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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1330499
審判番号 不服2016-735  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-15 
確定日 2017-07-12 
事件の表示 特願2014-510503「スピロ-オキシインドールMDM2アンタゴニスト」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日国際公開、WO2012/155066、平成26年6月5日国内公表、特表2014-513699〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2012年5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年5月11日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年12月5日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月11日付けで拒絶査定がされ、平成28年1月15日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。
なお、平成28年1月15日に特願2016-6503号が分割出願されている。

第2 本願発明
この出願の発明は、平成27年3月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるとことろ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである(審決注:補正箇所を示す下線が入っているが、下線は発明特定事項ではない。)。


からなる群から選択される化合物、またはその薬剤的に許容される塩。」

第3 原査定の理由
原査定の理由である平成26年12月5日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由は、理由3であり、その理由3の概要は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、この出願の優先権主張日前の他の特許出願であって、その優先権主張日後に当該他の特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の15第2項で読み替える同法第41条第3項参照)」というものであり、その「この出願の優先権主張日前の他の特許出願であって、その優先権主張日後に・・・国際公開がされた下記の特許出願」とは、特願2011-52687号(国際公開第2012/121361号)(以下「先願」といい、その明細書、請求の範囲及び図面を、以下「先願明細書等」という。)である。その「下記の請求項」は、請求項1?5、7?33、36?42である。本願発明は、拒絶理由で言及された請求項32に記載されていた化合物のうち5番目及び9番目を削除して請求項33を合体させたものである。
そして、拒絶査定は、本願発明が、先願明細書等に記載された発明と同一であることを、その理由に含むものである。

第4 当審の判断
当審は、原査定の理由のとおり、本願発明は、その優先権主張日前の特許出願であって、その優先権主張日後に、当該出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開がされた先願の、願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 先願
先願:特願2011-52687号(国際公開第2012/121361号)(原審における引用文献等3)
上記国際公開がされた出願は、2012年3月9日(優先権主張2011年3月10日(JP)日本国及び優先権主張外国庁受理2011年10月13日(US)米国)を国際出願日とするPCT/JP2012/056066であり、先願は、この優先基礎出願のうちの日本語の出願である。
先願は、2011年3月10日の出願であるから、この出願の優先日である2011年5月11日より前に出願されているが、上記国際出願は、この出願の優先日より後の2012年3月9日を国際出願日としている。

2 先願明細書等の記載事項
上記先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の事項が記載されている。引用箇所は、先願明細書等に記載のとおり段落番号を【】とともに示し、摘示箇所の後に括弧書きで国際公開における段落を[]として示す。
(1a)「【請求項1】一般式(1)

[・・・(審決注:式の部分構造及び置換基の説明は省略する。)・・・]
で表される化合物またはその塩。
・・・・・・・・・・・・・・・
【請求項2】一般式(5)

