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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) G01N |
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管理番号 | 1330151 |
判定請求番号 | 判定2017-600008 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2017-01-19 |
確定日 | 2017-07-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4663725号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「エッジ・裏面欠陥検査複合機」は、特許第4663725号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1 請求の趣旨及び手続の経緯 本件判定の請求の趣旨は,イ号図面およびその説明書に示すエッジ・裏面欠陥検査複合機は、特許第4663725号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 また、本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。 平成17年 8月10日 本件特許に係る特許出願 平成22年12月 1日 特許査定 平成23年 1月14日 本件特許登録 平成29年 1月19日 本件判定請求 平成29年 2月28日 請求書副本 2 本件特許発明1ないし4 本件特許発明は,特許明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものであり(以下,この発明を、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。),その構成要件を符号を付けて分説して記載すると次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件1A」などという。)。 (請求項1) 「1A:内側に鏡面を有する楕円鏡と、 1B:該楕円鏡の第1焦点位置近傍に配置された被検査物の端部に向けてコヒーレント光を照射する発光部と、 1C:前記楕円鏡の第2焦点位置に配置され、照射された前記コヒーレント光によって、前記被検査物の前記端部及び前記楕円鏡に反射して前記第2焦点位置に到達する回折光を検出可能な光検出部と、 1D:前記回折光の内、正反射された低次元の回折光を遮光する遮光手段とを備えた 1E:端部傷検査装置であって、 1F:前記発光部は、移動手段によって前記被検査物の前記厚さ方向に自在に前記発光部の位置を設定して、前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能であることを特徴とする端部傷検査装置。」 (請求項2) 「2A:内側に鏡面を有する楕円鏡と、 2B:該楕円鏡の第1焦点位置近傍に配置された被検査物の端部に向けてコヒーレント光を照射する発光部と、 2C:前記楕円鏡の第2焦点位置に配置され、照射された前記コヒーレント光によって、前記被検査物の前記端部及び前記楕円鏡に反射して前記第2焦点位置に到達する回折光を検出可能な光検出部と、 2D:前記回折光の内、正反射された低次元の回折光を遮光する遮光手段とを備えた 2E:端部傷検査装置であって、 2F:前記発光部は、前記被検査物の前記厚さ方向の異なる位置に複数設けられ、各々の前記発光部は異なる方向から前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能であることを特徴とする端部傷検査装置。」 (請求項3) 「3A:請求項1または請求項2に記載の端部検査装置において、 3B:前記発光部は、前記コヒーレント光を発光する光源と、該光源から照射されたコヒーレント光に光学的に作用し、前記照射範囲を前記被検査物の前記端部の厚さ方向に縮小させて照射させる焦光手段とを備えることを特徴とする端部傷検査装置。」 (請求項4) 「4A:請求項1から請求項3のいずれかに記載の端部検査装置において、 4B:前記発光部は、異なる波長の前記コヒーレント光を照射することが可能であることを特徴とする端部傷検査装置。」 3 イ号装置 (1)判定請求書6(5)においては、イ号装置を、本件特許発明1の分説に合わせ、次のように記載している。 「(5-1)エッジ検査ユニット23に設けた外周部端面検査部71において、内側2aに鏡面2bを有する楕円鏡2を備えており、 (5-2)該楕円鏡2の第1焦点位置F1近傍に配置した被検査物としてのウェーハ3の端部3aに向けてレーザー光LBを照射する発光部4を備え、 (5-3)楕円鏡2の第2焦点位置F2に配置され、照射されたレーザー光LBによって、被検査物としてのウェーハ3の端部3a及び楕円鏡2で反射されて第2焦点位置F2に到達する回折光Dを検出可能な光検出器5を備え、 (5-4)回折光Dのうち、正反射された低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7を備え、 (5-5)端部傷検査装置としての外周部端面検査部71を備え、 (5-6)発光部4は、楕円鏡2に対して固定されている。」 (2)同じく判定請求書6(5)においては、イ号装置を、本件特許発明2の分説に合わせ、次のように記載している。 「(5-7)エッジ検査ユニット23に設けた外周部端面検査部71において、内側2aに鏡面2bを有する楕円鏡2を備えており、 (5-8)該楕円鏡2の第1焦点位置F1近傍に配置した被検査物としてのウェーハ3の端部3aに向けてレーザー光LBを照射する発光部4を備え、 (5-9)楕円鏡2の第2焦点位置F2に配置され、照射されたレーザー光LBによって、被検査物としてのウェーハ3の端部3a及び楕円鏡2で反射されて第2焦点位置F2に到達する回折光Dを検出可能な光検出器5を備え、 (5-10)回折光Dのうち、正反射された低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7を備え、 (5-11)端部傷検査装置としての外周部端面検査部71を備え、 (5-12)発光部4は、単一の光源8と単一の集光部9とからなる。」 ここで、判定請求書6(4)によれば、イ号図面及び説明書は、エッジ・裏面欠陥検査複合機についてである旨、記載している。 そして、イ号図面図1(A)、(B)によれば、エッジ・裏面欠陥検査複合機100は、エッジ検査ユニット23を含み、エッジ検査ユニット23は、外周部端面検査部71を含み、イ号図面図2(A)(B)に、外周部端面検査部71の具体的な構成である、楕円鏡2(上記(5-1)、(5-7))、発光部4(上記(5-2)、(5-8))、光検出器5(上記(5-3)、(5-9))、遮光シート7(上記(5-4)、(5-10))が記載されている。 したがって、楕円鏡2(上記(5-1)、(5-7))、発光部4(上記(5-2)、(5-8))、光検出器5(上記(5-3)、(5-9))、遮光シート7(上記(5-4)、(5-10))の構成は、外周部端面検査部71に備えられると共に、エッジ・裏面欠陥検査複合機100は、上記外周部端面検査部71を含むものであるということができる。 以上を踏まえ、上記(5-1)ないし上記(5-6)の構成、上記(5-7)ないし上記(5-12)の構成を整理すると、イ号装置の構成は、それぞれ、次のとおりの「エッジ・裏面欠陥検査複合機」であると認める(なお、項番号の表記を、それぞれ、1-aないし1-f、2-aないし2-fに振り替えた。)。 (本件特許発明1に対応するイ号装置の構成) 「1-a エッジ検査ユニット23に設けた外周部端面検査部71において、内側2aに鏡面2bを有する楕円鏡2を備え、 1-b 該楕円鏡2の第1焦点位置F1近傍に配置した被検査物としてのウェーハ3の端部3aに向けてレーザー光LBを照射する発光部4を備え、 1-c 楕円鏡2の第2焦点位置F2に配置され、照射されたレーザー光LBによって、被検査物としてのウェーハ3の端部3a及び楕円鏡2で反射されて第2焦点位置F2に到達する回折光Dを検出可能な光検出器5を備え、 1-d 回折光Dのうち、正反射された低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7を備える、 1-e 外周部端面検査部71であって、 1-f 発光部4は、楕円鏡2に対して固定される、外周部端面検査部71を含む、エッジ・裏面欠陥検査複合機。」 (本件特許発明2に対応するイ号装置の構成) 「2-a エッジ検査ユニット23に設けた外周部端面検査部71において、内側2aに鏡面2bを有する楕円鏡2を備え、 2-b 該楕円鏡2の第1焦点位置F1近傍に配置した被検査物としてのウェーハ3の端部3aに向けてレーザー光LBを照射する発光部4を備え、 2-c 楕円鏡2の第2焦点位置F2に配置され、照射されたレーザー光LBによって、被検査物としてのウェーハ3の端部3a及び楕円鏡2で反射されて第2焦点位置F2に到達する回折光Dを検出可能な光検出器5を備え、 2-d 回折光Dのうち、正反射された低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7を備える、 2-e 外周部端面検査部71であって、 2-f 発光部4は、単一の光源8と単一の集光部9とからなる、外周部端面検査部71を含む、エッジ・裏面欠陥検査複合機。」 なお、請求人は、判定請求書(6(1)、6(4))において、イ号図面及び説明書で示すものは、エッジ・裏面欠陥検査複合機(型番NSS-300EB)である旨、記載しているが、請求人が提出した、エッジ・裏面欠陥検査複合機NSS-300EBの見積仕様書(甲第2号証)をみても、エッジの欠陥を検査するための具体的な構成、例えば、楕円鏡、遮光シート等、発光部、光検出器の配置関係等を見て取れないから、イ号装置は、イ号図面及び説明書に基づいて上記のとおり認定した。 