• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1330545
審判番号 不服2016-14647  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-30 
確定日 2017-08-01 
事件の表示 特願2013-154075「電波監視装置および電波監視方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 5日出願公開、特開2015- 25691、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月25日の出願であって、平成27年10月8日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月2日付けで手続補正がされ、平成28年6月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年3月30日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月29日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年5月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
無線局からの電波を受信する少なくとも1つの受信手段と、
受信する前記電波の方位情報を取得する方位情報取得手段と、
前記電波を受信した位置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記受信手段の数より多い複数の地点それぞれにおいて自装置が受信し、受信した地点ごとに抽出した電波の情報を自装置に保存した複数の前記電波の情報と比較することによって前記電波が同一の無線局の発する電波であるかを判断する電波照合手段と、
前記電波照合手段が複数地点で受信した前記電波が同一の無線局の発する電波であると判断したときに、所定の時間内に受信した前記各電波の前記方位情報および前記位置情報から電波の発射源の位置を推定する発射源推定手段と
を備えることを特徴とする電波監視装置。
【請求項2】
前記電波照合手段は無線局が電波を送信する際に自局の識別用に付加する識別信号を基に、同一の無線局の発する電波であるかを判断する識別信号照合手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電波監視装置。
【請求項3】
前記電波照合手段は前記受信手段で受信した複数の前記電波の波形の特徴を比較して、同一の無線局の発する電波であるかを判断する特徴照合手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電波監視装置。
【請求項4】
前記電波照合手段は、
無線局が電波を送信する際に自局の識別用に付加する識別信号を基に、同一の無線局の発する電波であるかを判断する識別信号照合手段と、
前記受信手段で受信した複数の前記電波の特徴を比較して、同一の無線局の発する電波であるかを判断する特徴照合手段とを有し、
前記電波照合手段は、前記識別信号が受信した前記電波に含まれていないときに、前記特徴照合手段により同一の無線局の発する電波であるかの判断を行うことを特徴とする請求項1に記載の電波監視装置。
【請求項5】
無線局からの電波を少なくとも1つの受信装置で受信し、
受信する前記電波の方位情報を取得し
前記電波を受信した位置の位置情報を取得し、
前記受信装置の数より多い複数の地点それぞれにおいて自装置が受信し、受信した地点ごとに抽出した電波の情報を自装置に保存した複数の前記電波の情報と比較することによって前記電波が同一の無線局の発する電波であるかを判断し、
複数地点で受信した前記電波が同一の無線局の発する電波であると判断したときに、所定の時間内に受信した前記各電波の前記方位情報および前記位置情報から電波の発射源の位置を推定することを特徴とする電波監視方法。
【請求項6】
無線局が前記電波を送信する際に自局の識別用に付加する識別信号を基に、同一の無線局の発する電波であるかと判断することを特徴とする請求項5に記載の電波監視方法。
【請求項7】
受信した複数の前記電波の波形の特徴を比較して、同一の無線局の発する電波であるかを判断することを特徴とする請求項5に記載の電波監視方法。
【請求項8】
無線局が電波を送信する際に自局の識別用に付加する識別信号を基に、同一の無線局の発する電波であるかと判断し、
前記識別信号が受信した前記電波に含まれていかなったときは、受信した複数の前記電波の波形の特徴を比較して、同一の無線局の発する電波であるかを判断することを特徴とする請求項5に記載の電波監視方法。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2007-248110号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
受信した信号から監視対象となる送信信号の有無を検出する信号検出部と、
前記送信信号の特性から該送信信号の発信源である無線局を一意に識別するための無線局同定情報を出力する無線局同定部と、
前記送信信号の到来方位を測定する方位測定部と、
前記方位測定部の測定結果から前記発信源の位置を推定する発信源位置推定部と、
前記無線局同定情報で示される無線局と前記発信源位置推定部で推定した対応する発信源の位置とを関連付けて出力する発信源位置分類部と、
を有する電波監視装置。」

