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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1330371
審判番号 不服2016-14171  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-21 
確定日 2017-08-01 
事件の表示 特願2012-115963「管理装置、管理プログラム及び管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日出願公開、特開2013-242730、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年5月21日の出願であって,平成28年1月19日付けで拒絶理由が通知され,平成28年3月28日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年6月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成28年9月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年6月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者という。」)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-5
・引用文献等 1-2

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2007/0232164号明細書
2.特開2012-035730号公報

第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は,平成28年9月21日に提出された手続補正書による手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
位置情報が定められた開封可能な収納容器のそれぞれに取り付けられ,前記収納容器が未開封な状態と前記収納容器が開封された状態とで通信可能範囲が変化する第1の無線タグと通信した結果,及び前記収納容器それぞれに取り付けられる第1の無線タグとは異なる第2の無線タグと通信した結果を取得するとともに,前記収納容器の周囲に配置される他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果を取得する取得部と,
前記第1の無線タグとの通信結果及び前記第2の無線タグとの通信結果,並びに前記他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果に基づき,前記収納容器の存在有無を示す情報及び前記収納容器の開封状態を示す情報と位置情報とを対応付けて管理する管理部と,を備える管理装置。
【請求項2】
前記管理部は,前記第1の無線タグとの通信結果及び前記第2の無線タグとの通信結果に基づき,前記収納容器の状態が,未開封で存在する状態,開封済みで存在する状態,及び,存在しない状態の何れの状態であるかを判定し,判定結果と位置情報とを対応付けて管理することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記管理部は,前記他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果が前記他の収納容器が存在することを示す結果であり,かつ,前記第2の無線タグから情報を受信できなかった場合に,前記収納容器が存在しないと判定し,該判定の結果を位置情報と対応付けて管理することを特徴とする請求項1又は2に記載の管理装置。
【請求項4】
位置情報が定められた開封可能な収納容器のそれぞれに取り付けられ,前記収納容器が未開封な状態と前記収納容器が開封された状態とで通信可能範囲が変化する第1の無線タグと通信した結果,及び前記収納容器それぞれに取り付けられる第1の無線タグとは異なる第2の無線タグと通信した結果を取得するとともに,前記収納容器の周囲に配置される他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果を取得し,
前記第1の無線タグとの通信結果及び前記第2の無線タグとの通信結果,並びに前記他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果に基づき,前記収納容器の存在有無を示す情報及び前記収納容器の開封状態を示す情報と位置情報とを対応付けて管理する,処理をコンピュータに実行させることを特徴とする管理プログラム。
【請求項5】
位置情報が定められた開封可能な収納容器のそれぞれに取り付けられ,前記収納容器が未開封な状態と前記収納容器が開封された状態とで通信可能範囲が変化する第1の無線タグと通信した結果,及び前記収納容器それぞれに取り付けられる第1の無線タグとは異なる第2の無線タグと通信した結果を取得するとともに,前記収納容器の周囲に配置される他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果を取得する取得工程と,
前記第1の無線タグとの通信結果及び前記第2の無線タグとの通信結果,並びに前記他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果に基づき,前記収納容器の存在有無を示す情報及び前記収納容器の開封状態を示す情報と位置情報とを対応付けて管理する管理工程と,をコンピュータが実行することを特徴とする管理方法。」

第4 引用発明,引用文献等
1.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は重要箇所に対して当審が付した。また,()内は当審仮訳。以下,同様。)。

ア 「[0057] FIG.3A is a functional diagram showing an example embodiment of a vehicle inspection system, particularly an aircraft life vest inspection system, including inspection device 10, host system 30 and RFID tag programmer 40, which collectively support aircraft inspections for life vests 13 containing RFID tags 15.」
([0057] 図3Aは,乗物検査システム,特に航空機救命胴衣検査システムの一実施例を示す機能ダイアグラムであり,そのシステムは,検査デバイス10,ホストシステム30,RFIDタグプログラマー40を含み,これらは合わせてRFIDタグ15を含む救命胴衣13のための航空機検査を支援する。)

