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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F01D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F01D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F01D
管理番号 1330141
異議申立番号 異議2017-700427  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-28 
確定日 2017-07-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6018368号発明「先端流路輪郭」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6018368号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6018368号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項7に係る特許(以下、「請求項1の特許」ないし「請求項7の特許」という。)についての出願は、平成23年8月9日(パリ条約による優先権主張 2010年(平成22年)8月20日 アメリカ合衆国)に出願されたものであって、平成28年10月7日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年4月28日に朝比一夫(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
請求項1ないし7の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。)は、それぞれ、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、
中心表面と前記ケーシングの下流セクションの間に形成されたディフューザであって前記タービンに流体結合しかつ前記後縁の下流に配置されたディフューザ、及び
前記先端に沿って測定して前記後縁から0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で前記先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜した前記ケーシングの下流セクションの傾斜
を備える装置であって、前記中心表面及び前記ケーシングの下流セクションが、前記後縁から少なくともほぼ平行であるか又は発散している、
装置。
【請求項2】
前記タービンバケットが最終段タービンバケットを含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記先端の傾斜が、前記先端の半径方向遠位端に沿って軸方向に形成される、請求項1又は請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記ケーシングの下流セクションの傾斜と前記先端の傾斜との差が10°以上である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記中心表面及び前記ケーシングの下流セクションが前記後縁から発散している、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記ディフューザの下流に配置されて前記ディフューザからの流体が流れ込む排熱回収ボイラ(HRSG)を備える、請求項1記載の装置。
【請求項7】
ケーシングと、前記ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、
前記タービンに流体結合しかつ前記後縁の下流に配置されたディフューザであって、前記後縁から前記ケーシングの下流セクションに、断面積が前記後縁から少なくとも縮小しないディフューザ流路を形成するディフューザ、及び
前記先端に沿って測定して前記後縁から前記タービンバケットの0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で前記先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜した前記ケーシングの下流セクションの傾斜を備える装置。」

第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証(以下、「甲1」ないし「甲6」という。)を提出し、次の異議理由を主張している。

1.各甲号証
甲1:特開2002-327604号公報
甲2:特開2002-221004号公報
甲3:特開2007-206022号公報
甲4:特開2009-52552号公報
甲5:特開2002-364310号公報
甲6:特開2010-71282号公報

2.異議理由
(1)異議理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件特許発明1ないし4及び7は、甲1ないし甲4に記載された発明であり、本件特許発明5は、甲1、甲3及び甲4に記載された発明であるから、本件特許発明1ないし5及び7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである(以下、「異議理由1」という。)。

(2)異議理由2(特許法第29条第2項)
本件特許発明1及び7は、甲1に記載された発明に基いて、
本件特許発明2及び3は、甲1及び甲2、甲1及び甲3または甲1及び甲4に記載された発明に基いて、
本件特許発明4は、甲1に記載された発明に基いて、
本件特許発明5は、甲1及び甲5に記載された発明に基いて、
本件特許発明6は、甲1及び甲6に記載された発明に基いて、
それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである(以下、「異議理由2」という。)。

(3)異議理由3(特許法第36条第6項第1号)
本件特許発明1ないし7は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明1ないし7に係る特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消すべきものである(以下、「異議理由3」という。)。

第4 当審の判断
[1]甲1ないし甲6の記載等
1.甲1の記載等
(1)甲1の記載
甲1には、「ガスタービン」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

1a)「【請求項1】 複数の段の動翼を含むタービンと排気室との間に環状のディフューザを有していて前記タービンと前記ディフューザと前記排気室とにより環状のガスタービン通路を形成しており、該ガスタービン通路に配置される前記複数の段の動翼は最終段動翼を含んでおり、流体が前記ガスタービン通路内を前記排気室に向かって流れるガスタービンにおいて、
前記ガスタービン通路の内壁の前記最終段動翼の先端部後縁よりも前記流体の流れに対して下流の部分に半径方向内側に突出する環状の段差部を形成したガスタービン。
【請求項2】 前記タービンの中心軸線から前記段差部までの距離が、前記タービンの中心軸線から前記最終段動翼の前記先端部後縁までの距離にほぼ等しくなっている請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】 前記段差部の前記流体の流れに対して上流側に位置する上流側端部が、前記最終段動翼の前記先端部後縁に隣接している前記ガスタービンの前記内壁に位置している請求項1または2に記載のガスタービン。
【請求項4】 前記段差部が、前記段差部の前記流体の流れに対して上流側に位置する上流側端部から前記タービンの中心軸線に対してほぼ平行に延びる直線状部分を含んでいる請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービン。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項4】)

1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガスタービン、特にガスタービン内のタービンとディフューザとの間の圧力を局所的に増大させることにより熱効率を高めるようにしたガスタービンに関する。」(段落【0001】)

1c)「【0003】圧縮機は圧縮機車室139内に複数の段からなる圧縮機動翼および圧縮機静翼を含んでいる。タービン150はタービン車室159内に複数の段からなる動翼および静翼を含んでいる。図に示すように、圧縮機130およびタービン150は同一の回転軸190上に設けられている。このタービン150は、ガスタービン通路180の内壁に設けられた複数の段の静翼と回転軸190上に設けられた複数の段の動翼とを有している。複数の段の動翼の各段においては、複数の動翼が回転軸190周りに周方向にほぼ等間隔に配置されている。
【0004】圧縮機130の入口部(図示しない)から進入した流体、例えば空気は、圧縮機130を通過して圧縮される。次いで、この流体は燃焼器140内の燃料と一緒に混合されて燃焼されると共に、複数の段、例えば四段の翼が取り付けられているタービン150を通過して、ディフューザ160を通って排気室170から排出される。
【0005】図7は、このガスタービン110のタービン150およびディフューザ160付近の拡大図である。図7にはタービン150の最終段の動翼151が示されている。理解を容易にするために、この図は最終段の動翼以外の翼を省略している。図7に示すように、動翼151の先端部はガスタービン通路180の内壁に追従するように略直線状に形成されている。図7に示すように、タービン150におけるガスタービン通路180の内壁は空気の流れ(矢印Fで示す)に関して下流方向に半径が増すように形成されており、ディフューザ160におけるガスタービン通路180の内壁も下流方向に半径が増すように形成されている。従って、タービン150を通過する流体は回転軸190から半径方向外側に広がりつつディフューザ160内に流入する。」(段落【0003】ないし【0005】)

