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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B62D
管理番号 1330565
審判番号 不服2016-3540  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-08 
確定日 2017-08-08 
事件の表示 特願2014-514325号「電動パワーステアリング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日国際公開、WO2013/168279、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)5月11日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年4月3日 :手続補正書の提出
平成27年5月28日付け :拒絶理由の通知
平成27年7月31日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年12月28日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成28年3月8日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成29年2月3日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という 。)の通知
平成29年2月23日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年2月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、ハンドル操舵力をアシストするモータと、前記トルクセンサの情報に基づいて前記モータの電流を制御し、前記モータを駆動させるPWM信号を出力するコントロールユニットと、
を備えた電動パワーステアリング装置において、
前記モータは多相巻線を有し、
前記コントロールユニットはマイクロコンピュータを備え、
前記マイクロコンピュータは、前記トルクセンサの情報に基づいて目標モータ電流値を演算すると共に、前記モータへ供給している電流をモニタし、前記目標モータ電流値と前記モニタにより検出された実モータ電流値との差異に従ってフィードバック制御を行い、
制御量を算出する制御量算出手段と、
前記制御量から前記多相巻線における各相の前記PWM信号のデューティの中の最大デューティが所定値以上であることを検出した場合、前記フィードバック制御に使用されるゲインを変更するゲイン変更手段と、を備え、
前記ゲイン変更手段は、前記所定値を値が減少する複数の所定値とし、大きい値の所定値から順次小さい値の所定値に沿って、最大デューティと前記所定値との比較を複数回行い、フィードバックのゲイン低下を次第に増加させることを特徴とする電動パワーステアリング装置。」

なお、本願発明2-6は本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定で引用された引用文献1(特開2007-91121号公報)には、図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。)。
(1a)
「【0001】
この発明は、モータ駆動目標値とモータ印加電圧との偏差に基づく比例・積分制御によってデューティ指令値を生成し、これに基づいて電源電圧を昇圧して電動モータに給電する構成のモータ制御装置、およびこのようなモータ制御装置を用いた電動パワーステアリング装置に関する。」
(1b)
「【0018】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。車両の操向のための操作手段としてのステアリングホイール1に加えられた操舵トルクは、ステアリングシャフト2を介して、ステアリング機構3に機械的に伝達される。ステアリング機構3には、電動モータMからの操舵補助力が、減速機構(図示せず)を介して、またはダイレクトドライブ方式によって、伝達されるようになっている。
【0019】
ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール1側に結合された入力軸2Aと、ステアリング機構3側に結合された出力軸2Bとに分割されていて、これらの入力軸2Aおよび出力軸2Bは、トーションバー4によって互いに連結されている。トーションバー4は、操舵トルクに応じてねじれを生じるものであり、このねじれの方向および量は、トルクセンサ5によって検出されるようになっている。また、ステアリングシャフト2の回転角を操舵角として検出する舵角センサ7が設けられている。
【0020】
