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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1330393
審判番号 不服2016-13715  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-13 
確定日 2017-07-13 
事件の表示 特願2015- 88492「車載バッテリーシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-208692〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成27年4月23日を出願日とする出願であって、平成28年2月12日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年2月16日)、これに対し、平成28年3月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年6月6日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成28年6月14日)、これに対し、平成28年9月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。


2.平成28年9月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月13日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
駆動電力を供給する車載バッテリーが複数の10kg以下の重量である単位バッテリーの組み合わせにより構成された車載バッテリーシステムであって、
前記単位バッテリーは電力の充放電が行われるバッテリー本体部と、
他の単位バッテリーとの識別を行うための識別情報及び前記バッテリー本体部の使用状況を記録する記録部とを備え、
車載バッテリーの電力は、単位バッテリーごとに順番に消費され、ある単位バッテリーの電力残量が少なくなった場合や、故障した場合には、次の単位バッテリーに自動的に切り替わり、
故障した、あるいは電力残量が少なくなった前記単位バッテリーは、前記識別情報を基に他の単位バッテリーとの切替・交換が可能であることを特徴とする車載バッテリーシステム。
【請求項2】
1つの単位バッテリーの容量以上に負荷がかかる場合、積載された複数の単位バッテリーを自動的に並列接続し稼働させることを特徴とする請求項1に記載の車載バッテリーシステム。
【請求項3】
駆動電力を供給する車載バッテリーが複数の10kg以下の重量である単位バッテリーの組み合わせにより構成された車載バッテリーと、前記単位バッテリーを切替・交換するための交換センターとを備えた車載バッテリーシステムであって、
前記単位バッテリーは電力の充放電が行われるバッテリー本体部と、他の単位バッテリーとの識別を行うための識別情報及び前記バッテリー本体部の使用状況を記録する記録部とを備え、
前記単位バッテリーと同様のバッテリー本体部及び記録部を備えた交換用バッテリーと、前記単位バッテリーの識別情報と前記交換用バッテリーの識別情報とが一致しているか否かを照合する照合部とを備え、
前記単位バッテリーが故障した、あるいは電力残量が少なくなった場合、前記照合部は前記単位バッテリーの識別情報と一致している識別情報を持つ交換用バッテリーを選び出すことを特徴とする車載バッテリーシステム。
【請求項4】
前記使用状況の内の使用状況履歴は、前記交換センターにおいて管理され、メンテナンス、リサイクルのための情報として使用されることを特徴とする請求項3に記載の車載バッテリーシステム。
【請求項5】
前記単位バッテリーの故障、あるいは電力残量不足は、前記単位バッテリーに設定された前記使用状況の閾値を基準として設定されることを特徴とする請求項1又は3に記載の車載バッテリーシステム。
【請求項6】
前記単位バッテリーは、サイズの規格化により、車載以外の防災用電源、照明利用にも転用可能であることを特徴とする請求項1又は3に記載の車載バッテリーシステム。」