1d)「【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明によれば、複数の段の動翼を含むタービンと排気室との間に環状のディフューザを有していて前記タービンと前記ディフューザと前記排気室とにより環状のガスタービン通路を形成しており、該ガスタービン通路に配置される前記複数の段の動翼は最終段動翼を含んでおり、流体が前記ガスタービン通路内を前記排気室に向かって流れるガスタービンにおいて、前記ガスタービン通路の内壁の前記最終段動翼の先端部後縁よりも前記流体の流れに対して下流の部分に半径方向内側に突出する環状の段差部を形成したガスタービンが提供される。
【0011】すなわち、請求項1に記載の発明によって、ガスタービン通路を流れる流体の流線が先端部後縁と段差部の上流側端部との間において内方に曲げられて流線変化が生じる。従って、流線変化が生じた部分では、圧力が高められてマッハ数が低下し、圧力損失が少なくなってタービン効率を高めることができる。また、マッハ数が低下することにより衝撃波の発生が少なくなり、動翼の先端部が破損するのを妨げることができる。」(段落【0010】及び【0011】)

1e)「【0013】請求項3に記載の発明によれば、前記段差部の前記流体の流れに対して上流側に位置する上流側端部が、前記最終段動翼の前記先端部後縁に隣接している前記ガスタービンの前記内壁に位置している。すなわち、請求項3に記載の発明によって、上流側端部と先端部後縁との間がさらに狭くなるので、ガスタービン通路を流れる流体の流線をさらに曲げることができる。従って、マッハ数を低下させると共に圧力損失をさらに少なくしてタービン効率をさらに高めることができる。
【0014】請求項4に記載の発明によれば、前記段差部が、前記段差部の前記流体の流れに対して上流側に位置する前記上流側端部から前記タービンの中心軸線に対してほぼ平行に延びる直線状部分を含んでいる。すなわち請求項4に記載の発明によって、段差部を容易に形成することができる。」(段落【0013】及び【0014】)

1f)「【0019】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同一の部材には同一の参照符号が付けられている。図1は本発明の第一の実施形態を示すガスタービンの長手方向部分断面図である。前述した実施形態の場合と同様に、図1にはタービン50およびディフューザ60付近を拡大して示している。タービン50は最終段の動翼51を含んでいる。理解を容易にするために、この図は最終段の動翼以外の翼を省略している。図1に示すように、タービン50におけるガスタービン通路80の内壁は空気の流れ(矢印Fで示す)に関して下流方向に半径が増すように形成されており、ディフューザ60におけるガスタービン通路80の内壁も下流方向に半径が増すように形成されている。
【0020】ディフューザ60におけるガスタービン通路80の内壁においては環状の段差部20が動翼51の先端部後縁56よりも下流に設けられている。図1に示す実施形態においては、この段差部20は動翼51の先端部後縁56に最も近いガスタービン通路80の内壁の一部から半径方向内側に先端部後縁56まで突出している。段差部20の上流側端部21と先端部後縁56とは互いに接触していない。次いで、この段差部20は段差部20の上流側端部21から排気室70(図示しない)に向かってディフューザ60におけるガスタービン通路80内に下流方向に延びている。本実施形態においては、段差部20は回転軸(図示しない)の中心軸線に対してほぼ平行に延びる直線状部分22を有している。この直線状部分22を有している場合には、段差部20を容易に形成することができる。次いで、段差部20は屈曲部23においてわずかに外方に曲がって、ディフューザ60におけるガスタービン通路80の内壁に追従するように下流方向外側に延びている。」(段落【0019】及び【0020】)

1g)「【0032】
【発明の効果】各請求項に記載の発明によれば、ガスタービン通路を流れる流体の流線を曲げて、マッハ数を低下させて圧力損失を少なくすると共にタービン効率を高めることができるという共通の効果を奏しうる。さらに、マッハ数の低下により衝撃波が少なくなり、動翼の先端部の破損を少なくすることができるという共通の効果も奏しうる。」(段落【0032】)

(2)甲1発明
上記(1)及び図1ないし7の記載を総合すると、甲1には次の発明が記載されている。

「ガスタービン通路80の内壁と、ガスタービン通路80の内壁に近接した先端部及びタービン50を通る流体の流れの方向に対して後縁を有する動翼51とを備えるタービン50、
ガスタービン通路80の中心側表面と、後縁より下流部分のガスタービン通路80の内壁との間に形成されたディフューザ60であって、ガスタービンに連通しかつ後縁の下流に配置されたディフューザ60、及び
後縁よりも流体の流れに対して下流の部分のガスタービン通路80の内壁に段差部20が形成され、段差部20の上流側端部21からタービン50の回転軸の中心軸線に対してほぼ平行に延びる直線状部分22を備えるガスタービン。」(以下、「甲1発明1」という。)

「ガスタービン通路80の内壁と、ガスタービン通路80の内壁に近接した先端部及びタービン50を通る流体の流れの方向に対して後縁を有する動翼51とを備えるタービン50、
ガスタービンに連通しかつ後縁の下流に配置されたディフューザ60であって、ガスタービン通路80の中心側表面と、後縁より下流部分のガスタービン通路80の内壁との間に流路を形成するディフューザ60、及び
後縁よりも流体の流れに対して下流の部分のガスタービン通路80の内壁に段差部20が形成され、段差部20の上流側端部21からタービン50の回転軸の中心軸線に対してほぼ平行に延びる直線状部分22を備えるガスタービン。」(以下、「甲1発明2」という。)

2.甲2の記載等
(1)甲2の記載
甲2には、「ガスタービン」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

2a)「【0002】
【従来の技術】ガスタービンについて、図7を参照して説明する。ガスタービンは、一般に、ケーシング(翼環ないし車室など)1に円環に配列された複数段(この例では4段)の静翼1C?4Cと、ロータ(ハブないしベースなど)2に円環に配列された複数段(この例では4段)の動翼1S?4Sとを備える。なお、図7は、1段の静翼1Cおよび動翼1Sと、4段、すなわち、最終段の静翼4Cおよび動翼4S(実線の長円で囲まれた部分)とが図示されている。」(段落【0002】)

2b)「【0008】この発明は、圧力比が20以上で運転するガスタービンにおいて、衝撃波損失によるタービン効率の低下を確実に防ぐことができるガスタービンを提供することを目的とする。」(段落【0008】)

