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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66C
管理番号 1330542
審判番号 不服2016-5396  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-12 
確定日 2017-08-01 
事件の表示 特願2011-145817「クレーン、及びクレーンの電力供給方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月17日出願公開、特開2013- 10629、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年6月30日の出願であって、平成27年3月18日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月11日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月12日に本件拒絶査定不服審判が請求され、当審において平成29年1月16日付けで拒絶理由を通知したところ、同年3月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年1月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

平成27年10月2日に提出された手続補正書により補正された本願の請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献等1に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2011-68499号公報

第3 平成29年1月16日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本件請求項1-5に係る発明は、以下の刊行物1-4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物等一覧
1.特開2011-68499号公報(原査定の引用文献1)
2.特開平7-320752号公報
3.特開2011-97818号公報
4.特開2007-166775号公報

第4 本願発明
本件出願の請求項1?2に係る発明は、平成29年3月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
供給される電力によって駆動する電力負荷と、
前記電力負荷に電力を供給する電力供給装置と、を有するクレーンであって、
前記電力供給装置は、
商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する変換手段と、
前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置を充放電させる充放電制御手段と、を備え、
前記変換手段は、出力電力が予め定められた電力値未満の場合には前記導線の電圧を第1目標値とする制御を行い、前記出力電力が前記予め定められた電力値に到達している場合には、前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御を行い、
前記充放電制御手段は、前記導線の電圧が前記第1目標値よりも小さな第2目標値まで低下した場合には、前記第2目標値の電圧で前記蓄電装置を放電させ、
前記電力供給装置は、
前記電力負荷の消費電力が前記予め定められた電力値以下の場合、前記商用電源からの電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記予め定められた電力値を超え、前記変換手段が前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つことによって前記導線における電圧が前記第2目標値まで低下した場合、前記充放電制御手段による前記蓄電装置の放電を開始する、クレーン。」
「【請求項2】
供給される電力によって駆動する電力負荷と、前記電力負荷に電力を供給する電力供給装置と、を有するクレーンの電力供給方法であって、
商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する第1工程と、
前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置を、充放電させる第2工程と、
を含み、
前記第1工程では、出力電力が予め定められた電力値未満の場合には前記導線の電圧を第1目標値とする制御を行い、前記出力電力が前記予め定められた電力値に到達している場合には、前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御を行い、
前記第2工程では、前記導線の電圧が前記第1目標値よりも小さな第2目標値まで低下した場合には、前記第2目標値の電圧で前記蓄電装置を放電させ、
前記クレーンの電力供給方法では、
前記電力負荷の消費電力が前記予め定められた電力値以下の場合、前記商用電源からの電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記予め定められた電力値を超え、前記第1工程にて前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御が行われることで、前記導線における電圧が前記第2目標値まで低下した場合、前記第2工程にて前記蓄電装置の放電を開始するクレーンの電力供給方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1、刊行物1について
