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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
管理番号 1330143
異議申立番号 異議2017-700395  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-19 
確定日 2017-07-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第6011901号発明「両面粘着テープ、保護部材及び電子機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6011901号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6011901号の請求項1?8に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)7月2日(優先権主張 平成26年7月14日、日本)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月30日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人岡幹男及び田中俊子(以下、それぞれ、「申立人A」及び「申立人B」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6011901号の請求項1?8の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1?8の発明を、項番号に応じて「本件発明1」などという。)。
「【請求項1】
基材の一方の面側に直接または他の層を介してシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する両面粘着テープであって、前記シリコーン系粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記シリコーン系粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さが0.01N/25mm?0.1N/25mmの範囲であり、かつ、前記アクリル系粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記アクリル系粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さが5N/25mm?28N/25mmの範囲であり、前記シリコーン系粘着剤層が、ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有するシリコーン系粘着剤によって形成された層であることを特徴とする両面粘着テープ。
【請求項2】
前記シリコーン系粘着剤層が、ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーン、及び、レジン成分として3000?6000の重量平均分子量を有するポリオルガノシリコーンを含有するシリコーン系粘着剤によって形成された層であって、前記ガム成分としてのケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンと、前記レジン成分としての3000?6000の重量平均分子量を有するポリオルガノシリコーンとの質量比が、95:5?80:20の範囲である請求項1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
前記シリコーン系粘着剤層の厚さが15μm?50μmの範囲であり、かつ、前記アクリル系粘着剤層の厚さが10μm?50μmの範囲である請求項1または2に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
前記アクリル系粘着剤層が、アクリル系重合体(A)とエポキシ系架橋剤と粘着付与樹脂とを含有するアクリル系粘着剤によって構成されるものである請求項1?3のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着付与樹脂がアクリル系粘着付与樹脂である請求項4に記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
厚さ0.1mm?0.6mmの厚さのガラスの固定に使用する前記ガラスが強化ガラスである請求項1?5のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の両面粘着テープが有する前記アクリル系粘着剤層の表面に、予めガラスまたは樹脂からなる部材が貼付された構成を有する保護部材。
【請求項8】
請求項7に記載の保護部材が、前記情報表示装置の情報表示部の表面に貼付された構成を有する電子機器。」

3.申立理由の概要
(申立人Aの申立理由)
申立人Aは、証拠として国際公開第2015/151221号(甲第1号証。以下、申立人Aの提出した甲各号証を項番号に応じて、単に「甲A1」などといい、申立人Bの提出した甲各号証を項番号に応じて、単に「甲B1」などとう。)、特開2009-73937号公報(甲A2)、特開2010-15506号公報(甲A3)、特開2010-104980号公報(甲A4)、及び、「超高透明ポリエステルフィルム コスモシャインに関するインターネットページ、東洋紡(株)のウェブサイト(http://www. toyobo.co.jp/seihin/film/kogyo/list/optics/)より2017年3月8日に入手」(甲A5)を提出し、次の申立理由A1?A5を根拠として、本件特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由A1(拡大先願による新規性欠如)
本件発明1?4、6?8は、甲A1に記載の発明であって、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当する。
(2)申立理由A2(進歩性欠如)
ア 本件発明1?8は、甲A2に記載の発明に、適宜周知技術(例えば、甲A4及び甲A5の記載)を参酌することにより容易想到であり、本件発明1?8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当する。
イ 本件発明1?8は、甲A3に記載の発明に、適宜周知技術(例えば、甲A4の記載)を参酌することにより容易想到であるから、本件発明1?8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当する。
(3)申立理由A3(実施可能要件違反)
ア 本件発明1は、「前記シリコーン系粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記シリコーン系粘着剤層の表面に対して180°方向へ引つ張ることで測定される引張強さが0.01N/25mm?0.1N/25mmの範囲である」構成を必須の構成要件(以下、「構成要件1C」という。)とするところ、シリコーン系粘着剤層の引張強さの単なる結果(達成すべき性能)が所定の範囲に入っていることを特定しているに過ぎず、そのような結果を導くための構成が特定されていない。
そうすると、本件発明1は、東洋紡(株)製ポリエステルフィルム(A4300#38)のような凹凸の設けられた基材を用いた場合に、構成要件1Cを具備することが示されているが、その他の基材(たとえば凹凸の設けられていない基材)を用いた場合においても、本件発明1が構成要件1Cに示される引張強さの範囲に収まることは何ら示されていない。むしろ、甲A4の実施例及び比較例を参酌すれば、凹凸の設けられていない基材が使用される場合には、「何かの他の限定事項」が明確に規定されなければ、いかに当業者であっても、構成要件1Cを具備する本件発明1を作製すらできない。
そのような、「他の限定事項」は、本件特許明細書には開示も示唆もない以上、本件特許明細書には、本件発明1(特に構成要件1C)を実施するための要件が充分に記載されていない。本件発明1を引用する本件発明2-8についても同様である。
したがって、本件特許明細書は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第2項に該当する。
イ 本件発明1は、「前記アクリル系粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記アクリル系粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さが5N/25mm?28N/25mmの範囲である」構成を構成要件(以下、「構成要件1D」という。)としている。
しかしながら、このような構成要件1Dは、アクリル系粘着剤層の引張強さの単なる結果(達成すべき性能)が所定の範囲に入っていることを特定しているに過ぎず、そのような結果を導くための構成が特定されていない。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明および実施例を精査しても、アクリル系粘着剤層が、アクリル系重合体(A)とエポキシ系架橋剤とアクリル系粘着付与樹脂とを含有するアクリル系粘着剤である場合以外に、上記数値範囲を満たすことは何ら示されていない。
そうすると、本件発明1は、上記所定の組成のアクリル系粘着剤が用いられる場合以外にも、上記構成要件1Dを具備するための構成が開示されておらず、いかに当業者であっても、本件発明1を実施することができない。
このような構成要件1Dは、要するに、アクリル系粘着剤層の引張強さの単なる結果(達成すべき性能)が所定の範囲に入っていることを特定しているに過ぎず、そのような結果を導くための構成が特定されていない。本件発明1を引用する本件発明2-4、6-8についても同様である。
したがって、本件特許明細書は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4項に該当する。
(4)申立理由A4(明確性要件違反)
本件発明1は、シリコーン系粘着剤層及びアクリル系粘着剤層の引張強さの単なる結果(達成すべき性能)が所定の範囲に入っていることを特定しているに過ぎず、そのような結果を導くための構成が特定されていない。
そうすると、本件発明1は、本件発明1のうち、そのような結果を導くための必須の構成が規定されておらず、発明の外縁が不明確である。
したがって、本件発明1は、明確でない。
本件発明1を引用する本件発明2-4、6-8についても同様である。
したがって、本件特許明細書は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4項に該当する。
(5)申立理由A5(サポート要件違反)
本件発明1の構成要件1Dは、アクリル系粘着剤層の引張強さの単なる結果(達成すべき性能)が所定の範囲に入っていることを特定しているに過ぎず、そのような結果を導くための構成が特定されていない。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び実施例には、アクリル系粘着剤層が、アクリル系重合体(A)とエポキシ系架橋剤とアクリル系粘着付与樹脂とを含有するアクリル系粘着剤である場合以外に、上記数値範囲を満たすことは何ら示されていない。
そうすると、本件発明1は、上記所定の組成のアクリル系粘着剤が用いられる場合以外にも、上記構成要件1Dを具備するための構成が開示されておらず、上記以外のアクリル系粘着剤が用いられた場合においても本件発明の課題が解決され得るかどうか、定かでない。
以上より、本件発明1は、発明の詳細な説明に開示された範囲を超えている。本件発明1を引用する本件発明2-4、6-8についても同様である。
したがって、本件特許明細書は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4項に該当する。