[・・・(審決注:式の部分構造及び置換基の説明は省略する。)・・・]
で表される請求項1に記載の化合物またはその塩。」(特許請求の範囲の請求項1及び2、国際公開では453?457頁の請求の範囲の請求項1及び2)
(1b)「【技術分野】
【0001】本発明は、Mdm2(murine double minute 2)阻害による抗腫瘍活性を有するジスピロピロリジン化合物またはその塩に関する。
【背景技術】
【0002】細胞の癌化を抑制する重要な因子の1つとして、p53が知られている。p53は、細胞周期や細胞のアポトーシスに関与する遺伝子の発現を、様々なストレスに応答して誘導する転写因子である。p53は、この転写調節機能により細胞の癌化を抑制すると考えられており、実際、ヒトの癌の約半数にp53遺伝子の欠失または変異が観察されている。
【0003】一方、p53が正常であるにもかかわらず癌化している細胞の癌化の要因の1つとして、E3ユビキチンリガーゼの1種であるMdm2(murine double minute 2)の過剰発現が知られている。Mdm2は、p53によって発現が誘導される蛋白質である。Mdm2は、p53の転写活性ドメインに結合してp53の転写活性を低下させるとともに、p53を核外に排出し、さらには、p53に対するユビキチン化リガーゼとして作用してp53の分解を媒介することにより、p53を負に制御している。このため、Mdm2が過剰発現している細胞では、p53機能の不活化および分解が促進され、癌化が引き起こされると考えられている(非特許文献1)。
【0004】このようなMdm2の機能に着目し、Mdm2によるp53の機能抑制を阻害する物質を抗腫瘍剤の候補とするアプローチが多数なされてきた。Mdm2とp53との結合部位を標的としたMdm2阻害剤としては、スピロオキシインドール誘導体(特許文献1?15、非特許文献1?3)、インドール誘導体(特許文献16)、ピロリジンー2-カルボキサミド誘導体(特許文献17)、ピロリジノン誘導体(特許文献18)、イソインドリノン誘導体等(特許文献19、非特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/091646号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/136606号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/104664号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2007/104714号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2008/034736号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2008/036168号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2008/055812号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2008/141917号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2008/141975号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2009/077357号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2009/080488号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2010/084097号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2010/091979号パンフレット
【特許文献14】国際公開第2010/094622号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2010/121995号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2008/119741号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2010/031713号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2010/028862号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2006/024837号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,2005,127,10130-10131
【非特許文献2】J.Med.Chem.,2006,49,3432-3435
【非特許文献3】J.Med.Chem.,2009,52,7970-7973
【非特許文献4】J.Med.Chem.,2006,49,6209-6221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】本発明は、新規なMdm2阻害化合物を提供するものである。また、本発明は、当該Mdm2阻害化合物を含有する抗腫瘍剤を提供するものである。」(国際公開では[0001]の前の行?[0007])
(1c)「【課題を解決するための手段】
【0008】本発明者らは、鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物またはその塩が、強いMdm2阻害活性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】すなわち、本発明は、
[1]一般式(1)
【0010】

【0011】[・・・(審決注:式の部分構造及び置換基の説明は省略する。)・・・
【0012】・・・(審決注:同上)・・・
【0013】・・・(審決注:同上)・・・]
で表される化合物またはその塩。
【0014】・・・(審決注:同上)・・・
【0015】[2]一般式(5)

【0016】[・・・(審決注:同上)・・・]
で表される[1]に記載の化合物またはその塩。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0024】・・・・・・・・・・・・・・・
【発明の効果】
【0025】本発明によって、Mdm2阻害活性を有する、上記式(1)で表される新規スピロプロリンアミド誘導体が提供される。このような新規化合物は、抗腫瘍剤として有用である。」(国際公開では[0008]の前の行?[0025])
(1d)「【0144】以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されない。また、本明細書において、特に記載のない試薬、溶媒および出発材料は、市販の供給源から容易に入手可能である。
【0145】実施例1