当審拒絶理由に引用された刊行物1には、「クレーン装置」に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
(ア)「【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるクレーン装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるクレーン装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0014】
このクレーン装置100は、地上給電方式により給電された電力で、主巻電動機を駆動することによりコンテナターミナル内の所望レーンでコンテナの巻上げ下げを行うとともに、走行電動機を駆動することによりコンテナターミナル内を自走する門型のクレーン装置である。
クレーン装置100には、主な構成として、給電装置1、主巻電動機20、走行電動機21、横行電動機22、インバータ(INV)31?33、蓄電装置4、コントローラ5、および共通母線10が設けられている。
【0015】
本実施の形態は、給電装置1により、レーンごとに設けられている電源装置7からの供給電力を電動機20?22へ動作電力1Aとして供給し、蓄電装置4により、動作電力1Aの一部を蓄電し、他のレーンへ直角走行する際、供給電力の切り離しに応じて停止される給電装置1からの動作電力1Aに代えて当該蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給するようにしたものである。」
(イ)「【0020】
蓄電装置4は、電池やコンデンサなどの蓄電池を内蔵する回路装置であり、交流を一旦直流に変換するインバータ31の直流回路区間、すなわちAC/DC変換器とDC/AC変換器の接続回路部分に出力された直流電力を蓄電池に蓄電する機能と、蓄電池に蓄電した蓄電電力(直流)をインバータ31から主巻電動機20へ供給する機能とを有している。」
(ウ)「【0030】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるクレーン装置の動作について説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態にかかるクレーン装置の動作例を示すタイミングチャートである。ここでは、コンテナを巻き上げた後に横行動作し、その後巻き下げてコンテナを載置し、その後クレーン装置100をレーン71の端部まで走行させて、他のレーンへ移動するため直角走行を行う場合を例として説明する。
【0031】
[巻き上げ動作]
時刻T0において、オペレータ操作によりコンテナ9の巻き上げ指令を示す指令入力5Aが入力された場合、コントローラ5は、インバータ31に対してコマンド3Aを送信することにより主巻電動機20の駆動を指示する。これにより主巻電動機20が回転動作してコンテナ9の巻き上げを開始するため、共通母線10にかかる負荷電力10Aは、通常時の負荷電力Peから最大負荷電力Paまで上昇する。
【0032】
一方、給電装置1は、地上の電源装置7からの供給電力に基づき、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力している。したがって、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給される。
その後、コンテナ9の巻き上げ指令を示す指令入力5Aが停止された場合、コントローラ5からのコマンド3Aにより、インバータ31による主巻電動機20の駆動が停止され、負荷電力10Aが負荷電力Peへ戻る。これにより、負荷電力10Aが定常電力Pを下回る期間には、その余剰電力の一部がインバータ31を介して蓄電装置4へ蓄電電力4Aとして蓄電される。」
(エ)「【0035】
[巻き下げ動作]・・・コンテナ重量により主巻電動機20に回転力が加わるため主巻電動機20で大きな回生電力Pfが発生する。したがって、この回生電力Pfがインバータ31を介して蓄電装置4へ蓄電電力4Aとして蓄電される。
【0036】・・・
なお、蓄電装置4には、一般的な充放電制御装置が設けられており、蓄電電力4Aが所定の蓄電量まで達した満充電状態となった場合、この充放電制御装置により、蓄電装置4への蓄電が停止される。」
(オ)「【0037】
[走行動作]・・・負荷電力Pbは、定常電力Pを下回る値であるため、その余剰電力の一部がインバータ31を介して蓄電装置4へ蓄電電力4Aとして蓄電される。」
(カ)「【0047】
[第2の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるクレーン装置について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態にかかるクレーン装置の構成を示す機能ブロック図であり、前述した図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
第1の実施の形態では、給電装置1から共通母線10に対して交流の動作電力1Aが供給される場合を例として説明した。本実施の形態では、給電装置1から共通母線10に対して直流の動作電力1Aが供給されるクレーン装置101について説明する。
【0048】
図6に示すように、本実施の形態にかかるクレーン装置101では、共通母線10に対して動作電力1Aを直流で供給する場合、給電装置1として、AC/DC変換器(図示せず)を有する給電装置が用いられ、各インバータ31?33としてDC/AC変換器が用いられる。・・・