本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
駆動電力を供給する車載バッテリーが複数の10kg以下の重量である単位バッテリーの組み合わせにより構成された車載バッテリーシステムであって、
前記単位バッテリーは電力の充放電が行われるバッテリー本体部と、
他の単位バッテリーとの識別を行うための識別情報及び前記バッテリー本体部の使用状況を記録する記録部とを備え、
車載バッテリーの電力は、単位バッテリーごとに順番に消費され、ある単位バッテリーの電力残量が少なくなった場合や、故障した場合には、次の単位バッテリーに自動的に切り替わり、
故障した、あるいは電力残量が少なくなった前記単位バッテリーは、前記識別情報を基に他の単位バッテリーとの切替・交換が可能であり、
前記単位バッテリーは、搭載される車両の重量配分、及びデザイン性のために分散配置されることを特徴とする車載バッテリーシステム。
【請求項2】
1つの単位バッテリーの容量以上に負荷がかかる場合、積載された複数の単位バッテリーを自動的に並列接続し稼働させることを特徴とする請求項1に記載の車載バッテリーシステム。
【請求項3】
駆動電力を供給する車載バッテリーが複数の10kg以下の重量である単位バッテリーの組み合わせにより構成された車載バッテリーと、前記単位バッテリーを切替・交換するための交換センターとを備えた車載バッテリーシステムであって、
前記単位バッテリーは電力の充放電が行われるバッテリー本体部と、他の単位バッテリーとの識別を行うための識別情報及び前記バッテリー本体部の使用状況を記録する記録部とを備え、
前記単位バッテリーと同様のバッテリー本体部及び記録部を備えた交換用バッテリーと、前記単位バッテリーの識別情報と前記交換用バッテリーの識別情報とが一致しているか否かを照合する照合部とを備え、
前記単位バッテリーが故障した、あるいは電力残量が少なくなった場合、前記照合部は前記単位バッテリーの識別情報と一致している識別情報を持つ交換用バッテリーを選び出し、
前記単位バッテリーは、搭載される車両の重量配分、及びデザイン性のために分散配置されることを特徴とする車載バッテリーシステム。
【請求項4】
前記使用状況の内の使用状況履歴は、前記交換センターにおいて管理され、メンテナンス、リサイクルのための情報として使用されることを特徴とする請求項3に記載の車載バッテリーシステム。
【請求項5】
前記単位バッテリーの故障、あるいは電力残量不足は、前記単位バッテリーに設定された前記使用状況の閾値を基準として設定されることを特徴とする請求項1又は3に記載の車載バッテリーシステム。
【請求項6】
前記単位バッテリーは、サイズの規格化により、車載以外の防災用電源、照明利用にも転用可能であることを特徴とする請求項1又は3に記載の車載バッテリーシステム。」


(2)目的要件
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

本件補正前後の請求項1は共に独立項であり、本件補正前後の請求項2は共に請求項1を引用する従属項であって記載は同じであり、本件補正前後の請求項3は共に独立項であって構成要件として交換センターを有しており、本件補正前後の請求項4は共に請求項3を引用する従属項であって記載は同じであり、本件補正前後の請求項5?6は共に請求項1又は3を引用する従属項であって記載は同じであり、請求人は審判請求書で請求項1、3を補足修正する補正を行った旨主張しているから、本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項1に対応するものとして検討する。

本件補正前の請求項1には、単位バッテリーの配置について何等記載が無かったものが、本件補正後の請求項1は、「前記単位バッテリーは、搭載される車両の重量配分、及びデザイン性のために分散配置される」ものとなっている。
そうすると、本件補正前の請求項1記載のどの事項を限定しても、本件補正後の請求項1に記載された単位バッテリーの搭載される車両の重量配分、及びデザイン性のための分散配置にはならず、且つ、本件補正後の請求項1の解決しようとする課題として「搭載される車両の重量配分、デザイン性の向上」が新たに加わっているから、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものには該当せず、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。請求項3も同様である。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。


(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記した平成28年9月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。


(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-57711号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a「本発明に係る当該電気車両とは、バッテリを駆動源として電気モータを駆動させることにより走行する電気車両全般であって、一般の乗用車、トラック、バスを含む事は当然のことながら、更に、電気自転車、電気オートバイ、フォークリフトその他の空港、工場、各種の展示会場、その他危険な環境下で所定の作業を実行する作業車、ゴルフカート、身障者用のホイールチェア、玩具用車両、遊園地の各種乗物、電気軌道車等を含むものである。つまり、本発明に係る当該電気車両用エネルギー供給システムは、従来の電気車両に於いては、当該電気車両に対して固定されて取り付けられているバッテリを、当該電気車両に対して着脱自在のカセット式バッテリに変更し、当該電気車両が、エネルギー供給ステーションに立ち寄って、当該カセット式バッテリを、当該エネルギー供給ステーションに用意されている、充電処理が完了している同一形式のカセット式バッテリと差し替える事によって当該電気車両に対するエネルギー供給操作を完了させ、一方当該電気車両から取り外した当該カセット形式のバッテリに充電処理操作を施し、次に来る同種の電気車両の為に常に満充電状態で保管しておくものである。」(【0009】)

