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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L |
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管理番号 | 1330089 |
異議申立番号 | 異議2016-700740 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-08-09 |
確定日 | 2017-06-12 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5889819号発明「太陽電池裏面封止用シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5889819号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について」)訂正することを認める。 特許第5889819号の請求項1?3、6?8に係る特許を維持する。 特許第5889819号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5889819号の請求項1に係る特許についての出願は、平成18年6月21日に出願した特願2006-171534号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年3月11日に新たな特許出願としたものであって、平成28年2月26日付けでその特許権の設定登録がなされ、その後、平成28年8月9日付けで特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年11月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間外である平成29年1月25日に上申書が提出され、同年2月17日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年3月15日付けで意見書の提出及び訂正請求がされたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 訂正前の願書に添付した特許請求の範囲(以下、単に「訂正前特許請求の範囲」という。)の請求項1に「混合物(以下、ポリオールB)を含み、」とあるのを 「混合物(以下、ポリオールB)であるか、または、 ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールA)1?50重量%に対し、前記ポリオールBを50?99重量%配合したポリオール系組成物であるか、または、 前記ポリオールB50?99重量%および下記ポリオールA1?50重量%を、2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施した共重合型ポリオールである、」 に訂正する。 (下線は、訂正箇所を示す。以下、同じ。) (2)訂正事項2 訂正前特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (3)訂正事項3 訂正前特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (4)訂正事項4 訂正前特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から5のいずれか一項に」とあるのを 「請求項1から3のいずれか一項に」に訂正する。 (5)訂正事項5 訂正前特許請求の範囲の請求項7に「請求項2から6のいずれか一項に」とあるのを 「請求項2、3、6のいずれか一項に」に訂正する。 (6)訂正事項6 訂正前特許請求の範囲の請求項8に「請求項2から7のいずれか一項に」とあるのを 「請求項2、3、6、7のいずれか一項に」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、「混合物(以下、ポリオールB)を含み、」を、 「混合物(以下、ポリオールB)であるか、または、 ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールA)1?50重量%に対し、前記ポリオールBを50?99重量%配合したポリオール系組成物であるか、または、 前記ポリオールB50?99重量%および下記ポリオールA1?50重量%を、2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施した共重合型ポリオールである、」 に減縮するものである。 よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項 願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、単に「当初明細書等」という。)には、 「 【0018】 以下、この耐加水分解性に優れる接着剤あるいは接着剤組成物について記載する。まず本発明の太陽電池裏面封止用シートに用いられるポリウレタン系接着剤として、ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールAと記載する)に架橋剤を配合した組成物の100重量部に対し、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物から少なくとも1種以上選択される化合物を1?50重量部配合した接着剤組成物である。」、 「【0027】 ・・・ポリウレタン系材料として考えられるポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが考えられ、これらの成分を主剤としたものを用いることが可能であるが、耐熱性などを考慮すると、ポリカーボネートポリオールやアクリルポリオールなどが好ましい。 【0028】 ポリカーボネートポリオールとしては、例えばカーボネート化合物とジオールとを反応させて得る事ができる。カーボネート化合物としてはジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリール、などの脂環式ジオール、キシリレングリール、などの芳香族ジオールなどの1種以上の混合物が用いられたポリカーボネートポリオール、あるいは上述したイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリカーボネートウレタンポリオール(以下、ポリオールB)を用いることが可能であり、特に接着剤としての性能を考慮すると脂肪族ポリカーボネート系のポリオールBを用いた方が好ましい。 ・・・ 【0030】 これらのポリオールBおよびCは、ポリオールAとのブレンド物、例えばポリオールB+ポリオールA、ポリオールC+ポリオールAのような組み合わせの組成物であっても構わない(以下このブレンド物をポリオールD)。また、ポリオールBおよびCはポリオールAと上述した2官能以上のイソシアネート化合物を用いて鎖伸長させた共重合体、例え ばポリオールB-ポリオールAの主鎖ブロック共重合体、ポリオールC-ポリオールAの側鎖型ブロック共重合体であっても構わない(以下、ポリオールE)。・・・ポリオールD、Eについては、耐加水分解性の骨格であるポリオールB、Cを50?99重量%に対し、加水分解性を示すポリオールAを1?50重量%に設定することが挙げられる。このブレンドあるいは共重合体化させることによる効果は後述する。」(下線は当審が付した。) との記載があり、訂正事項1が新規事項の追加に該当しないことは明らかである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更 上記「ア」で検討したとおり、訂正事項1は、訂正前特許請求の範囲の請求項1の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2及び3について ア 訂正の目的 訂正事項2及び3は、訂正前特許請求の範囲の請求項4及び5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更 上記「ア」で検討したとおり、訂正事項2及び3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項4?6について ア 訂正の目的 訂正事項4?6は、訂正事項2及び3による訂正前特許請求の範囲の請求項4及び5の削除に併せて、訂正前特許請求の範囲の請求項6?8の引用請求項を訂正するものである。 すると、訂正事項4?6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更 上記「ア」で検討したとおり、訂正事項4?6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)一群の請求項 訂正前特許請求の範囲の請求項1?8は、請求項2?7が請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、訂正事項1?6は、一群の請求項ごとにされたものである。 