なお、本実施の形態にかかるクレーン装置101の他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。」
(キ)「【0049】
[第2の実施の形態の動作]・・・
【0050】
また、巻き上げ動作を行う場合、蓄電装置4の蓄電電力4Aが共通母線10およびインバータ31を介して主巻電動機20へ供給され、動作電力1Aの不足分が蓄電電力4Aにより補われる。一方、巻き下げ動作時には、主巻電動機20からインバータ31を介して共通母線10へ出力された回生電力により、蓄電電力4Aが蓄電装置4に蓄電される。
【0051】
また、直角走行時には、蓄電装置4の蓄電電力4Aが共通母線10およびインバータ31を介して走行電動機21へ供給され、さらに共通母線10からインバータ33を介して補機設備へ供給される。
なお、本実施の形態にかかるクレーン装置101の他の動作については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。」

(ク)(カ)の図6の「クレーン装置101」は、「本実施の形態にかかるクレーン装置101の他の構成については、第1の実施の形態と同様」であり、第1の実施の形態のクレーン装置100は、(ア)のものであるので、「給電装置1、主巻電動機20、走行電動機21、横行電動機22、インバータ(INV)31?33、蓄電装置4、コントローラ5、および共通母線10が設けられ、
給電装置1により、レーンごとに設けられている電源装置7からの供給電力を電動機20?22へ動作電力1Aとして供給し、蓄電装置4により、動作電力1Aの一部を蓄電し、他のレーンへ直角走行する際、供給電力の切り離しに応じて停止される給電装置1からの動作電力1Aに代えて蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給するようにしたクレーン装置101」といえる。
(ケ)(キ)の「第2の実施の形態の動作」は、「・・蓄電装置4の蓄電電力4Aが共通母線10およびインバータ31を介して主巻電動機20へ供給され、・・主巻電動機20からインバータ31を介して共通母線10へ出力された回生電力により、蓄電電力4Aが蓄電装置4に蓄電される。・・蓄電装置4の蓄電電力4Aが共通母線10およびインバータ31を介して走行電動機21へ供給され、さらに共通母線10からインバータ33を介して補機設備へ供給される。」の「他の動作については、第1の実施の形態と同様」であり、第1の実施の形態の動作は、(ウ)?(オ)のものであるので、「給電装置1は、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力し、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給される」ものといえる。
(コ)(キ)の「第2の実施の形態の動作」は、「・・蓄電装置4の蓄電電力4Aが共通母線10およびインバータ31を介して主巻電動機20へ供給され、・・主巻電動機20からインバータ31を介して共通母線10へ出力された回生電力により、蓄電電力4Aが蓄電装置4に蓄電される。・・蓄電装置4の蓄電電力4Aが共通母線10およびインバータ31を介して走行電動機21へ供給され、さらに共通母線10からインバータ33を介して補機設備へ供給される。」の「他の動作については、第1の実施の形態と同様」であり、第1の実施の形態の動作は、(ウ)?(オ)のものであるので、「給電装置1は、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力し、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給されるクレーン装置101の電力供給方法」ともいえる。

そうすると、刊行物1には、図6記載の[第2の実施の形態]に着目することにより、次の発明(以下「引用発明1」という。)が開示されているということができる。
「給電装置1、主巻電動機20、走行電動機21、横行電動機22、インバータ(INV)31?33、蓄電装置4、コントローラ5、および共通母線10が設けられ、
給電装置1により、レーンごとに設けられている電源装置7からの供給電力を電動機20?22へ動作電力1Aとして供給し、蓄電装置4により、動作電力1Aの一部を蓄電し、他のレーンへ直角走行する際、供給電力の切り離しに応じて停止される給電装置1からの動作電力1Aに代えて蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給するようにしたクレーン装置101であって、
給電装置1として、AC/DC変換器を有する給電装置が用いられ、各インバータ31?33としてDC/AC変換器が用いられ、給電装置1から共通母線10に対して直流の動作電力1Aが供給され、
蓄電装置4は、電池やコンデンサなどの蓄電池を内蔵する回路装置であり、一般的な充放電制御装置が設けられており、
給電装置1は、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力し、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給される
クレーン装置101。」

また、刊行物1には、図6記載の[第2の実施の形態]に着目することにより、次の発明(以下「引用発明2」という。)が開示されているということができる。
「給電装置1、主巻電動機20、走行電動機21、横行電動機22、インバータ(INV)31?33、蓄電装置4、コントローラ5、および共通母線10が設けられ、