(申立人Bの申立理由)
申立人Bは、証拠として、特開2009-175266号公報(甲B1)、特開2011-102336号公報(甲B2)、特開2014-1365号公報(甲B3)、特開2002-275450号公報(甲B4)、及び、特開2011-202012号公報(甲B5)を提出し、甲B1に記載された発明を主たる引用発明として、本件発明1、3、4、6?8は、甲B1?甲B3に記載された発明から容易想到であり、本件発明2は、甲B1?甲B3に記載された発明及び周知技術(甲B4)から容易想到であり、本件発明5は、甲B1?甲B3に記載された発明及び周知技術(甲B5)から容易想到であるから、本件発明1?8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2項に該当し、本件特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.引用刊行物の記載
(1)甲A1
甲A1は、2014年(平成26年)を国際出願日とする、日本語で出願され、指定国にJP(日本)が含まれた、2015年(平成27年)10月8日に国際公開された国際出願に係る国際公開公報であるところ、甲A1には、「両面粘着シート」(発明の名称)について、次の記載がある。
なお、下線は当審で付与したものである。以下、同様である。
「請求の範囲
[請求項1] 第1の硬質体と、第2の硬質体との間での接着に使用される両面粘着シートであって、
前記両面粘着シートが、前記第1の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第1の硬質体側にある部材に接着される第1の粘着面と、前記第2の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第2の硬質体側にある部材に接着される第2の粘着面とを備えており、
前記第1の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第1の硬質体側にある部材に対する前記第1の粘着面の粘着力をF1、前記第2の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第2の硬質体側にある部材に対する前記第2の粘着面の粘着力をF2としたときに、前記F2に対する前記F1の比(F1/F2)が、0.0001?0.1であることを特徴とする両面粘着シート。
[請求項2] 前記両面粘着シートは、前記第1の粘着面を有する第1の粘着剤層と、前記第2の粘着面を有する第2の粘着剤層とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の両面粘着シート。
・・・(略)・・・
[請求項4] 前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層との間には、芯材が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の両面粘着シート。
[請求項5] 前記第1の粘着剤層は、オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン粘着剤から構成されることを特徴とする請求項2?4のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
・・・(略)・・・
[請求項8] 前記第1の粘着剤層の前記第1の粘着面におけるJIS Z0237:2009に準拠した対フロートガラス粘着力が、0.01?1N/25mmであることを特徴とする請求項2?7のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
・・・(略)・・・
[請求項10] 前記第2の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有するアクリル系粘着剤、または紫外線硬化型粘着剤から構成されることを特徴とする請求項2?9のいずれか一項に記載の両面粘着シート。」
「技術分野
[0001] 本発明は、複数の硬質体の間における接着に使用される両面粘着シートに関するものである。」
「[0030] 本実施形態の両面粘着シート1においては、硬質体(例えば、ガラス板)に対する第1の粘着面11Sの粘着力をF1、硬質体(例えば、ガラス板)に対する第2の粘着面12Sの粘着力をF2としたときに、F2に対するF1の比(F1/F2)が、0.0001?0.1であり、好ましくは0.0003?0.08であり、特に好ましくは0.0005?0.05である。
[0031] F2に対するF1の比が上記範囲内にあることにより、両面粘着シート1を使用して貼合した第1の硬質体4と第2の硬質体5とを剥離するときに、両面粘着シート1の第1の粘着面11Sと第1の硬質体4との界面にて、両面粘着シート1と第1の硬質体4とが良好に分離し、第1の硬質体4または第2の硬質体5が破断したり、第1の硬質体4に糊残りが生じたりしない。これにより、少なくとも第1の硬質体4の再利用が可能となる。このように、F2に対するF1の比が上記範囲内にある両面粘着シート1は、リワーク性に非常に優れる。」
「[0035] 1.両面粘着シート
(1)第1の粘着剤層
第1の粘着剤層11は、第1の粘着面11Sが上記の物性(F2に対するF1の比)を満たす粘着剤から構成されればよいが、具体的には、オルガノポリシロキサン、特に付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有するシリコーン粘着剤から構成されることが好ましい。かかるシリコーン粘着剤は、上記の物性を満たし易い。
[0036] 付加型オルガノポリシロキサンは、シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られるものであることが好ましい。
[0037] シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、次の平均単位式(1)で示される化合物であって、かつ分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する化合物であることが好ましい。
R^(1)_(a)SiO_((4-a)/2) ・・・(1)
(式中、R^(1)は互いに同一又は異種の炭素数1?12、好ましくは1?8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1.5?2.8、好ましくは1.8?2.5、より好ましくは1.95?2.05の範囲の正数である。)
[0038] 上記R^(1)で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert#ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、硬化時間の短さおよび生産性の点から、ビニル基が好ましい。
[0039] オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中にSiH基を有する。上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基とが反応することにより、両者は付加反応し、付加型オルガノポリシロキサンが得られる。」
「[0042] 付加型オルガノポリシロキサンには、本発明の目的を損なわない範囲において粘着力を高めるため、分子中に3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン)を含有させることができる。
[0043] 上記シリコーン粘着剤中における3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンの含有量は、付加型オルガノポリシロキサン100質量部に対して10?200質量部であることが好ましく、特に15?100質量部であることが好ましく、さらには20?80質量部であることが好ましい。3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンの含有量が多すぎると、第1の粘着剤層11の粘着力が上昇し、リワーク性が低下するおそれがある。
[0044] 第1の粘着剤層11の厚さは、5?50μmであることが好ましく、特に10?40μmであることが好ましく、さらには15?35μmであることが好ましい。第1の粘着剤層11の厚さが5μm以上であることにより、所望の粘着力を発揮することができる。また、第1の粘着剤層11の厚さが50μm以下であることにより、製造過程に起因する残留溶剤や気泡の混入が有効に防止され、粘着力の安定性および光学特性に優れたものとすることができる。」
「[0048] (2)第2の粘着剤層第2の粘着剤層12は、第2の粘着面12Sが上記の物性(F2に対するF1の比)を満たす粘着剤から構成されればよいが、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有するアクリル系粘着剤、または紫外線硬化型粘着剤から構成されることが好ましい。かかる粘着剤は、上記の物性を満たし易い。」
「[0062] 架橋剤(b)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が有する反応性官能基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)が有する反応性官能基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(b)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。」
「[0067] 上記アクリル系粘着剤には、所望により、通常使用されている各種添加剤、例えば屈折率調整剤、帯電防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。」
「[0071] 第2の粘着剤層12の厚さは、5?300μmであることが好ましく、特に10?200μmであることが好ましく、さらには15?150μmであることが好ましい。第2の粘着剤層12の厚さが5μm以上であることにより、所望の粘着力を発揮することができる。また、第2の粘着剤層12の厚さが300μm以下であることにより、得られる積層体が過度に厚くなることを防ぐことができる。」
「[0086] 本実施形態における両面粘着シート1は、第1の粘着剤層11、芯材13および第2の粘着剤層12を備えており、第1の粘着剤層11における第1の粘着面11Sは、第1の硬質体4に接着しており、第2の粘着剤層12における第2の粘着面12Sは、第2の硬質体5に接着している。」
「[0089] また、第2の硬質体5としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、金属板、半導体板、またはそれらの積層体等が挙げられ、好ましくはガラス板である。
[0090] 上記のガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1?5mmであり、好ましくは0.2?2mmである。」
「[0094] 上記積層体10を製造するには、一例として、まず、剥離シート付き両面粘着シート3の一方の剥離シート2bを剥離して、露出した第2の粘着剤層12と第2の硬質板5とを貼合する。次いで、剥離シート付き両面粘着シート3から他方の剥離シート2aを剥離して、露出した第1の粘着剤層11と第1の硬質板4とを貼合する。」
「[0096] 本実施形態における積層体10は、タッチパネル、特に静電容量方式のタッチパネルであることが好ましく、したがって、第1の硬質体4および第2の硬質体5は、タッチパネルを構成する部材であることが好ましい。この場合、第1の硬質体4は、表示体モジュールまたは表示体モジュールを含む部材であることが好ましく、第2の硬質体5は、ガラス板もしくはプラスチック板からなるカバー材またはカバー材を含む部材であることが好ましい。第2の硬質体5は、カバー材にセンサー機能が設けられた(カバー材に透明導電膜の回路が形成された)、カバー材一体型のセンサー(OGS:One GlassSolution)であってもよい。」
「[0129] 〔試験例1〕(粘着力の測定)各製造例で剥離シート上に形成した粘着剤層をPETフィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:100μm)の片面に貼合し、剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。ただし、製造例1及び2では、既に同じ構成が得られているため、そのまま積層体として使用した。得られた積層体を幅25mm、長さ100mmに裁断し、これをサンプルとした。
[0130] 23℃、50%RHの環境下にて、上記サンプルから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、フロートガラス(ソーダライムガラス)からなるガラス板(日本板硝子社製,厚さ:1.1mm)に対し、2kgのゴムローラを用いて貼付し、20分間放置した。
[0131] その後、万能型引張試験機(オリエンテック社製,テンシロンUTM-4-100)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。」
「[0137」[表1]


(2)甲A2
甲A2には、「両面粘着シートおよびその製造方法ならびにその使用方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
ポリエステルフィルム(A)、離型層(B)、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)、耐熱水接着性改良層(D)、ポリエステル系基材フィルム(E)、アクリル系粘着剤層(F)およびセパレートフィルム(G)が、A?Gの順に積層された両面粘着シートであって、明細書中で定義した方法で測定される上記離型層(B)と上記粘着層(C)との剥離強度が0.03?1.0N/20mmであることを特徴とする両面粘着シート。」
「【0053】
上記粘着層(C)の厚みの下限は、粘着力の点から3μmが好ましく、より好ましくは5μm、さらに好ましくは8μmである。一方、粘着層(C)の厚みの上限は、経済性の観点から、粘着力が安定して維持できる範囲で決定すればよい。例えば、100μmが好ましく、80μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。」
「【0145】
[アクリル系粘着剤層(F)]
本発明の両面粘着シートにおけるもう一方の粘着層は、アクリル系粘着剤層(F)である。アクリル系粘着剤層(F)を構成する粘着剤は、例えば、アルキル基の炭素数が1?18である(メタ)アクリレートを主モノマー成分とするアクリル系ポリマーを主成分またはベースポリマーとして含有しているアクリル系粘着剤が挙げられる。
・・・(略)・・・
【0147】
また、上記(メタ)アクリレートと共重合性を有しているモノマー成分(共重合性モノマー)が用いられていてもよい。特に、アクリル系ポリマーを架橋させる際には、共重合性モノマーとしては、アクリル系粘着剤の改質用モノマーが好ましく、公知の改質用モノマーのいずれも使用可能である。共重合性モノマーは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
・・・(略)・・・
【0152】
前記モノマー成分を重合させて得られたアクリル系ポリマーはそのまま用いることができる。また、アクリル系ポリマーを架橋させることにより硬化させることも可能である。前記ポリマーを架橋させると、粘着剤の凝集力を一層大きくすることができる。架橋には、架橋剤を用いることができる。すなわち、アクリル系粘着剤には、アクリル系ポリマーとともに、架橋剤が配合されていてもよい。なお、ポリマーの架橋は、加熱架橋方法が好適に用いられる。
【0153】
架橋剤としては、耐熱水接着性改良層(D)において用いることのできる架橋剤として例示した架橋剤が、いずれも使用可能である。架橋剤としては、特に、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましい。架橋剤は単独で又は2種以上混合して使用することができる。メラミン系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.001?10質量部が好ましく、0.01?5質量部がより好ましい。イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.01?20質量部が好ましく、0.05?15質量部がより好ましい。
【0154】
アクリル系粘着剤には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。例えば、粘着特性を調整するため、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂等)を配合してもよい。両面粘着シートの無色透明性を高めたり、色調変化を抑えるという観点からは、水素添加型の粘着付与樹脂が好ましく、その配合割合は両面粘着シートのヘーズを上昇させない範囲とすることが好ましい。また、粘着付与樹脂以外の添加剤として、可塑剤、微粉末シリカ等の充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等の公知の各種添加剤を配合することもできる。これらの添加剤の使用量は、いずれもアクリル系粘着剤に適用される通常の量でよい。
【0155】
改質用モノマー(官能基含有共重合性モノマー)や架橋剤の割合調整や界面活性剤を用いる方法等の方法により、アクリル系粘着剤層(F)の粘着力を、制御することができる。アクリル系粘着剤層(F)の厚さは、特に制限されず、例えば、3?200μmが好ましい。5?50μmがより好ましく、10?30μmがさらに好ましい。」
「【0158】
アクリル系粘着剤層(F)の粘着力は、前記粘着層(C)の粘着力と同等でもよいし、小さくても大きくてもよい。本発明の両面粘着テープの使用方法により適宜選択して設定するのが好ましい。例えば、両面共に再剥離性を要求される使用方法に適用するには前記の粘着層(C)の粘着力と同等の範囲、すなわち、0.01?1.0N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)の範囲が好ましい。一方、片面を強固に固定する場合は、上記範囲より高めに設定するのが良い。例えば、タッチパネルのタッチパネル部と表示装置部の貼り合せ用に使用する場合の粘着力としては、5.0N/20mm以上であることが好ましく、例えば、5.0?25N/20mmが好適範囲である。より好ましい範囲は、8.0?20N/20mmである。」
「【0185】
[両面粘着シートの使用方法]
本発明には、本発明の両面粘着シートを、静電容量方式のタッチパネルのオーバレイシートと座標検出シートとの貼着に用いることを特徴とする両面粘着シートの使用方法、および抵抗膜式タッチパネルのタッチパネルと表示装置との貼着に用いることを特徴とする両面粘着シートの使用方法が包含される。静電容量方式のタッチパネルのフェイスシートであるオーバレイシートとは、タッチパネルにおいて、指によってタッチされるシートであり、座標検出シートとは、タッチされた位置座標を検出するシートである。また、抵抗膜式タッチパネルのタッチパネルとは、指やペンなどによってタッチされる部位であり、表示装置とは、タッチすべき画像等を表示する装置である。」
「【0188】
1.剥離強度
まず、長さ200mm程度、幅20mmの両面粘着シートについて、剥離強度を測定したい面(2面)を露出させ、両面粘着シートを一方の面を含む積層体と他方の面を含む積層体とに分け、それぞれを引張試験機のチャックにセットする。すなわち、例えば、離型層(B)と粘着層(C)との界面の剥離強度を測定する場合は、離型層(B)と粘着層(C)の界面で両面粘着シートを少し剥がし、離型層(B)と粘着層(C)のそれぞれを露出させる。この場合は、一方のチャックで、ポリエステルフィルム(A)と離型層(B)とからなるセパレートフィルム(AB)を把持し、一方のチャックで、粘着層(C)?セパレートフィルム(G)の積層体を把持する。そして、JIS K6854-3に記載の方法で、T型剥離強度を測定した。用いた引張試験機は、商品名「オートグラフ」(島津製作所社製)であり、チャック間距離50mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件でT型剥離試験を行った。剥離の際には、T型が維持されるように、フィルムの端部を棒で持ち上げた。T型剥離時の最大強度を剥離強度とした。離型層(B)と粘着層(C)が剥離しない場合は、剥離困難として測定しなかった。この場合は、離型層(B)が離型層として機能していないことを表す。」