トルクセンサ5は、たとえば、入力軸2Aと出力軸2Bとの回転方向の位置関係の変化に応じて変化する磁気抵抗を検出する磁気式のもので構成されている。このトルクセンサ5の出力信号は、モータ制御装置としてのコントローラ10(ECU)に入力されている。
コントローラ10には、トルクセンサ5の出力信号のほかに、車速センサ6が出力する車速信号が入力されている。コントローラ10は、トルクセンサ5によって検出される操舵トルクおよび車速センサ6によって検出される車速に応じて、目標駆動値としてのモータ電流目標値を定め、操舵トルクおよび車速に応じた操舵補助力がステアリング機構3に与えられるように、電動モータMを駆動制御する。コントローラ10は、車両の電装品に電力を供給する電源としての車載バッテリ8からの電力を電動モータMに供給することによって、この電動モータMを駆動制御する。
【0021】
コントローラ10は、マイクロコンピュータ11と、昇圧回路12と、モータ駆動回路13と、電動モータMに流れるモータ電流(負荷電流)を検出するモータ電流検出回路14とを備えている。モータ駆動回路13は、昇圧回路12を介して車載バッテリ8からの電力の供給を受けるとともに、電流検出用抵抗15を介して接地電位部に接続されている。昇圧回路12は、たとえば、車載バッテリ8が発生するバッテリ電圧(たとえば12V)を、必要に応じた高電圧(たとえば42V)に昇圧して、モータ駆動回路13に与える。マイクロコンピュータ11は、目標電圧値に従って昇圧回路12を駆動して、目標電圧値に制御された安定した電圧がモータ駆動回路13に供給されるようにする。たとえば、電動モータMを比較的高回転で駆動すべき操舵条件のときには、マイクロコンピュータ11は、目標電圧を高く(たとえば42V)設定する。これにより、コントローラ10は、電動モータMの逆起電力に打ち勝って、この電動モータMに電力を供給できる。
【0022】
マイクロコンピュータ11は、トルクセンサ5によって検出される操舵トルクおよび車速センサ6によって検出される車速に基づいて、モータ電流目標値および目標電圧値を設定し、これらに基づいて昇圧回路12およびモータ駆動回路13を制御する。
より具体的には、マイクロコンピュータ11は、CPU(中央処理装置)およびメモリを備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能する。この複数の機能処理部は、アシスト特性記憶部21と、モータ電流目標値設定部22と、昇圧電圧設定部23と、昇圧回路12の駆動のための昇圧PWM(Pulse Width Modulation)制御部24と、モータ駆動回路13の駆動のための電流PWM制御部25と、電圧偏差演算部26と、電流偏差演算部27と、操舵速度検出部28とを備えている。
【0023】
アシスト特性記憶部21は、操舵トルクおよび車速に対応したモータ電流目標値を予め定めた基本アシスト特性(アシストマップ)を記憶している。
モータ電流目標値設定部22は、トルクセンサ5によって検出される操舵トルクおよび車速センサ6によって検出される車速を、アシスト特性記憶部21に記憶された基本アシスト特性に当てはめて、モータ電流目標値Iobjを求める。このモータ電流目標値設定部22は、基本アシスト特性から求められるモータ電流目標値に対して、いわゆる慣性補償制御やダンピング制御などの公知の補償制御演算を施してモータ電流目標値Iobjを求めるものであってもよい。
【0024】
モータ電流目標値設定部22によって設定されるモータ電流目標値Iobjは、電流偏差演算部27に与えられる。この電流偏差演算部27には、さらに、モータ電流検出回路14によって検出されるモータ電流Iが与えられている。電流偏差演算部27は、モータ電流目標値Iobjに対するモータ電流Iの偏差(電流偏差)を求め、これを電流PWM制御部25に与える。
【0025】
電流PWM制御部25は、電流偏差演算部27から与えられる電流偏差が零になるように、すなわち、モータ電流Iがモータ電流目標値Iobjに等しくなるように、比例・積分演算によってデューティ比を定める。電流PWM制御部25は、このようにして定められたデューティ比の電流PWM信号を生成し、モータ駆動回路13に与える。
モータ駆動回路13は、電流PWM制御部25から与えられる電流PWM信号によって駆動されるスイッチング素子(パワーMOSFET)を備え、その電流PWM信号のデューティ比で、昇圧回路12の出力電圧Voを電動モータMに印加する。
【0026】
一方、昇圧電圧設定部23は、操舵条件等に応じて、電動モータMに印加すべき目標電圧値Vrefを生成する。この実施形態では、操舵速度検出部28が舵角センサ7の出力に基づいて操舵速度を検出するようになっている。そして、昇圧電圧設定部23は、たとえば、モータ電流目標値設定部22によって設定されるモータ電流目標値および操舵速度検出部28によって検出される操舵速度に基づいて、目標電圧値Vrefを生成する。」

したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「電動モータの動力を車両の操舵機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、
操舵トルクを検出するトルクセンサ5及び車速センサ6を備え、
操舵トルクおよび車速に基づいて、モータ電流目標値Iobjおよび目標電圧値Vrefを設定し、これらに基づいて昇圧回路12およびモータ駆動回路13を制御するマイクロコンピュータ11を含むコントローラ10を備え、
マイクロコンピュータ11は、さらに、モータ駆動回路13の駆動のための電流PWM制御部25と、電流偏差演算部27と、
を備え、
電流偏差演算部27は、モータ電流検出回路14によって検出されるモータ電流Iが与えられることによりモータ電流目標値Iobjに対するモータ電流Iの偏差を求め、これを電流PWM制御部25に与え、電流PWM制御部25は、電流偏差演算部27から与えられる電流偏差が零になるように、比例・積分演算によってデューティ比を定め、このデューティ比の電流PWM信号を生成し、モータ駆動回路13に与える、
電動パワーステアリング装置。」

2.引用文献2
原査定で引用された引用文献2(特開2002-345295号公報)の、【特許請求の範囲】、および、段落【0011】、【0015】の記載から、引用文献2には、以下の技術事項が記載されているといえる。
「電動パワーステアリング装置における電動モータの電流フィードバック制御において、デューティが所定値以上の時に、制御演算のゲインを予め定めるゲイン以下の値に設定する技術。」

3.引用文献5-6
原査定で引用された引用文献5(特開昭60-22485号公報)の、特許請求の範囲および第3ページ右下欄第15行-第5ページ左上欄第9行の記載から、引用文献5には、以下の技術事項が記載されているといえる。
「フィードバック制御において、過渡応答特性を改善するために、ゲインを段階的に変更する技術。」
また、原査定で引用された引用文献6(特開2009-183055号公報)にも、引用文献5に記載のものと同様の技術事項が記載されている。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「電動パワーステアリング装置」は本願発明1の「電動パワーステアリング装置」に相当する。
イ 引用発明の「電動パワーステアリング装置」は、「操舵トルクを検出するトルクセンサ5及び車速センサ6を備え」ている。ここで、引用発明の「操舵トルクを検出するトルクセンサ5」は、ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサであることは明らかであるから、本願発明1の「ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサ」に相当する。
ウ 引用発明の「電動モータ」は、本願発明1の「モータ」に相当する。そして、引用発明の「電動モータ」は、「動力を車両の操舵機構に伝達して操舵補助する」ものであるから、ハンドル操舵力をアシストするものといえる。したがって、引用発明の「電動モータの動力を車両の操舵機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置」は、本願発明1の「ハンドル操舵力をアシストするモータ」「を備えた電動パワーステアリング装置」に相当する。
エ 引用発明の「電動パワーステアリング装置」は「操舵トルクおよび車速に基づいて、モータ電流目標値Iobjおよび目標電圧値Vrefを設定し、これらに基づいて昇圧回路12およびモータ駆動回路13を制御するマイクロコンピュータ11を含むコントローラ10を備え」ており、この「コントローラ10」の「マイクロコンピュータ11」は「モータ駆動回路13の駆動のための電流PWM制御部25と」「を備えて」いるから、モータを駆動させるPWM信号を出力するものであるといえる。
したがって、引用発明の「コントローラ10」は、機能的にみて、本願発明1の「コントロールユニット」に相当する。また、上記ウの点も加味すると、引用発明の「電動モータの動力を車両の操舵機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置」は、本願発明1の「ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、ハンドル操舵力をアシストするモータと、前記トルクセンサの情報に基づいて前記モータの電流を制御し、前記モータを駆動させるPWM信号を出力するコントロールユニットと、を備えた電動パワーステアリング装置」に相当することとなる。
オ 引用発明の「マイクロコンピュータ11」は、本願発明1の「マイクロコンピュータ」に相当し、引用発明の「コントローラ10」が「マイクロコンピュータ11を含む」ことは、本願発明1の「前記コントロールユニットはマイクロコンピュータを備え」に相当する。
カ 上記エより、引用発明の「コントローラ10」は、本願発明1の「トルクセンサの情報に基づいて目標モータ電流値を演算する」に相当する機能を有する。