2c)「【0050】前記ダクト14のうち、ガスタービンに対向する端部から所定距離Lまでの部分のダクト壁16を、ガスタービンの軸O-Oに対して平行にもしくは内側に絞る(0°≦θ≦5°)。
【0051】ここで、前記ダクト壁16の距離Lは、最終段動翼4Sのチップ側の翼弦長Cの0.5倍以上3倍以下とする(0.5C≦L≦3C)。また、前記ダクト壁16の下流側のダクト壁17、18、19をたとえば2段階に折り曲げて従前のダクト(図4および図5中の二点鎖線にて示す)と同様の傾斜とする。
【0052】この実施の形態7のガスタービンは、ディフューザ通路15のうち、平行もしくは内側に絞ったダクト壁16における圧力(図4中の破線の円にて示す)が大きくなる。このために、前記ダクト壁16と対向する最終段動翼4Sのチップ流出側の圧力P3が大きくなるので、最終段動翼4Sのチップ側における圧力比ΔP4Sが小さくなる。これにより、最終段動翼におけるマッハ数を小さく抑制することができ、衝撃波損失によるタービン効率の低下を確実に防ぐことができる。」(段落【0050】ないし【0052】)

2d)「【0054】
【発明の効果】以上から明らかなように、この発明にかかるガスタービン(請求項1)は、最終段動翼の圧力差、すなわち、最終段動翼の圧力比を小さくすることにより、最終段動翼におけるマッハ数を小さく抑制することができる。このために、圧力比が20以上で運転するガスタービンにおいて、衝撃波損失によるタービン効率の低下を確実に防ぐことができる。」(段落【0054】)

(2)甲2発明
上記(1)及び図1、図4及び5の記載を総合すると、甲2には次の発明が記載されている。

「ケーシング1とケーシング1に近接したチップ及びガスタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有する最終段動翼4Sとを備えるガスタービン、
ロータ2とケーシング1の下流部分の間に形成されたディフューザ通路15であって、ガスタービンと連通し、かつ後縁の下流に配置されたディフューザ通路15、及び
後縁から最終側動翼4Sのチップ側の翼弦長Cの0.5倍以上3倍以下の長さの範囲でガスタービンの軸に対して平行もしくは内側に0°と5°の間で絞ったダクト壁16を備えた装置。」(以下、「甲2発明1」という。)

「ケーシング1とケーシング1に近接したチップ及びガスタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有する最終段動翼4Sとを備えるガスタービン、
ガスタービンと連通し、かつ後縁の下流に配置されたディフューザ通路15、及び
後縁から最終側動翼4Sのチップ側の翼弦長Cの0.5倍以上3倍以下の長さの範囲でガスタービンの軸に対して平行もしくは内側に0°と5°の間で絞ったダクト壁16を備えた装置。」(以下、「甲2発明2」という。)

3.甲3の記載等
(1)甲3の記載
甲3には、「温度計測装置、燃焼監視装置、及び、ガスタービン」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

3a)「【0021】
図1に示すガスタービンは、タービン本体10におけるタービン入口側(燃焼ガスの流れ方向の上流側)に、複数の燃焼器6が設置され、又、タービン本体10には、ロータ1(図2参照)の外壁に設置された動翼11と、ロータ1の外周を覆う内車室4(図2参照)の内壁に設置された静翼41とが、交互に並んでいる。そして、タービン本体10におけるタービン入口側(燃焼ガスの流れ方向の下流側)に、複数(本実施形態では燃焼器6の個数と同数であるものとする)の温度計測装置5が設置される。」(段落【0021】)

3b)「【0031】
図2に示すように、タービン本体10は、回転軸となるロータ1と、ロータ1の外壁に設置される動翼11と、ロータ1との間に燃焼ガスを流す空間を構成するようにロータ1の外周を覆う内車室4と、内車室4の内壁に設置される静翼41と、内車室4の外周側を覆うことで内車室4との間に冷却空気を流す空間を構成する外車室3と、を備える。尚、内車室4は外車室3と接続されることで固定される。又、ロータ1の後端(下流側)が、軸受ハウジング13に納められた軸受(ジャーナル軸受)12によって支持される。
【0032】
そして、このタービン本体10の下流側に、動翼11及び静翼41を流れた燃焼ガスを排気するための2重環状で構成されたディフューザ2が設置される。このディフューザ2は、その外壁面が最終段の動翼11のシュラウド面と同一面を形成する内側円筒21と、その内壁面が内車室4の内壁面と同一面を形成する外側円筒22と、内側円筒21の内側に設置された軸受ハウジング13を支持するために放射状に配置されたストラット23と、このストラット23を覆うとともに内側円筒21と外側円筒22とを接続して内側円筒21を固定するストラットカバー24と、外側円筒22と外車室3のそれぞれに接続して外側円筒22を固定する固定用リング25と、を備える。尚、ストラットカバー24は、タービン本体10からの排ガスに対する抵抗を低減する構造を備える。
【0033】
このディフューザ2において、内側円筒21と外側円筒22とを同心に配置されることで、内側円筒21と外側円筒22との間に環状の流路が形成される。このとき、内側円筒21は円筒形状であるが、外側円筒22は下流ほど直径が大きくなる円錐台形状を呈しており、このため、ディフューザ2は、上流から下流に向かって流路の断面積が次第に大きくなる、いわゆるコニカルディフューザーとなっている。そして、ストラットカバー24によって、内側円筒21と外側円筒22との間隔を保って環状流路の形状が維持される。」(段落【0031】ないし【0033】)

(2)甲3発明
上記(1)及び図2の記載を総合すると、甲3には次の発明が記載されている。

「内車室4と内車室4に近接した先端およびタービン本体10を通る燃焼ガスの方向に対して後縁を有する動翼11を備えるタービン本体10、及び
内側円筒21と外側円筒22との間に形成されたディフューザ2であって、タービン本体10と連通しかつ後縁の下流に配置されたディフューザ2を備えるガスタービンであって、ディフューザ2は、上流から下流に向かって流路の断面積が次第に大きくなるガスタービン。」(以下、「甲3発明1」という。)

「内車室4と内車室4に近接した先端およびタービン本体10を通る燃焼ガスの方向に対して後縁を有する動翼11を備えるタービン本体10、及び
タービン本体10と連通しかつ後縁の下流に配置されるとともに内側円筒21と外側円筒22との間に形成されたディフューザ2であって、上流から下流に向かって流路の断面積が次第に大きくなるディフューザ2を備えるガスタービン。」(以下、「甲3発明2」という。)

