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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1330111
異議申立番号 異議2016-700513  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-02 
確定日 2017-06-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5830095号発明「間隔をあけた糸/ウェブのアレイからなる新規中間強化材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5830095号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。 特許第5830095号の請求項1ないし19及び21に係る特許を維持する。 特許第5830095号の請求項20に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯・本件特許異議の申立ての趣旨

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第5830095号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2013-520192号、以下「本願」という。)は、平成23年7月21日(パリ条約に基づく優先権主張、2010年7月22日、フランス共和国)の国際出願日になされたものとみなされる出願人ヘクセル ランフォルセマン(以下「特許権者」という。)によりされた特許出願であり、平成27年10月30日に特許権の設定登録(請求項の数21)がされたものである。

2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき平成28年6月2日付けで特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により「特許第5830095号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがなされた。

3.以降の経緯
本件特許異議の申立て以降の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 9月20日付け 取消理由通知
平成28年12月22日 意見書(特許権者)・訂正請求書
平成29年 2月22日付け 通知書(申立人あて)
平成29年 3月13日 意見書(申立人)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第4号証を提示し、概略、以下の取消理由1ないし4が存するとしている。

・取消理由1
本件特許請求の範囲の請求項1ないし21に係る発明は、いずれも、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・取消理由2
本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載では、本件特許請求の範囲の請求項8ないし21に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないから、請求項8ないし21に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・取消理由3
本件特許請求の範囲の請求項8ないし21に関して、同各項の記載が不備であり、請求項8ないし21の各記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項8ないし21に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・取消理由4
本件特許請求の範囲の請求項6ないし21に関して、同各項の記載が不備であり、請求項6ないし21の各記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項6ないし21に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特表2012-506499号公報
(公表日:2012年3月15日)
甲第2号証:特開2010-155460号公報
(公開日:2010年7月15日)
甲第3号証:米国特許出願公開2003/0224141号明細書
甲第4号証:特表2012-510385号公報
(公表日:2012年5月10日)
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲4」と略していう。)

第3 平成28年12月22日付け訂正請求による訂正の適否

1.訂正の内容
上記平成28年12月22日付け訂正請求は、本件特許の特許請求の範囲を、請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?21について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであり、以下の(1)ないし(15)の訂正事項を含むものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「個別的リボンのアレイを含む、又はさらにはそれのみから構成される中間材料であって」と記載されているのを、「個別的リボンのアレイを含む、又はさらには該アレイのみから構成される中間材料であって」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「各リボンは、その各面が熱可塑性繊維のベールと接着によって結合した一方向性強化繊維のテープで構成される中間材料において、」と記載されているのを、
「各リボンは、そのリボンの各面が熱可塑性繊維のベールと接着によって結合した一方向性強化繊維のテープで構成される上記中間材料において、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「2つの連続した層のリボンが、交差の有無にかかわらないが織り交ざることなく重ね合わせられるように、リボンが連続した層に配置され、」と記載されているのを、
「垂直方向に連続した2つの層のリボンが、交差の有無にかかわらないが織り交ざることなく重ね合わせられるように、前記垂直方向に連続した2つの層に配置され、」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「少なくとも2つの層のリボンは2つの異なる方向に伸長し、かつ、2つの連続した層のリボンが、前記層の1つのリボンと他の層のリボンとの間の空間に全面的カバーがないように配置される請求項1乃至6のいずれか一項に記載の炭素短繊維」と記載されているのを、
「少なくとも垂直方向に連続した2つの層のリボンは2つの異なる方向に伸長し、かつ、前記垂直方向に連続した2つの層のリボンが、前記垂直方向に連続した2つの層のうちの1つの層におけるリボンの間の空間が前記垂直方向に連続した2つの層のうちの他の層のリボンによって全面的カバーされないように配置される」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「プレフォームの形であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の中間材料。」と記載されているのを、
「プレフォームであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の中間材料。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「リボンが同一方向に向けられる連続した層を含み、リボンが同一の方向に向けられる層のリボンの完全又はほぼ完全な重なりがあることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の中間材料。」と記載されているのを、
「3以上の層を有し、その一部にリボンが同一方向に向けられる連続した層を含み、リボンが同一の方向に向けられる層のリボンの完全又はほぼ完全な重なりがあることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の中間材料。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「ポリマー結合剤の全質量が、材料の全質量の0.1から10%に相当することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の中間材料。」と記載されているのを、
「熱可塑性繊維のベールの全質量が、材料の全質量の0.1から10%に相当することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の中間材料。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「各個別的リボンの粘着が、縫物、織物、又は編物の不在下で確保されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の中間材料。」と記載されているのを、
「各個別的リボンの接着が、縫うこと、織ること、又は編むことなしに確保されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の中間材料。」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に「熱可塑性繊維が、ポリアミド(PA、例えばPA6、PA12、PA11、PA6.6、PA6.10、PA6.12、コポリアミド(CoPA)、ポリアミド-ブロックエーテル若しくはエステル(PEBAX、PEBA)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート-PET-、ポリブチレンテレフタレート-PBT、コポリエステル(CoPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアセタール(POM、C2?C8のポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン-PP、高密度ポリエチレン-HDPE、低密度ポリエチレン-LDPE、低密度線状ポリエチレン-LLDPE---)及び/又は後者のコポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU---)、ポリフェニレンスルホン(PPSU---)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、又はポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フェノキシ樹脂、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレートコポリマー(SBM)、ブチル-メチルメタクリレートメチルメタクリレート-アクリレートコポリマー(MAM)などのブロックコポリマー、並びにそれらの混合物から選択される材料で作られることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の中間材料。」と記載されているのを、
「前記熱可塑性繊維のベールが、ポリアミド(PA、例えばPA6、PA12、PA11、PA6.6、PA6.10、PA6.12、コポリアミド(CoPA)、ポリアミド-ブロックエーテル若しくはエステル(PEBAX、PEBA)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート-PET-、ポリブチレンテレフタレート-PBT、コポリエステル(CoPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアセタール(POM、C2?C8のポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン-PP、高密度ポリエチレン-HDPE、低密度ポリエチレン-LDPE、低密度線状ポリエチレン-LLDPE---)及び/又は後者のコポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU---)、ポリフェニレンスルホン(PPSU---)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、又はポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フェノキシ樹脂、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレートコポリマー(SBM)、ブチル-メチルメタクリレートメチルメタクリレート-アクリレートコポリマー(MAM)などのブロックコポリマー、並びにそれらの混合物から選択される材料を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の中間材料。」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項17に「請求項1から16までのいずれか一項に記載の中間強化材料又はプレフォームの製造方法において、」と記載されているのを、
「請求項1から16までのいずれか一項に記載の中間材料の製造方法において、」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項17に「a)その各面が熱可塑性繊維のベールと結合した一方向性強化繊維の閉じたテープで構成される少なくとも1つの個別的リボンを有する工程であって、一方向性繊維のテープとベールの間の結合は熱可塑性繊維の少なくとも部分的融合によって確保される工程と、」と記載されているのを、
「a)その各面が熱可塑性繊維のベールと結合した一方向性強化繊維の閉じたテープで構成される少なくとも1つの個別的リボンを準備する工程であって、一方向性繊維のテープとベールの間の結合は熱可塑性繊維の少なくとも部分的融合によって確保される工程と、」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項17に「b)2つの連続した層のリボンが、交差の有無にかかわらないが織り交ざることなく重ね合わせられるように、且つ各層で、リボンは少なくともそれらの長さの大部分にわたって互いに実質的に平行して配置されているが、互いに独立して間隔があり、少なくとも2つの層のリボンは2つの異なる方向に伸長するように、そのようなリボンを連続した層に配置する工程と、」と記載されているのを、
「b)垂直方向に連続した2つの層のリボンが、交差の有無にかかわらないが織り交ざることなく重ね合わせられるように、且つ各層で、リボンは少なくともそれらの長さの大部分にわたって互いに実質的に平行して配置されているが、互いに独立して間隔があり、少なくとも垂直方向に連続した2つの層のリボンは2つの異なる方向に伸長するように、そのようなリボンを垂直方向に連続した2つの層に配置する工程と、」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項18に「a)請求項1から16までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの材料を有する工程と、」と記載されているのを、
「a)請求項1から16までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの材料を準備する工程と、」に訂正する。