キ さらに、引用発明の「マイクロコンピュータ11」の「電流偏差演算部27は、モータ電流検出回路14によって検出されるモータ電流Iが与えられ」ているから、電動モータへ供給している電流をモニタしているといえるとともに、「モータ電流検出回路14によって検出されるモータ電流Iが与えられることによりモータ電流目標値Iobjに対するモータ電流Iの偏差を求め、これを電流PWM制御部25に与え、電流PWM制御部25は、電流偏差演算部27から与えられる電流偏差が零になるように、比例・積分演算によってデューティ比を定め、このデューティ比の電流PWM信号を生成し、モータ駆動回路13に与える」ものであるから、いわゆるフィードバック制御を行っているといえ、また、このフィードバック制御のための制御量を算出する算出手段を備えているといえる。
したがって、引用発明の「マイクロコンピュータ11は、さらに、モータ駆動回路13の駆動のための電流PWM制御部25と、電流偏差演算部27と、を備え、電流偏差演算部27は、モータ電流検出回路14によって検出されるモータ電流Iが与えられることによりモータ電流目標値Iobjに対するモータ電流Iの偏差を求め、これを電流PWM制御部25に与え、電流PWM制御部25は、電流偏差演算部27から与えられる電流偏差が零になるように、比例・積分演算によってデューティ比を定め、このデューティ比の電流PWM信号を生成し、モータ駆動回路13に与える」ことは、本願発明1の「前記マイクロコンピュータは、前記トルクセンサの情報に基づいて目標モータ電流値を演算すると共に、前記モータへ供給している電流をモニタし、前記目標モータ電流値と前記モニタにより検出された実モータ電流値との差異に従ってフィードバック制御を行い、制御量を算出する制御量算出手段と」「を備える」ことに相当する。
ク したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点および相違点があるといえる。
<一致点>
「ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、ハンドル操舵力をアシストするモータと、前記トルクセンサの情報に基づいて前記モータの電流を制御し、前記モータを駆動させるPWM信号を出力するコントロールユニットと、
を備えた電動パワーステアリング装置において、
前記コントロールユニットはマイクロコンピュータを備え、
前記マイクロコンピュータは、前記トルクセンサの情報に基づいて目標モータ電流値を演算すると共に、前記モータへ供給している電流をモニタし、前記目標モータ電流値と前記モニタにより検出された実モータ電流値との差異に従ってフィードバック制御を行い、
制御量を算出する制御量算出手段とを備える、
電動パワーステアリング装置。」
<相違点1>
本願発明1では「モータは多相巻線を有し」ているものであるのに対し、引用発明では「電動モータ」の巻線の相数については特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1は、「前記制御量から前記多相巻線における各相の前記PWM信号のデューティの中の最大デューティが所定値以上であることを検出した場合、前記フィードバック制御に使用されるゲインを変更するゲイン変更手段と、を備え、前記ゲイン変更手段は、前記所定値を値が減少する複数の所定値とし、大きい値の所定値から順次小さい値の所定値に沿って、最大デューティと前記所定値との比較を複数回行い、フィードバックのゲイン低下を次第に増加させる」ものであるのに対し、引用発明ではこのような手段(電動モータの電流に関するフィードバック制御に使用されるゲインを変更する手段)は具備されていない点。

(2)判断
事案に鑑み上記相違点2について検討する
上記「第3 2.」のとおり、引用文献2には、「電動パワーステアリング装置における電動モータの電流フィードバック制御において、デューティが所定値以上の時に、制御演算のゲインを予め定めるゲイン以下の値に設定する技術」事項が記載されている。
一方で、上記「第3 3.」のとおり、引用文献5-6には、「フィードバック制御において、過渡応答特性を改善するために、ゲインを段階的に変更する技術」事項が記載されている。
しかしながら、相違点2に係る本願発明1の「多相巻線における各相の前記PWM信号のデューティの中の最大デューティが所定値以上であることを検出した場合、前記フィードバック制御に使用されるゲインを変更するゲイン変更手段」および「前記ゲイン変更手段は、前記所定値を値が減少する複数の所定値とし、大きい値の所定値から順次小さい値の所定値に沿って、最大デューティと前記所定値との比較を複数回行い、フィードバックのゲイン低下を次第に増加させる」こと、特に、「多相巻線における各相の前記PWM信号のデューティの中の最大デューティが所定値以上であることを検出した場合、前記フィードバック制御に使用されるゲインを変更する」ことについては、いずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明において、引用文献2及び引用文献5-6に記載の上記技術事項を適用しても、相違点2に係る本願発明1の構成には至らない。