(3)甲A3
甲A3には、「タッチパネル用上部電極」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
ハードコート層が透明基材に積層された構成の積層体(1)と、透明導電層が透明基材に積層された導電性積層体(2)とが、ポリエステル系基材フィルムの少なくとも片面にシリコーンゴム粘着層を有し、かつ明細書中で定義した方法で耐熱水接着性を評価したときに上記シリコーンゴム粘着層がポリエステル系基材フィルムから剥離しない両面粘着シートで貼り合わされたものであることを特徴とするタッチパネル用上部電極。
【請求項8】
上記両面粘着シートが、シリコーンゴム粘着層とアクリル系粘着剤層とを有するものである請求項1?7のいずれかに記載のタッチパネル用上部電極。
【請求項10】
上記両面粘着シートは使用前にはシリコーンゴム粘着層表面にセパレートフィルムが積層されており、このセパレートフィルムを剥離してから、上記積層体(1)と上記導電性積層体(2)とを貼り合わせて形成されたものである請求項1?9のいずれかに記載のタッチパネル用上部電極。
【請求項11】
明細書中で定義した方法で測定される上記セパレートフィルムと上記シリコーンゴム粘着層との剥離強度が0.03?1.0N/20mmである請求項10に記載のタッチパネル用上部電極。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では上記事情に鑑み、クッション性のある粘着層を有し、粘着層と基材フィルムとの接着性、特に耐熱水接着性に優れた両面粘着シートを見出し、この両面粘着シートでハードコート層を有する積層体と、導電性積層体とを貼り合わせた構成のタッチパネル用上部電極を提供することを課題として掲げた。」
「【0020】
[粘着層]
本発明で用いる両面粘着シートは、シリコーンゴム粘着層(以下、第1粘着層ということがある)を有している。シリコーンゴムは、弾性に優れ、タッチパネルにクッション性を付与することができる。
・・・(略)・・・
【0032】
上記粘着層の厚みの下限は、粘着力の点から3μmが好ましく、より好ましくは5μm、さらに好ましくは8μmである。一方、粘着層の厚みの上限は、経済性の観点から、粘着力が安定して維持できる範囲で決定すればよい。例えば、100μmが好ましく、80μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。」
「【0038】
タッチパネル用上部電極の使用時の信頼性の点から、粘着層の粘着力の下限は0.01N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であることが好ましく、より好ましくは0.05N/20mmである。一方、再剥離性を向上させ、良好なリペアー性を確保する点から、粘着層の粘着力の上限は1.0N/20mmであることが好ましく、より好ましくは0.5N/20mmである。また、上記評価法で評価した場合にガラス面に粘着層が残らないこと、すなわち、糊残りがないことがリペアー性の点から好ましい。」
「【0128】
[第2粘着層]
本発明で用いる両面粘着シートのもう一方の粘着層(第2粘着層)は、前記した第1粘着層と同様のシリコーンゴム層であってもよい。この場合、第1粘着層と第2粘着層のシリコーンゴムは、同じものであっても、異なる組成や分子量のものであっても構わない。
【0129】
また、第2粘着層はアクリル系粘着剤層であってもよい。アクリル系粘着剤層を構成する粘着剤は、例えば、アルキル基の炭素数が1?18である(メタ)アクリレートを主モノマー成分とするアクリル系ポリマーを主成分またはベースポリマーとして含有しているアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0130】
アルキル基の炭素数が1?18である(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、アクリル酸イソノニル(メタ)アクリレート、アクリル酸デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0131】
また、上記(メタ)アクリレートと共重合性を有しているモノマー成分(共重合性モノマー)が用いられていてもよい。特に、アクリル系ポリマーを架橋させる際には、共重合性モノマーとしては、アクリル系粘着剤の改質用モノマーが好ましく、公知の改質用モノマーのいずれも使用可能である。共重合性モノマーは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0132】
具体的には、共重合性モノマーとしては、接着性改良層用のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分や他種のモノマーとして例示したモノマーがいずれも使用でき、さらに、エチレン、プロピレン等のα-オレフィン系モノマー等が挙げられる。
【0133】
改質用モノマーとしては、前記官能基含有モノマーが好適であり、これらのなかでもヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく、特にアクリル酸が好適である。なお、改質用モノマーに由来する官能基(特に極性基)を利用してアクリル系ポリマーを架橋することができる。
【0134】
アクリル系ポリマーを得るための重合方法としては、アゾ系化合物や過酸化物等の重合開始剤を用いて行う溶液重合方法、エマルジョン重合方法や塊状重合方法、光開始剤を用いて光や放射線を照射して行う重合方法等を採用することができる。本発明では、分解してラジカルを生成させる重合開始剤を用いて重合させる方法(ラジカル重合方法)を好適に採用することができる。このラジカル重合では、通常、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーマレエート等の過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物等の重合開始剤を用いて行う。重合開始剤の使用量は、アクリル系モノマーの重合の際に通常用いられる量でよく、例えば、モノマー成分の総量100質量部に対して、0.005?10質量部程度、好ましくは0.1?5質量部程度である。
【0135】
アクリル系ポリマーの主モノマー成分としての炭素数1?18のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの割合としては、粘着特性の観点から、モノマー成分100質量%に対して50質量%以上であることが好ましい。80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。従って、上記(メタ)アクリレート以外の共重合性モノマーの割合は、モノマー成分100質量%中、50質量%以下となる。
【0136】
前記モノマー成分を重合させて得られたアクリル系ポリマーはそのまま用いることができる。また、アクリル系ポリマーを架橋させることにより硬化させることも可能である。前記ポリマーを架橋させると、粘着剤の凝集力を一層大きくすることができる。架橋には、架橋剤を用いることができる。すなわち、アクリル系粘着剤には、アクリル系ポリマーとともに、架橋剤が配合されていてもよい。なお、ポリマーの架橋は、加熱架橋方法が好適に用いられる。
【0137】
架橋剤としては、接着性改良層において用いることのできる架橋剤として例示した架橋剤が、いずれも使用可能である。架橋剤としては、特に、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましい。架橋剤は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。メラミン系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.001?10質量部が好ましく、0.01?5質量部がより好ましい。イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.01?20質量部が好ましく、0.05?15質量部がより好ましい。
【0138】
アクリル系粘着剤には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。例えば、粘着特性を調整するため、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂等)を配合してもよい。両面粘着シートの無色透明性を高めたり、色調変化を抑えるという観点からは、水素添加型の粘着付与樹脂が好ましく、その配合割合は両面粘着シートのヘーズを上昇させない範囲とすることが好ましい。また、粘着付与樹脂以外の添加剤として、可塑剤、微粉末シリカ等の充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等の公知の各種添加剤を配合することもできる。これらの添加剤の使用量は、いずれもアクリル系粘着剤に適用される通常の量でよい。」
【0139】
改質用モノマー(官能基含有共重合性モノマー)や架橋剤の割合調整や界面活性剤を用いる方法等の方法により、アクリル系粘着剤層の粘着力を、制御することができる。アクリル系粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、3?200μmが好ましい。5?50μmがより好ましく、10?30μmがさらに好ましい。」
「【0142】
アクリル系粘着剤層の粘着力は、前記シリコーンゴム粘着層の粘着力と同等でもよいし、小さくても大きくてもよい。両面粘着テープの使用方法により、適宜選択して設定するのが好ましい。例えば、両面共に再剥離可能に設定するのであれば、前記シリコーンゴム粘着層の粘着力と同等の範囲、すなわち、0.01?1.0N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)の範囲が好ましい。一方、片面を強固に固定する場合は、上記範囲より高めに設定するのが良く、5.0?25N/20mmが好適範囲である。より好ましい範囲は、8.0?20N/20mmである。」
「【0177】
[タッチパネル用上部電極の製造方法]
タッチパネル用上部電極を製造する方法は特に限定されないが、第1粘着層側または第2粘着層側のセパレートフィルムを剥がして、積層体(1)または導電性積層体(2)と貼り合わせ、続いて、第2粘着層側または第1粘着層側のセパレートフィルムを剥がして、積層体(2)または導電性積層体(1)と貼り合わせればよい。片面のみがシリコーンゴム層である構成の両面粘着シートを用いる場合は、シリコーンゴム粘着層を積層体(1)側に配して、積層体(1)と導電性積層体(2)を貼り合わせることが好ましい。シリコーンゴム粘着層がタッチパネルの入力画面側に配置されることで、そのクッション性が効果的に発揮されるからである。」
「【0183】
2.耐熱水接着性
両面粘着シートを50mm×50mmに切断し、シリコーンゴム粘着層側のセパレートフィルムを剥離する。蒸留水400ccを入れた500ccの蓋付きの円筒状のガラス容器の中に、上記試料を粘着層が下側になるように水中に沈め、試料全体が水中に浸漬した状態で容器に蓋をする。試料の自重だけでは水中に浸漬しない場合は、例えば、60mm×60mm、厚さ188μmのポリエステルフィルムを試料の上に載せて、重しにすればよい。重しの大きさや素材は特に限定されるものではなく、試料全体が水中に浸漬すればよい。試料の入った容器を、80℃に設定したギアーオーブン中に入れ、24時間静置する。熱処理後、オーブンから容器を取り出し、速やかに試料を取り出して、粘着層側から端部に指腹で力を加えて10回擦り、粘着層がポリエステル系基材フィルム側から剥離するかどうかを評価し、粘着層が剥離しないものを○、粘着層が剥離するものを×とした。」
「【0225】
[剥離強度の測定方法]
長さ200mm程度、幅20mmの両面粘着シートについて、剥離性を評価したい面(2面)を露出させ、両面粘着シートを一方の面を含む積層体と他方の面を含む積層体とに分け、それぞれを引張試験機のチャックにセットする。すなわち、セパレートフィルムの離型層とシリコーンゴム粘着層との界面の剥離強度を測定する場合は、離型層と粘着層の界面で両面粘着シートを少し剥がし、離型層と粘着層のそれぞれを露出させる。一方のチャックでセパレートフィルムを把持し、一方のチャックで両面粘着シート(第2粘着面にはセパレートフィルムを付けておくことが望ましい。)を把持する。そして、JIS K6854-3に記載の方法で、T型剥離強度を測定した。用いた引張試験機は、商品名「オートグラフ」(島津製作所社製)であり、チャック間距離50mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件でT型剥離試験を行った。剥離の際には、T型が維持されるように、フィルムの端部を棒で持ち上げた。T型剥離時の最大強度を剥離強度とした。実施例1の剥離強度は0.1N/20mmであった。」

(4)甲A4
甲A4には、「セパレータの製造方法、セパレータ及びセパレータ付き粘着テープ」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
セパレータ基材の少なくとも一方の面に水滴を形成させた後、該セパレータ基材の水滴を形成させた面上に剥離剤の有機溶剤溶液を塗布してから、有機溶剤及び水滴を除去し、剥離剤を乾燥及び/又は硬化させることを特徴とするセパレータの製造方法。」
「【0020】
熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤は、分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン(アルケニル基含有シリコーン)及び分子中に官能基としてヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンを必須の構成成分とする。
【0021】
上記分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンとしては、中でも、分子中にアルケニル基を2個以上有しているポリオルガノシロキサンが好ましい。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。中でも、ビニル基、ヘキセニル基が好ましい。なお、上記アルケニル基は、通常、主鎖又は骨格を形成しているポリオルガノシロキサンのケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に結合している。」
「【0025】
また、剥離剤には、上記成分の他にも必要に応じて、剥離コントロール剤等が用いられていてもよい。例えば、剥離剤として熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤が用いられている場合、具体的には、MQレジンなどの剥離コントロール剤、アルケニル基又はヒドロシリル基を有しないポリオルガノシロキサン(トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサンなど)などが添加されていてもよい。これらの成分の熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤の含有量は、特に限定されないが、1?30重量%が好ましい。」
「【0066】
(実施例1)
アングル材で組んだ箱の周りをポリエチレンテレフタレートシートで囲むことにより作製した加湿箱(縦:30cm×横:45cm×高さ:30cm)に、基材(厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)を入れ、スチーム発生器で1分間、加湿箱雰囲気内を加湿することにより、基材上に水滴を形成した。雰囲気温度は23℃で行った。