(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項20を削除する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項21に「50から63%の繊維容積率を有することを特徴とする、請求項20に記載の複合部品。」と記載されているのを、
「前記複合部品が、50から63%の繊維容積率を有することを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。」に訂正する。

2.検討
なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし21を「旧請求項1」ないし「旧請求項21」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし21を「新請求項1」ないし「新請求項21」という。

(1)本件訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による本件訂正の目的につき検討する。
上記訂正事項1ないし13による訂正は、いずれも、当審が通知した特許請求の範囲の記載不備(特許法第36条第6項第2号不適合)に係る新たな取消理由において指摘した明瞭でない記載を本件特許に係る明細書の記載に基づき明確化したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであることが明らかである。
また、上記訂正事項14及び15による訂正は、当審が通知した特許請求の範囲の記載不備(特許法第36条第6項第2号不適合)に係る新たな取消理由において指摘した旧請求項20及び同項を引用する旧請求項21のいわゆるプロダクト・バイ・クレーム形式で複合部品なる物の発明が表されたことによる不備について、旧請求項20についてはその全てを削除し、旧請求項21については、複合部品なる物の製造方法に係る発明についての請求項とし、そもそも複合部品の製造方法に係る発明に係る請求項であった旧請求項18又は19を引用するものとして新請求項21としたものであるから、訂正事項14による旧請求項20に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項15による旧請求項21に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
したがって、上記訂正事項1ないし21による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、訂正事項14による訂正により、新請求項20の特許請求の範囲が減縮されていることが明らかであって、また、訂正事項1ないし13及び15による訂正により、新請求項1ないし19及び21については、本件特許に係る明細書の記載に基づいて、請求項の記載を明確化しているものであるから、上記訂正事項1ないし21による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかである。
また、訂正事項1ないし14による訂正は、明らかな特許請求の範囲の減縮(旧請求項20)であるか、単に各請求項の記載の明確化を図ったものであるから、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
なお、訂正事項15による訂正は、「複合部品」なる物の発明に係るものであった旧請求項21が、「複合部品の製造方法」なる方法の発明に係る新請求項21に訂正され、発明のカテゴリーが変更されている点で、特許請求の範囲の実質的変更に該当するものと認められるが、上記(1)に示したとおり、当審が通知した特許請求の範囲の記載不備(特許法第36条第6項第2号不適合)に係る新たな取消理由において指摘した旧請求項21のいわゆるプロダクト・バイ・クレーム形式で複合部品なる物の発明が表されたことによる不備について、旧請求項21につき、複合部品なる物の製造方法に係る発明についての請求項とし、そもそも複合部品の製造方法に係る発明に係る請求項であった旧請求項18又は19を引用するものとして新請求項21としたものであるから、例外的に許容すべきものであって、特許請求の範囲の実質的変更に該当するものとはしない。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものであって、新請求項20について請求項に係る特許請求の範囲が減縮されており、新請求項21については新請求項18又は19を択一的に引用しており、その他の請求項についても訂正の前後において引用関係が変化しているものではない。
してみると、上記訂正事項1ないし15による訂正は、特許法第120条の5第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件
上記第1の2.に示したとおり、本件異議申立は旧請求項1ないし21の全請求項につきされたものであるから、本件訂正により訂正された新請求項につき、異議申立がされていない新請求項は存在しない。
してみると、本件訂正後の新請求項1ないし21に係る各発明につき、いわゆる独立特許要件につき判断することを要しない。

(4)訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において(読み替えて)準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-21〕について訂正を認める。

