特開2006-215184号公報の請求項1の式(1)の重合体形成のための化合物においても、実施例では、【0036】において(メタ)アクリル酸エステルを用いて液晶混合物を調製した旨表現しており、何れの文献においても、一般式(1)のRは水素原子またはメチル基であるとして、重合性基部分をアクリル基とメタクリル基を併せて表現している。) したがって、ブチレン基に結合した基がアクリレート基である刊行物発明は、一般式(II)の1つの実施例として刊行物に記載されたものであり、一般式(II)のアクリレート基と同等の作用効果を奏する選択肢でもあるメタクリレート基に変更することは、当業者であれば容易に想起でき、十分に動機付けられるといえる。 エ 本願補正発明の効果について (ア)本願明細書には、本願補正発明に対応して、【0103】において、好ましい化合物として、一般式1Cにおいて、Pはメタクリレートまたはアクリレートであることが記載されており、実施例としても、メタクリレート基を有する化合物1?5,9,10,12,14,21,24,26,28,29,31,33、45が合成される一方、アクリレート基を有する6?8,11,13,15,16,20,23,25,27,30,32,44がほぼそれぞれ対応させて合成されている。 表1や表2の各化合物の物理的データをみても、その他の部分構造が対応するメタクリレート基の場合とアクリレートの場合(化合物1と8、化合物2と7、化合物3と6、化合物21と20)で顕著な差異はみあたらない。 (イ)表4?表18の混合組成物の相挙動や特性をみても、その他の部分構造が対応するメタクリレート基の場合とアクリレートの場合(化合物1と8、化合物3と6、化合物12,14,16と化合物11,13,15、化合物21と20)で顕著な差異はみあたらず、最も重要な特性であるフラット範囲についても対応する化合物同士であれば顕著な差はみあたらない。 (ウ)仮にメタクリレート基を有する特定の化合物にアクリレート基を有するものとの間に何らかの特性の相違が存在したとしても、X’にも選択肢があり、Sp’又はR^(1)にも直鎖又は分岐を含めて広範なアルキル基を包含する形で特定されている本願補正発明において、本願補正発明に含まれる化合物全体が、特定の化合物の特性を共通して奏するものとは認められず、その点からも刊行物発明と比較した顕著な効果を認めることはできない。 (エ)以上のとおり、刊行物発明のアクリレート基を有する化合物が本来有する特性からみて、メタクリレート基を有する本願補正発明が顕著な効果を有するとはいえない。 したがって、本願補正発明の効果は、引用刊行物記載の発明及び本願優先日時点の技術常識からみて、当業者の予測を超える顕著なものとはいえない。 オ 小括 以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 補正却下のまとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 第2で検討したとおり、平成28年3月16日付け手続補正は却下されることとなったので、この出願の請求項1に係る発明は、平成27年5月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「【請求項1】 式Iの化合物。 【化1】 R^(1)-A-(B)_(b)-R^(2) I (式中、 R^(1)およびR^(2)は、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF_(5)、または直鎖状または分岐状で1?30個のC原子を有するアルキル(該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR^(0)-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-CY^(1)=CY^(2)-または-C≡C-で置き換えられていてもよい。)、または、P-Sp’-X’-を表し、ただし、R^(1)およびR^(2)の少なくとも一方はP-Sp’-X’-であり、 R^(1)およびR^(2)におけるY^(1)およびY^(2)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、 Pは、メタクリレート基であり、 Sp’は、1?20個のC原子のC原子のアルキレンであり、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、式中、1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR^(0)-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-NR^(0)-CO-O-、-O-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてもよく、 X’は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-CY^(1)=CY^(2)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合であり、 R^(0)およびR^(00)は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1?12個のC原子のアルキルであり、および X’におけるY^(1)およびY^(2)は、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNであり、 AおよびBは、それぞれ互いに独立に、1,4-シクロヘキシレンであり、式中、1個以上の-CH_(2)-基は、2個のO原子が共に結合しないようにして、-O-および/または-S-で置き換えられていてもよく、 bは、0または1である。)」 第4 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の1つは、概略、以下のとおりのものと認める。 「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である「特開平7-109456号公報」に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 そして、拒絶査定の対象となった、平成27年5月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1である本願発明は、拒絶理由通知の対象となった、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に対応する。 第5 当審の判断 当審は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び本願優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,と判断する。 