4.甲4の記載等
(1)甲4の記載
甲4には、「タービンディフューザシールの方法、システム及び装置」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

4a)「【請求項1】
タービンディフューザ(55)であって、
前端(75)及び後端(80)を有するディフューザセグメント(70)と、
前記ディフューザセグメント(70)の前記後端(80)に配置されたフランジ(85)と、
を備え、
前記ディフューザセグメント(70)が前記フランジ(85)を介して隣接ディフューザセグメント(90)に接合可能であり、
前記フランジ(85)が、シール(115)と半径方向に固定接続可能なシールリテーナ(120)を含む、
ことを特徴とするタービンディフューザ(55)。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

4b)「【0009】
図1は、ガスタービンエンジン8のようなタービンエンジン8の実施形態の概略図を示している。ガスタービンエンジン8は燃焼器10を含む。燃焼器10は燃料-酸化剤混合物を燃焼させて、高温で高エネルギーなガス流12を生成する。次いで、燃焼器10からのガス流12は、タービン14に移動する。タービン14は、タービンブレード(図示せず)の組立体を含む。ガス流12は、タービンブレード組立体にエネルギーを与え、タービンブレード組立体を回転させる。タービンブレード組立体は、シャフト16に結合される。シャフト16は、タービンブレード組立体の回転に応答して回転する。次いでシャフト16を用いて、圧縮機18に動力を供給する。シャフト16は、例えば、発電機のような異なる出力デバイス(図示せず)に出力17を任意選択的に提供することができる。圧縮機18は、酸化剤流20を取り入れて加圧する。酸化剤流20を加圧した後で、加圧酸化剤流23は燃焼器10に供給される。圧縮機18からの加圧酸化剤流23は、燃料供給システム28からの燃料流26と混合されて、燃焼器10内に燃料-酸化剤混合物を形成する。次いで燃料-酸化剤混合物は、燃焼器10内で燃焼プロセスを受ける。
【0010】
図2は、タービンエンジン8の1つの実施形態を示している。タービンエンジン8は、排気セクション50(本明細書では「排気システム」とも呼ばれる)を含む。排気セクション50は、排気セクション50のフレーム65(図3を参照すると最もよく分かり、本明細書では「排気フレーム」とも呼ばれる)の機内に半径方向に配置されたディフューザ55(本明細書では「タービンディフューザ」とも呼ばれる)を含む。ディフューザ55は、ステンレス鋼、例えば、高温排気ガスの温度に耐えることができ、従って、高温排気ガス温度に耐えることができない材料から作られたフレーム65を遮蔽するような材料で作られる。
【0011】
相対位置を説明するために本明細書で用いられる用語「後方」とは、下流側にある、すなわちタービンエンジン8の軸線方向の中心線40に沿って出口端部35に向かって位置付けられた相対位置を意味するものとする。相対位置を説明するために本明細書で用いられる用語「前方」とは、上流側にある、すなわちタービンエンジン8の軸線方向の中心線40に沿って入口端部45に向かって位置付けられた相対位置を意味するものとする。
【0012】
図3は、排気セクション50の拡大断面図を示している。フレーム65は、ステータケーシング60(本明細書では「外側ステータ」とも呼ばれる)の後端を支持する。ディフューザ55は、前端75及び後端80を含むディフューザセグメント70(本明細書では「前方ディフューザセグメント」とも呼ばれる)を含む。前方ディフューザセグメント70は、例えば、ディフューザセグメント70の後端80に配置された垂直フランジのようなフランジ85(本明細書では「第1のフランジ」とも呼ばれる)を更に含む。前方ディフューザセグメント70は、フランジ85を介して隣接ディフューザセグメント90(本明細書では「後部ディフューザセグメント」とも呼ばれる)に接合可能である。1つの実施形態では、後部ディフューザセグメント90は、例えば、後部ディフューザセグメント90の前端100に配置された垂直フランジのようなフランジ95(本明細書では「第2のフランジ」とも呼ばれる)を含み、前方ディフューザセグメント70は、第2のフランジ95への第1のフランジ85の接続を介して後部ディフューザセグメント90に接合される。1つの実施形態では、第1のフランジ85は、例えば、第1のフランジ85を第2のフランジ95に接続するボルト又はクランプのような固締具105を介して第2のフランジ95に接続される。例えば、溶接、ろう付け、及びリベット締めなど、第1のフランジ85を第2のフランジ95に接続するための追加構成を利用することができることは更に企図される。冷却空気110(波線で概略的に表される)は、圧縮機又はブロア(図示せず)によって提供され、ディフューザ55とフレーム65との間で循環され、ディフューザ55からフレーム65への熱伝達を低減する。予期せぬ漏出又は放出から生じた冷却空気11の消費増大により、結果としてブロア能力要件及び電力消費の増大をもたらし、これによりタービンエンジン8の全体の動作効率が低下する。」(段落【0009】ないし【0012】)

4c)「【0016】
ここで図4と併せて図3を参照すると、1つの実施形態は、前端75が軸線方向Aのフレーム65に対する移動が制約されるように、フレーム65によって支持された前方ディフューザセグメント70の前端75を提供する。前方ディフューザセグメント70の後端80は、フレーム65に対する自由度を含み、フレーム65に対する軸線方向Aの後端80の変位が制約されないようにする。」(段落【0016】)

(2)甲4発明
上記(1)及び図3の記載を総合すると、甲4には次の発明が記載されている。

「ステータケーシング60と、ステータケーシング60に近接した先端及びタービン14を通るガス流12の方向に対して後縁を有するタービンブレードとを備えるタービン14、及び
ロータ側の中心部とケーシングの下流領域の間に形成されたディフューザセグメント70であってタービン14に連通し、かつ後縁の下流に配置されたディフューザセグメント70、を備えるタービン排気システムであって、
ディフューザセグメント70は後縁に隣接する前端75を備えたものである、
タービン排気システム。」(以下、「甲4発明1」という。)

「ステータケーシング60と、ステータケーシング60に近接した先端及びタービン14を通るガス流12の方向に対して後縁を有するタービンブレードとを備えるタービン14、及び
タービン14に連通し、かつ後縁の下流に配置されたディフューザセグメント70であって、
後縁に隣接する前端75を設けたディフューザセグメント70を備える、
タービン排気システム。」(以下、「甲4発明2」という。)