第4 本件特許に係る発明
上記第3で説示したとおり、上記本件訂正は適法であるから、本件特許の請求項1ないし21に係る発明は、訂正された請求項1ないし21にそれぞれ記載された事項で特定される、以下のとおりのものである。(下線は、訂正された部分につき当審が付した。)
「【請求項1】
個別的リボンのアレイを含む、又はさらには該アレイのみから構成される中間材料であって、各リボンは、そのリボンの各面が熱可塑性繊維のベールと接着によって結合した一方向性強化繊維のテープで構成される上記中間材料において、垂直方向に連続した2つの層のリボンが、交差の有無にかかわらないが織り交ざることなく重ね合わせられるように、前記垂直方向に連続した2つの層に配置され、リボンとそれが重ね合わされるリボン(単数又は複数)の間の結合は接着によって確保され、各層で、リボンは少なくともそれらの長さの大部分にわたって互いに実質的に平行して配置されているが、互いに独立して間隔があり、少なくとも垂直方向に連続した2つの層のリボンは2つの異なる方向に伸長し、かつ、前記垂直方向に連続した2つの層のリボンが、前記垂直方向に連続した2つの層のうちの1つの層におけるリボンの間の空間が、前記垂直方向に連続した2つの層のうちの他の層のリボンによって全面的カバーされないように配置されることを特徴とする上記中間材料。
【請求項2】
リボンの各層が、0.5から9%の範囲の開口係数を有することを特徴とする、請求項1に記載の中間材料。
【請求項3】
平行ゾーンで、1つの層の中の2つの隣接したリボンの間の間隔が0.4mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の中間材料。
【請求項4】
各層で、2つの隣接したリボンの間のリボン幅/間隔の比が、7から150の範囲に入ることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項5】
プレフォームであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項6】
3以上の層を有し、その一部にリボンが同一方向に向けられる連続した層を含み、リボンが同一の方向に向けられる層のリボンの完全又はほぼ完全な重なりがあることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項7】
各リボンがほぼ一定の幅を有し、その全長にわたる標準偏差が0.25mm未満であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項8】
熱可塑性繊維のベールの全質量が、材料の全質量の0.1から10%に相当することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項9】
強化繊維が、以下の材料:炭素、ガラス、アラミド、シリカ、セラミック及びそれらの混合物から選択される材料で作られることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項10】
各個別的リボンの接着が、縫うこと、織ること、又は編むことなしに確保されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項11】
各リボン内のベールが0.2から20g/m^(2)の範囲の表面質量を有する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項12】
前記熱可塑性繊維のベールが、ポリアミド(PA、例えばPA6、PA12、PA11、PA6.6、PA6.10、PA6.12、コポリアミド(CoPA)、ポリアミド-ブロックエーテル若しくはエステル(PEBAX、PEBA)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート-PET-、ポリブチレンテレフタレート-PBT、コポリエステル(CoPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアセタール(POM、C2?C8のポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン-PP、高密度ポリエチレン-HDPE、低密度ポリエチレン-LDPE、低密度線状ポリエチレン-LLDPE---)及び/又は後者のコポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU---)、ポリフェニレンスルホン(PPSU---)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、又はポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フェノキシ樹脂、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレートコポリマー(SBM)、ブチル-メチルメタクリレートメチルメタクリレート-アクリレートコポリマー(MAM)などのブロックコポリマー、並びにそれらの混合物から選択される材料を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項13】
各リボンが、その各面が熱可塑性繊維のベールに結合している、100から280g/m^(2)の表面質量を有する炭素繊維の一方向性テープからなり、前記ベールの各々は、0.5から50ミクロンの厚さを有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項14】
各リボンが、80から380ミクロンの厚さを有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項15】
各リボンの厚さが、厚みの変動が標準偏差に関して20μmを超えない低い変動性を有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項16】
各リボン内の一方向性テープが炭素繊維のみからなることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の中間材料の製造方法において、
a)その各面が熱可塑性繊維のベールと結合した一方向性強化繊維の閉じたテープで構成される少なくとも1つの個別的リボンを準備する工程であって、一方向性繊維のテープとベールの間の結合は熱可塑性繊維の少なくとも部分的融合によって確保される工程と、
b)垂直方向に連続した2つの層のリボンが、交差の有無にかかわらないが織り交ざることなく重ね合わせられるように、且つ各層で、リボンは少なくともそれらの長さの大部分にわたって互いに実質的に平行して配置されているが、互いに独立して間隔があり、少なくとも垂直方向に連続した2つの層のリボンは2つの異なる方向に伸長するように、そのようなリボンを垂直方向に連続した2つの層に配置する工程と、
c)リボンとそれが重ね合わされるリボン(単数又は複数)の間の結合を、熱可塑性繊維の少なくとも部分的融合によって確保する工程と
を含むことを特徴とする上記方法。
【請求項18】
複合部品の製造方法において、
a)請求項1から16までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの材料を有する工程と、
b)請求項1から17までのいずれか一項に記載の異なる材料を任意選択で積み重ね、それらをプレフォームの形で任意選択で固化する工程と、
c)注入又は射出によって熱硬化性及び/又は熱可塑性樹脂を添加する工程と、
d)温度が定義され加圧下にあるサイクルの後に、重合/網状化工程によって好ましい部品を強化し、続いて冷却する工程と
を含むことを特徴とする上記方法。
【請求項19】
熱硬化性又は熱可塑性樹脂又は2つの混合物が、減圧下で注入によって材料(単数又は複数)に加えられることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(削除)
【請求項21】
前記複合部品が、50から63%の繊維容積率を有することを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。」
(以下、上記請求項1ないし21に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明21」という。また、併せて「本件発明」ということがある。)

第5 当審の判断

1.請求項20に係る異議申立について
本件異議申立に係る請求項20に対する申立は、上記第3及び第4で示したとおり、適法な訂正により請求項20の全ての内容が削除されたから、不適法なものであり、却下すべきものである。

2.取消理由1について

(1)各甲号証刊行物の発行日について
取消理由1につき検討するにあたり、上記甲1ないし4に係る刊行物としての発行日について確認すると、甲1及び4は、いずれも本願の優先権主張の基礎となる第一国出願の日(いわゆる優先日)以降に発行(公表)された本邦の特許公表公報であり、特許法第29条第1項第3号に規定された「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」に該当するものではない。
したがって、特許法第29条(第2項)違反に係る取消理由1につき検討するにあたり、甲1及び4を証拠とすることは不適当であるから、本件異議申立において、甲1及び4に基づく取消理由1についての検討は行わない。