4 イ号装置が本件特許発明1、2の各構成要件を充足するか否かについて (1)請求人の主張 請求人は,イ号構成1-aないし1-e、イ号構成2-aないし2-eは,それぞれ、独立項である本件特許発明1の構成要件1Aないし1E、独立項である本件特許発明2の構成要件2Aないし2Eを充足するが、イ号構成1-f、2-fは、それぞれ、本件特許発明1の構成要件1F、本件特許発明2の構成要件2Fを充足しないから、イ号装置は、それぞれ、本件特許発明1、2の技術的範囲に属しない旨、主張する。 (2)被請求人の主張 当審から被請求人に対し、本件判定請求書副本を送付するとともに、答弁があれば答弁書を提出するように求めたが、答弁書の提出はなされなかった。 (3)本件特許発明1と本件特許発明1に対応するイ号装置との対比 ア イ号構成1-aの「内側2aに鏡面2bを有する楕円鏡2」は、構成要件1Aの「内側に鏡面を有する楕円鏡」に相当するから、構成要件1Aの「内側に鏡面を有する楕円鏡」を充足する。 イ イ号構成1-bの「被検査物としてのウェーハ3の端部3a」は、構成要件1Bの「被検査物の端部」に相当する。一方、レーザ光はコヒーレント光であるということができるから、イ号構成1-bの「レーザー光LBを照射する発光部4」は、構成要件1Bの「コヒーレント光を照射する発光部」に相当する。 したがって、イ号構成1-bの「該楕円鏡2の第1焦点位置F1近傍に配置した被検査物としてのウェーハ3の端部3aに向けてレーザー光LBを照射する発光部4」は、構成要件1Bの「該楕円鏡の第1焦点位置近傍に配置された被検査物の端部に向けてコヒーレント光を照射する発光部」を充足する。 ウ イ号構成1-cの「楕円鏡2の第2焦点位置F2に配置され、照射されたレーザー光LBによって、被検査物としてのウェーハ3の端部3a及び楕円鏡2で反射されて第2焦点位置F2に到達する回折光Dを検出可能な光検出器5」は、構成要件1Cの「前記楕円鏡の第2焦点位置に配置され、照射された前記コヒーレント光によって、前記被検査物の前記端部及び前記楕円鏡に反射して前記第2焦点位置に到達する回折光を検出可能な光検出部」を充足する。 エ イ号構成1-dの「回折光Dのうち、正反射された低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7を備え」ることは、構成要件1Dの「前記回折光の内、正反射された低次元の回折光を遮光する遮光手段とを備え」ることを充足する。 オ イ号構成1-eの「外周部端面検査部71」は、その機能、作用からみて、傷を検査する装置部分と捉えることができるから、構成要件1Eの「端部傷検査装置」を充足する。 したがって、本件特許発明1の構成要件1とイ号装置とを対比すると、イ号装置のイ号構成1-aないし1-eは、本件特許発明1の構成要件1Aないし1Eを充足している。 よって、イ号装置が、構成要件1Fを充足するか否かについて、以下、検討する。 (4)構成要件1Fについて ア 構成要件1Fについての検討 構成要件1Fは,「前記発光部は、移動手段によって前記被検査物の前記厚さ方向に自在に前記発光部の位置を設定して、前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能である」ものである。ここで、イ号構成1-fの「発光部4」は、構成要件1Fの「発光部」に対応するものであるものの、「発光部4は、楕円鏡2に対して固定」されており、「移動手段によって前記被検査物の前記厚さ方向に自在に前記発光部の位置を設定して、前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能である」(構成要件1F)ものではない。 したがって、イ号構成1-fは、構成要件1Fを充足するものではない。 イ 構成要件1Fについての均等論の適用について (ア)均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するための条件は、上記最高裁判所により以下のとおり判示されている(最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡、民集52巻1号113頁)。 「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、(1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく、(2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、(3)上記のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、上記対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属する。」 (イ)均等の要件(1)について 本件特許発明1の構成要件1Fは、イ号構成1-fの「発光部4は、楕円鏡2に対して固定される」構成と異なる部分であって、本件特許発明1の構成要件1Fは、「前記発光部は、移動手段によって前記被検査物の前記厚さ方向に自在に前記発光部の位置を設定して、前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能である」ものである。 そして、本件特許発明1の「発光部」について本件特許明細書には、次のように記載されている。 