給電装置1により、レーンごとに設けられている電源装置7からの供給電力を電動機20?22へ動作電力1Aとして供給し、蓄電装置4により、動作電力1Aの一部を蓄電し、他のレーンへ直角走行する際、供給電力の切り離しに応じて停止される給電装置1からの動作電力1Aに代えて蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給するようにしたクレーン装置101の電力供給方法であって、
給電装置1として、AC/DC変換器を有する給電装置が用いられ、各インバータ31?33としてDC/AC変換器が用いられ、給電装置1から共通母線10に対して直流の動作電力1Aが供給され、
蓄電装置4は、電池やコンデンサなどの蓄電池を内蔵する回路装置であり、一般的な充放電制御装置が設けられており、
給電装置1は、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力し、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給される
クレーン装置101の電力供給方法。」

2.刊行物2について
当審拒絶理由に引用された刊行物2には、「直流ハイブリッド給電装置」に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0017】
【作用】この発明においては、
1)直流電源(例えば、その内の一つは燃料電池発電装置である。),または交流電源に接続された整流装置から供給された直流電源と、この直流電源から直流電力の供給を受ける直流/直流変換手段と、直流/直流変換手段が出力すべき電力値に関する情報を保存する保存手段と、直流/直流変換手段が出力する電圧および電流の値に関する信号を入力して,これ等の電圧値と電流値との積が前記保存手段に保存されている電力値に一致するように,直流/直流変換手段が出力する電圧の値を修正させる信号を直流/直流変換手段に与える定電力制御信号生成装置と、直流/直流変換手段が出力する電圧の値に関する信号を入力して,この電圧の値が許容上限電圧値に到達した場合には保存手段が保存している電力値に関する情報の値を減少させ,この電圧の値が許容下限電圧値に到達した場合には保存手段が保存している電力値に関する情報の値を増加させるべく,電力値に関する情報を修正させる信号を保存手段に与える出力電力レベル制御信号生成装置とを有し、一定電力値制御を施された直流電力を供給する第1直流電源装置と、この第1直流電源装置の出力端,または互いにその出力端で並列接続された2台以上の第1直流電源装置相互の接続点に対して並列に接続された蓄電池装置から成る第2直流電源装置を備え、第1直流電源装置と第2直流電源装置との接続点から負荷に対して直流電力を供給する構成とすることにより、出力電力レベル制御信号生成装置から電力値に関する情報を修正させる信号が出力されていない条件においては、第1直流電源装置から供給される電力P_(1)の値は一定であり、また、その出力する電圧V_(1)の値は、定電力制御信号生成装置から与えられる電圧の値を修正させる信号によって、第1直流電源装置が供給する電流I_(1)の値に対応して(式1)に従う値の垂下特性を持つことになる。
【0018】
【数1】
V_(1)=P_(1)(一定値)/I_(1) ……………………………(1)
この電流I_(1)の値が、負荷の必要とする電流I_(L)の値よりも大きい場合には、電流I_(1)と電流I_(L)との差は蓄電池装置の充電に用いられ、この電流I_(1)の値が、負荷の必要とする電流I_(L)の値よりも小さい場合には、電流I_(L)と電流I_(1)との差は蓄電池装置の放電により補われる。・・・
【0019】この状態よりも負荷が増大し,電流I_(L)の値が増加することで電流I_(1) の値が増加すると、(式1)によって電圧V_(1) の値は低下してV_(1D)となる。電圧V_(1) の値の低下は、この発明による直流ハイブリッド給電装置では、蓄電池装置の電圧V2 が低下することであるので、蓄電池装置は、蓄電池の持つ特性によって放電状態となる。・・・
【0020】さらに、電流I_(1)が、負荷の必要とする電流I_(L)の値と同一である場合から、負荷が減少し、電流I_(L)の値が減少することで電流I_(1)の値が減少すると、(式1)によって電圧V_(1) の値は上昇してV_(1C)となる。電圧V_(1) の値の上昇は、この発明による直流ハイブリッド給電装置では、蓄電池装置の電圧V_(2)が上昇することであるので、蓄電池装置は、この蓄電池装置に用いられている蓄電池セルの持つ特性によって充電状態となる。すなわち、この状態での電圧V_(2)の値であるV_(2C)は、V_(2C)=V_(1C)>V_(20)となる。この場合には電流I_(1)の値はI_(1C)<I_(10)と減少はするが、これに蓄電池装置への充電によって供給される電流I_(2C)が差し引かれた差の電流I_(1C)-I_(2C)=I_(L)が負荷に供給されることになる。」
(イ)「【0041】また、第1直流電源装置2に用いる直流電源に、商用電源に接続された整流装置から供給された直流電源を採用した場合には、この直流電源は、例えば、商用電源に対する契約電力を越えない範囲での運転を確実に行うことが可能であるので、電力料金単価が高くなるという問題を解消することが可能となる。」

3.刊行物3について
当審拒絶理由に引用された刊行物3には、「配電システム」に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0079】