3 むすび したがって、上記訂正請求に係る訂正事項1?6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 訂正発明 訂正後の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ、「訂正発明1」?「訂正発明8」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 少なくとも2層以上の基材をポリウレタン系接着剤にて貼りあわせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートにおいて、 前記基材の一層は、ポリエステル基材を含んで形成されたポリエステル基材層であって、 前記ポリエステル基材層は、前記ポリウレタン系接着剤と隣接して配置されており、 前記ポリウレタン系接着剤が、ポリオールに架橋剤を配合した組成物の100重量部に対し、カルボジイミド化合物を1?50重量部配合した接着剤組成物であり、 前記ポリオールは、ポリカーボネートポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリカーボネートウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールB)であるか、または、 ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールA)1?50重量%に対し、前記ポリオールBを50?99重量%配合したポリオール系組成物であるか、または、 前記ポリオールB50?99重量%および下記ポリオールA1?50重量%を、2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施した共重合型ポリオールである、」 前記ポリウレタン系接着剤が下記条件を満たす耐加水分解性を有することを特徴とする太陽電池裏面封止用シート。 ・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)で少なくとも105℃-168h保存状態で1N/15mm以上のラミネート強度を有する。 ・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)での保存評価で、ディラミネーションに伴う基材間の浮きを伴わない。 【請求項2】 前記ポリエステル基材層は、他の二つの基材の間に、前記ポリウレタン系接着剤を介して積層配置されている、請求項1に記載の太陽電池裏面封止用シート。 【請求項3】 前記ポリエステル基材の固有粘度が0.2?0.5dl/gである、請求項1または2に記載の太陽電池裏面封止用シート。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 前記架橋剤が、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4--もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネートからなる群より選ばれるイソシアネート化合物から誘導されるアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用シート。 【請求項7】 前記他の二つの基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール-テレフタレート(PCT)から選ばれるポリエステル基材、ポリカーボネート系基材、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれるフッ素系基材、あるいはアクリル系基材から選択されることを特徴とする請求項2、3、6のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用シート。 【請求項8】 前記他の二つの基材の少なくとも一方は、数平均分子量が18000?40000の範囲で、環状オリゴマーコンテントが1.5wt%以下、固有粘度が0.5dl/g以上の耐加水分解性を有するポリエステル基材であることを特徴とする請求項2、3、6、7のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用シート。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1?8に係る特許に対して、平成29年2月16日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)は、要旨次のとおりである。 (1)訂正前の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)は、「・・・混合物(以下、ポリオールB)を含み」との発明特定事項を有し、本願の原出願である特願2010-141104号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されたものではない。 すると、本願は分割要件を満たさないから、その出願日は平成25年3月11日であると認める。 (2)本件特許発明1、訂正前の請求項2、4?8に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明2」、「本件特許発明4」?「本件特許発明8」という。)は、甲第1号証(特開2008-4691号公報:原出願の公開公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、本件特許発明1、2、4?8に係る特許は取り消すべきものである。 (3)本件特許発明1、2、4?8は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術や技術常識等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって、本件特許発明1、2、4?8は特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (4)訂正前の請求項3に係る発明(以下、「本件特許発明3」という。)は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって、本件特許発明3は特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (5)上記「(1)」での分割要件の検討と同様、本件特許発明1は、本件特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものではない。 よって、本件特許発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 (6)本件特許発明2?8も、本件特許発明1と同様、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 3 分割要件(上記「2」「(1)」)について 訂正発明1は、 「・・・混合物(以下、ポリオールB)であるか、または、 ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールA)1?50重量%に対し、前記ポリオールBを50?99重量%配合したポリオール系組成物であるか、または、 前記ポリオールB50?99重量%および下記ポリオールA1?50重量%を、2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施した共重合型ポリオールである、」 であって、上記「第2」「2」「(1)」「イ」での検討と同様、訂正発明1は、原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されたものとなったので、本願は分割要件を満たすものとなった。 よって、本願の出願日は、原出願の出願日である平成18年6月21日に遡及すると認める。 4 本件特許発明4及び5について 訂正により、特許請求の範囲の請求項4及び5は削除されたので、特許異議の申立ての対象となる請求項が存在しない。 5 取消理由(上記「2」「(2)」?「(4)」について) 上述のとおり、本願の出願日は、原出願の出願日である平成18年6月21日に遡及するから、甲第1号証は本願の出願前に頒布された刊行物ではない。 したがって、甲第1号証の記載について検討するまでもなく、上記「2」「(2)」?「(4)」の取消理由によっては、訂正発明1?3、6?8に係る特許を取り消すことはできない。 6 取消理由(上記「2」「(5)」?「(6)」について) 上記「3」での検討と同様、訂正発明1は、本件特許明細書又は図面に記載されたものであるから、上記「2」「(5)」の取消理由によっては、訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、訂正発明1と同様、訂正発明2、3、6?8は、本件特許明細書又は図面に記載されたものであるから、上記「2」「(6)」の取消理由によっては、訂正発明2、3、6?8に係る特許を取り消すことはできない。 