剥離剤溶液を下記配合で調製した。
[剥離剤溶液の配合]
(i)熱硬化性付加型シリコーン(商品名「KS-847T」信越化学工業社製、30%トルエン溶液)
(ii)白金触媒(商品名「PL-50T」信越化学工業社製、トルエン溶液)
(iii)有機溶剤:n-ヘキサン
配合比 (i)/(ii)/(iii)=100/1/200(重量比)

調製した剥離剤溶液を、基材の水滴を形成した面に、べーカー式アプリケータを用いて、水滴を形成しないで塗布・乾燥させた時の剥離剤処理層の厚さが10μmになるような厚さで、塗布した。
塗布後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間加熱することにより高温乾燥して、一方の面に剥離剤処理層を有するセパレータを得た。
なお、剥離剤溶液の粘度は77[mPa・s]であった。」
「【0068】
(実施例3)
23℃の雰囲気下、基材上に、微霧発生ノズル(商品名「小型量扇型 BIMV」株式会社いけうち製)を用いて、圧縮空気圧力0.6MPa、液圧力0.3MPaの条件で10秒間噴霧して水滴を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、一方の面に剥離剤処理層を有するセパレータを得た。
【0069】
(比較例1)
基材上に水滴を形成する工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、一方の面に剥離剤処理層を有するセパレータを得た。」
「【0073】
【表2】


(5)甲A5
甲A5には、「超高透明ポリエステルフィルム コスモシャイン」について、
「きわだつ鮮明さとくっくりした画像表現を可能にしたPETフィルム!」、及び、
「●フィルム内部に粒子を含まないため優れた透明性を実現
●表面コートにより、各種易接着性能、表面機能の付与
●高度な表面凹凸(片面コート品)」(「特長 Features」の項)という記載が認められ、「品番」が「A4300」について、「特長」が「両面易接着処理」という記載が認められる。

(6)甲B1
甲B1には、「画像表示装置の製造方法、及び該製造方法を用いて製造される画像表示装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
ポリエステル系基材フィルムの少なくとも片面に、耐熱水接着性改良層を介して、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層が積層された両面粘着シートを用いて、画像表示パネルと、該画像表示パネルを保護する保護パネルとを貼り合わせることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
・・・(略)・・・
【請求項6】
前記ポリエステル系基材フィルムの片面に、アクリル系粘着層またはゴム系粘着層が積層された請求項1から5のいずれか一項に記載の画像表示装置の製造方法。」
「【0010】
上記特許文献には、ポリエステルフィルムが、その表面に接着性を向上させる化合物を積層した易接着性ポリエステルフィルムである態様が開示されており、これにより、ポリエステルフィルムとシリコーンゴムフィルムとの接着性に優れる複合体を得ることができる。しかしながら、上記複合体は、常態におけるポリエステルフィルムとシリコーンゴムフィルムとの接着性には優れるものの、例えば、高温、高湿等の過酷な環境下におけるポリエステルフィルムとシリコーンゴムフィルムとの接着力の耐久性が劣るという課題を有していた。
【0011】
ところで、画像表示装置の中には、カーナビゲーション等のように周辺温度が高温から低温まで大きく変動する環境下で用いられるものもある。このため、このような過酷な使用条件下にも耐え得るように、ポリエステルフィルム(基材フィルム)とシリコーンゴムフィルム(粘着層)との間の接着耐久性を一層向上させることが望まれた。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、十分なコシを有し、過酷な使用環境下においても基材フィルムと粘着層との接着性が低下しない両面粘着シートを用いることによって、耐衝撃性・視認性に優れるのみならず、組み立てが容易で、かつ過酷な条件下に設置しても画像表示パネルと保護パネルとの密着性が低下しない画像表示装置の製造方法を提供することを課題として掲げた。」
「【0027】
また、上記粘着層の少なくとも一方は、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含んで構成される。これにより、本発明で用いる両面粘着シートは再剥離性に優れるとともに、衝撃吸収性にも優れるものとなる。」
「【0123】
上記シリコーン化合物を含む粘着層の厚みの下限は、粘着力の点から3μm(より好ましくは5μm、さらに好ましくは8μm)が好ましい。一方、粘着層の厚みの上限は、経済性の観点から、粘着力が安定して維持できる範囲で決定すればよい。例えば、200μm(より好ましくは180μm)が好ましい。」
「【0134】
物品の貼り合せに使用した場合の使用時の信頼性の点から、上記シリコーン化合物を含む粘着層の粘着力の下限は0.01N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であることが好ましく、より好ましくは0.05N/20mmである。一方、再剥離性を向上させ、良好なリペアー性を確保する点から、粘着力の上限は1.0N/20mmであることが好ましく、より好ましくは0.5N/20mmである。また、上記評価法で評価した場合にガラス面に粘着層が残らないこと、すなわち、糊残りがないことがリペアー性の点から好ましい。」
「【0149】
上記モノマー成分を重合させて得られたアクリル系ポリマーはそのまま用いることができる。また、アクリル系ポリマーを架橋させることにより硬化させることも可能である。上記ポリマーを架橋させると、粘着剤の凝集力を一層大きくすることができる。架橋には、架橋剤を用いることができる。すなわち、アクリル系粘着剤には、アクリル系ポリマーとともに、架橋剤が配合されていてもよい。なお、ポリマーの架橋は、加熱架橋方法が好適に用いられる。
【0150】
架橋剤としては、耐熱水接着性改良層において用いることのできる架橋剤として例示した架橋剤がいずれも使用可能である。架橋剤としては、特に、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましい。架橋剤は単独で又は2種以上混合して使用することができる。メラミン系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.001質量部以上(より好ましくは0.01質量部以上)が好ましく、10質量部以下(より好ましくは5質量部以下)が好ましい。イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.01質量部以上(より好ましくは0.05質量部以上)が好ましく、20質量部以下(より好ましくは15質量部以下)が好ましい。
【0151】
アクリル系粘着剤には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。例えば、粘着特性を調整するため、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂等)を配合してもよい。両面粘着シートの無色透明性を高めたり、色調変化を抑えるという観点からは、水素添加型の粘着付与樹脂が好ましく、その配合割合は両面粘着シートのヘーズを上昇させない範囲とすることが好ましい。また、粘着付与樹脂以外の添加剤として、可塑剤、微粉末シリカ等の充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等の公知の各種添加剤を配合することもできる。これらの添加剤の使用量は、いずれもアクリル系粘着剤に適用される通常の量でよい。」
「【0153】
アクリル系粘着層の厚さは、特に制限されず、例えば、3μm以上(より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上)が好ましく、200μm以下(より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下)が好ましい。」
「【0156】
アクリル系粘着層の粘着力は、上記シリコーン化合物を含んで構成される粘着層の粘着力と同等でもよいし、小さくても大きくてもよい。本発明の両面粘着シートの使用方法に応じて適宜選択して設定するのが好ましい。例えば、両面共に再剥離性を要求される使用方法に適用するには上記シリコーン化合物を含む粘着層の粘着力と同等の範囲、すなわち、0.01?1.0N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)の範囲が好ましい。一方、片面を強固に固定する場合は、上記範囲より高めに設定するのが良い。例えば、5.0N/20mm以上であることが好ましく、5.0?25N/20mmが好適範囲である。より好ましい範囲は、8.0?20N/20mmである。」
「【0176】
(保護パネル)
本発明で用いる保護パネルは、上記画像表示パネルの表面を保護する一方で、透明性を有し、画像表示パネルに表示される文字や図形等を保護パネルを介して明瞭に視認し得るものであればよい。保護パネルの形成に用いることができる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、各種ガラスも利用可能である。」
「【0283】
実施例11
実施例1?10のセパレートフィルム付き両面粘着シートからセパレートフィルムを剥離して得られる両面粘着シートで表面保護パネルと画像表示パネルとを貼り合せた。実施例1?9で得られた両面粘着シートについては、まず、アクリル系粘着層側に表面保護パネルを貼着し、引き続き、シリコーン系粘着層側に画像表示パネルを貼着した。該貼着作業の作業性は良好であった。その上、シリコーン系粘着層はリペアー性に優れているので、貼り損じが生じても容易にリペアーができた。従って、貼り損じによる高価な部材である画像表示パネルの損失を無くすことができた。一方、実施例10で得られた両面粘着シートは、両面がシリコーン系粘着層よりなっており、両面共にリペアー性に優れているので、表面保護パネルと画像表示パネルの両方の貼り損じによる損失を無くすことができた。」

(7)甲B2
甲B2には、「シリコーン粘着剤組成物及び粘着フィルム」(発明の名称)について、次の記載がある(当審注:空白及び改行は、原文と完全には一致しない。)。
「【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基及びフェニル基を有し、ジオルガノポリシロキサンの全有機基のうちフェニル基が1.0?12モル%で含まれると共に、ジオルガノポリシロキサン100g中にアルケニル基が0.0005?0.05モルで含まれ、25℃における粘度が100,000mPa・s以上であるジオルガノポリシロキサン
100?80質量部、
(B)R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位及びSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?1.7であるオルガノポリシロキサン(R^(1)は炭素数1?10の1価炭化水素基である。)
0?20質量部、
(C)SiH基を3個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A),(B)成分中のアルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5?20となる量、
(D)制御剤
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0?8.0質量部、
(E)付加反応触媒
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、貴金属分として5?2,000ppm、
(F)有機溶剤
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して25?900質量部を含むことを特徴とするシリコーン粘着剤組成物。
【請求項3】
基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面上に形成された粘着層とを備え、該粘着層が請求項1又は2に記載されたものである粘着フィルム。」
「【0003】
このフィルムには、表示装置の内部に組み込まれる場合であっても、貼り付け時に、気泡巻き込みしない、気泡ぬけ性がよい、などの特性が必要である。貼付されたフィルムは独りでにずれたり、剥がれたりしないことが必要であるが、貼り替え時には再剥離(剥がすこと)が容易であることが必要である。」
「【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、貼り付け時に気泡巻き込みがなく、また、貼付後には、独りでにずれたり、はがれたりしないが、手で剥離するのは容易である、フラットパネルディスプレイに貼付するのに好適な粘着フィルム及び該フィルム用のシリコーン粘着剤組成物を提供することを目的とする。更に、予め基材フィルムの表面にプライマー処理をせずに、直接、粘着剤組成物を塗工した場合でも優れた基材フィルムへの密着性が得られるシリコーン粘着剤組成物を提供することを目的とする。」
「【0013】
本発明の粘着フィルムは、貼り付け時に気泡を巻き込まない。貼付された後には、独りでにずれたりすることなく、貼付されているが、手で容易に剥離することが可能である。」
「【0041】
上記のように配合されたシリコーン粘着剤組成物は、粘着剤層の厚みが30μmとなるようにポリエチレンテレフタレート(厚み23μm)基材に塗工した粘着テープを用い、JIS Z 0237に示される180°引き剥がし粘着力の測定方法により、ステンレス板への粘着力を測定した場合、0.001?1.0N/10mmとなるものがよい。好ましくは0.004?0.4N/10mm、更に好ましくは、0.004?0.1N/10mmとなるものがよい。0.001N/10mm未満では粘着力が不足でディスプレイ表面に貼付しなくなり、1.0N/10mm超では粘着力が過剰で手で剥離するのが困難となる。なお、このような粘着力を与える手段としては、(A)成分のアルケニル基を調整したり、(A),(B)成分の割合を調整することで達成し得る。」
「【0051】
塗工量としては、硬化した後の粘着剤層の厚みとして2?200μm、特に3?100μmとすることができる。」
「【0054】
本発明のシリコーン粘着剤組成物を用いて製造した粘着フィルムは、テレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車等の計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機等の文字や記号、画像を表示するための種々のタッチパネルやフラットパネルディスプレイ(FPD)に使用することができる。装置としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)等の表示装置や、これらを利用したタッチパネルに応用が可能である。本発明の粘着フィルムは、これらのディスプレイ表面の傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、帯電防止、反射防止、のぞき見防止などの目的で使用される。」
「【0059】
保持力
粘着力評価と同様の方法で粘着フィルムを作製した。この粘着フィルムを長さ75mm、幅25mmに切り取ったテープをステンレス板の下端に粘着面積が25mm×25mmとなるように貼りつけ、粘着テープの下端に重さ1kgの荷重をかけ、150℃で1時間、垂直に放置した後のずれ距離を読みとり顕微鏡で測定した。
【0060】
気泡巻き込み性
厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーン粘着剤組成物溶液を硬化後の厚みが30μmとなるようにアプリケータを用いて塗工した後、130℃、1分の条件で加熱し硬化させ、粘着フィルムを作製した。このフィルムを10cm×20cmの大きさに切り取り、短辺側から長辺方向に向かって手でガラス板に貼りつけた。このときに気泡巻き込みの状態を観察した。
評価基準
○ 気泡の巻き込みがなく、良好に貼付できる。
△ 気泡の巻き込みがあるが、フィルムの上から容易に指で気泡を押し出すことができる。
× 気泡の巻き込みがあり、フィルムの上から指で気泡を押し出すことができない。
【0061】
再剥離性
気泡巻き込み性の試験と同様に作製し、貼り付けた粘着フィルムをガラス板から手で引き剥がし、下記の基準により評価した。
評価基準
○ 手で容易にフィルムを剥がすことができ、フィルムに折れや曲がりの変形が残留しない。
△ 手でフィルムを剥がすことができるが、フィルムに折れや曲がりの変形が残留する 、糊残りがない。
× 手でフィルムを剥がすことができるが、フィルムに折れや曲がりの変形が残留し、一部に糊残りがある。」