【0146】[工程1]
(3’S,4’R,7’S,8’S,8a’R)-6”-クロロ-8’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-4,4-ジメチル-3’,4’-ジフェニル-3’,4’,8’,8a’-テトラヒドロ-1’H-ジスピロ[シクロヘキサン-1,6’-ピロロ[2,1-c][1,4]オキサジン-7’,3”-インドール]-1’,2”(1”H)-ジオン
窒素雰囲気下、(3E/Z)-6-クロロ-3-(3-クロロ-2-フルオロベンジリデン)-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン(WO2006/091646)(616mg,2.00mmol)のトルエン(20ml)溶液に、(5R,6S)-5,6-ジフェニルモルホリン-2-オン(506mg,2.00mmol)、4,4-ジメチルシクロヘキサノン(252mg,2.00mmol)、モレキュラーシーブ4A(粉末)(2g)を加え、70℃で5日間加熱撹拌した。放冷後、不溶物をセライトろ去し、ろ液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、1規定塩酸および飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1→6:1(v/v)]にて精製し、標記化合物194mg(14%)を黄色非晶質固体として得た。
^(1)H-NMR・・・
【0147】[工程2]
(4’S,5’R)-6”-クロロ-4’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-N-(trans-4-ヒドロキシシクロヘキシル)-1’-[(1R,2S)-2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエチル]-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド
上記工程1で得た化合物(194mg,0.29mmol)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液に、trans-4-アミノシクロヘキサノール(167mg,1.45mmol)を加え、6日間加熱還流した。放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=100:0→30:1(v/v)]にて精製し、標記化合物230mg(100%)を淡黄色非晶質固体として得た。
^(1)H-NMR・・・
【0148】[工程3]
(3’R,4’S,5’R)-6”-クロロ-4’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-N-(trans-4-ヒドロキシシクロヘキシル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド
上記工程2で得た化合物(230mg,0.29mmol)をアセトニトリル(10ml)および水(3ml)に溶解し、氷冷下、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)(318mg,0.58mmol)を加え10分間撹拌した。反応混合液に炭酸カリウム(160mg,1.16mmol)を加え撹拌後、不溶物をセライトろ去した。ろ液を酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=100:0→30:1→20:1(v/v)]にて精製し、標記化合物90mg(53%)を淡黄色固体として得た。
^(1)H-NMR・・・
MS(ESI)m/z:588(M+H)^(+).
・・・・・・・・・・・・・・・
【0156】実施例4