なお、出力優先順位が上位に設定された電力源の出力用コンバータについて、少なくとも1つ以上の出力用コンバータは、垂下出力特性を備えたコンバータで構成されているものとする。そして、大電流負荷が接続された場合に、2つ以上の複数の電力源から出力可能とする。図8は本実施形態における各電力源の出力特性を示す図であり、太陽電池用コンバータ111、AC-DCコンバータ113、蓄電池用コンバータ112の各出力用コンバータの出力特性を示した特性図である。図8において、それぞれの出力特性図は横軸が電流(A)を、縦軸が電圧(V)を示しており、各出力用コンバータが垂下出力特性を有している。3つの出力用コンバータの出力特性を合わせると下側の特性図のようになり、定格出力においては一番高い電圧の電力源の出力用コンバータ(ここでは太陽電池用コンバータ)からの直流電力が出力される。定格出力より大きな負荷(過電流負荷)の場合は複数の電力源から出力させることにより、大容量出力に対応できる。」

4.刊行物4について
当審拒絶理由に引用された刊行物4には、「電気駆動型建設用タワークレーンの制御システムおよびその制御方法」に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0008】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果を同時に達成することができる。
<1>商用電源を低圧電圧化することができ、省エネに寄与し経済性が高い。」
(イ)「【0024】
手順200において、前記蓄電手段2の蓄電量が第1しきい値以上であるかどうかを判定し、YESの場合には蓄電手段2からの電力のみでモータ7を駆動する。」
(ウ)「【0027】
このように、商用電源8の電力量を一定以下にコントロールし、不足分を蓄電手段2から供給することによって、従来高圧受電の必要なクレーンが低圧受電で使用可能になるほか、クレーン回生運転時の蓄電と、クレーン作業待機時(休止時)を利用して商用電源8から蓄電手段2に急速蓄電することによって、電力設備の簡素化および、省エネ化を図ることができる。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
(a)引用発明1の「主巻電動機20」「走行電動機21」「横行電動機22」及びそれらと組になる「インバータ」(31、32)は、「給電装置1により、レーンごとに設けられている電源装置7からの供給電力を電動機20?22へ動作電力1Aとして供給」に対して、供給される側の機器、すなわち、負荷であり、かつ、電動機へ動作電力を供給することは、駆動することであるから、本願発明1の「供給される電力によって駆動する電力負荷」に相当する。
引用発明1の「給電装置1」「蓄電装置4」「共通母線10」「インバータ31?33」は、「電源装置7からの供給電力を電動機20?22へ動作電力1Aとして供給」「蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給する」機能のものであるから、本願発明1の「電力負荷に電力を供給する電力供給装置」に相当する。
そして、引用発明1の「クレーン装置101」は、「給電装置1、主巻電動機20、走行電動機21、横行電動機22、インバータ(INV)31?33、蓄電装置4、コントローラ5、および共通母線10が設けられ」たものであるから、本願発明1の「供給される電力によって駆動する電力負荷と、
前記電力負荷に電力を供給する電力供給装置と、を有するクレーン」に相当する。
(b)引用発明1の「AC/DC変換器を有する給電装置が用いられ、各インバータ31?33としてDC/AC変換器が用いられ、給電装置1から共通母線10に対して直流の動作電力1Aが供給され」る「給電装置1」と、本願発明1の「商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する変換手段」とは、前者がAC/DC変換器を有し、直流の動作電力1Aを供給するものであって、供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して電力負荷に供給するといえるものであるから、両者は「供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する変換手段」である点で共通する。
(c)引用発明1の「共通母線10」は、本願発明1の「導線」に相当する。
引用発明1の「給電装置1からの動作電力1Aに代えて蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給する」ことは、その供給が、図6において、直流の動作電力1Aが供給される母線、DC/AC変換器であるインバータ31を介して走行電動機21(「インバータ31」と「走行電動機21」で、本願発明1の「電力負荷」に相当するもの)に供給されるものであるから、「電力負荷に直流電力を供給する」ことに相当する。
そうすると、引用発明1の「動作電力1Aの一部を蓄電し、他のレーンへ直角走行する際、供給電力の切り離しに応じて停止される給電装置1からの動作電力1Aに代えて蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給する」「蓄電装置4」の「電池やコンデンサなどの蓄電池」の部分は、本願発明1の「前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置」に相当する。
(d)引用発明1の「蓄電装置4」の「充放電制御装置」の部分は、本願発明1の「蓄電装置を充放電させる充放電制御手段」に相当する。
(e)引用発明1の「給電装置1」「蓄電装置4」「共通母線10」は、上記(a)の本願発明1の「電力負荷に電力を供給する電力供給装置」に相当するものであるとともに、上述したような「給電装置1」、「蓄電装置4」の「電池やコンデンサなどの蓄電池」の部分、「蓄電装置4」の「充放電制御装置」の部分の相当関係を考慮すると、本願発明1の「前記電力供給装置は、・・変換手段と、・・蓄電装置と、・・充放電制御手段と、を備え」る構成にも相当する。