(8)甲B3
甲B3には、「光学フィルム用粘着剤層、粘着剤層付光学フィルム、及び、画像表示装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0012】
本発明は、偏光解消を起こしにくく、かつ、リワーク性、リサイクル性に優れた光学フィルム用粘着剤層を提供することを目的とする。また、光学フィルムの少なくとも片側に、前記光学フィルム用粘着剤層が積層されている粘着剤層付光学フィルム、当該粘着剤層付光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。」
「【0073】
また、前記塗布工程では、形成される粘着剤層が所定の厚み(乾燥後厚み)になるようにその塗布量が制御される。粘着剤層の厚み(乾燥後厚み)は、通常、1?100μm程度、好ましくは5?50μm、さらに好ましくは10?40μmの範囲に設定される。」
「【0077】
本発明の光学フィルム用粘着剤層は、ガラスに貼り合わせた後、23℃で30日以内保存した場合の該粘着剤層のガラスに対する接着力が、剥離速度300mm/minにおいて1?15N/25mmを満足することができる。前記接着力として、1?15N/25mmを有する場合には、ガラスに対する接着力を維持して、耐久性を満足するうえで好ましい。また、前記接着力は、2?10N/25mmであるのが好ましく、さらには4?10N/25mmであるのが好ましい。このガラスに対する接着力は、リワーク性を考慮した場合の接着力である。
【0078】
本発明の光学フィルム用粘着剤層は、ガラスに貼り合わせた後、60℃の温度条件下で1000時間保存期間した場合のガラスに対する接着力が、剥離速度300mm/minにおいて1?25N/25mmを満足することができる。前記接着力として、1?25N/25mmを有する場合には、ガラスに対する接着力を維持して、耐久性を満足するうえで好ましい。また、前記接着力は1?24N/25mmであるのが好ましい。前記接着力は10N/25mmを超える場合にも最も良好な評価になる。このガラスに対する接着力は、リサイクル性を考慮した場合の接着力である。」
「【0138】
<リワーク性>
各実施例及び各比較例で得られた粘着剤層付偏光板を、幅25mm、長さ150mmに切断し、これを厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニングイーグルXG、コーニング(株)製)に貼着し、50℃、0.5MPaのオートクレーブ中に15分間放置した。さらに23℃、50%R.H.の環境下で2週間放置した。その後、剥離角度180°で、剥離速度(300mm/min、1m/min、30m/min)で、それぞれ引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定した。剥離速度20m/min以下の場合には高速剥離試験器((株)工研製の高低温ハクリ試験機)を、剥離速度20m/minを超える場合には高速剥離試験器(テスター産業(株)製のTE-702)を、それぞれ用いた。接着力評価は、5回測定値を行なった。また、その引き剥がした後の無アルカリガラス表面の糊残りのレベルを下記5段階で目視にて評価した。結果を表2に示す。
5:ガラス面に全く糊残りなし。
4:ガラス面の一部にごく薄い糊の痕跡が存在する。
3:ガラス面の全体にごく薄い糊の痕跡が存在する。
2:ガラス面の全体に薄い糊が存在する。
1:ガラス面の全体に粘着剤層が存在する。粘着剤層に凝集破壊が起こっている。
【0139】
<リサイクル性>
各実施例及び各比較例で得られた粘着剤層付偏光板を、幅25mm、長さ150mmに切断し、これを、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニングイーグルXG、コーニング(株)製)に貼着し、50℃、0.5MPaのオートクレーブ中に15分間放置した。さらに60℃にて1000時間処理した後、23℃、50%R.H.の環境下に3時間放置した。その後、剥離角度180°で、剥離速度(300mm/min、1m/min、30m/min)で、それぞれ引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定した。剥離速度20m/min以下の場合には高速剥離試験器((株)工研製の高低温ハクリ試験機)を、剥離速度20m/minを超える場合には高速剥離試験器(テスター産業(株)製のTE-702)を、それぞれ用いた。接着力評価は、5回測定値を行なった。また、その引き剥がした後の無アルカリガラス表面の糊残りのレベルを下記5段階で目視にて評価した。結果を表2に示す。
5:ガラス面に全く糊残りなし。
4:ガラス面の一部にごく薄い糊の痕跡が存在する。
3:ガラス面の全体にごく薄い糊の痕跡が存在する。
2:ガラス面の全体に薄い糊が存在する。
1:ガラス面の全体に粘着剤層が存在する。粘着剤層に凝集破壊が起こっている。」

(9)甲B4
甲B4には、「シリコーン系感圧接着剤組成物およびそれを用いた感圧接着テープ」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0020】シリコーンレジンとしては、シリコーン系感圧接着剤組成物に使用されている各種のものを特に制限なく使用できる。たとえば、M単位(R^(3) SiO_(1/2) )と、Q単位(SiO_(2) )、T単位(RSiO_(3/2) )およびD単位(R_(2) SiO)から選ばれるいずれか少なくとも1種の単位(前記単位中、Rは一価炭化水素基または水酸基を示す)を有する共重合体からなるオルガノポリシロキサンを好ましく使用できる。前記共重合体からなるオルガノポリシロキサンは、OH基を有する他に、必要に応じてビニル基等の種々の官能基が導入されていてもよい。導入する官能基は架橋反応を起こすものであってもよい。前記共重合体としてはM単位とQ単位からなるMQレジンが好ましい。」
「【0040】実施例1
ジメチルシロキサンを構成単位とし、メチル基の一部をビニル基に置き換えたオルガノポリシロキサンで、重量平均分子量70万、ビニル基含有量0.004モル/100gである生ゴム状のメチルビニルポリシロキサン100重量部と、(CH_(3) )_(3) SiO_(1/2) 単位0.44モル%、SiO_(2) 単位0.56モル%からなるMQレジン(重量平均分子量5500)170重量部とをトルエンと共に混合し、100?120℃の温度で4時間部分縮合反応させた。さらにトルエンを加えて不揮発分の調整をして、粘稠で無色透明な60重量%のトルエン溶液を得た。
【0041】上記トルエン溶液100重量部に、重量平均分子量8000で水素(SiH)含有量1.2モル/100gのメチルハイドロジエンポリシロキサン(固形分100重量%)1g、過酸化べンゾイルのキシレン溶液(ナイパーBMT,日本油脂(株)製,固形分40重量%)3gおよび白金触媒を白金量として30ppm加え、さらにトルエンで固形分30重量%に調整して配合物を調製した。
【0042】上記配合物を、ポリイミドフィルム(カプトン100H,東レ・デュポン(株)製)に、アプリケーターで糊厚35μmになるように塗布し、乾燥機にて130℃で3分間加熱して、シリコーン系感圧接着剤組成物からなる接着層を有する感圧接着テープを得た。」

(10)甲B5
甲B5には、「アクリル系粘着剤組成物およびアクリル系粘着テープ」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0008】
この態様のアクリル系粘着剤組成物によれば、アクリル系粘着テープの接着性を向上させることができる。」
「【0035】
凝集力を調整するには、上述の多官能性モノマー以外に架橋剤を用いることも可能である。架橋剤は、通常用いる架橋剤を使用することができ、たとえば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。特に、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を好適に使用することができる。」
「【0039】
[(メタ)アクリル系重合体(B)]
(メタ)アクリル系重合体(B)は、アクリル系ポリマー(A)よりも重量平均分子量が小さい重合体であり、粘着付与樹脂として機能し、かつUV重合の際に重合阻害を起こしにくいという利点を有する。(メタ)アクリル系重合体(B)は、三環以上の脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマーをモノマー単位として含み、重量平均分子量が1000以上30000未満の(メタ)アクリル系重合体である。三環以上の脂環式構造のような嵩高い構造を(メタ)アクリル系重合体(B)に持たせることで、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる低極性被着体に対するアクリル系粘着剤組成物の接着性を顕著に向上させることができる。」

5.甲A1、甲A2、甲A3、甲B1に記載された発明の認定
(1)甲A1に記載された発明の認定(甲A1発明)
甲A1の請求項1、4、5、8及び10及び[0035]?[0038]から、甲A1には、
「第1の硬質体と、第2の硬質体との間での接着に使用される両面粘着シートであって、
前記両面粘着シートが、前記第1の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第1の硬質体側にある部材に接着される第1の粘着面と、前記第2の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第2の硬質体側にある部材に接着される第2の粘着面とを備えており、
前記第1の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第1の硬質体側にある部材に対する前記第1の粘着面の粘着力をF1、前記第2の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第2の硬質体側にある部材に対する前記第2の粘着面の粘着力をF2としたときに、前記F2に対する前記F1の比(F1/F2)が、0.0001?0.1である両面粘着シートであって、
前記両面粘着シートは、
前記第1の粘着面を有する、シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られた付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層と、
前記第2の粘着面を有する、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有するアクリル系粘着剤から構成される第2の粘着剤層とを備え、
前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層との間には、芯材が設けられており、
前記第1の粘着剤層の前記第1の粘着面におけるJIS Z0237:2009に準拠した対フロートガラス粘着力が、0.01?1N/25mmである両面粘着シート。」(以下、「甲A1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)甲A2に記載された発明の認定(甲A2発明)
甲A2の【請求項1】には、ポリエステルフィルム(A)、離型層(B)、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)、耐熱水接着性改良層(D)、ポリエステル系基材フィルム(E)、アクリル系粘着剤層(F)およびセパレートフィルム(G)が、A?Gの順に積層された両面粘着シートであって、明細書中で定義した方法で測定される上記離型層(B)と上記粘着層(C)との剥離強度が0.03?1.0N/20mmである両面粘着シートについて記載され、
同【0053】には、粘着層(C)の厚みは、3?100μmであり、
同【0145】には、アクリル系粘着剤層(F)を構成する粘着剤は、アクリル系ポリマーを主成分またはベースポリマーとして含有しているアクリル系粘着剤であって、
同【0152】、【0153】には、アクリル系粘着剤層(F)を構成する粘着剤は、エポキシ系架橋剤によって、アクリル系ポリマーを架橋させたものでもよく、
同【0154】には、粘着付与樹脂を含んでいてもよく、
同【0155】には、アクリル系粘着剤層(F)の厚さは、3?200μmであり、
同【0158】には、アクリル系粘着剤層(F)の粘着力は、前記粘着層(C)の粘着力より大きくてもよく、5.0?25N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張速度300mm/min)であることが記載されている。
なお、請求項1の「剥離強度」が測定される「明細書中で定義した方法」は、同【0188】に記載されており、同【0188】に記載された方法を、以下、「特定の剥離強度測定方法」という。