5.甲5の記載等
(1)甲5の記載
甲5には、「排気ディフューザ」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

5a)「【0003】図5は従来技術の軸流排気蒸気タービンのディフューザ付近の軸線方向断面図である。図5においては、最終段の静翼210および動翼220を含むタービン200と中間胴400との間にディフューザ300が示されている。ディフューザ300は、ディフューザの外周側内壁310とディフューザの内周側内壁320とから構成されている。外周側内壁310および内周側内壁320によって、環状のタービン通路360がタービンの回転軸190周りに形成されている。さらに、ディフューザ300は傾斜部分340を含んでおり、外周側内壁310はタービン200から中間胴400にかけて半径方向に末拡がりになっている。
【0004】タービンの動作時に、タービン200の最終段動翼220を通過した流体、例えば高温ガスは、ディフューザ300内に形成された環状のタービン通路360を通過して、中間胴400に供給される。ディフューザ300の排出性能を高めるためには、流体がディフューザ300内において半径方向に広がりつつ減速する必要がある。しかしながら、図5に示すように、タービン200からディフューザ300内に流入した流体の主流F0は、ディフューザ300の内周側内壁320側を流れ、外周側内壁310側には流れない場合(実線で示す)や、逆にディフューザ300の外周側内壁310側を流れ、内周側内壁320側に流れない場合(破線で示す)がある。これは、タービン200の最終段動翼220の先端を通過する高速の流れがタービン200の最終段動翼220を通過する主流F0と混合しつつ流れる際に、外周側内壁310から流れが剥離して、剥離領域500が外周側内壁310付近に形成されるためである。これにより、主流F0は外周側内壁310でなくて内周側内壁320側を流れるようになる。また、逆のケースはタービン200の最終段動翼220を出た流れは三次元的な角度を有しており、一様な流れになっていないためディフューザ300内の内周内壁部で大きな剥離域が発生し排気性能の低下につながることとなる。
【0005】図6は従来技術の他のタービンのディフューザ付近の軸線方向断面図である。図面において同一の部材には同一の参照符号が付けられている。図6に示す従来技術においてはディフューザの排出性能を高めるために、ディフューザの傾斜部分340の傾斜角A0’を図5に示す傾斜角A0よりも大きくしている。しかしながら、剥離領域500が外周側内壁310、あるいは内周側内壁320付近に同様に形成されるので、図6に示す流体の主流F0’は、図5に示す流体の主流F0と同様に内周側内壁320側あるいは外周側内壁310側を流れることとなる。」(段落【0003】ないし【0005】)

6.甲6の記載等
(1)甲6の記載
甲6には、「ガスタービン排気ディフューザと排熱回収ボイラシステムの一体化」に関して図面とともに以下の記載がある。

6a)「【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ガスタービン排気ディフューザに関し、特に、典型的には排熱回収ボイラ(HRSG)システムの熱交換要素をガスタービン排気ディフューザの部品と一体化させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合サイクル発電システムにおいて、ガスタービンから排出される加熱排気ガスを、HRSGシステムにより熱源として用い、この熱を水源に伝達させて過熱蒸気を発生させることができる。更に、この過熱蒸気を、蒸気タービンの動力源として用いることもできる。加熱排気ガスは多くの場合、排気ディフューザを介してHRSGシステムに送られ、これにより、ガスタービンから排出される加熱排気ガスの運動エネルギを位置エネルギに変換し、静圧を増大させることが容易になる。加熱排気ガスは、HRSGシステムに送られた後、過熱器や再熱器、蒸発器、エコノマイザ等の一連の熱交換要素を通過する。これらの熱交換要素を用いて、加熱排気ガスの熱を水源に伝達し、過熱蒸気を発生させる。」(段落【0001】及び【0002】)

6b)「【0022】
ガスタービン12が如何に機能するかを詳説することにより、加熱排気ガス34が如何にガスタービン12からHRSG32に送られるかが理解できよう。そこで、図2に、図1のHRSG32の熱交換要素を自身の排気ディフューザの部品と一体的に有する図1のガスタービン12の実施形態の詳細側面図を示す。図1に関して説明したように、ガスタービン12は、タービン16と燃焼室18と圧縮機20とを含んでよい。空気は、吸気口64から流入し、圧縮機20により圧縮される。次に、圧縮機20からの圧縮空気は燃焼室18に導入され、圧縮空気と燃料ガスが混合される。燃料ガスは、複数の燃料ノズル66を用いて燃焼室18内に噴射される。圧縮空気と燃料ガスとの混合物は典型的に、燃焼室18内で燃焼して高温の高圧燃焼ガスが発生し、これにより、タービン16のトルクが生じる。タービン16のロータを圧縮機20のロータと結合し、タービン16のロータを回転させることにより圧縮機20のロータが回転するよう構成することができる。タービン16はこのようにして、圧縮機20と負荷14とを駆動させる。ガスタービン12のタービン16部からの排気ガスは、排気ディフューザ68に導入される。図2の実施形態では、排気ディフューザ68は放射流排気ディフューザであり、排気ガスは出口案内翼70により再誘導されて、排気ディフューザ68から外方(即ち半径方向)に90度方向転換し、排気プレナム(図示せず)を介してHRSG32の方へと排出される。その他の実施形態では、排気ディフューザ68は軸流ディフューザであってもよく、タービン16部からの排気ガスが、HRSG32の方へと軸方向に(即ち外方に90度方向転換することなく単一の直接経路で)案内される。」(段落【0022】)

[2]異議理由1及び2について
1.本件特許発明1について
(1)甲第1号証との対比・判断
本件特許発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1における「ガスタービン通路の内壁80」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「ケーシング」に相当し、以下同様に、「先端部」は「先端」に、「動翼」は「タービンバケット」に、「タービン50」は「タービン」に、「ガスタービン通路80の中心側表面」は「中心表面」に、「後縁より下流部分のガスタービン通路80の内壁」は「ケーシングの下流セクション」に、「ディフューザ60」は「ディフューザ」に、「ガスタービンに連通し」は「タービンに流体結合し」に、「ガスタービン」は「装置」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケーシングと、ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、及び
中心表面とケーシングの下流セクションの間に形成されたディフューザであってタービンに流体結合しかつ後縁の下流に配置されたディフューザ、
を備える装置。」