(f)引用発明1の「給電装置1は、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力し、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給される」動作と、本願発明1の「前記変換手段は、出力電力が予め定められた電力値未満の場合には前記導線の電圧を第1目標値とする制御を行い、前記出力電力が前記予め定められた電力値に到達している場合には、前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御を行い、
前記充放電制御手段は、前記導線の電圧が前記第1目標値よりも小さな第2目標値まで低下した場合には、前記第2目標値の電圧で前記蓄電装置を放電させ、
前記電力供給装置は、
前記電力負荷の消費電力が前記予め定められた電力値以下の場合、前記商用電源からの電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記予め定められた電力値を超え、前記変換手段が前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つことによって前記導線における電圧が前記第2目標値まで低下した場合、前記充放電制御手段による前記蓄電装置の放電を開始する」動作とは、
「電力負荷の消費電力が所定の電力値以下の場合、供給される交流電力の電力のみによって電力負荷を駆動し、
消費電力が前記所定の電力値を超えた場合、蓄電装置の放電を開始する」点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「供給される電力によって駆動する電力負荷と、
前記電力負荷に電力を供給する電力供給装置と、を有するクレーンであって、
前記電力供給装置は、
供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する変換手段と、
前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置を充放電させる充放電制御手段と、を備え、
前記電力負荷の消費電力が所定の電力値以下の場合、前記供給される交流電力の電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記所定の電力値を超えた場合、前記蓄電装置の放電を開始する、クレーン。」

(相違点)
(相違点1)変換手段に供給される交流電力が、本願発明1は「商用電源から」供給されるものであり、電力負荷の消費電力が予め定められた電力値以下の場合、「商用電源から」の電力のみによって電力負荷を駆動するのに対し、引用発明1は「レーンごとに設けられている電源装置7からの供給電力」である点。
なお、「予め定められた電力値」である点については、相違点3として取り扱う。
(相違点2)本願発明1は「前記変換手段は、出力電力が予め定められた電力値未満の場合には前記導線の電圧を第1目標値とする制御を行い、前記出力電力が前記予め定められた電力値に到達している場合には、前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御を行い、
前記充放電制御手段は、前記導線の電圧が前記第1目標値よりも小さな第2目標値まで低下した場合には、前記第2目標値の電圧で前記蓄電装置を放電させ、
前記電力供給装置は、
前記電力負荷の消費電力が前記予め定められた電力値以下の場合、前記商用電源からの電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記予め定められた電力値を超え、前記変換手段が前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つことによって前記導線における電圧が前記第2目標値まで低下した場合、前記充放電制御手段による前記蓄電装置の放電を開始する」のに対し、引用発明1は「給電装置1は、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力し、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給される」ものであるものの、給電装置1、蓄電装置4、インバータ31?33各々の制御内容は特定されない点。
なお、「商用電源から」の電力である点については、相違点1として取り扱う。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の制御内容は、上記刊行物1-4には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、刊行物2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
(a)引用発明2の「主巻電動機20」「走行電動機21」「横行電動機22」及びそれらと組になる「インバータ」(31、32)は、「給電装置1により、レーンごとに設けられている電源装置7からの供給電力を電動機20?22へ動作電力1Aとして供給」に対して、供給される側の機器、すなわち、負荷であり、かつ、電動機へ動作電力を供給することは、駆動することであるから、本願発明2の「供給される電力によって駆動する電力負荷」に相当する。