そうすると、甲A2には、
「ポリエステルフィルム(A)、離型層(B)、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)、耐熱水接着性改良層(D)、ポリエステル系基材フィルム(E)、アクリル系粘着剤層(F)およびセパレートフィルム(G)が、A?Gの順に積層された両面粘着シートであって、
特定の剥離強度測定方法によって測定される上記離型層(B)と上記粘着層(C)との剥離強度が0.03?1.0N/20mmであり、
粘着層(C)の厚みは、3?100μmであり、
アクリル系粘着剤層(F)を構成する粘着剤は、アクリル系ポリマーを主成分またはベースポリマーとして含有しているアクリル系粘着剤であって、エポキシ系架橋剤によって、アクリル系ポリマーを架橋させたものであり、粘着付与樹脂を含んでいて、アクリル系粘着剤層(F)の厚みは、3?200μmであり、
アクリル系粘着剤層(F)の粘着力は、前記粘着層(C)の粘着力より大きく、5.0?25N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張速度300mm/min)である両面粘着シート」(以下、「甲A2発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)甲A3に記載された発明の認定(甲A3発明)
甲A3の【請求項1】から、甲A3には、
ハードコート層が透明基材に積層された構成の積層体(1)と、透明導電層が透明基材に積層された導電性積層体(2)とが、ポリエステル系基材フィルムの少なくとも片面にシリコーンゴム粘着層を有し、かつ明細書中で定義した方法で耐熱水接着性を評価したときに上記シリコーンゴム粘着層がポリエステル系基材フィルムから剥離しない両面粘着シートで貼り合わされたものであるタッチパネル用上部電極について記載され、
同【請求項8】には、両面粘着シートが、シリコーンゴム粘着層とアクリル系粘着剤層とを有し、
同【0032】には、シリコーンゴム粘着層の厚みは、3?100μmであり、
同【0038】には、粘着力は0.01?1.0N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であり、
同【0128】?【0129】には、一方の粘着層はシリコーンゴム粘着層であり、もう一方の第2粘着層はアクリル系粘着剤層であって、アクリル系ポリマーを主成分またはベースポリマーとして含有しているアクリル系粘着剤であってもよく、
同【0136】には、アクリル系粘着剤には、アクリル系ポリマーとともに、架橋剤が配合されていてもよく、
同【0136】、【0137】には、アクリル系粘着剤は、エポキシ系架橋剤によって、アクリル系ポリマーを架橋させたものでもよく、
同【0138】にはは、アクリル系粘着剤には、粘着付与樹脂を含んでいてもよく、
同【0139】には、アクリル系粘着剤層の厚さは、3?200μmであり、
同【0142】には、アクリル系粘着剤層の粘着力は、シリコーンゴム粘着層の粘着力より、大きくてもよく、5.0?25N/20mmであることが記載されている。
なお、請求項1の「耐熱水接着性を評価」する「明細書中で定義した方法」は、【0183】に記載されており、同【0183】に記載された方法を、以下、「特定の耐熱水接着性評価方法」という。

そうすると、甲A3には、「タッチパネル用上部電極」において、「ハードコート層が透明基材に積層された構成の積層体(1)と、透明導電層が透明基材に積層された導電性積層体(2)と」を貼り合わせるために用いられた「両面粘着シート」に着目すれば、
「ポリエステル系基材フィルムの一方の片面にシリコーンゴム粘着層を有し、かつ特定の耐熱水接着性評価方法で耐熱水接着性を評価したときに上記シリコーンゴム粘着層がポリエステル系基材フィルムから剥離しない両面粘着シートであって、
両面粘着シートは、もう一方の片面にアクリル系粘着剤層を有し、
シリコーンゴム粘着層の厚みは、3?100μmであり、
シリコーンゴム粘着層の粘着力は0.01?1.0N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であり、
アクリル系粘着剤層は、アクリル系ポリマーを主成分またはベースポリマーとして含有しているアクリル系粘着剤であって、アクリル系ポリマーとともに、架橋剤が配合され、エポキシ系架橋剤によって、アクリル系ポリマーを架橋させたものであり、
アクリル系粘着剤には、粘着付与樹脂が含まれ、
アクリル系粘着剤層の厚さは、3?200μmであり、
アクリル系粘着剤層の粘着力は、シリコーンゴム粘着層の粘着力より、大きく、5.0?25N/20mmである両面粘着シート」(以下、「甲A3発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)甲B1に記載された発明(甲B1発明)
甲B1の【請求項1】から、甲B1には、
ポリエステル系基材フィルムの少なくとも片面に、耐熱水接着性改良層を介して、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層が積層された両面粘着シートを用いて、画像表示パネルと、該画像表示パネルを保護する保護パネルとを貼り合わせる画像表示装置の製造方法について記載されており、
同【請求項6】には、前記ポリエステル系基材フィルムの片面に、アクリル系粘着層またはゴム系粘着層が積層されたものであり、
同【0134】には、シリコーン化合物を含む粘着層の粘着力は、0.01?1.0N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であることが好ましく、
同【0156】には、 アクリル系粘着層の粘着力は、上記シリコーン化合物を含んで構成される粘着層の粘着力より、大きくてもよく、5?25N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であることが好ましく、
同【0123】には、シリコーン化合物を含む粘着層の厚み3?180μmが好ましく、
同【0153】には、アクリル系粘着層の厚さは、3μm?200μm以下が好ましく、
同【0149】には、アクリル系粘着剤には、アクリル系ポリマーとともに、架橋剤が配合されていてもよく、
同【0150】から、架橋剤としては、エポキシ系架橋剤が好ましく、
同【0151】粘着付与樹脂を配合してもよいことが記載されている。

そうすると、「画像表示パネルと、該画像表示パネルを保護する保護パネルとを貼り合わせる画像表示装置の製造方法」に用いられる両面粘着シートに着目すると、甲B1には、
「ポリエステル系基材フィルムの少なくとも片面に、耐熱水接着性改良層を介して、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層が積層された両面粘着シートであり、
前記ポリエステル系基材フィルムの片面に、アクリル系粘着層が積層されたものであり、
シリコーン化合物を含む粘着層の粘着力は、0.01?1.0N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であり、
アクリル系粘着層の粘着力は、上記シリコーン化合物を含んで構成される粘着層の粘着力より、大きくてもよく、5?25N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であり、
シリコーン化合物を含む粘着層の厚みは、3?180μmであり、
アクリル系粘着層の厚さは、3?200μmであり、
アクリル系粘着剤には、アクリル系ポリマーとともに、エポキシ系架橋剤が配合されており、さらに、粘着付与樹脂が配合された両面粘着シート」(以下、「甲B1発明」という。)が記載されていると認められる。

6.判断
(1)申立人Aの申立理由A1?申立理由A5について
ア 申立理由A1(拡大先願による新規性欠如)について
本件発明1と甲A1発明とを対比する。
甲A1発明の「芯材」、「付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層」、「(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有するアクリル系粘着剤から構成される第2の粘着剤層」及び「両面粘着シート」は、本件発明1の「基材」、「シリコーン系粘着剤層」、「アクリル系粘着剤層」及び「両面粘着テープ」に、それぞれ相当する。
また、甲A1発明の「シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られた付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層」が「シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られた付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有する」点は、本件発明1の「シリコーン系粘着剤」が「付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」点で共通し、甲A1発明のシリコーン粘着剤を形成する「シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン」は、本件発明1の「ケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造」に相当するから、甲A1発明の「シリコーン粘着剤」は、本件発明1の「シリコーン系粘着剤」に相当する。
そして、甲A1の[0037]には、「シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン」は「R^(1)_(a)SiO_((4-a)/2)」であることが記載され、[0038]には、R^(1)として、ビニル基が例示されており、技術常識に照らせば、オルガノポリシロキサンとして、ビニル基を有するものは代表的なものであって、ビニル基は、「CH_(2)=CH-」と表せるから、該「シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン」は、「(CH_(2)=CH)_(a)-SiO_((4-a)/2)」と表すことができ、これは、書き改めれば、「O_((4-a)/2)-Si-(CH-CH_(2))_(a)」となるから、本件発明1の「シリコーン系粘着剤」が「ケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-(CH-CH_(2))基を有する」構成に相当するといえる。
しかも、本件特許明細書の【0043】には、「前記ガム成分であるポリオルガノシリコーンと、レジン成分であるポリオルガノシリコーンとの質量比は、100:0?65:35であることが好ましく、95:5?70:30であることがより好ましく、93:7?80:20であることが、前記所定範囲の引張強さを備えたシリコーン系粘着剤層を形成しやすく、より一層優れたエア抜け性、リワーク性、耐衝撃性を高度に両立しやすいため特に好ましい。」と記載され、ガム成分であるポリオルガノシリコーンのみが含まれ、レジン成分が含まれないものも本件発明1に包含されるから、甲A1発明の「シリコーン粘着剤」は、本件発明1の「ガム成分として」の「シリコーン系粘着剤」に相当する。

そして、甲A1発明の「第1の粘着面」及び「第2の粘着面」は、それぞれ、「シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られた付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層」及び「(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有するアクリル系粘着剤から構成される第2の粘着剤層」であるから、甲A1発明の「両面粘着シートが、前記第1の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第1の硬質体側にある部材に接着される第1の粘着面と、前記第2の硬質体または前記両面粘着シートよりも前記第2の硬質体側にある部材に接着される第2の粘着面とを備え」る構成は、本件発明1の基材の一方の面側に直接または他の層を介してシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する」構成に相当する。

そうすると、本件発明1と甲A1発明とは、
「基材の一方の面側に直接または他の層を介して、ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有するシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する両面粘着テープ。」である点で一致し、次の相違点A1-1で相違する。

(相違点A1-1)
粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さに関して、本件発明1は、「シリコーン系粘着剤層」について、「0.01N/25mm?0.1N/25mm」であり、「アクリル系粘着剤層」について、「5N/25mm?28N/25mm」であるのに対し、甲A1発明の「付加型オルガノポリシロキサン(の硬化物)を含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層」及び「(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有するアクリル系粘着剤から構成される第2の粘着剤層」のそのような測定方法で測定された引張強さは、不明な点。

ここで、相違点について検討する。
(相違点A1-1について)
甲A1発明において、「オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層」の粘着面におけるJIS Z0237:2009に準拠した対フロートガラス粘着力は、0.01?1N/25mmであるものの、技術常識に照らせば、引張強さに影響を与える表面エネルギーの大きさが、フロートガラスとポリエチレンテレフタレートフィルムとでは有意に異なることから(必要であれば、特表2013-511593号公報の「【0059】」の「接着剤は、様々な金属及び高分子材料に結合させるのに有用である。金属は、典型的には、少なくとも約500ダイン/cmの表面エネルギーを有する。例えば、ステンレス鋼は、約700?1100ダイン/cmの表面エネルギーを有すると報告される。無機酸化物は、通常、金属の表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する。例えば、ガラスは、約250?500ダイン/cmの表面エネルギーを有すると報告される。この接着剤は、様々な高分子材料への接着に特に有用である。プラスチックなどの高分子材料は、通常、100ダイン/cm未満、75ダイン/cm未満、又は50ダイン/cm未満の表面エネルギーを有する。例えば、ポリエステルは43ダイン/cmの表面エネルギーを有し、ポリカーボネートは42ダイン/cmの表面エネルギーを有し、ポリ塩化ビニルは39ダイン/cmの表面エネルギーを有し、アクリルは38ダイン/cmの表面エネルギーを有する。更に低い表面エネルギーの材料は、37ダイン/cm未満の表面エネルギーを有する。これらとしては、例えば、ポリビニルアセテート、ポリスチレン、アセタール、エチレンビニルアセテート及びポリエチレンが挙げられ、31ダイン/cmの表面エネルギーを有すると報告されている。」という記載を参照されたい。)、対フロートガラス粘着力の大きさに基いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する引張強さを推定することは困難であるといえ、甲A1発明における「オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層」の「粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さ」は不明というほかない。
そして、甲A1発明は、「第1の粘着面の粘着力をF1」、「第2の粘着面の粘着力をF2」としたときに、「前記F2に対する前記F1の比(F1/F2)が、0.0001?0.1」であるものの、「オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層」の引張強さが不明である以上、甲A1発明において、「オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン粘着剤から構成される第1の粘着剤層」の粘着面も、不明というほかない。