イ 「[0059] Host system aircraft profile database 20 contains aircraft profiles 23. Aircraft profiles 23 may include, for example, information about particular aircraft. This information may include the type of aircraft, a layout of the aircraft, a graphical representation of the aircraft including, but not limited to, row, aisle and seat arrangements, storage area arrangements, and information defining the expected location of each life vest 13 on the aircraft, and possibly the life vest inspection history of the aircraft. The aircraft profiles 23 also may include unique identifiers for each life vest 13 , and these unique identifiers may be associated with a location code (such as a seat number) that defines the location within the aircraft where a particular life vest 13 should be found if it has not been moved. ・・・(中略)・・・Aircraft profiles 23 may be located in locations other than a host profile database 20. For example, profiles could exist, pre-loaded or otherwise loaded, onto an inspection device, without the use of a central computer. 」
([0059] ホストシステム航空機プロファイルデータベース20は航空機プロファイル23を含む。航空機プロファイル23は,例えば,特定の航空機に関する情報を含んでもよい。この情報は,航空機の型,航空機のレイアウト,及び,これらに限られないが,列,通路,座席配置,保管エリア配置,航空機上での各救命胴衣13の予期される位置を含む航空機のグラフィカルな表現や場合によっては航空機の救命胴衣検査履歴に関する情報を含んでもよい。航空機プロファイル23は各救命胴衣13毎のユニークな識別子を含んでもよく,そのユニークな識別子は,ある救命胴衣13が,移動されていない限りそこで見つかるはずの航空機内の位置を定義する位置コード(座席番号などの)に関連付けられてもよい。・・・(中略)・・・航空機プロファイル23はホストプロファイルデータベース20以外の場所にあってもよい。例えば,プロファイルは,中央コンピュータを使用することなく,検査デバイスにプリロードもしくは他の方法でロードされてもよい。)

ウ 「[0153]
・・・(中略)・・・
FIG. 8 is an example user interface showing display window 3000. Display window 3000 shows a series of visual indicia, in the form of small squares or rectangles, each corresponding to a seat on the aircraft that is being inspected. The individual squares correspond to seats on the aircraft, such as seat 3001 corresponds in this instance to seat 1A. The visual indicia are initially set to a first color, such as gray, that indicates that inspection device 10 has received no information to determine a particular life vest has been accounted for. The inspection is done with inspection device 10 by rows or partial rows. For example, row 3002 may be interrogated in two halves.」
([0153]
・・・(中略)・・・
図8は,表示ウィンドウ3000を示す例示的なユーザインターフェースである。表示ウィンドウ3000は小さな正方形あるいは四角形の形で一連の視覚的目印を示し,その各々は検査されている航空機上の座席に対応する。座席3001がこの例では座席1Aに対応するように,個々の正方形は航空機上の座席に対応する。視覚的目印は最初はグレイなどの第1の色にセットされ,検査デバイス10が特定の救命胴衣の消息を決定するための情報を受信していないことを示す。検査デバイス10による検査は列ごともしくは列の一部ごとに実行される。例えば,列3002は半分割毎に照会されてもよい。)