【0157】[工程1]
(3’S,4’R,7’S,8’S,8a’R)-6”-クロロ-8’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-3’,4’-ジフェニル-3’,4’,8’,8a’-テトラヒドロ-1’H-ジスピロ[シクロヘキサン-1,6’-ピロロ[2,1-c][1,4]オキサジン-7’,3”-インドール]-1’,2”(1”H)-ジオン
シクロヘキサノン(0.25ml,2.40mmol)を原料に用い、実施例1の工程1と同様な操作を行うことにより、標記化合物900mg(70%)を黄色固体として得た。
^(1)H-NMR(400MHz,CDCl_(3))δ:1.15-1.32(8H,m),2.01(1H,d,J=12.9Hz),2.45(1H,d,J=13.4Hz),4.61(1H,d,J=11.0Hz),4.88(1H,d,J=2.9Hz),5.36(1H,d,J=11.5Hz),6.23(1H,d,J=8.3Hz),6.60(1H,dd,J=8.2,1.8Hz),6.76(2H,d,J=6.8Hz),6.87(1H,d,J=1.7Hz),7.05-7.23(11H,m),7.42(1H,s),7.75(1H,t,J=6.6Hz).
【0158】[工程2]
(4’S,5’R)-6”-クロロ-4’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-N-(trans-4-ヒドロキシシクロヘキシル)-1’-[(1R,2S)-2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエチル]-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド
上記工程1で得た化合物(320mg,0.50mmol)を原料に用い、実施例1の工程2と同様な操作を行うことにより、標記化合物228mg(60%)を無色固体として得た。
^(1)H-NMR(400MHz,CDCl_(3))δ:0.49-0.53(1H,m),0.82-0.90(3H,m),1.28-1.30(4H,m),1.58-1.62(2H,m),1.80-1.90(6H,m),2.09(1H,t,J=11.4Hz),2.16-2.23(1H,m),3.03(1H,d,J=14.7Hz),3.43-3.45(2H,m),3.72-3.73(1H,m),4.12(1H,d,J=8.2Hz),4.65(1H,d,J=10.5Hz),4.90(1H,d,J=3.2Hz),5.53(1H,d,J=2.7Hz),6.18(1H,s),6.41(1H,t,J=6.6Hz),6.64(1H,t,J=8.0Hz),6.75(1H,d,J=1.8Hz),7.00-7.03(2H,m),7.10(4H,q,J=7.6Hz),7.17(3H,t,J=3.0Hz),7.21(2H,d,J=7.3Hz),7.34(1H,s),7.43(2H,br s).
【0159】[工程3]
(3’R,4’S,5’R)-6”-クロロ-4’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-N-(trans-4-ヒドロキシシクロヘキシル)-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド
上記工程2で得た化合物(228mg,0.30mmol)を原料に用い実施例1の工程3と同様な操作を行うことにより、標記化合物76mg(45%)を無色固体として得た。
^(1)H-NMR(400MHz,CD_(3)OD)δ:0.88-0.97(2H,m),1.05-1.08(1H,m),1.29-1.43(5H,m),1.54-1.59(2H,m),1.64-1.79(3H,m),1.87-1.99(5H,m),3.56-3.58(2H,m),4.50(1H,d,J=9.2Hz),4.65(1H,d,J=9.6Hz),6.71(1H,d,J=2.3Hz),7.00-7.04(2H,m),7.18-7.22(1H,m),7.39(1H,dd,J=8.2,2.3Hz),7.61(1H,t,J=6.6Hz).
MS(ESI)m/z:560(M+H)^(+).」(国際公開では[0146]?[0155])
(1e)「【0726】(試験例1 Mdm2/p53結合アッセイ)
蛋白質緩衝液(20mM HEPES pH7.4,150mM NaCl,0.1% BSA)を用いて、His-p53(p53の1?132番目のアミノ酸からなるp53部分蛋白質とヒスチジン蛋白質との融合蛋白質)およびGST-Mdm2(Mdm2の25?108番目のアミノ酸であって、33番目のロイシン残基をグルタミン酸に変換したMdm2部分蛋白質とグルタチオントランスフェラーゼとの融合蛋白質)の蛋白質をそれぞれ6.25nM含む蛋白質希釈溶液を作成した。この蛋白質希釈溶液を、384ウェルプレート(384-well low volume NBC,Corning、カタログ番号3676)の各ウェルに8μLずつ添加した。
【0727】次に、DMSOを用いて試験化合物を希釈し、この希釈液を10%含む蛋白質緩衝液を作製し、各ウェルに4μLずつ添加した。
【0728】続いて、抗体希釈緩衝液(20nM HEPES pH7.4,150mM NaCl,0.1% BSA,0.5M KF)を用いて、XL665標識抗His抗体(HTRF monoclonal anti-6HIS antibody labeled with XL665(カタログ番号61HISXLB)、Schering/Cisboio Bioassays)およびユーロピウム(Eu)標識抗GST抗体(HTRF monoclonal anti-GST antibody labeled with europium cryptate、Schering/Cisboio Bioassays、カタログ番号61GSTKLB)をそれぞれ2.5μg/mLおよび0.325μg/mLの濃度で含む溶液を作製し、各ウェルに8μLずつ添加した(反応液総量:20μl/ウェル)。その後、プレートを25℃で1時間放置した。
