• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23G
管理番号 1330145
異議申立番号 異議2017-700421  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-26 
確定日 2017-07-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第6020835号発明「含浸チョコレート菓子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6020835号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6020835号の請求項1に係る特許についての出願は、2012年7月19日(優先権主張 2011年7月29日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年10月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人松永健太郎により特許異議申立がなされたものである。

第2 特許異議申立について
1 本件発明
請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
チョコレートを染み込ませた菓子製品であって、
センターキャビティを有するパフと、
前記パフに染み込ませたチョコレートとを含み、
前記チョコレートは菓子製品全体に占める重量割合が70?80%であり、
前記センターキャビティは、周囲全てが前記パフの内壁面で囲まれた閉空間を形成しており、
前記センターキャビティは、前記チョコレートの存在しない空きスペースを有し、
前記菓子製品の中心部を切断した切断面において、切断面の外縁で囲まれた切断面全体の面積S1に対する前記センターキャビティの空きスペースの面積S2の比率である中空率(S0=S2/S1)が7?30%であることを特徴とする、含浸チョコレート菓子。


2 特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
特許異議申立人の主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。

請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第7号証、及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものである

甲第1号証:国際公開第1997/47207号
甲第2号証:「新発売 明治チョコスナックカカオの実」のパンフレット
甲第3号証:「1995年春・夏 SWEETS GUIDE」パンフレット、明治製菓株式会社、1994年12月、明治スイートガイドNo.74、p.9
甲第4号証:「新発売 明治チョコスナックポイサク」のパンフレット
甲第5号証:「1994年春・夏 SWEETS GUIDE」パンフレット、明治製菓株式会社、1993年12月、明治スイートガイドNo.72、p.5
甲第6号証:特開平6-209711号公報
甲第7号証:特開2004-254529号公報
甲第8号証:特開2004-24044号公報
甲第9号証:国際公開第2010/114026号

(2) 当審の判断
ア 甲第1号証を主引用例とした場合
(ア)甲第1号証記載の発明
甲第1号証(5頁6?12行)の実施例3には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「小麦粉を主原料とする比重0.3の膨化菓子を、テンパリングを施した油分35%, 粘度3万センチボイズのチョコレート生地に埋没させ、これらを密閉真空容器に入れ、160mmHgまで減圧処理を施した後、直ちに常圧に戻し、チョコレー卜が浸透した菓子の過剰のチョコレー卜生地をエアブローにて除去し、ベルト上で冷却・固化し、チョコレー卜の比率が72%である風味・食感の優れた複合油脂性菓子。」

(イ)対比
本件発明と甲1発明とを対比すると、本件発明と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点1>
「チョコレートを染み込ませた菓子製品であって、
パフと、
前記パフに染み込ませたチョコレートとを含み、
前記チョコレートは菓子製品全体に占める重量割合が70?80%である、含浸チョコレート菓子。」

<相違点1>
本件発明では、パフが「センターキャビティを有するパフ」であって、センターキャビティは、「周囲全てがパフの内壁面で囲まれた閉空間を形成しており」、「チョコレートの存在しない空きスペースを有し」ており、「菓子製品の中心部を切断した切断面において、切断面の外縁で囲まれた切断面全体の面積S1に対するセンターキャビティの空きスペースの面積S2の比率である中空率(S0=S2/S1)が7?30%である」のに対して、甲1発明では、膨化菓子がセンターキャビティを有するとは特定されていない点。

