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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A41B
管理番号 1330117
異議申立番号 異議2017-700286  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-21 
確定日 2017-06-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第5994036号発明「ビジネスシャツ用編地」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5994036号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5994036号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成28年5月18日に出願され、平成28年8月26日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第5994036号の請求項1?4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりであり、そのうち、請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項1】
目付が80?180g/m^(2)であり、コース密度が40?100個/2.54cmであるシングル丸編地からなり、丸編地がヨコボーダー柄を有し、繊度50?180dtexの糸条を用いたウエルト天竺組織が全体面積の50%以上を構成し、タテ方向の伸長率(EMT)が15?40%、ヨコ方向の伸長率(EMT)が10?25%であることを特徴とするビジネスシャツ用編地。」

3.申立理由の概要
特許異議申立人は、以下の甲1?甲7を提出し、請求項1?4に係る発明は、1)甲1発明に、甲2、甲3の記載事項及び周知慣用技術の組み合わせに基づいて、あるいは、2)甲2発明、甲1、甲3の記載事項及び周知慣用技術の組み合わせに基づいて、当業者が容易に想到することができたものである旨主張している。
甲1:特開平4-11053号公報
甲2:特開2001-303403号公報
甲3:特開2013-104158号公報
甲4:「メリヤス技術必携(よこ編篇)」、日本繊維機械学会、昭和55年6月30日、増補改訂、p.61-69
甲5:相原英勝、「ニット入門講座」、株式会社センイ・ジヤァナル、1996年3月29日、p.101-102
甲6:「繊維技術データ集」、日本紡績協会、昭和46年10月1日、改訂3版、p.507
甲7:「ニットアパレルI ニットの基礎知識」、繊維産業構造改善事業協会、平成7年3月、p.147

4.当審の判断
(1)ビジネスシャツ用編地においては、「身体を大きく動かしたときの皮膚の伸縮性や関節の曲げ伸ばしに追随することが着用快適性に大きく影響」し、「特にヨコ方向に伸度が高いと身体の動きに追随しやすく快適になる」が、「逆にビジネスシャツのタテ方向は伸度が少ないことが、織物に近い保形性、ハリ、コシ感を得るために重要である」(本件特許明細書段落【0013】)ことから、請求項1に係る発明の編地では、「ヨコ方向の伸長率(EMT)が10?25%」、「タテ方向の伸長率(EMT)が15?40%」に設定し、このような「タテまたはヨコ方向の伸長率を実現するために、編地の主たる部分の組織をニットループとウエルトを交互に連続させたウエルト天竺としたこと」(同段落【0017】)を特徴とするものである。

(2)これに対し、特許異議申立人は、甲1には以下の甲1発明が記載されており(特許異議申立書6頁下から4行?7頁2行)、請求項1に係る発明は、甲1発明、甲2、甲3の記載事項、及び周知慣用技術に基づき、当業者が容易に想到することができた旨主張する(同13頁下から10行?17頁22行)。
「シングル丸編地からなり、
ウエルト天竺組織が全体面積の45.8%以上を構成し、
柄部を構成する組織がカノコ組織である、編地。」

請求項1に係る発明と甲1発明を対比すると、甲1発明はウエルト天竺組織からなる編地ではあるものの、ビジネスシャツ用に適したものではなく、請求項1に係る発明のように、ウエルト天竺組織で構成したシングル丸編地により、保形性、ハリ、コシ感を得つつ、伸縮性も得られるビジネスシャツ用編地としたものではない。
さらに、このようなビジネスシャツ用編地については、甲2?甲7のいずれにも記載も示唆もされていない。

(3)また、特許異議申立人は、甲2には以下の甲2発明が記載されており(特許異議申立書8頁10?24行)、請求項1に係る発明は、甲2発明、、甲1、甲3の記載事項、及び周知慣用技術に基づき、当業者が容易に想到することができた旨主張する(同18頁下から2行?20頁末行)。
「目付が90?150g/m^(2)であり、ウェール密度が30個以上/2.54cmであるシングル丸編地からなり、
丸編地がヨコボーダー柄を有し、繊度50?180dtexの糸条を用いた天竺組織及びカノコ組織で構成され、
タテ方向の伸長率(EMT)が12?50%、ヨコ方向の伸長率(EMT)が12?50%であり、
ヨコボーダー柄を構成する糸条が、酸化チタン微粒子を含むフィラメントからなり、
ヨコボーダー柄を形成する組織が天竺組織又はカノコ組織である、ビジネスシャツ用編地。」

請求項1に係る発明と甲2発明を対比すると、甲2発明は所定の目付、コース密度、糸の繊度に設定したシングル丸編地でビジネスシャツ用編地を形成したものではあるものの、請求項1に係る発明のように、ウエルト天竺組織で構成したシングル丸編地により、保形性、ハリ、コシ感を得つつ、伸縮性も得られるビジネスシャツ用編地としたものではない。
さらに、このようなビジネスシャツ用編地については、甲1、甲3?甲7のいずれにも記載も示唆もされていない。

(4)そして、請求項1に係る発明は、編地を「シングル丸編地で高密度に形成し、更に編組織としてウエルト天竺というニットループとウエルト組織を交互に編む組織で構成すること」(本件特許明細書段落【0010】)により、「編地のヨコ方向とタテ方向の伸長率が特定の範囲に調整できる特殊な編構造を採用することによってビジネスシャツのシルエットや保形性、着用快適性を満足するビジネスシャツ用に好適な編地」(同段落【0012】)を得るという、格別の効果を奏することができたものである。
よって、請求項1に係る発明は、甲1発明、甲2発明、甲3の記載事項、及び周知慣用技術の組み合わせに基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

(5)さらに、請求項2?4に係る発明は、いずれも請求項1に係る発明の全ての発明特定事項を有しているから、請求項2?4に係る発明も、甲1発明、甲2発明、甲3の記載事項、及び周知慣用技術の組み合わせに基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

5.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-06-22 
出願番号 特願2016-99791(P2016-99791)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A41B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長谷川 大輔  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 井上 茂夫
小野田 達志
登録日 2016-08-26 
登録番号 特許第5994036号(P5994036)
権利者 東洋紡STC株式会社
発明の名称 ビジネスシャツ用編地  
代理人 風早 信昭  
代理人 浅野 典子  

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