エ 「[0154] While making the aircraft life vest inspection, inspector may interrogate rows or other locations where life vests are expected, visual indicia representing the locations of life vests on the aircraft as displayed on screen 3 may be updated to reflect the presence of the RFID tag associated with a particular life vest. FIG. 9 shows an example screen rendering wherein a visual indicium 3102 , associated with seat 1A on the aircraft, has been updated to reflect the presence of an RFID tag associated with a life vest. In FIG. 9, the visual indicium is a light hash mark. In one embodiment, the visual indicium is the color green. Inspector 14 may quickly and easily look at inspection device 10 's display screen 3 to see the various life vests that have presumptively been located. A second type of visual indicia may be used for instances where the life vest is located, but is expired. Expired life vest visual indicium 3101 may be, for instance, the color yellow.
[0155] While inspecting the aircraft, inspector 14 may receive output from display screen 3 of inspection device 10 and quickly determine which visual indicia are either red (no RFID tag corresponding to the life vest has been detected), or yellow (RFID tag corresponding to the life vest having been located, but being expired or otherwise requiring follow-up (for example, the life vest may not be in the correct location, or the life vest has been tampered with)).」
([0154] 航空機の救命胴衣の検査を実行中に,検査官は救命胴衣があるはずの列やその他の場所を問い合わせてもよく,スクリーン3に表示される航空機上の救命胴衣の位置を表す視覚的目印は,特定の救命胴衣に関連したRFIDタグの存在を反映するために更新されてもよい。図9は,救命胴衣に関連したRFIDタグの存在を反映するために,航空機の座席1Aに関連した視覚的目印3102が更新された例示のスクリーンを示す。図9で,その視覚的目印は薄いハッシュマークである。一実施例において,その視覚的目印は緑のカラーである。検査官14は,位置が推定される色々な救命胴衣を確認するために,検査デバイス10の表示スクリーン3を素早くそして簡単に見ることができる。第2のタイプの視覚的目印は,例えば救命胴衣はあるが期限切れの場合に使われてもよい。期限切れの救命胴衣の視覚的目印3101は,例えば,黄色のカラーでよい。
[0155] 航空機を検査中に,検査官14は検査デバイス10の表示スクリーン3からの出力を受け取り,どの視覚的目印が赤(救命胴衣に対応するRFIDタグが検出されない)か黄色(救命胴衣に対応するRFIDタグは検出されたが,期限切れであるか,さもなければフォローアップが必要(例えば,救命胴衣が正しい場所に無い,もしくは救命胴衣がいじられている))かを迅速に決定する。)

オ 「[0181] FIG.16 shows an example configuration of life vest 13, folded (13B) and placed within package 2101. RFID tag 15 is situated on package 2101 in a manner such that it not practical to gain access to the life vest without compromising RFID tag 15.」
([0181] 図16は,畳まれて(13B)容器2101内に置かれた救命胴衣13の例示的形状を示す。RFIDタグ15は,RFIDタグを破損すること無く救命胴衣を取り出すことが実際上不可能な方法で容器2101上に据えられている。)

カ 「[0182] FIG. 17 shows a more detailed view of example package 2101. In particular, RFID tag 15 is shown, and perforation 2103 in RFID tag 15 is situated such that its apex intersects a tear line 2104 that defines an eventual opening line, such that by pulling tear tag 2102, the resulting lateral slit will compromise the RFID tag. The compromise of the RFID tag may take several forms, but in a preferred embodiment, the RFID tag antenna is separated into two parts and thereby rendered inoperable. If using life vest inspection methods described elsewhere in this specification, the inoperative RFID tag would result in the associated life vest being considered missing or compromised, and would compel subsequent follow-up, which would likely mean physical inspection.」
([0182] 図17は,例示的容器2101のより詳細な図を示す。特に,RFIDタグ15の目打ち2103の先端が,分裂タグ2102を引っ張ることでその結果の横方向のスリットがRFIDタグを破損することになる最終的な開封線を定義する分裂線2104に交差するように置かれたRFIDタグ15が示されている。RFIDタグの破損には種々の形態があるが,望ましい実施例では,RFIDタグアンテナが2つの部分に分割され,それにより動作不可能にされる。この明細書のどこかに記載された救命胴衣検査方法を使えば,動作不可能なRFIDタグはそれと関連した救命胴衣が紛失もしくは破損しており,引き続くフォローアップ,恐らくは人手による検査を促すこととなるであろう。)