「【0019】
方位測定部7は、送信信号を受信すると、その到来方位(以下、発信源方位と称す)を測定する。本実施形態の電波監視装置1は、方位測定部7を少なくとも2つ備え、各方位測定部7をそれぞれ異なる位置に設置する。これら複数の方位測定部7の設置位置の情報は予め発信源位置推定部8に登録しておく。
【0020】
発信源位置推定部8は、複数の方位測定部7で測定した発信源方位の情報をそれぞれ受け取り、予め登録されている方位測定部7の設置位置の情報を用いて複数の発信源方位の交点を求め、その交点の位置を発信源の位置として発信源位置分類部9へ通知する。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「受信した信号から監視対象となる送信信号の有無を検出する信号検出部と、
前記送信信号の特性から該送信信号の発信源である無線局を一意に識別するための無線局同定情報を出力する無線局同定部と、
異なる位置に設置された少なくとも2つの、前記送信信号を受信するとその到来方位を測定する方位測定部と、
前記方位測定部の設置位置の情報を用いて、前記方位測定部の測定結果から前記発信源の位置を推定する発信源位置推定部と、
前記無線局同定情報で示される無線局と前記発信源位置推定部で推定した対応する発信源の位置とを関連付けて出力する発信源位置分類部と、
を有する電波監視装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2007-64941号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態による電波到来方向推定装置の構成を示している。この電波到来方向推定装置は、アダプティブアレーを構成するアンテナ1a?1dを備えている。各アンテナは所定間隔で矩形状に配置されており、4素子のアンテナを構成している。各アンテナは電波を受信して電気信号に変換し、受信信号として出力する。なお、アンテナの数は複数であればよく、4つに限定されない。また、各アンテナを直線状に所定間隔で配置してもよい。
(略)
【0019】
演算処理部5は、入力された受信信号のデジタルデータ列を用いて到来波を解析する。GPS部6はGPSアンテナおよびGPS受信機を備え、現在位置の測定を行う。電子ジャイロ部7は電波到来方向推定装置の向き(方位)を検出する。アンテナ1a?1d、受信部2a?2d、AD変換部3a?3d、データ出力部4、GPS部6、および電子ジャイロ部7は、持ち運びが可能な本体100に収納されている。また、演算処理部5は、例えば汎用のPC(Personal Computer)である。GPS部6および電子ジャイロ部7は、例えばRS-232C規格のケーブルで演算処理部5に接続されている。
(略)
【0023】
発信源位置特定部508(位置特定手段)は不法波の発信源の位置を特定する。1地点での測定の結果から、不法波の到来方向が推定されるので、少なくとも2地点で測定を行えば、各地点から到来波の到来方向(発信源方向)に伸びる線が交差した地点が不法波の発信源の位置となる。表示部509は、GPS部6による現在位置の測定結果に基づいて地図を表示し、その地図上に不法波の到来方向の推定結果や不法波の発信源の位置等を表示する。なお、図示していないが演算処理部5は、測定結果や地図データ等を記憶するための記録媒体を含む記憶部を備えており、測定結果等を適宜読み出して使用する。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2012-8011号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0035】
到来方向判別部13は、以下の処理(以下、「到来方向判別処理」という。)を行う。
(1) 既述の到来方向算出処理から到来方向θを求める(図4ステップS1)。例えば、図5の航空機30の位置P(N)での到来方向θ(N)を求める。
【0036】
(2) 到来方向θ(N)と、測位座標系における到来方向θ(N)を測位した航空機の位置P(N)とを記憶する(図4ステップS2)。
【0037】
(3) 複数の到来方向θ(1)、θ(2)と航空機の位置P(1)、P(2)とを記憶していた場合、三角測量でθ(1)とθ(2)との交点位置を求める。航空機の位置P(N)と交点位置とから推定方位Θ(N)を求める(図4ステップS3)。ここでは、三角測量を取り上げたが、平均処理や多角測量等、交点位置を求める処理ならいかなる方法を適用してもよい。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2010-32397号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0025】
位置情報処理部4は基地局通信部2から2つの自己位置情報を取得し、2つの移動体受信部1a,1bの位置情報の時間変化から信号受信時の移動体受信部1a,1bの位置情報および速度情報を算出する(ステップS14)。位置曲線演算部5は、周波数差検出部3で検出される周波数差と、位置情報処理部4で検出される位置情報および速度情報とに基づき電波発射源の位置曲線を演算する(ステップS15)。発射源位置演算部6は、複数の位置曲線の交点から電波発射源の位置を演算する(ステップS16)。」
「【0048】
このとき、受信した電波発信源20は同一のものなので3つの位置曲線の交点から電波発信源20の位置を得ることが可能となる。ただし、3つの位置曲線の交点は必須ではなく、次のような場合は2つの位置曲線の交点から電波発信源20の位置を得ることが可能となる。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明における「方位測定部」は、「発信源である無線局」からの「送信信号を受信する」から、そのための受信手段を備えていると認められる。
そうすると、引用発明における「異なる位置に設置された少なくとも2つの、前記送信信号を受信するとその到来方位を測定する方位測定部」は、本願発明1における「無線局からの電波を受信する少なくとも1つの受信手段と、受信する前記電波の方位情報を取得する方位情報取得手段」に相当する。