【0729】励起波長320nmにおける620nmおよび665nmの時間分解蛍光をプレートリーダー(ARVOsx、PerkinElmer、またはPHERAstar,BMGLABTECH)を用いて測定した。計測値(RFU 620nmとRFU 665nm)を用いて、以下の式にてRatio(R)を算出した。
R=(RFU 665nm-BI-C×RFU 620nm)/RFU 620nm
BI:各蛋白質、化合物、および抗体を添加していない反応液(各緩衝液のみ)の665nmの計測値
C(補正係数)=(A-BI)/D
AおよびDは、Eu標識抗GST抗体溶液のみを添加した反応液の665nmおよび620nmの各計測値
His-p53、GST-Mdm2、試験化合物および各抗体を添加した ウェルから算出したR値をR(sample)とし、His-p53、GST-Mdm2および各抗体を添加したが試験化合物を添加していないウェルから算出したR値をR(control)とし、GST-Mdm2、試験化合物および各抗体を添加したがHis-p53を添加していないウェルから算出したR値をR(background)として、下記の式からT/Cを算出し、シグモイドフィッティングを行い、Mdm2/p53結合に対するIC_(50) 値を算出した。結果を表1に示す。
T/C=(R(sample)-R(background))/(R(control)-R(background))
【0730】各実施例化合物のIC_(50) 値は、以下のとおりであった。
・・・・・・・・・・・・・・・
0.1≦IC_(50)(μM)<0.5:実施例番号4・・・。
【0731】(試験例2 抗細胞試験)
野性型p53を有するヒト肺癌由来細胞株NCI-H460を用いて抗細胞試験を実施した。
【0732】NCI-H460細胞を、培地(10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地)に懸濁し、96ウェルのマルチウェルプレートにそれぞれ500細胞/150μL/ウェルで播種した。試験化合物をDMSOに溶解し、これを培地で希釈して検体溶液とした(DMSO濃度 1%以下)。播種の翌日、試験化合物を添加していない培地または検体溶液を、各ウェルに50μLずつ添加した。細胞播種翌日に培地を50μLずつ添加した直後と、検体溶液または培地を細胞に添加し、37℃、5% CO_(2) で3日間培養した後に、MTTアッセイを実施した。MTTアッセイは以下のように実施した。
【0733】リン酸緩衝液(Dulbecco's Phosphate-buffered Salines)を用いて5mg/mLのMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド,Sigma,M-2128)溶液を作製し、このMTT溶液を20μLずつ各ウェルに添加した。その後、プレートを37℃、5% CO_(2) 下で4時間培養した。プレートを1200rpmで5分間遠心処理した後、培養上清をディスペンサーにて吸引除去した。DMSOを各ウェルに150μLずつ添加し、生成されたフォルマザンを溶解した。プレートミキサーを用いてプレートを撹拌することにより、各ウェルの発色を均一にした。各ウェルの吸光度をOD 540nm、reference 660nmの条件下、プレートリーダー(SpectraMaxPLUS384,Molecular Devices,CA USA)を用いて測定した。
【0734】検体溶液添加当日に測定したOD値をSとし、検体溶液添加の3日後に測定したOD値をTとし、DMSO希釈液添加の3日後に測定したOD値をCとし、下記の計算式より各濃度におけるT/C(%)を求めて用量反応曲線を描き、50%増殖抑制濃度(GI_(50) 値)を算出した。
【0735】T/C(%)=(T-S)/(C-S) ×100
本試験を実施した実施例化合物のGI_(50) 値は、以下のとおりであった。
【0736】・・・・・・・・・・・・・・・
1.0≦GI_(50)(μM)<5.0:実施例番号・・・4・・・
【0737】(試験例3 抗腫瘍試験)
ヒト骨肉腫細胞株SJSA-1またはSJSA-1-RE(SJSA-1にp53レポーター遺伝子を組み込んだ細胞)をヌードマウス(BALB/C-nu/nu SLC、雄、日本エスエルシー)に皮下移植し、腫瘍の大きさが100?200mm^(3) 程度に達した時点で群分けする(6匹/群)。試験化合物を0.5% メチルセルロース溶液に懸濁させ、50mg/kgで一日二回(bid)、50mg/kgで一日一回(qd)または25mg/kgで一日一回(qd)、4日間連続経口投与した。2日間休薬後にマウスを解剖し、腫瘍を摘出後、その重量を測定する。
【0738】抗腫瘍効果(IR(%))は次式により算出する。
IR(%)=[1?(化合物投与群の平均腫瘍重量/無処置対照群の平均腫瘍重量)]×100
【0739】(試験例4 代謝安定性試験)
100mM pH7.4 リン酸緩衝液、30mM グルコース6リン酸、10mM MgCl2・6H2O、3unit/mL グルコース6リン酸 1-デヒドロゲナーゼ、0.3-1.5mgP/mLのヒト肝ミクロソームを含む反応液100μLに3μMの試験化合物を含む100mM pH7.4 リン酸緩衝液100μLを添加し、37℃で20分間インキュベートした後、3mMのNADP+を含む100mM pH7.4 リン酸緩衝液70μLを加え、さらに37℃で30分間インキュベートすることによりミクロソーム代謝試験を実施した。化合物は、高速液体クロマトグラフ装置に接続した四重極型質量分析計を用いた内部標準法によって定量し、代謝安定性(化合物の残存率:MS%)は次式により求めた。
【0740】MSヒト%=(NADP+を添加し30分間インキュベート後の試験化合物のピーク面積比)/(NADP+添加前の試験化合物のピーク面積比) ×100
(ピーク面積比=試験化合物のピーク面積を内部標準物質のピーク面積で除したもの) 本試験を実施した実施例化合物のうち、MS%が30以上の化合物は以下のとおりであった。
【0741】70≦MS%≦100:実施例・・・4・・・
・・・・・・・・・・・・・・・」(国際公開では[736]?[759])