理由は以下のとおりである。 1 引用刊行物 刊行物:特開平7-109456号公報 2 引用刊行物の記載 刊行物には、第2 2(2)に記載のとおりの記載がある。 3 引用刊行物に記載された発明について 引用刊行物には、第2 2(3)に記載のとおり、以下の刊行物発明が記載されている。 「CH_(2)=CH-COO-CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)-OCO-(1,4-シクロへキシレン)-C_(5)H_(11)」 4 対比・判断 (1)対比 刊行物発明の「-CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)-」の化学構造部分は、本願発明の「R^(1)およびR^(2)をのうち少なくとも一方はP-Sp’-X’であり」とされる、P-Sp’-X’のうちの、「Sp’は、1?20個のC原子のC原子のアルキレンであり、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、式中、1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR^(0)-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-NR^(0)-CO-O-、-O-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてもよく、」「R^(0)およびR^(00)は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1?12個のC原子のアルキル」であると定義されたSp’に該当し、刊行物発明の「-OCO-」の化学構造部分は、本願発明の「R^(1)およびR^(2)をのうち少なくとも一方はP-Sp’-X’であり」とされる、P-Sp’-X’のうちの、「X’は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-CY^(1)=CY^(2)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合」であると定義されたX’の選択肢に該当する。 そして、刊行物発明の「-(1,4-シクロへキシレン)-」の化学構造部分は、本願発明の「-A-(B)_(b)-」「AおよびBは、それぞれ互いに独立に、1,4-シクロヘキシレンであり、式中、1個以上の-CH_(2)-基は、2個のO原子が共に結合しないようにして、-O-および/または-S-で置き換えられていてもよく、 bは、0または1である。)」の-CH_(2)-基の置き換えがなく、bが0の場合に該当する。 そして、刊行物発明の「-C_(5)H_(11)」は、本願発明の「R^(1)およびR^(2)は、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF_(5)、または直鎖状または分岐状で1?30個のC原子を有するアルキル(該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR0-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-CY^(1)=CY^(2)-または-C≡C-で置き換えられていてもよい。)、または、P-Sp’-X’-を表し、ただし、R^(1)およびR^(2)の少なくとも一方はP-Sp’-X’-であり、 R^(1)およびR^(2)におけるY^(1)およびY^(2)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し」との定義に、P-Sp’-X’-でない選択肢として該当するものである。 そうすると、本願発明と刊行物発明とは、 「式Iの化合物。 【化1】 R^(1)-A-(B)_(b)-R^(2) I (式中、 R^(1)およびR^(2)は、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF_(5)、または直鎖状または分岐状で1?30個のC原子を有するアルキル(該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR^(0)-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-CY^(1)=CY^(2)-または-C≡C-で置き換えられていてもよい。)、または、P-Sp’-X’-を表し、ただし、R^(1)およびR^(2)の少なくとも一方はP-Sp’-X’-であり、 R^(1)およびR^(2)におけるY^(1)およびY^(2)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、 Sp’は、1?20個のC原子のC原子のアルキレンであり、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、式中、1個以上の隣接していないCH_(2)基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR^(0)-、-SiR^(0)R^(00)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-NR^(0)-CO-O-、-O-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてもよく、 X’は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-CY^(1)=CY^(2)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合であり、 R^(0)およびR^(00)は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1?12個のC原子のアルキルであり、および X’におけるY^(1)およびY^(2)は、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNであり、 AおよびBは、それぞれ互いに独立に、1,4-シクロヘキシレンであり、式中、1個以上の-CH_(2)-基は、2個のO原子が共に結合しないようにして、-O-および/または-S-で置き換えられていてもよく、 bは、0または1である。)」 である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点:Pに関して、本願発明は、「メタクリレート基であり」と特定されているのに対して、刊行物発明は、CH_(2)=CH-COO-であるアクリレート基である点 (2)相違点の判断 上記相違点について検討する。 (ア)メタクリレート基とアクリレート基の相違に関して、 引用刊行物の摘記(1a)には、刊行物発明の上位概念としての一般式(II)の記載部分において、「一般式(II) 【0017】 【化7】 【0018】(式中、Qはアルキレン基又はアルケニレン基を表わし、該基中に互いに隣接しない任意の-CH_(2)-がエーテル基又はエステル基によって置換されていてもよく、R^(2 )は、水素、アルキル基、アルコキシ基又はアルケニル基を表わし、qは1?10の整数を表わし、 【0019】 【化8】 【0020】は、アルキル基及び/又はハロゲン基を有していてもよい芳香環又はシクロヘキサン環を表わし、R^(1)は水素原子又はメチル基を表わす。)で表わされる(メタ)アクリレート誘導体」と記載され、このように「(メタ)アクリレート誘導体」との表現は、重合性単体であるメタクリレート誘導体とアクリレート誘導体が、その他の構造部分が同一である場合に、同等の作用効果を生じる化学構造であるものを示すために、しばしば用いられるものである。 (2(4)イ(ア)に記載のとおり多数の例がある。) (イ)ブチレン基に結合した基がアクリレート基である刊行物発明は一般式(II)の1つの実施例として刊行物に記載されたものであり、一般式(II)のアクリレート基と同等の作用効果を奏する選択肢でもあるメタクリレート基に変更することは、当業者であれば容易に想起でき、十分に動機付けられるといえる。 エ 本願発明の効果について (ア)本願明細書には、本願発明に対応して、【0103】において、好ましい化合物として、【0103】において、好ましい化合物として、一般式1Cにおいて、Pはメタクリレートまたはアクリレートであることが記載されており、その他のIA,IBにおいても、同様に、Pはメタクリレートまたはアクリレートであることが記載されている。 そして、実施例として、メタクリレート基を有する化合物1?5,9,10,12,14,19,21,24,26,28,29,31,33,45,49が合成される一方、アクリレート基を有する6?8,11,13,15,16,18,20,23,25,27,30,32,44,48がほぼそれぞれ対応させて合成されている。 表1や表2の各化合物の物理的データをみても、前記のとおり、その他の部分構造が対応するメタクリレート基の場合とアクリレートの場合(化合物1と8、化合物2と7、化合物3と6、化合物19と化合物18、化合物21と20)で顕著な差異はみあたらない。 (イ)表4?表18の混合組成物の相挙動や特性をみても、前記のとおり、その他の部分構造が対応するメタクリレート基の場合とアクリレートの場合(化合物1と8、化合物3と6、化合物12,14,16と化合物11,13,15、化合物19と18、化合物21と20、化合物49と48)で顕著な差異はみあたらず、最も重要な特性であるフラット範囲についても対応する化合物同士であれば顕著な差はみあたらない。 (ウ)仮にメタクリレート基を有する特定の化合物に何らかの特性の相違が存在したとしても、R^(1)又はR^(2)が、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF_(5)、を含めた、広範なアルキルを選択肢として包含する形で特定され、さらにSp’やX’についても種々の結合や置き換えを含む形で特定され、A,Bについても-O-や-S-で-CH_(2)-が置き換えられる場合を含んで特定されている本願発明において、本願発明に含まれる化合物全体が、特定の化合物の特性を共通して奏するものとはまったく認められず、その点からも刊行物発明と比較した顕著な効果を認めることはできない。 (エ)以上のとおり、刊行物発明のアクリレート基を有する化合物が本来有する特性からみて、メタクリレート基を有する本願発明が顕著な効果を有するとはいえない。 したがって、本願発明の効果は、引用刊行物記載の発明及び本願優先日時点の技術常識からみて、当業者の予測を超える顕著なものとはいえない。 (4)請求人の主張について ア 請求人は、平成28年3月16日付け審判請求書において、本願発明の式(I)に化合物を引用文献2(拒絶理由通知時の引用文献4)に当業者が接したとしても選択するのは困難であること及び上記化合物をブルー相LC媒体で採用して優れた特性を実現することが示唆されていない旨主張している。 イ しかしながら、上述のとおり、引用刊行物には、刊行物発明として、Pがアクリレート基である部分のみで本願発明と相違する化合物が記載されており、引用刊行物の刊行物発明を含んだ上位概念の一般式で、アクリレート基の場合とメタクリレート基の場合が例示されていること、重合性官能基となる部分でアクリレート基を使用する場合、「(メタ)アクリレート基」との記載表現で、同等の作用効果を有する化合物の選択肢として想定することがしばしば存在することを考慮すると、当業者であれば、アクリレート基を有する刊行物発明のアクリレート基部分をメタクリレート基に置き換えることは、容易に想起できる技術的事項であり、十分な動機付けがあるといえる。 ウ また、引用刊行物には、ブルー相LC媒体で採用して優れた特性を実現することが示唆されていない旨の主張に対しては、本願明細書においては、一貫してアクリレート基を有する化合物とメタクリレート基を有する場合を同等のものとして扱っており、アクリレート基を有する刊行物発明が本来化合物として有する特性に比較して、メタクリレート基に変更することで、当業者の予測を超えた顕著な効果が生じたことの記載はなされておらず、化合物として、本願発明が、刊行物発明に比較して、顕著な効果を有するものとは認められない。 さらに、ブルー相LC媒体で採用して優れた特性を有することは、発明特定事項になっているものでもなく、用途を限定していない化合物をクレームした、本願発明に関する主張としては、特許請求の範囲に基づかない主張であるともいえ、上述のとおり、特許請求の範囲に特定された化合物に包含される全てのものにおいて奏する効果であるともいえないため、いずれにしても、請求人の主張を採用することはできない。 4 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明および本願優先日当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-01-31 |
結審通知日 | 2017-02-07 |
審決日 | 2017-02-20 |
出願番号 | 特願2014-47916(P2014-47916) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C07C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 前田 憲彦 |
特許庁審判長 |
井上 雅博 |
特許庁審判官 |
瀬良 聡機 冨永 保 |
発明の名称 | シクロヘキシレン反応性メソゲンおよびそれらの用途 |
代理人 | 小野 暁子 |
代理人 | 伊藤 克博 |