そして、本願発明1は上記構成を具備することにより、制御の連続性を犠牲にすることなく、静粛性の向上、振動の抑制を図ることができる(本願明細書段落【0010】、【0034】)という顕著な作用効果を奏するものといえる。
よって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2および引用文献5-6に記載された技術事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-6について
本願発明2-6は本願発明1を減縮したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2および引用文献5-6に記載された技術事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要および原査定についての判断
原査定は、請求項1について、また、請求項1の記載を引用した請求項2について上記引用文献1、2、5-6に基いて、当業者が容易に発明できたものであり、さらに、請求項1の記載を引用した請求項3-5について、上記引用文献1、2、5-6に加え、引用文献3(特開2003-164159号公報)、引用文献4(特開平8-72731号公報)に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年2月23日付けの手続補正により補正された請求項1は、「前記制御量から前記多相巻線における各相の前記PWM信号のデューティの中の最大デューティが所定値以上であることを検出した場合、前記フィードバック制御に使用されるゲインを変更するゲイン変更手段と、を備え、前記ゲイン変更手段は、前記所定値を値が減少する複数の所定値とし、大きい値の所定値から順次小さい値の所定値に沿って、最大デューティと前記所定値との比較を複数回行い、フィードバックのゲイン低下を次第に増加させる」という発明特定事項を有するものとなっており、上記「第4 1.および2.」に説示のとおり、補正後の請求項1に係る発明である本願発明1および請求項1を引用する請求項2-6は、当業者であっても引用発明、引用文献2および引用文献5-6に記載された技術事項に基いて容易に発明できたものではない(なお、本願発明1における「前記制御量から前記多相巻線における各相の前記PWM信号のデューティの中の最大デューティが所定値以上であることを検出した場合、前記フィードバック制御に使用されるゲインを変更するゲイン変更手段と、を備え、前記ゲイン変更手段は、前記所定値を値が減少する複数の所定値とし、大きい値の所定値から順次小さい値の所定値に沿って、最大デューティと前記所定値との比較を複数回行い、フィードバックのゲイン低下を次第に増加させる」点は、引用文献3-4にも記載も示唆もされていない。)。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1には、電流フィードバックゲインの低下を複数回に分けて行うための手段が発明特定事項として記載されていないから、請求項1および請求項1を引用する請求項2-4、6、7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、この出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知した。
これに対し、平成29年2月23日付けの手続補正において、請求項1について、「前記ゲイン変更手段は、前記所定値を値が減少する複数の所定値とし、大きい値の所定値から順次小さい値の所定値に沿って、最大デューティと前記所定値との比較を複数回行い、フィードバックのゲイン低下を次第に増加させる」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-6は、当業者が引用発明、引用文献2および引用文献5-6に記載された技術事項に基いて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-24 
出願番号 特願2014-514325(P2014-514325)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B62D)
P 1 8・ 537- WY (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
尾崎 和寛
発明の名称 電動パワーステアリング装置  
代理人 村上 啓吾  
代理人 竹中 岑生  
代理人 大岩 増雄  
代理人 吉澤 憲治  
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