3 先願明細書等に記載された発明

先願明細書等は、抗腫瘍剤に用いるMdm2阻害活性を有する化合物に関する特許文献である(摘示(1a)?(1c))。先願明細書等には、特許請求の範囲の請求項1及び2に、以下の一般式(1)及び(5)

(審決注:式の部分構造及び置換基の説明は省略する。)で表される化合物が記載されている(摘示(1a))。
そして、先願明細書等には、これを具体化したものとして、その実施例4に、その工程3で得られる目的化合物として、以下の化学構造式

で示される、(3’R,4’S,5’R)-6”-クロロ-4’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-N-(trans-4-ヒドロキシシクロヘキシル)-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミドを、製造したことが記載されている(摘示(1d))。この化合物の薬理活性を試験したことも記載されている(摘示(1e))。
そして、上記の化学構造式と化合物名とに、齟齬はない。
以上によれば、先願明細書等には、
「以下の化学構造式

で表される、(3’R,4’S,5’R)-6”-クロロ-4’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-N-(trans-4-ヒドロキシシクロヘキシル)-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド」
の発明(以下「先願発明」といい、その化合物を「先願化合物」という。)が記載されているということができる。

4 対比
本願発明に係る化合物のうち、請求項1の冒頭に記載された、以下の

の化合物(以下「本願化合物」という。)と、先願化合物とを対比する。
本願化合物は、この出願の明細書(以下「本願明細書」という。補正されていない。)の段落【0541】?【0547】の実施例1の目的化合物の「化合物例No.3」

と同じ化合物である。
上記実施例1には、以下の
「【0546】

【0547】トランス-4-アミノシクロヘキサノール(1.8g、15.6mmol)を中間生成物6a(1.0g、1.56mmol)の溶液に加え、THF(30mL)に溶解し、一晩還流した。溶媒を除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、0.568gの中間生成物7をオフホワイトの固体として得た。・・・」
との記載があることから、本願化合物(化合物例No.3)における4-ヒドロキシシクロへキシルカルバモイル基における、太線で示された結合とヒドロキシ基との関係は、トランス(trans)形である。したがって、本願化合物における上記の太線で示された結合と、先願化合物における対応する位置にN(窒素)からC(炭素)に向かって細くなる楔形で示された結合とは、同じ意味である。
そうすると、本願化合物と先願化合物とは相違するところがなく、本願発明は、先願発明と同一である。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、その優先権主張日前の特許出願であって、その優先権主張日後に、当該出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開がされた先願の、願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-10 
結審通知日 2017-02-14 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2014-510503(P2014-510503)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早乙女 智美  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 冨永 保
中田 とし子
発明の名称 スピロ-オキシインドールMDM2アンタゴニスト  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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