上記引用文献1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「航空機救命胴衣検査システムであって,検査デバイス10,ホストシステム30,RFIDタグプログラマー40を含み,これらは合わせてRFIDタグ15を含む救命胴衣13のための航空機検査を支援し,
ホストシステム航空機プロファイルデータベース20は航空機プロファイル23を含み,航空機プロファイル23は各救命胴衣13毎のユニークな識別子を含んでもよく,そのユニークな識別子は,ある救命胴衣13が,移動されていない限りそこで見つかるはずの航空機内の位置を定義する位置コード(座席番号などの)に関連付けられてもよく,
表示ウィンドウ3000は小さな正方形あるいは四角形の形で一連の視覚的目印を示し,その各々は検査されている航空機上の座席に対応し,視覚的目印は最初はグレイなどの第1の色にセットされ,検査デバイス10が特定の救命胴衣の消息を決定するための情報を受信していないことを示し,検査デバイス10による検査は列ごともしくは列の一部ごとに実行され,
スクリーン3に表示される航空機上の救命胴衣の位置を表す視覚的目印は,特定の救命胴衣に関連したRFIDタグの存在を反映するために更新されてもよく,航空機を検査中に,検査官14は検査デバイス10の表示スクリーン3からの出力を受け取り,どの視覚的目印が赤(救命胴衣に対応するRFIDタグが検出されない)か黄色(救命胴衣に対応するRFIDタグは検出されたが,期限切れであるか,さもなければフォローアップが必要(例えば,救命胴衣が正しい場所に無い,もしくは救命胴衣がいじられている))かを迅速に決定し,
救命胴衣13は畳まれて容器2101内に置かれ,RFIDタグ15は,RFIDタグを破損すること無く救命胴衣13を取り出すことが実際上不可能な方法で容器2101上に据えられており,特に,RFIDタグ15の目打ち2103の先端が,分裂タグ2102を引っ張ることでその結果の横方向のスリットがRFIDタグを破損することになる最終的な開封線を定義する分裂線2104に交差するように置かれ,望ましい実施例では,RFIDタグアンテナが2つの部分に分割され,それにより動作不可能にされる,
航空機救命胴衣検査システム。」

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0030】
非接触通信部40は,アンテナ41及び制御部21と協働して無線タグ等の非接触通信媒体との間で電磁波による通信を行ない,非接触通信媒体に記憶されるデータの読取り,或いは非接触通信媒体に対するデータの書込みを行なうように機能するものである。この非接触通信部40は,公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており,図2(C)にて概略的に示すように,発振器42,変調器43,復調器44などを備えてなるものである。なお,非接触通信部40には,これら以外の公知構成(例えば,増幅器,フィルタ回路,整合回路等)も設けられているが,図2(C)ではこれらについては図示を省略している。なお,本第1実施形態では,上記非接触通信媒体として,救命胴衣50に付されたRFIDタグ52が通信対象となる。
【0031】
また,非接触通信部40は,所定の操作により,当該携帯端末20に対して比較的近距離に位置する非接触通信媒体のみに対して通信可能となるように通信範囲が限定される短距離モードと,上記通信範囲の限定が解除される長距離モードと,を選択可能に構成されている。
【0032】
次に,各救命胴衣50の配備確認作業について説明する。図3は,第1実施形態における制御部21による救命具配備情報生成処理の流れを例示するフローチャートである。図4および図5は,第1実施形態における制御部21による救命具配備状態確認処理の流れを例示するフローチャートである。図6は,読み取られた座席番号が表示された座席マップの一例を示す説明図である。図7は,救命胴衣50が配備されていない座席Sの座席番号が表示された座席マップの一例を示す説明図である。
【0033】
まず,救命胴衣50が配備されていない座席Sがあるか否かを判定する際の判定基準となる救命具配備情報を生成する救命具配備情報生成処理について図3を用いて説明する。
救命胴衣50が配備されていない航空機に対して,各救命胴衣50を1つずつ座席Sに配備する際には,作業者は,携帯端末20を用いて,救命胴衣50に付されているQRコード51と,当該救命胴衣50が配備される座席Sに付されるバーコードSbと,を読み取る読取作業を実施する。これにより,図3のステップS101にて取得処理がなされて,QRコード51およびバーコードSbが1つずつ光学的に読み取られて,救命具情報および座席番号情報が取得される。なお,ステップS101を実行する制御部21は,特許請求の範囲に記載の「取得手段」の一例に相当し得る。
【0034】
次に,ステップS103にて書込処理がなされ,ステップS101にて取得された救命具情報および座席番号情報が関連付けられて当該救命胴衣50に付されたRFIDタグ52に書き込まれる。このとき,隣接する座席Sに配備される他の救命胴衣50のRFIDタグ52への書き込みを防止するために,上記短距離モードに設定された状態で上記書込処理がなされることとなる。なお,ステップS103を実行する制御部21は,特許請求の範囲に記載の「書込手段」の一例に相当し得る。」