(ウ)当審の判断
本件発明の課題は、「チョコレートを含浸させた菓子において、菓子にチョコレートが十分に浸透しており、菓子本来の『軽さ(サクサク食感)』と『味わい(チョコレート感)』の両立を実現した構成を提供すること」(【0005】)である。
そして、本件明細書の【0008】?【0010】、【0014】、【0015】の記載を参酌すると、本件発明は、パフがセンターキャビティを有し、チョコレートは菓子製品全体に占める重量割合が70?80%であり、菓子製品の中心部を切断した切断面において、切断面の外縁で囲まれた切断面全体の面積S1に対するセンターキャビティの空きスペースの面積S2の比率である中空率(S0=S2/S1)が7?30%であることで、上記課題を解決するものである。
しかしながら、パフのセンターキャビティーについて、上記のとおりの中空率を設定することは、甲第1?9号証のいずれにも記載されていない。
よって、甲1発明及び甲第1?9号証に記載された事項に基いて上記相違点1に係る本件発明の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ここで、特許異議申立人は、内壁面で囲まれた閉空間を形成しているセンターキャビティを有するパフにチョコレート類を詰めた菓子が本件優先日前に市販されており(甲第2、4号証)、貫通していない閉空間を形成するセンターキャビティを有する膨化中空菓子(甲第6号証)が周知であるから、甲1発明に、当該周知技術を適用することは、当業者が容易になし得たことである旨、及びチョコレートの含浸の程度を任意の範囲に調整すること(甲第1、7?9号証)は周知技術である旨主張する。
しかし、甲1発明の風味・食感の優れた複合油脂性菓子において、膨化菓子として、前記周知のセンターキャビティを有するものを用いる動機付けは認められない。また、仮に、膨化菓子として、センターキャビティを有するものを用いたとしても、チョコレートの含浸の程度と中空率とは異なる指標であるから、チョコレートの含浸の程度を調整した結果、中空率が本件発明の範囲となるとはいえない。よって、上記主張を考慮しても、上記相違点1に係る本件発明の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。

したがって、本件発明は、甲1発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

イ 甲第7号証を主引用例とした場合
(ア)甲第7号証記載の発明
甲第7号証(【0064】、【0065】)の表3に記載された菓子製品全体に占めるチョコレートの重量割合に着目して、請求項1をチョコレート含有食品について整理すると、甲第7号証には、以下の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているといえる。

「少なくとも一部が多孔質構造の空隙を有し、含水率が0?50重量%である基食材を、10?50,000Paに減圧処理し、減圧状態に保ちながら溶融状態のチョコレートと接触し、次いで昇圧することにより、基食材の空隙内部に溶融状態のチョコレートを含浸させ、菓子製品全体に占めるチョコレートの重量割合が70.9?88.1%であるチョコレート含有食品。」

(イ)対比
本件発明と甲7発明とを対比すると、本件発明と甲7発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点2>
「チョコレートを染み込ませた菓子製品であって、
パフと、
前記パフに染み込ませたチョコレートとを含み、
前記チョコレートは菓子製品全体に占める重量割合が70?80%である、含浸チョコレート菓子。」

<相違点2>
本件発明では、パフが「センターキャビティを有するパフ」であって、センターキャビティは、「周囲全てがパフの内壁面で囲まれた閉空間を形成しており」、「チョコレートの存在しない空きスペースを有し」ており、「菓子製品の中心部を切断した切断面において、切断面の外縁で囲まれた切断面全体の面積S1に対するセンターキャビティの空きスペースの面積S2の比率である中空率(S0=S2/S1)が7?30%である」のに対して、甲7発明では、基食材がセンターキャビティを有するとは特定されていない点。

(ウ)当審の判断
上記ア(ウ)で検討したのと同様に、パフのセンターキャビティーについて、上記のとおりの中空率を設定することは、甲第1?9号証のいずれにも記載されていない。
よって、甲7発明及び甲第1?9号証に記載された事項に基いて上記相違点2に係る本件発明の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
特許異議申立人は、内壁面で囲まれた閉空間を形成しているセンターキャビティを有するパフにチョコレート類を詰めた菓子が本件優先日前に市販されており(甲第2、4号証)、貫通していない閉空間を形成するセンターキャビティを有する膨化中空菓子(甲第6号証)が周知であるから、甲7発明に、当該周知技術を適用することは、当業者が容易になし得たことである旨、チョコレートの含浸の程度を任意の範囲に調整すること(甲第1、7?9号証)は周知技術である旨主張する。
しかし、上記ア(ウ)で検討したのと同様に、上記主張を考慮しても、上記相違点2に係る本件発明の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。

したがって、本件発明は、甲7発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第3 むすび
したがって、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-11 
出願番号 特願2013-526814(P2013-526814)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小倉 梢  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 井上 哲男
佐々木 正章
登録日 2016-10-14 
登録番号 特許第6020835号(P6020835)
権利者 株式会社ロッテ
発明の名称 含浸チョコレート菓子  
代理人 京村 順二  
代理人 川崎 実夫  
代理人 稲岡 耕作  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