(2)甲2及び3に記載された事項及び甲2及び3に記載された発明
なお、以下の摘示において、記載事項又はその訳文における下線は当審が付したものである。

ア.甲2について

(ア)甲2に記載された事項
甲2には、以下の(2a)ないし(2g)の事項が記載されている。

(2a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維からなるシート状の強化繊維基材の少なくとも片面に、短繊維からなる不織布が積層され、該不織布を形成する短繊維が該強化繊維基材に貫通することにより、該強化繊維基材と該不織布が一体化されていることを特徴とする複合強化繊維基材。
・・(中略)・・
【請求項3】
強化繊維からなるシート状の強化繊維基材の少なくとも片面に、不織布が積層され、該不織布を構成する繊維のうち5?50重量%が低融点繊維であり、強化繊維基材と不織布が熱融着により一体化されていることを特徴とする複合強化繊維基材。
【請求項4】
前記強化繊維基材における強化繊維糸条の繊度が550?270000デシテックスであって、かつ該強化繊維1本あたりのフィラメント数が1000?400000本である請求項1ないし3のいずれかに記載の複合強化繊維基材。
・・(中略)・・
【請求項8】
前記不織布に低融点の熱可塑性ポリマーからなる低融点繊維が含まれている請求項1ないし3のいずれかに記載の複合強化繊維基材。
・・(中略)・・
【請求項12】
前記強化繊維基材は、強化繊維糸条が該基材の長さ方向に配列してなる一方向シートである請求項1ないし3のいずれかに記載の複合強化繊維基材。
・・(中略)・・
【請求項14】
前記一方向シートまたは一方向織物において、強化繊維糸条と強化繊維糸条の間に0.1?5mmの隙間を設けて、該強化繊維糸条が長さ方向に配列した請求項12または13に記載の複合強化繊維基材。
・・(中略)・・
【請求項18】
強化繊維が炭素繊維である請求項1ないし3のいずれかに記載の複合強化繊維基材。
・・(中略)・・
【請求項21】
請求項1ないし20のいずれかに記載の複合強化繊維基材を、強化繊維基材と不織布とが交互になるように多数枚積層したことを特徴とするプリフォーム。
【請求項22】
前記複合強化基材同士が不織布に含まれる低融点繊維の融着により一体化されている請求項21に記載のプリフォーム。
・・(後略)」

(2b)
「【0001】
本発明は、繊維複合材料として優れた特性を発揮する複合強化繊維基材並びにその複合基材からなるプリフォームおよびそのプリフォームを用いた繊維強化プラスチックの製造方法に関する。」

(2c)
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、賦形性に優れて、成形後の耐衝撃性に優れる複合強化繊維基材を提供することにある。また、前記の複合強化繊維基材を使用して、繊維配向が乱れず、ハンドリング性および成形されたときに耐衝撃性に優れるプリフォームを提供することにある。さらに、耐衝撃性に優れ、信頼性の高いFRPが安価に製造可能な繊維強化プラスチックの製造方法を提供することにある。」

(2d)
「【発明の効果】
【0016】
本発明の複合強化繊維基材は、成形型に対するフィット性に優れ、皺を発生させずプリフォームを得ることができる。本発明のプリフォームはハンドリング性に優れ、また基材の層間に繊維からなる不織布層が存在するから、耐衝撃性に優れるFRPが得られる。また、本発明のFRPの製造方法によれば、プリプレグ加工を行わずにFRPが成形されるから、安価な成形品が得られ、かつFRPの層間に正確にインターリーフ層を設けることができ、信頼性に優れるFRP成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わる複合強化繊維基材の概念を示す部分破断斜視図である。
【図2】本発明に係わる複合強化繊維基材を構成する基材が一方向シートの場合の斜視図である。
【図3】本発明に係わる複合強化繊維基材で、構成基材が一方向織物の場合の斜視図である。
【図4】本発明に係わる複合強化繊維基材で、構成基材が一方向ノンクリンプ織物の場合の斜視図である。
【図5】本発明に係わる複合強化繊維基材で、構成基材が二方向織物の場合の斜視図である。
【図6】本発明に係わる複合強化繊維基材で、構成基材がステッチ布帛の場合の斜視図である。
【図7】不織布と基材が繊維の貫通により一体化している状態を示すモデル図である。
【図8】本発明のFRPの成形法を示す1実施例を示す図である。
【図9】本発明の成形法に使用する樹脂拡散媒体の1実施例を示す図である。
【図10】芯鞘型繊維の斜視図である。」

(2e)
「【0019】
図2?図6に本発明の複合強化繊維基材1の様々な実施態様の部分破断斜視面を示した。
【0020】
図2は強化繊維糸条4が複合強化繊維基材1の長さ方向に並行に配列した一方向シート状物の片面に不織布3を一体化したものである。
【0021】
また、図3は強化繊維糸条4が基材2の長さ方向、つまりたて方向に配列し、よこ方向に強化繊維糸条より細い補助糸5が配列し、経糸4と緯糸5が交錯し、織組織した一方向織物の片面に不織布3を一体化したものである。
【0022】
図4は基材2の長さ方向、つまり織物のたて方向に強化繊維糸条4と補助糸6が配列し、よこ方向に補助糸5が配列し、よこ方向の補助糸5がたて方向の補助糸6と交錯し、強化繊維糸条4が緯糸5と交錯すること無く、真直ぐに配列した、いわゆる一方向ノンクリンプ織物の片面に不織布3を一体化したものである。
【0023】
一方向シート状物や一方向ノンクリンプ織物などのように強化繊維が一方向に配置されている場合、強化繊維糸条間に0.1?5mm程度の隙間を設け平行に配列することにより、RTM成形や真空バッグ成形での樹脂の流れがよくなり、かつ樹脂含浸速度が速くなるため好ましい。
【0024】
図5は基材2の長さ方向、つまりたて方向に強化繊維糸条4が配列し、よこ方向に強化繊維糸条7が配列し、経糸4と緯糸7が交錯し、織組織した二方向織物の片面に不織布3を一体化したものである。
【0025】
このとき、たて方向およびよこ方向の少なくとも一方の強化繊維糸条が扁平な断面形状を持つものであることにより、たて方向の糸条とよこ方向の糸条が互いに交差したときの屈曲(クリンプ)を小さくすることができ、コンポジットにした場合の強度を向上させることができる。扁平な強化繊維糸条は、幅が4?30mm、厚みが0.1?1.0mmの範囲のものが、屈曲を小さく、かつ製織性のよい二方向織物ができ好ましい。
【0026】
また、図6は並行に配列した強化繊維糸条4が基材2の長さ方向(0°)に配列した層8と幅方向(90°)に配列した層9および斜め方向(±α°)に配列した層10、11が交差し、これらの層が細いガラス繊維糸またはポリアラミド繊維糸やポリエステル繊維糸などの有機繊維からなるステッチ糸12で縫合されたステッチ布帛の片面に不織布3を一体化したものである。なお、ステッチ布帛における強化繊維糸条の配列は、前記に限定するものではなく±α°の2方向や0°、±α°の3方向やこれらとマット状物との組み合わせであってもよい。
【0027】
図2?図6において、基材の片面に不織布を一体化したものを示したが、必ずしも片面に限定するものでは無く、基材の両面に不織布を一体化してもよい。」