「【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、被検査物の端部の傷の厚さ方向の詳細な位置、傷の大きさ、及び傷の種類について検出可能な端部傷検査装置を提案する。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明は、内側に鏡面を有する楕円鏡と、該楕円鏡の第1焦点位置近傍に配置された被検査物の端部に向けてコヒーレント光を照射する発光部と、前記楕円鏡の第2焦点位置に配置され、照射された前記コヒーレント光によって、前記被検査物の前記端部及び前記楕円鏡に反射して前記第2焦点位置に到達する回折光を検出可能な光検出部と、前記回折光の内、正反射された低次元の回折光を遮光する遮光手段とを備えた端部傷検査装置であって、前記発光部は、移動手段によって前記被検査物の前記厚さ方向に自在に前記発光部の位置を設定して、前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能であることを特徴とする。 【0006】 この発明に係る端部傷検査装置によれば、移動手段によって被検査物の端部の厚さ方向の異なる照射範囲にコヒーレント光を照射することが可能なので、それぞれの照射範囲と対応する回折光の強度を光検出部で検出することによって、傷の厚さ方向の詳細な位置、傷の大きさを検出することができる。」 「【産業上の利用可能性】 【0032】 発光部から照射されるコヒーレント光の照射範囲を被検査物の厚さ方向に変えることが可能なので、被検査物の厚さ方向の傷の詳細な位置、傷の大きさを特定することができる。」 上記記載から、構成要件1Fの「前記発光部は、移動手段によって前記被検査物の前記厚さ方向に自在に前記発光部の位置を設定して、前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能である」ことについては、「被検査物の端部の傷の厚さ方向の詳細な位置、傷の大きさ、及び傷の種類について検出可能」とするため(【0004】)、「前記発光部は、移動手段によって前記被検査物の前記厚さ方向に自在に前記発光部の位置を設定して、前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射する」ものであって(【0005】)、これにより、「傷の厚さ方向の詳細な位置、傷の大きさを検出することができる」(【0006】、【産業上の利用可能性】)という、作用効果を奏するものであるということができ、このような本件作用効果に照らすと、構成要件1Fは、本件特許発明1の特徴的な部分であって、本質的部分であるということができる。 したがって、上記均等の要件(1)を満たしていない。 よって、本件特許発明1の構成要件1Fと本件特許発明1に対応するイ号構成1-fは、均等の要件のうち、少なくとも「要件(1)」を満たさないから、本件特許発明1に対応するイ号装置と本件特許発明1は均等なものとはいえない。 (5)本件特許発明2と本件特許発明2に対応するイ号装置との対比 本件特許発明2に対応するイ号装置の構成2-aないし2-fのうち、2-fを除いた、イ号装置の構成2-aないし2-eは、本件特許発明1に対応するイ号装置の構成1-aないし1-eと同一であり、一方、本件特許発明2の構成要件2Aないし2Fのうち、2Fを除いた、構成要件2Aないし2Eは、本件特許発明1の構成要件1Aないし1Eと同一である。 したがって、上記「(3)本件特許発明1とイ号装置との対比」と同様に、イ号装置のイ号構成2-aないし2-eは、本件特許発明2の構成要件2Aないし2Eを充足している。 よって、イ号装置が、構成要件2Fを充足するか否かについて、以下、検討する。 (6)構成要件2Fについて ア 構成要件2Fについての検討 構成要件2Fは,「前記発光部は、前記被検査物の前記厚さ方向の異なる位置に複数設けられ、各々の前記発光部は異なる方向から前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能である」ものである。ここで、イ号構成2-fの「発光部4」は、構成要件2Fの「発光部」に対応するものであるものの、発光部4は、「単一の光源8と単一の集光部9とからなる」単一の発光部であって、「前記被検査物の前記厚さ方向の異なる位置に複数設けられ、各々の前記発光部は異なる方向から前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能である」(構成要件2F)ものではない。 したがって、イ号構成2-fは、構成要件2Fを充足するものではない。 イ 構成要件2Fについての均等論の適用について (ア)均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するための条件は、上記(4)イ(ア)に記載したとおりである。 (イ)均等の要件(1)について 本件特許発明2の構成要件2Fは、イ号構成2-fの「発光部4は、単一の光源8と単一の集光部9とからなる」構成と異なる部分であって、本件特許発明2の構成要件2Fは、「前記発光部は、前記被検査物の前記厚さ方向の異なる位置に複数設けられ、各々の前記発光部は異なる方向から前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能である」ものである。 