[相違点1]
本件特許発明1においては、「先端に沿って測定して後縁から0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える装置であって、中心表面及びケーシングの下流セクションが、後縁から少なくともほぼ平行であるか又は発散している」のに対して、甲1発明1においては、「後縁よりも流体の流れに対して下流の部分のガスタービン通路80の内壁に段差部20が形成され、段差部20の上流側端部21からガスタービンの中心軸線に対してほぼ平行に延びる直線状部分22を備える」点。

上記相違点1について検討する。

[相違点1について]
甲1発明1における、「直線状部分22」は、「段差部20の上流側端部21からガスタービンの中心軸線に対してほぼ平行に延びる」ものの、動翼51の先端に沿って測定して後縁から0.5翼弦長さの範囲内で動翼51の先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°の傾斜を備えるかは不明であって、さらに、「ガスタービン通路80の中心側表面と、後縁より下流部分のガスタービン通路80の内壁」とが後縁から少なくともほぼ平行であるか又は発散しているかについても不明であるから、本件特許発明1と甲1発明1とは上記相違点1において相違する。

したがって、本件特許発明1は、上記相違点1において甲1発明1と相違するから、甲1発明1と同一であるとはいえない。

さらに、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は技術常識であるともいえないから、甲1発明1に基いて当業者が容易に想到できたとはいえない。

(2)甲第2号証との対比・判断
本件特許発明1と甲2発明1とを対比する。
甲2発明1における「ケーシング1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「ケーシング」に、以下同様に、「チップ」は「先端」に、「ガスタービン」は「タービン」に、「最終段動翼4S」は「タービンバケット」に、「ガスタービン」は「タービン」に、「ロータ2」は「中心表面」に、「ケーシング1」は「ケーシング」に、「下流部分」は「下流セクション」に、「ディフューザ通路15」は「ディフューザ」に、「連通」は「流体結合」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケーシングと、ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、及び
中心表面とケーシングの下流セクションの間に形成されたディフューザであってタービンに流体結合しかつ後縁の下流に配置されたディフューザ、
を備える装置。」

[相違点2]
本件特許発明1においては、「先端に沿って測定して後縁から0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える装置であって、中心表面及びケーシングの下流セクションが、後縁から少なくともほぼ平行であるか又は発散している」のに対して、甲2発明1においては、「後縁から最終側動翼4Sのチップ側の翼弦長Cの0.5倍以上3倍以下の長さの範囲でガスタービンの軸に対して平行もしくは内側に0°と5°の間で絞ったダクト壁16を備えた」点。

上記相違点2について検討する。

[相違点2について]
甲2発明1における「ダクト壁16」は、「ガスタービンの軸に対して平行もしくは内側に0°と5°の間で絞った」ものであるが、最終段動翼4Sのチップ側の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したものであるかは不明であって、さらに、ロータ2及びダクト壁16が、後縁から少なくともほぼ平行であるか又は発散しているかについても不明であるから、本件特許発明1と甲2発明1とは上記相違点2において相違する。

したがって、本件特許発明1は、上記相違点2において甲2発明1と相違するから、甲2発明1と同一であるとはいえない。

(3)甲第3号証との対比・判断
本件特許発明1と甲3発明1とを対比する。
甲3発明1における「内車室4」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「ケーシング」に相当し、以下同様に、「タービン本体10」は「タービン」に、「燃焼ガスの方向」は「流体流れの方向」に、「動翼11」は「タービンバケット」に、「内側円筒21」は「中心表面」に、「外側円筒22」は「ケーシングの下流セクション」に、「ディフューザ2」は「ディフューザ」に、「連通」は「流体結合」に、「ガスタービン」は「装置」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケーシングと、ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、及び
中心表面とケーシングの下流セクションの間に形成されたディフューザであってタービンに流体結合しかつ後縁の下流に配置されたディフューザ、
を備える装置。」

[相違点3]
本件特許発明1においては、「先端に沿って測定して後縁から0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える装置であって、中心表面及びケーシングの下流セクションが、後縁から少なくともほぼ平行であるか又は発散している」のに対して、甲3発明1においては、「ディフューザ2は、上流から下流に向かって流路の断面積が次第に大きくなる」ものである点。

上記相違点3について検討する。

[相違点3について]
甲3発明1における後縁の下流に配置されたディフューザ2は、「上流から下流に向かって流路の断面積が次第に大きくなる」ものの、ディフューザ2の後縁に隣接する外側円筒22が、「先端に沿って測定して後縁から0.5翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜した」ものであるか不明であって、しかも、内側円筒21と外側円筒22とが後縁から少なくともほぼ平行であるか又は発散しているかも不明であるから、本件特許発明1と甲3発明1とは上記相違点3において相違する。

したがって、本件特許発明1は、上記相違点3において甲3発明1と相違するから、甲3発明1と同一であるとはいえない。

(4)甲第4号証との対比・判断
本件特許発明1と甲4発明1とを対比する。
甲4発明1における「ステータケーシング60」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「ケーシング」に相当し、以下同様に、「タービン14」は「タービン」に相当し、以下同様に、「タービンブレード」は「タービンバケット」に、「ロータ側の中心部」は「中心表面」に、「下流領域」は「下流セクション」に、「ディフューザセグメント70」は「ディフューザ」に、「連通」は「流体結合」に、「タービン排気システム」は「装置」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケーシングと、ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、及び
中心表面とケーシングの下流セクションの間に形成されたディフューザであってタービンに流体結合しかつ後縁の下流に配置されたディフューザ、
を備える装置。」

[相違点4]
本件特許発明1においては、「先端に沿って測定して後縁から0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える装置であって、中心表面及びケーシングの下流セクションが、後縁から少なくともほぼ平行であるか又は発散している」のに対して、甲4発明1においては、「ディフューザセグメント70は後縁に隣接する前端75を備えた」というものの、前端75とロータ側の中心部やタービンブレード先端部とどのような角度をなすのかについては不明である点。

上記相違点4について検討する。

[相違点4について]
甲4発明1においては、「ディフューザセグメント70は後縁に隣接する前端75」が、タービンブレードの先端に沿って測定して後縁から0.5翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜しているか不明であって、前端75がロータ側の中心部と少なくともほぼ平行であるか又は発散しているかも不明であるから、本件特許発明1と甲4発明1とは上記相違点4において相違する。