(2f)
「【実施例】
【0077】
実施例1
強化繊維基材として、繊度8000デシテックス、引張強度4800MPa、弾性率230GPa、破断伸度2.1%、フィラメント数12,000本の扁平状の炭素繊維糸を経糸、および緯糸に用い、経糸および緯糸の密度が1.25本/cm、織物目付200g/m^(2)の二方向織物を用いた。
・・(中略)・・
【0083】
また、不織布としては、融点が260℃の高融点ナイロン短繊維と融点が140℃の低融点ナイロン短繊維を60:40の比率で混合し、カード装置にてウエブを形成、積層した後、10倍延伸した、8g/m^(2)目付の不織布を用いた。
・・(中略)・・
【0087】
そして、前記強化繊維基材と不織布を一緒に合わせてニードルパンチング装置に供給し、パンチング密度6パンチ/cm^(2)でニードルパンチを行い、不織布を構成する短繊維を強化繊維基材に貫通させ、一体化させた。
【0088】
一体化された基材は、不織布の短繊維が強化繊維基材に貫通されて一体化されているので、基材をカットしても織糸が解れたりすることなく取扱い性が良好であった。また、不織布自身も伸縮性を有しているので織物自身のフィット性を阻害されるようなことがなく、曲面を有する成形型に容易に沿わせることが可能であった。
【0089】
次いで、一体化基材のコンポジット特性を評価するために真空バック成形で硬化板を作成した。
用いた樹脂は3M社製エポキシ樹脂PR500で、110℃に樹脂を加熱して注入し、177℃×4時間で硬化させた。
【0090】
積層方法は、強化繊維基材と不織布が交互となる様に積層し、1枚積層する毎にアイロンで不織布に含まれる低融点ナイロンを溶融させて互いに接着させた。
【0091】
一体化基材がずれたり、皺が発生することなく成形型板上にセットすることができた。
【0092】
繊維体積割合(Vf)評価用の硬化板を、一体化基材を350mm×350mmサイズでカットし、同方向に6枚積層して成形した。・・(中略)・・
【0096】
また、衝撃特性であるCAI(落錘衝撃後の圧縮強度)評価用としては、一体化基材を350mm×350mmサイズに切断し、織物の経糸方向を0°、緯糸方向を90°として、積層構成は(±45°)/(0°,90°)を6回繰り返して12枚積層した上に、(0°,90°)/(±45°)の構成で12枚を対称積層し、それぞれ成形型板上にセットして〔(±45°)/(0°,90°)〕6Sの疑似等方板を得た。
・・(中略)・・
【0107】
実施例2
実施例1に用いた強化繊維基材ならびに不織布を用い、ニードルパンチで一体化した後、ホットローラで不織布に含まれる低融点ナイロンの融点以上の温度に加熱・圧着させた一体化基材とし、以下実施例1と同じ方法で評価し、結果を表1にまとめた。
・・(中略)・・
【0117】
実施例4
強化繊維基材として、経糸に繊度8000デシテックス、引張強度4800MPa、弾性率230GPa、破断伸度2.1%、フィラメント数12,000本、糸幅6.5mmの扁平状の炭素繊維糸を、緯糸に繊度が225デシテックスのガラス繊維糸を使用し、経糸の密度が3.75本/cm、緯糸の密度が3.0本/cm、炭素繊維糸の目付が300g/m^(2)、カバーファクターが99.7%の一方向織物を用いた。
【0118】
同織物は、太い経糸が細い緯糸で一体化されており、経糸の炭素繊維糸はほとんどクリンプすることない織物構造であるために、織糸がずれ易く不安定な織物であった。
【0119】
不織布としては、実施例1で用いた不織布と同じものを用い、また実施例1同じ方法でニードルパンチで一体化させた。
【0120】
強化繊維基材単独では形態不安定であったが、ニードルパンチで不織布と一体化させることにより、形態が安定して取扱い性が大幅に改善されていた。
【0121】
本一体化基材のコンポジット特性を評価するために積層構成以外は実施例1と同じ方法で成形を行った。
繊維体積割合(Vf)評価用の硬化板は、実施例1と同様に、一体化基材を350mm×350mmサイズでカットし、同方向に4枚積層して成形した。
【0122】
また、衝撃特性であるCAI評価用としては、一体化基材を350mm×350mmサイズに切断し、繊維の長手方向を0°として、積層構成は-45°/0°/+45°/90°の順に2回繰り返して8枚積層した上に、90°/+45°/0°/-45°を2回繰返して8枚積層し、対称積層して成形型板上にセットして(-45°/0°/+45°/90°)2Sの疑似等方板を得た。
【0123】
それぞれの試験結果は、実施例1と同様に試験を行い、表2にまとめた。
・・(中略)・・
【0131】
実施例5 実施例4と同様にニードルパンチで一体化した後にホットローラで加熱・圧着させた以外は実施例5と同じ方法で評価した結果を表2にまとめた。
【0132】
不安定な織物を不織布の低融点繊維により接着を付与させたので、実施例4のニードルパンチだけの一体化よりも形態安定性が優れ、非常に取扱い性の優れた基材であった。
【0133】
またコンポジットの引っ張り強度、CAIも実施例4とほぼ同等の結果で優れた基材であった。
【0134】
実施例6
実施例4で用いた強化繊維基材に、実施例3で用いた粘着剤を3g/m^(2)塗布し、融点が260℃の高融点ナイロン繊維100%からなる、目付が8g/m^(2)のスパンボンドタイプの不織布を接着させて一体化し、実施例4と同様の方法で硬化板の作成、評価を行った。結果を表2にまとめた。
【0135】
強化繊維基材に粘着剤で不織布を接着させているので、形態安定性に優れ、取扱い易い基材であった。
【0136】
またコンポジットの引張強度、CAIも高い値を発揮し、優れた基材であった。
【0137】
比較例7
不織布として比較例3で用いた、融点が約140℃のナイロンからなる目付が10g/m^(2)のメルトブロー長繊維不織布を用い、実施例4に用いた強化繊維基材と合わせてホットローラによる加熱・圧着で接着させて一体化基材とし、実施例4と同じ方法でコンポジット特性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0138】
この一体化基材は、強化繊維基材は不織布の低融点繊維により強固に熱接着されているので、基材として非常に形態安定性に優れ、取扱い易い基材であった。しかし、余りに強固に接着されているためにフィット性が劣っていた。
【0139】
コンポジットの引張強度は、所定の繊維配向させることができたので、高い値を発揮したが、不織布を構成する繊維が低融点であるために成形中に樹脂中に溶解してしまい、CAIは低く、不織布存在の効果が得られなかった。
【0140】
【表1】


【0141】
【表2】


【符号の説明】
【0142】
1:複合強化繊維基材
2:強化繊維基材
3:不織布
4:強化繊維糸条
5:よこ方向補助糸
6:たて方向補助糸
7:緯糸
8:0°方向に配向した強化繊維糸条
9:90°方向に配向した強化繊維糸条
10:-45°方向に配向した強化繊維糸条
11:+45°方向に配向した強化繊維糸条
12:ステッチ糸
13:不織布の繊維
・・(後略)」