イ 「【0038】
次に,上述のように生成された救命具配備情報に基づいて各座席Sに救命胴衣50が配備されているか否かについて確認する救命具配備状態確認処理について,図4および図5を用いて説明する。
出発前の航空機において各座席Sに対する救命胴衣50の配備状態を確認する場合には,作業者は,確認作業対象の航空機に対応する上記救命具配備情報を取得するため,携帯端末20に対して,当該航空機の機材番号を入力する。これにより,図4のステップS201において,救命具配備情報取得処理がなさる。この処理では,上述のように入力された機材番号に応じた救命具配備情報が,基地局12を介して管理サーバ11から受信されて取得される。なお,上記救命具配備情報が携帯端末20のメモリ22に予め記憶されており,上記ステップS201では,このメモリ22に予め記憶された救命具配備情報を読み出すようにしてもよい。
【0039】
次に,ステップS203において,読取処理がなされる。この処理では,作業者により各座席S近傍に携帯端末20が近づけられることで,各座席S毎に配備される救命胴衣50のRFIDタグ52に記憶された救命具情報および座席番号情報が無線通信により読み取られる。このとき,複数のRFIDタグ52を同時に読み取ることで読取作業時間を短縮するために,上記長距離モードに設定された状態で上記読取処理がなされることとなる。なお,ステップS203を実行する制御部21は,特許請求の範囲に記載の「読取手段」の一例に相当し得る。
【0040】
そして,ステップS205において,ログ情報書込処理がなされる。この処理では,上記ステップS203による読み取りに関するログ情報が日時情報とともに,ステップS203にて読み取ったRFIDタグ52に書き込まれる。なお,上述のような読み取りに関する情報は,携帯端末20のメモリ22等にログ情報として記憶されてもよい。
【0041】
続いて,ステップS207において,読取状態表示処理がなされる。この処理では,図6に示すように,表示部24に各座席Sの配置が反映された座席マップが表示され,この座席マップに対して,ステップS203での読み取りにより得られた座席番号が累積表示される。このように座席番号情報が読み取られた座席Sと読み取られなかった座席Sとが区別して表示されるため,作業者は,どの座席Sに配備された救命胴衣50のRFIDタグ52が読み取られたかを,容易に把握することができる。なお,表示部24は,特許請求の範囲に記載の「表示手段」の一例に相当し得る。」

したがって,上記引用文献2には,「座席番号(バーコード)と救命胴衣情報(QRコード)を予め光学的によみとり,かつ,RFIDタグに書き込んでおき,救命胴衣確認をRFIDタグの読み取りによって行うこと」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