したがって、本件特許発明1は、上記相違点4において甲4発明1と相違するから、甲4発明1と同一であるとはいえない。

2.本件特許発明2ないし6について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2ないし6は、請求項1の記載を直接的又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件特許発明2ないし5は、甲1発明1ないし甲4発明1との対比において、少なくとも上記1.の本件特許発明1と甲1発明1ないし甲4発明1との対比における上記相違点1ないし4を有することになるから、本件特許発明2ないし4は、甲1発明1ないし甲4発明1と同一であるといえず、また、本件特許発明5は、甲1発明1、甲3発明1及び甲4発明1に記載された発明と同一であるとはいえない。

さらに、本件特許発明2ないし6は、甲1発明1との対比における相違点1を有するところ、相違点1に係る本件特許発明2ないし6の発明特定事項に関して、甲2ないし甲6において記載されておらず、しかも技術常識であるともいえないから、本件特許発明2及び3は、甲1及び甲2、甲1及び甲3または甲1及び甲4に記載された発明に基いて、本件特許発明4は、甲1に記載された発明に基いて、本件特許発明5は、甲1及び甲5に記載された発明に基いて、本件特許発明6は、甲1及び甲6に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本件特許発明7について
(1)甲第1号証との対比・判断
本件特許発明7と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2における「ガスタービン通路80の内壁」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明7における「ケーシング」に相当し、以下同様に、「先端部」は「先端」に、「動翼51」は「タービンバケット」に、「タービン50」は「タービン」に、「連通」は「流体結合」に、「ディフューザ60」は「ディフューザ」に、「ガスタービン」は「装置」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケーシングと、ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、及び
タービンに流体結合しかつ後縁の下流に配置されたディフューザを備える装置。」

[相違点5]
本件特許発明7においては、「装置」が「後縁からケーシングの下流セクションに、断面積が後縁から少なくとも縮小しないディフューザ流路を形成するディフューザ、及び先端に沿って測定して後縁からタービンバケットの0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える」のに対して、甲1発明2においては「ガスタービン」が「ガスタービン通路80の中心側表面と、後縁より下流部分のガスタービン通路80の内壁との間に流路を形成するディフューザ60、及び後縁よりも流体の流れに対して下流の部分のガスタービン通路80の内壁に段差部20が形成され、段差部20の上流側端部21からタービン50の回転軸の中心軸線に対してほぼ平行に延びる直線状部分22を備える」点。

上記相違点5について検討する。

[相違点5について]
甲1発明2のディフューザ60において、後縁から下流部分のガスタービン通路80の中心側表面と、後縁より下流部分のガスタービン通路80の内壁との間の流路断面積が後縁から少なくとも縮小しないディフューザ流路を形成するか不明であって、段差部20の上流側端部21からガスタービンの中心軸線に対してほぼ平行に延びる直線状部分22が0.5翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したものであるかについても不明であるから、本件特許発明7と甲1発明2とは上記相違点5において相違する。

したがって、本件特許発明7は、上記相違点5において甲1発明2と相違するから、甲1発明2と同一であるとはいえない。

さらに、上記相違点5に係る本件特許発明7の発明特定事項は、技術常識であるともいえないから、甲1発明2に基いて当業者が容易に想到できたとはいえない。

(2)甲第2号証との対比・判断
本件特許発明7と甲2発明2とを対比する。
甲2発明2における「ケーシング1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明7における「ケーシング」に相当し、以下同様に、「チップ」は「先端」に、「ガスタービン」は「タービン」に、「最終段動翼4S」は「タービンバケット」に、「連通」は「流体結合」に、「ディフューザ通路15」は「ディフューザ」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケーシングと、ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、及び
タービンに流体結合しかつ後縁の下流に配置されたディフューザ、
を備える装置。」

[相違点6]
本件特許発明7においては、「ディフューザ」が「後縁からケーシングの下流セクションに、断面積が後縁から少なくとも縮小しないディフューザ流路を形成する」ものであって、「先端に沿って測定して後縁からタービンバケットの0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える」のに対して、甲2発明2においては、ディフューザ流路15の断面積が後縁から縮小するか不明であるとともに、「後縁から最終側動翼4Sのチップ側の翼弦長Cの0.5倍以上3倍以下の長さの範囲でガスタービンの軸に対して平行もしくは内側に0°と5°の間で絞ったダクト壁16を備えた」ものである点。

上記相違点6について検討する。

[相違点6について]
甲2発明2において、ディフューザ流路の断面積が後縁から縮小するか不明であって、ダクト壁16が最終側動翼4Sのチップの傾斜に対して後縁から最終側動翼4Sの0.5翼弦長さの範囲内でチップの傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜しているかについても不明であるから、本件特許発明7と甲2発明2とは、上記相違点6において相違する。

したがって、本件特許発明7は、上記相違点6において甲2発明2と相違するから、甲2発明2と同一であるとはいえない。

(3)甲第3号証との対比・判断
本件特許発明7と甲3発明2とを対比する。
甲3発明2における「内車室4」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明7における「ケーシング」に相当し、以下同様に、「タービン本体10」は「タービン」に、「燃焼ガスの方向」は「流体流れの方向」に、「動翼11」は「タービンバケット」に、「連通」は「流体結合」に、「内側円筒21と外側円筒22との間に形成されたディフューザ2」は「ディフューザ」に、「ガスタービン」は「装置」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケーシングと、ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、及び
タービンに流体結合しかつ後縁の下流に配置されたディフューザを備える装置。」

[相違点7]
本件特許発明7においては、「装置」が「後縁からケーシングの下流セクションに、断面積が後縁から少なくとも縮小しないディフューザ流路を形成するディフューザ、及び先端に沿って測定して後縁からタービンバケットの0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える」ものであるのに対して、甲3発明2においては、ガスタービンが備えるディフューザ2は、上流から下流に向かって流路の断面積が次第に大きくなるものの、ディフューザ2の外側円筒22の先端部の形状が不明であるから、後縁から上流から下流に向かって流路の断面積が次第に大きくなるか不明であって、動翼11の先端に沿って測定して後縁から動翼11の0.5翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したディフューザ2の外側円筒22を備えるかも不明である点。

[相違点7について]
甲3発明2において、後縁から上流から下流に向かって流路の断面積が次第に大きくなるか不明であって、さらに、動翼11の先端に沿って測定して後縁から動翼11の0.5翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したディフューザ2の外側円筒22を備えるかも不明であるから、本件特許発明7と甲3発明2とは、上記相違点7において相違する。