7 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について (1)取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要 申立人は、本件特許発明1は、 「ポリカーボネートポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリカーボネートウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールB)を含」むものであるから、「ポリオールB」が「ポリカーボネートポリオール」のみである構成を含むものである。 しかし、本件特許明細書及び図面に記載された、<接着剤:1>?<接着剤:7>(特に、<接着剤:3>、<接着剤:4>、<接着剤:6>及び<接着剤:7>)には、「ポリカーボネートポリオール」が含まれておらず、「ポリオールB」が「ポリカーボネートポリオール」のみである構成である本件特許発明1が、本件特許明細書に記載された課題を解決できるものであるか否かが不明であるから、当該構成を含む本件特許発明1まで、本件特許明細書及び図面の記載から拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、本件特許発明1は、特許請求の範囲の請求の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 また、本件特許発明2?8についても、同様である。 (2)当審の判断 本件特許明細書の段落【0028】(上記「第2」「2」「(1)」「イ」参照)に、「ポリオールB」として、「ポリカーボネートポリオール」を単独で使用することも開示されている。 また、架橋剤(<接着剤:3>、<接着剤:4>、<接着剤:6>及び<接着剤:7>では、(2官能以上のイソシアネート化合物である)イソホロンジイソシアネートを使用している。)及びカルボジイミド化合物とともにポリウレタン系接着剤を構成するためのポリオールとして、「ポリカーボネートポリオール」と「2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリカーボネートウレタンポリオール」とは類似した性質を有することは当業者には明らかである。 すると、「ポリオールB」として、「ポリカーボネートポリオール」を単独使用した接着剤例がないとしても、本件特許明細書(特に、段落【0028】)の記載により、「ポリオールB」として、接着剤例として開示されている「2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリカーボネートウレタンポリオール」と同様、「ポリカーボネートポリオール」を単独使用するという技術事項が開示されていると認められるから、本件特許発明1は本件特許明細書及び図面に記載したものであると認められる。また、本件特許発明2、3、6?8についても,同様である。 (3)結論 したがって、本件特許発明1は、特許請求の範囲の請求の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、申立人が主張する上記取消理由によっては、本件特許発明1?3、6?8に係る特許を取り消すことはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書の記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?3、6?8に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に、本件請求項1?3、6?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件請求項4及び5に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも2層以上の基材をポリウレタン系接着剤にて貼りあわせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートにおいて、 前記基材の一層は、ポリエステル基材を含んで形成されたポリエステル基材層であって、 前記ポリエステル基材層は、前記ポリウレタン系接着剤と隣接して配置されており、 前記ポリウレタン系接着剤が、ポリオールに架橋剤を配合した組成物の100重量部に対し、カルボジイミド化合物を1?50重量部配合した接着剤組成物であり、 前記ポリオールは、ポリカーボネートポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリカーボネートウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールB)であるか、または、 ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールA)1?50重量%に対し、前記ポリオールBを50?99重量%配合したポリオール系組成物であるか、または、 前記ポリオールB50?99重量%および前記ポリオールA1?50重量%を、2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施した共重合型ポリオールである、 前記ポリウレタン系接着剤が下記条件を満たす耐加水分解性を有することを特徴とする太陽電池裏面封止用シート。 ・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)で少なくとも105℃-168h保存状態で1N/15mm以上のラミネート強度を有する。 ・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)での保存評価で、ディラミネーションに伴う基材間の浮きを伴わない。 【請求項2】 前記ポリエステル基材層は、他の二つの基材の間に、前記ポリウレタン系接着剤を介して積層配置されている、請求項1に記載の太陽電池裏面封止用シート。 【請求項3】 前記ポリエステル基材の固有粘度が0.2?0.5dl/gである、請求項1または2に記載の太陽電池裏面封止用シート。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 前記架橋剤が、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4--もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネートからなる群より選ばれるイソシアネート化合物から誘導されるアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用シート。 【請求項7】 前記他の二つの基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール-テレフタレート(PCT)から選ばれるポリエステル基材、ポリカーボネート系基材、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれるフッ素系基材、あるいはアクリル系基材から選択されることを特徴とする請求項2、3、6のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用シート。 【請求項8】 前記他の二つの基材の少なくとも一方は、数平均分子量が18000?40000の範囲で、環状オリゴマーコンテントが1.5wt%以下、固有粘度が0.5dl/g以上の耐加水分解性を有するポリエステル基材であることを特徴とする請求項2、3、6、7のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用シート。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-06-01 |
出願番号 | 特願2013-48398(P2013-48398) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(H01L)
P 1 651・ 537- YAA (H01L) P 1 651・ 121- YAA (H01L) P 1 651・ 841- YAA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小濱 健太 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 伊藤 昌哉 |
登録日 | 2016-02-26 |
登録番号 | 特許第5889819号(P5889819) |
権利者 | 東洋インキSCホールディングス株式会社 |
発明の名称 | 太陽電池裏面封止用シート |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 鈴木 史朗 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 伏見 俊介 |
代理人 | 伏見 俊介 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 鈴木 史朗 |