b「又、本発明に於いては、当該カセット式バッテリのそれぞれに、当該バッテリの情報の他、当該バッテリに対する充電状態に関する歴史を記録し保持せしめておき、少なくとも当該バッテリを充電処理する前後に、当該各バッテリの充電記録をモニターする事によって、当該バッテリの特性を判断し、劣化したと判断されるバッテリは、当該電気車両用エネルギー供給システムのルートから除外する様にするものである。・・・略・・・電気を使いきってしまったか、或いは残留容量が所定の基準値以下になった当該バッテリは、環境問題も配慮して当該所定のスポット或いはステーションに戻し、充電処理され、再利用に供される様にシステム化したものである。」(【0011】)

c「以下に、本発明に係る電気車両用エネルギー供給システムの一具体例の構成を電気自動車を例にとって、図面を参照しながら詳細に説明する。即ち、図1(A)及び図1(B)は、本発明にかかる当該電気自動車用エネルギー供給システムの一具体例の構成の概略を説明する図であり、図中、所定の形状を有するカセット化された所定の数のバッテリ2を予め定められた所定の部位に着脱自在に搭載してなる電気自動車1と、当該所定の形状を有するカセット化されたバッテリ2を、複数個常時保有し、当該電気自動車1台分に必要とされる数の当該バッテリの内の一部若しくは当該電気自動車1台分に必要とされる数の当該バッテリを一ユニット5として、当該バッテリ群に対して個別に充電処理操作を実行し、満充電状態となった当該バッテリ群を保管する機能4を有するエネルギー供給ステーション3とから構成されており、当該電気自動車1が、当該エネルギー供給ステーション3に立ち寄った際には、当該電気自動車1が現在搭載している当該所定の数のバッテリ群2の一部若しくは全て取外し、当該ステーション3に於いて保管されている同等の数の、既に満充電状態となっている当該バッテリ群2’と差替えし、当該電気自動車1から取り外した当該1つ若しくは複数個のバッテリ群2に充電処理操作を実行し、当該電気自動車1は、次のエネルギー供給ステーション3’に向かい、当該エネルギー供給ステーション3では、別の電気自動車が立ち寄る迄待機する様に構成されている電気自動車用エネルギー供給システム100が示されている。」(【0012】)

d「本発明に係る当該バッテリ2に於いては、図2(A)に示す様に、複数個の電池セル6が適宜の電気配線により相互に接続され、一つのカセット化されたバッテリパックを形成しているのである。然かも本発明に於いては、当該カセット化されたバッテリは、適宜の材料で構成された外枠体7が当該電気セル6を被覆する様に設けられており、当該外枠体7は、当該バッテリの取扱性を大幅に向上させると同時に、電気自動車用のバッテリとして、当該電気自動車の床下、トランクの下の様な比較的設計変更が行われ難い部分に、然かも厚みを取ることなく平板状に着脱自在に搭載させる事が可能となる。
つまり、本発明に於いては、カセット化されたバッテリ2の当該電気自動車1に於ける取付場所としては、バッテリ-カセット2の1個当たりの重量が約20Kgあるため電気自動車の全体重量のバランスに大きく影響する。そのため図3に示す様に、車体中央下部に設置するのが良いと思われる。電気自動車前部は動力モ-タ-・インバ-タ-等重量の重い物が設置されるため中央部と後部にバランス良く設置するのが望ましい。」(【0014】-【0015】)

e「一方、本発明に於いて使用する当該個々のカセット形式のバッテリ2には、当該バッテリに含まれる電池セル6の充電状態、充電回数、残留容量、内部抵抗値に関する情報、当該電池セル6の耐久時間に関する情報、所有者若しくは使用者情報、等の各種情報を記憶しておく記憶手段8、当該記憶手段8の格納情報を選択的に表示する表示手段9が設けられている事も望ましい。」(【0018】)

f「具体的には、図6に示す様に、当該バッテリ2には、例えば、EEPROMから構成される不揮発性メモリ回路8、CPU61、通信制御手段62及びLCDから構成される表示手段9とから構成された記憶、表示回路が設けられているものである。当該不揮発性メモリ回路8に書き込むデータとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(1)バッテリ2の充電回数、充電日時、(2)バッテリ2のメーカー及びその形式、(3)充電時の使用者番号、(4)電池セル交換等の情報等が考えられる。」(【0022】)