a 引用発明の「RFIDタグ15」は「RFIDタグを破損すること無く救命胴衣13を取り出すことが実際上不可能な方法で容器2101上に据えられ」,容器開封時には,「RFIDタグアンテナが2つの部分に分割され,それにより動作不可能にされる」が,これにより「通信可能範囲が変化する」ことは技術常識である。
また,「救命胴衣13」が「航空機内の位置を定義する位置コード(座席番号などの)に関連付けられ」ておりかつ「畳まれて容器2101内に置かれ」ていることから,実質的には「容器2101」が「航空機内の位置を定義する位置コード(座席番号などの)に関連付けられ」ているといえる。
そうすると,引用発明の「RFIDタグ15」は,本願発明1の「位置情報が定められた開封可能な収納容器のそれぞれに取り付けられ,前記収納容器が未開封な状態と前記収納容器が開封された状態とで通信可能範囲が変化する第1の無線タグ」に相当するといえる。
b 引用発明において,「検査デバイス10による検査は列ごともしくは列の一部ごとに実行され」るから,引用発明の「検査デバイス10」が特定の容器2101の周囲のRFIDタグとも通信することは明らかであって,引用発明の「航空機救命胴衣検査システム」は,本願発明1の「前記収納容器の周囲に配置される他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果を取得する取得部」を備えるといえる。
c 引用発明では,RFIDタグとの通信に基づいて「航空機上の座席に対応」する「視覚的目印」がスクリーン3に表示され,「どの視覚的目印が赤(救命胴衣に対応するRFIDタグが検出されない)か黄色(救命胴衣に対応するRFIDタグは検出されたが,期限切れであるか,さもなければフォローアップが必要(例えば,救命胴衣が正しい場所に無い,もしくは救命胴衣がいじられている))かを迅速に決定」されるが,各「救命胴衣」が「容器2101」に収納されていることから,このような救命胴衣の状態に関する情報は,実質的に,「容器2101の情報」といえる。
一方,本願発明1の「前記収納容器の存在有無を示す情報及び前記収納容器の開封状態を示す情報」は「容器の情報」を含んでいるといえる。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,「前記第1の無線タグとの通信結果及び前記他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果に基づき,前記収納容器の情報と位置情報とを対応付けて管理する管理部」を備える点で共通するといえる。
d 上記a?cの検討によれば,引用発明の「航空機救命胴衣検査システム」は「取得部」と「管理部」を備える「管理装置」ということができる。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 位置情報が定められた開封可能な収納容器のそれぞれに取り付けられ,前記収納容器が未開封な状態と前記収納容器が開封された状態とで通信可能範囲が変化する第1の無線タグと通信した結果,前記収納容器の周囲に配置される他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果を取得する取得部と,
前記第1の無線タグとの通信結果及び前記他の収納容器に取り付けられた無線タグと通信した結果に基づき,前記収納容器の情報と位置情報とを対応付けて管理する管理部と,を備える管理装置。」

(相違点1)
本願発明1では「前記収納容器それぞれに取り付けられる第1の無線タグとは異なる第2の無線タグと通信した結果を取得」し,「前記第2の無線タグとの通信結果」に基づき管理を行うのに対し,
引用発明ではそのような構成を有しない点。
(相違点2)
一致点の「前記収納容器の情報」が,
本願発明1では「前記収納容器の存在有無を示す情報及び前記収納容器の開封状態を示す情報」であるのに対し,
引用発明では「どの視覚的目印が赤(救命胴衣に対応するRFIDタグが検出されない)か黄色(救命胴衣に対応するRFIDタグは検出されたが,期限切れであるか,さもなければフォローアップが必要(例えば,救命胴衣が正しい場所に無い,もしくは救命胴衣がいじられている))か」である点。

(2)相違点についての判断
(相違点1)につき検討する。
引用文献1には,第1の無線タグである「RFIDタグ15」とは異なる無線タグを同じ容器2101上に設けることは記載も示唆も無い。
また,引用文献2には,上述のとおり「座席番号(バーコード)と救命胴衣情報(QRコード)を予め光学的によみとり,かつ,RFIDタグに書き込んでおき,救命胴衣確認をRFIDタグの読み取りによって行うこと」という技術的事項が記載されているが,該「RFIDタグ」とは異なる「第2の無線タグ」を用いることについては引用文献2には記載も示唆も無く,本願出願日前において周知技術であるともいえない。
そして,本願発明1は上記(相違点1)に係る構成により,「救命具が配備されていない座席を判定すること」とともに「救命具の格納容器又は収納袋の開封/未開封まで」容易に確認することができるものである(本願明細書【発明が解決しようとする課題】参照)。

したがって,(相違点2)について検討するまでも無く,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5も,本願発明1の「前記収納容器それぞれに取り付けられる第1の無線タグとは異なる第2の無線タグと通信した結果を取得」し,「前記第2の無線タグとの通信結果」に基づき管理を行う」ことと同一の構成を備えるものである。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-18 
出願番号 特願2012-115963(P2012-115963)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
新川 圭二
発明の名称 管理装置、管理プログラム及び管理方法  
代理人 片山 修平  

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