そして、本件特許発明2の「発光部」について本件特許明細書には、次のように記載されている。 「【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、被検査物の端部の傷の厚さ方向の詳細な位置、傷の大きさ、及び傷の種類について検出可能な端部傷検査装置を提案する。」 「【課題を解決するための手段】 【0005】(略) 【0006】(略) 【0007】 また、本発明は、内側に鏡面を有する楕円鏡と、該楕円鏡の第1焦点位置近傍に配置された被検査物の端部に向けてコヒーレント光を照射する発光部と、前記楕円鏡の第2焦点位置に配置され、照射された前記コヒーレント光によって、前記被検査物の前記端部及び前記楕円鏡に反射して前記第2焦点位置に到達する回折光を検出可能な光検出部と、前記回折光の内、正反射された低次元の回折光を遮光する遮光手段とを備えた端部傷検査装置であって、前記発光部は、前記被検査物の前記厚さ方向の異なる位置に複数設けられ、各々の前記発光部は異なる方向から前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能であることを特徴とする。 【0008】 この発明に係る端部傷検査装置によれば、複数の発光部によって被検査物の端部の厚さ方向に異なる照射範囲にコヒーレント光を照射することが可能なので、それぞれの発光部に対応する回折光の強度を光検出部で検出することによって、厚さ方向の傷の位置、傷の大きさを検出することができる。」 「【産業上の利用可能性】 【0032】 発光部から照射されるコヒーレント光の照射範囲を被検査物の厚さ方向に変えることが可能なので、被検査物の厚さ方向の傷の詳細な位置、傷の大きさを特定することができる。」 上記記載から、構成要件2Fの「前記発光部は、前記被検査物の前記厚さ方向の異なる位置に複数設けられ、各々の前記発光部は異なる方向から前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射することが可能である」ことについては、「被検査物の端部の傷の厚さ方向の詳細な位置、傷の大きさ、及び傷の種類について検出可能」とするため(【0004】)、「前記発光部は、前記被検査物の前記厚さ方向の異なる位置に複数設けられ、各々の前記発光部は異なる方向から前記被検査物の前記端部の前記厚さ方向の異なる照射範囲に前記コヒーレント光を照射する」ものであって(【0007】)、これにより、「傷の厚さ方向の詳細な位置、傷の大きさを検出することができる」(【0008】、【産業上の利用可能性】)という、作用効果を奏するものであるということができ、このような本件作用効果に照らすと、構成要件2Fは、本件特許発明2の特徴的な部分であって、本質的部分であるということができる。 したがって、上記均等の要件(1)を満たしていない。 よって、本件特許発明2の構成要件2Fと本件特許発明2に対応するイ号構成2-fは、均等の要件のうち、少なくとも「要件(1)」を満たさないから、本件特許発明2に対応するイ号装置と本件特許発明2は均等なものとはいえない。 5 まとめ 以上のとおり、イ号構成1-fは本件特許発明1の構成要件1Fを、イ号構成2-fは本件特許発明2の構成要件2Fを充足しておらず、また、本件特許発明1に対応するイ号装置と本件特許発明1、本件特許発明2に対応するイ号装置と本件特許発明2は、それぞれ均等なものともいえないから、本件特許発明1に対応するイ号装置、本件特許発明2に対応するイ号装置は、それぞれ、本件特許発明1、本件特許発明2の技術的範囲に属するものとはいえない。 6 イ号装置が本件特許発明3、4の各構成要件を充足するか否かについて 本件請求項3は、本件請求項1または本件請求項2を引用するものであり、本件請求項4は、本件請求項1から本件請求項3のいずれかを引用するものであるから、本件特許発明1に対応するイ号装置、本件特許発明2に対応するイ号装置が、それぞれ、本件特許発明1、本件特許発明2の技術的範囲に属するものとはいえない以上、イ号装置は、本件特許発明3、4の技術的範囲に属するものとはいえない。 7 むすび したがって、イ号装置は、本件特許発明1ないし4の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2017-07-13 |
出願番号 | 特願2007-529438(P2007-529438) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(G01N)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岡田 卓弥 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 酒井 伸芳 |
登録日 | 2011-01-14 |
登録番号 | 特許第4663725号(P4663725) |
発明の名称 | 端部傷検査装置 |
代理人 | 吉田 裕美 |
代理人 | 山川 啓 |
代理人 | 猪狩 充 |
代理人 | 福田 充広 |