したがって、本件特許発明7は、上記相違点7において甲3発明2と相違するから、甲3発明2と同一であるとはいえない。

(4)甲4号証との対比・判断
本件特許発明7と甲4発明2とを対比する。
甲4発明2における「ステータケーシング60」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明7における「ケーシング」に相当し、以下同様に、「タービン14」は「タービン」に相当し、以下同様に、「ガス流12の方向」は「流体流れの方向」に、「タービンブレード」は「タービンバケット」に、「連通」は「流体結合」に、「ディフューザセグメント70」は「ディフューザ」に、「タービン排気システム」は「装置」に、それぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケーシングと、ケーシングに近接した先端及びタービンを通る流体流れの方向に対して後縁を有するタービンバケットとを備えるタービン、及び
タービンに流体結合しかつ後縁の下流に配置されたディフューザを備える装置。」

[相違点8]
本件特許発明7においては、「装置」が「後縁からケーシングの下流セクションに、断面積が後縁から少なくとも縮小しないディフューザ流路を形成するディフューザ、及び
先端に沿って測定して後縁からタービンバケットの0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える」ものであるのに対して、甲4発明2においては、「ディフューザセグメント70に後縁に隣接する前端75」を設けたものであるが、ディフューザセグメント70が少なくとも前端75の部分、すなわち後縁から断面積が後縁から少なくとも縮小しない流路を備えるものか不明であり、さらに、前端75の部分がタービンブレードの先端に沿って測定して後縁からタービンブレードの0.5翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したものか不明である点。

[相違点8について]
甲4発明2において、ディフューザセグメント70が少なくとも前端75の部分、すなわち後縁から断面積が後縁から少なくとも縮小しない流路を備えるものか不明であり、さらに、前端75の部分がタービンブレードの先端に沿って測定して後縁からタービンブレードの0.5翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したものか不明であるから、本件特許発明7と甲4発明2とは、上記相違点8において相違する。

したがって、本件特許発明7は、上記相違点8において甲4発明2と相違するから、甲4発明2と同一であるとはいえない。


備考:特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1および7において特定された、「先端に沿って測定して後縁から0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内で先端の傾斜に対して半径方向内側に少なくとも6°傾斜したケーシングの下流セクションの傾斜を備える」ことに関して、本件特許の出願時の技術常識を参酌すれば甲1ないし甲4にそれぞれ記載されているに等しい旨主張している。(特許異議申立書第22、23、29、31及び32ページ参照。)しかしながら、特許異議申立人は、本件特許の出願時の技術常識が何であるのか具体的に示していないので、そのような主張は採用できない。
さらに、本件特許発明における課題は、後縁に近接した中心表面及び下流セクションにおける静圧及び全体圧力を増大させ、下流のディフューザ40内の位置において、静圧をほぼ一定にしてHRSGの損傷を回避または減少させることであり(本件特許明細書段落【0024】を参照)、甲1発明1及び甲1発明2における課題は、動翼先端部後縁付近のマッハ数を下げて、ガスタービンの圧力損失を少なくすることであるから、本件特許発明1ないし7と甲1発明1及び甲1発明2の課題は異なるものであって共通するとはいえない。
よって、特許異議申立書第26及び27ページにおける、本件特許発明1および7で特定された「0.5タービンバケット翼弦長さの範囲内」及び「少なくとも6°傾斜させる」の数値限定に臨界的意義が必要であるという特許異議申立人の主張は採用できない。

[3]異議理由3について
特許異議申立人は、特許異議申立書第44ページ第11行ないし第46ページ第4行において、本件特許発明1及び7並びに本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明2ないし6において特定された「0.5タービンバケット翼弦長さ」及び「少なくとも6°」の数値範囲に関して、本件特許の発明の詳細な説明には、「0.5タービンバケット翼弦長さ」及び「少なくとも6°」という数値の範囲内であれば、本件特許の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例や説明が記載されていない。
さらに、本件特許発明4において特定された「ケーシングの下流セクションの傾斜と先端の傾斜との差が10°以上」の数値範囲に関して、本件特許の発明の詳細な説明に、そのような数値範囲に関する具体例や説明が記載されていない。
したがって、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容を本件特許の請求項1ないし請求項7に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとは言えない旨主張している。

以下、この主張について検討する。

本件特許明細書には、「図3に示すように、ケーシング22の下流セクション42の傾斜は、先端32の半径方向遠位端に沿って軸方向に形成された該先端32の傾斜に対して少なくとも6°折り曲がるか又は傾斜することができる。折り曲げるか又は傾斜させることは、後縁33において、又は該後縁33から少なくとも約0.5タービンバケット翼弦長さT_(L)の範囲内において実施することができる。翼弦長さT_(L)は、先端32において測定される。」(段落【0021】)と、本件特許発明1及び7並びに本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明2ないし6において特定された「0.5タービンバケット翼弦長さ」及び「少なくとも6°」の数値範囲に関する具体例についての説明がなされている。
さらに、「傾斜した下流セクション42は、傾斜した先端32との間で角度α_(2)を形成する。実施形態によると、角度α_(2)は、先端32の平面から測定して6°よりも大きいか又は6°に等しく、特に約10°以上とすることができる。」(段落【0022】)と、本件特許発明4において特定された「ケーシングの下流セクションの傾斜と先端の傾斜との差が10°以上」の数値範囲に関する具体例についての説明がなされている。
そして、それらの数値範囲を採用することにより、「ハブ30、先端32又はその両方において折り曲げるか又は傾斜させることにより、後縁33に近接した中心表面41及びケーシング22の下流セクション42における静圧及び全体圧力を増大させることができる。その結果、さらに下流のディフューザ40内の位置において、静圧をほぼ均一にすることができる。従って、HRSG45又はあらゆるその他の設備に対する損傷を回避するか又は大幅に減少させることができる。」(段落【0024】)のであるから、本件特許発明1ないし7は本件の課題を解決するための手段を反映したものであって、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を本件特許発明1ないし7の範囲まで拡張ないし一般化することができないとまではいえない。

よって、本件特許発明1ないし7は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-13 
出願番号 特願2011-173486(P2011-173486)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (F01D)
P 1 651・ 113- Y (F01D)
P 1 651・ 121- Y (F01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 橋本 敏行  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 松下 聡
三島木 英宏
登録日 2016-10-07 
登録番号 特許第6018368号(P6018368)
権利者 ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
発明の名称 先端流路輪郭  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  

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