(2g)





(イ)甲2に記載された発明
甲2には、上記の記載事項(特に下線部)からみて、
「間隔を空けて並行に配列した強化繊維糸条からなるシート状の強化繊維基材の少なくとも片面に、不織布が積層され、該不織布を構成する繊維のうち一部が低融点繊維であり、強化繊維基材と不織布が熱融着により一体化されている複合強化繊維基材を、強化繊維基材と不織布とが交互になり、複合強化基材同士が、強化繊維糸条が異なる方向になるように不織布に含まれる低融点繊維の融着により一体化されるよう多数枚積層したプリフォーム」
に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

イ.甲3について

(ア)甲3に記載された事項
甲3には、申立人が申立書第31頁第3行ないし第32頁第20行で主張するとおり、以下の(3a)ないし(3f)の事項が記載されている。
なお、訳文は、申立人が提示したものを当審が加筆修正したものである。

(3a)
「Reinforcing product(1) comprising a first layer(2) of reinforcing threads(3) parallel to each other and a second layer(4) of reinforcing threads(5) parallel to each other and transverse to the first layer(2,2a),characterized in that the reinforcing threads(3,3a) in the first layer(2) are partially covered by a powder(7) based on a thermoplastic or thermosetting material forming a bond firstly at points between the reinforcing threads(3) in the first layer(2),and secondly between the reinforcing threads(3) in the first layer(2) and the reinforcing threads(5) in the second layer(4).」
(互いに平行な補強糸条(3)の第1層(2)と、互いに平行で前記第1層(2、2a)を横断する補強糸条(5)の第2層(4)とを含む補強製品(1)であって、第1層(2)における補強糸条(3、3a)は、第1に第1層(2)における補強糸条(3)の間の接着を、および第2に第1層(2)における補強糸条(3)と第2層(4)における補強糸条(5)との間の接着を形成する熱可塑性または熱硬化性材料系のパウダー(7)によって部分的に被覆されることを特徴とする補強製品(1)。)
(第3頁右欄「[0058]」の下の請求項1の欄)

(3b)
「[0008]On the other hand, when the layers are composed essentially of threads coated with or clad in a thermoplastic material,the bond between the different layers is undoubtedly more homogenous,but the coating or cladding forms a film screen for the injected matrix over the entire developed area of the threads.・・(後略)」
(他方、各層が本質的に熱可塑性材料でコーティングされるかまたは被覆された糸条からなる場合、異なる層間の接着は、確実に均一化されるが、そのコーティング又は被覆は、糸条が存在する部分の全てに展開されて、注入されたマトリックスに対する遮蔽層を形成する。)(第1頁左欄)

(3c)
「[0009]The purpose of the invention is to overcome these disadvantages by proposing a new reinforcement or reinforcing product in plane form with a coherent nature, while having a large surface area compatible with subsequent impregnation of the reinforcement product with a resin type matrix.・・(後略)」
(本発明の目的は、樹脂マトリックスの補強製品への含浸注入に適する大表面を有する平面形状の新規な補強材または補強製品を提案することによって、その欠点を解消することにある。)(第1頁左欄)

(3d)
「[0020]FIG.1 is a partial perspective view diagrammatically showing aportion of the new product according to the invention.」
(図1は、本発明の新製品の一部を概略的に示す部分斜視図である。)(第1頁右欄)

(3e)
「[0025]FIGS.1and2 show that the new product,denoted as a whole by reference 1,is composed of at least one first layer 2 of reinforcing threads 3 in tension and parallel to each other at constant intervals from each other in the example illustrated.These reinforcing threads 3 may be qualified as warp threads,in analogy to a manufacturing process similar to weaving.」
(図1および2は、参照符号1によって示される新製品につき、互いに一定の間隔をもち、張力も有する平行な補強糸条3により、少なくとも1つの第1層2が形成されることを示す。これらの糸条3は、織成製造プロセスにおける経糸とみなすことができる。)(第1頁右欄)

(3f)




(図面頁)

(イ)甲3に記載された発明
甲3には、上記の記載事項(特に下線部)からみて、
「互いに平行で間隔を有する補強糸条(3)の第1層(2)と、互いに平行で間隔を有し前記第1層(2、2a)を横断する補強糸条(5)の第2層(4)とを含む補強製品(1)であって、第1層(2)における補強糸条(3、3a)は、第1に第1層(2)における補強糸条(3)の間の接着を、および第2に第1層(2)における補強糸条(3)と第2層(4)における補強糸条(5)との間の接着を形成する熱可塑性または熱硬化性材料系のパウダー(7)によって部分的に被覆されている補強製品(1)」
に係る発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。

(3)本件発明1に係る検討
本件発明1(請求項1)に対する取消理由1につき検討する。

ア.甲2発明を引用発明とした場合について

(ア)対比・検討
本件発明1と甲2発明とを対比すると、下記の2点で相違し、その余で一致するものと認められる。

相違点1:本件発明1では、「個別的リボンのアレイを含む、又はさらには該アレイのみから構成される中間材料であって、各リボンは、そのリボンの各面が熱可塑性繊維のベールと接着によって結合した一方向性強化繊維のテープで構成される」ものであり、「各層で、リボンは少なくともそれらの長さの大部分にわたって互いに実質的に平行して配置されているが、互いに独立して間隔があ」り、「垂直方向に連続した2つの層のリボンが、前記垂直方向に連続した2つの層のうちの1つの層におけるリボンの間の空間が、前記垂直方向に連続した2つの層のうちの他の層のリボンによって全面的カバーされないように配置される」のに対して、甲2発明では、「間隔を空けて並行に配列した強化繊維糸条からなるシート状の強化繊維基材の少なくとも片面に、不織布が積層され」、「複合強化基材同士が、強化繊維糸条が異なる方向になるように・・多数枚積層」される点