引用発明2の「給電装置1」「蓄電装置4」「共通母線10」「インバータ31?33」は、「電源装置7からの供給電力を電動機20?22へ動作電力1Aとして供給」「蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給する」機能のものであるから、本願発明2の「電力負荷に電力を供給する電力供給装置」に相当する。
そして、引用発明2の「クレーン装置101の電力供給方法」は、「給電装置1、主巻電動機20、走行電動機21、横行電動機22、インバータ(INV)31?33、蓄電装置4、コントローラ5、および共通母線10が設けられ」たものであるから、本願発明2の「供給される電力によって駆動する電力負荷と、
前記電力負荷に電力を供給する電力供給装置と、を有するクレーンの電力供給方法」に相当する。
(b)引用発明2の「給電装置1」の「AC/DC変換器を有する給電装置が用いられ、各インバータ31?33としてDC/AC変換器が用いられ、給電装置1から共通母線10に対して直流の動作電力1Aが供給され」ることと、本願発明2の「商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する第1工程」とは、前者がAC/DC変換器を有し、直流の動作電力1Aを供給するものであって、供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して電力負荷に供給するといえるものであるから、両者は「供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する第1工程」である点で共通する。
(c)引用発明2の「共通母線10」は、本願発明2の「導線」に相当する。
引用発明2の「給電装置1からの動作電力1Aに代えて蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給する」ことは、その供給が、図6において、直流の動作電力1Aが供給される母線、DC/AC変換器であるインバータ31を介して走行電動機21(「インバータ31」と「走行電動機21」で、本願発明2の「電力負荷」に相当するもの)に供給されるものであるから、「電力負荷に直流電力を供給する」ことに相当する。
そして、引用発明2の「動作電力1Aの一部を蓄電し、他のレーンへ直角走行する際、供給電力の切り離しに応じて停止される給電装置1からの動作電力1Aに代えて蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給する」「蓄電装置4」の「電池やコンデンサなどの蓄電池」の部分は、本願発明2の「前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置」に相当する。
そうすると、引用発明2の「動作電力1Aの一部を蓄電し、他のレーンへ直角走行する際、供給電力の切り離しに応じて停止される給電装置1からの動作電力1Aに代えて蓄電電力4Aを走行電動機21へ供給する」ことは、本願発明2の「前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置を、充放電させる第2工程」に相当する。
(d)引用発明2の「給電装置1は、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力し、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給される」動作と、本願発明2の「前記第1工程では、出力電力が予め定められた電力値未満の場合には前記導線の電圧を第1目標値とする制御を行い、前記出力電力が前記予め定められた電力値に到達している場合には、前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御を行い、
前記第2工程では、前記導線の電圧が前記第1目標値よりも小さな第2目標値まで低下した場合には、前記第2目標値の電圧で前記蓄電装置を放電させ、
前記クレーンの電力供給方法では、
前記電力負荷の消費電力が前記予め定められた電力値以下の場合、前記商用電源からの電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記予め定められた電力値を超え、前記第1工程にて前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御が行われることで、前記導線における電圧が前記第2目標値まで低下した場合、前記第2工程にて前記蓄電装置の放電を開始する」動作とは、
「電力負荷の消費電力が所定の電力値以下の場合、供給される交流電力の電力のみによって電力負荷を駆動し、
消費電力が前記所定の電力値を超えた場合、蓄電装置の放電を開始する」点で共通する。

したがって、本願発明2と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「供給される電力によって駆動する電力負荷と、前記電力負荷に電力を供給する電力供給装置と、を有するクレーンの電力供給方法であって、
供給される交流電力を直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する第1工程と、
前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置を、充放電させる第2工程と、
を含み、
前記電力負荷の消費電力が所定の電力値以下の場合、前記供給される交流電力の電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記所定の電力値を超えた場合、前記蓄電装置の放電を開始するクレーンの電力供給方法。」

(相違点)