g「本発明に係る管理コンピュータ1は、電池を充電する時点でこれらのデータを取り込み顧客番号・登録番号・カセット番号で管理を行う。管理内容は、データから製造年月日・充電回数・充電日時、製造メーカー・電池の種類・保守点検等の履歴を登録し寿命による交換時期やセル不良などの状態を判断する。本発明に於いて、当該カセット内の電池セル6の良否を判断するためには、例えば電池セル6の内部抵抗を測定する方法で実行する事が出来る。
当該バッテリの当該記憶手段8に所定の情報を書き込む手順及び読み出す手順としては、例えば、主コンピュータからの充電開始信号と同時にカセット式バッテリの管理装置に上記のデータを直接又は非接触で書き込む事或いは非接触で読み出す事によって実現出来る。そのために当該カセット化されたバッテリ2内部の電池セル6を内部抵抗測定器で各セル毎に内部抵抗を測定し、予め決められた内部抵抗の理想的な標準値と比較して、例えば当該標準値の80%以上になった電池の交換を行う。また交換は、同一規格で製造されたカセット化されたバッテリと交換するが、望ましくは、同じメ-カ-の同じ特性、同じ型式のものと交換する。また交換した電池についてはICカ-ドに履歴として記憶させる。各電池の内部抵抗データは電池の交換時期の判断に利用する。」(【0024】-【0025】)

上記記載及び図面を参照すると、バッテリーカセットは電力の充放電が行われる複数個の電池セルを備えている。
上記記載及び図面を参照すると、バッテリ群は電気モータの駆動源であるから、バッテリ群の電力は消費されている。
上記記載及び図面を参照すると、電気自動車が、エネルギー供給ステーションに立ち寄って、前記バッテリーカセットを、前記エネルギー供給ステーションに用意されている、充電処理が完了している同一形式のバッテリーカセットと差し替える事によって当該電気自動車に対するエネルギー供給操作を完了させており、又、電池セルの内部抵抗が標準値の80%以上になったバッテリーカセットは同一規格で製造されたバッテリーカセットと交換可能である。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「電気モータを駆動する駆動源としてのバッテリ群が所定の数の約20Kgであるバッテリーカセットにより構成された電気車両用エネルギー供給システムであって、
前記バッテリーカセットは電力の充放電が行われる複数個の電池セルと、
前記電池セルの充電状態、充電回数、残留容量、内部抵抗値に関する情報、当該電池セルの耐久時間に関する情報、所有者若しくは使用者情報、前記バッテリーカセットのメーカー及びその形式等の情報を記憶しておく記憶手段とを備え、
前記バッテリ群の電力は消費され、
電気自動車が、エネルギー供給ステーションに立ち寄って、前記バッテリーカセットを、前記エネルギー供給ステーションに用意されている、充電処理が完了している同一形式のバッテリーカセットと差し替える事によって当該電気自動車に対するエネルギー供給操作を完了させ、又、前記電池セルの内部抵抗が標準値の80%以上になったバッテリーカセットは同一規格で製造されたバッテリーカセットと交換可能であり、
前記バッテリ-カセットは、電気自動車前部は動力モ-タ-・インバ-タ-等重量の重い物が設置されるため中央部と後部にバランス良く設置される電気車両用エネルギー供給システム。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「バッテリ群」、「バッテリーカセット」、「電気車両用エネルギー供給システム」、「複数個の電池セル」、「電池セルの充電状態、充電回数、残留容量、内部抵抗値に関する情報」、「電池セルの耐久時間に関する情報、所有者若しくは使用者情報、前記バッテリーカセットのメーカー及びその形式等の情報」、「記憶しておく記憶手段」は、それぞれ本願補正発明の「車載バッテリー」、「単位バッテリー」、「車載バッテリーシステム」、「バッテリー本体部」、「バッテリー本体部の使用状況」、「他の単位バッテリーとの識別を行うための識別情報」、「記録する記録部」に相当する。