そこで、上記相違点1につき検討する。
まず、本件発明1では、一方向性強化繊維のテープの表面に熱可塑性繊維のベールを結合してなるリボンアレイを間隔を空けて平行に配置して層を構成しているから、当該層において、間隔を空けた部分には熱可塑性繊維のベールが存在しないものと理解され、さらに2つの連続した層の間で、リボンが2つの異なる方向に伸長しているから、その2つの層で間隔を空けた部分が重複して、いかなる層も存在しない間隙部が存在するものと理解される。
それに対して、甲2発明では、間隔を空けて並行に配列した強化繊維糸条からなるシート状の強化繊維基材に対して不織布が積層されて複合強化繊維基材が形成されているから、当該間隔を空けた部分にも不織布が存在し、さらに2つの連続した複合強化繊維基材層の間で、強化繊維糸条が異なる方向になるように積層しているから、2つの連続した複合強化繊維基材における各強化繊維糸条の間の間隔を空けた部分につき重複部が存在するものの、その重複部にはいずれにしても不織布が存在するものと理解するのが自然である。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、その全体的構造、特に強化繊維のリボンの間隔を空けた部分の構造に係る上記相違点1に係る点で、実質的に相違するものと認められる。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る強化繊維のリボンの間隔を空けた部分の構造の点、すなわちリボンの間隔を空けた部分にベールの層が存在しないことにより、強化繊維糸条の間隔を空けた部分に不織布が存在する甲2発明に比して、複合部品の製造における熱可塑性/熱硬化性樹脂の含浸性/浸透性が改善されるという格別な効果を奏しているものと認められる。
なお、甲2発明に甲3に記載された事項を組み合わせることができるか否かにつき検討する。
甲3には、甲3発明が、熱可塑性材料でコーティングまたは被覆された強化繊維糸条からなる場合におけるマトリックス(樹脂)の注入に対する遮蔽層の生成を防止することを意図するものであることが開示されている(摘示(3b)参照)から、熱可塑性繊維を含む不織布を存在させる甲2発明において、甲3に記載された事項を組み合わせることを阻害する要因が存するものと認められ、甲2発明に対して甲3に記載された事項を組み合わせることを当業者が想起し得るとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(イ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ.甲3発明を引用発明とした場合について

(ア)対比・検討
本件発明1と甲3発明とを対比すると、以下の点で相違し、その余で一致するものと認められる。

相違点2:本件発明1では、「リボンは、そのリボンの各面が熱可塑性繊維のベールと接着によって結合した一方向性強化繊維のテープで構成される」のに対して、甲3発明では、「第1層(2)における補強糸条(3、3a)は、第1に第1層(2)における補強糸条(3)の間の接着を、および第2に第1層(2)における補強糸条(3)と第2層(4)における補強糸条(5)との間の接着を形成する熱可塑性または熱硬化性材料系のパウダー(7)によって部分的に被覆されている」点

上記相違点2につき検討する。
甲3発明における「補強糸条」は、「熱可塑性または熱硬化性材料系のパウダー(7)によって部分的に被覆されている」ものであるから、「補強製品(1)」となった時点で、同じ層における補強糸条同士の接着又は2つの層間における補強糸条同士の接着が、本件発明1における「一方向性強化繊維のテープ」又は「リボンとそれが重ね合わされるリボン(単数又は複数)の間の結合」と同視できる程度に接着されているものとはいえないし、また、「補強糸条」からなる層の表面に、本件発明1における「(熱可塑性繊維の)ベール」と同視できるような層が形成されるものともいえない。
してみると、上記相違点2は、構造上の実質的な相違点であって、その構造を明らかに異にするものであるから、甲3発明において、上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得ることということもできない。
なお、甲3発明に甲2発明を組み合わせることの可否につき検討すると、上記ア.で説示した理由と同様に、甲3発明が、熱可塑性材料でコーティングまたは被覆された強化繊維糸条からなる場合におけるマトリックス(樹脂)の注入に対する遮蔽層の生成を防止することを意図するものであるのに対して、甲2発明は、当該「遮蔽層」を形成する熱可塑性繊維を含む不織布が存在するのであるから、甲3発明に甲2発明を組み合わせることを阻害する要因が存するものと認められ、甲3発明に甲2発明を組み合わせることを当業者が想起し得るとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲3発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(イ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ.本件発明1に係るまとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明及び/又は甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(4)本件発明2ないし19及び21について
本件発明2ないし19及び21は、いずれも本件発明1を直接又は間接に引用するものであるところ、上記(3)で説示したとおり、本件発明1が、甲2発明及び/又は甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないのであるから、それを引用する本件発明2ないし19及び21についても、甲2発明及び/又は甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(5)取消理由1に係るまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし19及び21については、甲2発明及び/又は甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、申立人が主張する取消理由1は理由がない。

3.その他の取消理由について

(1)取消理由2及び3について
申立人が主張する取消理由2及び3は、いずれも旧請求項8に係る「ポリマー結合剤の全質量が、材料の全質量の0.1から10%に相当する」なる事項について、本件特許明細書に記載されていないという記載不備に起因するものと認められるところ、上記本件訂正により請求項8が適法に訂正され新請求項8の「熱可塑性繊維のベールの全質量が、材料の全質量の0.1から10%に相当する」とされ、当該「熱可塑性繊維のベールの全質量が、(中間)材料の全質量の0.1から10%」である場合につき、本件特許明細書の記載事項に照らして、記載されているに等しい事項といえるから、上記記載不備は、解消されたものと認められる。
したがって、取消理由2及び3については、理由がない。

(2)取消理由4について
申立人が主張する本件発明6(請求項6)に対する取消理由4につき検討すると、上記本件訂正により旧請求項6が適法に訂正され新請求項6とされており、「3以上の層を有」する場合において、「その一部にリボンが同一方向に向けられる連続した層を含み、リボンが同一の方向に向けられる層のリボンの完全又はほぼ完全な重なりがある」とされているところ、本件特許に係る明細書及び図面の記載を参酌すると、本件発明6で引用する本件発明1における「3以上の層を有」する場合において、【図3A】又は【図3B】で示される構造が一部含まれることを指すことは、当業者が看取できるものと認められる。(【図3A】が、完全に重なる場合で、【図3B】がほぼ完全な重なりがある場合であろうと解することができる。)
したがって、新請求項6の記載では、本件発明6が明確でないとまでいうことはできないから、取消理由4については、理由がない。

(3)当審が通知した新たな取消理由について
当審は、本件特許異議の申立てにつき審理するにあたり、本件特許の特許請求の範囲の記載を確認したところ、統一的に使用されていない技術用語による記載、各部材間の構造上の対応関係が不明となる記載及びいわゆるプロダクトバイプロセス形式による記載などが散見され、申立人が主張する上記各取消理由、特に取消理由1につき正確な判断を行うことに支障を来す可能性が存するものと判断し、申立人が主張する取消理由についての判断は保留とした上で、平成28年9月20日付けで特許請求の範囲の記載不備に係る新たな取消理由を職権に基づき通知した。
(よって、申立人が主張する取消理由1ないし4につき、上記取消理由通知では、いずれも通知していない。)
しかしながら、当審が通知した上記取消理由に係る特許請求の範囲に係る記載不備はいずれも上記適法にされた本件訂正により整理・解消されたものと認められるから、いずれも理由がないものとなった。
そして、上記適法にされた本件訂正により整理された本件特許に対する特許異議の申立てにつき、改めて申立人が主張する取消理由1ないし4についての検討を行うと、上記2.及び3.(1)並びに(2)でそれぞれ説示したとおりの理由により、いずれも理由がないものといえる。