さらに、申立人Aの主張からは、甲A1発明の「第1の粘着剤層」の「粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さ」が、本件発明1の「シリコーン系粘着剤層」のそれと、同じになる蓋然性を認定できる、合理的な根拠は見出すことができない。

(まとめ)
以上のことから、上記相違点A1-1は、実質的な相違点であって、本件発明1は、甲A1発明であるということはできない。
本件発明2?8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して、さらに限定するものであるから、同様な理由から、本件発明は2?8は、甲A1発明ということはできない。
したがって、申立人Aの上記「申立理由A1」は理由がない。

イ 申立理由A2(進歩性欠如)について
(ア)甲A2発明を主引用発明とした場合
本件発明1と甲A2発明とを対比する。
甲A2発明の「ポリエステルフィルム(A)」、「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」、「アクリル系粘着剤層(F)」及び「両面粘着シート」は、本件発明1の「基材」、「シリコーン系粘着剤層」、「アクリル系粘着剤層」及び「両面粘着テープ」に、それぞれ相当する。
そして、甲A2発明の「ポリエステルフィルム(A)、離型層(B)、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)、耐熱水接着性改良層(D)、ポリエステル系基材フィルム(E)、アクリル系粘着剤層(F)およびセパレートフィルム(G)が、A?Gの順に積層され」る構成は、本件発明1の基材の一方の面側に直接または他の層を介してシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する」構成に相当する。

そうすると、本件発明1と甲A2発明とは、
「基材の一方の面側に直接または他の層を介してシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する両面粘着テープ。」である点で一致し、次の相違点A2-1、A2-2で相違する。

(相違点A2-1)
粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さに関して、本件発明1は、「シリコーン系粘着剤層」について、「0.01N/25mm?0.1N/25mm」であり、「アクリル系粘着剤層」について、「5N/25mm?28N/25mm」であるのに対し、甲A2発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」及び「アクリル系粘着剤層(F)」のそのような測定方法で測定された引張強さは、不明な点。

(相違点A2-2)
シリコーン系粘着剤について、本件発明1は、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」ものであるのに対し、甲A2発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」が、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」かどうかは不明な点。

ここで、相違点について検討する。
(相違点A2-1について)
甲A2発明において、「アクリル系粘着剤層(F)」の粘着力は、5.0?25N/20mm(対ガラス180度剥離試験、引張り速度300mm/min)であるものの、上記「(相違点A1-1について)」で述べたように、技術常識に照らせば、粘着力や引張強さに影響を与える表面エネルギーの大きさは、ガラスとポリエチレンテレフタレートフィルムとでは有意に異なることから、引張り速度300mm/minの対ガラス180度剥離試験で得られた値に基いて、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さを推定することは困難であって、そのような引張強さがどのような値となるかは不明というほかない。
また、甲A2発明において、「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」の、そのような引張強さがどのような値なのかも不明というほかない。

さらに、申立人Aの主張からは、甲A2発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」の「粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さ」が、本件発明1の「シリコーン系粘着剤層」のそれと同じになる蓋然性は見出すことができない。

そして、甲A2発明の課題は、「シリコーン粘着層と基材フィルムとの接着性、特に耐熱水接着性に優れ、シリコーン粘着層とセパレートフィルムとの剥離力は適度に制御された両面粘着シートを提供することと、この両面粘着シートを効率的・経済的に製造する方法、さらにはその使用方法を提供すること」(【0009】)であって、申立人Aが主張するように、甲A4のセパレータ付粘着テープの実施例1?3の「熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤」において、「0.10?0.14(N/25mm)」程度の剥離力が認定できたとしても、そのような剥離力とする理由は、「剥離性が改善され、かつ生産性にも優れた、セパレータ基材に剥離剤を塗布乾燥する工程中で剥離剤層表面に凹凸形状を付与するセパレータの製造方法を提供すること」(【0006】)であって、甲A2発明は、「剥離剤」に関するものではなく、しかも、「剥離剤層表面に凹凸形状を付与する」ようなことは想定されていないのであるから、甲A2発明において、甲A4に記載された剥離力を採用する動機付けはない、というべきである。

また、申立人Aは、本件特許明細書の実施例では、基材として東洋紡(株)製ポリエステルフィルム(A4300#38)が用いられ、これは、甲A5に記載された「超高透明ポリエステルフィルム コスモシャイン」であって、表面に凹凸が形成されたものであり、本件発明の明細書の実施例は、甲A4の比較例1(凹凸を形成していない基材を使用)ではなく、実施例1?3(凹凸を形成した機材を使用)であり、甲A4の実施例1?3における剥離力は、0.10?0.14(N/50mm)」程度であり、単位を換算すると、「0.05?0.07(N/25mm)」となり、本件発明1の引張強さの範囲内である旨主張している。
しかしながら、甲A5には、「超高透明ポリエステルフィルム コスモシャイン」について「高度な表面凹凸(片面コート品)」という記載はあるものの、「品番」が「A4300」のものは、「特長」に「両面易接着処理」と記載されていることから、両面ともに接着しやすくなる処理がされていると解されるものであって、表面に凹凸が形成された「片面コート品」とは認めることはできない。
また、仮に、申立人Aが主張するように、本件特許明細書の実施例に「片面コート品」が用いられたとしても、甲5Aには、剥離力や引張強さについての記載はなく、上述したように、甲A2発明において、甲A4の実施例1?3における剥離力を採用する動機付けはないというべきである。

したがって、相違点A2-1は実質的な相違点であり、また、相違点A2-1に係る本件発明1の発明特定事項について、甲A2発明及び甲A4、甲A5の記載に基いて、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(相違点A2-2について)
甲A2発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」が、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」かどうかは、甲A2の記載からは不明としかいうほかなく、申立人Aの主張からは、甲A2発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」は、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」ものであるする合理的根拠は見出すことができない。

また、甲A4には、セパレータ基材に用いられる剥離剤について、熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤が記載され、分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン(アルケニル基含有シリコーン)」(【0020】)であって、アルケニル基としては、ビニル基が例示されていることから、上記「6.(1)ア」で述べたように、このような「ポリオルガノシロキサン」は、本件発明1の「シリコーン系粘着剤」が「ケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-(CH-CH_(2))基を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーン」に相当するとしても、甲A4に記載されたものは、シリコーン系粘着剤ではなく、シリコーン系剥離剤であって、用途が異なり、甲A4に記載された「熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤」を、甲A2発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」として採用する動機付けは見出すことができない。

そして、申立人Aが提示した甲A2?甲A3、甲A5には、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有するシリコーン系粘着剤」については、明確な開示がなく、また、仮に、そのような粘着剤が本件特許の優先権主張日前に公知だとしても、申立人Aの主張からは、甲A2発明において、そのようなシリコーン系粘着剤を採用する動機付けを見出すことができない。

したがって、相違点A2-2は実質的な相違点であり、また、相違点A2-2に係る本件発明1の発明特定事項について、甲A2発明及び甲A2?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(まとめ)
以上のことから、上記相違点A2-1及びA2-2は、実質的な相違点であって、本件発明1は、甲A2発明であるということはできない。
また、本件発明1は、甲A2発明及び甲A2?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
本件発明2?8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して、さらに限定するものであるから、同様な理由から、本件発明は2?8は、甲A2発明ということはできず、甲A2発明及び甲A2?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

したがって、申立人Aの上記「申立理由A2 ア」の主張は理由がない。

(イ)甲A3発明を主引用発明とした場合
本件発明1と甲A3発明とを対比する。
甲A3発明の「ポリエステル系基材フィルム」、「シリコーンゴム粘着層」、「アクリル系粘着剤層」及び「両面粘着シート」は、本件発明1の「基材」、「シリコーン系粘着剤層」、「アクリル系粘着剤層」及び「両面粘着テープ」に、それぞれ相当する。
そして、甲A3発明の「ポリエステル系基材フィルムの一方の片面にシリコーンゴム粘着層を有し」「両面粘着シートは、もう一方の片面にアクリル系粘着剤層を有」する構成は、本件発明1の基材の一方の面側に直接または他の層を介してシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する」構成に相当する。

そうすると、本件発明1と甲A3発明とは、
「基材の一方の面側に直接または他の層を介してシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する両面粘着テープ。」である点で一致し、次の相違点A3-1及びA3-2で相違する。

(相違点A3-1)
粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さに関して、本件発明1は、「シリコーン系粘着剤層」について、「0.01N/25mm?0.1N/25mm」であり、「アクリル系粘着剤層」について、「5N/25mm?28N/25mm」であるのに対し、甲A3発明の「シリコーンゴム粘着層」及び「アクリル系粘着剤層」のそのような測定方法で測定された引張強さは、不明な点。

(相違点A3-2)
シリコーン系粘着剤について、本件発明1は、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」ものであるのに対し、甲A3発明の「シリコーンゴム粘着層」が、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」かどうかは不明な点。

ここで、相違点について検討する。
(相違点A3-1について)
上記「(相違点A2-1について)」で述べたと同様な理由から、甲A3発明において、「シリコーンゴム粘着層」に対して、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さを推定することは困難であって、そのような引張強さがどのような値となるかは不明というほかない。
また、甲A3発明において、「アクリル系粘着剤層」の、そのような引張強さがどのような値なのかも不明というほかない。

さらに、申立人Aの主張からは、甲A3発明の「シリコーンゴム粘着層」の「粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さ」が、本件発明1の「シリコーン系粘着剤層」のそれと同じになる蓋然性は見出すことができない。

そして、甲A3発明の課題は、「クッション性のある粘着層を有し、粘着層と基材フィルムとの接着性、特に耐熱水接着性に優れた両面粘着シートを見出し、この両面粘着シートでハードコート層を有する積層体と、導電性積層体とを貼り合わせた構成のタッチパネル用上部電極を提供すること」(【0008】)であって、申立人Aが主張するように、甲A4のセパレータ付粘着テープの実施例1?3の「熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤」において、「0.10?0.14(N/25mm)」程度の剥離力が認定できたとしても、そのような剥離力とする理由は、「剥離性が改善され、かつ生産性にも優れた、セパレータ基材に剥離剤を塗布乾燥する工程中で剥離剤層表面に凹凸形状を付与するセパレータの製造方法を提供すること」(【0006】)であって、甲A3発明は、「剥離剤」に関するものではなく、しかも、「剥離剤層表面に凹凸形状を付与する」ようなことは想定されていないのであるから、甲A3発明において、甲A4に記載された剥離力を採用する動機付けはない、というべきである。

また、甲A5には、引張強さについての記載は見出せない。

したがって、相違点A3-1は実質的な相違点であり、また、相違点A3-1に係る本件発明1の発明特定事項について、甲A3発明及び甲A4、甲A5の記載に基いて、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(相違点A3-2について)
甲A3発明の「シリコーンゴム粘着層」が、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」かどうかは、甲A3の記載からは不明としかいうほかなく、申立人Aの主張からは、甲A3発明の「シリコーンゴム粘着層」は、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」ものであるする合理的根拠は見出すことができない。