イ 「送信信号の特性」は、電波に関する情報であるといえるから、引用発明における「前記送信信号の特性から該送信信号の発信源である無線局を一意に識別するための無線局同定情報を出力する無線局同定部」は、本願発明1における「前記受信手段の数より多い複数の地点それぞれにおいて自装置が受信し、受信した地点ごとに抽出した電波の情報を自装置に保存した複数の前記電波の情報と比較することによって前記電波が同一の無線局の発する電波であるかを判断する電波照合手段」と、「受信した電波の情報によって電波が無線局の発する電波であるかを判断する電波照合手段」である点で共通する。

ウ 引用発明における「前記方位測定部の設置位置の情報を用いて、前記方位測定部の測定結果から前記発信源の位置を推定する発信源位置推定部」は、本願発明1における「前記電波照合手段が複数地点で受信した前記電波が同一の無線局の発する電波であると判断したときに、所定の時間内に受信した前記各電波の前記方位情報および前記位置情報から電波の発射源の位置を推定する発射源推定手段」と、「受信した前記各電波の前記方位情報および前記位置情報から電波の発射源の位置を推定する発射源推定手段」である点で共通する。

エ 引用発明における「電波監視装置」は、以下の相違点1ないし3を除いて、本願発明1における「電波監視装置」に相当する。

オ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「無線局からの電波を受信する少なくとも1つの受信手段と、
受信する前記電波の方位情報を取得する方位情報取得手段と、
受信した電波の情報によって電波が無線局の発する電波であるかを判断する電波照合手段と、
受信した前記各電波の前記方位情報および位置情報から電波の発射源の位置を推定する発射源推定手段と
を備えることを特徴とする電波監視装置。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1は「前記電波を受信した位置の位置情報を取得する位置情報取得手段」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点2)
電波が無線局の発する電波かを判断するための構成に関し、本願発明1においては、電波照合手段が、「前記受信手段の数より多い複数の地点それぞれにおいて自装置が受信し、受信した地点ごとに抽出した電波の情報を自装置に保存した複数の前記電波の情報と比較することによって」前記電波が同一の無線局の発する電波であるかを判断するのに対し、引用発明においては、無線局同定部が、「前記送信信号の特性から」該送信信号の発信源である無線局を一意に識別するための無線局同定情報を出力する点。

(相違点3)
電波の発射源の位置を推定するための構成に関し、本願発明1においては、発射源推定手段が、「前記電波照合手段が複数地点で受信した前記電波が同一の無線局の発する電波であると判断したときに所定の時間内に受信した」前記各電波の前記方位情報および前記位置情報から電波の発射源の位置を推定するのに対し、引用発明においては、発信源位置推定部が、方位測定部の設置位置の情報を用いて、前記方位測定部の測定結果から前記発信源の位置を推定する点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記相違点2に係る本願発明1の構成である、受信手段の数より多い複数の地点それぞれにおいて自装置が受信し、受信した地点ごとに抽出した電波の情報を自装置に保存した複数の電波の情報と比較することによって電波が同一の無線局の発する電波であるかを判断することは、引用文献2-4のいずれにも記載されていない。
したがって、上記相違点1及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明、及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-4について
請求項2-4は請求項1を引用するから、本願発明1に対するのと同じ理由により、本願発明2-4は、当業者が引用発明、及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明5について
本願発明5は、本願発明1に対応する方法の発明であるから、本願発明1に対するのと同様の理由により、本願発明5は、当業者が引用発明、及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明6-8について
請求項6-8は請求項5を引用するから、本願発明5に対するのと同じ理由により、本願発明6-8は、当業者が引用発明、及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-8に係る発明は、当業者が上記引用文献1に記載された発明、及び上記引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。しかしながら、上記第4のとおり、本願発明1-8は、当業者が引用発明(引用文献1に記載された発明)、及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 当審で通知した拒絶理由は、概略、以下のとおりである。

「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1 請求項1に「受信した地点ごとに測定結果を自装置に保存した複数の前記電波の情報を比較することによって」と記載されているが、
(1)当該記載より前に「測定」に関する記載がないため、「測定結果」が何を測定した結果であるのかが不明である。
(2)「測定結果を自装置に保存した複数の前記電波の情報を比較する」となっている(下線は当審で付与した。)ため、当該記載からでは、何と何を比較するのかが不明である。

2 請求項5についても上記1と同様である。」

2 平成29年5月29日付けの補正において、請求項1の「受信した地点ごとに測定結果を自装置に保存した複数の前記電波の情報を比較することによって」という記載が、「受信した地点ごとに抽出した電波の情報を自装置に保存した複数の前記電波の情報と比較することによって」と補正された結果、請求項1についての上記拒絶理由は解消した。
また、同様に、請求項5についての上記拒絶理由も解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-8は、当業者が引用発明、及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-18 
出願番号 特願2013-154075(P2013-154075)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
酒井 伸芳
発明の名称 電波監視装置および電波監視方法  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