(相違点A)第1工程の供給される交流電力が、本願発明2は「商用電源から」供給されるものであり、電力負荷の消費電力が予め定められた電力値以下の場合、「商用電源から」の電力のみによって電力負荷を駆動するのに対し、引用発明2は「レーンごとに設けられている電源装置7からの供給電力」である点。
なお、「予め定められた電力値」である点については、相違点Cとして取り扱う。
(相違点B)本願発明2は「前記第1工程では、出力電力が予め定められた電力値未満の場合には前記導線の電圧を第1目標値とする制御を行い、前記出力電力が前記予め定められた電力値に到達している場合には、前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御を行い、
前記第2工程では、前記導線の電圧が前記第1目標値よりも小さな第2目標値まで低下した場合には、前記第2目標値の電圧で前記蓄電装置を放電させ、
前記クレーンの電力供給方法では、
前記電力負荷の消費電力が前記予め定められた電力値以下の場合、前記商用電源からの電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記予め定められた電力値を超え、前記第1工程にて前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御が行われることで、前記導線における電圧が前記第2目標値まで低下した場合、前記第2工程にて前記蓄電装置の放電を開始する」のに対し、引用発明1は「給電装置1は、常時一定の定常電力Pを動作電力1Aとして出力し、負荷電力10Aが動作電力Pを上回る期間には、その不足分が蓄電電力4Aとして蓄電装置4から放電され、インバータ31を介して主巻電動機20へ供給される」ものであるものの、給電装置1、蓄電装置4、インバータ31?33各々の制御内容は特定されない点。
なお、「商用電源から」の電力である点については、相違点1として取り扱う。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点Cについて先に検討すると、相違点Cに係る本願発明2の制御内容は、上記刊行物1-4には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても引用発明2、刊行物2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年3月21日付けの補正により、補正後の請求項1は、「前記変換手段は、出力電力が予め定められた電力値未満の場合には前記導線の電圧を第1目標値とする制御を行い、前記出力電力が前記予め定められた電力値に到達している場合には、前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御を行い、
前記充放電制御手段は、前記導線の電圧が前記第1目標値よりも小さな第2目標値まで低下した場合には、前記第2目標値の電圧で前記蓄電装置を放電させ、
前記電力供給装置は、
前記電力負荷の消費電力が前記予め定められた電力値以下の場合、前記商用電源からの電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記予め定められた電力値を超え、前記変換手段が前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つことによって前記導線における電圧が前記第2目標値まで低下した場合、前記充放電制御手段による前記蓄電装置の放電を開始する」という技術的事項を有し、また、補正後の請求項2は、「前記第1工程では、出力電力が予め定められた電力値未満の場合には前記導線の電圧を
第1目標値とする制御を行い、前記出力電力が前記予め定められた電力値に到達している場合には、前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御を行い、
前記第2工程では、前記導線の電圧が前記第1目標値よりも小さな第2目標値まで低下した場合には、前記第2目標値の電圧で前記蓄電装置を放電させ、
前記クレーンの電力供給方法では、
前記電力負荷の消費電力が前記予め定められた電力値以下の場合、前記商用電源からの電力のみによって前記電力負荷を駆動し、
前記消費電力が前記予め定められた電力値を超え、前記第1工程にて前記出力電力を前記予め定められた電力値に保つ制御が行われることで、前記導線における電圧が前記第2目標値まで低下した場合、前記第2工程にて前記蓄電装置の放電を開始する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献1(当審拒絶理由における刊行物1)には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-2は、当業者であっても、原査定における引用文献1に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-20 
出願番号 特願2011-145817(P2011-145817)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B66C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高野 誠治  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
中川 真一
発明の名称 クレーン、及びクレーンの電力供給方法  
代理人 柳 康樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 長谷川 芳樹  

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