引用発明の「前記バッテリーカセットは電力の充放電が行われる複数個の電池セル」は、本願補正発明の「前記単位バッテリーは電力の充放電が行われるバッテリー本体部」に相当する。
引用発明の「前記電池セルの充電状態、充電回数、残留容量、内部抵抗値に関する情報、当該電池セルの耐久時間に関する情報、所有者若しくは使用者情報、前記バッテリーカセットのメーカー及びその形式等の情報を記憶しておく記憶手段」は、本願補正発明の「他の単位バッテリーとの識別を行うための識別情報及び前記バッテリー本体部の使用状況を記録する記録部」に相当する。
引用発明において、バッテリ-カセットを電気自動車前部には動力モ-タ-・インバ-タ-等重量の重い物が設置されるために中央部と後部にバランス良く設置すれば、バッテリーカセットが分散配置されることによって、バッテリーカセットの電気自動車に配置するにあたっての設計の自由度が向上することによるデザイン性の向上が図れるから、引用発明の「前記バッテリ-カセットは、電気自動車前部は動力モ-タ-・インバ-タ-等重量の重い物が設置されるため中央部と後部にバランス良く設置」することは、本願補正発明の「前記単位バッテリーは、搭載される車両の重量配分、及びデザイン性のために分散配置」することに相当する。

引用発明の「電気モータを駆動する駆動源としてのバッテリ群が所定の数の約20Kgであるバッテリーカセットにより構成された電気車両用エネルギー供給システム」と、本願補正発明の「駆動電力を供給する車載バッテリーが複数の10kg以下の重量である単位バッテリーの組み合わせにより構成された車載バッテリーシステム」は、「駆動電力を供給する車載バッテリーが複数の所定の重量である単位バッテリーの組み合わせにより構成された車載バッテリーシステム」の点で一致する。
引用発明の「前記バッテリ群の電力は消費され」と、本願補正発明の「車載バッテリーの電力は、単位バッテリーごとに順番に消費され、ある単位バッテリーの電力残量が少なくなった場合や、故障した場合には、次の単位バッテリーに自動的に切り替わり」は、「車載バッテリーの電力は消費され」の点で一致する。

引用発明において、電気自動車が、エネルギー供給ステーションに立ち寄って、前記バッテリーカセットを、前記エネルギー供給ステーションに用意されている、充電処理が完了している同一形式のバッテリーカセットと差し替える事によって当該電気自動車に対するエネルギー供給操作を完了させることは、電気自動車がエネルギー供給ステーションまで移動して、モータを駆動することにより電力を消費して電力残量が少なくなったバッテリーカセットを識別情報に基づいて充電処理が完了している他のバッテリーカセットと交換することであり、又、「故障」とは「事物の正常な働きがそこなわれること。さしさわり。さしつかえ。」のことであり、バッテリの内部抵抗が増加すると放電容量が低下して大電流が流せなくなって故障状態となるから、引用発明の「電気自動車が、エネルギー供給ステーションに立ち寄って、前記バッテリーカセットを、前記エネルギー供給ステーションに用意されている、充電処理が完了している同一形式のバッテリーカセットと差し替える事によって当該電気自動車に対するエネルギー供給操作を完了させ、又、前記電池セルの内部抵抗が標準値の80%以上になったバッテリーカセットは同一規格で製造されたバッテリーカセットと交換可能」と、本願補正発明の「故障した、あるいは電力残量が少なくなった前記単位バッテリーは、前記識別情報を基に他の単位バッテリーとの切替・交換が可能」は、「故障した、あるいは電力残量が少なくなった前記単位バッテリーは、前記識別情報を基に他の単位バッテリーとの交換が可能」との点で一致する。