また、上記「(相違点A2-2について)」で述べたように、甲A4に記載された「熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤」を、甲A2発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層(C)」として採用する動機付けは見出すことができず、甲A2?甲A3、甲A5には、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有するシリコーン系粘着剤」については、明確な開示がなく、また、仮に、そのような粘着剤が本件特許の優先権主張日前に公知だとしても、申立人Aの主張からは、甲A3発明において、そのようなシリコーン系粘着剤を採用する動機付けを見出すことができない。

したがって、相違点A3-2は実質的な相違点であり、また、相違点A3-2に係る本件発明1の発明特定事項について、甲A3発明及び甲A2?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(まとめ)
以上のことから、上記相違点A3-1及びA3-2は、実質的な相違点であって、本件発明1は、甲A3発明であるということはできない。
また、本件発明1は、甲A3発明及び甲A2?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
本件発明2?8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して、さらに限定するものであるから、同様な理由から、本件発明2?8は、甲A3発明ということはできず、甲A3発明及び甲A2?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

したがって、申立人Aの上記「申立理由A2 イ」は理由がない。

ウ 申立理由A3(実施可能要件違反)について
シリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤は、本件特許の優先権主張日前に周知であって、どのようなシリコーン系粘着剤、及び、どのようなアクリル系粘着剤を用いるかは、原料のモノマーの種類や重合条件、架橋剤、粘着付与樹脂等について、所望とする引張強さ等の特性に応じて適宜当業者が決定すればいいものである。
また、申立人Aの主張からは、本件発明1のシリコーン系粘着剤層及びアクリル系粘着剤層の引張強さのものが、本件特許の優先権主張日前に得ることができない、という合理的根拠は、見出すことができない。

そうすると、本件発明1におけるシリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤について、請求項1に記載された引張強さの全ての範囲にわたる、シリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤について、発明の詳細な説明に、それらの具体的な組成や製造方法が記載されていないとしても、本件特許明細書には、本件発明1に包含される実施例の記載も認められることから、それらの実施例を基に、原料のモノマーの種類や重合条件、架橋剤、粘着付与樹脂等を、当業者が適宜、試行錯誤等によって変えることで、本件発明1の引張強さの全ての範囲にわたるシリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤は得られるものといえることから、本件特許明細書は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

したがって、本件発明1について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、また、本件発明2?8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して、さらに限定するものであるから、同様に、本件発明2?8について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、申立人Aの上記「申立理由A3」は理由がない。

エ 申立理由A4(明確性要件違反)について
申立人Aの主張するように、本件発明1におけるシリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤について、請求項1では、シリコーン系粘着剤層及びアクリル系粘着剤の引張強さの単なる結果(達成すべき性能)が所定の範囲に入っていることを特定しているに過ぎず、そのような結果を導くための構成は特定されていないといえたとしても、所定の引張強さを備えたシリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤自体は、上記「ウ 申立理由A3(実施可能要件違反)について」で述べたように、本件特許の優先権主張日前に、当業者が、必要に応じて適宜、得ることができるものであって、シリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤について、引張強さの単なる結果(達成すべき性能)が所定の範囲に入っていることのみを特定する請求項の記載が、直ちに、不明確となるものではない。
そうすると、申立人Aの、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとする主張には、合理的な根拠を見出すことができない。
また、本件発明2?8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して、さらに限定するものであるから、同様に、本件発明2?8について、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないという、申立人Aの主張は採用できない。

したがって、申立人Aの上記「申立理由A4」は理由がない。

オ 申立理由A5(サポート要件違反)について
申立人Aは、アクリル系重合体(A)とエポキシ系架橋剤とアクリル系粘着付与樹脂とを含有するアクリル系粘着剤以外のアクリル系粘着剤が用いられた場合において、本件発明の課題が解決され得るかどうか定かでない、と主張するにとどまり、そのような特定のアクリル系粘着剤以外のアクリル系粘着剤を用いた場合に、本件発明1?4、6?8の課題である、「優れたリワーク性及びエア抜け性と、優れた耐衝撃性及び飛散防止性とを両立した両面粘着テープを提供すること」(【0013】)が解決されないとする具体的な根拠は示されていない。
一方、本件特許明細書の実施例7では、「イソシアネート系架橋剤」(【0110】?【0111】)を含む「アクリル系粘着剤b」を用い(【0123】)たものについても、本件発明の課題が解決されていることが示されていることから、申立人Aが主張するように、上記の特定のアクリル系粘着剤以外のアクリル系粘着剤を用いた場合に、本件発明1?4、6?8の課題は解決しないということはできない。
したがって、申立人Aの主張からは、本件特許明細書は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。

よって、申立人Aの上記「申立理由A5」は理由がない。

(2)申立人Bの申立理由について
本件発明1と甲B1発明とを対比する。
甲B1発明の「ポリエステル系基材フィルム」、「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層」、「アクリル系粘着層」及び「両面粘着シート」は、本件発明1の「基材」、「シリコーン系粘着剤層」、「アクリル系粘着剤層」及び「両面粘着テープ」に、それぞれ相当する。
そして、甲B1発明の「ポリエステル系基材フィルムの少なくとも片面に、耐熱水接着性改良層を介して、ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層が積層された両面粘着シートであり、前記ポリエステル系基材フィルムの片面に、アクリル系粘着層が積層された」構成は、本件発明1の基材の一方の面側に直接または他の層を介してシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する」構成に相当する。

そうすると、本件発明1と甲B1発明とは、
「基材の一方の面側に直接または他の層を介してシリコーン系粘着剤層を有し、前記基材の他方の面側に直接または他の層を介してアクリル系粘着剤層を有する両面粘着テープ。」である点で一致し、次の相違点B1-1及びB1-2で相違する。

(相違点B1-1)
粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さに関して、本件発明1は、「シリコーン系粘着剤層」について、「0.01N/25mm?0.1N/25mm」であり、「アクリル系粘着剤層」について、「5N/25mm?28N/25mm」であるのに対し、甲B1発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層」及び「アクリル系粘着剤層」のそのような測定方法で測定された引張強さは、不明な点。

(相違点B1-2)
シリコーン系粘着剤について、本件発明1は、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」ものであるのに対し、甲B1発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層」が、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」かどうかは不明な点。

ここで、相違点について検討する。
(相違点B1-1について)
上記「(1)イ(ア)(相違点A2-1について)」で述べたと同様な理由から、甲B1発明において、「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層」に対して、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さを推定することは困難であって、そのような引張強さがどのような値となるかは不明というほかない。
また、甲B1発明において、「アクリル系粘着剤層」の、そのような引張強さがどのような値なのかも不明というほかない。

さらに、申立人Bの主張からは、甲B1発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層」の「粘着剤層に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さ」が、本件発明1の「シリコーン系粘着剤層」のそれと同じになる蓋然性は見出すことができない。

そして、仮に、申立人Bが主張するように、甲B2の【0041】から、シリコーン系粘着剤層のステンレス板に対する、より好ましい粘着力が0.004?0.1N/10mm(換算値で0.01?0.25N/25mm)であって、ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する粘着力が、ステンレス板に対するものと実質的に同等であると認定できたとしても、甲B1発明の課題は、「十分なコシを有し、過酷な使用環境下においても基材フィルムと粘着層との接着性が低下しない両面粘着シートを用いることによって、耐衝撃性・視認性に優れるのみならず、組み立てが容易で、かつ過酷な条件下に設置しても画像表示パネルと保護パネルとの密着性が低下しない画像表示装置の製造方法を提供すること」(【0012】)であって、甲B2に記載された両面粘着シートの課題は、「貼り付け時に気泡巻き込みがなく、また、貼付後には、独りでにずれたり、はがれたりしないが、手で剥離するのは容易である、フラットパネルディスプレイに貼付するのに好適な粘着フィルム及び該フィルム用のシリコーン粘着剤組成物を提供すること」(【0010】)であって、甲B2に記載された粘着剤層は、甲B1発明のように「過酷な使用環境下においても基材フィルムと粘着層との接着性が低下しない両面粘着シート」を想定するものではなく、甲B2に記載された粘着剤層が、甲B1発明のように「苛酷な使用環境下」において用いることができるかどうかは、甲B2の記載からは明らかではないことから、甲B1発明において、甲B2に記載された粘着力を有するシリコーン系粘着剤を採用する動機付けはない、というべきである。

また、甲B3の【0077】には、申立人Bが主張するように、アクリル系粘着剤組成物のガラスに対する、剥離速度300mm/minの条件の接着力が、4N/25mm?15N/25mmであることが記載され、【0088】には、60℃の温度条件下で1000時間保存した場合のサンプルに関して、同じ条件での接着力が、1N/25mm?25N/25mmであることが記載されているとしても、上記「(相違点A2-1について)」で述べたと同様な理由から、甲B3に記載されたアクリル系粘着剤組成物に対して、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記粘着剤層の表面に対して180°方向へ引っ張ることで測定される引張強さを推定することは困難であって、そのような引張強さがどのような値となるかは不明というほかない。

したがって、相違点B1-1は実質的な相違点であり、また、相違点B1-1に係る本件発明1の発明特定事項について、甲B1発明及び甲B2、甲B3の記載に基いて、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(相違点B1-2について)
甲B2の「シリコーン粘着剤組成物」は、「(A)1分子中に2個以上のアルケニル基及びフェニル基を有し、・・・であるジオルガノポリシロキサン」と「(B)R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位及びSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?1.7であるオルガノポリシロキサン(R^(1)は炭素数1?10の1価炭化水素基である。)」とを含む「シリコーン粘着剤組成物」(【請求項1】)であって、上記「6.(1)ア」でも述べたように、技術常識に照らせば、「ジオルガノポリシロキサン」(A)のアルケニル基としてビニル基を有するものは代表的なものであるから、甲B2には、「シリコーン粘着剤組成物」として、「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層」が、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」構造を開示するといえるとしても、上記「(相違点B1-1について)」で述べたように、甲B1発明において、甲B2に記載された構造のシリコーン系粘着剤を採用する動機付けはない、というべきである。

また、申立人Bの主張からは、甲B1発明の「ポリジメチルシロキサン骨格を有する架橋されたシリコーン化合物を含む粘着層」は、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有する」ものであるする合理的根拠は見出すことができない。
そして、申立人Bが提示した甲B3?甲B5には、「ガム成分としてケイ素原子に重合性不飽和二重結合が結合した構造(-Si-CH=CH_(2)基)を有する付加硬化型ポリオルガノシリコーンを含有するシリコーン系粘着剤」については、明確な開示がなく、また、仮に、そのような粘着剤が本件特許の優先権主張日前に公知だとしても、申立人Bの主張からは、甲B1発明において、そのようなシリコーン系粘着剤を採用する動機付けを見出すことができない。

したがって、相違点B1-2は実質的な相違点であり、また、相違点B1-2に係る本件発明1の発明特定事項について、甲B1発明及び甲B2?B5の記載に基いて、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(まとめ)
以上のことから、上記相違点B1-1及びB1-2は、実質的な相違点であって、本件発明1は、甲B1発明であるということはできない。
また、本件発明1は、甲B1発明及び甲B2?甲B5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
本件発明2?8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して、さらに限定するものであるから、同様な理由から、本件発明2?8は、甲B1発明ということはできず、甲B1発明及び甲B2?甲B5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

したがって、申立人Bの上記申立理由は理由がない。

7.むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-11 
出願番号 特願2016-505352(P2016-505352)
審決分類 P 1 651・ 161- Y (C09J)
P 1 651・ 537- Y (C09J)
P 1 651・ 113- Y (C09J)
P 1 651・ 121- Y (C09J)
P 1 651・ 536- Y (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 澤村 茂実  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 原 賢一
川端 修
登録日 2016-09-30 
登録番号 特許第6011901号(P6011901)
権利者 DIC株式会社
発明の名称 両面粘着テープ、保護部材及び電子機器  
代理人 河野 通洋  

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