第6 むすび
以上のとおり、申立人が主張する取消理由1ないし4によって、訂正後の本件の請求項1ないし19及び21に係る発明についての特許につき、取り消すことはできない。
また、ほかに、訂正後の本件の請求項1ないし19及び21に係る発明についての特許につき、取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件の請求項20に係る発明についての特許に対する本件特許異議の申立ては、不適法なものであり、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別的リボンのアレイを含む、又はさらには該アレイのみから構成される中間材料であって、各リボンは、そのリボンの各面が熱可塑性繊維のベールと接着によって結合した一方向性強化繊維のテープで構成される上記中間材料において、垂直方向に連続した2つの層のリボンが、交差の有無にかかわらないが織り交ざることなく重ね合わせられるように、前記垂直方向に連続した2つの層に配置され、リボンとそれが重ね合わされるリボン(単数又は複数)の間の結合は接着によって確保され、各層で、リボンは少なくともそれらの長さの大部分にわたって互いに実質的に平行して配置されているが、互いに独立して間隔があり、少なくとも垂直方向に連続した2つの層のリボンは2つの異なる方向に伸長し、かつ、前記垂直方向に連続した2つの層のリボンが、前記垂直方向に連続した2つの層のうちの1つの層におけるリボンの間の空間が、前記垂直方向に連続した2つの層のうちの他の層のリボンによって全面的カバーされないように配置されることを特徴とする上記中間材料。
【請求項2】
リボンの各層が、0.5から9%の範囲の開口係数を有することを特徴とする、請求項1に記載の中間材料。
【請求項3】
平行ゾーンで、1つの層の中の2つの隣接したリボンの間の間隔が0.4mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の中間材料。
【請求項4】
各層で、2つの隣接したリボンの間のリボン幅/間隔の比が、7から150の範囲に入ることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項5】
プレフォームであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項6】
3以上の層を有し、その一部にリボンが同一方向に向けられる連続した層を含み、リボンが同一の方向に向けられる層のリボンの完全又はほぼ完全な重なりがあることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項7】
各リボンがほぼ一定の幅を有し、その全長にわたる標準偏差が0.25mm未満であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項8】
熱可塑性繊維のベールの全質量が、材料の全質量の0.1から10%に相当することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項9】
強化繊維が、以下の材料:炭素、ガラス、アラミド、シリカ、セラミック及びそれらの混合物から選択される材料で作られることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項10】
各個別的リボンの接着が、縫うこと、織ること、又は編むことなしに確保されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項11】
各リボン内のベールが0.2から20g/m^(2)の範囲の表面質量を有する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項12】
前記熱可塑性繊維のベールが、ポリアミド(PA、例えばPA6、PA12、PA11、PA6.6、PA6.10、PA6.12、コポリアミド(CoPA)、ポリアミド-ブロックエーテル若しくはエステル(PEBAX、PEBA)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート-PET-、ポリブチレンテレフタレート-PBT、コポリエステル(CoPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアセタール(POM、C2?C8のポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン-PP、高密度ポリエチレン-HDPE、低密度ポリエチレン-LDPE、低密度線状ポリエチレン-LLDPE---)及び/又は後者のコポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU---)、ポリフェニレンスルホン(PPSU---)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、又はポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フェノキシ樹脂、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレートコポリマー(SBM)、ブチル-メチルメタクリレートメチルメタクリレート-アクリレートコポリマー(MAM)などのブロックコポリマー、並びにそれらの混合物から選択される材料を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項13】
各リボンが、その各面が熱可塑性繊維のベールに結合している、100から280g/m^(2)の表面質量を有する炭素繊維の一方向性テープからなり、前記ベールの各々は、0.5から50ミクロンの厚さを有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項14】
各リボンが、80から380ミクロンの厚さを有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項15】
各リボンの厚さが、厚みの変動が標準偏差に関して20μmを超えない低い変動性を有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項16】
各リボン内の一方向性テープが炭素繊維のみからなることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載の中間材料。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の中間材料の製造方法において、
a)その各面が熱可塑性繊維のベールと結合した一方向性強化繊維の閉じたテープで構成される少なくとも1つの個別的リボンを準備する工程であって、一方向性繊維のテープとベールの間の結合は熱可塑性繊維の少なくとも部分的融合によって確保される工程と、
b)垂直方向に連続した2つの層のリボンが、交差の有無にかかわらないが織り交ざることなく重ね合わせられるように、且つ各層で、リボンは少なくともそれらの長さの大部分にわたって互いに実質的に平行して配置されているが、互いに独立して間隔があり、少なくとも垂直方向に連続した2つの層のリボンは2つの異なる方向に伸長するように、そのようなリボンを垂直方向に連続した2つの層に配置する工程と、
c)リボンとそれが重ね合わされるリボン(単数又は複数)の間の結合を、熱可塑性繊維の少なくとも部分的融合によって確保する工程と
を含むことを特徴とする上記方法。
【請求項18】
複合部品の製造方法において、
a)請求項1から16までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの材料を準備する工程と、
b)請求項1から17までのいずれか一項に記載の異なる材料を任意選択で積み重ね、それらをプレフォームの形で任意選択で固化する工程と、
c)注入又は射出によって熱硬化性及び/又は熱可塑性樹脂を添加する工程と、
d)温度が定義され加圧下にあるサイクルの後に、重合/網状化工程によって好ましい部品を強化し、続いて冷却する工程と
を含むことを特徴とする上記方法。
【請求項19】
熱硬化性又は熱可塑性樹脂又は2つの混合物が、減圧下で注入によって材料(単数又は複数)に加えられることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(削除)
【請求項21】
前記複合部品が、50から63%の繊維容積率を有することを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-01 
出願番号 特願2013-520192(P2013-520192)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 村松 宏紀加賀 直人  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 大島 祥吾
橋本 栄和
登録日 2015-10-30 
登録番号 特許第5830095号(P5830095)
権利者 ヘクセル ランフォルセマン
発明の名称 間隔をあけた糸/ウェブのアレイからなる新規中間強化材  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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