したがって、両者は、
「駆動電力を供給する車載バッテリーが複数の所定の重量である単位バッテリーの組み合わせにより構成された車載バッテリーシステムであって、
前記単位バッテリーは電力の充放電が行われるバッテリー本体部と、
他の単位バッテリーとの識別を行うための識別情報及び前記バッテリー本体部の使用状況を記録する記録部とを備え、
車載バッテリーの電力は消費され、
故障した、あるいは電力残量が少なくなった前記単位バッテリーは、前記識別情報を基に他の単位バッテリーとの交換が可能であり、
前記単位バッテリーは、搭載される車両の重量配分、及びデザイン性のために分散配置される車載バッテリーシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願補正発明は、単位バッテリーが10kg以下の重量であるのに対し、引用発明は、約20Kgである点。
〔相違点2〕
車載バッテリーの電力消費に関し、本願補正発明は、単位バッテリーごとに順番に消費され、ある単位バッテリーの電力残量が少なくなった場合や、故障した場合には、次の単位バッテリーに自動的に切り替わるのに対し、引用発明は、単に車載バッテリーの電力が消費されるだけであって、その他の特定はない点。
〔相違点3〕
本願補正発明は、故障した、あるいは電力残量が少なくなった単位バッテリーは、識別情報を基に他の単位バッテリーとの切替・交換が可能であるのに対し、引用発明は、故障した、あるいは電力残量が少なくなった単位バッテリーは、識別情報を基に他の単位バッテリーとの交換が可能である点。


(4)判断
相違点1について
単位バッテリーの重量をどの程度とするかは、当業者が必要に応じて適宜選択できるものであるから、引用発明においても単位バッテリーを10kg以下の重量とすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。

相違点2について
単位バッテリーごとに順番に電力消費すること、単位バッテリーの電力残量が少なくなった場合には次の単位バッテリーに自動的に切り替わることは周知の事項[必要があれば、審査官が拒絶の理由で挙げた、引用例2(登録実用新案第3093649号公報)、引用例3(特開平9-298805号公報)、引用例4(特開2010-257318号公報)、引用例5(特開2004-173467号公報)等参照。]であり、又、引用例2には、1つの電池が使用不能となったときはそれを飛び越えて次の電池を使用することが記載されており、しかも、単位バッテリーごとに順番に電力消費する際に、1つのバッテリが故障すれば当業者であれば当然に次の電池を使用するものと認められるから、引用発明において、車載バッテリーの電力消費を、単位バッテリーごとに順番に消費し、ある単位バッテリーの電力残量が少なくなった場合や、故障した場合には、次の単位バッテリーに自動的に切り替えることは当業者が容易に考えられること認められる。

相違点3について
本願補正発明の切替・交換は、「単位バッテリーを切替・交換する交換センター」(【0012】)とあるように交換センターでのバッテリーの切替・交換を想定しており、単位バッテリーの1つの電力が消費されて次の単位バッテリーを使用する場合は、「切替部70により次の単位バッテリーに自動的に切り替わる。」(【0030】)とあるように「切り替わる」、「切り替わり」等のように記載されている。そうすると、本願補正発明の切替・交換は、交換センターでのバッテリーの交換を意味するから、相違点3に関し、引用発明と本願補正発明に差異は認められない。

『なお、請求人は、平成29年2月9日付上申書で、
「駆動電力を供給する車載バッテリーが複数の10kg以下の重量である単位バッテリーの組み合わせにより構成された車載バッテリーシステムであって、
前記単位バッテリーは電力の充放電が行われるバッテリー本体部と、
他の単位バッテリーとの識別を行うための識別情報及び前記バッテリー本体部の使用状況を記録する記録部とを備え、
車載バッテリーの電力は、単位バッテリーごとに順番に消費され、ある単位バッテリーの電力残量が少なくなった場合や、故障した場合には、次の単位バッテリーに自動的に切り替わり、
故障した、あるいは電力残量が少なくなった前記単位バッテリーは、前記識別情報を基に他の単位バッテリーとの切替・交換が可能であり、
住居内に敷設されている100V電源に接続された充電設備により充電が可能であることを特徴とする車載バッテリーシステム。」
との補正案を提示しているが、充電設備が住居内に敷設されている100V電源に接続され、当該設備により充電することは、家庭で充電を行う際に一般的に行われていることであるから、引用発明において当業者が適宜採用し得る程度のことと認められる。』

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記した平成28年3月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。


(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び、その記載事項は、上記「2.[理由II](2)」に記載したとおりである。


(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「前記単位バッテリーは、搭載される車両の重量配分、及びデザイン性のために分散配置される」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.[理由II](3)」に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-27 
結審通知日 2017-05-02 
審決日 2017-05-29 
出願番号 特願2015-88492(P2015-88492)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 575- Z (H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 572- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 慎  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 堀川 一郎
藤井 昇
発明の名称 車載バッテリーシステム  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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